説明

腰部補助装置

【課題】利用者の前傾姿勢維持を補助することができる腰部補助装置を提供する。
【解決手段】腰部補助装置は、利用者の背部に装着され、利用者の前方への傾倒に追従移動可能な背中フレーム14と、背中装着部に取り付けられ利用者の体幹前方側へ延出されて利用者の体幹前方側を支持する肩ベルト22と、利用者の下肢の前方に装着される太腿プレート18と、一端部が太腿プレート18に連結され、他端部が背中フレーム14と相対移動可能に関節部16で連結され、相対移動時に非屈曲形状を維持可能な連結フレーム20と、作動状態において、背中フレーム14の利用者の前方への傾倒を停止させるアクチュエータ40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰部補助構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、利用者の上半身の前屈動作を補助するための補助装置が知られている。例えば、特許文献1には、腰装着部、背中装着部、利用者の前方へ傾倒可能になるように背中装着部を腰装着部に連結する関節部、及び、作動状態において、背中装着部の利用者の前方への傾倒を制御する第1アクチュエータを備えた腰部補助装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の腰部補助装置では、さらに、利用者の下肢に装着される下肢装着部と、腰装着部を下肢装着部に繁束する繁束部材を設けて、腰装着部の背中装着部と同方向への回転を規制している。この繁束部材は、ゴムチューブ等の容易に変形可能な部材で構成されているため、利用者の姿勢状態によっては、繁束部材に緩みが生じていたり、下肢装着部の位置がずれていたりする場合がある。繁束部材が緩んでいたり、下肢装着部の位置がずれていたりという状態のままで、第1アクチュエータが作動すると、腰装着部の回転規制が適切に行われないなどにより、背中装着部に起き上がる方向への力が作用する際に、起き上がり方向への力が適切に伝達されない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−011818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、腰部補助装置を装着した状態で利用者の前屈動作を安定して補助することの可能な腰部補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の腰部補助装置は、利用者の背部に装着され、利用者の前方への傾倒に追従移動可能な背中装着部と、前記背中装着部に取付部を介して該取付部を中心に利用者の左右方向へ回動可能に取り付けられると共に、利用者の体幹前方側へ延出されて利用者の体幹前方側を支持する前支持部と、利用者の下肢の少なくとも前方に装着される下肢装着部と、一端部が前記下肢装着部に連結され、他端部が前記背中装着部の前記追従移動を許容するように前記背中装着部と相対移動可能に関節部で連結され、前記相対移動時に非屈曲形状を維持可能な連結部と、作動状態において、利用者の前方への傾倒に抗する力を前記背中装着部へ作用させるアクチュエータと、を備えたものである。
【0007】
請求項1に記載の腰部補助装置では、背中装着部が利用者の背部に装着され、利用者の前方への傾倒に追従移動可能とされている。また、前支持部が、背中装着部に取付部を介して該取付部を中心に利用者の左右方向へ回動可能に取り付けられ、利用者の体幹前方側へ延出されて利用者の体幹前方側を支持する。下肢装着部は、利用者の下肢の少なくとも前方に装着されている。
【0008】
連結部は、一端部が下肢装着部に連結され、他端部が背中装着部と相対移動可能に関節部で連結されている。背中装着部との連結は、背中装着部の前記追従移動を許容するように行われている。そして、連結部は、この相対移動時に非屈曲形状を維持可能とされている。
【0009】
利用者が前屈動作を行うと、背中装着部は利用者の前方への傾倒に追従移動する。この前屈状態でアクチュエータを作動させると、背中装着部へ利用者の前方への傾倒に抗する力が作用する。一方、下肢装着部に連結された連結部は、非屈曲形状を維持するので、背中装着部と逆方向の力が作用して、背中装着部と連結部とには相対移動する方向へ力が作用する。連結部の他端は、下肢装着部によって所定の位置に維持されているので、連結部の反力を用いて背中装着部へ安定して力を作用させることができる。
【0010】
上体の重みを背中装着部に取り付けられた前支持部に預ける利用者は、前方への傾倒に抗する力によって、前傾姿勢時における負担が軽減される。
【0011】
また、前支持部は、背中装着部に取付部を中心に利用者の左右方向へ回動可能に取り付けられているので、利用者の動きの自由度が増し、背中装着部に対して上半身を左右方向へ倒す動作を自由に行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の腰部補助装置は、前記背中装着部は、利用者の背部の上側を頂点とする三角形状であること、を特徴とする。
【0013】
前記背中装着部を上記の構成とすることにより、利用者の肩、腕の後方に空間ができ、肩の動きの自由度を向上させることができる。
【0014】
請求項3に記載の腰部補助装置は、前記背中装着部は、利用者の背部の上側で合流して三角形状の2辺を構成する2本のフレームを有し、該フレームに沿って前記アクチュエータが配置されていること、を特徴とする。
【0015】
上記構成のフレームは、三角形状の2辺を構成していることから、利用者の上下方向に傾斜せずに配置されたフレームと比較して長さが長い。したがって、このフレームにアクチュエータを配置することにより、アクチュエータの長さも長くでき、大きな出力を得ることができる。さらに、かかる構成とすることで、アクチュエータをフレーム枠構造の一部として兼用することができ、部品点数の削減および全体構造の軽量化をも図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の腰部補助装置は、前記下肢装着部は、前記背中装着部に対して利用者の上下方向に可動とされていること、を特徴とする。
【0017】
このように、下肢装着部を上下方向に可動とすることにより、利用者の身長に応じて下肢装着部の位置を適正な位置に配置することができる。
【0018】
請求項5に記載の腰部補助装置は、前記下肢装着部は、前記背中装着部に対して利用者の前後方向を軸心として回動可能であること、を特徴とする。
【0019】
このように、下肢装着部を連結部に対して利用者の前後方向を軸心として回動可能につることにより、利用者の脚の左右方向への開脚運動に追従させることができる。
【0020】
請求項6に記載の腰部補助装置は、前記アクチュエータが、前記背中装着部へ利用者の起き上がり方向への力を作用させること、を特徴とする。
【0021】
このように、アクチュエータが、背中装着部へ利用者の起き上がり方向への力を作用させることにより、前述の利用者の前傾姿勢時における負担を軽減することに加えて、利用者の起き上がり動作の補助も行うことができる。
【0022】
請求項7に記載の腰部補助装置は、前記関節部が、前記背中装着部と前記連結部とが利用者の左右方向に沿った軸周りに相対回転可能となるように構成されていること、を特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の腰部補助装置では、利用者の前屈動作時に、背中装着部と連結部とが、利用者の左右方向に沿った軸周りに相対回転される。そして、アクチュエータの作動時には、背中装着部と連結部へは、前屈時とは逆方向に相対回転する方向へ力が作用することにより、背中装着部の前方への傾倒が停止される。
【0024】
請求項8に記載の腰部補助装置は、前記関節部で前記連結部及び背中装着部に連結され、利用者の腰部に装着される腰装着部、をさらに備えたこと、を特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の腰部補助装置によれば、腰装着部により、アクチュエータの作動時に、背中装着部が利用者の前方側に移動することが阻止され、前傾姿勢の補助をより安定的に行うことができる。
【0026】
請求項9に記載の腰部補助装置は、前記アクチュエータが、内部に空気を供給されることにより短縮する空気圧式アクチュエータとされていること、を特徴とする。
【0027】
このように、アクチュエータとして、空気式アクチュエータを用いて、背中装着部の利用者の前方への傾倒を停止させることができる。
【0028】
請求項10に記載の腰部補助装置は、前記アクチュエータの一端からワイヤが延出され、前記関節部に、周部へ前記ワイヤが巻き掛けられた回転体が設けられ、前記アクチュエータの作動開始当初から前記ワイヤの張力が前記背中装着部及び前記連結部に作用するように、前記アクチュエータの作動時に前記回転体と前記背中装着部または前記連結部とを固定するクラッチ機構が構成されていること、を特徴とする。
【0029】
請求項10に記載の腰部補助装置は、アクチュエータの一端から延出されたワイヤが回転体の周部へ巻き掛けられている。背中装着部と連結部が相対移動し、両者の位置関係が変化することから、ワイヤ長は、巻き掛け分も含めて、相対移動に対応した長さとなっている。そこで、アクチュエータの作動時に、回転体を背中装着部または連結部に固定することにより、ワイヤ長に関わりなく、ワイヤの張力がアクチュエータの作動開始当初から背中装着部及び連結部に作用するようにすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、腰部補助装置を装着した状態で、利用者の前傾姿勢を安定して補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置の使用状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置の使用状態を示す側面図である。
【図4】(A)、(B)は、本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置が備えるアクチュエータの概略を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置が備えるアクチュエータの給排気機構の概略を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置の概略説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置の変形例の概略説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置の他の変形例の概略説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置の他の変形例の概略説明図である。
【図10】(A)(B)は、本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置から腰フレーム部を除去したものの動作を説明する説明図であり、(C)(D)は、本発明の第1実施形態に係る腰部補助装置の動作を説明する説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る腰部補助装置を示す斜視図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る腰部補助装置の使用状態を示す側面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る腰部補助装置の使用状態を示す側面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る腰部補助装置が備えるアクチュエータの給排気機構の概略を示す図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る腰部補助装置のクラッチ機構を示す分解斜視図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る腰部補助装置のクラッチ機構において、プーリーがプレートに固定されていない状態を示す断面図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係る腰部補助装置のクラッチ機構において、プーリーがプレートに固定されている状態を示す断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係る腰部補助装置を示す斜視図である。
【図19】本発明の第3実施形態に係る腰部補助装置の使用状態を示す側面図である。
【図20】本発明の第3実施形態に係る腰部補助装置の使用状態を背面からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図中矢印FRにて示す利用者の前方側を前側とし、上下左右の方向は、この前方側を向いてみた場合の方向を基準とする。
【0033】
図1〜図3には、第1実施形態に係る腰部補助装置10が示されている。図1には、未装着状態の腰部補助装置10が示されており、図2及び図3には、利用者が装着した状態の腰部補助装置10が示されている。これらの図に示されるように、腰部補助装置10は、背中装着部としての背中フレーム14、前支持部としての肩ベルト22、下肢装着部としての太腿プレート18、連結部としての連結フレーム20を備えている。
【0034】
背中フレーム14は、利用者の背部に装着され、左右一対のサイドフレーム部14Aと、左右一対のサイドフレーム部14Aを結合するセンターフレーム部14B、14Cとを備えている。なお、左右一対のサイドフレーム部14Aは左右対称の構成となっている。
【0035】
サイドフレーム部14Aは、長尺筒状とされ、利用者の背部の上下方向に沿うように互いに離間して配置されている。サイドフレーム部14Aの下端には、下サイド部14Dが連結固定されている。下サイド部14Dは、左右一対のサイドフレーム部14Aの各々の下端から斜め前方へ伸びて、利用者の腰部左右両脇に配置される。
【0036】
センターフレーム部14Bは、左右一対のサイドフレーム部14Aの上端を連結するように配置され、センターフレーム部14Cは、左右一対のサイドフレーム部14Aの中間部を連結するように配置されている。
【0037】
下サイド部14Dに、腰装着部としての腰フレーム部12が設けられている。腰フレーム部12は、左右一対の下サイド部14Dを横断するように、センターフレーム部14Bと略並行に配置されている。腰フレーム部12の中央には、腰板12Aが取り付けられている。腰フレーム部12のコ字両側先端は、関節部16で、背中フレーム14及び連結フレーム20と相対回転可能に連結されている。
【0038】
また、下サイド部14Dの上端には、滑車部44が構成されている。滑車部44には、後述するワイヤ42が巻き掛けられ、ワイヤ42の方向を利用者の背面側から斜め前方側へ導いている。
【0039】
サイドフレーム部14Aには、肩ベルト22が取り付けられている。肩ベルト22は、左右一対設けられており、各々の一端がセンターフレーム部14Bの中央に取り付けられ、他端がサイドフレーム部14Aの下端部に各々取り付けられている。左右一対の肩ベルト22は、中央部でベルト22Aによって連結され、利用者の上半身に肩ベルト22が密着し、背中フレーム14がずれないようにしている。
【0040】
下サイド部14Dの下端には、関節部16が構成されている。関節部16で、連結フレーム20と背中フレーム14(下サイド部14D)とが連結されている。関節部16の前方には、腰ベルト13が設けられている。腰ベルト13は、左右一対の関節部16を連結するように架け渡され、利用者の腰前に配置される。関節部16の詳細については、後述する。
【0041】
連結フレーム20は、長尺形状とされ、利用者の下肢に沿って配置される。連結フレーム20は、一端(上端)が、関節部16で下サイド部14Dと連結されている。下サイド部14Dと連結フレーム20とは、利用者の左右方向に沿った回転軸S周りに、互いに相対回転可能に連結されている。連結フレーム20は、背中フレーム14との相対回転によっても、屈曲しないリジッドな部材で構成されている。
【0042】
連結フレーム20の他端側には、太腿プレート18が固定されている。太腿プレート18は、利用者の下肢の前方を覆う湾曲形状とされている。太腿プレート18は、利用者の下肢の前方に配置される。
【0043】
関節部16は、下サイド部14Dの下端部に固定されたプレート26と、プレート26から肩幅方向外方へ立設された回転シャフト28と、回転シャフト28に回転自在に支持された円盤状の回転体24とを備えている。また、腰フレーム部12の両端部12Bが配置されている。なお、左右一対の関節部16は、左右対称の構成となっている。
【0044】
プレート26は、利用者の側腰部に位置し、回転シャフト28は、利用者の側腰部から肩幅方向外方へ延出している。回転体24の軸心には、回転シャフト28が相対回転自在に嵌合する円孔(図示省略)が形成され、回転体24の周面には、後述のワイヤ42を巻き掛けることができる溝24Aが形成されている。なお、回転体24が円盤状であることは必須ではなく、半円盤状や楕円盤状などであってもよい。
【0045】
プレート26の内側には、腰フレーム部12の両端部12Bが配置されている。両端部12Bは、回転シャフト28周りに回転可能に取り付けられている。
【0046】
回転体24には、連結フレーム20の一端が固定され、連結フレーム20は回転体24と共に回転可能とされている。回転体24に対してプレート26が左側から見て反時計回り方向へ回転することにより、背中フレーム14が同方向へ回動する。また、回転体24に対してプレート26が左側から見て時計回り方向へ回転することにより、背中フレーム14が同方向へ回動する。
【0047】
このとき、太腿プレート18が利用者の下肢前方に当てられているので、連結フレーム20の位置は利用者の下肢に沿った位置に規制されている。したがって、背中フレーム14と連結フレーム20とは、関節部16の回転シャフト28を中心に、相対回転する。
【0048】
また、腰部補助装置10には、アクチュエータ40が備えられている。アクチュエータ40は、背中フレーム14の一対のサイドフレーム部14A内に各々収納されている。アクチュエータ40は、空気圧式アクチュエータ(流体圧式アクチュエータ、所謂、McKibben人工筋肉)とされている。図4(A)、(B)に示すように、空気圧式アクチュエータACは、膨張収縮体であるインナーチューブICと、インナーチューブICを覆う網状の被覆体であるメッシュスリーブMSとを備えている。メッシュスリーブMSは、例えば伸縮性を持たない高張力繊維等の線材により構成されている。また、メッシュスリーブMSの長さ(軸)方向の両端部は、インナーチューブICの長さ方向の両端部に固定されている。
【0049】
図4(B)に示すように、インナーチューブICは、内部に空気が供給されることにより膨張する。そして、インナーチューブICの膨張は、メッシュスリーブMSにより空気圧式アクチュエータAC全体の長さの縮小に変換される。即ち、空気圧式アクチュエータACは、空気が供給されると、径が拡大されつつ長さが縮小される。この長さの縮小により、空気圧式アクチュエータACはその短縮方向への力Fを発生する。
【0050】
図5に示すように、アクチュエータ40には、スイッチSWを介してコンプレッサCPが接続されている。スイッチSWは、給気スイッチS1と排気スイッチS2が設けられており、給気スイッチS1がオン、且つ、排気スイッチS2がオフにされた場合には、コンプレッサCPからアクチュエータ40へ圧縮空気が供給され、排気スイッチS2がオン、且つ、給気スイッチS1がオフにされた場合には、アクチュエータ40内の空気が排気される。
【0051】
図1〜図3に示すように、アクチュエータ40の下端側には、ワイヤ42が取り付けられている。ワイヤ42の一端部は、アクチュエータ40の下端から出て、滑車部44に巻き掛けられて方向を変え、回転体24の溝24Aに固定されている。
【0052】
ここで、アクチュエータ40は、自然長(最大長さ)の状態で、少なくとも背中フレーム14の前傾を許容する範囲で、即ち背中フレーム14が前傾したときに、ワイヤ42が回転体24へ巻き付けが増加する分をゆとりとして、回転体24へ巻き掛け固定されている。
【0053】
なお、図6には、本実施形態の腰部補助装置10を簡略化した説明図が示されている。図6では、前傾状態の背中フレーム14に、アクチュエータ40が作動しているときの状態が示されている。
【0054】
次に、本実施形態における作用について説明する。
利用者が溶接作業等の上半身前傾姿勢での所定作業を行う際、前屈動作を行うと、背中フレーム14が、利用者の上体の前傾に追従して前傾する。このとき、背中フレーム14は、連結フレーム20と相対回転し、関節部16の回転軸S周りに回転する。連結フレーム20は、太腿プレート18によって利用者の下肢に沿った位置に規制されている。
【0055】
背中フレーム14が前傾の状態で、スイッチSWの給気スイッチS1をオン、且つ排気スイッチS2をオフにした場合には、アクチュエータ40への給気が行われ、アクチュエータ40が短縮する。
【0056】
アクチュエータ40は、短縮し、短縮の途中でワイヤ42に遊びのない状態となって張力F(図3及び図6参照)を発生させる。これにより、連結フレーム20へY方向の回転力が作用する。しかし連結フレーム20は、大腿プレート18によって規制されているため、Y方向へ回転することができない。このため、アクチュエータ40の短縮は、背中フレーム14のX方向への回転となって現れる。このとき、前傾した利用者の上体には、肩ベルト22を介して、起き上がり回転方向Xへの力が作用するので、利用者が上体を起こす動作を補助することができる。さらに、起き上がり回転方向Xへの力を、利用者の前方への傾倒力よりも大きくすることにより、背中フレーム14を起き上がり方向Xへ回転させて、利用者の上体を起こさせることができる。
【0057】
そして、スイッチSWの給気スイッチS1をオフにし、排気スイッチS2をオフにすると、アクチュエータ40への給気が停止されてアクチュエータ40内の空気圧の上昇が停止し、アクチュエータ40の短縮が停止される。この状態において、背中フレーム14のX方向への回転が停止する。
【0058】
この状態で、前傾した利用者の上体の重みが肩ベルト22にかけられると(前傾した上体を肩ベルト22に預けると)、上体が背中フレーム14に吊り下げられた状態になる。したがって、利用者は、背腰部の筋肉(脊柱起立筋等)を使うことなく、前傾姿勢を維持することが可能となる。このように、アクチュエータ40の短縮を維持することによっても、利用者の前傾姿勢維持の補助が達成される。
【0059】
ここで、回転体24の左側から見て時計回り方向への回転は、アクチュエータ40が短縮しているかいないかに関わらず、自在であるため、利用者は、自由に、前傾姿勢から直立姿勢へ上体を起立させることができる。
【0060】
本実施形態によれば、太腿プレート18に連結された連結フレーム20は、非屈曲形状を維持するので、アクチュエータ40の作動時に、連結フレーム20に背中フレーム14と逆方向の回転力(回転軸S周り)を容易に作用させることができる。このように、連結フレーム20の回転力(反力)を用いて、背中フレーム14へ、起き上がり回転方向Xへの力を、安定して作用させることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、一対のサイドフレーム14Aにアクチュエータ40を各々配置したが、いずれか一方のサイドフレーム14Aにのみアクチュエータ40を配置してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、アクチュエータ40を、サイドフレーム14Aに沿って上下方向に配置したが、アクチュエータ40は、図7に示すように、センターフレーム14Cに沿った横方向に配置してもよい。この場合にも、図6に示される場合と同様に、背中フレーム14に起き上がり回転方向Xへの力を作用させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、アクチュエータ40を背中フレーム14に装着した例について説明したが、アクチュエータ40は、図8に示すように、連結フレーム20側に配置してもよい。この場合には、ワイヤ42は、プレート26側に固定する。アクチュエータ40を連結フレーム20側に配置した場合でも、張力Fにより、背中フレーム14に起き上がり回転方向Xへの力を作用させ、連結フレーム20に背中フレーム14と逆回転方向Yへの力を作用させることができる。これにより、利用者の、前傾姿勢時における負担の軽減、前傾姿勢の維持、上体の起き上がり動作を、安定して補助することができる。
【0064】
また、アクチュエータ40は、図9に示すように、背中フレーム14と連結フレーム20の両方に配置してもよい。
【0065】
また、本実施形態では、1つのアクチュエータ40について、1本の空気圧式アクチュエータを用いたが、空気圧式アクチュエータは、必要とされる補助力に応じて複数本用いてもよい。この場合には、空気圧式アクチュエータの本数分のワイヤ42が回転体24に固定される。
【0066】
また、本実施形態では、腰フレーム部12を設けたが、腰フレーム部12は、必ずしも必要ではない。特に、腰フレーム部12を設けることにより、アクチュエータ40の作動時に、背中フレーム14が利用者の前方側に移動することを阻止することができる。すなわち、腰フレーム部12がない場合には、図10(A)に示す前傾状態においてアクチュエータ40を作動させると、図10(B)に示すように、関節部16が前方へ移動してしまい、利用者へ起き上がり方向へ力が作用されにくい。腰フレーム部12を設けた場合には、図10(C)に示す前傾状態においてアクチュエータ40を作動させると、図10(D)に示すように、腰フレーム部12により関節部16の前方への移動が規制され、利用者へ起き上がり方向への力を効果的に作用させ、利用者の補助をより安定的に行うことができる。腰フレーム部12に代えて、腰ベルト13を関節部16の前方のみならず後方へも配置して、腰ベルトによって関節部16を利用者の股関節部へ固定するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、太腿プレート18を利用者の下肢の前側のみを覆う形状としたが、利用者の下肢の全周を覆う構成としてもよい。特に、前方のみを覆うことで、装着の煩雑さが省けると共に、全周を覆う場合と比較して利用者の装着感も向上させることができる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0069】
本実施形態の腰補助装置50では、アクチュエータが、連結フレーム20側に配置されている点が第1実施形態と異なっている。また、関節部16に、クラッチ機構が設けられている点が第1実施形態と異なっている。
【0070】
図11〜図13に示すように、連結フレーム52は、長尺筒状とされ、利用者の下肢に沿って配置されている。連結フレーム52の一端部は、アーム54を介して回転シャフト28に回転可能に取り付けられて、下サイド部14Dに連結されている。連結フレーム52の他端部には、太腿プレート18が取り付けられている。連結フレーム52の筒内には、下アクチュエータ70が収納されている。下アクチュエータ70の自体の構成は、アクチュエータ40と同様である。図14に示すように、下アクチュエータ70には、スイッチSWを介してコンプレッサCPが接続されている。給気スイッチS1がオン、且つ、排気スイッチS2がオフにされた場合には、コンプレッサCPから下アクチュエータ70へ圧縮空気が供給され、排気スイッチS2がオン、且つ、給気スイッチS1がオフにされた場合には、下アクチュエータ70内の空気が排気される。
【0071】
下アクチュエータ70のワイヤ72は、下アクチュエータ70の上端側から出て、一端が後述するプーリー68に固定されている。
【0072】
左右の関節部16の各々には、クラッチ機構60が構成されている。クラッチ機構60は、図15に示すように、制御空気室部材62、ダイアフラム64、プレート66、プーリー68を含んで構成されている。
【0073】
制御空気室部材62は、略円板状とされ、外側面の周方向に凹状の制御空気室62Aが構成されている(図16及び図17参照)。また、外周面には、制御空気室62Aに連通する制御空気ポート62Bが穿孔されている。制御空気ポート62Bには、スイッチSWを介してコンプレッサCPが接続されている。給気スイッチS1がオン、且つ、排気スイッチS2がオフにされた場合には、コンプレッサCPから制御空気ポート62Bを介して制御空気室62Aに圧縮空気が供給され、排気スイッチS2がオン、且つ、給気スイッチS1がオフにされた場合には、制御空気室62A内の空気が排気される。制御空気室部材62の中央部には、軸孔62Cが穿孔され、この軸孔62Cに回転シャフト28が挿通されている。
【0074】
ダイアフラム64は、制御空気室部材62の外側面に接着され、制御空気室62Aの壁面の一部を構成している。制御空気室62Aは、ダイアフラム64により密閉されている。ダイアフラム64は、弾性を有する膜で構成され、制御空気室62A内の空気圧に応じて変形し制御空気室62Aを拡縮可能とされている。
【0075】
プレート66は、略円板形状とされ、下サイド部14Dの先端部に固定されている。また、プレート66は、ダイアフラム64の外側に配置されている。プレート66には、中央部に軸孔66Aが穿孔され、この軸孔66Aに回転シャフト28が挿通されている。また、プレート66には、軸孔66Aを中心にして周方向に10個のピン孔66Bが穿孔されている。ピン孔66Bは、プーリー68側がわずかに小径とされており、段差Dが構成されている。ピン孔66Bには、後述するピン80が挿通される。
【0076】
プーリー68は、円板状とされプレート66の外側面に配置されている。プーリー68の外周には、溝68Aが構成されている。また、プーリー68の中央部には、スラストベアリング68Cが設けられ、回転シャフト28に相対回転可能に取り付けられている。プーリー68には、ピン孔66Bの並びに沿って、かつ、ピン孔66Bよりもわずかに孔同士の間隔が短い11個のピン穴68Bが穿孔されている。
【0077】
ピン80は、ピン孔66Bの各々に、ダイアフラム64側から挿入されている。図16に示すように、ピン80の外周には、スプリング82が取り付けられ、スプリング82の一端は段差Dに当接されている。ピン80は、スプリング82によりダイアフラム64側へ付勢されている。これにより、ダイアフラム64による押圧力がピン80に作用していない状態では、図16に示すように、ダイアフラム64を制御空気室62A側に押して変形させ、ピン80の先端部はプレート66内に収まってプーリー68側へ突出しないようになっている。制御空気室62Aへ圧縮空気が供給されて制御空気室62A内の圧力が高くなると、図17に示すように、ピン80はダイアフラム64によりプーリー68側へ押されて、先端がプーリー68側へ突出し、ピン孔68Bのいずれかに挿入されるように構成されている。
【0078】
制御空気室部材62、ダイアフラム64、及び、プレート66は、回転シャフト28と共に回転するように回転シャフト28に固定されている。プーリー68は、ピン80が挿入されていない状態では、回転シャフト28周りに回転可能とされ、ピン80のいずれかがピン孔68Bのいずれかに挿入されると、プレート66に固定されて回転シャフト28と共に回転するように構成されている。回転体24及び連結フレーム52は、回転シャフト28に対して回転可能に取り付けられている。
【0079】
下アクチュエータ70から延びるワイヤ72の端部は、プーリー68の溝68Aに固定され、溝68Aに沿って巻きかけられている。ワイヤ72の長さは、連結フレーム20の利用者前方への回転に追従可能な充分な長さが確保されている。アーム54とプーリー68の間には、例えば捩りバネから成る、テンションスプリング74が取り付けられ、プーリー68を左側からみて反時計回り方向に付勢している。これにより、ワイヤ72の遊び分はプーリー68に巻き取られ、下アクチュエータ70へプリテンションがかかった状態となっている。このプリテンションは、アクチュエータの定格の5〜10%程度とされ、これにより、アクチュエータの使用効率を向上することができる。
【0080】
次に、本実施形態の作用について説明する。
利用者が前屈動作を行うと、背中フレーム14が、利用者の上体の前傾に追従して前傾する。このとき、スイッチSWの給気スイッチS1はオフしており、背中フレーム14と連結フレーム20とは、関節部16の回転軸S周りに相対回転する。この相対回転時に、背中フレーム14と連結フレーム20とは、クラッチ機構60によって連結を切り離されているので、背中フレーム14はフリーに前傾に追従することができる。
【0081】
背中フレーム14が前傾の状態で、スイッチSWの給気スイッチS1をオン、且つ排気スイッチS2をオフにすると、下アクチュエータ70、及び、制御空気室62Aへの給気が行われる。これにより、下アクチュエータ70が短縮する。制御空気室62Aの内圧が高くなり、ダイアフラム64は、図16に示す状態から図17に示す状態へ変形し、ピン80がプーリー68のピン穴68Bに挿入される。これにより、プーリー68は、プレート66に固定され、ワイヤ72の巻き出しは規制される。したがって、下アクチュエータ70は、短縮の開始時から、ワイヤ72に張力Fを発生させることができる。
【0082】
張力Fにより、連結フレーム52には、回転軸Sを中心に、回転方向Yへの力が作用され、背中フレーム14には、回転軸Sを中心に、連結フレーム52とは逆回転方向Xへの力が作用される。このとき、前傾した利用者の上体には、肩ベルト22を介して、起き上がり回転方向Xへの力が作用するので、利用者が上体を起こす動作を補助することができる。また、前傾姿勢時における負担が軽減され、前傾姿勢の維持を容易に行うことができる。さらに、起き上がり回転方向Xへの力を、利用者の前方への傾倒力よりも大きくすることにより、背中フレーム14を起き上がり方向Xへ回転させて、利用者の上体を起こさせることができる。
【0083】
スイッチSWの給気スイッチS1をオフにし、排気スイッチS2をオフにすると、アクチュエータへの給気が停止されて、下アクチュエータ70内、及び、制御空気室62A内の空気圧の上昇が停止し、下アクチュエータ70の短縮が停止される。この状態において、背中フレーム14が停止する。
【0084】
この状態で、前傾した利用者の上体の重みが肩ベルト22にかけられると(前傾した上体を肩ベルト22に預けると)、上体が背中フレーム14に吊り下げられた状態になる。したがって、利用者は、背腰部の筋肉(脊柱起立筋等)を使うことなく、前傾姿勢を維持することが可能となる。このように、下アクチュエータ70の短縮を維持することによっても、利用者の前傾姿勢維持の補助が達成される。
【0085】
本実施形態によれば、クラッチ機構60を備えているので、下アクチュエータ70の作動時に、ワイヤ72の巻き掛けられたプーリー68がプレート66に固定される。これにより、ワイヤ72の下アクチュエータ70からの巻き出しが規制されて、下アクチュエータ70の作動直後からワイヤ72に張力Fを発生させることができる。したがって、下アクチュエータ70については、ワイヤ72の遊び長さ吸収分の短縮が不要となり、下アクチュエータ70を効率よく利用することができる。
【0086】
なお、本実施形態では、下アクチュエータ70の作動時にワイヤ72へ張力Fを発生させるクラッチ機構60を設けたが、第1実施形態におけるアクチュエータ40側にもクラッチ機構60と同様の構成を適用することもできる。
【0087】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1、第2実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0088】
本実施形態の腰補助装置90は、背中装着部としての背中フレームの形状、前支持部としての肩ベルトと背中フレームとの連結構造、及び、連結部の連結構造が第1実施形態と異なっている。
【0089】
図18、19に示されるように、本実施形態の腰部補助装置90は、背中フレーム92、前支持部94、大腿プレート18、及び、連結フレーム96を備えている。
【0090】
背中フレーム92は、2本のサイドフレーム92A、センターフレーム92B、及び、取付プレート92Cを備えている。2本のサイドフレーム92Aは、利用者の下側の一端部が、各々下サイド部14Dに連結され、上側の各々の他端部が互いに連結され、全体として上側を頂点とする略三角形状に構成されている。センターフレーム92Bは、サイドフレーム92Aの中間部で、2本のサイドフレーム92A同士を連結している。サイドフレーム92Aの内部には、アクチュエータ40が備えられ、アクチュエータ40の下端からワイヤ42が延出され、滑車部44に巻き掛けられている。
【0091】
取付プレート92Cは、断面L字になるように屈曲された板状とされている。取付プレート92Cは、L字の一辺面が2本のサイドフレーム92Aの上端部を覆うように、且つ、L字の他辺面が2本のサイドフレーム92Aの前側に配置されるように取り付けられている。取付プレート92CのL字の他辺面には、支持棒92Dが取り付けられている。支持棒92Dは、上下方向に配置され、下端に後述する前支持部94の回動部94Bが連結されている。支持棒92Dは、上端側が取付プレート92Cに取り付けられている。支持棒92Dは、取付プレート92Cに対して上下方向にスライド移動して取付位置を変更可能とされており、下端の位置が上下方向に調整可能になっている。
【0092】
前支持部94は、可動プレート94A、及び、肩ベルト22を有している。可動プレート94Aは板状とされ、板面が取付プレート92Cの他辺面と略平行になるように配置されている。可動プレート94Aの取付プレート92C側には、回動部94Bが設けられている。回動部94Bは、支持棒92Dの下端と連結され、支持棒92Dとの連結部分を中心にして回動可能とされている。回動部94Bは、支持棒92Dの先端を球状としてその周りをベアリングで受ける構造としたり、前後方向に配置された軸に支持棒92Dを固定して当該軸を回動可能に支持したりすることにより構成することができる。これにより、可動プレート94Aと取付プレート92C(背中フレーム92)とは、互いに対向した状態で相対回転可能とされている。すなわち、図20(A)に示される状態から、利用者が上半身を左右に倒すと、図20(B)に示されるように、背中フレーム92に対して前支持部94が回動して利用者の上半身に追随するようになっている。また、前支持部94は、支持棒92Dの取付プレート92Cに対する取付位置を変更することにより、背中フレーム92に対して上下方向に位置調整できるようになっている。
【0093】
肩ベルト22は、左右一対設けられており、各々の一端が可動プレート94Aの上端に取り付けられ、他端が可動プレート94Aの下端に取り付けられている。左右一対の肩ベルト22は、中央部でベルト22Aによって連結され、利用者の上半身に肩ベルト22が密着するようにしている。
【0094】
連結フレーム96は、背中フレーム92との相対回転によっても、屈曲しないリジッドな部材で構成されている。連結フレーム96は、上連結部97及び下連結部98を有している。上連結部97は、断面コ字状の長尺板形状とされ、利用者の下肢に沿ってコ字の開放側が外向きとなるように配置されている。上連結部97は、一端(上端)が、関節部16で下サイド部14Dと連結されている。下サイド部14Dと上連結部97とは、利用者の左右方向に沿った回転軸S周りに、互いに相対回転可能に連結されている。上連結部97のコ字状で互いに対向する板面には、連結穴97Aが長手方向に複数並ぶように穿孔されている。また、上連結部97のコ字状の中央に配置される板面には、長手方向に長穴97Bが構成されている。
【0095】
上連結部97の下端側には、下連結部98が連結されている。下連結部98は、ヒンジ98Cを介して板状の第1連結部98Aと第2連結部98Bとが連結されて構成されている。第1連結部98Aと第2連結部98Bとは、ヒンジ98Cにより、利用者の前後方向を軸として互いに相対回転可能とされている。第1連結部98Aの上端は、上連結部97のコ字内側に挿入可能とされ、上連結部97に連結されている。図19に示されるように、第1連結部98Aの上端には、幅方向の両端に突出する係合部98AEが形成されており、該係合部98AEが上連結部97の対向配置された一対の連結穴97Aに係合されて、第1連結部98Aと上連結部97とが連結されている。第1連結部98Aには、長穴97Bに係合するピン98Pが形成されており、ピン98Pは、長穴97Bに沿って移動し、第1連結部98Aを上連結部97の長手方向に沿ってガイド可能になっている。複数の連結穴97Aが構成されていることから、連結穴97Aを選択することによって連結フレーム96の長さを調整できるようになっている。
【0096】
第2連結部98Bには、太腿プレート18が連結されている。太腿プレート18は、利用者の下肢の前方を覆う湾曲形状とされている。太腿プレート18は、利用者の下肢の前方に配置される。
【0097】
本実施形態における、アクチュエータ40を用いた利用者の前傾動作、起き上がり動作については、第1実施形態と同様に行われる。
【0098】
本実施形態の腰補助装置90では、背中フレーム92が頂点を上側とする略三角形状とされているので、利用者の肩、腕の後方側にスペースができ、動作の自由度を高くすることができる。
【0099】
また、2本のサイドフレーム92Aは、利用者の上下方向から傾斜して配置されているので、サイドフレーム92Aの長さは上下方向に配置した場合と比較して長くなる。したがって、内部により長いアクチュエータ40を配置することができ、大きな出力を得ることができる。
【0100】
また、前支持部94は、背中フレーム92に対して対向した状態で相対回転可能とされ、利用者の上半身の左右への動きに追随するので、利用者が自由に上半身を左右方向へ倒すことができる。
【0101】
また、本実施形態では、連結フレーム96の長さが調整できるようになっているので、利用者に応じて、適切な位置に大腿プレート18を配置することができる。
【0102】
また、本実施形態では、第1連結部98Aと第2連結部98Bとが、ヒンジ98Cにより、利用者の前後方向を軸として互いに相対回転可能とされており、連結プレート96が利用者の脚の開脚動作に追随するので、利用者が自由に脚の開脚動作を行うことができる。
【0103】
以上、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。例えば、本実施形態では、アクチュエータとして、空気圧式アクチュエータを用いたが、モータの作動により回転体に巻き付けられ、又は回転体から巻き出されるワイヤを、アクチュエータとして用いてもよい。また、回転体を回転不能又は回転自在とするクラッチを、アクチュエータとすることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 腰部補助装置
12 腰フレーム部
14 背中フレーム
16 関節部
18 太腿プレート
20 連結フレーム
22 肩ベルト
24 回転体
26 プレート
28 回転シャフト
40 アクチュエータ
42 ワイヤ
50 腰補助装置
52 連結フレーム
60 クラッチ機構
66 プレート
68 プーリー
70 下アクチュエータ
72 ワイヤ
74 テンションスプリング
90 腰部補助装置
92 背中フレーム
94 前支持部
94B 回動部
96 連結フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の背部に装着され、利用者の前方への傾倒に追従移動可能な背中装着部と、
前記背中装着部に取付部を介して該取付部を中心に利用者の左右方向へ回動可能に取り付けられると共に、利用者の体幹前方側へ延出されて利用者の体幹前方側を支持する前支持部と、
利用者の下肢の少なくとも前方に装着される下肢装着部と、
一端部が前記下肢装着部に連結され、他端部が前記背中装着部の前記追従移動を許容するように前記背中装着部と相対移動可能に関節部で連結され、前記相対移動時に非屈曲形状を維持可能な連結部と、
作動状態において、利用者の前方への傾倒に抗する力を前記背中装着部へ作用させるアクチュエータと、
を備えた腰部補助装置。
【請求項2】
前記背中装着部は、利用者の背部の上側を頂点とする三角形状であること、を特徴とする請求項1に記載の腰部補助装置。
【請求項3】
前記背中装着部は、利用者の背部の上側で合流して三角形状の2辺を構成する2本のフレームを有し、該フレームに沿って前記アクチュエータが配置されていること、を特徴とする請求項2に記載の腰部補助装置。
【請求項4】
前記下肢装着部は、前記背中装着部に対して利用者の上下方向に可動とされていること、を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の腰部補助装置。
【請求項5】
前記下肢装着部は、前記背中装着部に対して利用者の前後方向を軸心として回動可能であること、を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の腰部補助装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記背中装着部へ利用者の起き上がり方向への力を作用させること、を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の腰部補助装置。
【請求項7】
前記関節部は、前記背中装着部と前記連結部とが利用者の左右方向に沿った軸周りに相対回転可能となるように構成されていること、を特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の腰部補助装置。
【請求項8】
前記関節部で前記連結部及び背中装着部に連結され、利用者の腰部に装着される腰装着部、をさらに備えたこと、を特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の腰部補助装置。
【請求項9】
前記アクチュエータは、内部に空気を供給されることにより短縮する空気圧式アクチュエータとされていること、を特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の腰部補助装置。
【請求項10】
前記アクチュエータの一端からワイヤが延出され、
前記関節部に、周部へ前記ワイヤが巻き掛けられた回転体が設けられ、前記アクチュエータの作動開始当初から前記ワイヤの張力が前記背中装着部及び前記連結部に作用するように、前記アクチュエータの作動時に前記回転体と前記背中装着部または前記連結部とを固定するクラッチ機構が構成されていること、を特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の腰部補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−87926(P2011−87926A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214287(P2010−214287)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】