説明

腰部負担軽減具

【課題】モーメントアームの先端に接続する下肢接続弾性具の長さを任意に調節可能にした簡単な接続ベルト機構を提供する。
【解決手段】モーメントアームの左右両側の各々にベルト巻付軸を設けると共に、前記ベルト巻付軸の両側に軸受け部材を設け、軸受け部材に回動支持アームの下端をベルト巻付軸に平行に軸支し、回動支持アームの上端にループ形成軸を設け、前記上接続ベルトを前記ベルト巻付軸の後部側を通して後、ループ形成軸にループ巻きし、再びベルト巻付軸と先に巻いた接続ベルトとの間に通して挿出し、回動支持アームによるループ形成軸の回動範囲を、所定の範囲にするストッパーを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前屈姿勢を頻繁にとる介護者や農作業者や荷役作業者、あるいは新生児沐浴作業者等が背部に装着する腰部負担軽減具の改良発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この腰部負担軽減具の原型は、本発明者が開発したもので、その特徴は、「作業者の肩部から腰部に亘る背部にフィットする枠状の背当フレームを有し、この背当フレームに、当該背当フレームを作業者の背部に装着するための肩ベルトと腰ベルトを装備し、更に腰部が位置する部位の後方(反腰側)に突出するモーメントアームを設け、このモーメントアームに一対の下肢接続弾性具を接続し、下肢接続弾性具は、上接続ベルトと紐状又はベルト状の弾性体と下接続ベルトと下肢脱着具を連結して下肢脱着具を膝部や下肢の任意の部位に巻いて、作業者の前屈姿勢の際に当該弾性体に弾性復元力を発生させるものである。
つまりこの腰部負担軽減具は、作業者の背部に装着しても、前記の特徴のように極めて軽量で取り扱いが簡便な構成であり、背部に装着後、前記作業における前屈姿勢の際、腰部に掛かるモ−メントを、モーメントアームの先端に掛かる紐状又はベルト状の弾性体の弾性復元力により、助力軽減するものであり、モーメントアームの後方(反腰側)に突出する長さ及び又は紐状の弾性体の弾性特性や長さ等を任意に可変設定することにより作業者の腰部実負担に応じた適切なモ−メント軽減量にして、安定した作業、安全な作業を確保するものである。
【特許文献1】特開2005−192764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、前記モーメントアームの先端に接続する下肢接続弾性具の長さを任意に調節可能にした簡単な接続ベルト機構を提供して、作業者の前屈姿勢の際にその前屈深さによって腰部に掛かるモ−メントの変化に応じて適切に軽減し、安定した作業、安全な作業を確保し、もって腰部負担軽減具をより効果的に広範囲で活用することを可能ならしめるとともに、歩行する際の弾性体による歩行への影響を無くすことのできる腰部負担軽減具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の腰部負担軽減具の特徴とするところは、次の(1)〜(4)に記載の通りである。
(1)、パイプ式又は板状式の背当フレーム101に、介護者の左右の肩に掛ける肩ベルト102を付設し、背当フレーム101の下端つまり人の腰部の当たる位置に背当フレーム101の下部の反腰部側に突起形成したモーメントアーム105を設け、モーメントアーム105に一対の下肢接続弾性具110の上接続ベルト111を接続する腰部負担軽減具100において、
前記モーメントアーム105と下肢接続弾性具110の上接続ベルト111とのベルト接続機構200であり、モーメントアーム105の左右両側の各々にベルト巻付軸201を設けると共に、前記ベルト巻付軸201の両側に軸受け部材202を設け、軸受け部材202に回動支持アーム203の下端をベルト巻付軸201に平行に軸支し、回動支持アーム203の上端にベルト巻付軸201と平行にループ形成軸205を設け、前記上接続ベルト111を前記ベルト巻付軸201の後部側を通して後、ループ形成軸205にループ巻きし、再びベルト巻付軸201と先に巻いた接続ベルト111Aとの間に通して挿出し、回動支持アーム203によるループ形成軸205の回動範囲を、ループ形成軸205に掛かるループ巻きベルトの後部側のベルト部111Aが、回動支持アーム203の回転軸204の中心204C位置を通過回動可能な所定の範囲にするストッパー208、207を回動支持アーム203又は軸受け部材202或いはベルト巻付軸201に設けたことを特徴とする腰部負担軽減具。
(2)、前記回動支持アーム203と軸受け部材202又はモーメントアーム105とを伸長状態の補助スプリング206で接続し、この補助スプリング206は、回動支持アーム203の回動に伴いその回転軸204の中心204C位置を前後に通過回動可能にしたことを特徴とする前記(1)に記載の腰部負担軽減具。
(3)、前記上接続ベルト111において、ループ形成軸205にベルト部分111Aとベルト部分111Bによりループ巻きしてベルト巻付軸201から挿出したベルト部分111Bに吸収スプリング120を介在しその先端を、ベルト巻付軸201下方の上接続ベルト111部分に接続固定することを特徴とする前記(1)、又は前記(2)に記載の腰部負担軽減具。
(4)、モーメントアーム105の左右両側の各々に設けるベルト巻付軸201は、逆ハの字型に配置したことを特徴とする前記(1)又は前記(2)又は前記(3)に記載の腰部負担軽減具。ベルトベルト
【発明の効果】
【0005】
本発明の腰部負担軽減具の基本構成による効果は、リュックサックのように手軽に背負う背当フレームと、その背当フレームと下肢を結ぶ下肢接続弾性具110の弾性材112によって、作業者の前屈とともに伸びる該弾性材112からの反発力をモ−メントに変換すると共に、フレーム101自身を弾性変形するものにすれば、この弾性撓みからの復元力を更に加えて腰部にかかる負担を軽減するものである。そして更なる種々の詳細な効果は、特開2005−192764号公報記載の通りでありその紹介は省略する。
而して、本発明のポイントである前記ベルト接続機構による効果は、腰部負担軽減具を装着した作業者が直立の状態のとき、回動支持アームを後方に回動してベルト巻付軸へのベルト二重巻きを開放して上接続ベルトを下方に引くか、引き上げることにより、下肢接続弾性具110の長さ範囲を簡単に任意に調節することができる。その後回動支持アームを前方に所定範囲回動して回動支持アームの戻り回動を阻止して、ベルト巻付軸の外周面の一部にベルト二重巻き部分をしっかり圧接形成しておくことにより、作業者の前屈姿勢開始と同時に、二重巻き部分での滑り変位が無く、必要な弾性体の反発力つまり牽引力作用を確実に得て、腰部に掛かるモ−メントを確実且つ適切に軽減にする。以って安定した前屈姿勢を確保して、安全な前屈姿勢作業とその復帰姿勢作業を確保するものである。
また、前記回動支持アームと軸受け部材又はモーメントアームとを補助スプリングで接続し、この補助スプリングは、回動支持アームの回動に伴いその回転軸の中心位置を前後に通過回動可能にして常に張力を掛けておくことにより、前記ループ形成軸の回動を補助し、且つ前・後ストッパーへの適正な当接作用力を付与し、ストッパー当り停止状態を安定維持させるものである。
更に、前記上接続ベルトにおいて、ループ形成軸にループ巻きしてベルト巻付軸から挿出した部分に吸収スプリングを介在し、この上接続ベルトの先端を、ベルト巻付軸に巻かれていない部分に接続固定することにより、下肢接続弾性具の遊び長さを吸収して、作業者の歩行や椅子に座る等の日常動作を円滑且つ安全にする。
更に、モーメントアームの先端を逆への字型に形成し、このモーメントアームの左右両側の各々に、つまり逆への字型をした各辺に、ベルト巻付軸を逆ハの字型に配置することにより、フレ−ムの幅を小さくコンパクトにできる。またベルト巻付軸を逆ハの字型に配置することにより、腰部負担軽減具を装着した作業者が両足間隔を広げた際にも、下接続ベルト部、弾性材、上接続ベルト部とを結ぶ直線とベルト巻付軸の軸心との成す角度を、直角若しくは略直角にできるため、その摩擦押え効果を減退させることが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明を実施するための最良の形態については、以下に記載の実施例において詳細に紹介する。
【実施例1】
【0007】
以下、実施例を図面に基づいて説明する。図1は腰部負担軽減具の公知の基本形の使用例を示す斜視図、図2は本発明の腰部負担軽減具の詳細斜視図である。
この腰部負担軽減具100の基本形の詳細説明は、特開2005−192764号公報記載の通りであるが、本例で紹介する基本的な構成を図1により説明する。上記腰部負担軽減具100は、側面視でくの字型のパイプ式又は板状式の背当フレーム101をリュックサックのように手軽に介護作業者Hが背負うもので、背当フレーム101に、介護者Hの左右の肩に掛ける肩ベルト102と布製の網状背当て部103と、介護者の腰部(又はウエスト)にまわす腰ベルト104とを付設し、背当フレーム101の下端つまり人の腰部の当たる位置に背当フレーム101の下部の延長で反腰部側である後方に突起形成したモーメントアーム105を設け、モーメントアーム105に一対の下肢接続弾性具110を吊下げ装着したものである。
下肢接続弾性具110は、モーメントアーム105に設けたベルト接続機構200に接続する上接続ベルト111と、上接続ベルト111の下部に接続するゴムチューブ等の弾性材112と、弾性材112の下部に接続する下接続ベルト113と、下接続ベルト113の下部に接続する下肢脱着具114を有し、下肢脱着具114を下肢に装着して、(B)に示すように介護作業者Hの前屈とともに伸びる弾性材112からの反発力をモーメントアーム105によりモーメントに変換するものである。
このような構成で介護作業者Hに上記の如く装着した腰部負担軽減具100は、介護作業者Hの身体に合わせて、背当フレーム101のモーメントアーム105と接続した下肢接続弾性具110の長さをベルト接続機構200により容易に確実に可変調節して、前屈開始と同時に伸びる弾性材112からの反発力によるモ−メントを加減し、介護作業者Hの介護作業の姿勢に応じた負荷の軽減を図るものである。尚、背当フレーム101自身を弾性変形するものにすれば、この弾性撓みからの復元力を更に加えて腰部にかかる負担を軽減することができる。
【0008】
次に、この腰部負担軽減具100のベルト接続機構200について図2〜図7と共に説明する。尚文中、方向や部位の表現で、前側、前部、前等は腰部負担軽減具100を装着した介護作業者Hの背中や腰部に接する側を指し、後側、後部、後等は腰部負担軽減具100を装着した介護作業者Hの背中や腰部に接する側の反対の面、即ち解放側の面を指し、上下、左右又は両側等は腰部負担軽減具100を装着した介護作業者Hの上下、左右又は両側と同様の方向や部位を指す。
図2は、上記腰部負担軽減具100の背当フレーム101とモーメントアーム105とベルト接続機構200を示す斜視説明図であり、肩ベルト102、背当て部103、腰ベルト104、下肢接続弾性具110を省略してある。
図3は、図2の矢視A-Aから見たベルト接続機構200の回動支持ア−ム203が回動中のベルト接続機構200の拡大説明図である。
図4は、図2の矢視B-Bから見た左側に配置しているベルト接続機構200をベルトロック状態にした拡大説明図である。
図5は、図2の矢視A-Aから見たベルト接続機構200に上接続ベルト111をループ形成し、二重巻き接続する状態を模式的に示す説明図である。
図6は、ベルト接続機構200に接続する上接続ベルト111に吸収スプリング120を介設した例を示す説明図である。
図7は、腰部負担軽減具100のモーメントアーム105を逆ヘの字状にして、ベルト接続機構200のベルト巻付軸201を逆ハの字に配置した形態を示す簡略説明図である。
【0009】
而して、図2〜図7において、ベルト接続機構200は、前記モーメントアーム105と紐状の弾性体112の牽引作用端である上接続ベルト111をループ形成し二重巻き接続する。
図2において、ベルト接続機構200の構成は、逆ヘの字状のモーメントアーム105の左右両側の各々に板を曲げ加工して製作したベルト巻付軸201を逆ハの字に設けると共に、前記ベルト巻付軸201の両側にベルト巻付軸201と一体的に形成した断面コ字状の軸受け部材202を設け、軸受け部材202に回動支持アーム203の下端部をベルト巻付軸201と平行に軸ピン204で軸支し、回動支持アーム203の上端にベルト巻付軸201と平行にループ形成軸205を設ける。
回動支持アーム203によるループ形成軸205の回動範囲を、ループ形成軸205に掛かるループ巻きベルトの後部側のベルト部111Aが、回動支持アーム203の回転軸204の中心204C位置を通過回動可能な所定の範囲にする前・後ストッパー207、208を設けることにより、回動支持アーム203の回動範囲を制限する。
軸受け部材202には、それと一体的に回動支持アーム203の前部側を囲う囲い部207を設け、これを回動支持アーム203の前方回動停止用の前側ストッパーとする。また回動支持アーム203の下端後部には、ベルト巻き付け軸201と接触させることで回動支持アーム203の後回動を停止させるストッパー208を突設してある。
回動支持アーム203と軸受け部材202とは伸長状態の金属コイルスプリングかゴムバンド等の補助スプリング206で接続する。
前記補助スプリング206は、回動支持アーム203の回動に伴いその回転軸204の中心位置204Cを前後に通過回動可能にして常に張力を掛けておくことにより、補助スプリング206が回動支持アーム203の回転軸204の中心位置204Cを前方に通過すると同時に補助スプリング206は回動支持アーム203を前部側に引っ張り前記ループ形成軸205の前方回動を補助し、一方補助スプリング206が回転軸204の中心位置204Cを後方に通過すると同時に補助スプリング206は回動支持アーム203を後部側に引っ張り前記ループ形成軸205の後方回動を補助し、且つ前・後ストッパー207、208への適正な当接作用力を付与し、いずれのストッパーに対しても当接停止状態を安定維持させるものである。
これにより前記補助スプリング206と前・後ストッパー207、208は、一対の回動支持アーム203を各々独立して手等で簡単に前方又は後方に回動させるのみで、後述するベルト解除モードとベルトロックモードの二者択一の切り替えを容易に可能にしたものである。
また囲い部でもある前ストッパー207は、回動支持アーム203の前部を囲って、介護作業者Hが前屈した際にベルトロックモ−ドにある回動支持アーム203に腰等が直接触れてベルト解除モ−ドに変わる予期せぬ誤動作を防止する囲いである。
【0010】
尚、前記補助スプリング206に代わって、ベルト接続機構200の回動支持アーム203に同アームを常に後部に引き寄せるリタ−ンスプリングを設け、更に回動支持アーム203を前方に引く腰ベルト(又は腹ベルト)を接続しておけば、腰ベルトを緩めた状態では、回動支持アーム203はリタ−ンスプリングにより常に後部に引き寄せられているため、ベルト接続機構200はベルト解除モードにある。一方、腰部負担軽減効果の欲しいときには、回動支持アーム203に取り付けた腰ベルト(又はウエストベルト)を締めることで、回動支持アームを前部に回動させれば、ベルト接続機構200はベルトロックモ−ドになるため、腰部負担軽減効果が得られるようになる。
【0011】
次にこのベルト接続機構200に前記上接続ベルト111をループ形成し二重巻き接続する状態を説明する。
図5の状態のベルト接続機構200において、二点鎖線で示すように、回動支持アーム203の前記後ストッパー208が前記補助スプリング206によりベルト巻付軸201に当って停止している状態で上接続ベルト111が掛っているのがベルト解除モードである。つまりこのベルト解除モードの際、上接続ベルト111は、ベルト巻付軸201の後部側の周面201A近傍を通して後、ループ形成軸205にベルト部分111Aとベルト部分111Bによりループ巻きして、ベルト巻付軸201から挿出したベルト部111B(リターンベルト)を再びベルト巻付軸201の周面201Aと先に通したベルト部111A部(外側ベルト)との間に通して挿出したものである。
ベルト解除モードは、腰部負担軽減具100を装着した介護作業者Hが直立の状態のとき又は直立の状態で歩行等をするときに、下肢接続弾性具110の長さを調節する際の状態である。つまりこの状態で前記ループ形成軸205を経てベルト巻付軸201から挿出したリターンベルト部111Bを下方に引くか、ループ形成軸205の手前にある上接続ベルトの111A部を引き下げることにより、下肢接続弾性具110の長さを簡単に任意に調節することができる。
その後、実線で示すようにループ形成軸205を回動支持アーム203を前側(腰側)に回動させてループ形成軸205に掛かるループ巻きベルトの後部側のベルト部111Aが、回動支持アーム203の回転軸204の中心204C位置を通過させ更に前側(腰側)に所定範囲回動して、前ストッパー207と補助スプリング206により回動を停止した状態にして、ベルト巻付軸201の周面201Aに上接続ベルトの111A部とリターンベルト部111Bが重なり二重巻き部を形成しておく。これで回動支持アーム203は下肢接続弾性具110からの牽引力で後方に戻り回動することは無い。
この状態がベルトロックモードで、作業者が前屈姿勢を開始すると、上接続ベルト111に下方牽引力が加わり,当該二重巻き部の111A部は、リターンベルト部111Bをベルト巻付軸201の周面201Aに押し付けて、リターンベルト部111Bの両面に大きな摩擦力を作用させ、滑りを皆無にし上接続ベルト111の巻き戻りを確実に阻止するのである。
これにより作業者の前屈姿勢の際に、その開始から二重巻き部の滑り変位が無く、必要な弾性体112の牽引力作用を確実に得て、腰部に掛かるモ−メントを確実且つ適切に軽減にする。以って安定した前屈姿勢を確保して、安全な前屈姿勢作業とその復帰姿勢作業を確保するものである。
【0012】
前記回動支持アーム203と軸受け部材202(又はモーメントアーム105でも良い)とを伸長状態の補助スプリング206で接続してあるため、この補助スプリング206は、前記ループ形成軸205を後側(反腰側)に回動した際その回動補助と後ストッパー208に当てる作用力、及びループ形成軸205を前側(腰側)に回動した際その回動補助と前ストッパー207に当てる作用力を付与し、前・後ストッパー207、208の当り停止状態を安定維持させるものである。
【0013】
図6の前記上接続ベルト111において、ループ形成軸205にループ巻きしてベルト巻付軸205から挿出したリターンベルト111B部分にゴム紐などの弱い吸収スプリング120を介在し、その先端を、ベルト巻付軸201に巻かれていない部分111Aに接続固定することにより、ベルト巻付軸201でほとんど重なることのないベルト解除モ−ドでは,上接続ベルト111、弾性材112、下接続ベルト113自体の長さに遊びがあっても、前記吸収スプリング120の復元力により接続ベルト111はベルト接続機構200内に自動的に引き込まれて元の状態に戻る。
またこの際、ループ形成軸205の少なくとも周面部を摩擦係数の小さな材質にするか,転がり軸受などを利用してループ形成軸205を回転自在にすれば,接続ベルト111はベルト接続機構200内をより自在に出入り通過することができる。
これによって、腰部負担軽減具100を装着して例えば歩く際に,前に出す足の動きに伴い上接続ベルト111がベルト接続機構200内から引き出されると,吸収スプリング120が伸ばされる。その状態から後ろに送る足の動きに伴い上接続ベルト111とが弛むと、吸収スプリング120の復元力により上接続ベルト111は再びベルト接続機構200内に自動的に引き込んで、弛みを取り元の状態に戻す。
従ってこのような介護作業者Hの歩行や椅子に座る等の日常動作については殆ど拘束することがない。またこのように自由に日常動作した後でも上接続ベルト111は常に日常動作前と同じ状態に戻るため,回動支持アーム203を前記ベルトロックモ−ドにするのみで介護のための前屈作業を直ちに開始することができる。
【0014】
図7において、逆への字状に形成したモーメントアーム105の左右両側の各々にベルト接続機構200のベルト巻付軸201を逆ハの字状に配置する。つまりベルト巻付軸201を互いに15°以下の斜めに配置して逆ハの字状にすることで,腰部負担軽減具100の腰部の幅を小さくできる。また当該逆ハの字状にすることにより腰部負担軽減具100を装着した介護作業者Hが、一般に前屈姿勢の際には、両足間隔をある程度安定する間隔に保持するが、こうして弾性材112を伸長作用させた際、下接続ベルト113、弾性材112、上接続ベルト111とを結ぶ直線とベルト巻付軸201の軸心とが成す角度を直角若しくは略直角にすることができる。かくしてベルト巻付軸201に対するベルト二重巻き部の面圧を全面均一にして摩擦押え効果を減退させることが無い。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の腰部負担軽減具は、前述のように、腰部負担軽減具を装着した作業者が直立の状態のとき、ベルト巻付軸へのベルト二重巻きを開放して上接続ベルトを下方に引くか、引き上げることにより、紐状弾性体の弾性伸長長さ範囲を簡単に任意に調節することができる。その後ベルト巻付軸に圧接したベルト二重巻きをしっかり形成しておくことにより作業者の前屈姿勢開始と同時に、二重巻き部の滑り変位が無く、必要な弾性体の反発力つまり牽引力作用を確実に得て、腰部に掛かるモ−メントを確実且つ適切に軽減にする。以って安定した前屈姿勢を確保して、安全な前屈姿勢作業とその復帰姿勢作業を確保する優れた効果を呈するものであり、腰に大きな負担のかかる作業者の多い産業に貢献すること多大なものがある
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の腰部負担軽減具の基本形の1例を作業者が装着した状態で示す斜視図であり、(A)は作業者が直立の状態のとき、(B)は作業者が前屈した状態のときを示す。
【図2】腰部負担軽減具100の背当フレーム101とモーメントアーム105とベルト接続機構200を示す斜視説明図であり、肩ベルト102、背当て部103、腰ベルト104、下肢接続弾性具110を省略してある。
【図3】図2の矢視A-Aから見たベルト接続機構200の回動ア−ム203が回動中のベルト接続機構200の拡大説明図である。
【図4】図2の矢視B-Bから見たベルト接続機構200をベルトロック状態にした拡大説明図である。
【図5】図2の矢視B-Bから見たベルト接続機構200に上接続ベルト111をループ形成し、二重巻き接続する状態を模式的に示す説明図である。
【図6】ベルト接続機構200に接続する上接続ベルト111に吸収スプリングを介設した例を示す説明図である。
【図7】腰部負担軽減具100のモーメントアーム105を逆ヘの字状にして、ベルト接続機構200を逆ハの字に配置した形態を示す簡略説明図である。
【符号の説明】
【0017】
100 腰部負担軽減具
101 背当フレーム
105 モーメントアーム
110 下肢接続弾性具
200 ベルト接続機構
201 ベルト巻付軸
202 軸受け部材
203 回動支持アーム
205 ループ形成軸
204C 回転軸204の中心
207、208 前・後ストッパー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ式又は板状式の背当フレーム101に、介護者の左右の肩に掛ける肩ベルト102を付設し、背当フレーム101の下部の反腰部側に突起形成したモーメントアーム105を設け、モーメントアーム105に一対の下肢接続弾性具110の上接続ベルト111を接続する腰部負担軽減具100において、
前記モーメントアーム105と下肢接続弾性具110の上接続ベルト111とのベルト接続機構200であり、モーメントアーム105の左右両側の各々にベルト巻付軸201を設けると共に、前記ベルト巻付軸201の両側に軸受け部材202を設け、軸受け部材202に回動支持アーム203の下端をベルト巻付軸201と平行に軸支し、回動支持アーム203の上端にベルト巻付軸201と平行にループ形成軸205を設け、前記上接続ベルト111を前記ベルト巻付軸201の後部側を通して後、ループ形成軸205にループ巻きし、再びベルト巻付軸201と先に巻いた接続ベルト111Aとの間に通して挿出し、回動支持アーム203によるループ形成軸205の回動範囲を、ループ形成軸205に掛かるループ巻きベルトの後部側のベルト部111Aが、回動支持アーム203の回転軸204の中心204C位置を通過回動可能な所定の範囲にするストッパー207、208を回動支持アーム203又は軸受け部材202或いはベルト巻付軸201に設けたことを特徴とする腰部負担軽減具。
【請求項2】
前記回動支持アーム203と軸受け部材202又はモーメントアーム105とを伸長状態の補助スプリング206で接続し、この補助スプリング206は、回動支持アーム203の回動に伴いその回転軸204の中心204C位置を前後に通過回動可能にしたことを特徴とする前記請求項1に記載の腰部負担軽減具。
【請求項3】
前記上接続ベルト111において、ループ形成軸205にベルト部分111Aとベルト部分111Bによりループ巻きして、ベルト巻付軸201から挿出したベルト部分111Bに吸収スプリング120を介在しその先端を、ベルト巻付軸201下方の上接続ベルト111部分に接続固定することを特徴とする前記請求項1又は前記請求項2に記載の腰部負担軽減具。
【請求項4】
モーメントアーム105の左右両側の各々に設けるベルト巻付軸201は、逆ハの字型に配置したことを特徴とする前記請求項1又は前記請求項2又は前記請求項3に記載の腰部負担軽減具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−4935(P2010−4935A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164512(P2008−164512)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【出願人】(597093894)旭ゴム化工株式会社 (11)
【Fターム(参考)】