説明

腰部筋力補助具

【課題】 介護者が前屈すると両肩部から両膝部に掛けたベルトの引張力と腰部の周りの締め付け力が自動的に増大し、前屈しない状態では双方の力が自動的に解除される。
【解決手段】 左ベルト1と右ベルト2とを、それぞれ左右の肩部から、背部及び腰部に位置する4箇所の保持部51〜54を経由して、左右の膝部に至るように装着する。左腰部ベルト3と右腰部ベルト4との一端部を、それぞれ保持部51〜52、53〜54の間において、左ベルト1と右ベルト2とに摺動自在に連結し、他端部を、それぞれ腰部の周りに左右方向に巻きつける。前屈すると左右のべルトが引張られて張力が生じると共に、左右の腰部ベルトも引張られて腰部の周りの締め付け力が増大する。前屈しないときには、左右のべルトの張力及び左右の腰部ベルトの締め付け力が共に解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護等を行なう者が使用する腰部筋力補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化が進む今日においては、介護者の拡充等が強く求められている。ところで介護動作は、介護者が前屈して行なう場合が多く、このような前屈した状態で要介護者を支持等する場合には、介護者の腰部に大きな負担が掛かり易い。さらに介護は、長期間に亘るため、介護者に腰痛等が生じる場合も多い。
【0003】
そこで介護者の腰部に掛かる負担を軽減するために、例えば次のような腰部負担軽減具が提案されている(特許文献1参照。)。すなわちこの腰部負担軽減具は、左右の肩部から、背中において襷掛けに交差しつつ腰部及び臀部を経由して、右左の膝部または足裏部に至るベルトで構成されている。このような腰部負担軽減具を装着した介護者が前屈したときには、このベルトが引張られて張力を生じ、このベルトの張力によって腰部に掛かる負担を軽減するものである。なお前屈姿勢以外では、このベルトは緩んで、張力は生じない。したがって介護者の筋力低下を招くが恐れがないとされている。
【0004】
また従来から、腰部の負担を軽減するために、コルセット等によって腰部の周りを締め付けることが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4000254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるにコルセット等を装着したまま、長時間にわたって腰部の周りを締め付けていると、内蔵や血管等の圧迫による負担等が大きくなる。そこで腰部に負担が掛かる前屈動作を行なわないときには、コルセット等を緩める必要があるが、その都度コルセット等を緩めたり、再度締め付けたりしていては、手間が掛かって実用性に欠ける。
【0007】
そこで本発明の目的は、前屈姿勢のときには腰部の周りの締め付け力が増大し、前屈姿勢以外のときには腰部の周りの締め付け力が緩む、腰部筋力補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による腰部筋力補助具の特徴は、介護者が前屈したときには、両肩部、背部、背側の腰部、及び両膝部または両大腿部にわたって設けたベルトに張力を生じさせると共に、腰部の周りの締め付け力も増大させて、より効果的に腰部の負担を軽減でき、前屈しないときには、このベルトの張力と腰部の周りの締め付け力との双方を緩めることができることにある。
【0009】
すなわち本発明による腰部筋力補助具は、左右の肩部、背部、背側の腰部、臀部、及び左右の大腿部または膝部にわたって装着され、左ベルト、右ベルト、左腰部ベルト、右腰部ベルト、及びこれらの左ベルト及び右ベルトと相互に摺動自在な保持具を備えている。上記左ベルト及び右ベルトは、それぞれ伸縮性の部分を有し、上記保持具は、上記背側の腰部に位置すると共に、上下2個所において、それぞれ左右対称に設けた合計4の保持部を有している。上記左ベルトは、左肩部から、左背部及び左側に位置する上下2個所の上記保持部を経由して、左大腿部または左膝部に至るように装着され、上記右ベルトは、右肩部から、右背部及び右側に位置する上下2個所の上記保持部を経由して、右大腿部または右膝部に至るように装着される。
【0010】
上記左腰部ベルトの一端部は、左側に位置する上下2個所の上記保持部の間において、上記左ベルトに摺動自在に連結されると共に、他端部は、上記腰部の周りに左方向に巻きつけられる。また上記右腰部ベルトの一端部は、右側に位置する上下2個所の上記保持部の間において上記右ベルトに摺動自在に連結されると共に、他端部は、上記腰部の周りに右方向に巻きつけられる。
【0011】
ところで上述した左ベルト及び右ベルトを背部で交差させて、上下2個所に設けた保持部に、それぞれ左右逆に経由させてもよい。すなわちこの腰部筋力補助具は、左右の肩部、背部、背側の腰部、臀部、及び左右の大腿部または膝部にわたって装着されるものであって、左ベルト、右ベルト、左腰部ベルト、右腰部ベルト、及びこれらの左ベルト及び右ベルトと相互に摺動自在な保持具を備えている。上記左ベルト及び右ベルトは、それぞれ伸縮性の部分を有し、上記保持具は、上記背側の腰部に位置すると共に、上下2個所において、それぞれ左右対称に設けた合計4の保持部を有している。
【0012】
上記左ベルトは、左肩部から、上記背部及び右側に位置する上下2個所の上記保持部を経由して、左大腿部または左膝部に至るように装着され、上記右ベルトは、右肩部から、上記背部及び左側に位置する上下2個所の上記保持部を経由して、右大腿部または右膝部に至るように装着される。上記左腰部ベルトの一端部は、左側に位置する上下2個所の上記保持部の間において上記右ベルトに摺動自在に連結されると共に、他端部は、上記腰部の周りに左方向に巻きつけられ、上記右腰部ベルトの一端部は、右側に位置する上下2個所の上記保持部の間において上記左ベルトに摺動自在に連結されると共に、他端部は、上記腰部の周りに右方向に巻きつけられる。
【0013】
また上述した左ベルトと右ベルトとを腰部で上下2分して、それぞれY字状に構成し、このY字状の足部を、背側の腰部に位置する保持具を経由して、腰部の周りにそれぞれ左右逆向きに巻きつけるように構成することもできる。すなわちこの腰部筋力補助具は、左右の肩部、背部、背側の腰部、臀部、及び左右の大腿部または膝部にわたって装着されるものであって、上部ベルト、下部ベルト、及びこれらの上部ベルト及び下部ベルトと相互に摺動自在な保持具を備えている。上記上部ベルト及び下部ベルトは、それぞれ伸縮性の部分を有している。
【0014】
上記上部ベルトは、上記左右の肩部から上記背部に至るV字部分と、このV字部分の交点に連がる上帯部とを有し、上記下部ベルトは、上記左右の大腿部または左右の膝部から上記臀部に至る逆V字部分と、この逆V字部分の交点に連がる下帯部とを有している。上記保持具は、上記背側の腰部に位置すると共に、2の保持部を有している。上記上帯部は、上記2の保持部の一方を経由して、上記腰部の周りに右または左方向に巻きつけられ、上記下帯部は、上記2の保持部の他方を経由して、上記腰部の周りに上記上帯部とは逆方向に巻きつけられる。
【0015】
さらに上述した左ベルトと右ベルトとを腰部で上下2分して、この2分された上側の左ベルトと右ベルトとを、それぞれ背側の腰部の中央部に位置する保持具を経由して、腰部の周りにそれぞれ左右逆向きに巻きつけると共に、この2分された下側の左ベルトと右ベルトとを、上記保持具において相互に連結させるように構成することもできる。すなわちこの腰部筋力補助具は、左右の肩部、背部、背側の腰部、臀部、及び左右の大腿部または膝部にわたって装着されるものであって、上部ベルト、下部ベルト、及びこれらの上部ベルト及び下部ベルトとそれぞれ相互に摺動自在な保持具を備えている。
【0016】
上記上部ベルトは、左上部ベルトと右上部ベルトとを有し、この左上部ベルトと右上部ベルトと上記下部ベルトとは、それぞれ伸縮性の部分を有している。上記保持具は、上記背側の腰部に位置すると共に、上2個所及び下1個所に設けた合計3の保持部を有している。上記左上部ベルトは、左肩部から上記上2個所に設けたいずれか一方の保持部を経由して、上記腰部の周りに左右のいずれか一方向に巻きつけられ、上記右上部ベルトは、右肩部から上記上2個所に設けたいずれか他方の保持部を経由して、上記腰部の周りに上記左上部ベルトとは逆方向に巻きつけられる。上記下部ベルトは、左大腿部または左膝部から上記下1個所に設けた保持部を経由して、右大腿部または右膝部に装着される。
【0017】
ここで「上記左ベルト及び右ベルトは、それぞれ伸縮性の部分を有し」とは、左ベルト及び右ベルトの一部分が、それぞれ伸縮性を有する素材で構成されていることを意味する。「合計4の保持部」の「保持部」とは、左ベルト及び右ベルトを、それぞれ摺動自在に保持する部分を意味し、保持具に設けられた、例えば左ベルト及び右ベルトが摺動自在に貫通する開口孔若しくはリング状部材、またはフック状部材等が該当する。なお「合計4の保持部」には、それぞれ別個の4個の開口孔等に限らず、例えば上下2個の横長開口孔であって、それぞれの横長開口孔の左右両端部、あるいは例えば1個の矩形開口孔であって、この矩形開口孔の4隅も含む。
【0018】
「左背部」と「右背部」とは、それぞれ背部の左側と右側とを占める部分を意味する。「上記左腰部ベルトの一端部は、・・・・・上記左ベルトに摺動自在に連結される」とは、左腰部ベルトの一端部が、左ベルトに沿って摺動できるように、この左ベルトに連結されることを意味する。なお「上記右腰部ベルトの一端部は、・・・・上記右ベルトに摺動自在に連結される」も、同等の意味である。「V字部分の交点」及び「逆V字部分の交点」とは、それぞれV字の尖った部分を意味する。
【0019】
「2の保持部」には、例えば、それぞれ別個の2個の開口孔に限らず、例えば1個の開口長孔であって、この開口長孔の両端部も含む。「上2個所及び下1個所に設けた合計3の保持部」には、例えば、それぞれ別個の3個の開口孔に限らず、例えば上部に設けた1個の横長開口孔と下部に設けた1個の開口孔とであって、この上部に設けた横長開口孔の左右両端部と、この下部に設けた1個の開口孔との組合せも含む。また例えば1個の逆三角形の開口孔であって、この開口孔の上側2隅と下側1隅との3隅も含む。
【発明の効果】
【0020】
左右の肩部から、それぞれ背側の腰部に位置する保持具を介して、左右の膝部または大腿部に伸縮性の部分を有するベルトを掛けることによって、介護者が前屈姿勢をとったときには、これらのベルトが引張られて張力が生じ、これにより介護者の腰部に掛かる負担が軽減できる。さらにこれらのベルトが引張られて張力が生じるときには、これらのベルトに摺動自在に連結等されている腰部ベルトも引張られて、腰部の周りの締め付け力が増大する。したがってベルトの張力と腰部の周りの締め付け力との相乗効果によって、より効果的に介護者の腰部に掛かる負担が軽減できる。
【0021】
介護者が前屈しないときには、上述したベルトは緩んで、張力が生じない。またこれらのベルトが緩めば、これらのベルトに摺動自在に連結等されている腰部ベルトも緩む。したがって前屈しない状態においては、介護者はこれらのベルト及び腰部ベルトのいずれからも拘束されないため、動き易くなると共に、長時間にわたって身体を締め付ける弊害等を回避できる。すなわち本発明による腰部筋力補助具は、介護者が前屈すると、腰部の周りの締め付け力が自動的に増大し、前屈しない状態においては、腰部の周りの締め付け力が自動的に緩むため、介護者の腰部に掛かる負担をより効果的に軽減できると共に、使い勝手にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】介護者を背後から見たときの腰部筋力補助具の模式図である。
【図2】介護者を背後から見たときの他の腰部筋力補助具の模式図である。
【図3】介護者を背後から見たときの他の腰部筋力補助具の模式図である。
【図4】介護者を背後から見たときの他の腰部筋力補助具の模式図である。
【図5】介護者を背後から見たときの他の腰部筋力補助具の模式図である。
【図6】介護者を背後から見たときの他の腰部筋力補助具の模式図である。
【図7】介護者を背後から見たときの他の腰部筋力補助具の模式図である。
【図8】介護者を背後から見たときの他の腰部筋力補助具の模式図である。
【図9】保持具まわりの一部拡大図である。
【図10】介護者に装着した腰部筋力補助具の水平断面図である。
【図11】左ベルトを左膝部に装着した状態を示す斜視図である。
【図12】左ベルトを左膝部に装着する部分の拡大斜視図である。
【図13】他の保持具まわりの一部拡大図である。
【図14】他の保持具まわりの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図14を参照しつつ、本発明による腰部筋力補助具の構成と作用とを説明する。さて図1に示すように、本発明による腰部筋力補助具は、左右の肩部、背部、背側の腰部、臀部、及び左右の大腿部または膝部にわたって装着され、左ベルト1、右ベルト2、左腰部ベルト3、右腰部ベルト4、及びこれらの左ベルト及び右ベルトと相互に摺動自在な保持具5を備えている。左ベルト1及び右ベルト1において、背側の腰部の中央部に位置する保持具5から、それぞれ背部と大腿部とに至る部分は、非伸縮性ベルト11、21で構成してある。非伸縮性ベルト11、21の上端は、それぞれ伸縮性ベルト12、22に連結してあり、これらの伸縮性ベルトは、左右の肩部から胸部の左右と左右の腋の下とをそれぞれ廻って、背部の上部において相互に連結してある。なお伸縮性ベルト12、22の先端部を、胸部の左右において、それぞれ上半身用のジャケット等に連結するように構成してもよい。
【0024】
非伸縮性ベルト11、21の下端は、それぞれ左右2本に分かれた伸縮性ベルト13、23に連結してあり、これらの2本に分かれた伸縮性ベルトは、それぞれ左右の膝部の下部に巻設したリング状の係止部14、24に連結されている。なお非伸縮性ベルト11等は、天然繊維や合成繊維を織った非伸縮性の帯状の布、これらの帯状の布を合成樹脂等で被覆したベルト、あるいは合成樹脂シートや皮のベルト等を使用する。また伸縮性ベルト12等は、天然若しくは合成ゴム繊維等を織り込んだ伸縮性の帯状の布、あるいは天然繊維や合成繊維を織った伸縮性の帯状の布を、伸縮性の合成樹脂で被覆したベルト等を使用する。
【0025】
さて保持具5は、図9に示すように上下2個所において、それぞれ左右対称に設けた合計4の保持部51〜54を有している。保持部51〜54は、合成樹脂製の矩形リング形状を有しており、それぞれ連結帯56を介してリベット57によって、非伸縮性の四角形の厚布からなる保持基材55の4隅に固定されている。左ベルト1は、左肩部から左背部、及び左側に位置する上下2個所の保持部51、52を経由して、左膝部に至るように装着され、右ベルト2は、右肩部から右背部、及び右側に位置する上下2個所の保持部53、54を経由して、右膝部に至るように装着される。
【0026】
図9に示すように左腰部ベルト3の一端部31は、左側に位置する上下2個所の保持部51、52の間において、合成樹脂製の矩形リング形状を有する連結具32を介して、左ベルト1に摺動自在に連結される。また図10に示すように、左腰部ベルト3の他端部33は、腰部の周りに左方向に巻きつけられる。右腰部ベルト4の一端部41は、右側に位置する上下2個所の保持部53,54の間において、連結具42を介して右ベルト2に摺動自在に連結されると共に、他端部43は、上記腰部の周りに右方向に巻きつけられる。
【0027】
ここで図9に示すように、左ベルト1と右ベルト2とは、保持部51、52と保持部53、54との間において、それぞれ左右方向に突出した「く」の字状に屈曲した状態で、この左腰部ベルトと右腰部ベルトとに摺動自在に連結される。したがって左ベルト1と右ベルト2とが、それぞれ上下方向に引っ張られると、左腰部ベルト3と右腰部ベルト4とが、それぞれ腰部の中心に向かって引っ張られ、この左腰部ベルトと右腰部ベルトとによる腰部の周りの締め付け力が増大する。
【0028】
なお図9及び図10に示すように、左腰部ベルト3及び右腰部ベルト4は、腰部の周りに装着したコルセット6の上から左右方向に巻きつける。すなわちコルセット6は、上述した保持具5の保持基材55の左右端に、それぞれ3本の伸縮性の帯部材61を連結し、この3本の帯部材の左右端に、それぞれ非伸縮性からなる幅広の左帯部62と右帯部63とを連結して構成される。
【0029】
また図10に示すように、コルセット6の左端部65の内側面と、右端部64の外側面とには、それぞれマジックテープ(登録商標)66a、66bが設けてあり、両者を貼り合せて、このコルセットを腰部の周りに装着する。また左腰部ベルト3の他端部33の内側面と、この位置に対応するコルセット6の表面とには、それぞれマジックテープ(登録商標)34a、34bが設けてある。図示していないが、同様に右腰部ベルト4の他端部43の内側面と、この位置に対応するコルセット6の表面とにも、それぞれマジックテープ(登録商標)が設けてある。
【0030】
したがって左腰部ベルト3の他端部33と、右腰部ベルト4の他端部43とを、コルセット6の表面に重ねれば、この左腰部ベルトと右腰部ベルトとを、このコルセットを挟んで、腰部の周りに巻きつけることができる。なおマジックテープ(登録商標)34a、66a等の替わりに、複数の個所に設けたボタン及びボタン孔、あるいは複数の個所に設けたフック等によって、コルセット6や左腰部ベルト3及び右腰部ベルト4を、腰部の周りに巻きつけるようにしてもよい。またコルセット6の両端部、並びに左腰部ベルト3及び右腰部ベルト4の端部に、紐やベルトに使用されるバックル金具等を連結して、これらを用いて、このコルセット、左腰部ベルト、及び右腰部ベルトを、腰部の周りに巻きつけるようにしてもよい。
【0031】
すなわちマジックテープ(登録商標)34a、66a等、複数の個所に開けたボタン孔及びボタン、あるいは複数の個所に設けたフック等によって、コルセット6や左腰部ベルト3及び右腰部ベルト4を、腰部の周りに巻きつけるようにすれば、これらの取り付けや取外しが、極めて容易にとなり、さらにこれらのコルセットや左腰部ベルト及び右腰部ベルトの初期締め付け力を、容易かつ迅速に増減することができる。
【0032】
図11及び図12に、左ベルト1の下端に位置する左右2本に分かれた伸縮性ベルト13と、この伸縮性ベルトの下端部に連結するリング状の係止部14との詳細を示す。すなわち図11に示すように、左ベルト1における非伸縮性ベルト11の下端は、合成樹脂製の四角リング形状の連結部15に連結され、左右2本に分かれた伸縮性ベルト13の上端部は、この四角リング形状の連結部の中空孔に挿入されて連結される。
【0033】
また図12に示すように、リング状の係止部14は、左膝部の下部に巻きつけられる帯状のパッド部材14aと、このパッド部材の外側面に巻設した非伸縮性の帯部材14bとから構成される。左右2本に分かれた伸縮性ベルト13の下端部は、それぞれ帯部材14bに連結される。また帯部材14bは、合成樹脂製の四角リング形状の連結部14cと、この帯部材の先端部等に設けたマジックテープ(登録商標)14d、14eとによって、膝部への巻設長さを調整することができる。なお右ベルト2の下端に位置する左右2本に分かれた伸縮性ベルト23の下端も、同様な構成によって、右膝部の下部に取り付けられる。
【0034】
このようにリング状の係止部14を、帯状のパッド部材14aと、巻設長さが調整可能な帯部材14bとで構成することによって、このリング状の係止部を、膝部の下部等に容易かつ迅速に取り付けたり取り外したりすることができる。また膝部の下部太さが異なる介護者も、無理なく使用することができるようになる。
【0035】
なお左右2本に分かれた伸縮性ベルト13の替わりに、三角形の伸縮性の布を使用して、この三角形の頂部を左ベルト1の非伸縮性ベルト11の下端に連結し、この三角形の底辺の両端部を帯部材14bに連結するように構成することも容易にできる。またパッド部材14aを伸縮性のリング部材として、このパッド部材に左右2本に分かれた伸縮性ベルト13等を直接連結することによって、帯部材14bを省略するように構成することも容易にできる。
【0036】
さて図2に示す腰部筋力補助具は、左ベルト101と右ベルト102との下端部が、それぞれ左右の大腿部に巻設した係止部114、124に連結される点だけが、図1で示した腰部筋力補助具と相違する。なお図1で示した部品または部位と同等のものは、参照を容易にする等のため、図2において一律100を加えた番号にしている(以下図3〜図8、及び図13〜図14においても同様に、一律200〜700を加えた番号にしている。)。
【0037】
次に図3に示す腰部筋力補助具は、左ベルト201及び右ベルト202を背部で交差させて、左腰部ベルト203と右腰部ベルト204との一端部を、それぞれ図1に示したものとは逆に、この右ベルトと左ベルトとに摺動自在に連結したものである。すなわち左ベルト201は、左肩部から、背部及び右側に位置する上下2個所の保持部253、254を経由して、左膝部に至るように装着される。右ベルト202は、右肩部から、背部及び左側に位置する上下2個所の保持部251、252を経由して、右膝部に至るように装着される。
【0038】
左腰部ベルト203の一端部は、左側に位置する上下2個所の保持部251、252の間において、右ベルト202に摺動自在に連結されると共に、他端部は、腰部の周りに左方向に巻きつけられる。右腰部ベルト204の一端部は、右側に位置する上下2個所の保持部253、254の間において、左ベルト201に摺動自在に連結されると共に、他端部は、上記腰部の周りに右方向に巻きつけられる。
【0039】
次に図4に示す腰部筋力補助具は、図3に示した腰部筋力補助具とは、左右のリング状の係止部314、324の巻設位置を、左右の膝部の下部に替えて左右の大腿部に変更した点だけが相違する。
【0040】
次に図5に示す腰部筋力補助具は、上部ベルト407、下部ベルト408、及びこれらの上部ベルト及び下部ベルトとそれぞれ相互に摺動自在な保持具405を備えている。上部ベルト407は、左右の肩部から背部中央に至るV字部分471と、このV字部分の交点に連がる上帯部472とを有している。なおV字部分471は、伸縮性ベルトで構成され、左右の肩部、胸部の左右、及び左右の腋の下を経由して、背部の上部において連結される。また上帯部472は、非伸縮性ベルトで構成してある。下部ベルト408は、左右の膝部から臀部中央に至る逆V字部分481と、この逆V字部分の交点に連がる下帯部482とを有しており、これらはいずれも非伸縮性ベルトで構成されている。逆V字部分481の両下端部は、それぞれ左右2本に分かれた伸縮性ベルト483で構成され、これらの左右2本に分かれた伸縮性ベルトの下端部は、それぞれ左右の膝部の下部に巻設されたリング状の係止部484に連結される。
【0041】
保持具405まわりの詳細を、図13に示す。すなわち保持具405は、合成樹脂製の板状部材であって、上下2個所に開口する斜めスリット451、452を有している。
保持具405は、背側の腰部の中央部において、腰部のまわりに装着するコルセット406に取り付けられている。なおコルセット406の構成は、図9及び図10に示すものと同等である。上部ベルト407のV字部分471は、連結部473を介して上帯部472に連結され、この上帯部は、保持具405に開口する上側の斜めスリット451を貫通して、腰部のまわりに左方向に巻き付けられる。
【0042】
下部ベルト408の逆V字部分481は、連結布483を介して下帯部482に連結され、この下帯部は、保持具405に開口する下側の斜めスリット452を貫通して、腰部のまわりに右方向に巻き付けられる。なお上下2個所に開口する斜めスリット451、452の傾き方向を右下がりにすれば、上帯部472と下帯部482とは、それぞれ上述した方向と逆向きに、腰部のまわりに巻き付けられる。なお上帯部472と下帯部482とを腰部のまわりに巻き付ける構成は、図9及び図10に示すものと同等である。
【0043】
図6に示す腰部筋力補助具は、図5示した腰部筋力補助具とは、左右のリング状の係止部584、584の巻設位置を、左右の膝部の下部に替えて左右の大腿部に変更した点だけが相違する。
【0044】
次に図7に示す腰部筋力補助具は、図1に示した腰部筋力補助具の左ベルト1と右ベルト2とを腰部で上下2分して、この2分された上側の左ベルトと右ベルトとを、それぞれ背側の腰部の中央部に位置する保持具5を経由して、腰部の周りにそれぞれ左右逆向きに巻きつけると共に、この2分された下側の左ベルトと右ベルトとを、上記保持具において相互に連結させるように構成したものである。すなわちこの腰部筋力補助具は、上部ベルト607、下部ベルト608、及びこれらの上部ベルト及び下部ベルトとそれぞれ相互に摺動自在な保持具605を備えている。
【0045】
上部ベルト607は、左上部ベルト671と右上部ベルト672とを有している。左上部ベルト671と右上部ベルト672との上側部分は、伸縮性ベルトになっており、左右の肩部から胸部の左右と左右の腋の下とをそれぞれ廻って、背部の上部において相互に連結してある。また左上部ベルト671と右上部ベルト672との下側部分は、非伸縮性ベルトになっている。保持具605は、背側の腰部の中央部に位置すると共に、上2個所及び下1個所に設けた合計3の保持部651〜653を有している。
【0046】
保持具605まわりの詳細を、図14に示す。すなわち保持具605は、合成樹脂製の板状部材であって、上2個所に開口する斜めスリット651、653と、下1個所に開口する水平スリット652とを有している。なお保持具605は、背側の腰部の中央部において、腰部のまわりに装着するコルセット606に取り付けられている。またコルセット606の構成は、図9及び図10に示すものと同等である。左上部ベル671は、左肩部から保持具605に開口する左側の斜めスリット651を貫通して、腰部の周りに左方向に巻きつけられる。右上部ベルト672は、右肩部から保持具605に開口する右側の斜めスリット653を貫通して、腰部の周りに左上部ベルトとは逆方向に巻きつけられる。
【0047】
下部ベルト608は、保持具605の下1個所に開口する水平スリット652を貫通しして、左右の膝部に装着される。すなわち下部ベルト608は、保持具605の水平スリット652を挟む左下ベルト681と右下ベルト682とからなり、それぞれの下端部が、さらに2本の伸縮性ベルト683に分かれ、この2本の伸縮性ベルトが、それぞれ左右の膝部の下部に巻設されたリング状の係止部684に連結される。なお下部ベルト608の上側部分、すなわち2本の伸縮性ベルト683以外の部分は、非伸縮性ベルトとなっている。
【0048】
図8に示す腰部筋力補助具は、図7示した腰部筋力補助具とは、左右のリング状の係止部784、784の巻設位置を、左右の膝部の下部に替えて左右の大腿部に変更した点だけが相違する。
【0049】
なお上述した腰部筋力補助具を、いずれも上下半身一体、または上下半身で分離したボディースーツに取り付けるように構成することも容易にできる。腰部筋力補助具をボディースーツと一体的に構成すれば、身体への装着及び取外しが容易になると共に、腰部筋力補助具の取り付け位置がずれ難くなる。また腰部筋力補助具の非伸縮性ベルトの部分等を2分し、連結具を介して長さ調節が可能なように構成することも容易にできる。非伸縮性ベルトの部分等の長さ調節が可能であれば、介護者の体型が大きく異なっても、腰部筋力補助具を適正に装着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
前屈すると自動的に腰部の周りの締め付け力が増大して、より効果的に腰部の負担を軽減できると共に、前屈しないときには、腰部の周りの締め付け力が自動的に解除されるため、介護に関する産業に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、101、201 左ベルト
11 非伸縮性ベルト
12 伸縮性ベルト(伸縮性の部分)
13 伸縮性ベルト(伸縮性の部分)
14、114〜314 係止部
2、102、202 右ベルト
21 非伸縮性ベルト
22 伸縮性ベルト(伸縮性の部分)
23 伸縮性ベルト(伸縮性の部分)
24、124〜324 係止部
3、203 左腰部ベルト
4、204 右腰部ベルト
407、607 上部ベルト
471 V字部分
472 上帯部
408、608 下部ベルト
481 逆V字部分
482 下帯部
483、683 伸縮性ベルト(伸縮性の部分)
484、684 係止部
5、205、405、605 保持具
51、251、451、651 保持部
52、252、452、652 保持部
53、253、653 保持部
54、254 保持部
584 係止部
671 左上部ベルト
672 右上部ベルト
681 左下部ベルト
682 右下部ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の肩部、背部、背側の腰部、臀部、及び左右の大腿部または膝部にわたって装着される腰部筋力補助具であって、
左ベルト、右ベルト、左腰部ベルト、右腰部ベルト、及びこの左ベルト及び右ベルトと相互に摺動自在な保持具を備え、
上記左ベルト及び右ベルトは、それぞれ伸縮性の部分を有し、
上記保持具は、上記背側の腰部に位置すると共に、上下2個所において、それぞれ左右対称に設けた合計4の保持部を有し、
上記左ベルトは、左肩部から、左背部及び左側に位置する上下2個所の上記保持部を経由して、左大腿部または左膝部に至るように装着され、
上記右ベルトは、右肩部から、右背部及び右側に位置する上下2個所の上記保持部を経由して、右大腿部または右膝部に至るように装着され、
上記左腰部ベルトの一端部は、左側に位置する上下2個所の上記保持部の間において上記左ベルトに摺動自在に連結されると共に、他端部は、上記腰部の周りに左方向に巻きつけられ、
上記右腰部ベルトの一端部は、右側に位置する上下2個所の上記保持部の間において上記右ベルトに摺動自在に連結されると共に、他端部は、上記腰部の周りに右方向に巻きつけられる
ことを特徴とする腰部筋力補助具。
【請求項2】
左右の肩部、背部、背側の腰部、臀部、及び左右の大腿部または膝部にわたって装着される腰部筋力補助具であって、
左ベルト、右ベルト、左腰部ベルト、右腰部ベルト、及びこれらの左ベルト及び右ベルトと相互に摺動自在な保持具を備え、
上記左ベルト及び右ベルトは、それぞれ伸縮性の部分を有し、
上記保持具は、上記背側の腰部に位置すると共に、上下2個所において、それぞれ左右対称に設けた合計4の保持部を有し、
上記左ベルトは、左肩部から、上記背部及び右側に位置する上下2個所の上記保持部を経由して、左大腿部または左膝部に至るように装着され、
上記右ベルトは、右肩部から、上記背部及び左側に位置する上下2個所の上記保持部を経由して、右大腿部または右膝部に至るように装着され、
上記左腰部ベルトの一端部は、左側に位置する上下2個所の上記保持部の間において上記右ベルトに摺動自在に連結されると共に、他端部は、上記腰部の周りに左方向に巻きつけられ、
上記右腰部ベルトの一端部は、右側に位置する上下2個所の上記保持部の間において上記左ベルトに摺動自在に連結されると共に、他端部は、上記腰部の周りに右方向に巻きつけられる
ことを特徴とする腰部筋力補助具。
【請求項3】
左右の肩部、背部、背側の腰部、臀部、及び左右の大腿部または膝部にわたって装着される腰部筋力補助具であって、
上部ベルト、下部ベルト、及びこれらの上部ベルト及び下部ベルトと相互に摺動自在な保持具を備え、
上記上部ベルト及び下部ベルトは、それぞれ伸縮性の部分を有し、
上記上部ベルトは、上記左右の肩部から上記背部に至るV字部分と、このV字部分の交点に連がる上帯部とを有し、
上記下部ベルトは、上記左右の大腿部または左右の膝部から上記臀部に至る逆V字部分と、この逆V字部分の交点に連がる下帯部とを有し、
上記保持具は、上記背側の腰部に位置すると共に、2の保持部を有し、
上記上帯部は、上記2の保持部の一方を経由して、上記腰部の周りに右または左方向に巻きつけられ、
上記下帯部は、上記2の保持部の他方を経由して、上記腰部の周りに上記上帯部とは逆方向に巻きつけられる
ことを特徴とする腰部筋力補助具。
【請求項4】
左右の肩部、背部、背側の腰部、臀部、及び左右の大腿部または膝部にわたって装着される腰部筋力補助具であって、
上部ベルト、下部ベルト、及びこれらの上部ベルト及び下部ベルトと相互に摺動自在な保持具を備え、
上記上部ベルトは、左上部ベルトと右上部ベルトとを有し、
上記左上部ベルトと右上部ベルトと下部ベルトとは、それぞれ伸縮性の部分を有し、
上記保持具は、上記背側の腰部に位置すると共に、上2個所及び下1個所に設けた合計3の保持部を有し、
上記左上部ベルトは、左肩部から上記上2個所に設けたいずれか一方の保持部を経由して、上記腰部の周りに左右のいずれか一方向に巻きつけられ、
上記右上部ベルトは、右肩部から上記上2個所に設けたいずれか他方の保持部を経由して、上記腰部の周りに上記左上部ベルトとは逆方向に巻きつけられ、
上記下部ベルトは、左大腿部または左膝部から上記下1個所に設けた保持部を経由して、右大腿部または右膝部に至るように装着される
ことを特徴とする腰部筋力補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−277(P2011−277A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145540(P2009−145540)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【特許番号】特許第4496398号(P4496398)
【特許公報発行日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(509173155)株式会社スマートサポート (3)
【Fターム(参考)】