説明

腫瘍増殖を阻害するための医薬

本発明は、癌腫およびHIV疾患の治療に高い活性を有するベツリン酸の新規な誘導体に、この型の新規なベツリン酸誘導体の製法に、およびそれらの医薬としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、癌腫およびHIV疾患の治療に大きな活性を有する新規なベツリン酸誘導体、かかる新規なベツリン酸誘導体の製法ならびにその医薬としての使用に関する。ベツリン酸と同様に、本発明に係る化合物はヒトおよび動物において種々の腫瘍(黒色腫、肉腫、リンパ腫、扁平上皮癌および後記する他の腫瘍)の増殖を阻害するための臨床的使用ならびにHIV疾患および(その抗炎症剤活性による)非特異的炎症疾患の治療に適している。
【0002】
(発明の開示)
本発明は、一般式(I):
【化1】

[式中、Rはヒドロキシ基、アミノ基、保護されたヒドロキシ基または保護されたアミノ基であり、R
【化2】

である]
で示される新規なベツリン酸誘導体に関する。適当な保護基は、先行文献から、例えば、その内容を出典明示により本明細書の一部とする、T.W. GreeneおよびP.G.M. Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」の第2章および第7章、第3版、John Wiley & Sons, Inc. (1999)から公知である。
【0003】
特に、本発明は、Rがヒドロキシ基、アミノ基または以下の保護されたヒドロキシもしくはアミノ基:
【化3】

の一つであり、Rが上記したとおりである、上記した一般式(I)で示される新規なベツリン酸誘導体に関する。
【0004】
本発明に係る化合物は、大きな活性を有し、極性溶媒にて優れた溶解性を有する、かくして著しく改善された適用選択肢を有する新規なベツリン酸誘導体である。本発明の化合物のいずれの使用可能な塩および包接化合物も一般式(I)の上記した定義により包含されることは言うまでもない。
【0005】
本発明はさらには、一般式(I)の化合物の製法であって、ベツリン酸ハライド、特に置換基Rで適宜保護されたベツリン酸クロリドを、適宜置換されたアルコールまたはアミンと反応させて置換基Rを得る方法に関する。必要に応じて、ついで、こうして得られた一般式(I)の化合物(Rが保護されたヒドロキシまたはアミノ基である)を選択された保護基の機能として当該分野にて既知の手段により脱保護し、Rがヒドロキシまたはアミノである、一般式(I)の化合物を得てもよい。
【0006】
本発明の化合物についての出発化合物および比較化合物として用いる天然物質であるベツリン酸はトリテルペンであり、それは前世紀の初期にて既に単離されていた。その名称は個々のアルコール性ベツリン(alcohol betulin)、大量に存在するところの樺の木の樹皮の成分に由来する。ベツリン酸は抗マラリア、抗炎症、抗HIVおよび抗腫瘍作用を示し、そのことは多種の刊行物に記載されている。化学治療剤として用いる場合、ベツリン酸は、種々の起源の腫瘍細胞(例えば、黒色腫細胞)にて、いわゆるアポトーシスとも言われているプログラムされた細胞死を誘発する。黒色腫において、抗増殖作用がインビトロおよびインビボの両方でヒト・マウス実験にて検出された。特に黒色腫細胞において、ベツリン酸は腫瘍細胞にて特異的にアポトーシスの細胞破壊を誘発するようであるが、メラニン細胞はこの物質に対して大きな耐性を有する。今まで、ベツリン酸と他の細胞増殖抑制剤との間でシナジー作用の可能性に関するデータはほとんど利用できなかった。小児腫瘍(ユーイング肉腫、髄芽腫)ならびにグリア芽腫における分子作用機序はエス・フルダ(S.Fulda)(ウルム、チルドレン・ホスピタル)らの研究グループにより特に念入りに研究されている。
【0007】
ベツリン酸およびその既知の誘導体の他の公知作用は科学文献に詳しく記載されており、HIVウイルスに対する活性、すなわち、その抑制可能な複製および受容体結合、ならびに、例えば、マウスの耳の炎症実験による、その抗炎症活性を包含する。動物実験および細胞培養の両方にて示されている、種々の腫瘍(黒色腫、神経外胚葉性腫瘍、肉腫)に対するその増殖抑制作用のため、ベツリン酸は単独療法ならびに他の細胞増殖抑制活性物質および細胞死調節物質、例えば、種々の抗アポトーシスBcl−2ファミリーメンバー、特にBcl−2またはBcl−xL、およびMcl−1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドとの可能性のある併用療法に用いられる極めて関心の高い物質である。
【0008】
ベツリン酸の主に黒色腫における、ならびにユーイング肉腫、グリア芽腫および髄芽腫との作用機序について、刊行物には、その効果がミトコンドリアレベルでのアポトーシスの誘発により引き起こされる実質的な程度までであると記載されている。今日、それが細胞内でどのような主たる結合点を有するのか、とりわけ、あるとすれば、いずれの結合部位(受容体)も初期のシグナル経路も十分に検討されておらず、未だ不明である。しかしながら、発明者および他の著者らはベツリン酸がヒトメラニン形成細胞であっても悪性細胞にてアポトーシスを誘発し、正常な細胞では悪性細胞よりも感受性が明らかに小さいことを証明することができた。マウスにおける動物実験データはまたどのような顕著な毒性も明らかにしなかったため、この観察はとりわけ興味深いものである。細胞培養にて得られたデータとは別に、ベツリン酸が正常な細胞でよりも腫瘍細胞にてより大きく集結するという効果に対する手がかりがある。黒色腫細胞および正常なメラニン形成細胞の両方における、および肉腫細胞系での種々のBcl−2ファミリーメンバーの誘発もまた研究された。ベツリン酸により2、3時間以内に、アポトーシス抑制蛋白、Mcl−1の発現が誘発され得ることが見出された。この遺伝子ファミリーの他の試験蛋白、とりわけ、Bcl−2およびBcl−xならびにp53蛋白の発現はこの処理の下で依然として変化しなかった。科学文献はそのデータにおいてベツリン酸の効果はp53蛋白に依存しないとする。近年、Bcl−2およびBcl−xLがベツリン酸誘発のアポトーシスを阻害しうることが明らかにされたため、これらの観察はベツリン酸と、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)による、Bcl−2および/またはBcl−xLの拮抗剤との併用を示唆する。同じことが、例えば、Mcl−1 ASOとの併用でも考えられる。ベツリン酸の特性と臨床との関連性の可能性は、ベツリン酸の細胞障害性が低pHの培地にて強化されるというのが最近の観察である。多くの腫瘍でのpHは正常な組織でのpHよりも低い(Noda Y.ら、1997)。同一の著者らはベツリン酸が増殖期にある細胞に対するよりも休止細胞に対してより活性であることを見出した。多くの化学療法ならびに放射線療法は休止細胞および/または酸性細胞集団に対してあまり効果的ではないため、この特性は臨床的使用と付加的な関連性のある可能性がある。
【0009】
現在、とりわけ、黒色腫、神経外胚葉性腫瘍ならびに肉腫およびHIVが最重点的に研究されている。これらは、治療が特に困難で、主としてその全身性疾患の形態では望みのある治療選択肢を提示することが難しい腫瘍である。黒色腫の転移した患者においては、療法選択肢は2ないし3の物質に大きく限定される。これらは、5−(3,3−ジメチル−2−トリアゼニル)−1−H−イミダゾール−4−カルボキシアミド(ダカルバジン(Dacarbazine)、DTIC)を包含する。ダカルバジンはいまなお黒色腫にて最も効果的な単独療法を構成し、約30%のオーダーの応答比を示す。他の合成または組換え物質、例えば、BCNU、シスプラチン、タモキシフェン、インターフェロン−アルファおよびインターフェロン−2との併用療法はいくつかの臨床実験にてより高い応答比を示す。しかしながら、これらは時間的に制限され、高い毒性を伴う。例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、エトポシド等などの天然産物より誘導されるいくつかの物質は、黒色腫およびその毒性に対するその活性について研究されている。しかしながら、結局、これらの物質は一つも日常の臨床操作において納得した状態で終わったものはない。
【0010】
(具体例の記載)
以下の記載において、本発明の方法をいくつかの実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1)アセチルベツリン酸−2−アミノ−3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロピルエステルIV(化合物B)
【化4】

【0011】
【化5】

【0012】
アセチルベツリン酸−2−アミノ−3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロピルエステルIVの合成をベツリン酸から開始し、アセチルベツリン酸IIおよび個々の酸塩化物IIIの中間段階を介し、その酸塩化物IIIをトリスヒドロキシメチルアミノメタンと反応させることで行う。
【0013】
a)アセチルベツリン酸(分子量498.74)II
無水酢酸(50ml)中のベツリン酸I(2g)(分子量456.70)を還流温度で2時間加熱する。冷却後、その反応物を氷水中に激しく攪拌しながら注ぎ、濾過し、得られた固体を酢酸の臭いが消えるまで水で洗浄する。
ついで該固体を70%エタノール中にて還流温度で攪拌しながら4時間加熱する。
冷却後、該反応溶液を濾過し、母液を若干濃縮し、氷浴にて冷却し、もう一度濾過する。收率86%;融点290℃。
【0014】
b)アセチルベツリン酸クロリド(分子量517.18)III
2gのアセチルベツリン酸IIを乾燥ベンゼンに入れ、10倍過剰量の塩化オキサリル(3.4ml)を補足した。反応混合物を冷却しながら8時間攪拌し、その後で溶媒ならびに過剰量の塩化オキサリルをロータリエバポレーターで蒸発させる。塩化オキサリルの残留物を除去するために、さらに20mlのベンゼンを添加し、再度減圧下で蒸発させる。
【0015】
c)アセチルベツリン酸−2−アミノ−3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロピルエステル(分子量601.86)IV(化合物B)
b)の方法により1gのアセチルベツリン酸(約0.002モル)から得られる酸塩化物をさらに精製することなく反応させる。このために、該化合物を36mlのジオキサン(乾燥)に溶かし、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンを二倍過剰量(0.004モル、0.5g)にて加える。スパチュラの先端部の量のDMAPおよび3滴のピリジンを添加した後、反応混合物を室温で2日間攪拌する。
この後で、固体を濾過し、溶液をロータリエバポレーターで濃縮させてクロロホルムに溶かす。このクロロホルム溶液を1%塩酸、水および飽和セイライン溶液でピリジンが不含となるまで数回洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、生成物をシリカゲルカラムまたは(および)クロマトトロン(chromatotron)上で精製する。溶出液として10:1の割合のクロロホルム−メタノールの混合液を用いた。收率:20%;融点:156℃。
【0016】
2)アセチルベツリン酸−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)ホルムアミド(分子量601.86)(化合物C)
【化6】

【0017】
アセチルベツリン酸N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)ホルムアミド(化合物C)の合成は、反応経路1と類似する方法にて、すなわち、ベツリン酸から出発し、アセチルベツリン酸IIおよび個々の酸塩化物IIIの中間段階を介し、その酸塩化物IIIをトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと反応させることにより行われる。
【0018】
1)のb)の方法により1gのアセチルベツリン酸(約0.002モル)から得られる酸塩化物をさらに精製することなく反応させる。このために、該化合物を35mlの無水ジオキサンに溶かし、等モル量のトリス−(ヒドロキシメチル)アミノメタン(0.002モル、0.25g)を加える。スパチュラの先端部の量のDMAPおよび3滴のピリジンを添加した後、反応混合物を80℃で8時間加熱する。この後で、反応溶液をロータリエバポレーターで濃縮させ、残渣をクロロホルムに溶かす。このクロロホルム溶液を1%塩酸、水および飽和セイライン溶液でピリジンが不含となるまで数回洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、生成物をシリカゲルカラムまたは(および)クロマトトロン上で精製する。溶出液として10:1の割合のクロロホルム−メタノールの混合液を用いた。收率:15%;融点:184℃。
【0019】
以下の記載において、本発明の化合物の腫瘍増殖の阻害についての使用をベツリン酸(比較化合物A)との比較において記載する。
種々の腫瘍系における増殖阻害
実施例1および2は、対増殖アッセイ(一日目に個々の化合物を所定の濃度にて単独投与した3日後の細胞数の減少を測定する)にて、比較化合物A(ベツリン酸)と新規な誘導体(化合物B)との間で直接比較した結果を示す。
【0020】
実施例1:化合物(A)(ベツリン酸)と化合物(B)(保護されたベツリン酸トリスエステル)の48時間後の黒色腫細胞系518A2(オランダ、ライデン、Peter Schrierから入手)の増殖阻害の比較。X軸は化合物AおよびBの各濃度(μg/ml)を示し、Y軸は未処理の対照に対する細胞の生存率(%)を示す。
比較化合物(A)のED50は約5μg/mlであり、化合物(B)のED50は約0.7μg/mlである。
【0021】
【表1】

【0022】
【化7】

【0023】
かくして、化合物(B)は比較化合物(A)よりも明らかに高い活性、すなわち、最大7倍速い活性を示す。
同様に強化された活性が、細胞系の例について以下に示されるように、肉腫でも観察される。
【0024】
実施例2:比較化合物(A)(ベツリン酸)の効能と化合物(B)(保護されたベツリン酸トリスエステル)の効能との脂肪肉腫系(ATCC HTB−92)における比較。X軸は化合物AおよびBの各濃度(μg/ml)を示し、Y軸は未処理の対照に対する細胞の生存率(%)を示す。
【0025】
【表2】

比較化合物(A)のED50は約2.5μg/mlであり、化合物(B)のED50は約0.9μg/mlである。
【0026】
実施例3:本発明に係る種々のベツリン酸誘導体の効果と、比較化合物(ベツリン酸)の効果との、各々の、種々の黒色腫−肉腫系に対する比較。各データは未処理の細胞培養物に対する細胞の生存率(%)(平均値)を示す。
【0027】
3a)比較化合物(A)(ベツリン酸)−脂肪肉腫系ATCC HTB−92に対する効果
濃度(μg/ml) 生存率(%)
0.3 98.0
0.6 92.8
1 92.3
1.25 79.5
2.5 49.3
5 20.8
10 15.7
【0028】
3b)化合物(B)(保護されたベツリン酸トリスエステル)−脂肪肉腫系ATCC HTB−92に対する効果
濃度(μg/ml) 生存率(%)
0.3 89.5
0.6 70.7
1 12.0
1.25 2.9
2.5 3.0
5 0.0
10 0.0
【0029】
3c)化合物(B)(保護されたベツリン酸トリスエステル)−黒色腫系518A2に対する効果
濃度(μg/ml) 生存率(%)
0.3 83.0
0.6 56.3
1 11.3
1.25 10.3
2.5 2.8
5 0.0
10 0.0
【0030】
3d)化合物(C)(保護されたベツリン酸トリスエステル)−肉腫系518A2および脂肪肉腫系ATCC HTB−92に対する効果
【化8】

【0031】
濃度(μg/ml) 黒色腫での生存率(%)
0.25 96
0.5 93
1 67.5
【0032】
濃度(μg/ml) 脂肪肉腫での生存率(%)
0.3 96
0.6 82
1.0 81
【0033】
実施例4:化合物(B)(保護されたベツリン酸トリスエステル)をHBC(2−ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン;シグマ、カタログ番号H−107)中に、またはHGC(2−ヒドロキシプロピル−ガンマ−シクロデキストリン;シグマ、カタログ番号H−125)中に含む包接化合物の調製
【0034】
【化9】

【0035】
さらなる希釈用の個々のストック溶液を以下に示す。50または100mg/mlの化合物(B)を各々エタノールに溶かした。HBCを別個に水または水+エタノールに溶かした。さらなる操作はシグマより供給されるデータシートに記載される操作と基本的に同じであった。pHを調節するのに何ら操作を行わなかった。HBCまたは類似化合物、例えば、ガンマ−シクロデキストリンに包接させることで化合物(B)の水溶液の溶解度は、引き続きさらなる改善を維持する。
【0036】
試験番号1:化合物(B) 従来通り、エタノールに50mg/mlにて溶かす
試験番号2:化合物(B) 水中266mg/mlのHBCに5.9mg/mlにて溶
かす。

試験番号3:化合物(B) 50%エタノール/50%水中266mg/mlのHBC
に20mg/mlにて溶かす。
試験番号4:化合物(B) 50%エタノール/50%水中200mg/mlのHGC
に25mg/mlにて溶かす。
上記したストック溶液をエタノール中1mg/mlに希釈し、その後で培地に直接添加した。
【0037】
4a)HBC(2−ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン)またはHGC(2−ヒドロキシプロピル−ガンマ−シクロデキストリン)中の包接化合物としての化合物(B)(保護されたベツリン酸トリスエステル)−黒色腫系518A2に対する効果:
一日目に単独投与して3日間経過した後の他のすべてのデータを生存率(%)にて示す。
試験番号1
濃度(μg/ml) 黒色腫での生存率(%)
1.0 50
2.0 0.5
3.0 0.0
4.0 0.0
【0038】
試験番号2
濃度(μg/ml) 黒色腫での生存率(%)
1.0 65
2.0 25
3.0 0.0
4.0 0.0
【0039】
試験番号3
濃度(μg/ml) 黒色腫での生存率(%)
1.0 77
2.0 24
3.0 0.0
4.0 0.0
【0040】
試験番号4
濃度(μg/ml) 黒色腫での生存率(%)
1.0 59
2.0 4
3.0 0.0
【0041】
4b)マウス実験における化合物(B)(保護されたベツリン酸トリスエステル)のHGC(2−ヒドロキシプロピル−ガンマ−シクロデキストリン)中の包接化合物としての耐性:
方法:水に溶かしたHGC/化合物(B)複合体を無菌の雌のC.B.−17scid/scid(SCID)マウス(4−6週齢、ドイツ、ボルシェン、ハーラン・ウィンケルマン)の尾静脈に静脈内注射した。包接化合物は実施例4に記載されるように調製した。該混合物を凍結乾燥させることでアルコールを除去し、その後で水で復元した。以下に示す実験での注射一回当たりの総容量は200μlであった。
【0042】
試験番号1
最初に、二匹のマウスを、各々、100μg HGC/化合物(B)の複合体で3日毎に連続して3回処理した。耐性の良いケースにおいては、その次のマウスの対は以下のスキームに示す次に高い用量で処理した。
スキーム:
A群: 100μg HGC/化合物(B)複合体 3回
B群: 200μg HGC/化合物(B)複合体 3回
C群: 400μg HGC/化合物(B)複合体 3回
次に、最初に処理したA群で試験を続行した:
A群: 800μg HGC/化合物(B)複合体 3回
B群: 1500μg HGC/化合物(B)複合体 3回
そして、局所刺激現象のため試験を中止した。
【0043】
外見上の全身性毒性は認められないが、二匹のマウスの一匹で強い局所刺激現象が見られたため、試験を1500μg HGC/化合物(B)複合体で中止した。全体として、外見上の毒性なしに、一匹のマウスに注射一回当たり800μgの量のHGC/化合物(B)の複合体を投与することができた。より高い濃度(マウス当たり約>1.5mg HGC/化合物(B)複合体)では、局所刺激現象が観察された。よりゆっくりとした注入速度がかかる副作用を回避する手助けとなると考えられる。
【0044】
試験番号2
三匹のマウスの試験群において、800μg HGC/化合物(B)複合体(200μl容量)を、各々、3日毎に6回連続してマウスに投与した。これもまた、外見上の臨床的毒性作用を示さなかった。その後の病理解剖は、巨視的な器官の変化を何ら示唆しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、Rはヒドロキシ基、アミノ基、保護されたヒドロキシ基または保護されたアミノ基であり、R
【化2】

を意味する]
で示されるベツリン酸誘導体あるいはその塩または包接化合物。
【請求項2】
がヒドロキシ基、アミノ基または以下の保護されたヒドロキシもしくはアミノ基:
【化3】

の一つであり、Rが上記したとおりである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
置換基Rで適宜保護されたベツリン酸ハライドを適宜置換されたアルコールまたはアミンと反応させて置換基Rを得、こうして得られた一般式(I)の化合物(ここで、Rは保護されたヒドロキシまたはアミノ基である)を必要に応じて脱保護して一般式(I)の化合物(ここで、Rはヒドロキシまたはアミノである)を得ることを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物の製法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の化合物の医薬としての使用。
【請求項5】
哺乳動物における、黒色腫および神経外胚葉性腫瘍のような腫瘍の増殖を阻害するための、および/または肉腫およびHIV疾患を治療するための医薬の製造における請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項6】
他の細胞増殖抑制的に活性な物質および細胞死調節物質、例えば、種々のアポトーシス抑制Bcl−2ファミリーメンバー、特にBcl−2、Bcl−xLならびにMcl−1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドとの併用療法のための医薬の調製における請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項7】
請求項1または2のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬組成物。

【公表番号】特表2006−517208(P2006−517208A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501337(P2006−501337)
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/AT2004/000045
【国際公開番号】WO2004/072092
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(505303886)ノベリックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】NOVELIX PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】