説明

腫瘍治療のための診断のための方法および組成物

腫瘍のための診断用マーカー、及び腫瘍の診断及び治療におけるそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2008年7月11日出願の米国仮出願番号61/080173の優先権を主張する国際特許出願であり、この内容は出典明記によって本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、癌の治療に有用な診断用の方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
癌はヒトの健康を脅かす最も致死率の高いものの一つである。米国だけでも、毎年1,300,000人近くの患者が新たに癌に罹患しており、循環器系疾患に次いで2番目の死因となっており、およそ4人に1人を占める。固形腫瘍はこれらの死の大部分の原因である。特定の癌の医学治療においてめざましい進歩があるにもかかわらず、すべての癌の全体の5年生存率は過去20年においておよそ20%しか改善されていない。癌又は悪性腫瘍は転移して、制御されずに急速に成長するので、タイムリーな検出と治療を極めて難しくする。
癌の種類に応じて、患者は一般的に、化学療法、放射線および抗体ベースの薬剤を含む、患者に有用な様々な治療の選択がある。異なる治療投薬計画から臨床結果を予測するために有用な診断法は、この患者の臨床管理のためになる。様々な研究により、例えば突然変異特異的アッセイ、マイクロアレイ分析、qPCRなどによって特定の癌種の同定と遺伝子発現との相関性が研究されてきた。このような方法は、患者が示す癌の同定及び分類に有用でありうる。しかしながら、臨床結果との遺伝子発現の予測又は予後の値についてはあまり知られていない。
したがって、各患者に適切な治療投薬計画のための客観的な再現性のある方法が求められている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の方法は、例えば、ある治療コースのための患者を選択する際、特定の治療投薬計画により個々の患者を治療する場合の成功の可能性を予測する際、疾患経過を評価する際、治療効果をモニタリングする際、個々の患者の予後を決定する際、そして、抗血管形成療法に加えて特定の抗癌療法から利益を得る個体の素因を評価するといった、様々な状況で利用可能である。
【0005】
VEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得る患者の同定方法、VEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に対する患者の応答性を予測する方法、及びVEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者への臨床上の利益の可能性を決定する方法を、本明細書中で提供する。例えば、方法は、患者から得た試料において遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率を決定することを含み、このとき、対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率と比較して、該試料中の該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率に変化がある場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。
この方法の特定の実施態様では、比率の変化は増加である。他の実施態様では、比率の変化は減少である。ある実施態様では、遺伝子は血管形成因子である。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。一実施態様では、mRNA発現は腫瘍細胞のものである。ある実施態様では、前記血管形成因子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率の変化は増加である。一実施態様では、血管形成因子はVEGF−Cである。他の実施態様では、血管形成因子はVEGF−Dである。さらに他の実施態様では、血管形成因子はbFGFである。さらに他の実施態様では、血管形成因子はVEGFR3である。
【0006】
ある実施態様では、血管形成因子はVEGF−Cであり、この方法はさらに、該試料におけるVEGF−Dの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるVEGF−Dの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、該試料中のVEGF−Dの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が増加している。一実施態様では、対照試料と比較して試料中の比率が増加している場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルはタンパク質発現レベルである。
ある実施態様では、血管形成因子はVEGF−Cであり、この方法はさらに、該試料におけるbFGFの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるbFGFの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、該試料中のbFGFの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が増加している。一実施態様では、対照試料と比較して試料中の比率が増加している場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルはタンパク質発現レベルである。
【0007】
ある実施態様では、血管形成因子はVEGF−Dであり、この方法はさらに、該試料におけるVEGF−Cの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるVEGF−Cの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、該試料中のVEGF−Cの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が増加している。一実施態様では、対照試料と比較して試料中の比率が増加している場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルはタンパク質発現レベルである。
ある実施態様では、血管形成因子はVEGF−Dであり、この方法はさらに、該試料におけるbFGFの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるbFGFの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、該試料中のbFGFの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が増加している。一実施態様では、対照試料と比較して試料中の比率が増加している場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルはタンパク質発現レベルである。
【0008】
ある実施態様では、血管形成因子はbFGFであり、この方法はさらに、該試料におけるVEGF−Cの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるVEGF−Cの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、該試料中のVEGF−Cの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が増加している。一実施態様では、対照試料と比較して試料中の比率が増加している場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルはタンパク質発現レベルである。
ある実施態様では、血管形成因子はbFGFであり、この方法はさらに、該試料におけるVEGF−Dの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるVEGF−Dの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、該試料中のVEGF−Dの発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が増加している。一実施態様では、対照試料と比較して試料中の比率が増加している場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルはタンパク質発現レベルである。
【0009】
ある態様では、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うる患者を同定することを含む方法であって、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が0.1以上である場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うることが示される方法を提供する。一実施態様では、比率は、前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間で0.25以上である。他の実施態様では、比率は、前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間で0.5以上である。さらに他の実施態様では、比率は、前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間で1.0以上である。ある実施態様では、前記遺伝子はVEGF−Cである。ある実施態様では、前記遺伝子はVEGF−Dである。ある実施態様では、前記遺伝子はbFGFである。ある実施態様では、前記遺伝子はVEGFR3である。
ある態様では、抗血管形成療法に対する患者の応答性を予測することを含む方法であって、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が0.1以上である場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に対して応答すると思われることが示される方法を提供する。一実施態様では、比率は、前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間で0.25以上である。他の実施態様では、比率は、前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間で0.5以上である。さらに他の実施態様において、比率は、前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間で1.0以上である。ある実施態様では、前記遺伝子はVEGF−Cである。ある実施態様では、前記遺伝子はVEGF−Dである。ある実施態様では、前記遺伝子はbFGFである。ある実施態様では、前記遺伝子はVEGFR3である。
【0010】
ある態様では、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から臨床上の利益を得る可能性を決定することを含む方法であって、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が0.1以上である場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から臨床上の利益を得る可能性が高まることが示される方法を提供する。一実施態様では、比率は、前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間で0.25以上である。他の実施態様では、比率は、前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間で0.5以上である。さらに他の実施態様において、比率は、前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間で1.0以上である。ある実施態様では、前記遺伝子はVEGF−Cである。ある実施態様では、前記遺伝子はVEGF−Dである。ある実施態様では、前記遺伝子はbFGFである。ある実施態様では、前記遺伝子はVEGFR3である。
【0011】
一態様では、試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率を決定する方法であって、
(a) 試料における前記遺伝子の相対的な発現を決定すること、
(b) 対照試料における前記遺伝子の相対的な発現を決定すること、
(c) 試料中の該遺伝子の相対的な発現を対照試料中の該遺伝子の相対的な発現によって割ることを含む、試料中の該遺伝子の標準化した相対的な発現を決定すること、
(d) 試料中のVEGF−Aの相対的な発現を決定すること、
(e) 対照試料中のVEGF−Aの相対的な発現を決定すること、
(f) 試料中のVEGF−Aの相対的な発現を対照試料中のVEGF−Aの相対的な発現によって割ることを含む、試料中のVEGF−Aの標準化した相対的な発現を決定すること、そして、
(g) 該遺伝子の標準化した発現をVEGF−Aの標準化した発現によって割ることによって、該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定すること
を含む方法を提供する。
ある実施態様では、遺伝子は、血管形成因子又はそのレセプターである。いくつかの実施態様では、血管形成因子には、限定するものではないが、本明細書中の定義の項で定義するような血管形成因子及びそのレセプターが含まれる。
ある実施態様では、遺伝子又は血管形成因子の発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、遺伝子又は血管形成因子の発現レベルはタンパク質発現レベルである。
ある実施態様では、遺伝子又は血管形成因子のmRNA発現レベルはqRT−PCR又はqPCRを用いて測定される。他の実施態様では、mRNA発現レベルはマイクロアレイを使用して測定される。他の実施態様では、mRNA発現レベルはISH(インサイツハイブリダイゼーション)を使用して測定される。ある実施態様では、遺伝子又は血管形成因子のタンパク質発現レベルは、IHCアッセイを使用して測定される。
ある実施態様では、血管形成因子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率の変化は、増加である。一実施態様では、血管形成因子はVEGF−Cである。他の実施態様では、血管形成因子はVEGF−Dである。さらに他の実施態様では、血管形成因子はbFGFである。さらに他の実施態様では、血管形成因子はVEGFR3である。
【0012】
一実施態様では、患者からの試料における遺伝子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率は少なくとも0.5であり、前記遺伝子はVEGF−Cである。他の実施態様では、患者からの試料における遺伝子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率は少なくとも1であり、前記遺伝子はVEGF−Cである。一実施態様では、患者からの試料における遺伝子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率は少なくとも0.1であり、前記遺伝子はVEGF−Dである。一実施態様では、患者からの試料における遺伝子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率は少なくとも0.25であり、前記遺伝子はVEGF−Dである。他の実施態様では、遺伝子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率は少なくとも0.5であり、前記遺伝子はVEGF−Dである。一実施態様では、患者からの試料における遺伝子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率は少なくとも0.5であり、前記遺伝子はbFGFである。他の実施態様では、患者からの試料における遺伝子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率は少なくとも1であり、前記遺伝子はbFGFである。さらに他の実施態様では、患者からの試料における遺伝子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率は少なくとも2であり、前記遺伝子はbFGFである。
【0013】
ある実施態様では、VEGFアンタゴニスト療法は、抗VEGF抗体の投与を含む。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは、抗VEGF抗体、VEGF-Trap(例えばVEGFレセプター-Fc融合)又は抗VEGFレセプター抗体である。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。ある実施態様では、抗VEGF抗体は、ヒト又はヒト化抗VEGF抗体である。一実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブである。
ある実施態様では、本発明の方法はさらに、VEGFアンタゴニストに加えて患者に抗癌治療薬の有効量を投与することを含む。ある実施態様では、抗癌治療薬はVEGF−Cアンタゴニストである。ある実施態様では、VEGF−Cアンタゴニストは抗VEGF−C抗体である。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストに加えて抗VEGF−C抗体の有効量が、患者に投与される。ある実施態様では、抗VEGF抗体に加えて抗VEGF−C抗体の有効量が、患者に投与される。ある実施態様では、抗VEGF−C抗体および抗VEGF抗体は、同時に患者に投与される。
【0014】
ある実施態様では、患者の癌の治療方法が提供される。例えば、この方法は、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して変化していることを決定し、そして、VEGFアンタゴニスト以外の抗癌療法の有効量を該患者に投与することを含み、これによって癌が治療される。ある実施態様では、癌は耐性腫瘍である。ある実施態様では、患者は、再発性か又はVEGFアンタゴニストを含む抗癌療法に抵抗性である。ある実施態様では、患者は、再発性か又は抗VEGF抗体を含む抗癌療法に抵抗性である。ある実施態様では、患者は、再発性か又はベバシズマブを含む抗癌療法に抵抗性である。
ある実施態様では、患者の細胞増殖性疾患の治療方法が提供される。例えば、この方法は、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して変化していることを決定し、そして、VEGFアンタゴニスト以外の抗癌療法の有効量を該患者に投与することを含み、これによって細胞増殖性疾患が治療される。
ある実施態様では、患者の脈管形成を阻害する方法が提供される。この方法は、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して変化していることを決定し、そして、VEGFアンタゴニスト以外の抗癌療法の有効量を該患者に投与することを含む。
【0015】
ある実施態様では、患者のリンパ脈管形成を阻害する方法が提供される。この方法は、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して変化していることを決定し、そして、VEGFアンタゴニスト以外の抗癌療法の有効量を該患者に投与することを含む。
ある実施態様では、抗VEGF抗体および抗VEGF−C抗体を含むがこれに限らず抗癌薬又は抗血管形成薬は、ラベル又はパッケージ挿入物に示される指示に従って患者に投与される。
一実施態様では、比率の変化は増加である。他の実施態様では、比率の変化は減少である。ある実施態様では、遺伝子は血管形成因子である。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。一実施態様では、mRNA発現は腫瘍細胞のものである。ある実施態様では、前記血管形成因子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率の変化は増加である。一実施態様では、血管形成因子はVEGF−Cである。他の実施態様では、血管形成因子はVEGF−Dである。さらに他の実施態様では、血管形成因子はbFGFである。さらに他の実施態様では、血管形成因子はVEGFR3である。
ある実施態様では、患者から得られる試料は、組織、血液、血清又はこれら何れかの組合せである。ある実施態様では、患者から得られる試料は組織試料である。
【0016】
ある実施態様では、本発明の方法はさらに、その遺伝子についてIHCアッセイを実施することを含む免疫組織化学(IHC)スコアを決定することを含んでよく、このときIHCスコアは少なくとも+1である。一実施態様では、IHCスコアは少なくとも2+である。さらに他の実施態様において、IHCスコアは3+である。
ある実施態様では、本発明の方法はさらに、試料がVEGFR3を発現する腫瘍細胞を含むか否かを決定することを含んでよく、このときVEGFR3発現の存在により、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。
一実施態様では、VEGFR3発現はmRNA発現である。他の実施態様では、VEGFR3 mRNA発現の存在は、qRT−PCR又はqPCRを使用して決定される。さらに他の実施態様では、VEGFR3タンパク質発現の存在は、IHCアッセイを使用して決定される。
ある実施態様では、本発明の方法はさらに、VEGFR3の発現レベルを測定することを含んでよく、このとき試料中のVEGFR3の発現レベルが対照試料と比較して増加している。一実施態様では、VEGFR3の発現レベルは、mRNA発現レベルである。他の実施態様では、VEGFR3の増加したmRNA発現レベルは腫瘍細胞におけるものである。
【0017】
ある実施態様では、本発明の方法はさらに、その遺伝子についてIHCアッセイを実施することを含む免疫組織化学(IHC)スコアを決定すること、そして該試料がVEGFR3を発現する腫瘍細胞を含むか否かを決定することを含んでよく、このとき少なくとも1+のIHCスコアとVEGFR3発現の存在により、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者が抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。一実施態様では、IHCスコアは少なくとも2+である。さらに他の実施態様では、IHCスコアは3+である。一実施態様では、VEGFR3の発現レベルは、mRNA発現レベルである。他の実施態様では、VEGFR3の増加したmRNA発現レベルは腫瘍細胞におけるものである。
ある実施態様では、本発明の方法はさらに、試料がVEGF−Dを発現する腫瘍細胞を含むか否かを決定することを含んでよく、このときVEGF−D発現の存在により、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うること、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法に応答すると思われること、及び/又は、VEGFアンタゴニストと抗癌療法から患者に臨床上の利益をもたらす可能性が高まることが示される。一実施態様では、VEGF−D発現はmRNA発現である。他の実施態様では、VEGF−D mRNA発現の存在は、qRT−PCR又はqPCRを使用して決定される。他の実施態様では、VEGF−D発現はタンパク質発現である。他の実施態様では、VEGF−Dタンパク質発現の存在は、IHCアッセイを使用して決定される。
【0018】
一態様では、本発明は、一又は複数の遺伝子とVEGF−Aへ特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを含むアレイを具備するキットであって、さらに、一又は複数の該遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率を決定して、抗血管形成療法又は抗癌療法に対する患者の応答性を予測するために該アレイを用いるための指示書を具備し、このとき対照試料における該遺伝子の少なくとも一の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、試料中の同遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率に変化がある場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法又は抗癌療法から利益を得うることが示されるキットを提供する。
ある実施態様では、試料における少なくとも一の前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率が0.1以上である場合に、患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法又は抗癌療法から利益を得うることが示される。ある実施態様では、少なくとも一の前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率が0.25以上である場合に、患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法又は抗癌療法から利益を得うることが示される。ある実施態様では、少なくとも一の前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率が0.5以上である場合に、患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法又は抗癌療法から利益を得うることが示される。ある実施態様では、少なくとも一の前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率が1以上である場合に、患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法又は抗癌療法から利益を得うることが示される。ある実施態様では、少なくとも一の前記遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率が2以上である場合に、患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法又は抗癌療法から利益を得うることが示される。
【0019】
一態様では、本発明は、患者から得た試料における一又は複数の遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定するために、一又は複数の遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルを検出することができる化合物セットであって、このとき対照試料における該遺伝子の少なくとも一の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、試料中の同遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率に変化がある場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うることが示される化合物セットを提供する。ある実施態様では、化合物はポリヌクレオチドである。ある実施態様では、化合物はタンパク質である。一実施態様では、タンパク質は抗体である。
一態様では、本発明は、患者から得た試料における一又は複数の遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定するために、一又は複数の遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルを検出することができる化合物セットであって、このとき試料中の該遺伝子の少なくとも一の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が0.1以上である場合に、該患者がVEGFアンタゴニストと抗血管形成療法又は抗癌療法から利益を得うることが示される化合物セットを提供する。ある実施態様では、比率は0.25以上である。ある実施態様では、比率は0.5以上である。ある実施態様では、比率は1以上である。ある実施態様では、比率は2以上である。ある実施態様では、化合物はポリヌクレオチドである。ある実施態様では、化合物はタンパク質である。一実施態様では、タンパク質は抗体である。
【0020】
ある実施態様では、患者は癌と診断されている。ある実施態様では、癌は、カルチノーマ、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病である。これら癌のより具体的な例には、限定するものではないが、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞性癌、胃(gastric、stomach)癌(胃腸癌を含む)、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓又は腎臓癌、肝癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌および様々な種類の頭頸部癌、並びにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL));小リンパ球(SL) NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞NHL;高悪性度リンパ芽球NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連のリンパ腫;及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);線毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び、移植後のリンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに母斑症関連の異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍と関連するものなど)又はメイグス症候群が含まれる。特定の実施態様では、癌は、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、乳癌、神経膠芽腫又は腎臓癌である。
ある実施態様では、本発明の方法は、VEGF−AないしVEGF−Aレセプター(例えば、KDRレセプター又はFlt−1レセプター)に対する抗体又はそのアンタゴニスト、及びVEGF−Cに対する抗体又はそのアンタゴニストなどのこれらに限定されない抗血管形成薬の投与を含む抗血管形成療法により実施されてよい。ある実施態様では、本発明の方法はさらに、VEGFアンタゴニストに加えて一又は複数の抗血管形成薬及び/又は抗癌薬を投与することを含む。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。一実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブである。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストに加えて投与される抗血管形成薬は、VEGF−Cに対する抗体又はそのアンタゴニストである。一実施態様では、抗血管形成薬は抗VEGF−C抗体である。抗血管形成薬の他の一覧は、本明細書中の定義および血管形成インヒビターの項に見られる。
先に記述した任意の実施態様又はその何れかの組合せは、本明細書中に記載の本発明の何れか及びすべての方法に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】腫瘍異種移植片モデルの相対的なVEGF−A mRNA発現を示すグラフ。図1Bは図1Aと同じデータを示すが、2つのハウスキーピング遺伝子に対して標準化し、モデル当たりの腫瘍試料の数を増やしたものである。
【図2】腫瘍異種移植片モデルの相対的なVEGF−C mRNA発現を示すグラフ。図2Bは図2Aと同じデータを示すが、2つのハウスキーピング遺伝子に対して標準化し、モデル当たりの腫瘍試料の数を増やしたものである。
【図3】腫瘍異種移植片モデルの相対的なVEGF−D mRNA発現を示すグラフ。図3Bは図3Aと同じデータを示すが、2つのハウスキーピング遺伝子に対して標準化し、モデル当たりの腫瘍試料の数を増やしたものである。
【図4】腫瘍異種移植片モデルの相対的なVEGFR3 mRNA発現を示すグラフ。図4Bは図4Aと同じデータを示すが、2つのハウスキーピング遺伝子に対して標準化し、モデル当たりの腫瘍試料の数を増やしたものである。
【図5】腫瘍異種移植片モデルの相対的なbFGF mRNA発現を示すグラフ。
【図6】有効性の増加とVEGF−Aに対するVEGF−Cの相対的なmRNA発現比率との相関性を示すグラフ。図6Bは図6Aと同じデータを示すが、2つのハウスキーピング遺伝子、代替%TGD算出に対して標準化し、モデル当たりの腫瘍試料の数を増やしたものである。
【図7】有効性の増加とVEGF−Aに対するVEGF−Dの相対的なmRNA発現比率との相関性を示すグラフ。図7Bは図7Aと同じデータを示すが、2つのハウスキーピング遺伝子、代替%TGD算出に対して標準化し、モデル当たりの腫瘍試料の数を増やしたものである。
【図8】有効性の増加とVEGF−Aに対するbFGFの相対的なmRNA発現比率との相関性を示すグラフ。
【図9】有効性とVEGF−C/VEGF−AおよびVEGF−D/VEGF−Aの相対的なmRNA発現比率との相関性を示すグラフ。
【図10】有効性とVEGF−C/VEGF−AおよびbFGF/VEGF−Aの相対的なmRNA発現比率との相関性を示すグラフ。
【図11】有効性とVEGF−D/VEGF−AおよびbFGF/VEGF−Aの相対的なmRNA発現比率との相関性を示すグラフ。
【図12】ヒト卵巣腺癌についてのVEGF−C IHCスコアの図。
【図13】VEGF−C IHCはH460およびA549腫瘍の切片を染色した。
【図14】有効性の増加とVEGF−C IHCスコアとの相関性を示すグラフ。図14Bは図14Aと同じデータを示すが、代替%TGD算出によるものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に記載又は参照される技術及び手順は、当業者に一般に十分理解され、通常の方法論を用いて共通して実施される。例えばその例は以下に記載される方法論を広く利用したものである。Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al. eds., (2003));the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, ed. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1998) Academic Press;Animal Cell Culture (R. I. Freshney), ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);及び、Cancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)。
【0023】
定義のない限り、本明細書中で用いる技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の技術者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994), and March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は、本出願において使用する多くの用語についての一般的な指針を当業者に提供する。特許出願及び出版物を含む本明細書中で引用されるすべての文献は、出典明記によってその全体が援用される。
【0024】
(定義)
本出願を理解するために、以下の定義を適用し、必要な場合はいつでも、単数で使用した用語には複数形も含まれ、その逆もそうである。以下に示すいずれかの定義が出典明記によって本明細書中に援用されるいずれかの文献と矛盾する場合、以下の定義を調節してもよい。
【0025】
「個体」、「被検体」又は「患者」は脊椎動物である。ある実施態様では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、これに限定されないが、家畜(ウシなど)、スポーツ用動物、愛玩動物(ネコ、イヌ及びウマなど)、霊長類、マウス及びラットが含まれる。ある実施態様では、哺乳動物はヒトである。
本明細書中で用いる「試料」又は「試験試料」なる用語は、例えば理学的、生化学的、化学的及び/又は生理学的特徴に基づいて特性を示す又は同定される、細胞実体及び/又は他の分子実体を含有する対象とする被検体から得られる、又は対象とする被検体由来の組成物を指す。一実施態様では、この定義には、血液及び生物起源の他の液体試料、及び生検試料などの組織試料又は組織培養物又はこれら由来の細胞が包含される。細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結されたおよび/または保存されていた臓器や組織試料または生検または吸引による固形組織;血液または血液成分;体液;及び被検体の妊娠期または発生期の任意の時期の細胞ないし血漿であってもよい。
【0026】
他の実施態様では、この定義には、試薬による処理、可溶化又は特定成分(例えばタンパク質又はポリヌクレオチド)の濃縮、又は切断のための半固形又は固形マトリックスへの包埋といった、調達後の何れかの方法で操作されている生物学的試料が含まれる。 本明細書中で、組織試料の「切片」は、組織試料の一部又は断片、例えば、組織の薄切り又は組織からの細胞片を意味する。
試料には、限定するものではないが、原発性又は培養された細胞又は細胞株、細胞上清物、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体体液、リンパ液、関節液、ろ胞液、精液、羊水、乳汁、全血液、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物および組織培養液、並びに組織抽出物、例としてホモジナイズした組織、腫瘍組織および細胞抽出物が含まれる。
一実施態様では、試料は臨床試料である。他の実施態様では、試料は診断検査法で使われる。いくつかの実施態様では、試料は原発性又は転移性の腫瘍から得られる。組織生検は、腫瘍組織の代表的な部分を得るために用いられることが多い。あるいは、腫瘍細胞は、対象の腫瘍細胞を含むとわかっているか又はそう思われる組織又は体液の形態で間接的に得られてもよい。例えば、肺癌病変の試料は、切除術、気管支鏡検査法、細針吸引、気管支のブラッシングによって、又は痰、胸膜液ないし血液から得られてよい。
一実施態様では、試料は、抗血管形成療法の前の被検体又は患者から得られる。他の実施態様では、試料は、VEGFアンタゴニスト療法の前の被検体又は患者から得られる。さらに他の実施態様において、試料は、抗VEGF抗体療法の前の被検体又は患者から得られる。ある実施態様では、試料は癌が転移したあとに得られる。
【0027】
本明細書の「対照試料」は、比較のために用いられる任意の試料、標準物質又はレベルを指す。一実施態様では、対照試料は、同じ被検体又は患者の身体の健康な及び/又は罹患していない部分から得られる。他の実施態様では、対照試料は、同じ被検体又は患者の身体の処置していない組織及び/又は細胞から得られる。
ある実施態様では、対照試料は、試験試料を得るときとは異なる一又は複数の時点で得る同じ被検体又は患者からの単一試料又は組み合わせた複数の試料である。例えば、対照試料は、同じ被検体又は患者から、試験試料を得る時より早い時点に得られる。この対照試料は、対照試料が癌の初期診断時に得られ、試験試料が後の癌が転移性になるときに得られている場合に、有用でありうる。
一実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない個体の身体の健康な及び/又は罹患していない部分から得られる。他の実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない個体の身体の処置していない組織及び/又は細胞部分から得られる。
【0028】
ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない一又は複数の個体から得られる「試料」なる用語の下で定義される、全種類の生物学的試料を含む。ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない癌を有する一又は複数の個体から得られる。
ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない一又は複数の健康な個体からの組み合わせた複数の試料である。ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない癌を有する一又は複数の個体からの組み合わせた複数の試料である。ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない一又は複数の個体からの正常組織からプールしたRNA試料である。ある実施態様では、対照試料は、被検体又は患者でない癌を有する一又は複数の個体からの腫瘍組織からのプールされたRNA試料である。
遺伝子又はバイオマーカーの発現レベル/量は、限定するものではないが、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片及び/又は遺伝子コピー数といった当分野で公知の何れか適切な基準に基づいて定性的及び/又は定量的に決定されうる。ある実施態様では、第一試料中の遺伝子又はバイオマーカーの発現/量は、第二試料中の発現/量と比較して増加している。ある実施態様では、第一試料中の遺伝子又はバイオマーカーの発現/量は、第二試料中の発現/量と比較して減少している。ある実施態様では、第二試料は対照試料である。
【0029】
ある実施態様では、「増加」なる用語は、本明細書中のような当分野で公知の標準的な方法によって検出されるところの、対照試料と比較して、タンパク質又は核酸のレベルの5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の全体の増加を指す。ある実施態様では、増加なる用語は、試料中の遺伝子又はバイオマーカーの発現レベル/量の増加を指し、このとき増加が、対照試料中の遺伝子又はバイオマーカーそれぞれの発現レベル/量の少なくともおよそ1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.75倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、又は100倍である。
ある実施態様では、「減少」なる用語は、本明細書中のような当分野で公知の標準的な方法によって検出されるところの、対照試料と比較して、タンパク質又は核酸のレベルの5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の全体の減少を指す。ある実施態様では、減少なる用語は、試料中の遺伝子又はバイオマーカーの発現レベル/量の減少を指し、このとき減少が、対照試料中の遺伝子又はバイオマーカーそれぞれの発現レベル/量の少なくともおよそ0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、又は0.01倍である。
遺伝子の発現レベル/量を決定するための更なる開示は、本明細書中の発明の方法の項に記載される。
【0030】
本明細書中の「比率」は、他方と比べて一方の量の比例の量又は大きさを示す量を指す。そ多くの同じ大きさを指している場合、比率は一般に単位がない。比及び百分率は共に特定の比率の例である。比は、全体(分母)に対する一部(分子)であるが、百分率は100分の1を示す。
試料及び対照試料における遺伝子の発現レベル/量とVEGF−Aの発現レベルとの比率又はその比率の変化を決定するための更なる開示は、本明細書中の発明の方法の項に記載される。
【0031】
「検出」は、直接的および間接的な検出を含む検出するための任意の手段を含む。
ある実施態様では、「相関」又は「相関する」は、任意の方法で、第一の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果を、第二の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第二のプロトコルを行う際に第一の分析又はプロトコルの結果を用いてもよいし、及び/又は第一の分析又はプロトコルの結果を用いて、第二の分析又はプロトコルを行うかどうかを決定してもよい。遺伝子発現分析又はプロトコルの実施態様に関し、遺伝子発現分析又はプロトコルの結果を用いて、特定の治療投薬計画を実行するかどうかを決定してもよい。
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、核酸プローブ又は抗体などの試薬に直接的又は間接的にコンジュゲートないしは融合され、コンジュゲートないしは融合した試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識又は蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0032】
「小分子」は本明細書中で、およそ500ダルトン以下の分子量を有することが定義される。
本明細書中で交換可能に用いられる「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、変性ヌクレオチド又は塩基および/またはそれらのアナログ、又は、DNA又はRNAポリメラーゼによって又は合成反応によってポリマーに組み込まれうる任意の基質であってよい。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそのアナログといった変性ヌクレオチドを含んでよい。
本明細書中で用いられる「オリゴヌクレオチド」は一般に、必須ではないが一般におよそ200ヌクレオチド未満である、短い、一般に一本鎖の、一般に合成のポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」なる用語は互いに矛盾しない。ポリヌクレオチドについての先の記載は等しく、オリゴヌクレオチドにも完全に適用できる。
ある実施態様では、ポリヌクレオチドは、様々なストリンジェンシー条件下で遺伝子に特異的にハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングに必要な温度が高くなり、プローブが短くなるとそれに必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般に、相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合に、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション配列の間で所望される相同性の程度が高くなればなるほど、用いることができる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにする傾向があり、低い温度はストリンジェントを低下させることになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明については、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
【0033】
ここで定義されるストリンジェントな条件又は高度にストリンジェントな条件は、(1)例えば50℃の0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムと、洗浄に低イオン強度及び高温度を用いる;(2)例えば42℃の50%(v/v)ホルムアミドに0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムと、ホルムアミド等の変性剤をハイブリダイゼーションに用いる;又は(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%の硫酸デキストラン溶液を42℃で用い、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)での42℃での洗浄と50%のホルムアミドでの55℃での洗浄に、55℃でのEDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄が続くものによって同定されうる。
中程度にストリンジェントな条件は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されているようにして同定され、上述のものより低いストリンジェンシーの洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度にストリンジェントな条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で37℃での終夜インキュベーションの後、1×SSC中で約37−50℃でのフィルターの洗浄が続くものである。当業者であれば、プローブ長などの要因に適合させるために必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかは分かるであろう。
【0034】
「単離された」核酸分子は、同定され、ポリペプチド核酸の天然供給源に通常付随している少なくとも一つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。故に、単離された核酸分子は、天然の細胞中に存在する核酸分子とは区別される。しかし、単離された核酸分子には、例えば、核酸分子が天然の細胞のものとは異なった染色体位置にあるポリペプチドを通常発現する細胞に含まれる核酸分子が含まれる。
「プライマー」は、一般に、標的配列とハイブリダイズすることによって、対象の試料中に存在しうる標的に結合して、その後、標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する、一般に遊離した3'-OH基を有する短い単鎖のポリヌクレオチドである。
【0035】
「ハウスキーピング遺伝子」なる用語は、活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードする一群の遺伝子を指す。これらの遺伝子は一般的に、すべての細胞型において同じように発現される。ある実施態様では、遺伝子の相対的な発現レベルを決定するために一又は複数のハウスキーピング遺伝子が用いられる。
本明細書中で用いられる「バイオマーカー」なる用語は、一般的に、遺伝子、タンパク質、糖質構造又は糖脂質を含む分子を指し、哺乳動物組織又は細胞中ないしは組織又は細胞上での該分子の発現は標準的な方法(又は本明細書中で開示される方法)によって検出されうるものであり、哺乳動物細胞又は組織の、VEGF特異的インヒビターといった抗血管形成薬などの血管形成の阻害に基づく治療投薬計画への感受性を予測、診断及び/又は予後の予測をするものである。ある実施態様では、バイオマーカーは遺伝子である。ある実施態様では、このようなバイオマーカーの発現は、対照試料について観察されるものより高いか又は低いことが決定される。このようなバイオマーカーの発現は、Rules Based Medicine, Inc.又はMeso Scale Discoveryから市販されているような高性能多重化イムノアッセイを使用して決定されてよい。また、バイオマーカーの発現は、例えば、PCR又はFACSアッセイ、免疫組織化学アッセイ又はジーンチップベースのアッセイを用いて決定してよい。
【0036】
本明細書で用いる「アレイ」又は「マイクロアレイ」なる用語は、基質上でのハイブリダイズ可能なアレイ成分、好ましくはポリヌクレオチドプローブ(例えばオリゴヌクレオチド)の規則正しい整列を指す。基質は、ガラススライドなどの固体基質、又はニトロセルロースメンブレンなどの半固体基質であってもよい。ヌクレオチド配列は、DNA、RNA又は何れかのその並べ換えであってよい。
本明細書で用いる「標的遺伝子」、「標的バイオマーカー」、「標的配列」、「標的核酸」又は「標的タンパク質」は、その検出が望まれる、対象とするポリヌクレオチド又はタンパク質である。通常、本明細書中で用いる「鋳型」は標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドである。場合によって、「標的配列」、「鋳型DNA」、「鋳型ポリヌクレオチド」、「標的核酸」、「標的ポリヌクレオチド」及びその変異体は交換可能に用いられる。
本明細書中で用いる「増幅」は通常、所望の配列の複数のコピーを生産する方法を指す。「複数のコピー」は少なくとも2のコピーを意味する。「コピー」が、鋳型配列に対して相補的な又は同一な完全な配列を必ずしも意味するものではない。例えば、コピーは、ヌクレオチド類似体、例えばデオキシイノシン、意図的配列変化(鋳型に相補的ではないがハイブリダイズすることができる配列を含むプライマーにより導入された配列変化など)、及び/又は増幅中に起こる配列エラーを含みうる。
【0037】
「天然配列」ポリペプチドは、天然由来のポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる。よって、天然配列ポリペプチドは、任意の哺乳動物由来の天然に生じるポリペプチドのアミノ酸配列を有し得る。このような天然配列ポリペプチドは、自然から単離することもできるし、あるいは組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列」ポリペプチドという用語は特にポリペプチドの天然に生じる切断型又は分泌型(例えば細胞外ドメイン配列)、ポリペプチドの天然に生じる変異体型(例えば、選択的スプライシング型)及び天然に生じる対立遺伝子変異体を包含する。
「単離された」ポリペプチド又は「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定されて分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、ポリペプチドの診断又は治療への使用を妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質を含む。ある実施態様では、ポリペプチドは、(1)ローリー(Lowry)法により定量したポリペプチドの95重量%を上回るまで、好ましくは99重量%を上回るまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに十分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルー又は銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEにより均一性が得られるまで、精製される。ポリペプチドの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離されたポリペプチドには、組換え細胞内にインサイツのポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは、少なくとも一の精製工程により調製されるであろう。
【0038】
ポリペプチド「変異体」は、天然配列ポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのような変異体には、例えば、一又は複数のアミノ酸残基が、ポリペプチドのN末端又はC末端で付加されているか、又は欠失しているポリペプチドが含まれる。通常、変異体は、天然配列ポリペプチドと少なくともおよそ80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくともおよそ90%のアミノ酸配列同一性、よりさらに好ましくは少なくともおよそ95%のアミノ酸配列同一性を有する。
本明細書中の「抗体」は最も広義に用いられ、具体的にはモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性を表す限りにおける抗体断片を包含する。
【0039】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる可能性がある突然変異、例えば自然に生じる突然変異を除いて同一である。従って、「モノクローナル」との形容は、個別の抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。ある実施態様では、このようなモノクローナル抗体は、通常、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この場合、標的に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスにより得られる。例えば、この選択プロセスは、雑種細胞クローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールのような複数のクローンからの、唯一のクローンの選択とすることができる。重要なのは、選択された標的結合配列を更に変化させることにより、例えば標的への親和性の向上、標的結合配列のヒト化、細胞培養液中におけるその産生の向上、インビボでの免疫原性の低減、多選択性抗体の生成等が可能になること、並びに、変化させた標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体の調製物とは異なり、モノクローナル抗体の調製物の各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体の調製物は、それらが他の免疫グロブリンで通常汚染されていないという点で有利である。
「モノクローナル」との形容は、抗体の、実質的に均一な抗体の集団から得られたものであるという特性を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は様々な技術によって作製することができ、それらの技術には、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495-97 (1975);Hongo等, Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995);Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerling等: Monoclonal Antibodies and T-Cell hybridomas 563-681 (Elsevier, N. Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1992);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004);Lee等, J. Mol. Biol. 340(5);1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee等, J. Immounol. Methods 284(1-2): 119-132 (2004))、並びに、ヒト免疫グロブリン座位の一部又は全部、或るいはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物にヒト又はヒト様抗体を生成する技術(例えば、国際公開第98/24893号;国際公開第96/34096号;国際公開第96/33735号;国際公開第91/10741号;Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362: 255-258 (1993);Bruggemann等, Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;同第5661016号; Marks等, Bio.Technology 10: 779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368: 812-813 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnol. 14: 845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnol. 14: 826 (1996)及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)参照)が含まれる。
【0040】
ここでモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部であり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列に一致するか又は類似するものである(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984))。キメラ抗体には、抗体の抗原結合領域が例えば対象の抗原をマカクザルに免疫投与することによって作製される抗体に由来している、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれる。
別途示さない限り、「多価抗体」なる表現は3以上の抗原結合部位を含む抗体を意味する。ある実施態様では、多価抗体は、3以上の抗原結合部位を有するように設計されており、一般に天然配列のIgM又はIgA抗体ではない。
【0041】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び/又は能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一又は典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、例えばJones等, Nature 321:522-525(1986);Riechmann等, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照のこと。また例としてVaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);米国特許第6982321号及び同第7087409号も参照のこと。
【0042】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここで開示されたヒト抗体を製造するための何れかの技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む、当該分野で知られている様々な技術を使用して生産することが可能である。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。また、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner et al., J. Immunol., 147(1): 86-95 (1991)において記述される方法は、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)も参照のこと。抗原刺激に応答して抗体を産生するように修飾されているが、その内在性遺伝子座が無効になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによってヒト抗体を調製することができる(例として、XENOMOUSETM技術に関する米国特許第6075181号及び同第6150584号を参照)。また、例えば、ヒトのB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体に関するLi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)も参照のこと。
【0043】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを意味する。重鎖の可変ドメインは「VH」と称されうる。軽鎖の可変ドメインは「VL」と称されうる。これらのドメインは一般に抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含む。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つのHVRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のHVRは、FRによって近接して結合され、他の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞毒性への抗体の関与を示す。
【0044】
「抗体断片」は、好ましくは抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')およびFv断片;ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多特異性抗体が含まれる。
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。ある実施態様では、二本鎖Fv種は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、柔軟なペプチドリンカーによって1の重鎖及び1の軽鎖可変ドメインは共有結合性に連鎖することができ、よって軽鎖及び重鎖は、二本鎖Fv種におけるものと類似の「二量体」構造に連結することができる。この配置において、各可変ドメインの3つのHVRは相互に作用してVH-VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
またFab断片は、重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0045】
ここで使用される「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を意味する。一般に、抗体は6つの高頻度可変領域を含み;VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。天然の抗体では、H3及びL3は6つの高頻度可変領域のうちで最も高い多様性を示す、特にH3は抗体に良好な特異性を与える際に特有の役割を果たすように思われる。例としてXu等 (2000) Immunity 13:37-45;Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ)のJohnson and Wu (2003)を参照。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は機能的であり、軽鎖が無い状態で安定である。例としてHamers-Casterman等 (1993) Nature 363:446-448;Sheriff等 (1996) Nature Struct. Biol. 3:733-736を参照。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義する高頻度可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基である。
【0046】
「親和性成熟」抗体とは、その改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、その一又は複数のHVRにおいて一又は複数の改変を持つものである。一実施態様では、親和成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有する。親和成熟抗体は、当該分野において知られているある手順を用いて生産されてよい。例えば、Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和成熟について記載している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘導は、例としてBarbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
【0047】
「Fc領域」なる用語は、天然配列Fc領域及び変異形Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226の位置又はPro230からの位置のアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体の産生又は精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。したがって、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合を含む抗体群を含みうる。
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的「エフェクター機能」には、C1q結合、補体依存性細胞障害作用(CDC)、Fcレセプター結合、抗体依存性細胞媒介性細胞障害作用(ADCC)、食作用、細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター; BCR)の下方制御などが含まれる。そのようなエフェクター機能は、通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わさることを必要とし、例えば本明細書中の定義に開示される様々なアッセイを使用して評価される。
【0048】
「天然配列のFc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を包含する。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1Fc領域(非A-及びA-アロタイプ);天然配列のヒトIgG2Fc領域;天然配列のヒトIgG3Fc領域;及び天然配列のヒトIgG4Fc領域;並びに、これらの自然に生じる変異体が含まれる。
「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは一又は複数のアミノ酸置換により、天然配列のFc領域とは異なるアミノ酸配列を包含するものである。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列のFc領域もしくは親ポリペプチドのFc領域と比較した場合、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列のFc領域又は親のポリペプチドのFC領域におよそ1からおよそ10のアミノ酸置換、好ましくはおよそ1からおよそ5のアミノ酸置換を有する。本明細書中の変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列のFc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と、少なくともおよそ80%の同一性を有するか、最も好ましくは少なくともおよそ90%の配列同一性を、より好ましくは少なくともおよそ95%の配列又はそれ以上の同一性を有するものであろう。
【0049】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。ある実施態様では、FcRは天然のヒトFcRである。ある実施態様では、FcRはIgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif;ITIM)を含んでいる(例としてDaeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRに関しては、 例としてRavetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Haas等, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。将来的に同定されるものも含む他のFcRはここでの「FcR」という言葉によって包含される。
また、「Fcレセプター」又は「FcR」なる用語には、母性IgGの胎児への移送と(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976) Kim等, J. Immunol.24:249 (1994))、免疫グロブリンのホメオスタシスの調節を担う新生児性レセプターFcRnも含まれる。FcRnへの結合の測定方法は公知である(例としてGhetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997);Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997);Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004):国際公開2004/92219(Hinton et al.)を参照)。
インビボでのヒトFcRnへの結合とヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又は形質転換されたヒト細胞株、又は変異体Fc領域を有するポリペプチドを投与された霊長類動物においてアッセイすることができる。国際公開公報00/42072(Presta) にFcRへの結合を向上又は減弱させた抗体変異型が述べられている。例としてShields等, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)も参照のこと。
【0050】
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。ある実施態様では、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが望ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれる。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離してもよい。
【0051】
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcR)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
【0052】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。Fc領域アミノ酸配列を変更して(変異体Fc領域を有するポリペプチド)C1q結合能力が増大又は減少したポリペプチド変異体は、例として米特許第6194551号B1及び国際公開公報99/51642に記述される。また例としてIdusogie 等 J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)を参照のこと。
【0053】
「Fc領域含有抗体」なる用語は、Fc領域を含む抗体を指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムに従うと残基447)は、例えば、抗体の精製中又は抗体をコードする核酸を組み換え操作することによって除去してもよい。したがって、本発明のFc領域を有する抗体を含んでなる組成物は、K447を有する抗体、すべてのK447が除去された抗体、又はK447残基を有する抗体とK447残基を有さない抗体の混合集団を包含しうる。
「ブロック(遮断)」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低減するものである。例えば、VEGF-特異的アンタゴニスト抗体は、VEGFを結合し、VEGFの血管内皮細胞増殖又は血管透過性を誘導する能力を阻害する。あるブロック抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的ないしは完全に阻害する。
【0054】
本明細書中で用いる「VEGF」又は「VEGF-A」なる用語は、Leung et al. Science, 246:1306 (1989)、及びHouck et al. Mol. Endocrin., 5:1806 (1991)によって記載されているように、165アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子と、関連した121-、189-、及び206-アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子、並びにそれらの天然に生じる対立遺伝子型及びプロセシング型を意味する。また、「VEGF」は、マウス、ラット又は霊長類などの非ヒト動物腫由来のVEGFも意味する。特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFはhVEGF、マウスVEGFはmVEGFなどの用語で表されることが多い。また、「VEGF」なる用語は、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8〜109、又は1〜109を含むポリペプチドの切断型を意味するために用いられる。そのようなVEGF型を指すときは、本明細書では、例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」又は「VEGF165」と表す。「切断した(切断型の)」天然のVEGFのアミノ酸位置は、天然のVEGF配列に示される数で示す。例えば、切断型の天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然のVEGF中の位置17(メチオニン)でもある。切断型の天然VEGFは天然のVEGFに匹敵するKDR及びFlt−1レセプター結合親和性を有する。
「VEGF生物学的活性」には、任意のVEGFレセプターへの結合又は任意のVEGFシグナル伝達活性、例えば正常および異常な血管形成および脈管形成の調節(Ferrara and Davis-Smyth (1997) Endocrine Rev. 18: 4-25;Ferrara (1999) J. Mol. Med. 77: 527-543)、胚性の脈管形成および血管形成の促進(Carmeliet et al. (1996) Nature 380:435-439;Ferrara et al. (1996) Nature 380:439-442)、および雌生殖管における、および骨の成長および軟骨形成のための周期的血管増殖の調節(Ferrara et al. (1998) Nature Med. 4: 336-340;Gerber et al. (1999) Nature Med. 5: 623-628)が含まれる。血管形成および脈管形成における血管新生因子であることに加えて、多面発現増殖因子としてのVEGFは、他の生理的過程、例えば内皮細胞生存、脈管透過性および血管拡張、単球走化性、およびカルシウム流入において複数の生物学的効果を示す(上掲のFerrara and Davis-Smyth (1997)、およびCebe-Suarez et al. Cell. Mol. Life Sci. 63: 601-615 (2006))。さらに、近年の研究では、わずかな内皮性以外の細胞種、例えば網膜色素上皮細胞、膵管細胞およびシュワン細胞に対するVEGFの分裂促進効果が報告されている。Guerrin et al. (1995) J. Cell Physiol. 164:385-394;Oberg-Welsh et al. (1997) Mol. Cell. Endocrinol. 126:125-132;Sondell et al. (1999) J. Neurosci. 19:5731-5740。
【0055】
「VEGFアンタゴニスト」又は「VEGF特異的アンタゴニスト」は、一又は複数のVEGFレセプターへの結合を含むがこれに限定されないVEGF活性を中和、遮断、阻害、無効化、低減又は干渉することができる分子を指す。VEGFアンタゴニストには、限定しないが、抗VEGF抗体およびその抗原結合断片、VEGFに特異的に結合しそれによって一又は複数のレセプターへの結合を隔離するレセプター分子及びその誘導体、抗VEGFレセプター抗体及びVEGFRチロシンキナーゼの小分子インヒビターといったVEGFレセプターアンタゴニストが含まれる。本明細書中の「VEGFアンタゴニスト」なる用語には具体的に、VEGFに結合し、VEGF活性を中和、遮断、阻害、無効化、低減又は干渉することができる抗体、抗体断片、他の結合ポリペプチド、ペプチド及び非ペプチド小分子を含む分子が含まれる。ゆえに、「VEGF活性」なる用語は具体的に、VEGFのVEGF媒介生物活性が含まれる。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは、VEGFの発現レベル又は生物学的活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上低減するか又は阻害する。
【0056】
「抗VEGF抗体」は、十分な親和性と特異性を有してVEGFに結合する抗体である。ある実施態様では、選択された抗体は通常、VEGFに対して十分に強い結合親和性を有しており、例えば該抗体は100nM〜1pMのKd値を有してhVEGFを結合しうる。抗体親和性は、例えば、表面プラスモン共鳴ベースのアッセイ(例えばPCT出願公開番号WO2005/012359に記載される、BIAcoreアッセイ)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および競合アッセイ(例えばRIAのもの)で測定されてもよい。
ある実施態様では、抗VEGF抗体は、VEGF活性が伴う疾患又は症状を標的および干渉する際の治療用薬剤として用いられうる。また、抗体は、例えばその治療上の有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイの対象とされうる。このようなアッセイは従来技術において周知であり、標的抗原と抗体の使用目的に依存する。例として、HUVEC阻害アッセイ、腫瘍細胞増殖阻害アッセイ(例えば国際公開89/06692にて説明される)、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)および補体媒介性細胞障害活性(CDC)アッセイ(米国特許第5500362号)、およびアゴニスト活性又は造血アッセイ(国際公開95/27062を参照)などがある。抗VEGF抗体は通常、VEGF−B又はVEGF−Cなどの他のVEGFホモログにも、PIGF、PDGF又はbFGFなどの他の増殖因子にも結合しないであろう。一実施態様では、抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。他の実施態様では、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(BV;AVASTIN(登録商標))として知られる抗体を含むがこれに限定されない組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体(Presta et al. (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599を参照)である。
【0057】
「rhuMAb VEGF」又は「アバスチン(登録商標)」としても知られる抗VEGF抗体「ベバシズマブ(BV)」は、ヒトVEGFのそのレセプターへの結合をブロックするマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域と変異したヒトIgG1フレームワーク領域を含有する。ほとんどのフレームワーク領域を含む、ベバシズマブのおよそ93%のアミノ酸配列はヒトIgG1由来のものであり、配列のおよそ7%はマウス抗体A4.6.1由来である。ベバシズマブは、およそ149000ダルトンの分子質量であり、グリコシル化される。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は2005年2月26日発行の米国特許第6884879号にさらに記載されており、その開示内容の全体は出典明記によって明示的に本明細書中に援用される。
【0058】
ここで使用される「B20シリーズポリペプチド」なる用語は、VEGFに結合する抗体を含むポリペプチドを意味する。B20シリーズポリペプチドには、限定するものではないが、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号及び/又は米国特許出願公開第20070020267号に記載されたB20抗体又はB20誘導抗体の配列に由来する抗体が含まれ、これらの特許出願の内容は出典明示により明示的にここに援用される。一実施態様では、B20シリーズポリペプチドは、米国特許出願公開第20060280747号、米国特許出願公開第20070141065号及び/又は米国特許出願公開第20070020267号に記載されたB20−4.1である。他の実施態様では、B20シリーズポリペプチドは米国特許出願番号12/315221に記載されたB20-4.1.1であり、この開示内容の全体は出典明示により明示的にここに援用される。
ここで使用される「G6シリーズポリペプチド」は、VEGFに結合する抗体を含むポリペプチドを指す。G6シリーズポリペプチドには、限定するものではないが、米国特許公開第20060280747号、米国特許公開第20070141065号及び/又は米国特許公開第20070020267号に記載されたG6抗体又はG6由来の抗体の配列から由来する抗体が含まれる。米国特許公開第20060280747号、米国特許公開第20070141065号および/または米国特許公開第20070020267号に記載されたG6シリーズポリペプチドには、限定するものではないが、G6-8、G6-23及びG6-31が含まれる。
【0059】
更なる抗体については、米国特許第7060269号、同第6582959号、同第6703020号;同第6054297号;国際公開98/45332;国際公開96/30046;国際公開94/10202;欧州特許第0666868号B1;米国特許公開2006009360、20050186208、20030206899、20030190317、20030203409及び20050112126;及びPopkov et al., Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004)を参照のこと。ある実施態様では、他の抗体には、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K101、E103およびC104を含むか、あるいは残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83およびQ89を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合するものを含む。
他の抗VEGF抗体である抗Nrp1抗体及び抗Nrp2抗体も公知であり、例えば、Liang et al., J Mol Biol 366, 815-829 (2007)及びLiang et al., J Biol Chem 281, 951-961 (2006)、PCT国際出願公開番号WO2007/056470及び国際出願公開番号PCT/US2007/069179に記載されており、これら特許出願の内容は出典明記によって明示的にここに援用される。
【0060】
VEGFファミリーのメンバーであるVEGF−Cは、チロシンキナーゼVEGFレセプター及びニューロフィリン(Nrp)レセプターといった少なくとも2つの細胞表面レセプターファミリを結合することが知られている。3つのVEGFレセプターのうち、VEGF−CはVEGFR2(KDRレセプター)及びVEGFR3(Flt−4レセプター)を結合し、レセプター二量体化(Shinkai et al., J Biol Chem 273, 31283-31288 (1998))、キナーゼ活性化及び自己リン酸化(Heldin, Cell 80, 213-223 (1995);Waltenberger et al., J. Biol Chem 269, 26988-26995 (1994))を引き起こしうる。リン酸化されたレセプターは、複数の基質の活性化を誘導し、脈管形成及びリンパ管形成を引き起こす(Ferrara et al., Nat Med 9, 669-676 (2003))。VEGF−Cは、最も研究されたリンパ管発生のメディエーターの一つである。腫瘍細胞におけるVEGF−Cの過剰発現は、腫瘍関連リンパ管形成を促し、その結果として局所のリンパ節への転移が亢進されることが示された(Karpanen et al., Faseb J 20, 1462-1472 (2001);Mandriota et al., EMBO J 20, 672-682 (2001);Skobe et al., Nat Med 7, 192-198 (2001);Stacker et al., Nat Rev Cancer 2, 573-583 (2002);Stacker et al., Faseb J 16, 922-934 (2002))。また、VEGF−C発現は多くのヒトの癌についての腫瘍関連リンパ管形成及びリンパ節転移と相関していた(上掲のAchen et al., 2006に概説される)。加えて、VEGF−Cが媒介するシグナル伝達の遮断は、マウスにおける腫瘍リンパ管形成とリンパ節転移を抑制することが示されている(Chen et al., Cancer Res 65, 9004-9011 (2005);He et al., J. Natl Cancer Inst 94, 8190825 (2002);Krishnan et al., Cancer Res 63, 713-722 (2003);Lin et al., Cancer Res 65, 6901-6909 (2005))。
【0061】
「VEGF−C」なる用語は、完全長ポリペプチド及び/又は完全長ポリペプチドの活性断片を指す。一実施態様では、活性断片には、米国特許第6451764号の配列番号:3に示す完全長アミノ酸配列の全419アミノ酸より少ない完全長アミノ酸配列の何れかの部分が含まれる。この開示内容の全体は出典明記によって明示的にここに援用される。このような活性断片には、VEGF−C生物学的活性が含まれ、限定するものではないが、成熟したVEGF−Cが含まれる。一実施態様では、完全長VEGF−Cポリペプチドは、蛋白質加水分解処理されて、成熟VEGF−Cとも称されるVEGF−Cポリペプチドの成熟形態を生産する。このような処理(プロセシング)には、シグナルペプチドの切断及びアミノ末端ペプチドの切断およびカルボキシル末端ペプチドの切断が含まれ、十分にプロセシングされた成熟形態を生産する。実験的所見は、完全長VEGF−C、VEGF−Cの部分的プロセシング型及びVEGF−Cの完全プロセシング成熟型はVEGFR3(Flt−4レセプター)を結合することができる。しかしながら、VEGFR2への高い結合親和性はVEGF−Cの完全プロセシング成熟型にしか生じない。
「VEGF−Cアンタゴニスト」なる用語は、血管形成、リンパの内皮細胞(EC)移動、増殖又は成体リンパ管形成、特に腫瘍性リンパ管形成及び腫瘍転移を調整するVEGF−Cの能力を中和、遮断、阻害、無効化、低減又は干渉することができる分子を指すために本明細書中で用いられる。VEGF−Cアンタゴニストには、抗VEGF−C抗体およびその抗原結合性断片、VEGF−Cに特異的に結合しそれによって一又は複数のレセプターへの結合を隔離するレセプター分子及びその誘導体、抗VEGF−Cレセプター抗体、及びVEGFR2及びVEGFR3の小分子インヒビターといったVEGF−Cレセプターアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されるものではない。抗VEGF−C抗体は、例えば代理人整理番号PR4291に記載されており、この特許出願の内容の全体は出典明記によってここに明示的に援用される。本明細書中の「VEGF−Cアンタゴニスト」なる用語には、具体的に、VEGF−Cに結合し、VEGF−Cの活性を中和、遮断、阻害、無効化、低減又は干渉することができる、抗体、抗体断片、他の結合ポリペプチド、ペプチド及び非ペプチド小分子を含む分子が含まれる。ゆえに、「VEGF−C活性」なる用語には特に、VEGF−CのVEGF−Cが媒介する生物学的活性(先に定義する)が含まれる。
【0062】
VEGFファミリのメンバーであるVEGF−Dは、VEGFレセプターVEGFR2(KDRレセプター)およびVEGFR3(Flt-4レセプター)によって認識される(Marconcini et al. PNAS 96, 9671-9676 (1999);Baldwin et al. J Biol Chem 276, 19166-19171 (2001)を参照)。VEGF−Dは、VEGF-ファミリのVEGF−Cに最も密接に関連がある。VEGF−Dは初め、N及びC末端のプロペプチドを含む前駆体タンパク質として合成される。N及びC末端プロペプチドは、タンパク質加水分解的に切断されて、成熟したVEGF−Dを生成する(Stacker et al. J Biol Chem 274, 32127-32136 (1999))。
「VEGF−D」なる用語は、完全長ポリペプチド及び/又は完全長ポリペプチドの活性断片を指す。一実施態様では、活性断片には、米国特許第6828426号の配列番号:1に示す完全長アミノ酸配列の全354アミノ酸より少ない完全長アミノ酸配列の何れかの部分が含まれる。この開示内容の全体は出典明記によって明示的にここに援用される。このような活性断片には、VEGF−D生物学的活性が含まれ、限定するものではないが、成熟したVEGF−Dが含まれる。一実施態様では、完全長VEGF−Dポリペプチドは、蛋白質加水分解処理されて、成熟VEGF−Dとも称されるVEGF−Dポリペプチドの成熟形態を生産する。
VEGF−Dに関する他の開示内容は、例えばAchen et al. PNAS 95, 548-553 (1998)、米国特許公開番号2005/0112665、米国特許第6235713号、及び米国特許第6689580号に記載されており、これらの開示内容の全体は出典明記によってここに明示的に援用される。
【0063】
VEGFR3は内皮特異的レセプターチロシンキナーゼであり、血管内皮増殖因子ファミリのメンバーによって制御される。VEGF−CおよびVEGF−Dは何れもVEGFR3のリガンドである。(Marconcini et al. PNAS 96, 9671-9676 (1999);Baldwin et al. J Biol Chem 276, 19166-19171 (2001);Stacker et al. J Biol Chem 274, 32127-32136 (1999);Achen et al. PNAS 95, 548-553 (1998)を参照)。
「VEGFR3」又は「Flt4」なる用語は、完全長ポリペプチド及び/又は完全長ポリペプチドの断片を指す。一実施態様では、断片には、米国特許第6824777号の配列番号:2に示す完全長アミノ酸配列の1298アミノ酸より少ない完全長アミノ酸配列の何れかの部分が含まれる。この開示内容の全体は出典明記によって明示的にここに援用される。一実施態様では、断片には、米国特許第6824777号の配列番号:4に示す完全長アミノ酸配列の1363アミノ酸より少ない完全長アミノ酸配列の何れかの部分が含まれる。
VEGFR3に関する他の開示内容は、例えば米国特許第6824777号及び米国特許第7034105号に記載されており、これらの開示内容の全体は出典明記によってここに明示的に援用される。
【0064】
「FGF2」、「FGF-β」又は「塩基性線維芽細胞増殖因子」としても知られる「bFGF」なる用語は、線維芽細胞増殖因子ファミリのメンバーである。bFGFは、平滑筋細胞、神経芽細胞および内皮細胞を含む中胚葉起源のすべての細胞の増殖を刺激する。bFGFは、ニューロンの分化、生存および再生を刺激する。インビトロ機能は、bFGFが脈管形成、創傷治癒および組織修復およびインビボの神経系機能を調整することを示唆する。ヘパリン-結合増殖因子であるbFGFは、心筋および肢乏血のモデルにおいて機能的に有意な脈管形成を誘導することが可能である。Zheng, et al., Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol., 280: H909-17 (2001)、Laham, et al., J. Am. Coll. Cardiol., 36: 2132-39 (2000)、Laham, et al., Curr. Interv. Cardiol. Rep., 1: 228 (1999)、Unger, et al., Am. J. Cardiol., 85: 1414-19 (2000)、Kawasuji, et al., Ann. Thorac. Surg., 69: 1155 (2000)、Rajanayagam, et al., J. Am. Coll. Cardiol., 35: 519 (2000)、Kornowski, et al., Circulation, 101: 545-48 (2000)、Ohara, et al., Gene Ther., 8: 837 (2001)、Lazarous, et al., J. Am. Coll. Cardiol., 36: 1239 (2000)、Rakue, et al., Japan Circ. J., 62: 933-39 (1998)、Baffour, et al., J. Vasc. Surg., 16: 181 (1992)。
【0065】
ここで使用される「治療」(及び「治療する」又は「治療している」などの変形)とは、治療される個体又は細胞の自然の経過を変化させる試みにおける臨床的介入を意味し、予防のため、又は臨床病理経過中に実施することができる。治療の所望する効果には、疾患の発症又は再発の予防、症状の緩和、疾病の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、疾病の進行速度の低減、病状の回復又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。ある実施態様では、本発明の方法及び組成物は、疾患又は疾病の発達を遅らせるか、又は疾患又は疾病の進行を緩徐化するために用いられる。
【0066】
「有効量」とは、所望される治療的又は予防的結果を達成するのに必要な期間、必要な用量での有効量を意味する。
個体に所望する反応を引き出すための本発明の物質/分子の「治療的有効量」は、病状、年齢、性別、個体の体重、及び物質/分子の能力等の要因に応じて変わり得る。また、治療的有効量とは、物質/分子の任意の毒性又は有害な影響を、治療的に有益な効果が上回る量を含む。
「予防的有効量」は、所望する予防的結果を達成するのに必要な期間、用量で有効な量を意味する。必ずではないが、典型的には、予防的用量は、疾病の前又は初期の段階に患者に使用されるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ない。
前癌性、良性、初期又は後期の腫瘍の場合、血管形成インヒビターの治療上の有効量は、癌細胞の数を減少;原発性腫瘍サイズを低減;周辺臓器への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度の遅延及び好ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の遅延及び好ましくは停止);ある程度の腫瘍成長又は腫瘍進行の阻害又は遅延;及び/又は癌が関与する一又は複数の症状のある程度の軽減をしうる。薬剤が増殖を予防しうる、及び/又は既存の癌細胞を殺しうる限り、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性であってよい。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、例えば生存期間、病状の進行時間(TTP)、応答速度(RR)、応答期間、及び/又は生活の質の測定により測定される。
【0067】
「低減するか又は阻害する」とは、対照と比較して活性、機能および/または量を減少させる又は低減させることである。ある実施態様では、「低減するか又は阻害する」とは、20%以上の全体の減少を引き起こす能力を意味する。他の実施態様では、「低減するか又は阻害する」とは、50%以上の全体の減少を引き起こす能力を意味する。さらに他の実施態様では、「低減するか又は阻害する」とは、75%、85%、90%、95%又はそれ以上の全体の減少を引き起こす能力を意味する。低減又は阻害とは、治療される疾患の症状、転移の存在又はサイズ、原発性腫瘍のサイズ、又は血管形成性疾患の血管のサイズ又は数と指しうる。
【0068】
「疾患」は治療から利益を得る任意の状態である。例えば、哺乳動物は、異常な脈管形成(過剰、不適当又は制御できない脈管形成)又は血管透過に苦しんでいるか、又はこれらに対して予防を必要とする。これには、哺乳動物に問題の疾患に罹りやすくする病的状態を含む慢性及び急性の疾病又は疾患が含まれる。本明細書中の治療される疾病の例として、悪性及び良性の腫瘍;非白血病及びリンパ系の悪性腫瘍;及び、特に、腫瘍(癌)転移が含まれる。
「細胞増殖性疾患」および「増殖性疾患」なる用語は、ある程度の異常な細胞増殖と関係している疾患を指す。一実施態様では、細胞増殖性疾患は癌である。
本明細書中の「腫瘍」とは、悪性か良性かにかかわらず、すべての腫瘍性細胞成長及び増殖と、すべての前癌性及び癌性細胞及び組織を指す。「癌」、「癌性」「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」なる用語は、本明細書に参照されるように相互に限定的なものでない。
【0069】
「癌」及び「癌性」なる用語は、一般的に調節不可能な細胞成長に特徴がある哺乳動物の生理学的状態を指すか又は表す。癌の例には、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ系悪性腫瘍が含まれるが、これに限定されるものではない。このような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌(例えば上皮性扁平細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は腹部(stomach)癌(消化器癌及び胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、肝癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門部の癌腫、陰茎癌腫、メラノーマ、表在性伸展メラノーマ、黒色癌前駆症メラノーマ、末端性黒子性黒色腫、結節性メラノーマ、多発性骨髄腫
及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに、母斑症と関係する異常な血管性増殖、浮腫(脳腫瘍と関係するものなど)、メイグス症候群、脳、並びに頭頸部癌および関連する転移が含まれる。ある実施態様では、本発明の抗体による治療に影響を受けやすい癌には、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、膠芽細胞種、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎臓細胞癌、前立腺癌、肝癌、膵癌、柔組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、頭頸部癌、卵巣癌、中皮腫および多発性骨髄腫が含まれる。いくつかの実施態様では、癌は、小細胞肺癌、膠芽細胞種、神経芽細胞腫、メラノーマ、乳癌、胃癌、結腸直腸癌(CRC)および肝細胞癌からなる群から選択される。さらに、いくつかの実施態様では、癌は、それらの癌の転移型を含む、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、腎臓癌、神経膠芽腫および乳癌からなる群から選択される。
【0070】
「耐性腫瘍」なる用語は、少なくともVEGFアンタゴニストを含む癌治療に対して癌治療の間を通して十分に反応しない、又は反応がない、ないしは反応の減少を示す癌、癌細胞又は腫瘍を指す。ある実施態様では、耐性腫瘍は、抗VEGF抗体療法に抵抗性がある腫瘍である。一実施態様では、抗VEGF抗体はベバシズマブである。ある実施態様では、耐性腫瘍は、少なくともVEGFアンタゴニストを含む癌治療法に反応しそうにない腫瘍である。ある実施態様では、癌療法に対する反応性は、本明細書で定義するように癌療法に対する患者の反応性である。
「不応性(難治性)」とは、治療に対する疾患又は症状の抵抗性又は非応答性を指す(例えば、腫瘍性プラズマ細胞の数が治療が施された場合でも増加する)。特に示さない限り、「不応性」なる用語は、VEGFアンタゴニスト及び化学療法治療を含むがこれに限定しない既存の治療の何れかに対する抵抗性又は非応答性を指す。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。
「再発性」なる用語は、以前の罹患状態への患者の病気の逆戻り、特に明らかな回復又は部分的な回復後の症状の復活を指す。特に示さない限り、再発状態は、VEGFアンタゴニスト及び化学療法治療を含むがこれに限定しない既存の治療前の病気への逆戻り又は逆戻りの過程を指す。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体である。
【0071】
「抗癌療法」又は「癌治療」なる用語は、癌を治療する際に有用な療法を指す。抗癌治療薬の例には、限定するものではないが、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞障害剤、放射線療法に用いる薬剤、抗血管形成剤、アポトーシス剤、抗チューブリン薬剤、および癌を治療するための他の薬剤、例として、抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮性増殖因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼインヒビター)、HER1/EGFRインヒビター(例えばエルロチニブ(TarcevaTM)、血小板由来増殖因子インヒビター(例えばGleevecTM(メシル酸イマチニブ))、COX-2インヒビター(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGFレセプター(一又は複数)、TRAIL/Apo2の一又は複数に結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)、および他の生理活性かつ有機化学的薬剤などが含まれる。また、その組合せが本発明に包含される。
【0072】
「血管形成因子又は薬剤」は、血管の発達を刺激するのに伴う、例えば脈管形成、血管内皮細胞増殖、血管の安定性および/または脈管形成などを促進する増殖因子又はそのレセプターである。例えば、血管形成因子には、例えば、VEGFおよびVEGFファミリのメンバー及びそのレセプター(VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGFR1、VEGFR2及びVEGFR3)、PlGF、PDGFファミリ、線維芽細胞増殖因子ファミリ(FGF)、TIEリガンド(アンギオポイエチン、ANGPT1、ANGPT2)、TIE1、TIE2、エフリン、Bv8、デルタ様リガンド4 (DLL4)、EGF様ドメイン、マルチプル7 (EGFL7)、Del-1、線維芽細胞増殖因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、FGF4、FGF9、BMP9、BMP10、ホリスタチン、顆粒性コロニー刺激因子(G−CSF)、GM−CSF、肝細胞増殖因子(HGF)/スキャッター因子(SF)、インターロイキン-8(IL-8)、CXCL12、レプチン、ミドカイン、ニューロフィリン、NRP1、NRP2、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、血小板由来増殖因子、特にPDGF−BB、PDGFR−α又はPDGFR−β、プレイオトロフィン(PTN)、Progranulin、Proliferin、形質転換増殖因子-α(TGF-α)、形質転換増殖因子-β(TGF-β)、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、Alk1、CXCR4、Notch1、Notch4、Sema3A、Sema3C、Sema3F、Robo4、ESM1、パールカンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、成長ホルモン、インスリン様増殖因子-I(IGF−I)、VIGF、上皮細胞増殖因子(EGF)、CTGF及びそのファミリのメンバー、およびTGF−αおよびTGF−βなどの、創傷治癒を促進する因子を含むであろう。例として、Klagsbrun and D'Amore (1991) Annu. Rev. Physiol. 53:217-39;Streit and Detmar (2003) Oncogene 22:3172-3179;Ferrara & Alitalo (1999) Nature Medicine 5(12): 1359-1364;Tonini et al. (2003) Oncogene 22:6549-6556(例えば、公知の血管形成因子の一覧を示す表1);及びSato (2003) Int. J. Clin. Oncol. 8:200-206を参照。
【0073】
「抗血管形成剤」又は「血管形成(血管新生)インヒビター」は、直接的又は間接的に、血管新生、脈管形成又は望ましくない血管透過を阻害する、小分子量の物質、ポリヌクレオチド(例えば阻害RNA(RNAi又はsiRNA)を含む)、ポリペプチド、単離したタンパク質、組換えタンパク質、抗体、又はそれらのコンジュゲート又は融合タンパク質を意味する。抗血管形成剤には、結合して血管形成因子又はそのレセプターの血管形成活性を遮断する薬剤が含まれることは理解されるであろう。例えば、抗血管形成剤は、上記に定義したように血管形成剤に対する抗体又は他のアンタゴニスト、例えば、VEGF−A又はVEGF−Aレセプター(例えばKDRレセプター又はFlt−1レセプター)に対する抗体、VEGF−Cに対する抗体、抗PDGFRインヒビター、VEGFレセプターシグナル伝達を遮断する小分子(例えば、PTK787/ZK2284、SU6668、SUTENT(登録商標)/SU11248(sunitinib malate)、AMG706、又は例えば国際公開2004/113304に記載されるもの)である。また、抗血管形成剤には、天然の血管形成インヒビター、例えばアンジオスタチン、エンドスタチンなどが含まれる。例えば、Klagsbrun and D'Amore (1991) Annu. Rev. Physiol. 53:217-39;Streit and Detmar (2003) Oncogene 22:3172-3179(例えば、悪性メラノーマにおける抗血管形成療法の一覧を示す表3);Ferrara & Alitalo (1999) Nature Medicine 5(12): 1359-1364;Tonini et al. (2003) Oncogene 22:6549-6556(例えば、公知の抗血管形成因子の一覧を示す表2);及び、Sato (2003) Int. J. Clin. Oncol. 8:200-206(例えば、臨床試験において使用される抗血管形成剤の一覧を示す表1)を参照のこと。血管形成インヒビターの更なる例及び非限定的な一覧は本明細書中の「血管形成インヒビター」の項に示す。
「抗血管形成療法」なる用語は、抗血管形成剤の投与を含む血管形成を阻害するために有用な治療を指す。
【0074】
ここで用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞死又は破壊を生ずる物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位元素)、化学治療薬、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そして下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むように意図されている。他の細胞毒性剤を以下に記載する。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「毒素」は、細胞の成長又は増殖に対して有害な影響を有する任意の物質である。
【0075】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標登録))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビロール、MARINOL(登録商標));β−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン、及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばNicolaou et al., Angew. Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)参照);CDP323、経口α-4インテグリンインヒビター;ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D−99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン及び5-フルオロウラシル(5-FU);コンブレタスタチン;葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELIDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANETM)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhome-Poulene Rorer, Antony, France);クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ薬剤、例えばシスプラチン、オキサリプラチン(例えばELOXATIN(登録商標))及びカルボプラチン;チューブリン重合が微小管を形成するのを妨げるビンカ、例えばビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))およびビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド、例えばベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(DIDROCAL(登録商標))、NE−58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC−α、Raf、H−Rasおよび上皮増殖因子レセプター(EGF-R)(例えばエルロチニブ(TarcevaTM));及び細胞増殖を低減するVEGF−A;ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1インヒビター(例えばLURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えばABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリホシン、COX-2インヒビター(例えばセレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオゾームインヒビター(例えばPS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;ティピファニブ(R11577);オラフェニブ(orafenib)、ABT510;BCL-2インヒビター、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;EGFRインヒビター;チロシンキナーゼインヒビター;セリン-スレオニンキナーゼインヒビター、例えばラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、例えばロナファーニブ(SCH6636、SARASARTM);及び上述したものの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体、並びに、上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略称)、及びFOLFOX(5−FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いる治療計画の略称)、及び上記何れかの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体類;並びに上記の2以上の組合せが含まれる。
【0076】
本明細書中に定義される化学療法剤には、癌の成長を促しうるホルモンの作用を調節、低減、遮断又は阻害するように働く、「抗ホルモン剤」又は「内分泌治療剤」が含まれる。それらはそれ自体がホルモンであってよく、限定するものではないが、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)を含み、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTON(登録商標)トレミフェン;副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に接着細胞の増殖に結びつくシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Raf、及びH-Ras;リボザイム、例えばVEGF発現インヒビター(例えばANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現インヒビター;遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)及びVAXID(登録商標)などのワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラミシン(米国特許第4675187号参照)、及び上記何れかの薬学的に許容可能な塩類、酸類及び誘導体類;並びに上記の2以上の組合せを含む。
【0077】
ここで用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞の増殖をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。一実施態様では、増殖阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現している細胞の増殖を予防するかまたは低減する増殖阻害抗体である。他の実施態様では、増殖阻害剤は、S期で細胞の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami et al., (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、例えば13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル-マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にする。
【0078】
「放射線療法」とは、正常に機能する能力を制限するため又は完全に細胞を破壊するために、細胞に十分な損傷を誘導する有向性のγ線又はβ線の使用を意味する。治療の用量および治継続期間を決定するためには公知の多くの方法があることは明らかであろう。典型的な治療は、1回の投与として、1日当たり10〜200単位(グレイ)の典型的な用量として施される。
「製薬的製剤」なる用語は、活性な成分の生物学的活性が有効であるような形態にあり、製剤が投与される被検体に受け入れられない程の毒性ある他の成分を含んでいない調製物を指す。このような製剤は無菌であってよい。
「無菌の」製剤は、無菌であるか、生きている微生物およびそれらの胞子をまったく含まない。
【0079】
一又は複数の更なる治療薬「と組み合わせて(と併用して)」の投与は、同時(一時)及び任意の順序での連続投与を含む。
「同時に」又は「共に」なる用語は、投与の時間の少なくとも一部がオーバーラップしている、2以上の治療薬の投与を指すために本明細書中で用いられる。
したがって、同時投与には、一又は複数の薬剤の投与が一又は複数の他の薬剤の投与をやめた後に続く場合の投薬計画が包含される。
「慢性」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するようにするために、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤の投与を指す。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処置である。
【0080】
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)を含む。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬剤の運搬に有用である様々な種類の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤から成る小さいベシクル(小胞)である。リポソームの構成成分は一般に二重層で配置され、これは生物学的膜の脂質配置と類似している。
【0081】
「診断」なる用語は、癌の同定といった分子又は病的状態、疾患又は状態の同定を指すため、又は特定の治療投薬計画から利益を得うる癌患者の同定を指すためにここで用いられる。
「予後」なる用語は、抗癌療法から臨床上の利益の可能性の予測を指すためにここで用いられる。
「予測」なる用語は、患者が特定の抗癌治療に対して有利又は不利に応答する可能性を指すためにここで用いられる。一実施態様では、予測はそれらの応答の程度に関する。一実施態様では、予測は、例えば特定の治療的薬剤による治療、及び疾患の再発を伴わない一定期間の治療の後に患者が生存しているか改善しているかどうか、及び/又はその可能性に関する。本発明の予測方法は、任意の特定の患者のために最も好適な治療様式を選択することによって、治療決定を臨床的に行うことができる。本発明の予測方法は、患者が、治療投薬計画、例えば特定の治療剤や組み合わせの投与、外科的介入、ステロイド治療などを含む特定の治療投薬計画に有利に応答するかどうか、又は治療投薬計画の後に患者が長期に生存しているかどうかを予測する際の有用なツールである。
患者の応答性は患者への利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価されてよく、限定するものではないが、(1)緩徐化及び完全な停止を含む、疾患進行のある程度の阻害、(2)病変サイズの減少、(3)隣接する周辺臓器及び/又は組織への疾患細胞の浸潤の阻害(すなわち、緩徐化又は完全な停止)、(4)疾患播種の阻害(すなわち、緩徐化又は完全な停止)、(5)疾患と関連する一又は複数の症状のある程度の軽減、(6)治療後の無疾患状態の期間の増加、及び(7)治療後のある時点での死亡率の減少が含まれる。
【0082】
「利益」なる用語は広義の意味で用いられ、何れかの所望の効果を指し、特に本明細中で定義する臨床上の利益を包含する。
臨床上の利益は、例えば、緩徐化及び完全な停止を含む疾患進行のある程度の阻害、疾患出現及び/又は症状の数の減少、病変サイズの減少、隣接する周辺臓器及び/又は組織への疾患細胞の浸潤の阻害(すなわち、緩徐化又は完全な停止)、疾患播種の阻害(すなわち、緩徐化又は完全な停止)、必ずしもそうではないが、疾患病変の退縮又は除去となりうる自己免疫応答の減少、疾患と関連する一又は複数の症状のある程度の軽減、治療後の無疾患状態の期間、例えば無進行生存期間の増加、全生存率の増加、応答率の向上、及び/又は、治療後のある時点での死亡率の減少といった、様々なエンドポイントを評価することによって測定されうる。
【0083】
血管形成インヒビター
抗血管形成剤には、限定するものではないが、以下の薬剤が含まれる。VEGF特異的アンタゴニストといったVEGFインヒビター、VEGF-C特異的アンタゴニストといったVEGF-Cインヒビター、EGFインヒビター、EGFRインヒビター、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ、ImClone Systems, Inc., Branchburg, N.J.)、Vectibix(登録商標)(パニツムマブ、Amgen, Thousand Oaks, CA)、TIE2インヒビター、IGF1Rインヒビター、COX-II(シクロオキシゲナーゼII)インヒビター、MMP-2(マトリックス-メタロプロテイナーゼ2)インヒビター、及び、MMP-9(マトリックス-メタロプロテイナーゼ9)インヒビター、CP−547632(Pfizer Inc., NY, USA)、アキシチニブ(Pfizer Inc.;AG−013736)、ZD-6474(AstraZeneca)、AEE788(Novartis)、AZD-2171)、VEGF Trap(Regeneron/Aventis)、バタラニブ(PTK−787としても知られる、ZK-222584:Novartis & Schering A G)、Macugen(ペガプタニブオクタソディウム、NX-1838、EYE-001、Pfizer Inc./Gilead/Eyetech)、IM862(Cytran Inc. of Kirkland, Wash., USA);及び、リボザイム(Boulder, Colo.)およびカイロン(Emeryville, Calif.)からの合成リボザイムであるアンギオザイム、およびこれらの組合せ。他の血管形成インヒビターには、トロンボスポンジン1、トロンボスポンジン2、コラーゲンIVおよびコラーゲンXVIIIが含まれる。VEGFインヒビターは、米国特許第6534524号および同第6235764号に開示されており、これは何れもあらゆる目的のために全体が援用される。
【0084】
VEGF特異的アンタゴニストは、VEGFへ結合する、VEGF発現レベルを低減する、又は、一又は複数のVEGFレセプターへのVEGFの結合やVEGFが媒介する血管形成及び内皮細胞の生存又は増殖を含む、VEGF生物学的活性を中和、遮断、阻害、無効化、低減又は干渉することができる分子を指す。本発明の方法において有用なVEGF特異的アンタゴニストとして含まれるものは、VEGFに特異的に結合するポリペプチド、抗VEGF抗体およびその抗原結合断片、VEGFに特異的に結合して一又は複数のレセプターへの結合を隔離するレセプター分子及び誘導体、融合タンパク質(例えばVEGF-Trap(Regeneron))およびVEGF121-ゲロニン(Peregrine)がある。また、VEGF特異的アンタゴニストには、VEGFポリペプチドのアンタゴニスト変異体、VEGFに対するアンチセンスヌクレオベースオリゴマー、VEGFに対する小RNA分子、VEGFに対するRNAアプタマー、ペプチド及びリボザイムが含まれる。
【0085】
2つの最も良好に特徴付けられたVEGFレセプターは、VEGFR1(別名Flt−1)およびVEGFR2(別名マウスホモログのKDRおよびFLK−1)である。各々のVEGFファミリメンバーの各々のレセプターの特異性は変化するが、VEGF−AはFlt−1およびKDRに結合する。完全長Flt−1レセプターは、7つのIgドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼ活性を有する細胞内ドメインを有する細胞外ドメインを含む。細胞外ドメインはVEGFの結合に関与しており、細胞内ドメインはシグナル伝達に関与している。
VEGFに特異的に結合するVEGFレセプター分子又はその断片は、VEGFタンパク質に結合して補足し、それによってシグナル伝達を妨げるVEGFインヒビターとして用いられうる。ある実施態様では、VEGFレセプター分子又はそのVEGF結合断片は、可溶型、例えばsFlt−1である。レセプターの可溶型は、VEGFに結合して標的細胞の表面上に存在する天然のレセプターへのその結合を妨げることによって、VEGFタンパク質の生物活性に対して阻害作用を及ぼす。また、VEGFレセプター融合タンパク質も包含され、その例を後述する。
【0086】
キメラVEGFレセプタータンパク質は、少なくとも2つの異なるタンパク質由来のアミノ酸配列を有するレセプター分子であり、そのうちの少なくとも1はVEGFレセプタータンパク質(例えばflt−1又はKDRレセプター)であり、VEGFに結合してVEGFの生物活性を阻害することができる。ある実施態様では、本発明のキメラVEGFレセプタータンパク質は、2つの異なるVEGFレセプター分子だけから得られるアミノ酸配列からなるが、flt−1および/又はKDRレセプターの細胞外リガンド結合領域の1、2、3、4、5、6又は7つすべてのIg様ドメインを含むアミノ酸配列は、他の無関係なタンパク質、例えば免疫グロブリン配列のアミノ酸配列に連結されうる。Ig様ドメインが結合される他のアミノ酸配列は、当業者に容易に明らかであろう。キメラVEGFレセプタータンパク質の例には、限定するものではないが、可溶性Flt−1/Fc、KDR/Fc又はFLt−1/KDR/Fc(別名VEGF Trap)が含まれる。(例としてPCT出願公開番号WO97/44453を参照のこと)。
本発明の可溶性VEGFレセプタータンパク質又はキメラVEGFレセプタータンパク質には、膜貫通ドメインを介して細胞の表面に固定されていないVEGFレセプタータンパク質が含まれる。また、キメラレセプタータンパク質を含むVEGFレセプター可溶型は、VEGFに結合してVEGFを不活性化することができるが、膜貫通領域を含んでおらず、したがって一般に、この分子が発現される細胞の細胞膜に結合したものとならない。
他のVEGFインヒビターは、例えば国際公開99/24440、PCT国際出願PCT/IB99/00797、国際公開95/21613、国際公開99/61422、米国特許第6534524号、米国特許第5834504号、国際公開98/50356、米国特許第5883113号、米国特許第5886020号、米国特許第5792783号、米国特許第6653308号、国際公開99/10349、国際公開97/32856、国際公開97/22596、国際公開98/54093、国際公開98/02438、国際公開99/16755、及び国際公開98/02437に記載されており、これらすべては出典明記によってその全体がここに援用される。
【0087】
本発明の方法
本発明は、癌治療のためのVEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得うる患者の同定と相関する特定の遺伝子又はバイオマーカーの同定に部分的に基づく。。よって、開示した方法により、癌患者を治療するための適切又は有効な治療法を評価する際に有用なデータ及び情報を得るために、簡便で、効率よく、費用対効果がよいかもしれない方法が提供される。例えば、癌患者は、組織又は細胞の試料を得るために生検が行われていてよく、試料は、試料中のある遺伝子、例えばVEGF−CとVEGF−Aとの発現レベルの比率が対照試料中の該遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率と比較して変化しているか否かを決定するために、様々なインビトロアッセイによって試験されてよい。比率の変化、例えば増加が検出される場合、患者は多分VEGFアンタゴニストと抗癌療法から利益を得るだろう。
ある実施態様では、遺伝子の発現レベル/量は、限定するものではないが、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片及び/又は遺伝子コピー数を含む当分野で公知の何れかの適切な基準に基づいて決定されてよい。
【0088】
ある実施態様では、試料中の様々な遺伝子の発現は、当分野で公知であり当業者に理解される多くの方法によって分析することができ、その方法には、免疫組織化学及び/又はウェスタンブロット分析、免疫沈降法、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光標識細胞分取(FACS)など、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)(例えば、タンパク質発現のレベルを調べるためのもの)、生化学酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、mRNAのノーザン分析及び/又はPCR分析、並びに遺伝子及び/又は組織アレイ分析によって行われうる多種多様なアッセイの何れか一つが含まれるが、これらに限定するものではない。遺伝子の状態及び遺伝子産物を評価するための典型的なプロトコールは、例えばAusubel 等 編集, 1995, Current Protocols In Molecular Biology中のユニット2(ノーザンブロッティング)、4(サザンブロッティング)、15(イムノブロッティング)及び18(PCR分析)にみられる。Rules Based Medicine又はMeso Scale Discovery (MSD)から入手可能なものなどの多重免疫アッセイも使用されてよい。
【0089】
ある実施態様では、試料中の遺伝子の発現レベル/量が対照試料中の遺伝子の発現レベル/量より大きい場合、試料中の遺伝子の発現/量は対照試料中の発現/量と比較して、増加している。同様に、試料中の遺伝子の発現レベル/量が対照試料中の遺伝子の発現レベル/量より小さい場合、試料中の遺伝子の発現/量は対照試料中の発現/量と比較して、減少している。
ある実施態様では、試料中の遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率の変化は、対照試料中の同じ比率と比較して増加している。ある実施態様では、遺伝子の発現レベルの増加がVEGF−Aの発現レベルの増加より大きい場合、試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率が、対照試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率と比較して増加している。ある実施態様では、遺伝子の発現レベルに増加があり、VEGF−Aの発現レベルに増加がない場合、試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率が、対照試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率と比較して増加している。ある実施態様では、遺伝子の発現レベルに減少がなく、VEGF−Aの発現レベルに減少がある場合、試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率が、対照試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率と比較して増加している。一実施態様では、試料中のVEGF−CとVEGF−Aとの発現レベルの比率(例えばVEGF−C/VEGF−A)は、対照試料中のVEGF−CとVEGF−Aとの発現レベルの比率と比較して、増加している。
【0090】
ある実施態様では、対照試料中の遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較したときの試料中の同比率の変化は、減少である。ある実施態様では、遺伝子の発現レベルの減少がVEGF−Aの発現レベルの減少よりも大きい場合、試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率は対照試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率と比較して減少している。ある実施態様では、遺伝子の発現レベルに増加がなく、VEGF−Aの発現レベルに増加がある場合、試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率は対照試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率と比較して減少している。ある実施態様では、遺伝子の発現レベルに減少があり、VEGF−Aの発現レベルに減少がない場合、試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率は対照試料中の遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率と比較して減少している。
ある実施態様では、試料は、アッセイするRNA又はタンパク質の量の相違および使用するRNA又はタンパク質試料の品質の多様性、及びアッセイの実行間の多様性について標準化している。このような標準化は、ACTBといった周知のハウスキーピング遺伝子を含むある標準化遺伝子の発現を測定及び取り入れることによって達成してよい。一又は複数のハウスキーピング遺伝子を用いて試料を標準化することができる。あるいは、標準化は、分析する遺伝子又はその多くのサブセットのすべての平均又は中央値シグナルに基づいてよい。遺伝子ごとのバイアスについて、患者腫瘍mRNA又はタンパク質の測定して標準化した量を対照セットに見られる量と比較する。患者及び試験した腫瘍当たりの各mRNA又はタンパク質についての標準化した発現レベルは、対照セットにおいて測定した発現レベルの割合として表す。分析される特定の患者試料において測定した発現レベルは、この範囲内で百分率で低下し、それは公知の方法で測定できるであろう。
【0091】
ある実施態様では、遺伝子の相対的な発現レベルは、ある1つのハウスキーピング遺伝子を使用して以下のように決定される。
相対的な発現遺伝子1試料1=2exp(Ctハウスキーピング遺伝子−Ct遺伝子1)、Ctは試料1において決定される。
相対的な発現遺伝子1対照RNA=2exp(Ctハウスキーピング遺伝子−Ct遺伝子1)、Ctは対照RNAにおいて決定される。
標準化した相対的発現遺伝子1試料1=(相対的発現遺伝子1試料1/相対的発現遺伝子1対照RNA)×100
ある実施態様では、遺伝子の相対的な発現レベルは、2つのハウスキーピング遺伝子を使用して以下のように決定される。
相対的な発現遺伝子1試料1=2exp[(Ctハウスキーピング遺伝子1+Ctハウスキーピング遺伝子2)/2−Ct遺伝子1]、Ctは試料1において決定される。
相対的な発現遺伝子1対照RNA=2exp[(Ctハウスキーピング遺伝子1+Ctハウスキーピング遺伝子2)/2−Ct遺伝子1]、Ctは対照RNAにおいて決定される。
標準化した相対的発現遺伝子1試料1=(相対的発現遺伝子1試料1/相対的発現遺伝子1対照RNA)×100
Ctは閾値サイクルである。Ctは、反応の中で生成される蛍光が閾値線を超えるときのサイクル数である。
【0092】
すべての実験は対照RNAに標準化され、その対照RNAは様々な組織源からのRNAの包括的混合(例えばClontech, Mountain View, CAの対照RNA#636538)である。同一の対照RNAは、各々のqRT-PCR実行に含まれ、異なる実験の実行間の結果の比較を可能とする。
2つの遺伝子間の発現の比率はは以下のように決定される。
標準化した発現遺伝子1試料1/標準化した発現遺伝子2試料1
ある実施態様では、遺伝子1は血管形成因子である。他の実施態様では、血管形成因子は、VEGF−C、VEGF−D、VEGFR3又はbFGFである。一実施態様では、遺伝子2はVEGF−Aである。ある実施態様では、VEGF−C、VEGF−D、VEGFR3および/またはbFGFのmRNA発現は、腫瘍細胞におけるものである。
【0093】
また、本発明は、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して変化していることを決定し、そして、VEGFアンタゴニスト以外の抗癌療法の有効量を該患者に投与することを含み、これによって癌が治療される、患者の癌の治療方法を提供する。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルの変化は増加である。
さらに、本発明は、再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖を治療するか、阻害するか又は予防するための方法を提供する。再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖は、一又は複数の現在利用可能な治療法(例えば、癌治療、例として化学療法、放射線療法、外科治療、ホルモン療法及び/又は生物学的療法/免疫療法、抗血管形成療法、抗VEGF抗体療法、特に特定の癌のための標準的な治療投薬計画)を施されている患者ないしはこれらによって治療された患者が臨床的に治療に不十分であるか、又は患者がこのような治療からもはやいかなる有用な効果を得ておらず更なる有効な治療を求める場合の症状を表すために用いられる。本明細書中で用いるように、この表現も「非応答性/再発性の」患者の症状を指すものであり、例えば、副作用に苦しむ治療に応答する患者、耐性を生じる患者、治療に応答しない患者、治療に満足に応答しない患者などを表す。ある実施態様では、癌は、癌細胞の数が有意に低減しなかった、又は増加した、又は腫瘍の大きさが有意に減少しなかった、又は大きくなった、又は癌細胞のサイズないしは数に何らかの減少が生じなかった、再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖である。癌細胞が再発性腫瘍増殖であるか再発性癌細胞増殖であるかの決定は、文脈上で「再発」又は「難治性」又は「非応答性」の当分野で容認される意味を用いて、癌細胞に対する治療の有効性をアッセイするための当分野で公知の任意の方法によってインビトロないしはインビボでなされうる。ある実施態様では、ここで用いる「耐性腫瘍」は抗VEGF治療に抵抗性のある腫瘍を指す。
【0094】
また、本発明は、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して変化していることを決定し、そして、VEGFアンタゴニスト以外の抗癌療法の有効量を該患者に投与することを含み、これによって細胞増殖性疾患が治療される、患者の細胞増殖性疾患の治療方法を提供する。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルの変化は増加である。
また、本発明は、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して変化していることを決定し、そして、VEGFアンタゴニスト以外の抗癌療法の有効量を該患者に投与することを含む、患者の血管形成の阻害方法を提供する。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルの変化は増加である。
また、本発明は、患者から得た試料における遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率が対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して変化していることを決定し、そして、VEGFアンタゴニスト以外の抗癌療法の有効量を該患者に投与することを含む、患者のリンパ管形成の阻害方法を提供する。ある実施態様では、発現レベルはmRNA発現レベルである。ある実施態様では、発現レベルの変化は増加である。
【0095】
ある実施態様では、抗癌剤又は抗血管形成剤は、癌を治療するため、耐性腫瘍を含む再発性腫瘍増殖又は再発性癌細胞増殖を治療、阻害又は予防するため、細胞増殖性疾患を治療するため、血管形成を阻害するため、又はリンパ管形成を阻害するために、VEGFアンタゴニストと組み合わせて投与される。一実施態様では、VEGFアンタゴニストは、抗VEGF中和抗体又は断片(例えば、ヒト化A4.6.1、AVASTIN(登録商標)(Genentech, South San Francisco, CA)、Y0317、M4、G6、B20、2C3、など)である。例えば米国特許第6582959号、同第6884879号、同第6703020号;国際公開98/45332;国際公開96/30046;国際公開94/10202;欧州特許第0666868号B1;米国特許出願20030206899、同20030190317、同20030203409および同20050112126;Popkov et al., Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004);及び国際公開2005012359を参照のこと。抗癌剤及び抗血管形成剤には、当分野で公知のもの及び本明細書中の定義の項に見られるものが含まれる。一実施態様では、抗癌剤又は抗血管形成剤は、抗VEGF−C抗体である。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストはベバシズマブである。ある実施態様では、VEGFアンタゴニストは、抗癌剤又は抗血管形成剤と同時に投与される。ある実施態様では、ベバシズマブは、抗VEGF−C抗体と同時に投与される。ある実施態様では、ベバシズマブは、再発性か又はVEGFアンタゴニストを含む抗癌療法に抵抗性である患者へ、抗VEGF−C抗体と同時に投与される。ある実施態様では、抗癌剤又は抗血管形成剤は、ラベル又はパッケージ挿入物に示される指示に従って投与される。
【0096】
標的遺伝子又はバイオマーカーを含む試料は、当分野で周知の、目的の癌の種類や位置に適切である方法によって得られうる。定義の項を参照のこと。例えば、癌性病変の試料は、切除術、気管支鏡検査法、細針吸引、気管支のブラッシングによって、又は痰、胸膜液又は血液から得られてよい。遺伝子又は遺伝子産物は、癌又は腫瘍組織から、または、尿、痰、血清又は血漿といった他の身体試料から検出されてよい。癌性試料における標的遺伝子又は遺伝子産物の検出について先に述べたのと同じ技術は、他の身体試料に適用されてよい。癌細胞は、癌病変部からはがれ落ち、前記身体試料に出現しうる。前記の身体試料のスクリーニングによって、これら癌について単一の早期診断法が達成されうる。さらに、治療の経過は、前記の身体試料を標的遺伝子又は遺伝子産物について試験することによって、より容易にモニターされうる。
癌細胞のための組織調製物の濃縮手段は当分野で公知である。例えば、組織は、パラフィン又はクリオスタット切片から単離してよい。また、癌細胞はスローサイトメトリー又はレザーキャプチャ切除法によって正常細胞から分離してよい。これら、並びに正常細胞から癌性細胞を分離するための技術は当分野で周知である。癌組織が正常細胞とひどく混ざり合っている場合、混入及び/又は偽陽性/陰性結果を最小限にするための技術は公知であるが、特徴となる遺伝子又はタンパク質の発現プロファイルの検出はより困難であり、これらのいくつかは本明細書中の以下に記載する。例えば、試料は、対象の癌細胞と関連しているが対応する正常細胞とは関連していない(その逆もそうである)ことがわかっているバイオマーカーの存在について評価してもよい。
ある実施態様では、試料中のタンパク質の発現は、免疫組織化学(「IHC」)及び染色プロトコールを使用して調べられる。組織切片の免疫組織化学的染色は、試料中のタンパク質の存在を評価するか又は検出する確実な方法であることが示されている。免疫組織化学技術は、一般に色素生産性又は蛍光性の方法によってインサイツの細胞抗原をプローブし可視化するために抗体を利用する。
【0097】
前記組織試料は従来の方法によって固定(すなわち保存)されてもよい(例として、“Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology,” 3rd edition (1960) Lee G. Luna, HT (ASCP) Editor, The Blakston Division McGraw-Hill Book Company, New York; The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology (1994) Ulreka V. Mikel, Editor, Armed Forces Institute of Pathology, American Registry of Pathology, Washington, D.C.を参照)。当分野の技術者は、組織学的染色ないしは他の分析に供する試料の目的に応じて固定液を選択することは理解するところであろう。また、当分野の技術者は、組織試料の大きさ及び用いる固定液に応じて固定の長さを決定することも理解するであろう。実施例では、中性緩衝ホルマリン、ブアン固定液又はパラホルムアルデヒドを用いて試料を固定してもよい。
通常、まず試料を固定し、次いで段階的に増加させたアルコールによって、脱水し、パラフィン又は他の切片溶液に浸透させて包埋し、組織試料を切断できるようにする。別法として、組織を切断して、得られた切片を固定してもよい。例として、従来の方法によって、組織試料を包埋して、パラフィンで処理してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。使用されうるパラフィンの例として、Paraplast、Broloid及びTissuemayがあるが、これらに限定するものではない。組織試料を包埋すると、試料をミクロトーム等によって、切断してもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。この手順の例として、切片はおよそ3ミクロンからおよそ5ミクロンの範囲の厚さでよい。切断すると、いくつかの標準的な方法によって、切片をスライドに付着させてもよい。スライド接着剤の例として、シラン、ゼラチン、ポリ‐L‐リジンなどがあるが、これに限定されるものではない。例として、パラフィン包埋切片は、正に荷電したスライド及び/又はポリ‐L‐リジンでコートしたスライドに付着させてもよい。
【0098】
包埋材料としてパラフィンを用いた場合、組織切片は通常、脱パラフィン化して、水に再水和させる。組織切片は、いくつかの従来の標準的な方法によって、脱パラフィン化してもよい。例えば、キシレン及び段階的に減少するアルコールを用いてもよい(例として、上掲の"Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology"を参照)。別法として、Hemo-De7(CMS, Houston, Texas)などの市販の脱パラフィン化非有機薬剤が用いられてもよい。
ある実施態様では、試料の調整の後に、組織切片をIHCを用いて分析してもよい。IHCは、形態学的染色及び/又は蛍光発光インサイツハイブリダイゼーションなどの付加的な技術と組み合わせて行ってもよい。IHCの直接アッセイ及び間接アッセイの2つの一般的な方法が有用である。第一のアッセイでは、標的抗原に対する抗体の結合は、直接的に測定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用を必要とせずに可視化されうる酵素標識一次抗体又は蛍光タグ付加一次抗体などの標識された試薬を用いる。代表的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原と結合し、次いで標識された二次抗体が一次抗体と結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、抗原を視覚化させるために色素生産性基質ないしは蛍光発生基質が加えられる。二次抗体の中には一次抗体上の異なるエピトープと反応するものもあるので、シグナルの増幅が起こる。
【0099】
一般的に、免疫組織化学に使用する一次及び/又は二次抗体は、検出可能な成分にて標識されるであろう。通常、以下の種類に分類できる多くの標識が利用可能である:
(a)ラジオアイソトープ、例えば35S、14C、125I、H及び131I。抗体は例えばImmunology, Volumes 1 and 2, Coligen 等, 編集 Wiley-Interscience, New York, New York, Pubs. (1991)のCurrent Protocolsに記載される技術を用いて放射性同位体にて標識することができ、放射能はシンチレーション計測器を用いて測定することができる。
(b)コロイド金粒子
(c)希有土類キレート(ユウロピウムキレート)、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン又はSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7などの市販の蛍光体及び/又は上記の何れか一ないしは複数の誘導体を含むが、これらに限定されるものではない蛍光標識。蛍光標識は、例えば、上記のImmunologyのCurrent Protocolsに開示される技術を用いて抗体にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
(d)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号にはこの概説がある。一般に、酵素は、様々な技術を用いて測定することができる色素生産性基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光測光法で測定することができる基質の変色を触媒するかもしれない。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変えうる。蛍光の変化を定量化する技術は上記の通りである。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起され、測定することができる(例えば化学発光計測器を用いて)か、又はエネルギーを蛍光アクセプターに与える光を発しうる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタルアジネジオン(dihydrophthalazinediones)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リソチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環のオキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。抗体に酵素をコンジュゲートする技術は、O'Sullivanら., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay, in Methods in Enzym. (ed J. Langone & H. Van Vunakis), Academic press, New York, 73:147-166 (1981)に記載されている。
【0100】
酵素基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:
(i)基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆体(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii)色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
多数の他の酵素基質の組合せは当業者にとって利用可能である。これらの一般的な概要については、米国特許第4275149号及び4318980を参照。標識は、抗体と間接的にコンジュゲートされることがある。これを行うための様々な技術は当分野の技術者に公知である。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した大きな4つの分類のうちの何れかはアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、したがって、標識はこの間接的な方法で抗体にコンジュゲートさせることができる。あるいは、抗体と標識を間接的にコンジュゲートさせるために、抗体は小ハプテンとコンジュゲートさせ、前述した標識の異なるタイプのうちの1つは抗ハプテン抗体とコンジュゲートさせる。したがって、抗体と標識は間接的にコンジュゲートすることができる。
【0101】
上記の試料調製手順以外に、IHC前、IHCの間又はIHC後に組織切片の更なる処置が所望されてもよい。例えば、クエン酸塩バッファ中で組織サンプルを加熱するなどのエピトープ検索方法が実施されてもよい(例として、Leong 等 Appl. Immunohistochem. 4(3): 201 (1996)を参照)。
場合によって行うブロック処置の後に、一次抗体が組織試料中の標的タンパク質抗原と結合するような好適な条件下と十分な時間、組織切片を一次抗体に曝露させる。これを達成するための好適な条件は慣例的な実験によって決定できる。試料に対する抗体の結合の範囲は、上記の検出可能な標識の何れか一つを用いて決定される。ある実施態様では、標識は、3,3'-ジアミノベンジジンクロモゲンなどの色素生産性基質の化学変化を触媒する酵素標識(例えばHRPO)であることが望ましい。一実施態様では、酵素標識は、一次抗体(例えば、一次抗体はウサギポリクローナル抗体であり、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体である)に特異的に結合する抗体にコンジュゲートさせる。
【0102】
したがって、調製される検査材料はマウントしてカバーグラスをかけてもよい。その後、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を行い、当分野で通常用いられる染色強度判定基準を用いてもよい。染色強度判定基準は以下の通りに評価してもよい(図12を参照のこと):
表2

いくつかの実施態様では、およそ1+以上の染色パターンスコアは診断及び/又は予後予測に用いられる。ある実施態様では、IHCアッセイのおよそ2+以上の染色パターンスコアは診断及び/又は予後予測に用いられる。他の実施態様では、およそ3以上の染色パターンスコアは診断及び/又は予後予測に用いられる。一実施態様では、腫瘍又は大腸腺腫からの細胞及び/又は組織がIHCを用いて調べられる場合、染色は一般に、(試料中に存在しうる間質性又は周辺組織とは異なり)腫瘍細胞及び/又は組織において決定又は評価される。
【0103】
別法では、試料を、抗体-バイオマーカー複合体が形成するために十分な条件下で該バイオマーカーに特異的な抗体と接触させ、次いで該複合体を検出してもよい。バイオマーカーの存在は、多くの方法、血漿又は血清を含む多種多様な組織及び試料を検定するためのウエスタンブロッティング及びELISA手順において検出されてよい。このようなアッセイ様式を用いた広範囲にわたるイムノアッセイ技術は利用可能である。米国特許第4016043号、同第4424279号及び同第4018653号参照。これらには、単一の部位及び2-部位の両方、あるいは非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合的結合アッセイが含まれる。また、これらのアッセイには、標的バイオマーカーに対する標識抗体の直接結合が含まれる。
サンドイッチアッセイは最も有用なものの一つで、一般的に用いられるアッセイである。サンドイッチアッセイ技術には多くのバリエーションあり、そのすべては本発明により包含されることを目的とする。簡潔には、代表的な最近のアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定して、試験する試料を結合した分子に接触させる。抗体-抗原複合体が形成されるくらいの適当な期間インキュベートした後、検出可能なシグナルを産生できるレポーター分子で標識した、抗原特異的な第二抗体を添加して、更なる抗体-抗原-標識抗体の複合体が形成されるために十分な時間インキュベートする。反応しなかった材料を洗い流し、レポーター分子により産生されるシグナルを観察することによって抗原の存在を決定する。結果は、可視的なシグナルを単純に観察したものであれば質的なものであり、バイオマーカーを既知量含有するコントロール試料と比較したものであれば量的なものである。
【0104】
前記のアッセイへのバリエーションには、試料及び標識抗体の両方を結合した抗体に同時に添加する同時アッセイなどがある。これらの技術は当分野の技術者には公知であり、多少のバリエーションが加えられることは容易に明らかであろう。代表的な近年のサンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対して特異性を有する第一抗体は固形表面に共有結合するか受動的に結合する。固形表面は一般的にガラス又はポリマーであり、最も一般的に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固形支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートの皿、又はイムノアッセイを行うために適切な他の任意の表面の形態でもあってもよい。結合方法は従来技術において周知であり、一般に、架橋性共有結合又は物理的な吸着から成り、ポリマー-抗体複合体は試験試料の調整において洗浄される。次いで、試験される試料の分割量を固相複合体に添加し、抗体中に存在する任意のサブユニットが結合するために十分な時間(例えば、より便利であるならば2〜40分又は前夜)と適切な条件(例えば室温から40℃、例えば25℃から32℃の間)下でインキュベートする。インキュベーションの後、抗体サブユニット固相を洗浄して、乾燥させ、一部のバイオマーカーに特異的な二次抗体とともにインキュベートする。二次抗体は、分子マーカーへの二次抗体の結合を表すために用いられるレポーター分子に結合させる。
別法では、試料中の標的バイオマーカーを固定して、その後レポーター分子にて標識しているか又は標識していない特異的抗体に固定された標的を曝すことを伴う。標的の量及びレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体で直接標識することによって、検出可能でありうる。あるいは、一次抗体に特異的な二次標識抗体を標的-一次抗体複合体に曝して、標的-一次抗体-二次抗体の三位複合体を形成させる。複合体は、レポーター分子により発されるシグナルにより検出される。本明細書中で用いられる「レポーター分子」は、その化学的性質によって、抗原と結合した抗体を検出するための分析して同定可能となるシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイにおいて、最も一般的に用いられるレポーター分子は、酵素、蛍光体又は分子を含有する放射性核種(すなわち放射性同位体)及び化学発光分子である。
【0105】
酵素イムノアッセイの場合、一般にグルタールアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって、酵素を二次抗体にコンジュゲートさせる。しかしながら、容易に認識されるように、技術者に容易に利用可能である多種多様な異なるコンジュゲート技術が存在する。一般的に用いられる酵素には、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ−中でもガラクトシダーゼ及びアルカリホスファターゼなどがある。特定の酵素と共に用いられる基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解の際に生じる検出可能な色の変化で選択する。適切な酵素の例として、アルカリホスファターゼやペルオキシダーゼなどがある。また、上記の色素生産性基質よりも蛍光性産物を産生する蛍光性基質を用いることができる。すべての例において、酵素標識抗体を一次抗体-分子マーカー複合体に加えて、結合させ、次いで過剰な試薬を洗い流す。次いで、適当な基質を含有する溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に加える。基質は二次抗体と結合した酵素と反応して、通常は分光測定法による量的なものでもある定性的な可視化シグナルを生じ、試料中に存在するバイオマーカーの量を表す。あるいは、フルオレセイン及びローダミンなどの蛍光性化合物を、抗体の結合能を変化させることなく抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を照射することにより活性化されると、蛍光色素標識抗体はその光エネルギーを吸収し、それによリその分子において励起状態が誘発され、続いて光学顕微鏡を用いて目視で検出可能な特徴的な色で光が放射される。EIAでは、蛍光標識抗体は、一次抗体-分子マーカー複合体に結合できる。結合していない試薬を洗い落とした後に、残りの三位複合体を適当な波長の光に曝すと、対象の分子マーカーの存在を示す蛍光発光が観察される。免疫蛍光法及びEIA技術は何れも、当分野で非常に確立されたものである。しかしながら、放射性同位体、化学発光性分子又は生物発光性分子などの他のレポーター分子も用いられてもよい。
【0106】
また、上記の技術が、一又は複数の標的遺伝子の発現を検出するために用いられうることも包含される。このとき標的遺伝子はここで定義される抗血管形成因子である。ある実施態様では、標的遺伝子は、VEGF−A、VEGF−C、VEGF−D、bFGF及び/又はVEGFR3である。
本発明の方法は、組織又は細胞試料中のVEGF−A、VEGF−C、VEGF−D、bFGFおよびVEGFR3を含むがこれらに限定されない一又は複数の標的遺伝子のmRNAの存在及び/又は発現を調べる手順を更に含む。細胞中のmRNAの評価方法は公知であり、例えば、相補的DNAプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、VEGF−A、VEGF−C、VEGF−D、bFGFおよびVEGFR3を含むがこれらに限定されない一又は複数の標的遺伝子に特異的な標識リボプローブを用いたインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット及び関連した技術)及び様々な核酸増幅アッセイ(例えば、一又は複数の遺伝子に特異的な相補的プライマーを用いたRT-PCR及び、他の増幅型の検査法、例えば枝分れDNA、SISBA、TMAなど)が含まれる。
【0107】
哺乳動物の組織又は細胞試料は、ノーザン、ドットブロット又はPCR分析を用いて、mRNAについて都合よくアッセイすることができる。例えば、定量的PCRアッセイなどのRT-PCRアッセイは公知技術である。本発明の例示的実施態様では、生体試料中の標的のmRNAの検出方法は、少なくとも一のプライマーを用いて逆転写によって、試料からcDNAを生成し、標的cDNAを増幅するために、標的ポリヌクレオチドをセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして用いて産生された該cDNAを増幅し、そして、増幅された標的cDNAの存在を検出することを含む。加えて、このような方法は、生体試料中の標的mRNAのレベルを決定し得る一ないし複数の工程(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子のコントロールmRNA配列と該レベルを同時に検討すること)を含んでもよい。場合によって、増幅された標的cDNAの配列を決定してもよい。
【0108】
本発明の任意の方法には、マイクロアレイ技術によって、組織又は細胞試料中のmRNA、例えば標的mRNAを調べるか又は検出する手順が含まれる。核酸マイクロアレイを用いて、試験及びコントロールの組織試料から得た試験及びコントロールのmRNA試料を逆転写させて、cDNAプローブを生成するために標識する。次いで、プローブを、固形支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズさせる。アレイの配列及び各々のメンバーの位置がわかるように、アレイを設定する。例えば、その発現が抗血管形成治療の臨床上の利益の増加又は減少と相関している遺伝子の選択を、固形支持体上に配してよい。特定のアレイメンバーと標識プローブとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。疾患組織の差次的遺伝子発現分析は、貴重な情報を提供する。マイクロアレイ技術は、単一の実験で何千もの遺伝子のmRNA発現性質を評価するために、核酸ハイブリダイゼーション技術及び演算技術を利用する。(2001年10月11日公開の国際公開公報01/75166を参照、(例えば米国特許第5700637号、同第5445934号及び同第5807522号、Lockart, Nature Biotechnology, 14:1675-1680 (1996))、アレイ製作の考察のためにはCheung, V.G.等, Nature Genetics 21(Suppl): 15-19 (1999)を参照)。DNAマイクロアレイは、ガラス又は他の基質上で染色されるか直接合成される遺伝子断片を含有する微小なアレイである。何千もの遺伝子は、通常単一のアレイ上に現れる。代表的なマイクロアレイ実験は以下の工程を伴う:1.試料から単離したRNAからの蛍光性標識標的の調製、2.マイクロアレイへの標識した標的のハイブリダイゼーション、3.洗浄、染色及びアレイのスキャニング、4.走査画像の分析、そして5.遺伝子発現性質の生成。一般に、DNAマイクロアレイには2つの主要な種類、cDNAから調製されたPCR産物を含有する遺伝子発現アレイ及びオリゴヌクレオチドアレイ(通常25〜70マー)が用いられる。アレイを形成する際に、オリゴヌクレオチドは、事前に作製して表面にスポットしても、(インサイツで)表面上で直接合成してもよい。
【0109】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上でオリゴヌクレオチドを直接合成することにより製造されるアレイを含んでなる市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイ:オリゴヌクレオチド(通常25マー)は、半導体ベースのフォトリソグラフィーと固相化学合成技術との組合せによって、ガラスウェーハ上へ直接合成される。各々のアレイは最高400,000の異なるオリゴを含有し、各々のオリゴは何百万ものコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブがアレイ上の既知の位置で合成されるので、ハイブリダイゼーションのパターン及びシグナル強度は、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによる遺伝子同一性と相対的な発現レベルに置き換えて解釈できる。各々の遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによって、アレイ上に表される。各々のプローブ対は、完全一致のオリゴヌクレオチドと、不一致のオリゴヌクレオチドからなる。完全一致プローブは、特定の遺伝子に対して完全に相補的な配列を有するため、遺伝子の発現を測定する。不一致プローブは、中心塩基位置での単一塩基置換によって、完全一致プローブとは異なり、標的遺伝子転写物の結合を妨げる。これによって、完全一致オリゴを決定するシグナルの一因となるバックグラウンド及び非特異的ハイブリダイゼーションを決定できる。Microarray Suiteソフトウェアは、完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度から不完全一致プローブのハイブリダイゼーション強度を減算して、それぞれのプローブセットの絶対値又は特異的強度の値を決定する。プローブは、Genbank及び他のヌクレオチド貯蔵所の当時の情報に基づいて選択される。この配列は遺伝子の3'末端の特定の領域を認識すると思われている。GeneChipハイブリダイゼーションオーブン(「回転式(rotisserie)」オーブン)を用いて、一度に最高64アレイのハイブリダイゼーションを行う。fluidics stationでは、プローブアレイの洗浄と染色が行われる。これは完全に自動化しており、4つのモジュールを含有しており、その各々のモジュールが一つのプローブアレイを保持している。各々のモジュールは、事前にプログラム化されたfluidicsプロトコルを用いたMicroarray Suiteソフトウェアにより個々に制御される。スキャナは、プローブアレイ結合した標識cRNAにより発される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光発光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを有するコンピュータワークステーションがfluidics stationとスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイについて事前にプログラム化したハイブリダイゼーション、洗浄及び染色プロトコルを用いてfluidics stationを8つまで制御できる。また、ソフトウェアは、ハイブリダイゼーション強度データを得て、適切なアルゴリズムを使用して各々の遺伝子の存在/非存在情報に変換する。最後に、ソフトウェアは、比較分析によって、遺伝子発現における実験間の変化を検出して、テキストファイルに出力する。このファイルは更なるデータ分析のために他のソフトウェアプログラムに用いることができる。
【0110】
また、組織又は細胞試料中の選択した遺伝子又はバイオマーカーの発現は、機能的なアッセイ又は活性に基づくアッセイにより検査されてもよい。例えば、バイオマーカーが酵素である場合、組織又は細胞試料中の所定の酵素の存在を決定又は検出するために公知技術のアッセイを行ってもよい。
【0111】
本発明のキットは多くの実施態様を有する。ある実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はVEGF−A、VEGF−C、VEGF−D、bFGFおよびVEGFR3を含むがこれらに限定されない一又は複数の標的遺伝子に対応する一又は複数の標的ポリペプチド配列に結合する一又は複数の一次抗体を含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞中の一又は複数の標的タンパク質の存在を評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞中の一又は複数の標的タンパク質の存在を評価するための抗体の使用についての指示書を示すものである。さらにキットは、一又は複数の標的タンパク質の発現レベルを測定して、2つの標的タンパク質の発現レベル間の比率を算出するための指示書を具備する。一実施態様では、標的タンパク質の一つはVEGF−Aである。他の実施態様では、第二標的タンパク質は、VEGF−C、VEGF−D、bFGF又はVEGFR3である。さらに、キットは、組織試料を調整して組織試料の同一片に抗体及びプローブを適用するための一組の指示書と材料を具備しうる。キットは、一次抗体と、酵素標識などの標識にコンジュゲートしている二次抗体の両方を具備してもよい。
【0112】
他の実施態様は、容器と、該容器上のラベルと、該容器内に収容される組成物を具備するキットであり、この場合の組成物はストリンジェントな条件下でVEGF−A、VEGF−C、VEGF−D、bFGF及び/又はVEGFR3を含むがこれらに限定されない一又は複数の遺伝子のポリヌクレオチド配列とハイブリダイズする一又は複数のポリヌクレオチドを含有するものであり、該容器上のラベルは、該組成物を用いて少なくとも一種類の哺乳動物細胞におけるVEGF−A、VEGF−C、VEGF−D、bFGF及び/又はVEGFR3を含むがこれらに限定されない一又は複数の標的遺伝子の存在及び/又は発現レベルを評価することができることと、少なくとも一種類の哺乳動物細胞における一又は複数の標的RNA又はDNAの存在及び/又は発現レベルを評価するためのポリヌクレオチドの使用についての指示書を示すものである。さらに、キットは、2つの標的遺伝子の発現レベル間の比率を算出するための指示を具備してよい。
キットの他の任意の成分には、一又は複数のバッファ(例えばブロックバッファ、洗浄バッファ、基質バッファなど)、酵素標識によって化学的に変化する基質などの他の試薬(例えば色素原)、エピトープ探索溶液、コントロール試料(ポジティブコントロール及び/又はネガティブコントロール)、コントロールスライド(一ないし複数)などがある。
【0113】
前記の発明は特定の実施態様の参照のための例示であって、制限されるものではない。実際、ここに示され説明されたものに加えて本発明の様々な変更が前記記載から当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲に入る。明細書全体にわたって引用されるすべての参考文献及びここに引用される参照は、出典明記によってその全体が明示的にここに援用される。
【実施例】
【0114】
実施例1
インビボ研究
すべての試験は、NIHより発行される実験動物の管理と使用のためのガイドライン(NIH Publication 85-23、1985年改訂)に従って実施した。研究機関の動物管理使用委員会(IACUC)は、すべての動物のプロトコールを承認した。
以下のヒト腫瘍モデル試験は、標準的な技術を用いてピエモンテリサーチセンター、LLC(Morrisville, NC)にて実施した:A549、H460、MV522、MDA-MB231、DLD-1、BxPC3、HT29、SKMES、PC3。ヒト腫瘍細胞は、各々の試験マウスの右側腹部の皮下に移植した。例えば、H460については、異種移植片は、培養したH460ヒト非小細胞肺癌腫細胞(10%熱不活性化胎仔ウシ血清、100ユニット/mL ペニシリンG、100μg/mL ストレプトマイシン硫酸塩、0.25μg/mL アンホテリシンB、1mM ピルビン酸ナトリウム、2mM グルタミン、10mM HEPES、0.075% 炭酸水素ナトリウム、及び25μg/mL ゲンタマイシンを含むRPMI−1640培地中で対数増殖中期(mid-log phase)にまで生育させた)、又はA549ヒト肺腺腫細胞(10%熱不活性化胎仔ウシ血清、100ユニット/mL ペニシリンG、100μg/mL ストレプトマイシン硫酸塩、0.25μg/mL アンホテリシンB、2mM グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、及び25μg/mL ゲンタマイシンを含むKaighn変更ハムF12培地中で培養した)から始めた。腫瘍移植の日に、H460細胞を回収し、5×10細胞/mLの濃度でPBSに再懸濁した。各試験マウスの右側腹部の皮下に、1×10のH460腫瘍細胞を移植した。A549腫瘍について、A549細胞は、5×10細胞/mLの濃度で、100%マトリゲルTM基質(BD Biosciences, San Jose, CA)に再懸濁した。A549細胞(0.2mL中1×10)を各試験マウスの右側腹部の皮下に移植し、腫瘍増殖をモニターした。
【0115】
平均サイズが120〜180mmに達したので、腫瘍増殖をモニターした。研究第1日目に、個々の腫瘍サイズは126から196mmであり、動物を腫瘍サイズによって3つの試験群とコントロール群に分類した。腫瘍体積は以下の式を使用して算出した。
腫瘍体積(mm)==(w×l)/2
このとき、w=腫瘍の幅およびl=腫瘍の長さ(mm)。
【0116】
すべて処置は腹膜内投与した。腫瘍は、コントロール抗体、VEGF−A活性を遮断する薬剤(5mg/kgの抗VEGF−A抗体B20-4.1)又はVEGF−AおよびVEGF−C活性を遮断する2つの薬剤の併用(10mg/kgの抗VEGF−C抗体)の各々5〜10mg/kgにて最長10〜20週間、週2回処置した。併用治療群について、抗VEGF−C抗体を抗VEGF−A抗体後30分以内に投与した。各用量は、20グラムの体重につき0.2mLの体積(10mL/kg)とし、動物の体重に拡大・縮小した。
腫瘍体積は、カリパスを使用して週2回記録した。腫瘍がエンドポイントサイズ(一般に1000mm3)に達するか又は試験の終了の何れか先に来たときに、動物を安楽死させた。
【0117】
エンドポイントまでの時間(TTE)は、以下の方程式から算出した。
TTE(日)=(log10(エンドポイント体積、mm−b)/m
このときbはログ変換した腫瘍増殖データセットの直線回帰によって得られる線の交点であり、mは線の傾きである。
【0118】
エンドポイントに達成しない動物は、試験の最終日と同等のTTE値を割り当てる。偶発事由(NTRa)又は未知の原因(NTRu)によるNTR(処置とは無関係な)死と分類した動物は、TTE算出(及びすべての更なる分析)から除く。TR(処置関連の)死又はNTRm(転移による処置とは無関係な死)と分類した動物は、死亡の日と同等のTTE値を割り当てる。
【0119】
治療結果は、腫瘍増殖遅滞(TGD)によって評価し、コントロール群と比較して、治療群のエンドポイントまでの時間(TTE)の中央値の増加として定義し、以下のように算出した。
TGD=T−C、日か又はコントロール群の中央値TTEの割合として表し、以下のように算出した。
%TGD=[(T−C)/C]×100
ここで、T=治療群の中央値TTE、そして、C=コントロール群の中央値TTE。
Δ%TGDは、方程式Δ%TGD=%TGD2−%TGD1=([(T2−C)/C] ×100、ここでC=コントロール薬剤を投与されている群の中央値TTE、及び、T2=VEGF−AおよびVEGF−Cを遮断する2つの薬剤を投与されている群の中央値TTE)マイナス([(T1−C)/C]×100、ここでC=コントロール薬剤を投与している群の中央値TTE、及び、T1=VEGF−Aのみを遮断する薬剤を投与している群の中央値TTE)に従って算出した。例えば図6A、7Aおよび14Aを参照のこと。
あるいは、Δ%TGDは、方程式%TGD=[(T−C)/C]×100、ここでC=VEGF−Aのみを遮断する薬剤を投与している群の中央値TTE、及びT=VEGF−AおよびVEGF−Cを遮断する2つの薬剤を投与している群の中央値TTEに従って算出した。例えば図6B、7B、8および14Bを参照のこと。
【0120】
いくつかの試験では、有効性は、パーセント腫瘍増殖阻害(%TGI)として算出し、以下のように算出した。
%TGI=[(コントロールの中央値腫瘍体積−試験したものの中央値腫瘍体積)/コントロールの中央値腫瘍体積]×100
Δ%TGIは、VEGF−AおよびVEGF−Cを遮断する2つの薬剤を投与している群とVEGF−Aのみを遮断する薬剤を投与している群との間の%TGIの相違として算出した。
腫瘍を回収し、10%NBF中で終夜固定した後、70%エタノールに固定し、その後パラフィンに包埋した。
抗VEGF−C抗体治療を抗VEGF−A治療と併用した場合、H460およびA549腫瘍の腫瘍発達の遅れが生じた(図6、7および8)。
【0121】
実施例2 IHC
パラフィン包埋した腫瘍からのミクロトーム切片を、市販の抗体(IBL, Japan)を使用してVEGF−Cについて染色した。簡単に言えば、切片を脱パラフィン化し、水和して、Target Retrieval(Dako, Glostrup, Denkmark)を行った。内因性ペルオキシダーゼ活性(KPL Inc., Gaithersburg, Maryland)およびアビジン/ビオチン反応性(Vector Laboratories, Burlingame, CA)は、製造業者プロトコールに従って遮断した。内因性免疫グロブリンは、室温(RT)で、30分間、10%ヤギ血清を含む3%BSA/PBS(『ブロック血清』)と共にインキュベートして遮断した。抗VEGF−C抗体を、ブロック血清中0.5μg/mlに希釈し、RTで1時間切片と共にインキュベートした。ウサギIgGと共にインキュベートした切片をネガティブコントロールとして用いた。TRIS緩衝生理食塩水で洗浄した後、切片を7.5μg/mlのビオチン化ヤギ抗ウサギ抗体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を含むブロック血清と共にRTで30分間インキュベートした。切片を洗浄し、その後、ペルオキシダーゼ結合アビジン試薬(Vector Laboratories, Burlingame, CA)と共にRTで30分間インキュベートした。更に洗浄した後、結合した抗体は、ペルオキシダーゼ基質DAB(Pierce, Rockford, IL)を使用して検出した。切片を洗浄し、カバーガラスをかけ、IHCスコア化を行った。IHCスコアは以下のように決定した。

異種移植片腫瘍の染色した切片の代表的な画像は、H460およびA549がIHCによってVEGF−C発現について陽性であることを示した(図13)。これらの結果は、H460およびA549腫瘍モデルについてIHCスコアと腫瘍発達の遅延(%TGD)とに相関性があることを示す(図14)。
【0122】
実施例3 RNA単離
2つの5μm厚ミクロトーム切片を、ヒト異種移植片ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍から切り出し、RNA単離(Roche Applied Sciences, Indianapolis, IN)を行った。簡単に言えば、パラフィンワックスを900μlのEnvirene(Hardy Diagnostics, Santa Maria, CA)に溶解し、残りの組織断片を450μlのエタノールの添加後に沈殿させた。ペレットを空気乾燥させ、製造業者のプロトコールに従ってプロテイナーゼK作用溶液にて55℃で終夜消化した。カラム精製後、試料を、DNA分解酵素にて37℃で45分間かけて消化し、その後の分析を妨げるゲノムDNAを除いた。DNA分解酵素は、プロテイナーゼKによって55℃で1時間かけて取り除き、その後カラム精製を行った。試料は、合計50μlの溶出バッファに溶解し、遠心分離してカラム残渣を沈殿させ、新規の反応チューブに移した。RNA濃度は、分光光度計又はバイオ分析機(Agilent, Foster City, CA)を用いて評価し、その後の遺伝子発現分析の反応につき50ngの全RNAを用いた。
【0123】
qRT−PCR
遺伝子特異的プライマーおよびプローブセットを、18SrRNAおよびRPS13(ハウスキーピング遺伝子)、およびヒトVEGF−A、ヒトVEGF−C、ヒトVEGF−D、ヒトbFGFおよびヒトVEGFR3のqRT−PCR発現分析ために設計した。

*50ngの対照RNA(#636538; Clontech, Mountain View, CA)についての平均Ct。
【0124】
例えば、一実施態様では、VEGF−Cの相対的な発現レベルは、以下のように算出した。
相対的な発現VEGF−C試料=2exp(Ct18SrRNA−CtVEGF−C)、Ctは試料中で決定されたものであり、このときCtは閾値サイクルである。
他の実施態様では、VEGF−Cの相対的な発現レベルは、以下のように算出した。
相対的な発現VEGF−C試料=2exp[(Ct18SrRNA+CtRPS13)/2−CtVEGF−C)、Ctは試料中で決定されたものであり、このときCtは閾値サイクルである。
Ctは、反応内で生成された蛍光が閾値線を超えるときのサイクル数である。
【0125】
異なる反応プレートからの結果を比較するために、次いで、相対的な発現を、すべての試験実行において同定した内的対照RNAに対する相対的な発現の比として算出し、100を乗じた。
標準化した相対的発現VEGF−C試料=(相対的発現VEGF−C試料/相対的発現VEGF−C対照RNA)×100、ここで相対的発現VEGF−C対照RNA=2exp(Ct18SrRNA−CtVEGF−C)、Ctは対照RNAにおいて決定されるものである。
この計算を用いて、qRT−PCR反応において任意のシグナルを示した試料は『1』より上の値を有しており、『1』より小さい値を有する試料は、特定の分析物について陰性である。
次いで、VEGF−CとVEGF−Aとの相対的な発現レベルの比率は以下のように算出した。
標準化した発現VEGF−C/標準化した発現VEGF−A
【0126】
遺伝子発現分析は、H460およびA549が腫瘍モデルにおいてVEGF−A発現範囲が低かったのに対して、VEGF−C、VEGF−DおよびbFGF発現範囲は高かったことを示す(図1−3および5)。さらに、これらのモデルは、VEGFR3の腫瘍細胞発現について陽性であった(図4)。これらの結果から、抗VEGF−Cと抗VEGF−A抗体による併用治療の結果としての有効性の増加とVEGF−C/VEGF−Aの標準化した相対的発現レベルの比率の高さとの相関性(図6)、抗VEGF−Cと抗VEGF−A抗体による併用治療の結果としての有効性の増加とVEGF−D/VEGF−Aの標準化した相対的な発現レベルの比率の高さとの相関性(図7)、抗VEGF−Cと抗VEGF−A抗体による併用治療の結果としての有効性の増加とbFGF/VEGF−Aの標準化した相対的発現レベルの比率の高さとの相関性(図8)、及び/又は抗VEGF−Cと抗VEGF−A抗体による併用治療の結果としての有効性の増加と腫瘍細胞におけるVEGFR3発現の存在との相関性(図4)が示唆される。
【0127】
遺伝子発現分析からさらに、抗VEGF−Cと抗VEGF−A抗体による併用治療の結果としての有効性の増加とVEGF−C/VEGF−AおよびVEGF−D/VEGF−Aの標準化した相対的な発現レベルの比率の高さとの相関性(図9)、抗VEGF−Cと抗VEGF−A抗体による併用治療の結果としての有効性の増加とbFGF/VEGF−AおよびVEGF−C/VEGF−Aの標準化した相対的な発現レベルの比率の高さとの相関性(図10)、及び/又は抗VEGF−Cと抗VEGF−A抗体による併用治療の結果としての有効性の増加とbFGF/VEGF−AおよびVEGF−D/VEGF−Aの標準化した相対的な発現レベルの比率の高さとの相関性(図11)が示唆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGFアンタゴニストに加え抗癌療法から利益を得うる患者の同定方法であって、患者から得た試料において遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率を決定することを含み、このとき、対照試料における該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率と比較して、該試料中の該遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの間の比率に変化がある場合に、該患者がVEGFアンタゴニストに加え抗癌療法から利益を得うることが示される方法。
【請求項2】
比率の変化が増加である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
比率の変化が減少である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
発現レベルがmRNA発現レベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
発現レベルがタンパク質発現レベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子が血管形成因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
発現レベルがmRNA発現レベルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
mRNA発現レベルがqRT−PCR又はqPCRを使用して測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記血管形成因子のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの間の比率の変化が増加である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記血管形成因子がVEGF−Cである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
さらに、試料におけるVEGF−DのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるVEGF−DのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率と比較して、該試料中のVEGF−DのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率が増加している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、試料におけるbFGF2のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるbFGF2のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率と比較して、該試料中のbFGF2のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率が増加している、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記血管形成因子がVEGF−Dである、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
さらに、試料におけるVEGF−CのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるVEGF−CのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率と比較して、該試料中のVEGF−CのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率が増加している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、試料におけるbFGF2のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるbFGF2のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率と比較して、該試料中のbFGF2のmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率が増加している、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記血管形成因子がbFGFである、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
さらに、試料におけるVEGF−CのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるVEGF−CのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率と比較して、該試料中のVEGF−CのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率が増加している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、試料におけるVEGF−DのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率を決定することを含み、このとき対照試料におけるVEGF−DのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率と比較して、該試料中のVEGF−DのmRNA発現レベルとVEGF−AのmRNA発現レベルとの比率が増加している、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
抗VEGF抗体がベバシズマブである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに、抗VEGF抗体に加えて抗癌治療薬の有効量を患者に投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
抗癌治療薬が抗VEGF−C抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗VEGF抗体および抗VEGF−C抗体が同時に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
患者から得られる試料が組織試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
さらに、前記遺伝子についてIHCアッセイを行うことを含む免疫組織化学(IHC)スコアを決定することを含み、このときIHCスコアが少なくとも1+である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
IHCスコアが少なくとも2+である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
IHCスコアが3+である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
さらに、試料がVEGFR3を発現する腫瘍細胞を含むか否かを決定することを含み、このときVEGFR3発現の存在により、該患者がVEGFアンタゴニストに加えて抗癌療法から利益を得うることが示される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
VEGFR3発現がmRNA発現である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
VEGFR3 mRNA発現の存在がqRT−PCR又はqPCRを使用して決定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
VEGFR3発現がタンパク質発現である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
VEGFR3タンパク質発現の存在がIHCアッセイを使用して決定される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
さらに、VEGFR3の発現レベルを測定することを含み、このとき試料中のVEGFR3の発現レベルが対照試料と比較して増加している、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
VEGFR3の発現レベルがmRNA発現レベルである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
VEGFR3のmRNA発現レベルの増加が腫瘍細胞におけるものである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
さらに、前記遺伝子についてIHCアッセイを実施することを含む免疫組織化学(IHC)スコアを決定すること、そして該試料がVEGFR3を発現する腫瘍細胞を含むか否かを決定することを含んでよく、このとき少なくとも1+のIHCスコアとVEGFR3発現の存在により、該患者がVEGFアンタゴニストに加えて抗癌療法から利益を得うることが示される、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
IHCスコアが少なくとも2+である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
IHCスコアが3+である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
VEGFR3発現がmRNA発現である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
VEGFR3 mRNA発現の存在がqRT−PCR又はqPCRを使用して決定される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
VEGFR3発現がタンパク質発現である、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
VEGFR3タンパク質発現の存在がIHCアッセイを使用して決定される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
さらに、試料がVEGF−Dを発現する腫瘍細胞を含むか否かを決定することを含んでよく、このときVEGF−D発現の存在により、該患者がVEGFアンタゴニストに加えて抗癌療法から利益を得うることが示される、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
VEGF−D発現がmRNA発現である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
VEGF−D mRNA発現の存在がqRT−PCR又はqPCRを使用して決定される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
VEGF−D発現がタンパク質発現である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
VEGF−Dタンパク質発現の存在がIHCアッセイを使用して決定される、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
一又は複数の遺伝子とVEGF−Aへ特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを含むアレイを具備するキットであって、さらに、一又は複数の該遺伝子とVEGF−Aとの発現レベルの比率を決定して、抗血管形成療法又は抗癌療法に対する患者の応答性を予測するために該アレイを用いるための指示書を具備し、このとき対照試料における該遺伝子の少なくとも一の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、試料中の同遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率に変化がある場合に、該患者がVEGFアンタゴニストに加えて抗血管形成療法又は抗癌療法から利益を得うることが示される、キット。
【請求項49】
比率の変化が増加している、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
比率の変化が減少している、請求項48に記載のキット。
【請求項51】
前記遺伝子の少なくとも一が血管形成因子である、請求項48に記載のキット。
【請求項52】
前記血管形成因子がVEGF−Cである、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記血管形成因子がVEGF−Dである、請求項51に記載のキット。
【請求項54】
前記血管形成因子がbFGFである、請求項51に記載のキット。
【請求項55】
前記血管形成因子がVEGFR3である、請求項51に記載のキット。
【請求項56】
患者から得た試料における一又は複数の遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率を決定するために、一又は複数の遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルを検出することができる化合物セットであって、このとき対照試料における該遺伝子の少なくとも一の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率と比較して、試料中の同遺伝子の発現レベルとVEGF−Aの発現レベルとの比率に変化がある場合に、該患者がVEGFアンタゴニストに加えて抗血管形成療法又は抗癌療法から利益を得うることが示される、化合物セット。
【請求項57】
化合物がポリヌクレオチドである、請求項56に記載の化合物セット。
【請求項58】
化合物がタンパク質である、請求項56に記載の化合物セット。
【請求項59】
タンパク質が抗体である、請求項58に記載の化合物セット。
【請求項60】
前記遺伝子の少なくとも一が血管形成因子である、請求項56に記載の化合物セット。
【請求項61】
前記血管形成因子がVEGF−Cである、請求項60に記載の化合物セット。
【請求項62】
前記血管形成因子がVEGF−Dである、請求項60に記載の化合物セット。
【請求項63】
前記血管形成因子がbFGFである、請求項60に記載の化合物セット。
【請求項64】
前記血管形成因子がVEGFR3である、請求項60に記載の化合物セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−527582(P2011−527582A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517644(P2011−517644)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050208
【国際公開番号】WO2010/006232
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】