腸内細菌関連ペプチドの発現に関する組成物、方法、および使用
本発明の実施形態は、一般に、腸内細菌関連ペプチドを生成および発現するための方法、組成物および使用を開示する。いくつかの実施形態において、腸内細菌関連ペプチドとしては、ペスト関連ペプチドが挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態において、方法は、一般に、構築物からなる組成物を作製および使用することに関連し、この構築物としては、腸内細菌関連ペプチドを発現する弱毒化または改変されたワクシニアウイルスベクターが挙げられるが、これに限定されない。他の実施形態において、ワクチン組成物は、被験体において使用することが報告されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、PCT出願であり、2009年11月24日に出願された米国仮特許出願第61/264,144号の利益を主張する。米国特許法119条(e)に従って、この先行出願は、すべての目的のために、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0002】
分野
本発明の実施形態は、腸内細菌関連ペプチドを有する構築物を生成および発現するための方法、組成物および使用を報告する。いくつかの実施形態において、腸内細菌関連ペプチドとしては、ペスト関連ペプチドが挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態において、本発明は、限定されずに、腸内細菌関連ペプチドを発現する弱毒化または改変されたワクシニアウイルスベクターを含む構築物を作製および使用するための方法を開示する。
【背景技術】
【0003】
背景
ウイルス感染症に対して保護するためのワクチンは、ヒト疾患の発生を低減するために有効に使用されてきた。ウイルスワクチンについての最も成功した技術の1つは、弱められた、または弱毒化されたウイルスの株(「生の弱毒化されたウイルス」)で動物またはヒトを免疫することである。免疫処置後の限定された複製に起因して、上記弱毒化された株は、疾患を引き起こさない。しかし、上記限定されたウイルス複製は、ウイルス抗原の完全なレパートリー(repertoire)を発現するのに十分であり、そのウイルスに対して効力があって長期にわたる免疫応答を生成する。従って、上記ウイルスの病原性株に対する引き続きの曝露の際に、免疫された個体は、疾患から保護される。これらの生の弱毒化されたウイルスワクチンは、公衆衛生において使用される最も成功したワクチンの中の1つである。
【0004】
Yersiniaは、腸内細菌科における細菌の属である。エルシニアは、通性嫌気性菌である。Yersiniaのいくつかのメンバーは、ヒトにおいて病原性である。しばしば、げっ歯類は、Yersiniaの天然の保菌生体であり、他の哺乳動物は、これらの細菌に対する宿主としての役割を担うことは少ない。感染は、節足動物の刺咬(arthopod bite)、血液への曝露、空気伝播(aerosol transmission)(例えば、Y.pestis)を介して、または例えば、その細菌で汚染された食品(例えば、野菜、乳由来の製品、および肉)の消費によってのいずれかで起こり得る。伝播についての他の様式は、おそらく存在する(例えば、原生生物のメカニズム(protozoonitic mechanism)によって)。上記Yersinia科は、どちらかと言えば大きいが、たった2つのみ(Y.pseudotuberculosisおよびY.enterocolitica)が、水により伝搬する(water−borne)、疾患の急激な発生(outbreak)に関連付けられている。Yersinia種は、動物保菌生体(例えば、Y.pestisについてのげっ歯類保菌生体)において世界中で見出され、それは井戸水、水処理施設、川および湖で単離される。Yersinia pestis(Pasteurella pestisとも称される)は、エルシニア種の最も有名なメンバーであり、ペストの原因となる生物である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、一般に、腸内細菌関連ペプチドを発現させるための方法、組成物、および使用に関する。いくつかの実施形態において、腸内細菌関連ペプチドとしては、ペスト関連ペプチドが挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態は、腸内細菌に曝されている、または曝される可能性のある被験体を処置または保護するために本発明の構築物を作製および使用することを報告する。これらの実施形態に従って、構築物としては、腸内細菌関連ペプチドを発現する弱毒化または改変されたワクシニアウイルスベクターが挙げられ得るが、これらに限定されない。他の実施形態において、方法および組成物は、構築物を有する組成物を作製および使用することを報告し、この構成物としては、例えば、被験体において、Yersinia spp.に対する免疫応答を誘導するための、Yersinia spp関連ペプチドを発現する弱毒化または改変されたワクシニアウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。これらの実施形態のうちのいくつかは、生物兵器としてYersinia spp.を用いる潜在的な脅威、またはYersinia spp.の急激な発生(その地球規模の健康への影響(health implication)を有する)の可能性についての解決策に取り組む。
【0006】
特定の実施形態は、Yersinia spp.に関連する抗原またはペプチドを有する構築物を有する組成物を報告し、この抗原またはペプチドとしては、F1、V、短縮型V、もしくはYopDポリペプチド、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態としては、C末端が短縮された1つまたはそれより多くの低カルシウム応答(V)抗原が挙げられ得る。これらの実施形態に従って、低カルシウム応答(V)抗原のC末端の短縮としては、炎症性サイトカインの発現を抑制する短縮、免疫抑制性配列を除去する短縮、対応する全長または改変されていないLcrVタンパク質よりも免疫抑制性ではない短縮、LcrVの163個までの連続した残基の欠失(deletion is of)、内部欠失、90個までの連続した残基の内部欠失、LcrVタンパク質のアミノ酸240〜325に及ぶ領域に広がる内部欠失、50個までの連続した残基のC末端の欠失、長さが少なくとも275残基のLcrVタンパク質、またはそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態は、被験体において、腸内細菌(例えば、Yersinia spp)への曝露によって引き起こされる感染を低減または防ぐことが可能であるワクチン組成物を報告し、それは、例えば、その生物の莢膜に被われている形態および莢膜のない形態からの保護が挙げれるが、これに限定されない。
【0007】
いくつかの局面において、ワクチン組成物としての使用の構築物は、1つまたはそれより多くの分泌シグナル配列単独、または1つまたはそれより多くの翻訳調節領域配列と組み合わせた分泌シグナル配列を含み得る。これらの実施形態に従って、分泌シグナル配列は、哺乳動物細胞において機能的である1つまたはそれより多くのシグナル配列であり得る。他の実施形態において、分泌シグナル配列としては、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)リーダー配列、補因子リーダー配列、プレプロインスリンリーダー配列、インベルターゼリーダー配列、免疫グロブリンAリーダー配列、オボアルブミンリーダー配列、およびP−グロビンリーダー配列、または当該分野において公知である他のプロリーダー配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
本明細書中に開示されるワクチン組成物は、当該分野において公知である任意の方法によって投与され得る。特定の実施形態において、ワクチンは、皮内に、筋肉内に、吸入によって、鼻内に、静脈内に、または当該分野において公知である任意の他の経路によって投与され得る。いくつかの組成物は、健康提供者によって評価されるような、徐放性処方物または他の処方物によって投与され得る。
【0009】
他の実施形態は、開示される組成物を作製または使用するためのキットに関係する。キットは、改変されたワクシニアウイルスベクターおよび1つまたはそれより多くの腸内細菌抗原由来の抗原を有する構築物を含み得ることが報告されている。他のキットは、本明細書中に企図される構築物を作製するための方法を含み得る。
【0010】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、特定の実施形態をさらに実証するために含まれる。いくつかの実施形態は、これらの図面のうちの1つまたはそれより多くを単独でまたは提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、参照することによって、より良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、改変されたワクシニアウイルスとYersinia関連ペプチドとからなる例示的な構築物を表す。
【図2A】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図2B】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図2C】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図2D】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図2E】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図3A】図3Aは、本明細書中に開示されるいくつかの実施形態の構築物組成物(construct composition)のワクチンに対する、マウスにおける免疫応答のヒストグラム(ブースト前(pre−boost)、およびチャレンジ前(pre−challenge))を表す。
【図3B】図3Bは、本明細書中に開示されるいくつかの実施形態の構築物組成物のワクチンに対する、マウスにおける免疫応答の例示的なヒストグラム(ブースト前、チャレンジ前)を表す。
【図4A】図4Aは、腸内細菌での鼻内チャレンジ後に、例示的な腸内細菌指向性ワクチン(enterobacterial−directed vaccine)または対照の処方物で免疫されたマウスの生存率を例示する例示的なプロットを表す。
【図4B】図4Bは、腸内細菌での腹腔内チャレンジ後に、例示的な腸内細菌指向性ワクチンまたは対照の処方物で免疫されたマウスの生存率を例示する例示的なプロットを表す。
【図5】図5は、免疫無防備状態マウスにおいて接種された腸内細菌指向性ワクチンの安全性の例示的な評価を表す。
【図6】図6は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態のワクチンの、IM(筋肉内)またはID(皮内)のプレブーストおよびポストブースト(pre and post boost)後に測定およびプロットされる、抗体のタイターの例示的なプロットを表す。
【図7】図7は、構築物データの編集物を表3として表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書中で使用されるとき、「a」または「an」は、項目の1つまたは1つよりも多くを意味し得る。
【0013】
本明細書中で使用されるとき、入物(vessel)としては、試験管、ミニフュージもしくはマイクロフュージ管(mini− or micro−fuge tube)、管状物(channel)、バイアル、マイクロタイタープレート、または容器(container)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書中で使用されるとき、「被験体(subject)」または「被験体(subjects)」としては、哺乳動物、例えば、ヒトまたは飼い慣らされた、または野生の、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、他の家庭用ペット(例えば、ハムスター、モルモット、マウス、ラット)、フェレット、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、プレーリードッグ、野生のげっ歯類、または動物園の動物が挙げられ得るが、これらに限定されない。被験体は、成人または子供であり得る。
【0015】
本明細書中で使用されるとき、「約」は、+10%または−10%を意味し得る。
【0016】
本明細書中で使用されるとき、「弱毒化されたウイルス」は、被験体(例えば、哺乳動物(例えば、ヒトまたは動物))へ投与されるときに疾患の医学的徴候の低減または疾患の医学的徴候がないことを実証するウイルスを意味し得る。
【0017】
本明細書中で使用されるとき、「MSC」は、複数のクローニング部位を意味し得る。
【0018】
本明細書中で使用されるとき、「dSP」は、多様なワクシニアプロモーターを意味し得る。
【0019】
本明細書中で使用されるとき、「MVA」は、改変されたワクシニアアンカラを意味し得る。
【0020】
本明細書中で使用されるとき、「EMCV」は、脳心筋炎ウイルスを意味し得る。
【0021】
本明細書中で使用されるとき、「IRES」は、脳心筋炎ウイルスまたは他のウイルス由来の内部リボソーム進入部位を意味し得る。
【0022】
本明細書中で使用されるとき、「IRES(A7)」は、分岐ループ(bifurcation loop)において7つのアデノシン残基を有する脳心筋炎ウイルス由来のIRESを意味し得る;供給源−pCITE−1。
【0023】
本明細書中で使用されるとき、「IRES(A6)」は、分岐ループにおいて6つのアデノシン残基を有するように変異した脳心筋炎ウイルス由来のIRESを意味し得る。
【0024】
本明細書中で使用されるとき、「pDIIIgfp」は、MVA del III gfpマーカーのトランスファープラスミドを意味し得る。
【0025】
本明細書中で使用されるとき、「pI*」は、トランスファーベクタープラスミドを意味し得る。
【0026】
本明細書中で使用されるとき、「tPA」は、組織プラミノゲン(plaminogen)活性化因子由来の分泌シグナルを意味し得る。
【0027】
本明細書中で使用されるとき、「se/l」は、合成の最適化された初期後期ポックスウイルスプロモーターを意味し得る。
【0028】
本明細書中で使用されるとき、「H6」は、ワクシニア遺伝子H6初期/後期ネイティブポックスウイルスプロモーターを意味し得る。
【0029】
本明細書中で使用されるとき、「F1」は、Y.pestis莢膜タンパク質を意味し得る。
【0030】
本明細書中で使用されるとき、「V」は、Y.pestis毒性因子(virulence factor)LcrVを意味し得る。
【0031】
本明細書中で使用されるとき、「V307」または「V307」は、Y.pestis.Vタンパク質のアミノ酸308〜326のC末端LcrVの短縮を意味し得る。
【0032】
本明細書中で使用されるとき、「YopD」は、Y.pestis外タンパク質(outer protein)Dを意味し得る。
【0033】
本明細書中で使用されるとき、「del III」は、改変されたワクシニアアンカラ欠失領域IIIを意味し得る。
【0034】
本明細書中で使用されるとき、「GFP」は、強化された緑色蛍光タンパク質を意味し得る。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、「CEF」は、ニワトリ胚線維芽細胞を意味し得る。
【0036】
説明
以下のセクションにおいて、種々の例示的な組成物および方法が、種々の実施形態を詳述するために記載される。種々の実施形態を実施することは、本明細書中で概説される詳細の全てまたはいくつかさえを用いることを必要としないが、むしろ濃度、回数、および他の詳細が、ごく普通の実験法を通して改変され得るということは、当業者に明らかである。いくつかの場合において、周知の方法または構成要素は、本説明において含まれていない。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態は、ワクチン組成物を報告し、このワクチン組成物としては、改変または弱毒化されたワクシニアウイルスおよび1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチドを含む1つまたはそれより多くの構築物を有するワクチン組成物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、ワクチン組成物は、1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチドを結合する組換えの改変されたワクシニアアンカラ(MVA)ベクターを含み得る。他の実施形態において、ワクチン組成物は、1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチドを結合する組換えの改変されたワクシニアアンカラ(MVA)ベクターであって、ここで上記腸内細菌関連ペプチドのうちの少なくとも1つが、1つまたはそれより多くのYersinia関連ペプチドを含む、組換えの改変されたワクシニアアンカラ(MVA)ベクターを含み得る。例えば、1つのワクチン組成物は、Yersinia pestis抗原を発現する組換えの改変されたワクシニアアンカラ(MVA)ベクターを含み得る。このワクチン組成物に従って、1つまたはそれより多くのYersinia pestis関連抗原を発現するMVA構築物が、生成され得る(例えば、V、F1、LcrVタンパク質、またはそれらの変異体もしくはフラグメント)。
【0038】
Yersinia
ペストは、元来、ノミによって伝播される野生のげっ歯類の疾患であるが、それは、ヒト、家庭用ペット、および野生動物も苦しめ得る。上記疾患は、歴史を通してヒトおよび動物集団を打ちのめした。近年、それは、世界の多くの地方において、深刻な大流行を引き起こし、その結果、ヒトの死亡および深刻な経済損失をもたらしている。Yersinia pestisisは、米国南西部、東南アジア、東欧、中央および南アフリカ、ならびに南アメリカにおいて、野生のげっ歯類集団中にはびこり、これらの地域におけるヒト集団は、高度に感受性がある。米国において、ペストは、西部の州に広がり、リス、野生のマウス、およびプレーリードッグにおいて重大な死亡率が生じている。家庭用ネコもY.pestis感染に対して感受性があり、それらは、ヒトにおけるペストの多くの近年の症例において、感染源として同定されている。
【0039】
ヒトにおけるその病原性、特に、上記疾患からの肺の形態(form)、およびヒトからヒトへのその伝播の可能性に起因して、Y.pestisは、生物戦争の潜在的な候補であると考えられる。ペストの犠牲者が、都市の城壁を越えて送られたカッファの包囲(siege of Kaffa)の間の1300年代に、モンゴル人が、粗製生物兵器としてペストを最初に使用したと考えられる。第二次世界大戦の間に、日本軍の秘密部門は、ペストに感染したノミを中国の上に落とし、ヒトにおけるいくつかの急激な発生を引き起こしたことが報告される。その後の数年間、米国およびソビエト連邦において、生物学的兵器についての調査プログラムが、ペストのエアゾール化のための方法を首尾よく開発した。より近年には、ペストを用いて働いていた旧ソビエト連邦からの科学者は、Y.pestisが依然として、実行可能な生物兵器であると考えられるという証拠を通知した。1970年に世界保健機関は、500万人の都市にわたって、50kgのペスト菌、Y.pestisを意図的に放出することにより、150,000人もの臨床的症例、および36,000人もの死亡をもたらすことを見積もった。2001 U.S.Congressional Office of Technology報告書は、Y.pestisの故意のエアゾール放出は、9,000人超の臨床的症例、および少なくとも2,000人の死亡を引き起こし得ると見積もった。従って、兵士、健康の専門家、および最初に応答する人員を、Y.pestis生物兵器の脅威から保護し得、バイオテロリストの攻撃後にリスクがある個体のワクチン接種によって疾患の蔓延を制限し得、そして、流行している国々において疾患の急激な発生を制限し得る新規のワクチンについての即座の必要性がある。
【0040】
本発明の特定の実施形態は、Yersini sppに対して指向する構築物を有する組成物を報告する。例えば、ワクチン組成物は、ペストを防ぐことまたはペストの発生の低減に関し得る。
【0041】
近年において、新規のペストワクチンの開発は、熱またはホルムアルデヒドによって死滅させたY.pestisの懸濁物に基づく商業的に認可されたワクチンが安全ではないことが見出されたので、広範囲な調査の焦点である。莢膜F1(17.5kDa)およびV(35kDa)抗原は、Y.pestisによって生成される天然の毒性因子である。両方の抗原は、感染の早期に細菌の蔓延を制御するのに必要とされる先天免疫応答に影響を与える。F1ベースのワクチンは、免疫原性であるが、これらのワクチンは、Y.pestisの天然に存在する莢膜に被われていない株に対する保護を提供し損なっている。本発明のいくつかの実施形態は、例えば、他のYersinia外タンパク質(Yop)の送達において役割を果たす分泌されたV抗原を含み得、ペストの目印であるTNF−αおよびIFN−γの抑制に関連するIL−10(抗炎症性サイトカイン)の分泌を刺激する。
【0042】
Yersinia spp感染に対するワクチンのために使用する抗原としては、LcrV(低カルシウム応答V、すなわちV抗原)、または哺乳動物の宿主における生存に不可欠である、他の、プラスミドによってコードされる毒性タンパク質(例えば、Yop、すなわちエルシニア外タンパク質)が挙げられ得る。YopおよびLcrVは、III型メカニズム(Ysc)によって分泌され、Yopは、組織培養感染モデルにおいて、結合した真核細胞の細胞質へと一方向性に向かい(unidirectionally targeted)得る。LcrVは、Yop標的化に必要とされ、最近の発見は、それが、細菌表面に局在化し得ることを明らかにしている。従って、本発明のいくつかの実施形態において使用されるコード配列のうちのいくつかは、Y.pestis抗原莢膜タンパク質F1、全長の毒性因子LcrV(V)、LcrVの短縮された形態(V307)、LcrVおよびエフェクタータンパク質YopDの他のカルボキシ末端の短縮についてのコード配列を含み得る。
【0043】
他の実施形態は、C末端の短縮を有する1つまたはそれより多くの低カルシウム応答(V)抗原を含み得る。これらの実施形態に従って、低カルシウム応答(V)抗原のC末端の短縮としては、炎症性サイトカインの発現を抑制する短縮、免疫抑制性配列を除去する短縮、対応する全長または改変されていないLcrVタンパク質よりも免疫抑制性ではない短縮、LcrVの163個までの連続した残基の欠失、内部欠失、90個までの連続した残基の内部欠失、LcrVタンパク質のアミノ酸240〜325に及ぶ領域に広がる内部欠失、50個までの連続した残基のC末端の欠失、長さが少なくとも275残基のLcrVタンパク質が挙げられ得るが、これらに限定されない(例えば、2005年12月02日に出願されたSchneedindらの米国特許出願第11/293,024号(すべての目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される))。特定の実施形態において、改変されたLcrVタンパク質は、対応する改変されていないLcrVタンパク質よりも少ない程度まで炎症性サイトカインの発現を抑制し得る。いくつかの実施形態において、上記炎症性サイトカインは、当該分野において公知であるTNF−αまたは他の公知の炎症性サイトカインであり得る。他の実施形態において、欠失はLcrVタンパク質(rV10)の残基271〜300を含み得る。Yersinia pestis由来のLcrVのこの領域に対応する同じまたは同様のアミノ酸が、他のLcrVタンパク質において欠失し得ることが企図される。1つの例において、Yersinia pestisにおけるアミノ酸271〜300は、Y.enterocoliticaにおける280〜309に対応する。
【0044】
他の実施形態において、他の腸内細菌由来のタンパク質またはペプチドは、被験体に投与して、状態の発生を低減するか、または状態を防ぐために本明細書中に企図されるワクチン構築物において使用することができる。特定の実施形態は、任意の病原性腸内細菌に対して指向する構築物を有する組成物を報告する。例えば、ワクチン組成物は、被験体において、病原性腸内細菌への曝露もしくは起こり得る曝露によって引き起こされる感染を防ぐこと、または感染の発生の低減に関し得る。他の腸内細菌としては、Salmonella spp.、Shigella spp、Escherichia coli株、または他の病原性腸内細菌が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0045】
ポックスウイルス科
ポックスウイルス(Poxviridae科のメンバー)は、科として、脊椎動物および無脊椎動物の両方に感染し得るウイルスである。ヒトに感染し得るポックスウイルスの4つの公知の属が存在する:オルトポックス、パラポックス、ヤタポックス、モルシポックス。オルトポックスとしては、痘瘡(variola)ウイルス、ワクシニアウイルス、ウシポックスウイルス、サルポックスウイルス、および痘瘡(smallpox)が挙げられるが、これらに限定されない。パラポックスとしては、オルフウイルス、偽ウシポックス(pseudocowpox)、ウシ丘疹性口内炎ウイルス;ヤタポックス:タナポックスウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。モルシポックスとしては、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)が挙げられるが、これに限定されない。より一般的なポックスウイルス(oixvirus)は、ワクシニアおよび伝染性軟属腫であるが、サルポックス感染が上昇中のようである。
【0046】
ポックスウイルス科、ワクシニアウイルスは、痘瘡(smallpox)ウイルスに対するワクチン接種のため首尾よく使用されている。ワクシニアウイルスはまた、外来のタンパク質発現のための有効な道具として使用されて、宿主の強い免疫応答を引き出す。ワクシニアウイルスは、主に細胞融合によって細胞に入るが、受容体は、現在、知られていない。ウイルスは、ウイルスのRNAポリメラーゼおよび関連する転写因子によって転写される遺伝子の3つのクラス(早期、中間期、および後期)を含む。ポックスウイルによって引き起こされる疾患は、約何百年間も知られている。
【0047】
オルトポックスウイルス
本発明の特定の実施形態は、ワクチン組成物において、改変または弱毒化された、オルトポックスウイルスを使用することを含み得る。オルトポックスウイルスは、哺乳動物から単離された多くの病原体(agent)を含むポックスウイルス科の属であり、ワクシニア、サルポックス、ウシポックス、ラクダポックス、アザラシポックスウイルス、スイギュウポックスウイルス、アライグマポックスウイルス、スカンクポックスウイルス、ハタネズミポックスウイルス、およびエクトロメリアウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。ポックスウイルス科のメンバーは、大きな線状二本鎖DNAを有し、ゲノムサイズは、130kbp〜300kbpに範囲が及ぶ。上記属のメンバーのうちの1つは、痘瘡(smallpox)を引き起こす痘瘡(variola)ウイルスである。痘瘡(smallpox)は、ワクチンとして、別のオルトポックスウイルスである上記ワクシニアウイルスを用いて以前に根絶された。
【0048】
改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)
本発明におけるいくつかの実施形態は、予め決定された遺伝子または遺伝子セグメントを発現することが可能である弱毒化ポックスウイルス(例えば、改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC、LC16m8、またはCVI−78)に由来する組換えのワクシニアウイルスを使用する組成物および方法を報告する。当業者は、他の弱毒化ポックスウイルスは、例えば、細胞培養における連続継代によって、またはポックスウイルス遺伝子の故意の欠失もしくは当該分野において公知である他の方法によって生成され得ることを認識する。特定の実施形態において、予め決定された遺伝子は、MVAゲノムにおける天然に存在する欠失部位に挿入され得る。他の実施形態において、組換えのMVAウイルスは、例えば、ワクチン組成物を投与された被験体において免疫応答を誘導することが可能である、上記ワクチン組成物に使用する、ポリペプチド(例えば、抗原)の生産のため、または抗原をコードするために使用され得る。
【0049】
特定の実施形態において、改変または弱毒化されたポックスウイルス(例えば、改変されたワクシニアアンカラ(MVA)、NYVAC、LC16m8、またはCVI−78)は、送達システムとして、上記被験体(例えば、哺乳動物(例えば、ヒト))において使用され得る。以前に、MVAは、120,000人を超える個体に投与され、痘瘡(smallpox)に対する安全で有効なワクチンであることが証明された。他の実施形態において、組換えのMVAワクチン候補は、抗原またはペプチドが由来するウイルス、細菌、寄生虫、または腫瘍によって引き起こされる疾患に対する保護の体液性免疫および細胞性免疫を誘導することが示されている。MVAを適切なベクターとする追加の特徴としては、異なる経路によって投与されるときに保護免疫応答を誘導する能力、および遺伝子安定特性および物理的安定特性が挙げられる。
【0050】
翻訳調節配列
いくつかの実施形態は、必要に応じて、エンハンサー、例えば、翻訳調節配列を含み得る。特定の実施形態において、翻訳調節配列としては、内部リボソーム進入部位(IRES)(例えば、EMCV−IRES)が挙げられ得る。ウイルスのIRESは、4つの群に分類され得る:群1(コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス(PSIV)、およびタウラ症候群ウイルス(TSV));群2(C型肝炎ウイルス、(HCV)、古典的ブタコレラウイルス(CSFV)、およびブタテッショウウイルス1(PTV−1));群3(脳心筋炎ウイルス(EMCV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、およびタイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV));ならびに群4(ポリオウイルス(PV)およびライノウイルス(RV))。他の実施形態において、ウイルスのコード配列に対して5’側に見出されるウイルスの非翻訳領域(UTR)は、翻訳を指揮するために使用され得る。当該分野において公知のウイルス構築物での使用のあらゆる翻訳調節配列が企図される。特定の実施形態において、ウイルスの内部リボソーム進入部位(IRES)は、本明細書中に企図されるペスト抗原の発現を増加させるために使用され得る。IRES配列は、メッセンジャーRNA分子において、終止コドン後に置くことができ、リボソームは、そのmRNAに再結合し(re−attach)得、2つ目のタンパク質がその同じRNAから翻訳され得る。従って、上記IRES配列は、複数の抗原、例えば、複数の腸内細菌抗原またはある腸内細菌抗原、および別の病原性ウイルスもしくは細菌由来の抗原を発現するために使用され得る。例えば、2つ目のタンパク質が選択可能なマーカーである場合、このマーカーの使用は、上記選択可能なマーカーの検出によって、目的の遺伝子(上記プロモーターと上記IRESの間に配置された)が、発現される確率(probability)を増加させる。多数のバイシストロニックベクターは、これらの概念に基づいて生成されている。当該分野において公知であるバイシストロニックベクターのうちのいずれかの使用が、本明細書中で企図される。
【0051】
分泌シグナル
あるいは、本発明の実施形態は、1つまたはそれより多くの分泌シグナル配列を有する構築物を含み得る。使用する分泌シグナルとしては、哺乳動物の分泌シグナル配列が挙げられ得るが、これに限定されない。翻訳調節配列および/または分泌シグナルにより、いくつかのワクチンの効力を増加させることが実証された。いくつかの実施形態において、1つまたはそれより多くの分泌シグナル配列は、プロリーダー配列を含み得る。特定の例において、tPAプレプロリーダー配列が使用され得、ここでリーダー配列としては、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)リーダー配列、補因子リーダー配列、プレプロインスリンリーダー配列、インベルターゼリーダー配列、免疫グロブリンAリーダー配列、オボアルブミンリーダー配列、およびP−グロビンリーダー配列、または当該分野において公知である他のプロリーダー配列、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態において、タンパク質が発現されるように構築物を設計するとき、シグナル配列をコードするDNA配列を、その発現されたタンパク質が分泌されることが望まれる最初の核酸領域へと、例えば、切断可能な形態で、組み込むことが必要であり得る。本発明の実施形態を、任意の1つの理論または作用様式に限定することなく、シグナル配列は、分泌されるかまたは膜結合となるかのいずれかの運命にあるタンパク質に存在する、ペプチドであり得る。これらのシグナル配列は、通常、上記タンパク質のN末端に位置し、一般に成熟タンパク質から切断される。上記シグナル配列は、一般に、そのシグナル認識粒子と相互作用し、リボソームを、翻訳に伴った挿入が行われる小胞体へと向ける。上記シグナル配列が切断可能であるところは、一般に、例えば、シグナルペプチダーゼによって除去される。利用されるべきシグナル配列の選択は、特定の状況の必要性に依存し得、当業者によって決定され得る。本明細書中に提供される例示の文脈において、その点で限定されることはないが、tPAが、目的のペプチド、タンパク質、または構築物の分泌を容易にするために使用され得る。膜タンパク質が所望される場合、上記タンパク質のアミノ末端における5’側の切断可能なシグナル配列、および上記タンパク質の3’(カルボキシ)末端における切断可能ではない膜アンカーの両方が必要とされ得る。これらは、ベクター内で提供され得るか、または片方もしくは両方が目的のタンパク質のDNAによってコードされ得た。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態は、1つまたはそれより多くの構築物を含む組成物を含むが、これらに限定されない。例えば、構築物は、細胞質により保持されるタンパク質もしくはペプチド、分泌されるタンパク質もしくはペプチド、または膜結合であるタンパク質もしくはペプチドを生産するように設計され得る。目的のタンパク質またはペプチドがどのような形態をとる必要があり得るかを決定することは、機能的必要性に依存し得る。例えば、目的のタンパク質が細胞表面にアンカーされて発現することにより、特にそのタンパク質が接着細胞型の膜上に発現される場合には、目的のタンパク質と相互作用する分子(例えば、抗体、アンタゴニスト、アゴニストなど)についてスクリーニングするのに都合のよい手段が提供される。なお、さらなる実施形態は、タンパク質またはペプチドの膜アンカー形態が、例えば、上記タンパク質またはペプチドに対するモノクローナル抗体を生成するために、被験体へ投与するのに、適している場合があることに関係する。これは、正しく折りたたまれ得、適切な翻訳後修飾(例えば、グリコシレーションおよびジスルフィド結合形成)を有し得る上記タンパクまたはペプチドの供給源を提供する宿主細胞に起因し得る。さらに、宿主細胞は、特に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)において、アジュバント特性(例えば、レシピエント被験体との抗原の違い)を提供し得る。
【0054】
あるいは、分泌されたタンパク質は、タンパク質またはペプチドが収集および精製されるべきである場合に適切であり得る。シグナル配列をコードする核酸分子は、そのものが利用される場合には、当業者によってごく普通の手順として決定され得る、上記構築物における任意の適切な場所に置くことができる。いくつかの実施形態において、シグナル配列は、目的のペプチド、タンパク質、または構築物をコードする核酸配列に対してすぐ5’側に置くことができる(目的のタンパク質とのすぐ隣接する融合物として発現され得るように)が、シグナル配列の発現がプロモーターの調節下に置かれるように、そのプロモーターに対して3’側に置くことができる。シグナル配列をコードする核酸配列は、構築物の最初の核酸領域の部分を形成し得る。
【0055】
選択マーカー
特定の実施形態において、追加の選択マーカーが使用され得、例えば、多様な手法(例えば、目的の分子の精製)でのベクターの使用を容易にするために、例えば、設計され得る任意の数の選択マーカーを挿入し得る。例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子融合システムは、目的の構築物、タンパク質、またはペプチドを収集する都合のよい手段を提供する。任意の1つの理論または作用様式に限定することなく、GST−融合タンパク質は、グルタチオンアガロースビーズを用いて、GSTタグによって精製され得る。本発明の実施形態は、分泌可能なGST−分子融合物をコードする構築物にまで広がることが理解されるべきである。これは、例えば、切断可能なGSTに融合する切断可能なシグナル配列をコードし、次に上記GSTが目的の分子に融合するような最初の核酸領域の配列を設計することによって達成され得る。別の例において、それ自体が、プロテインA(分泌された産物の精製を可能にする)の360bpとβ−ラクタマーゼ(単色反応(simple colour reaction)によって上清の試験を可能にする細菌の酵素)との間の融合である融合タグが使用され得る。β−ラクタマーゼは、目的の分子についてのアッセイの非存在下で、目的の分子についてのアッセイの選択を容易にする。プロテインA/β−ラクタマーゼ融合物は、切断を容易にするために、切断部位によって目的の分子から分離され得、その結果、分子が精製された後、上記タグは、容易に除去され得る。当該分野において公知である任意の他の選択マーカーが使用され得る。
【0056】
目的の分子または構築物の精製を容易にするために含まれ得た他の融合タグとしては、ブドウ球菌プロテインA、ブドウ球菌プロテインG、ヘキサヒスチジン、カルモジュリン結合ペプチドおよびマルトース結合タンパク質(例えば、後者はまた、目的の分子の正しい折りたたみを確実にするのを助けるのに有用である)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに別の選択可能なマーカーとしては、抗生物質耐性遺伝子が挙げられ得る。他の実施形態は、抗生物質耐性遺伝子を含み得る。これらの遺伝子は、上記選択マーカーまたはHATベースの選択可能なバイシストロニックベクターが使用され得るように、バイシストロニックベクターの状況において、以前に利用されている。
【0057】
電気泳動
電気泳動は、分子のサイズおよび電荷に基づいて、分子(例えば、タンパク質または核酸のような大分子)を分離するために使用され得る。当該分野において公知である電気泳動の多くのバリエーションが存在する。溶液であって、それを通って上記分子が移動する、溶液は、自由(free)であり得、通常毛管内にあり、または、それはマトリックスに包埋され得る。一般的なマトリックスとしては、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル、および濾紙が挙げられる。
【0058】
タンパク質、ペプチド、および/または抗体もしくはそのフラグメントは、当該分野において公知である任意の手段によって精製、部分的に精製、検出または分析され得る。特定の実施形態において、分子を分離および分析するための方法は使用され得る(例えば、ゲル電気泳動、またはカラムクロマトグラフィーの方法)。
【0059】
抗体のレベルを検出、分析および/または測定するための当該分野において公知である任意の方法は、本明細書中に報告される実施形態において、使用され得る。例えば、抗体または抗体フラグメントについてのアッセイとしては、ELISAアッセイ、化学発光アッセイ、フローサイトメトリー、および当該分野において公知である他の技術が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0060】
画像化薬剤および放射性同位体
特定の実施形態において、タンパク質またはペプチドを有する構築物は、基質と接触する際に蛍光産物、発光産物、または着色した産物を生成する、二次結合リガンドに、または酵素(酵素タグ)に連結され得る。適切な酵素の例としては、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(ホースラディシュ)水素(hydrogen)ペルオキシダーゼ、およびグルコースオキシダーゼが挙げられる。このような標識の使用および同定は、当業者に周知である。
【0061】
他の実施形態において、ペプチド、抗原、構築物、抗体、または抗体フラグメントを検出することが可能である標識または分子としては、アプタマーを使用することが挙げられ得る。アプタマーを作製および使用するための方法は、当該分野において周知であり、これらの方法および使用は、本明細書中に企図される。
【0062】
いくつかの実施形態は、本発明のいくつかの実施形態において開示されるワクチン組成物に曝される被験体によって生産されるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を検出および/または作製するための方法を含み得る。例えば、被験体に対して受動免疫を誘導することが可能である、生産される抗体または抗体フラグメントは、完全な抗体もしくはそのフラグメント、またはポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体として単離、分析、および/または生産され得る。当該分野において公知であるこれらの抗体を、生産または分析するための任意の手段が企図される。
【0063】
核酸増幅
増幅のための鋳型として使用される核酸配列は、標準方法に従って、生物学的サンプルに含まれるウイルス、細菌、細胞、または細胞構成要素から単離され得る。核酸配列は、ゲノムDNA、または分画されたもしくは全細胞RNAであり得る。RNAが使用される場合、上記RNAを相補cDNAに変換することが所望され得る。1つの実施形態において、上記RNAは、全細胞RNAであり、増幅のための鋳型として直接的に使用される。核酸分子を増幅するための当該分野において公知である任意の方法が企図される(例えば、PCR、LCR、Qbetaレプリカーゼ)。
【0064】
発現されたタンパク質またはペプチド
遺伝子または遺伝子セグメントは、大量のポリペプチド産物を生成するために任意の数の異なる組換えのDNA発現システムにおいて発現され得、これは、次に、精製され得、本明細書中に報告される方法および組成物において使用され得る。構築物を生成および使用するための当該分野において公知である任意の方法が企図される。特定の実施形態において、1つまたはそれより多くのポリペプチドをコードする遺伝子または遺伝子フラグメントは、当該分野において公知である標準クローニング技術またはサブクローニング技術によって発現ベクターへ挿入され得る。
【0065】
ポリペプチドをコードする遺伝子または遺伝子フラグメントを使用する、いくつかの実施形態は、標準サブクローニング技術によって発現ベクターへ挿入され得る。ペプチドまたはタンパク質の迅速な親和性精製を可能にする、融合タンパク質として組換えのポリペプチドを生産する発現ベクターが使用され得る。このような融合タンパク質発現システムの例は、グルタチオンS−トランスフェラーゼシステム(Pharmacia,Piscataway,NJ)、マルトース結合タンパク質システム(NEB,Beverley,MA)、FLAGシステム(IBI,New Haven,CT)、および6xHisシステム(Qiagen,Chatsworth,CA)である。
【0066】
薬学的組成物および投与経路
本明細書中のいくつかの実施形態の水性の組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは水性媒体に溶解または分散した、有効量の治療のタンパク質、ペプチド、構築物、エピトープコア領域、刺激薬、インヒビターなどを含み得る。先行するもののいずれかを発現するベクターの水性の組成物はまた、企図される。句「薬学的または薬理学的に受容可能」は、動物またはヒトに適宜投与されるとき、有害な、アレルギー性の、または他の不適当な反応を生成しない分子実体および組成物を指す。
【0067】
本明細書中のいくつかの実施形態の水性の組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは水性媒体に溶解または分散した、有効量の治療のタンパク質、ペプチド、構築物、有効量の化合物を含み得る。このような組成物はまた、接種材料と称され得る。本明細書中で使用されるとき、「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意の、および全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性のある物質についてのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性のある成分と不適合である場合を除いて、治療組成物でのその使用が企図される。補足の活性成分はまた、上記組成物に組み込まれ得る。ヒト投与について、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準によって要求されるような、滅菌性、発熱原性、全般的な安全性、および純度の基準を満たすべきである。
【0068】
生物学的材料は、適切な場合に、所望されるビヒクルへと、大規模に透析されて、所望されない低分子量分子を取り除き、および/またはより準備のできた処方物について凍結乾燥されるべきである。その活性のある化合物または構築物は、次に、一般に、非経口投与(例えば、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、病変内経路、鼻内経路、またはさらに腹腔内経路を介する注射のために処方される)のために処方される。被験体のワクチン接種またはブースト(boost)のために使用される任意の経路が使用され得る。活性のある構成成分または成分を含む水性の組成物の調製は、本開示を考慮して、当業者に公知である。代表的に、このような組成物は、水性の溶液または懸濁物のいずれかとしての注射可能物として調製され得る;注射の前に液体を添加する際に溶液または懸濁物を調製することにおいて使用するのに適した固形はまた、調製され得る;そしてその調製物はまた、乳化され得る。
【0069】
注射可能な使用に適した薬学的形態は、滅菌の水性の溶液または分散物;ゴマ油、ラッカセイ油、または水性プロピレングリコールを含む調製物;および滅菌の注射可能な溶液または分散物の即時調製のための滅菌粉末を含み得る。全ての場合において、その形態は、滅菌でなければならず、流体でなければならない。それは、製造および保管の条件下で安定でなければならず、微生物(例えば、細菌および真菌類)の汚染作用に対抗して保存されなければならない。
【0070】
遊離塩基または薬理学的に受容可能な塩としての活性のある化合物の溶液は、界面活性剤(例えば、ヒドロキシルプロピルセルロース)と適切に混合された水において調製され得る。分散物はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物において、ならびに油において調製され得る。保管および使用の、通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含み得る。
【0071】
本明細書中に開示される処方物または構築物が、被験体における免疫応答を高めるための治療薬として使用される場合、治療剤は、中性または塩の形態で組成物へと処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)、および無機酸(例えば、塩酸またはリン酸)、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸で形成されるものを含む。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄)およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来し得る。
【0072】
キャリアはまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用によって、分散の場合に必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用を防ぐことは、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールなど)によって成し遂げられ得る。多くの場合において、等張剤(例えば、糖、または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射可能な組成物の吸収時間の延長は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、およびゼラチン)の、上記組成物における使用によって成し遂げられ得る。
【0073】
滅菌の注射可能な溶液は、上記活性のある化合物または構築物を、必要とされる量で、適切な溶媒中に、上に列挙される種々の他の成分と共に組み込み、必要である場合、次に濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散物は、種々の滅菌された活性成分を、基礎の(basic)分散媒体および上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む、滅菌ビヒクルへと組み込むことによって調製される。滅菌の注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥技術およびフリーズドライ技術であり、これらの技術により、活性成分と任意の追加の所望される成分からなる粉末を、それについて、先に滅菌濾過された溶液から生じる。直接的な注射のための、より濃縮されたまたは高度に濃縮された溶液の調製物がまた企図され、ここで、溶媒としてのDMSOの使用により、極度に急速な浸透をもたらし、高濃度の活性薬剤を小さな場へ送達することが想定される。
【0074】
処方すると、溶液は、投与処方物と適合する様式で、およびその治療上有効であるような量で投与され得る。上記処方物は、多様な剤形(例えば、上に記載される注射可能な溶液の型)で容易に投与されるが、遅延放出カプセルまたはミクロ粒子およびミクロスフェアなども用いられ得る。
【0075】
水性の溶液での非経口投与について、例えば、上記溶液は、必要である場合、適切に緩衝化されるべきであり、その液体希釈物は、最初に十分な食塩水またはグルコースで等張にされるべきである。これらの特定の水性の溶液は、特に、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、および腹腔内投与に適している。この関係において、用いられ得る滅菌の水性媒体は、本開示を考慮して、当業者に公知である。例えば、1投与量は、1mlの等張のNaCl溶液に溶解され得、そして1000mlの皮下注入の流体に添加されるか、または注入の提案された部位に注射され得た。
【0076】
用語「単位用量」は、被験体における使用に適した物理的に別々の単位を指し、各単位は、その投与(例えば、適切な経路および処置レジメン)に関連して、上で議論された、所望される応答を生み出すように計算された予め決定された量の上記構築物組成物またはブースト組成物を含む。処置またはワクチン接種の数および単位用量の両方に従って、投与されるべき量は、処置されるべき被験体、その被験体の状態および所望される保護に依存する。投与について責任のある人物は、とにかく個々の被験体に対する適切な用量を決定する。例えば、被験体は、本明細書中に開示される構築物組成物を、必要性または病原性生物への曝露または上記被験体における状態(例えば、がん)に依存して、ある期間毎日または毎週の基準で、または毎月、年に2度(bi−yearly)または毎年の基準で投与され得る。
【0077】
活性のある治療剤は、1用量当たり約0.0001ミリグラム〜1.0ミリグラム、または約0.001ミリグラム〜0.1ミリグラム、または0.1ミリグラム〜1.0ミリグラム、またはさらに10ミリグラムほどを含むように混合物中で処方され得る。あるいは、活性薬剤(例えば、構築物)は、被験体において所望される作用を生み出すことが知られる、1用量当たりの特定の数の構築物を含むように処方され得る。複数回用量はまた投与され得る。
【0078】
非経口投与(例えば、静脈内注射、皮内注射、または筋肉内注射)のために処方される化合物の他に、他の薬学的に受容可能な形態としては、例えば、錠剤または経口投与のための他の固体;リポソームの処方物;時間放出カプセル剤;生分解性および現在使用されている任意の他の形態が挙げられる。
【0079】
鼻内液剤または吸入可能な液剤、またはスプレー剤、エアゾール剤、または吸入剤も使用され得る。鼻用液剤は、点滴剤またはスプレー剤で鼻道に投与されるように設計された水性の液剤であり得る。鼻用液剤は、多くの点で鼻の分泌物に類似するように調製され得る。従って、水性の鼻用液剤は、通常、等張であり、5.5〜6.5のpHを維持するためにわずかに緩衝化される。さらに、必要とされる場合、眼用調製物において使用されるものと類似する抗菌保存剤、および適切な薬物安定剤が、上記処方物中に含まれ得る。種々の市販の鼻用調製物は公知であり、例えば、抗生物質、および抗ヒスタミン薬を含み得、喘息予防のために使用される。
【0080】
投与の他の様式に適した追加の処方物としては、坐剤およびペッサリーが挙げられ得る。直腸のペッサリーまたは坐剤も使用され得る。一般に、坐剤について、慣習的な結合剤およびキャリアは、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み得;このような坐剤は、活性成分を0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で含む混合物から形成され得る。
【0081】
経口処方物は、賦形剤(例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン(sodium saccharine)、セルロース、および炭酸マグネシウムなど)を含み得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出の処方物または散剤の形態をとる。特定の定義された実施形態において、経口の薬学的組成物は、不活性の希釈剤または同化可能な食用のキャリアを含むか、またはハードシェルゼラチンカプセルもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに囲まれ得るか、または錠剤へと圧縮され得るか、または食事の食物に直接的に組み込まれ得る。経口の治療上の投与について、上記活性のある化合物は、賦形剤とともに組み込まれ得、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、およびオブラート剤(wafer)などの形態で使用され得る。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性のある化合物を含むべきである。上記組成物および調製物の百分率は、もちろん変動し得、慣習的に、単位の重量の約2%〜約75%の間、または好ましくは25%〜60%の間であり得る。このような組成物における活性のある化合物の量は、適した投与量が得られ得るようなものである。
【0082】
上記錠剤、トローチ剤、丸剤、およびカプセル剤などはまた、以下を含み得る:トラガカントゴム、アラビアゴム(acacia)、トウモロコシデンプン、またはゼラチンのような結合剤;賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム);崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、およびアルギン酸など);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);ならびに甘味料(例えば、スクロース、ラクトース、またはサッカリン)が添加され得、または香味料(例えば、ペパーミント、ウインターグリーンの油、またはサクランボの香味)。投薬単位形態がカプセル剤のとき、それは上の種類の材料の他に、液体キャリアを含み得る。種々の他の材料は、コーティング剤として、または別の方法で投薬単位の物理的形態を修飾するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、シェラック、糖または両方でコーティングされ得る。エリキシル剤のシロップ剤は、上記活性のある化合物、甘味料としてスクロース、保存剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素および香味(例えば、サクランボまたはオレンジフレーバー)を含み得る。
【0083】
キット
さらなる実施形態は、本明細書中に記載される方法および組成物を用いて使用するキットに関する。いくつかの実施形態は、腸内細菌を有するかまたはこれに曝された被験体を、防ぐ、または処置するために使用するワクチン組成物を有するキットに関する。キットは、携帯型(例えば、遠隔地において、運搬および使用できる)であり得る。他のキットは、腸内細菌に曝されている、または腸内細菌(例えば、Yersinia spp)への曝露のリスクがあることが疑われる被験体を処置するための健康施設(health facility)において使用することができる。
【0084】
他の実施形態は、本明細書中に記載される分子構築物を作製および使用するためのキットに関係し得る。特定の実施形態において、組成物は、弱毒化または改変されたMVAおよびYersinia spp.関連抗原(例えば、V307)を有する構築物を含み得る。他の構築物はまた、少なくとも1つの分泌シグナル配列を含み得る。さらに他の実施形態は、翻訳調節配列(例えば、IRES、UTR)を含む構築物を有し得る。構築物を作製および使用するための他の試薬が企図される。
【0085】
キットはまた、適切な容器(例えば、バイアル、管、ミニフュージもしくはマイクロフュージ管、試験管、フラスコ、びん、注射器、または他の容器)を含み得る。追加の構成要素または薬剤が提供される場合、上記キットは、この薬剤または構成要素が配置され得る1つまたはそれより多くの追加の容器を含み得る。本明細書中でキットはまた、代表的に、市販するために厳密に閉じ込めて(close confinement)、上記構築物、ワクチン組成物および任意の他の試薬容器を含むための手段を含む。このような容器としては、射出吹込み成形されたか、またはブロー成形されたプラスチック容器であって、その中に所望されるバイアルが保持されている、射出吹込み成形されたか、またはブロー成形されたプラスチック容器が挙げられ得る。必要に応じて、1つまたはそれより多くの追加の薬剤(例えば、他の抗ウイルス剤、抗真菌剤、または抗菌剤)が記載される組成物(例えば、ワクチンとして使用する組成物)に必要とされ得る。
【0086】
ワクチン接種の間に使用される用量範囲は、使用される生の弱毒化されたワクチンおよびウイルスベクターの性質に依存して変動し得る。組換えのポックスウイルスについて、これらの用量は、105PFU〜107PFUの間の範囲に及び得る。本発明の特定の実施形態において、免疫原性用量は、102pfuと同じくらい低いことがある。ワクチン接種の頻度は、ワクチンの性質、およびまた使用される投与の経路に依存して変動し得る。1つのレジメンは、一次免疫(予備刺激(prime))に続いて、予備刺激免疫の4週間〜6週間後にブースト投与を含み得る。本発明の特定の実施形態において、抗原の翻訳および発現における改善は、より少ない用量および/またはより低用量が被験体に投与されることを可能にし得る。
【0087】
本明細書中に開示される組成物は、当該分野において公知である任意の手段によって投与され得る。例えば、組成物は、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜腔内に、気管内に、鼻内に、硝子体内に(intravitreally)、膣内に(intravaginally)、直腸内に、局所に(topically)、腫瘍内に、筋肉内に、髄腔内に(intrathecally)、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼球内に、口内に、局所に(locally)、吸入によって、注射によって、注入によって、連続注入によって、局所灌流によって、カテーテルによって、灌注によって、クリーム(creme)で、または脂質組成物での被験体への投与を含み得る。特定の組成物は、感染の状態または感染を防ぐことについて予め決定され得る通りに、ある組成物について、1つのブーストのためには1つの経路および第二または追加のブーストのためには別の経路によって投与され得る。これらの実施形態に従って、被験体の状況、ならびに特定の組成物についての用量および頻度の決定に依存して、あるブーストは、筋肉内に投与され得、別のブーストは、皮内に、投与され得、またはその組み合わせで投与され得る。
【0088】
調製物
当業者に公知である任意の方法は、組換えMVAの大規模な生産のために使用され得る。例えば、マスターシードストックおよびワーキングシードストックは、GMP条件下で適格な(qualified)初代CEFにおいて、または他の方法によって、調製され得る。細胞は、大きい表面積のフラスコに蒔かれ、コンフルエンス(confluence)近くまで増殖され、選択されたMOIで感染させられ、ワクチンウイルスが精製され得る。細胞は収集され、機械的破壊によって細胞内ウイルスが放出され、細胞の破片が大きな孔の深層濾過によって除去され、宿主細胞DNAがエンドヌクレアーゼで消化され得る。ウイルス粒子は、引き続いて精製され、タンジェンシャルフロー(tangential−flow)濾過後、ダイアフィルトレーション(diafiltration)によって濃縮され得る。結果として生じる濃縮された大量のワクチンは、安定剤を含むバッファーでの希釈によって処方され、バイアルに充填され、凍結乾燥され得る。組成物および処方物は、後の使用のために保管され得る。使用のために、凍結乾燥されたワクチンは、希釈剤の添加によって再構成され得る。
【0089】
ポックスウイルスは、その安定性について公知である。長期間の室温保管および分配のためにワクシニアを凍結乾燥することができることが、そのワクチンの広範囲にわたった使用および痘瘡(smallpox)の根絶を可能にする重要な属性のうちの1つであった。最近、60年代に備蓄されたDryvaxのワクシニアウイルスが、数十年後、依然として、効力があることが実証された。ポックスウイルスの凍結乾燥および保管のための手順は、当該分野において周知であり、本明細書中に開示されるいくつかの実施形態についての組換えのポックスウイルスワクチンに適用され得た。
【0090】
以下の実施例は、本明細書中に示される特定の実施形態を実証するために含まれる。続く実施例において開示される技術が、本明細書中に開示される実施においてよく機能するように見出された技術を代表することが、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、開示される特定の実施形態において、多くの変更がなされ得ることを認識すべきであり、依然として、本明細書中の趣旨および範囲から外れることなく、似ているまたは類似の結果を得るべきである。
【実施例】
【0091】
実施例1
タンパク質発現
いくつかの例示的な方法において、Y.pestisのF1、V、およびV307抗原の発現を、MVA/Y.pestis組換えウイルスを感染させた細胞からのタンパク質の免疫ブロット分析によって評価した。発現レベルを、MVA許容のCEF細胞および非許容の哺乳動物のVero細胞の感染後に細胞全体の抽出物および細胞培養上清において評価した(図2A〜2E)。MVA/F1組換え体によるF1タンパク質の発現を、細胞ペレットおよび細胞培養上清の両方において検出した。MVA/F1感染CEF細胞において、F1莢膜抗原を、予測されるタンパク質(約18キロダルトン、kd;予測されるタンパク質)および約23kdにある高い分子量の形態と合致する2つのより低い分子量の形態として観測した(図2A)。その23kdの形態は、細胞上清において、より優勢であり、このことは、それが優先して分泌されていることを示唆した。莢膜F1タンパク質は、脊椎動物細胞の場合、1つの予測されるN−グリコシレーション部位および6つの予測されるo−グリコシレーション部位を有する。従って、上記23kdの形態がグリコシル化タンパク質を表し得ると仮定した。CEFによって発現されるF1の脱グリコシル化は、上記23kdの形態を排除し、18kdの形態のみが残った(図2E)。約34kdおよびそれを超えるより高い分子量の形態をまた、上記細胞ペレットにおいて観測した。これらの形態は、ダイマーおよび他のマルチマーと合致し;上記F1莢膜タンパク質は、分泌の際にマルチマー構造を強固に(avidly)形成する。広範囲にわたる変性の際にはこれらの形態を観測しなかった(例えば、図2Eを参照のこと)。MVA/IRES/tPA/F1ウイルスを感染させたCEF細胞において、唯一より低い分子量の形態が低レベルで発現することを、上記細胞ペレットにおいて観測した。
【0092】
MVA/F1組換えウイルスを感染させた哺乳動物のVero細胞において、18kdのより低い分子量の形態は、上記細胞ペレットおよび上記細胞培養上清の両方において23kdのグリコシル化された形態よりも優勢であった(図2B)。再度、上記23kdの形態は、脱グリコシル化の際に消失した(データ示さず)。見かけの分子量が33kd、36kd、および39kdであるより高い分子量の形態をまた検出し、それらは培養上清において、比較的より顕著であった。MVA/IRES/tPA/F1組換えウイルスを感染させたVero細胞において、唯一F1抗原が低レベルで発現することを上記細胞ペレットにおいて検出した。IRES/tPA構築物によって導かれる発現のレベルの低減は、以前に記載されているアライグマのポックスウイルスにおいて作製された同様の構築物とは対照的であった。その場合、IRES/tPAは、感染させた細胞において、より高レベルの発現および分泌を導いた。
【0093】
VおよびV307抗原の発現パターンは、よりシンプルであり、感染させたCEF細胞およびVero細胞の両方において同様であった(例えば、図2Cおよび2Dを参照のこと)。MVA/VまたはMVA/V307組換えウイルスのいずれかを感染させた細胞は、それぞれ約36kdおよび35kdの単一形態を発現し、予測されるサイズ(37kdおよび35kd)と合致した。MVA/IRES/tPA/Vを感染させた細胞は、約36kdおよび40kdの2つの分子形態を発現した。より高い分子量の形態は、tPA/V融合物のサイズと合致し、それは優先的に分泌された。対照的に、MVA/IRES/tPA/V307組換えウイルスを感染させた細胞は、35kdの単一形態のみを発現した。予測されたVおよびV307のオープンリーディングフレームは、脊椎動物細胞の場合、コンセンサスグリコシレーション配列をコードしない。V抗原発現の場合、IRES/tPAの付加は、タンパク質の発現レベルをわずかに低減した。感染させたCEF細胞において、細胞のV抗原に対する分泌されたV抗原の比は、IRES/tPA配列の付加でわずかに高められたようであった(図2C)。しかし、その比は、感染させたVero細胞において、全ての構築物間で矛盾がないようであった(図2D)。
【0094】
図2A〜2Eは、0.5pfu/細胞のMOIでの組換えMVA−ペストウイルスでトランスフェクションされた、CEF細胞またはVero細胞の単層に関する実験を例示する。トランスフェクション後の48時間後に、方法に記載されるように細胞を収集し、細胞抽出物および上清抽出物を、調製し、SDS−PAGEに供し、その後、ウエスタンブロット分析に供した。(A)CEF細胞抽出物(c)および上清(s)画分におけるF1の発現。(B)Vero細胞抽出物(c)および上清(s)画分におけるF1発現。(C)CEF細胞(c)および上清(s)画分におけるVおよびV307発現。(D)Vero細胞(c)および上清(s)画分におけるVおよびV307発現。(E)F1の分子形態に及ぼすグリコシダーゼ処理の作用。グリコシダーゼで処理された(+)または処理されていない(−)、CEF細胞および上清(sup)画分からのF1発現。F1対照レーンは、E.coliにおいて、caf1オペロン発現ベクターから発現された10ngを含む(約質量18kd)。
【0095】
組換えMVAウイルスによって導かれるF1、V、およびV307抗原の発現を免疫ブロット分析によって評価した。種々のMVA組換え体からの抗原の発現を、MVA許容のCEF細胞および非許容の哺乳動物のVero細胞において評価した(図2Aおよび2B)。MVA/F1組換え体は、細胞抽出物および細胞上清の両方においてF1タンパク質の発現を引き起こした。cF1莢膜抗原の凝集に起因して、発明者らは、SDS−PAGEにおいて、代表的に、F1タンパク質のモノマーおよびダイマー形態の両方を観測する。上清形態は、より高い分子量のものであり、それは、おそらくF1タンパク質のグリコシレーションに起因する(図2AおよびB)。MVA/V構築物は、Vero(図2D)と比較して、CEFにおいて著しくより高い発現を示した(図2C)。MVA/VおよびMVA/V307は、CEFにおいて、同様の発現レベルを有した(図2C)。MVA/IRES/tPA/V307の発現は、MVA/VまたはMVA/V307と比較してより低いが、V307タンパク質は、より効率的に分泌された。(図2C)。
【0096】
概要
1つの実施例において、脳心筋炎ウイルス(EMVC)内部リボソーム進入部位(IRES)の翻訳調節下で、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)分泌シグナルを有する、Yersinia pestis由来の低カルシウム応答V(V307)抗原の短縮型バージョンを含む構築物組成物を、マウスに投与した。上記構築物組成物は、マウスにおいて、Y.pestisのCO92(莢膜に被われている)株またはJava 9(莢膜に被われていない)株を用いる、それぞれ鼻内または腹腔内へのチャレンジに対して、高められた免疫原性を与え、一貫して有意な保護を与えた(87.5%〜100%)。V抗原の完全バージョンを発現するMVA構築物は、高度に免疫原性であったが、この実験において、CO92株またはJava 9株それぞれに対して有意に低い保護(37.5%)を提供した。莢膜タンパク質(F1)を発現するMVA構築物は、検出可能な抗体を顕在化させ損ねたが、CO92またはJava 9のチャレンジに対して、それぞれ50%および25%の保護を与えた。この研究において試験された全てのMVAベクター化(vectored)ペストワクチンは、重症複合免疫不全(SCID)マウスにおいて全く安全であることが示された。MVAは、もともとの生の弱毒化されたワクシニア株よりも優れた安全性を有する第二世代の痘瘡(smallpox)ワクチンとして使用するために備蓄されている。従って、組換えのMVA/IRES/tPA/V307ワクチンは、痘瘡(smallpox)およびペストに対する保護を同時に提供する潜在力を有する。
【0097】
これらの実施例において、以下を試験した:i)Y.pestisのF1およびV抗原を発現するためのMVAの適切性;ii)マウスにおけるMVAベースの組換え体の免疫原性および保護能力;iii)組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)の分泌シグナルと組み合わせた脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム進入部位(IRES)が、MVAベースのワクチン候補の免疫原性および保護能力に与える影響;ならびにiv)免疫無防備状態マウスにおけるMVA組換え体の安全性。その調査結果により、Y.pestis V抗原の短縮された形態を発現する組換えMVAウイルスが、IRESおよびtPA(MVA/IRES/tPA/V307)の存在下で、マウスにおいて、Y.pestisの種々の株でのチャレンジに対して増加した免疫原性、安全性、および保護を提供したことが実証された。
【0098】
さらに、Y.pestisのF1およびV抗原を発現および輸送し得るMVAベクター化候補ワクチンの安全性および有効性の研究を記載した。BALB/cマウスにおける免疫原性研究において、V抗原を発現するMVAベクター化ワクチンは、ロバストな(robust)抗体応答を顕在化させた。これらのMVA/V構築物の強い免疫原性の潜在力を考慮して、その後の研究は、この抗原に焦点を合わせた。Vタンパク質は、3つの病原性Yersinia種(例えば、Y.enterocolitica、Y.pseudotuberculosis、およびY.pestis)によるヒトまたは動物の感染症に必要とされる。1つの実施例において、V抗原のバリアントを発現するMVAであって、ここでこのV抗原が、インビボでの内因性のIL−12、TNF−α、およびIFN−γの抑制に関係するセグメントを除去するように短縮される、MVAを免疫原性および保護について試験した。さらに、短縮されたV抗原の免疫原性および保護能力に及ぼす、IRES翻訳調節配列とtPA分泌シグナルとの組み合わせの効果を調べた。V抗原を発現する全てのMVA構築物が免疫原性であることを見出した。全ての生成されたMVA構築物の保護能力を、肺ペストのマウスモデルにおいて試験するとき、MVA/IRES/tPA/V307は、非常に毒性であるY.pestis CO92株を用いた35LD50ならびに350LD50での致命的なチャレンジに対する保護を一貫して誘導した。MVA/V307構築物での観測される保護は、MVA/IRES/tPA/V307ワクチンによって誘導されたものよりも有意に低かった(P<0.05)。従って、IRES/tPAプロセシングシグナル(processing signal)は保護免疫応答を増強するようである。
【0099】
これらの研究において、MVA/F1ワクチンは、F1抗原に対する有意な抗体応答を顕在化させ損ねた。しかし、免疫されたマウスの50%が、Y.pestis CO92株でのチャレンジに対して、11日間のメジアン生存期間を有して保護された。F1に対する非常に低い抗体応答、またはタンパク質に対する細胞免疫応答のいずれかは、Y.pestis感染から保護する一因となり得る。
【0100】
MVA/IRES/tPA/V307構築物によって顕在化される高レベルの抗原特異的抗体の生産は、これらの研究において観測される高レベルの保護を説明し得る。しかし、MVA/V構築物は、高い抗V抗体タイターを生み出したが、チャレンジからの保護は、より低かった。
【0101】
Y.pestisの、天然に存在する莢膜に被われていないバリアントは、毒性であることが示されている。有効なペストワクチンは、Y.pestisの、莢膜に被われているバリアントおよび莢膜に被われていないバリアントの両方による感染に対して保護できるべきである。これらの研究において、MVA/IRES/tPA/V307を有するワクチン候補構築物は、Y.pestisの莢膜に被われていない株(Java 9)に対して完全な保護を与えた。予備データは、この保護が、抗体によって部分的に媒介されること、すなわち、それは、Java 9チャレンジから保護される抗MVA/IRES/tPA/V307抗体の受身移入を示唆する。
【0102】
これらのMVAベクター化ペストワクチンを、免疫無防備状態(SCID)マウスにおいて安全性について試験した。複製能力のあるポックスウイルスを用いたSCIDマウスの感染は、著しい体重減少、および基礎をなす免疫欠損を有するワクチン接種された個体に起こり得る、播種性のウイルス血症に類似するポックスウイルス病変を引き起こす。これらの研究において、ペスト抗原を発現するMVA構築物が、SCIDマウスにおいて安全であること、および有効なB細胞免疫またはT細胞免疫が存在しない場合であっても全身性の疾患を誘導し損なうことが実証された。
【0103】
これらの研究により、Y.pestis抗原を有効に発現し、保護免疫応答を生み出すためのMVAの潜在力が実証される。シグナル配列と組み合わせてV307抗原を発現するMVA構築物は、非常に免疫原性であること、安全であること、Y.pestisでの鼻内または腹腔内へのチャレンジに対して保護を与えることを示した。
【0104】
全てのMVA−V構築物は免疫原性であるが、マウスにおいて、ペストに対する保護について試験するとき、MVA/IRES/tPA/V307は、非常に毒性であるY.pestis CO92株での致命的なチャレンジに対して87.5%〜100%の保護を誘導した。この調査結果は、ペストに対する高められた保護を提供することにおけるV307に基く、サブユニット候補ワクチンの改善された免疫原性特性を示している、以前の報告と一致している。
【0105】
これらの調査結果により、例えば、MVAは第二世代の痘瘡(smallpox)ワクチンとして使用するために備蓄されているので、バイオディフェンスのための新たなワクチン接種戦略の開発がもたらされる。2つの生物学的脅威、痘瘡(smallpox)およびペストに対する保護免疫応答を同時に生み出すワクチンは、価値のあるバイオディフェンスの道具であり得る。
【0106】
図1は、rMVA/Y.pestis抗原ウイルスの構築を例示する。この実施例において、Y.pestis抗原、F1、V、およびV307のそれぞれについての発現カセットをpdIIIGFPに挿入した。EMCV−EMCV IRES配列、その後のtPA分泌シグナルを含んだ別のカセットをV307抗原コード配列に融合させた。上記カセットを、SmaIおよびBamHI制限酵素部位を含むようにPCRによって生成した。各発現カセットを、MVAのHindIII Aフラグメント内の欠失IIIに隣接するDNAセグメント(flank 1およびflank 2)を含んだプラスミドに挿入した。上記プラスミドはまた、複数のクローニング部位(MCS)の上流に、強い合成の初期/後期ワクシニアウイルスプロモーター、および多様な合成のワクシニアウイルス初期/後期プロモーターの制御下にある、GFPのためのコード配列を含んだ。
【0107】
実施例2
MVA構築物の免疫原性
別の例示的な方法において、BALB/cマウスの群を、F1、V、またはV307抗原をコードするMVA/Y.pestis構築物を用いて筋肉内に免疫した。単一の免疫(ブースト前)後および2回の免疫(チャレンジ前)後の、抗体のタイターをELISA分析によって評価した。MVA/V構築物によって顕在化したチャレンジ前の抗体のタイターは、MVA/V307構築物よりも有意に高かった(P<0.05)が、これらの構築物によって誘導されたブースト前のタイター間で有意差はなかった(図3B)。IRESおよびtPA配列の、免疫原性に及ぼす作用を調べた。図3Bに示されるように、IRESおよび分泌シグナル(MVA/IRES/tPA/V307)の制御下でのV307の発現は、その免疫原性を著しく高めた。ブースト前およびチャレンジ前の、抗体のタイターの両方は、MVA/V307よりもMVA/IRES/tPA/V307で免疫されたマウスにおいて有意に高かった(P<0.05)。MVA/IRES/tPA/V307およびMVA/V307構築物によって顕在化したIgGサブクラスの分析は、IgG1サブクラスとIgG2aサブクラスとの間でバランスのとれた応答を示した(データ示さず)。V抗原を発現するMVA構築物は、一次免疫と比較して、抗体応答に及ぼす有意なブースター作用(P<0.05)を、全ての免疫されたマウスにおいて誘導した(図3B)。MVA/F1またはMVA/IRES/tPA/F1構築物で免疫されたマウスにおいて、ブースター作用は検出されなかった。さらに、MVA/F1またはMVA/IRES/tPA/F1構築物によって顕在化したチャレンジ前の抗体のタイターは、V抗原を発現する構築物によって誘導されたタイターよりも有意に低かった(P>0.05)(図3Aおよび3B)。
【0108】
図3は、マウスにおけるMVA/ペストワクチンに対する免疫応答を例示する。8匹の4〜6週齢のBALB/cマウスの群を、MVA−ペストワクチンを用いて筋肉内にワクチン接種した。28日間隔てられた2回の免疫後、血清サンプルを最初のワクチン接種後28日目および42日目に収集し、ELISAによって分析してF1またはV抗原に対する体液性免疫応答を決定した。(A)F1抗原に対する抗体応答。(B)MVA/ペストワクチンで免疫されたマウス由来のV抗原に対する抗体応答。
【0109】
実施例3
ペストチャレンジに対する保護
他の例において、本明細書中に開示されるいくつかの構築物の導入後、動物モデルをペストに対する保護を評価するために使用した。MVA/IRES/tPA/V307でワクチン接種された全てのマウスは、Y.pestisのCO92(35 LD50)株またはJava 9(100 LD50)株のいずれかでの致命的なペストチャレンジから生き残った(図4Aおよび4B)。さらに、MVA/IRES/tPA/V307で免疫したマウス由来のプールされた免疫血清の、ナイーブBALB/cマウスへの受身移入は、対照のマウスと比較して、Y.pestisのJava 9株に対して有意な保護を与えた(P<0.05)(データ示さず)。対照的に、MVA/V307、MVA/V、またはMVA/IRES/tPA/Vで免疫されたマウスの25%のみ、37.5%〜50%が、それぞれY.pestisのCO92株でのチャレンジから生き残った(図4A)。MVA/F1またはMVA/IRES/tPA/F1で免疫したマウスは、それぞれY.pestisのCO92株またはJava 9株でのチャレンジに対して50%または25%の生存率を有した(図4Aおよび4B)。
【0110】
図4は、MVA/ペストワクチンで免疫されたマウスのカプラン−マイヤーの生存率の分析を例示する。追加免疫の2週間後、マウスを(A)1×105pfu(35LD50)のY.pestis(CO92)を用いて鼻内に、または(B)100cfu(100 LD50)のY.pestis(Java 9)を用いて腹腔内にチャレンジし、生存率を2週間の期間にわたって記録した。
【0111】
実施例4
MVA/IRES/tPA/V307ワクチンの最小保護用量
リード(lead)候補ワクチンの最小保護用量を確立するために、8匹のBALB/cマウスの群を、漸増する用量(5×105pfu、5×106pfu、または5×107pfu)のMVA/IRES/tPA/V307を用いて免疫し(予備刺激およびブースト)、次にCO92 Y.pestis株の35LD50または350LD50のいずれかでチャレンジした。漸増する用量のMVA/IRES/tPA/V307で免疫したマウスでは、それぞれ3.38、3.75、または4.25(log10)という、チャレンジ前の抗体のタイターを有する、対応する免疫応答の増加が顕在化した。最も高い免疫用量(5×107)は、より低い用量と比較して、有意により高い抗体のタイター(P<0.05)を顕在化させ、それは、CO92 Y.pestis株の35LD50または350LD50のいずれかでのチャレンジのそれぞれに対して、有意な保護(87.5%)を与えた(下の表2)。MVA/IRES/tPA/V307ワクチンのうちの2つのより低い用量で免疫され、その後、Y.pestisの35LD50でチャレンジされたマウスの生存率間に有意差はなかった(P>0.05)(表2)。チャレンジ用量における10倍の増加(350LD50)により、MVA/IRES/tPA/V307ワクチンの最低用量(5×105pfu)によって与えられる生存率が減少し、MVA/GFP対照群の生存率との有意差がなかった(P>0.05)(表2)。しかし、対照群と比較しての有意な保護(P=0.01)を、Y.pestisの350LD50でのチャレンジに対して5×106pfuのワクチンで免疫したマウスに与えた。
【0112】
【表2】
免疫無防備状態のマウスにおけるMVA/ペストワクチン候補の安全性
ワクシニア−Wyethが接種された群における全てのマウスは、その尾および足におけるポックス病変、ならびに持続する体重減少によって特徴付けられる臨床疾患症状を発達させ、感染後5〜7週間以内に死亡した。MVAwtまたはMVA/Y.pestisワクチン構築物からの動物のうち、どれも、全くポックス病変を発達させなかった。ワクシニア−Wyeth群における体重減少は、MVAwtまたはMVA/ペストワクチン構築物で感染させた群においてよりも有意に大きかった(P<0.0001)(図5)。
【0113】
実施例5
抗体のタイター
図6は、筋肉内経路または皮内経路を介して、種々の分泌シグナルを発現する、5×107PFUのMVA/ペストワクチンで免疫されたマウスの群(n=10)を表す。MVA/ペストワクチンを用いた、予備刺激およびブースト免疫後の抗体のタイター(平均値±SD)をElisaによって分析した。MVA/tPA/V307(IM)またはMVA/IRES/tPA/V307(ID)で免疫されたマウスからのブースト後のタイター(post−boost titer)は、MVA/C13L/V307またはMVA/IRES/tPA/V307(IM)群よりも有意に高かった(P値**<0.01、*<0.05)。
【0114】
マウスの種々の免疫された群からの、ブースト前の抗体のタイター間で有意差はなかった。tPAの共発現(MVA/tPA/V307)は、C13L分泌シグナルを共発現するワクチン(MVA/C13L/V307、P<0.01)、または追加的にIRES翻訳エンハンサーを発現するワクチン(MVA/IRES/tPA/V307、P<0.05)と比較して、筋肉内に投与されたMVA/ペストワクチンの免疫原性を有意に改善した。MVA/IRES/tPA/V307の皮内投与は、ワクチンの免疫原性を有意に増加させた(P<0.05)。
【0115】
材料および方法
MVA組換えワクチンの構築
トランスファープラスミドpdIIIGFP(提供された)を、Y.pestis抗原を発現する組換えMVAを生成するために使用した。このプラスミドは、1)MVAのHindIII Aフラグメント内の欠失IIIに隣接するDNAセグメント(flank 1およびflank 2)、2)複数のクローニング部位(MCS)の上流に、強い合成の初期/後期(SEL)ワクシニアウイルスプロモーター、および3)多様なSELプロモーターの制御下にある緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を含んだ(図1)。ECMV IRES配列、その後のtPA分泌シグナルを含む第二のトランスファープラスミドpdIIIGFP/IRES/tPAを、pdIIIGFPにIRES/tPAカセットを挿入することによって生成した。Y.pestis抗原、F1、全長V、およびaa307で短縮されたV(V307)のそれぞれのための発現カセットを、pdIIIGFPまたはpdIIIGFP/IRES/tPAに挿入した。発現カセットを、pdIIIGFPまたはpdIIIGFP/IRES/tPAへの挿入に適切な制限酵素部位を含むようにPCRによって生成した(表1)。そのPCR産物を、pdIIIGFPまたはpdIIIGFP/IRES/tPAのMCSにクローン化し、得られたプラスミドをpdIIIGFP/F1、pdIIIGFP/IRES/tPA/F1、pdIIIGFP/V、pdIIIGFP/IRES/tPA/V、pdIIIGFP/V307、およびpdIIIGFP/IRES/tPA/V307と呼んだ。
【0116】
【表1】
組換えMVA−ペストウイルスを、以前に記載されるように生成した。手短に言えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)を、0.05の多重度で野生型MVAで感染させ、1時間(h)後に、その細胞をLipofectamineTM(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて、トランスファーベクターのそれぞれでトランスフェクションした。トランスフェクション後48時間〜72時間に、単層を収集し、500RCFで5分間、4℃にて遠心分離し、細胞を凍結融解(freeze−thaw)および音波処理(設定3でのVirtis600を用いて15秒間、2回)によって破壊した。GFPを発現する、可能性のある組換えウイルスを含む、その破壊した細胞の抽出物を、新鮮なCEF細胞上に蒔き(plated)、0.8%のアガロースで覆った。48〜72時間後、組換えウイルスによって生成されたプラークを、蛍光によって検出し、ガラスピペットで培地に取った。その細胞/ウイルスサンプルを上に記載されるように音波処理し、蒔いた。3回連続のプラーク単離後、高いタイターのウイルスストックを、その後のインビトロおよびインビボでの特徴付けのために、CEF細胞において調製した。
【0117】
Y.pestis抗原のインビトロでの発現
F1、V、V307、またはIRES/tPA/F1、IRES/tPA/V、IRES/tPA/V307抗原を含む、組換えMVAウイルスのインビトロでの発現を、免疫ブロット分析によって決定した。CEF細胞またはVero細胞を、6ウェルプレートに蒔き、血清を含まない条件で、0.5または5のMOIにて、それぞれ組換えMVA/F1、MVA/IRES/tPA/F1、MVA/V、MVA/IRES/tPA/V、MVA/V307、またはMVA/IRES/tPA/V307ウイルスを用いて感染させた。感染後48時間に、感染させた細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Mini Protease tabs,Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)の存在下で収集し、洗浄し、1×ローディングバッファーに再懸濁して、95℃まで5分間加熱した。感染させた細胞からの上清を遠心分離し、3kDaのカットオフ膜(Nanosep 3K Omega,Pall,Inc.,East Hills,NY)を用いた限外濾過によって濃縮した。その上清を次に、等しい体積の2×ローディングバッファーと合わせ、95℃まで5分間加熱した。上清および細胞サンプルをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分割し、組織内で(in−house)生産されたポリクローナルウサギ抗F1または抗V血清を用いる免疫ブロット分析のためにニトロセルロース膜に移した。特定病原体未感染(SPF:specific pathogen free)ウサギに、精製されたF1(caf1オペロン発現システム由来)またはV(ATCC,BEI Resources,Manassas,VA,カタログ番号NR−3832)タンパク質を接種することによって、そのポリクローナル抗体を生成した。これらの抗体は、免疫ブロット分析に用いられるとき、CEFまたはVeroから発現されるMVA野生型に対してわずかなバックグラウンド(minor background)を示した。
【0118】
F1グリコシレーション状態を、タンパク質脱グリコシル化酵素混合物(New England Biolabs(NEB),Ipswich,MA,カタログ番号P6039S)を用いて分析した。手短に言えば、Vero細胞およびCEF細胞を、以前に記載されるように、MVA/F1またはMVA/IRES/tPA/F1で感染させ、収集した。30μlのH2Oに懸濁した細胞ペレット、および濃縮した上清を、NEBキットプロトコルを用いて処理した。18μlの再懸濁した細胞ペレットおよび濃縮した上清サンプルを100℃で10分間、変性させた。10%のNP40を含むG7反応バッファーを、反応体積が50μlになるように加えた。各反応物を分け、半分を2.5μlのNEB脱グリコシル化酵素カクテルで処理し、37℃で4時間インキュベートした。各反応物10μlを電気泳動に供し、ポリクローナルウサギ抗F1血清を用いてウエスタンによって分析した。
【0119】
Yersinia pestis培養物
Y.pestis培養物の調製およびその後の動物チャレンジ実験を、以前に記載されるように行った。手短に言えば、作業用ストック(working stock)を調製するために、75μLの凍結Y.pestis分離菌を融解し、ボルテックスし、血液寒天プレート(Remel,Lenexa,KS)上に広げ、28℃で48時間インキュベートした。細菌叢(bacterial lawn)を、上記寒天プレートから削り、0.2%のキシロースを有する、200mlのHeart Infusion Broth(Difco Laboratories,Detroit,MI)に入れ、28℃で48時間インキュベートした。最終ストックを、その肉汁培養物(v/v)に20%のグリセロールを加えることによって調製し、−80℃にてアリコートで保管した。Y.pestisの細菌株CO92およびJava 9を提供した。この研究のためのえり抜きのF−株は、C12株であった(これは当時、入手可能ではなかった);それゆえ、容易に入手可能であったF1−Java 9を使用した。
【0120】
免疫およびチャレンジ
8匹の4〜6週齢のメスのBALB/cマウス(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN)の群は、後肢への筋肉内注射によって、各ワクチン候補での一次免疫および追加免疫(28日離して)を受けた。50μl中5×107プラーク形成単位(pfu)の用量を、両方の注射のために使用した。対照群を、組換えF1タンパク質(rF1−40μg)、空のMVAベクター(MVA/GFP−5×107pfu)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS−50μL)のいずれかで免疫した。追加免疫の2週間後に、全ての動物を、野生型Y.pestis CO92株を用いて、その細菌の1×105コロニー形成単位(cfu)(35LD50)を含む接種材料10μL(各鼻孔に5μL)の鼻内点滴注入によって、チャレンジした。Y.pestisのJava 9株でチャレンジされた動物は、100cfu(100LD50)を含む100μlの接種材料を腹腔内に受けた。この研究に使用されたJava 9の分離菌は、鼻内経路を介しては、より低い毒性であったが、腹腔内に使用されるとき、毒性が高かった。チャレンジされた動物を2週間モニターした。
【0121】
8匹の4〜6週齢のナイーブマウスの群に対して、2用量のMVA/IRES/tPA/V307で免疫されたマウスに由来する、100,000のタイターを有するブースト後のプール血清100μlで、腹腔内に受動免疫した。その受動免疫マウスに対し、100cfu(100LD50)の、Y.pestisのJava 9株を含む、接種材料100μlを腹腔内にチャレンジした。チャレンジした動物を2週間モニターした。Y.pestisのCO92またはJava 9凍結ストック培養物の安定性および毒性の表現型を、細菌数および致死量についてアリコートを試験することによって確認した。コロニー形成単位の数を、血液寒天上に100μLの各希釈物を蒔き、28℃で48時間インキュベートすることによって決定した。それぞれY.pestisのCO92またはJava 9細菌培養物の10倍希釈物で、11〜12週齢のBALB/cマウスの群に鼻内(10μL)接種または腹腔内(100μL)接種することによって、致死量(LD50)の値を決定した。接種後、動物を14日間モニターし、死亡率を記録し、LD50を当該分野において公知である方法によって計算した。
【0122】
血清学
血清サンプルを、一次ワクチン接種後28日目およびブースト後(チャレンジ前)14日目に収集し、Y.pestisのF1またはV抗原に対する抗体のタイターを評価した。血清の総IgGならびにIgG1およびIgG2aサブクラスのタイターを、以前に記載されるように、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)によって測定した。手短に言えば、96ウェルのELISAプレートを、精製された組換えF1またはV抗原(1ウェルにつき、100μLの炭酸バッファー中0.1μg、pH9.6)で、4℃にて一晩、コーティングした。コーティングされたプレートを、PBS中0.05%のTween20(洗浄バッファー)で2回洗浄して、ブロッキングバッファー(PBS中1%のBSA)で、室温(RT)にて1時間すすいだ。血清サンプルを次に、ELISA希釈剤(洗浄バッファー中0.1%のBSA)中1:100〜1:100,000まで段階的に希釈し、調製したELISAプレートに3つ組で加えた。以前の研究からの、組換えF1またはV抗原で接種されたマウスに由来する、公知の陰性および陽性血清サンプルを、対照として使用し、プレートを室温で1時間インキュベートした。洗浄後、1ウェルにつき100μLの、ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)結合体化ウサギ抗マウスIgG(Abcam Inc,Cambridge,MA)の1:10,000希釈物を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、1ウェルにつき100μLのテトラメチルベンジジン(TMB)クロモゲン(Invitrogen,Calsbad,CA)を、各ウェルに加え、暗所にて5分間インキュベートした。その反応を次に、1ウェルにつき100μLの2mM H2SO4(Sigma,St Louis,MO)を加えることによって止めた。比色定量を、マイクロプレートリーダー(ELx800−BioTek,Winooski,VT)を用いて、450nmの試験波長および630nmの参照波長で評価した。陽性(公知の陰性血清サンプルの平均値+3標準偏差を超えた)であった最も高い希釈度を終点と考え、その逆数値(reciprocal value)をタイターとして記録した。
【0123】
MVAベースのワクチン構築物の安全性
6匹の5週齢のBALB/cSCIDマウス(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN)の群に対して、1×108pfuのMVA/F1、MVA/V、MVA/V307、MVA/IRES/tPA/V307または野生型MVA(MVAwt)を腹腔内に接種した。さらなる群は、1×106pfuのワクシニアWyeth株を、同じ経路によって受けた。マウスを3ヶ月間毎日モニターし、それらの体重を毎週記録した。マウスは、自然に死亡するか、または以前に記載されるように、2未満(BCS<2)のボディコンディションスコアを示したときに安楽死させた。
【0124】
統計解析
ブースト前の抗体およびチャレンジ前の抗体のタイターに及ぼすワクチン群の作用を評価するために、一元ANOVAを使用した。ワクチン群の作用が統計的に有意であった場合(Kruskal−Wallis検定によってP<0.05)、0.05の調整していないP値を用いて、群中での全てのペアをなす比較を行った。生存率の分析を行って、CO92またはJava 9でのチャレンジに対するワクチンの有効性を評価した;報告されたP値は、フィッシャーの正確検定からのものである。全ての統計解析について、GraphPad Prism 5ソフトウェア(La Jolla, CA)を用いて、0.05未満の確率値を有意であると考えた。
【0125】
本明細書中に開示される、および請求される、全ての組成物および方法は、本開示を考慮して、過度の実験なく作製および実施され得る。上記組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載されるが、本明細書中の概念、趣旨、および範囲から外れることなく、上記組成物および方法、ならびに本明細書中に記載される方法の工程および工程の連続において、バリエーションが適用され得ることが、当業者に明らかである。より具体的には、化学的、および生理学的の両方に関連する特定の薬剤が、本明細書中に記載される薬剤の代わりに用いられ得、他方、同じまたは同様の結果が達成される。当業者に明らかである全てのこのような同様の置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような趣旨、範囲、および概念の内にあるとみなされる。
【図2A−2D】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、PCT出願であり、2009年11月24日に出願された米国仮特許出願第61/264,144号の利益を主張する。米国特許法119条(e)に従って、この先行出願は、すべての目的のために、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0002】
分野
本発明の実施形態は、腸内細菌関連ペプチドを有する構築物を生成および発現するための方法、組成物および使用を報告する。いくつかの実施形態において、腸内細菌関連ペプチドとしては、ペスト関連ペプチドが挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態において、本発明は、限定されずに、腸内細菌関連ペプチドを発現する弱毒化または改変されたワクシニアウイルスベクターを含む構築物を作製および使用するための方法を開示する。
【背景技術】
【0003】
背景
ウイルス感染症に対して保護するためのワクチンは、ヒト疾患の発生を低減するために有効に使用されてきた。ウイルスワクチンについての最も成功した技術の1つは、弱められた、または弱毒化されたウイルスの株(「生の弱毒化されたウイルス」)で動物またはヒトを免疫することである。免疫処置後の限定された複製に起因して、上記弱毒化された株は、疾患を引き起こさない。しかし、上記限定されたウイルス複製は、ウイルス抗原の完全なレパートリー(repertoire)を発現するのに十分であり、そのウイルスに対して効力があって長期にわたる免疫応答を生成する。従って、上記ウイルスの病原性株に対する引き続きの曝露の際に、免疫された個体は、疾患から保護される。これらの生の弱毒化されたウイルスワクチンは、公衆衛生において使用される最も成功したワクチンの中の1つである。
【0004】
Yersiniaは、腸内細菌科における細菌の属である。エルシニアは、通性嫌気性菌である。Yersiniaのいくつかのメンバーは、ヒトにおいて病原性である。しばしば、げっ歯類は、Yersiniaの天然の保菌生体であり、他の哺乳動物は、これらの細菌に対する宿主としての役割を担うことは少ない。感染は、節足動物の刺咬(arthopod bite)、血液への曝露、空気伝播(aerosol transmission)(例えば、Y.pestis)を介して、または例えば、その細菌で汚染された食品(例えば、野菜、乳由来の製品、および肉)の消費によってのいずれかで起こり得る。伝播についての他の様式は、おそらく存在する(例えば、原生生物のメカニズム(protozoonitic mechanism)によって)。上記Yersinia科は、どちらかと言えば大きいが、たった2つのみ(Y.pseudotuberculosisおよびY.enterocolitica)が、水により伝搬する(water−borne)、疾患の急激な発生(outbreak)に関連付けられている。Yersinia種は、動物保菌生体(例えば、Y.pestisについてのげっ歯類保菌生体)において世界中で見出され、それは井戸水、水処理施設、川および湖で単離される。Yersinia pestis(Pasteurella pestisとも称される)は、エルシニア種の最も有名なメンバーであり、ペストの原因となる生物である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、一般に、腸内細菌関連ペプチドを発現させるための方法、組成物、および使用に関する。いくつかの実施形態において、腸内細菌関連ペプチドとしては、ペスト関連ペプチドが挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態は、腸内細菌に曝されている、または曝される可能性のある被験体を処置または保護するために本発明の構築物を作製および使用することを報告する。これらの実施形態に従って、構築物としては、腸内細菌関連ペプチドを発現する弱毒化または改変されたワクシニアウイルスベクターが挙げられ得るが、これらに限定されない。他の実施形態において、方法および組成物は、構築物を有する組成物を作製および使用することを報告し、この構成物としては、例えば、被験体において、Yersinia spp.に対する免疫応答を誘導するための、Yersinia spp関連ペプチドを発現する弱毒化または改変されたワクシニアウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。これらの実施形態のうちのいくつかは、生物兵器としてYersinia spp.を用いる潜在的な脅威、またはYersinia spp.の急激な発生(その地球規模の健康への影響(health implication)を有する)の可能性についての解決策に取り組む。
【0006】
特定の実施形態は、Yersinia spp.に関連する抗原またはペプチドを有する構築物を有する組成物を報告し、この抗原またはペプチドとしては、F1、V、短縮型V、もしくはYopDポリペプチド、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態としては、C末端が短縮された1つまたはそれより多くの低カルシウム応答(V)抗原が挙げられ得る。これらの実施形態に従って、低カルシウム応答(V)抗原のC末端の短縮としては、炎症性サイトカインの発現を抑制する短縮、免疫抑制性配列を除去する短縮、対応する全長または改変されていないLcrVタンパク質よりも免疫抑制性ではない短縮、LcrVの163個までの連続した残基の欠失(deletion is of)、内部欠失、90個までの連続した残基の内部欠失、LcrVタンパク質のアミノ酸240〜325に及ぶ領域に広がる内部欠失、50個までの連続した残基のC末端の欠失、長さが少なくとも275残基のLcrVタンパク質、またはそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態は、被験体において、腸内細菌(例えば、Yersinia spp)への曝露によって引き起こされる感染を低減または防ぐことが可能であるワクチン組成物を報告し、それは、例えば、その生物の莢膜に被われている形態および莢膜のない形態からの保護が挙げれるが、これに限定されない。
【0007】
いくつかの局面において、ワクチン組成物としての使用の構築物は、1つまたはそれより多くの分泌シグナル配列単独、または1つまたはそれより多くの翻訳調節領域配列と組み合わせた分泌シグナル配列を含み得る。これらの実施形態に従って、分泌シグナル配列は、哺乳動物細胞において機能的である1つまたはそれより多くのシグナル配列であり得る。他の実施形態において、分泌シグナル配列としては、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)リーダー配列、補因子リーダー配列、プレプロインスリンリーダー配列、インベルターゼリーダー配列、免疫グロブリンAリーダー配列、オボアルブミンリーダー配列、およびP−グロビンリーダー配列、または当該分野において公知である他のプロリーダー配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
本明細書中に開示されるワクチン組成物は、当該分野において公知である任意の方法によって投与され得る。特定の実施形態において、ワクチンは、皮内に、筋肉内に、吸入によって、鼻内に、静脈内に、または当該分野において公知である任意の他の経路によって投与され得る。いくつかの組成物は、健康提供者によって評価されるような、徐放性処方物または他の処方物によって投与され得る。
【0009】
他の実施形態は、開示される組成物を作製または使用するためのキットに関係する。キットは、改変されたワクシニアウイルスベクターおよび1つまたはそれより多くの腸内細菌抗原由来の抗原を有する構築物を含み得ることが報告されている。他のキットは、本明細書中に企図される構築物を作製するための方法を含み得る。
【0010】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、特定の実施形態をさらに実証するために含まれる。いくつかの実施形態は、これらの図面のうちの1つまたはそれより多くを単独でまたは提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、参照することによって、より良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、改変されたワクシニアウイルスとYersinia関連ペプチドとからなる例示的な構築物を表す。
【図2A】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図2B】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図2C】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図2D】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図2E】図2A〜2Eは、クローン性組換えウイルスからの発現パターンの例示的な電気泳動分離および分析を表す。
【図3A】図3Aは、本明細書中に開示されるいくつかの実施形態の構築物組成物(construct composition)のワクチンに対する、マウスにおける免疫応答のヒストグラム(ブースト前(pre−boost)、およびチャレンジ前(pre−challenge))を表す。
【図3B】図3Bは、本明細書中に開示されるいくつかの実施形態の構築物組成物のワクチンに対する、マウスにおける免疫応答の例示的なヒストグラム(ブースト前、チャレンジ前)を表す。
【図4A】図4Aは、腸内細菌での鼻内チャレンジ後に、例示的な腸内細菌指向性ワクチン(enterobacterial−directed vaccine)または対照の処方物で免疫されたマウスの生存率を例示する例示的なプロットを表す。
【図4B】図4Bは、腸内細菌での腹腔内チャレンジ後に、例示的な腸内細菌指向性ワクチンまたは対照の処方物で免疫されたマウスの生存率を例示する例示的なプロットを表す。
【図5】図5は、免疫無防備状態マウスにおいて接種された腸内細菌指向性ワクチンの安全性の例示的な評価を表す。
【図6】図6は、本明細書において開示されるいくつかの実施形態のワクチンの、IM(筋肉内)またはID(皮内)のプレブーストおよびポストブースト(pre and post boost)後に測定およびプロットされる、抗体のタイターの例示的なプロットを表す。
【図7】図7は、構築物データの編集物を表3として表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書中で使用されるとき、「a」または「an」は、項目の1つまたは1つよりも多くを意味し得る。
【0013】
本明細書中で使用されるとき、入物(vessel)としては、試験管、ミニフュージもしくはマイクロフュージ管(mini− or micro−fuge tube)、管状物(channel)、バイアル、マイクロタイタープレート、または容器(container)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書中で使用されるとき、「被験体(subject)」または「被験体(subjects)」としては、哺乳動物、例えば、ヒトまたは飼い慣らされた、または野生の、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、他の家庭用ペット(例えば、ハムスター、モルモット、マウス、ラット)、フェレット、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、プレーリードッグ、野生のげっ歯類、または動物園の動物が挙げられ得るが、これらに限定されない。被験体は、成人または子供であり得る。
【0015】
本明細書中で使用されるとき、「約」は、+10%または−10%を意味し得る。
【0016】
本明細書中で使用されるとき、「弱毒化されたウイルス」は、被験体(例えば、哺乳動物(例えば、ヒトまたは動物))へ投与されるときに疾患の医学的徴候の低減または疾患の医学的徴候がないことを実証するウイルスを意味し得る。
【0017】
本明細書中で使用されるとき、「MSC」は、複数のクローニング部位を意味し得る。
【0018】
本明細書中で使用されるとき、「dSP」は、多様なワクシニアプロモーターを意味し得る。
【0019】
本明細書中で使用されるとき、「MVA」は、改変されたワクシニアアンカラを意味し得る。
【0020】
本明細書中で使用されるとき、「EMCV」は、脳心筋炎ウイルスを意味し得る。
【0021】
本明細書中で使用されるとき、「IRES」は、脳心筋炎ウイルスまたは他のウイルス由来の内部リボソーム進入部位を意味し得る。
【0022】
本明細書中で使用されるとき、「IRES(A7)」は、分岐ループ(bifurcation loop)において7つのアデノシン残基を有する脳心筋炎ウイルス由来のIRESを意味し得る;供給源−pCITE−1。
【0023】
本明細書中で使用されるとき、「IRES(A6)」は、分岐ループにおいて6つのアデノシン残基を有するように変異した脳心筋炎ウイルス由来のIRESを意味し得る。
【0024】
本明細書中で使用されるとき、「pDIIIgfp」は、MVA del III gfpマーカーのトランスファープラスミドを意味し得る。
【0025】
本明細書中で使用されるとき、「pI*」は、トランスファーベクタープラスミドを意味し得る。
【0026】
本明細書中で使用されるとき、「tPA」は、組織プラミノゲン(plaminogen)活性化因子由来の分泌シグナルを意味し得る。
【0027】
本明細書中で使用されるとき、「se/l」は、合成の最適化された初期後期ポックスウイルスプロモーターを意味し得る。
【0028】
本明細書中で使用されるとき、「H6」は、ワクシニア遺伝子H6初期/後期ネイティブポックスウイルスプロモーターを意味し得る。
【0029】
本明細書中で使用されるとき、「F1」は、Y.pestis莢膜タンパク質を意味し得る。
【0030】
本明細書中で使用されるとき、「V」は、Y.pestis毒性因子(virulence factor)LcrVを意味し得る。
【0031】
本明細書中で使用されるとき、「V307」または「V307」は、Y.pestis.Vタンパク質のアミノ酸308〜326のC末端LcrVの短縮を意味し得る。
【0032】
本明細書中で使用されるとき、「YopD」は、Y.pestis外タンパク質(outer protein)Dを意味し得る。
【0033】
本明細書中で使用されるとき、「del III」は、改変されたワクシニアアンカラ欠失領域IIIを意味し得る。
【0034】
本明細書中で使用されるとき、「GFP」は、強化された緑色蛍光タンパク質を意味し得る。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、「CEF」は、ニワトリ胚線維芽細胞を意味し得る。
【0036】
説明
以下のセクションにおいて、種々の例示的な組成物および方法が、種々の実施形態を詳述するために記載される。種々の実施形態を実施することは、本明細書中で概説される詳細の全てまたはいくつかさえを用いることを必要としないが、むしろ濃度、回数、および他の詳細が、ごく普通の実験法を通して改変され得るということは、当業者に明らかである。いくつかの場合において、周知の方法または構成要素は、本説明において含まれていない。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態は、ワクチン組成物を報告し、このワクチン組成物としては、改変または弱毒化されたワクシニアウイルスおよび1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチドを含む1つまたはそれより多くの構築物を有するワクチン組成物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、ワクチン組成物は、1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチドを結合する組換えの改変されたワクシニアアンカラ(MVA)ベクターを含み得る。他の実施形態において、ワクチン組成物は、1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチドを結合する組換えの改変されたワクシニアアンカラ(MVA)ベクターであって、ここで上記腸内細菌関連ペプチドのうちの少なくとも1つが、1つまたはそれより多くのYersinia関連ペプチドを含む、組換えの改変されたワクシニアアンカラ(MVA)ベクターを含み得る。例えば、1つのワクチン組成物は、Yersinia pestis抗原を発現する組換えの改変されたワクシニアアンカラ(MVA)ベクターを含み得る。このワクチン組成物に従って、1つまたはそれより多くのYersinia pestis関連抗原を発現するMVA構築物が、生成され得る(例えば、V、F1、LcrVタンパク質、またはそれらの変異体もしくはフラグメント)。
【0038】
Yersinia
ペストは、元来、ノミによって伝播される野生のげっ歯類の疾患であるが、それは、ヒト、家庭用ペット、および野生動物も苦しめ得る。上記疾患は、歴史を通してヒトおよび動物集団を打ちのめした。近年、それは、世界の多くの地方において、深刻な大流行を引き起こし、その結果、ヒトの死亡および深刻な経済損失をもたらしている。Yersinia pestisisは、米国南西部、東南アジア、東欧、中央および南アフリカ、ならびに南アメリカにおいて、野生のげっ歯類集団中にはびこり、これらの地域におけるヒト集団は、高度に感受性がある。米国において、ペストは、西部の州に広がり、リス、野生のマウス、およびプレーリードッグにおいて重大な死亡率が生じている。家庭用ネコもY.pestis感染に対して感受性があり、それらは、ヒトにおけるペストの多くの近年の症例において、感染源として同定されている。
【0039】
ヒトにおけるその病原性、特に、上記疾患からの肺の形態(form)、およびヒトからヒトへのその伝播の可能性に起因して、Y.pestisは、生物戦争の潜在的な候補であると考えられる。ペストの犠牲者が、都市の城壁を越えて送られたカッファの包囲(siege of Kaffa)の間の1300年代に、モンゴル人が、粗製生物兵器としてペストを最初に使用したと考えられる。第二次世界大戦の間に、日本軍の秘密部門は、ペストに感染したノミを中国の上に落とし、ヒトにおけるいくつかの急激な発生を引き起こしたことが報告される。その後の数年間、米国およびソビエト連邦において、生物学的兵器についての調査プログラムが、ペストのエアゾール化のための方法を首尾よく開発した。より近年には、ペストを用いて働いていた旧ソビエト連邦からの科学者は、Y.pestisが依然として、実行可能な生物兵器であると考えられるという証拠を通知した。1970年に世界保健機関は、500万人の都市にわたって、50kgのペスト菌、Y.pestisを意図的に放出することにより、150,000人もの臨床的症例、および36,000人もの死亡をもたらすことを見積もった。2001 U.S.Congressional Office of Technology報告書は、Y.pestisの故意のエアゾール放出は、9,000人超の臨床的症例、および少なくとも2,000人の死亡を引き起こし得ると見積もった。従って、兵士、健康の専門家、および最初に応答する人員を、Y.pestis生物兵器の脅威から保護し得、バイオテロリストの攻撃後にリスクがある個体のワクチン接種によって疾患の蔓延を制限し得、そして、流行している国々において疾患の急激な発生を制限し得る新規のワクチンについての即座の必要性がある。
【0040】
本発明の特定の実施形態は、Yersini sppに対して指向する構築物を有する組成物を報告する。例えば、ワクチン組成物は、ペストを防ぐことまたはペストの発生の低減に関し得る。
【0041】
近年において、新規のペストワクチンの開発は、熱またはホルムアルデヒドによって死滅させたY.pestisの懸濁物に基づく商業的に認可されたワクチンが安全ではないことが見出されたので、広範囲な調査の焦点である。莢膜F1(17.5kDa)およびV(35kDa)抗原は、Y.pestisによって生成される天然の毒性因子である。両方の抗原は、感染の早期に細菌の蔓延を制御するのに必要とされる先天免疫応答に影響を与える。F1ベースのワクチンは、免疫原性であるが、これらのワクチンは、Y.pestisの天然に存在する莢膜に被われていない株に対する保護を提供し損なっている。本発明のいくつかの実施形態は、例えば、他のYersinia外タンパク質(Yop)の送達において役割を果たす分泌されたV抗原を含み得、ペストの目印であるTNF−αおよびIFN−γの抑制に関連するIL−10(抗炎症性サイトカイン)の分泌を刺激する。
【0042】
Yersinia spp感染に対するワクチンのために使用する抗原としては、LcrV(低カルシウム応答V、すなわちV抗原)、または哺乳動物の宿主における生存に不可欠である、他の、プラスミドによってコードされる毒性タンパク質(例えば、Yop、すなわちエルシニア外タンパク質)が挙げられ得る。YopおよびLcrVは、III型メカニズム(Ysc)によって分泌され、Yopは、組織培養感染モデルにおいて、結合した真核細胞の細胞質へと一方向性に向かい(unidirectionally targeted)得る。LcrVは、Yop標的化に必要とされ、最近の発見は、それが、細菌表面に局在化し得ることを明らかにしている。従って、本発明のいくつかの実施形態において使用されるコード配列のうちのいくつかは、Y.pestis抗原莢膜タンパク質F1、全長の毒性因子LcrV(V)、LcrVの短縮された形態(V307)、LcrVおよびエフェクタータンパク質YopDの他のカルボキシ末端の短縮についてのコード配列を含み得る。
【0043】
他の実施形態は、C末端の短縮を有する1つまたはそれより多くの低カルシウム応答(V)抗原を含み得る。これらの実施形態に従って、低カルシウム応答(V)抗原のC末端の短縮としては、炎症性サイトカインの発現を抑制する短縮、免疫抑制性配列を除去する短縮、対応する全長または改変されていないLcrVタンパク質よりも免疫抑制性ではない短縮、LcrVの163個までの連続した残基の欠失、内部欠失、90個までの連続した残基の内部欠失、LcrVタンパク質のアミノ酸240〜325に及ぶ領域に広がる内部欠失、50個までの連続した残基のC末端の欠失、長さが少なくとも275残基のLcrVタンパク質が挙げられ得るが、これらに限定されない(例えば、2005年12月02日に出願されたSchneedindらの米国特許出願第11/293,024号(すべての目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される))。特定の実施形態において、改変されたLcrVタンパク質は、対応する改変されていないLcrVタンパク質よりも少ない程度まで炎症性サイトカインの発現を抑制し得る。いくつかの実施形態において、上記炎症性サイトカインは、当該分野において公知であるTNF−αまたは他の公知の炎症性サイトカインであり得る。他の実施形態において、欠失はLcrVタンパク質(rV10)の残基271〜300を含み得る。Yersinia pestis由来のLcrVのこの領域に対応する同じまたは同様のアミノ酸が、他のLcrVタンパク質において欠失し得ることが企図される。1つの例において、Yersinia pestisにおけるアミノ酸271〜300は、Y.enterocoliticaにおける280〜309に対応する。
【0044】
他の実施形態において、他の腸内細菌由来のタンパク質またはペプチドは、被験体に投与して、状態の発生を低減するか、または状態を防ぐために本明細書中に企図されるワクチン構築物において使用することができる。特定の実施形態は、任意の病原性腸内細菌に対して指向する構築物を有する組成物を報告する。例えば、ワクチン組成物は、被験体において、病原性腸内細菌への曝露もしくは起こり得る曝露によって引き起こされる感染を防ぐこと、または感染の発生の低減に関し得る。他の腸内細菌としては、Salmonella spp.、Shigella spp、Escherichia coli株、または他の病原性腸内細菌が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0045】
ポックスウイルス科
ポックスウイルス(Poxviridae科のメンバー)は、科として、脊椎動物および無脊椎動物の両方に感染し得るウイルスである。ヒトに感染し得るポックスウイルスの4つの公知の属が存在する:オルトポックス、パラポックス、ヤタポックス、モルシポックス。オルトポックスとしては、痘瘡(variola)ウイルス、ワクシニアウイルス、ウシポックスウイルス、サルポックスウイルス、および痘瘡(smallpox)が挙げられるが、これらに限定されない。パラポックスとしては、オルフウイルス、偽ウシポックス(pseudocowpox)、ウシ丘疹性口内炎ウイルス;ヤタポックス:タナポックスウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。モルシポックスとしては、伝染性軟属腫ウイルス(MCV)が挙げられるが、これに限定されない。より一般的なポックスウイルス(oixvirus)は、ワクシニアおよび伝染性軟属腫であるが、サルポックス感染が上昇中のようである。
【0046】
ポックスウイルス科、ワクシニアウイルスは、痘瘡(smallpox)ウイルスに対するワクチン接種のため首尾よく使用されている。ワクシニアウイルスはまた、外来のタンパク質発現のための有効な道具として使用されて、宿主の強い免疫応答を引き出す。ワクシニアウイルスは、主に細胞融合によって細胞に入るが、受容体は、現在、知られていない。ウイルスは、ウイルスのRNAポリメラーゼおよび関連する転写因子によって転写される遺伝子の3つのクラス(早期、中間期、および後期)を含む。ポックスウイルによって引き起こされる疾患は、約何百年間も知られている。
【0047】
オルトポックスウイルス
本発明の特定の実施形態は、ワクチン組成物において、改変または弱毒化された、オルトポックスウイルスを使用することを含み得る。オルトポックスウイルスは、哺乳動物から単離された多くの病原体(agent)を含むポックスウイルス科の属であり、ワクシニア、サルポックス、ウシポックス、ラクダポックス、アザラシポックスウイルス、スイギュウポックスウイルス、アライグマポックスウイルス、スカンクポックスウイルス、ハタネズミポックスウイルス、およびエクトロメリアウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。ポックスウイルス科のメンバーは、大きな線状二本鎖DNAを有し、ゲノムサイズは、130kbp〜300kbpに範囲が及ぶ。上記属のメンバーのうちの1つは、痘瘡(smallpox)を引き起こす痘瘡(variola)ウイルスである。痘瘡(smallpox)は、ワクチンとして、別のオルトポックスウイルスである上記ワクシニアウイルスを用いて以前に根絶された。
【0048】
改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)
本発明におけるいくつかの実施形態は、予め決定された遺伝子または遺伝子セグメントを発現することが可能である弱毒化ポックスウイルス(例えば、改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC、LC16m8、またはCVI−78)に由来する組換えのワクシニアウイルスを使用する組成物および方法を報告する。当業者は、他の弱毒化ポックスウイルスは、例えば、細胞培養における連続継代によって、またはポックスウイルス遺伝子の故意の欠失もしくは当該分野において公知である他の方法によって生成され得ることを認識する。特定の実施形態において、予め決定された遺伝子は、MVAゲノムにおける天然に存在する欠失部位に挿入され得る。他の実施形態において、組換えのMVAウイルスは、例えば、ワクチン組成物を投与された被験体において免疫応答を誘導することが可能である、上記ワクチン組成物に使用する、ポリペプチド(例えば、抗原)の生産のため、または抗原をコードするために使用され得る。
【0049】
特定の実施形態において、改変または弱毒化されたポックスウイルス(例えば、改変されたワクシニアアンカラ(MVA)、NYVAC、LC16m8、またはCVI−78)は、送達システムとして、上記被験体(例えば、哺乳動物(例えば、ヒト))において使用され得る。以前に、MVAは、120,000人を超える個体に投与され、痘瘡(smallpox)に対する安全で有効なワクチンであることが証明された。他の実施形態において、組換えのMVAワクチン候補は、抗原またはペプチドが由来するウイルス、細菌、寄生虫、または腫瘍によって引き起こされる疾患に対する保護の体液性免疫および細胞性免疫を誘導することが示されている。MVAを適切なベクターとする追加の特徴としては、異なる経路によって投与されるときに保護免疫応答を誘導する能力、および遺伝子安定特性および物理的安定特性が挙げられる。
【0050】
翻訳調節配列
いくつかの実施形態は、必要に応じて、エンハンサー、例えば、翻訳調節配列を含み得る。特定の実施形態において、翻訳調節配列としては、内部リボソーム進入部位(IRES)(例えば、EMCV−IRES)が挙げられ得る。ウイルスのIRESは、4つの群に分類され得る:群1(コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス(PSIV)、およびタウラ症候群ウイルス(TSV));群2(C型肝炎ウイルス、(HCV)、古典的ブタコレラウイルス(CSFV)、およびブタテッショウウイルス1(PTV−1));群3(脳心筋炎ウイルス(EMCV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、およびタイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV));ならびに群4(ポリオウイルス(PV)およびライノウイルス(RV))。他の実施形態において、ウイルスのコード配列に対して5’側に見出されるウイルスの非翻訳領域(UTR)は、翻訳を指揮するために使用され得る。当該分野において公知のウイルス構築物での使用のあらゆる翻訳調節配列が企図される。特定の実施形態において、ウイルスの内部リボソーム進入部位(IRES)は、本明細書中に企図されるペスト抗原の発現を増加させるために使用され得る。IRES配列は、メッセンジャーRNA分子において、終止コドン後に置くことができ、リボソームは、そのmRNAに再結合し(re−attach)得、2つ目のタンパク質がその同じRNAから翻訳され得る。従って、上記IRES配列は、複数の抗原、例えば、複数の腸内細菌抗原またはある腸内細菌抗原、および別の病原性ウイルスもしくは細菌由来の抗原を発現するために使用され得る。例えば、2つ目のタンパク質が選択可能なマーカーである場合、このマーカーの使用は、上記選択可能なマーカーの検出によって、目的の遺伝子(上記プロモーターと上記IRESの間に配置された)が、発現される確率(probability)を増加させる。多数のバイシストロニックベクターは、これらの概念に基づいて生成されている。当該分野において公知であるバイシストロニックベクターのうちのいずれかの使用が、本明細書中で企図される。
【0051】
分泌シグナル
あるいは、本発明の実施形態は、1つまたはそれより多くの分泌シグナル配列を有する構築物を含み得る。使用する分泌シグナルとしては、哺乳動物の分泌シグナル配列が挙げられ得るが、これに限定されない。翻訳調節配列および/または分泌シグナルにより、いくつかのワクチンの効力を増加させることが実証された。いくつかの実施形態において、1つまたはそれより多くの分泌シグナル配列は、プロリーダー配列を含み得る。特定の例において、tPAプレプロリーダー配列が使用され得、ここでリーダー配列としては、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)リーダー配列、補因子リーダー配列、プレプロインスリンリーダー配列、インベルターゼリーダー配列、免疫グロブリンAリーダー配列、オボアルブミンリーダー配列、およびP−グロビンリーダー配列、または当該分野において公知である他のプロリーダー配列、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態において、タンパク質が発現されるように構築物を設計するとき、シグナル配列をコードするDNA配列を、その発現されたタンパク質が分泌されることが望まれる最初の核酸領域へと、例えば、切断可能な形態で、組み込むことが必要であり得る。本発明の実施形態を、任意の1つの理論または作用様式に限定することなく、シグナル配列は、分泌されるかまたは膜結合となるかのいずれかの運命にあるタンパク質に存在する、ペプチドであり得る。これらのシグナル配列は、通常、上記タンパク質のN末端に位置し、一般に成熟タンパク質から切断される。上記シグナル配列は、一般に、そのシグナル認識粒子と相互作用し、リボソームを、翻訳に伴った挿入が行われる小胞体へと向ける。上記シグナル配列が切断可能であるところは、一般に、例えば、シグナルペプチダーゼによって除去される。利用されるべきシグナル配列の選択は、特定の状況の必要性に依存し得、当業者によって決定され得る。本明細書中に提供される例示の文脈において、その点で限定されることはないが、tPAが、目的のペプチド、タンパク質、または構築物の分泌を容易にするために使用され得る。膜タンパク質が所望される場合、上記タンパク質のアミノ末端における5’側の切断可能なシグナル配列、および上記タンパク質の3’(カルボキシ)末端における切断可能ではない膜アンカーの両方が必要とされ得る。これらは、ベクター内で提供され得るか、または片方もしくは両方が目的のタンパク質のDNAによってコードされ得た。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態は、1つまたはそれより多くの構築物を含む組成物を含むが、これらに限定されない。例えば、構築物は、細胞質により保持されるタンパク質もしくはペプチド、分泌されるタンパク質もしくはペプチド、または膜結合であるタンパク質もしくはペプチドを生産するように設計され得る。目的のタンパク質またはペプチドがどのような形態をとる必要があり得るかを決定することは、機能的必要性に依存し得る。例えば、目的のタンパク質が細胞表面にアンカーされて発現することにより、特にそのタンパク質が接着細胞型の膜上に発現される場合には、目的のタンパク質と相互作用する分子(例えば、抗体、アンタゴニスト、アゴニストなど)についてスクリーニングするのに都合のよい手段が提供される。なお、さらなる実施形態は、タンパク質またはペプチドの膜アンカー形態が、例えば、上記タンパク質またはペプチドに対するモノクローナル抗体を生成するために、被験体へ投与するのに、適している場合があることに関係する。これは、正しく折りたたまれ得、適切な翻訳後修飾(例えば、グリコシレーションおよびジスルフィド結合形成)を有し得る上記タンパクまたはペプチドの供給源を提供する宿主細胞に起因し得る。さらに、宿主細胞は、特に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)において、アジュバント特性(例えば、レシピエント被験体との抗原の違い)を提供し得る。
【0054】
あるいは、分泌されたタンパク質は、タンパク質またはペプチドが収集および精製されるべきである場合に適切であり得る。シグナル配列をコードする核酸分子は、そのものが利用される場合には、当業者によってごく普通の手順として決定され得る、上記構築物における任意の適切な場所に置くことができる。いくつかの実施形態において、シグナル配列は、目的のペプチド、タンパク質、または構築物をコードする核酸配列に対してすぐ5’側に置くことができる(目的のタンパク質とのすぐ隣接する融合物として発現され得るように)が、シグナル配列の発現がプロモーターの調節下に置かれるように、そのプロモーターに対して3’側に置くことができる。シグナル配列をコードする核酸配列は、構築物の最初の核酸領域の部分を形成し得る。
【0055】
選択マーカー
特定の実施形態において、追加の選択マーカーが使用され得、例えば、多様な手法(例えば、目的の分子の精製)でのベクターの使用を容易にするために、例えば、設計され得る任意の数の選択マーカーを挿入し得る。例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子融合システムは、目的の構築物、タンパク質、またはペプチドを収集する都合のよい手段を提供する。任意の1つの理論または作用様式に限定することなく、GST−融合タンパク質は、グルタチオンアガロースビーズを用いて、GSTタグによって精製され得る。本発明の実施形態は、分泌可能なGST−分子融合物をコードする構築物にまで広がることが理解されるべきである。これは、例えば、切断可能なGSTに融合する切断可能なシグナル配列をコードし、次に上記GSTが目的の分子に融合するような最初の核酸領域の配列を設計することによって達成され得る。別の例において、それ自体が、プロテインA(分泌された産物の精製を可能にする)の360bpとβ−ラクタマーゼ(単色反応(simple colour reaction)によって上清の試験を可能にする細菌の酵素)との間の融合である融合タグが使用され得る。β−ラクタマーゼは、目的の分子についてのアッセイの非存在下で、目的の分子についてのアッセイの選択を容易にする。プロテインA/β−ラクタマーゼ融合物は、切断を容易にするために、切断部位によって目的の分子から分離され得、その結果、分子が精製された後、上記タグは、容易に除去され得る。当該分野において公知である任意の他の選択マーカーが使用され得る。
【0056】
目的の分子または構築物の精製を容易にするために含まれ得た他の融合タグとしては、ブドウ球菌プロテインA、ブドウ球菌プロテインG、ヘキサヒスチジン、カルモジュリン結合ペプチドおよびマルトース結合タンパク質(例えば、後者はまた、目的の分子の正しい折りたたみを確実にするのを助けるのに有用である)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに別の選択可能なマーカーとしては、抗生物質耐性遺伝子が挙げられ得る。他の実施形態は、抗生物質耐性遺伝子を含み得る。これらの遺伝子は、上記選択マーカーまたはHATベースの選択可能なバイシストロニックベクターが使用され得るように、バイシストロニックベクターの状況において、以前に利用されている。
【0057】
電気泳動
電気泳動は、分子のサイズおよび電荷に基づいて、分子(例えば、タンパク質または核酸のような大分子)を分離するために使用され得る。当該分野において公知である電気泳動の多くのバリエーションが存在する。溶液であって、それを通って上記分子が移動する、溶液は、自由(free)であり得、通常毛管内にあり、または、それはマトリックスに包埋され得る。一般的なマトリックスとしては、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル、および濾紙が挙げられる。
【0058】
タンパク質、ペプチド、および/または抗体もしくはそのフラグメントは、当該分野において公知である任意の手段によって精製、部分的に精製、検出または分析され得る。特定の実施形態において、分子を分離および分析するための方法は使用され得る(例えば、ゲル電気泳動、またはカラムクロマトグラフィーの方法)。
【0059】
抗体のレベルを検出、分析および/または測定するための当該分野において公知である任意の方法は、本明細書中に報告される実施形態において、使用され得る。例えば、抗体または抗体フラグメントについてのアッセイとしては、ELISAアッセイ、化学発光アッセイ、フローサイトメトリー、および当該分野において公知である他の技術が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0060】
画像化薬剤および放射性同位体
特定の実施形態において、タンパク質またはペプチドを有する構築物は、基質と接触する際に蛍光産物、発光産物、または着色した産物を生成する、二次結合リガンドに、または酵素(酵素タグ)に連結され得る。適切な酵素の例としては、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(ホースラディシュ)水素(hydrogen)ペルオキシダーゼ、およびグルコースオキシダーゼが挙げられる。このような標識の使用および同定は、当業者に周知である。
【0061】
他の実施形態において、ペプチド、抗原、構築物、抗体、または抗体フラグメントを検出することが可能である標識または分子としては、アプタマーを使用することが挙げられ得る。アプタマーを作製および使用するための方法は、当該分野において周知であり、これらの方法および使用は、本明細書中に企図される。
【0062】
いくつかの実施形態は、本発明のいくつかの実施形態において開示されるワクチン組成物に曝される被験体によって生産されるポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を検出および/または作製するための方法を含み得る。例えば、被験体に対して受動免疫を誘導することが可能である、生産される抗体または抗体フラグメントは、完全な抗体もしくはそのフラグメント、またはポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体として単離、分析、および/または生産され得る。当該分野において公知であるこれらの抗体を、生産または分析するための任意の手段が企図される。
【0063】
核酸増幅
増幅のための鋳型として使用される核酸配列は、標準方法に従って、生物学的サンプルに含まれるウイルス、細菌、細胞、または細胞構成要素から単離され得る。核酸配列は、ゲノムDNA、または分画されたもしくは全細胞RNAであり得る。RNAが使用される場合、上記RNAを相補cDNAに変換することが所望され得る。1つの実施形態において、上記RNAは、全細胞RNAであり、増幅のための鋳型として直接的に使用される。核酸分子を増幅するための当該分野において公知である任意の方法が企図される(例えば、PCR、LCR、Qbetaレプリカーゼ)。
【0064】
発現されたタンパク質またはペプチド
遺伝子または遺伝子セグメントは、大量のポリペプチド産物を生成するために任意の数の異なる組換えのDNA発現システムにおいて発現され得、これは、次に、精製され得、本明細書中に報告される方法および組成物において使用され得る。構築物を生成および使用するための当該分野において公知である任意の方法が企図される。特定の実施形態において、1つまたはそれより多くのポリペプチドをコードする遺伝子または遺伝子フラグメントは、当該分野において公知である標準クローニング技術またはサブクローニング技術によって発現ベクターへ挿入され得る。
【0065】
ポリペプチドをコードする遺伝子または遺伝子フラグメントを使用する、いくつかの実施形態は、標準サブクローニング技術によって発現ベクターへ挿入され得る。ペプチドまたはタンパク質の迅速な親和性精製を可能にする、融合タンパク質として組換えのポリペプチドを生産する発現ベクターが使用され得る。このような融合タンパク質発現システムの例は、グルタチオンS−トランスフェラーゼシステム(Pharmacia,Piscataway,NJ)、マルトース結合タンパク質システム(NEB,Beverley,MA)、FLAGシステム(IBI,New Haven,CT)、および6xHisシステム(Qiagen,Chatsworth,CA)である。
【0066】
薬学的組成物および投与経路
本明細書中のいくつかの実施形態の水性の組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは水性媒体に溶解または分散した、有効量の治療のタンパク質、ペプチド、構築物、エピトープコア領域、刺激薬、インヒビターなどを含み得る。先行するもののいずれかを発現するベクターの水性の組成物はまた、企図される。句「薬学的または薬理学的に受容可能」は、動物またはヒトに適宜投与されるとき、有害な、アレルギー性の、または他の不適当な反応を生成しない分子実体および組成物を指す。
【0067】
本明細書中のいくつかの実施形態の水性の組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは水性媒体に溶解または分散した、有効量の治療のタンパク質、ペプチド、構築物、有効量の化合物を含み得る。このような組成物はまた、接種材料と称され得る。本明細書中で使用されるとき、「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意の、および全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性のある物質についてのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性のある成分と不適合である場合を除いて、治療組成物でのその使用が企図される。補足の活性成分はまた、上記組成物に組み込まれ得る。ヒト投与について、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準によって要求されるような、滅菌性、発熱原性、全般的な安全性、および純度の基準を満たすべきである。
【0068】
生物学的材料は、適切な場合に、所望されるビヒクルへと、大規模に透析されて、所望されない低分子量分子を取り除き、および/またはより準備のできた処方物について凍結乾燥されるべきである。その活性のある化合物または構築物は、次に、一般に、非経口投与(例えば、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、病変内経路、鼻内経路、またはさらに腹腔内経路を介する注射のために処方される)のために処方される。被験体のワクチン接種またはブースト(boost)のために使用される任意の経路が使用され得る。活性のある構成成分または成分を含む水性の組成物の調製は、本開示を考慮して、当業者に公知である。代表的に、このような組成物は、水性の溶液または懸濁物のいずれかとしての注射可能物として調製され得る;注射の前に液体を添加する際に溶液または懸濁物を調製することにおいて使用するのに適した固形はまた、調製され得る;そしてその調製物はまた、乳化され得る。
【0069】
注射可能な使用に適した薬学的形態は、滅菌の水性の溶液または分散物;ゴマ油、ラッカセイ油、または水性プロピレングリコールを含む調製物;および滅菌の注射可能な溶液または分散物の即時調製のための滅菌粉末を含み得る。全ての場合において、その形態は、滅菌でなければならず、流体でなければならない。それは、製造および保管の条件下で安定でなければならず、微生物(例えば、細菌および真菌類)の汚染作用に対抗して保存されなければならない。
【0070】
遊離塩基または薬理学的に受容可能な塩としての活性のある化合物の溶液は、界面活性剤(例えば、ヒドロキシルプロピルセルロース)と適切に混合された水において調製され得る。分散物はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物において、ならびに油において調製され得る。保管および使用の、通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含み得る。
【0071】
本明細書中に開示される処方物または構築物が、被験体における免疫応答を高めるための治療薬として使用される場合、治療剤は、中性または塩の形態で組成物へと処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)、および無機酸(例えば、塩酸またはリン酸)、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸で形成されるものを含む。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄)およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来し得る。
【0072】
キャリアはまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用によって、分散の場合に必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用を防ぐことは、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールなど)によって成し遂げられ得る。多くの場合において、等張剤(例えば、糖、または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射可能な組成物の吸収時間の延長は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、およびゼラチン)の、上記組成物における使用によって成し遂げられ得る。
【0073】
滅菌の注射可能な溶液は、上記活性のある化合物または構築物を、必要とされる量で、適切な溶媒中に、上に列挙される種々の他の成分と共に組み込み、必要である場合、次に濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散物は、種々の滅菌された活性成分を、基礎の(basic)分散媒体および上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む、滅菌ビヒクルへと組み込むことによって調製される。滅菌の注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥技術およびフリーズドライ技術であり、これらの技術により、活性成分と任意の追加の所望される成分からなる粉末を、それについて、先に滅菌濾過された溶液から生じる。直接的な注射のための、より濃縮されたまたは高度に濃縮された溶液の調製物がまた企図され、ここで、溶媒としてのDMSOの使用により、極度に急速な浸透をもたらし、高濃度の活性薬剤を小さな場へ送達することが想定される。
【0074】
処方すると、溶液は、投与処方物と適合する様式で、およびその治療上有効であるような量で投与され得る。上記処方物は、多様な剤形(例えば、上に記載される注射可能な溶液の型)で容易に投与されるが、遅延放出カプセルまたはミクロ粒子およびミクロスフェアなども用いられ得る。
【0075】
水性の溶液での非経口投与について、例えば、上記溶液は、必要である場合、適切に緩衝化されるべきであり、その液体希釈物は、最初に十分な食塩水またはグルコースで等張にされるべきである。これらの特定の水性の溶液は、特に、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、および腹腔内投与に適している。この関係において、用いられ得る滅菌の水性媒体は、本開示を考慮して、当業者に公知である。例えば、1投与量は、1mlの等張のNaCl溶液に溶解され得、そして1000mlの皮下注入の流体に添加されるか、または注入の提案された部位に注射され得た。
【0076】
用語「単位用量」は、被験体における使用に適した物理的に別々の単位を指し、各単位は、その投与(例えば、適切な経路および処置レジメン)に関連して、上で議論された、所望される応答を生み出すように計算された予め決定された量の上記構築物組成物またはブースト組成物を含む。処置またはワクチン接種の数および単位用量の両方に従って、投与されるべき量は、処置されるべき被験体、その被験体の状態および所望される保護に依存する。投与について責任のある人物は、とにかく個々の被験体に対する適切な用量を決定する。例えば、被験体は、本明細書中に開示される構築物組成物を、必要性または病原性生物への曝露または上記被験体における状態(例えば、がん)に依存して、ある期間毎日または毎週の基準で、または毎月、年に2度(bi−yearly)または毎年の基準で投与され得る。
【0077】
活性のある治療剤は、1用量当たり約0.0001ミリグラム〜1.0ミリグラム、または約0.001ミリグラム〜0.1ミリグラム、または0.1ミリグラム〜1.0ミリグラム、またはさらに10ミリグラムほどを含むように混合物中で処方され得る。あるいは、活性薬剤(例えば、構築物)は、被験体において所望される作用を生み出すことが知られる、1用量当たりの特定の数の構築物を含むように処方され得る。複数回用量はまた投与され得る。
【0078】
非経口投与(例えば、静脈内注射、皮内注射、または筋肉内注射)のために処方される化合物の他に、他の薬学的に受容可能な形態としては、例えば、錠剤または経口投与のための他の固体;リポソームの処方物;時間放出カプセル剤;生分解性および現在使用されている任意の他の形態が挙げられる。
【0079】
鼻内液剤または吸入可能な液剤、またはスプレー剤、エアゾール剤、または吸入剤も使用され得る。鼻用液剤は、点滴剤またはスプレー剤で鼻道に投与されるように設計された水性の液剤であり得る。鼻用液剤は、多くの点で鼻の分泌物に類似するように調製され得る。従って、水性の鼻用液剤は、通常、等張であり、5.5〜6.5のpHを維持するためにわずかに緩衝化される。さらに、必要とされる場合、眼用調製物において使用されるものと類似する抗菌保存剤、および適切な薬物安定剤が、上記処方物中に含まれ得る。種々の市販の鼻用調製物は公知であり、例えば、抗生物質、および抗ヒスタミン薬を含み得、喘息予防のために使用される。
【0080】
投与の他の様式に適した追加の処方物としては、坐剤およびペッサリーが挙げられ得る。直腸のペッサリーまたは坐剤も使用され得る。一般に、坐剤について、慣習的な結合剤およびキャリアは、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み得;このような坐剤は、活性成分を0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で含む混合物から形成され得る。
【0081】
経口処方物は、賦形剤(例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン(sodium saccharine)、セルロース、および炭酸マグネシウムなど)を含み得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出の処方物または散剤の形態をとる。特定の定義された実施形態において、経口の薬学的組成物は、不活性の希釈剤または同化可能な食用のキャリアを含むか、またはハードシェルゼラチンカプセルもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに囲まれ得るか、または錠剤へと圧縮され得るか、または食事の食物に直接的に組み込まれ得る。経口の治療上の投与について、上記活性のある化合物は、賦形剤とともに組み込まれ得、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、およびオブラート剤(wafer)などの形態で使用され得る。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性のある化合物を含むべきである。上記組成物および調製物の百分率は、もちろん変動し得、慣習的に、単位の重量の約2%〜約75%の間、または好ましくは25%〜60%の間であり得る。このような組成物における活性のある化合物の量は、適した投与量が得られ得るようなものである。
【0082】
上記錠剤、トローチ剤、丸剤、およびカプセル剤などはまた、以下を含み得る:トラガカントゴム、アラビアゴム(acacia)、トウモロコシデンプン、またはゼラチンのような結合剤;賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム);崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、およびアルギン酸など);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);ならびに甘味料(例えば、スクロース、ラクトース、またはサッカリン)が添加され得、または香味料(例えば、ペパーミント、ウインターグリーンの油、またはサクランボの香味)。投薬単位形態がカプセル剤のとき、それは上の種類の材料の他に、液体キャリアを含み得る。種々の他の材料は、コーティング剤として、または別の方法で投薬単位の物理的形態を修飾するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、シェラック、糖または両方でコーティングされ得る。エリキシル剤のシロップ剤は、上記活性のある化合物、甘味料としてスクロース、保存剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素および香味(例えば、サクランボまたはオレンジフレーバー)を含み得る。
【0083】
キット
さらなる実施形態は、本明細書中に記載される方法および組成物を用いて使用するキットに関する。いくつかの実施形態は、腸内細菌を有するかまたはこれに曝された被験体を、防ぐ、または処置するために使用するワクチン組成物を有するキットに関する。キットは、携帯型(例えば、遠隔地において、運搬および使用できる)であり得る。他のキットは、腸内細菌に曝されている、または腸内細菌(例えば、Yersinia spp)への曝露のリスクがあることが疑われる被験体を処置するための健康施設(health facility)において使用することができる。
【0084】
他の実施形態は、本明細書中に記載される分子構築物を作製および使用するためのキットに関係し得る。特定の実施形態において、組成物は、弱毒化または改変されたMVAおよびYersinia spp.関連抗原(例えば、V307)を有する構築物を含み得る。他の構築物はまた、少なくとも1つの分泌シグナル配列を含み得る。さらに他の実施形態は、翻訳調節配列(例えば、IRES、UTR)を含む構築物を有し得る。構築物を作製および使用するための他の試薬が企図される。
【0085】
キットはまた、適切な容器(例えば、バイアル、管、ミニフュージもしくはマイクロフュージ管、試験管、フラスコ、びん、注射器、または他の容器)を含み得る。追加の構成要素または薬剤が提供される場合、上記キットは、この薬剤または構成要素が配置され得る1つまたはそれより多くの追加の容器を含み得る。本明細書中でキットはまた、代表的に、市販するために厳密に閉じ込めて(close confinement)、上記構築物、ワクチン組成物および任意の他の試薬容器を含むための手段を含む。このような容器としては、射出吹込み成形されたか、またはブロー成形されたプラスチック容器であって、その中に所望されるバイアルが保持されている、射出吹込み成形されたか、またはブロー成形されたプラスチック容器が挙げられ得る。必要に応じて、1つまたはそれより多くの追加の薬剤(例えば、他の抗ウイルス剤、抗真菌剤、または抗菌剤)が記載される組成物(例えば、ワクチンとして使用する組成物)に必要とされ得る。
【0086】
ワクチン接種の間に使用される用量範囲は、使用される生の弱毒化されたワクチンおよびウイルスベクターの性質に依存して変動し得る。組換えのポックスウイルスについて、これらの用量は、105PFU〜107PFUの間の範囲に及び得る。本発明の特定の実施形態において、免疫原性用量は、102pfuと同じくらい低いことがある。ワクチン接種の頻度は、ワクチンの性質、およびまた使用される投与の経路に依存して変動し得る。1つのレジメンは、一次免疫(予備刺激(prime))に続いて、予備刺激免疫の4週間〜6週間後にブースト投与を含み得る。本発明の特定の実施形態において、抗原の翻訳および発現における改善は、より少ない用量および/またはより低用量が被験体に投与されることを可能にし得る。
【0087】
本明細書中に開示される組成物は、当該分野において公知である任意の手段によって投与され得る。例えば、組成物は、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜腔内に、気管内に、鼻内に、硝子体内に(intravitreally)、膣内に(intravaginally)、直腸内に、局所に(topically)、腫瘍内に、筋肉内に、髄腔内に(intrathecally)、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼球内に、口内に、局所に(locally)、吸入によって、注射によって、注入によって、連続注入によって、局所灌流によって、カテーテルによって、灌注によって、クリーム(creme)で、または脂質組成物での被験体への投与を含み得る。特定の組成物は、感染の状態または感染を防ぐことについて予め決定され得る通りに、ある組成物について、1つのブーストのためには1つの経路および第二または追加のブーストのためには別の経路によって投与され得る。これらの実施形態に従って、被験体の状況、ならびに特定の組成物についての用量および頻度の決定に依存して、あるブーストは、筋肉内に投与され得、別のブーストは、皮内に、投与され得、またはその組み合わせで投与され得る。
【0088】
調製物
当業者に公知である任意の方法は、組換えMVAの大規模な生産のために使用され得る。例えば、マスターシードストックおよびワーキングシードストックは、GMP条件下で適格な(qualified)初代CEFにおいて、または他の方法によって、調製され得る。細胞は、大きい表面積のフラスコに蒔かれ、コンフルエンス(confluence)近くまで増殖され、選択されたMOIで感染させられ、ワクチンウイルスが精製され得る。細胞は収集され、機械的破壊によって細胞内ウイルスが放出され、細胞の破片が大きな孔の深層濾過によって除去され、宿主細胞DNAがエンドヌクレアーゼで消化され得る。ウイルス粒子は、引き続いて精製され、タンジェンシャルフロー(tangential−flow)濾過後、ダイアフィルトレーション(diafiltration)によって濃縮され得る。結果として生じる濃縮された大量のワクチンは、安定剤を含むバッファーでの希釈によって処方され、バイアルに充填され、凍結乾燥され得る。組成物および処方物は、後の使用のために保管され得る。使用のために、凍結乾燥されたワクチンは、希釈剤の添加によって再構成され得る。
【0089】
ポックスウイルスは、その安定性について公知である。長期間の室温保管および分配のためにワクシニアを凍結乾燥することができることが、そのワクチンの広範囲にわたった使用および痘瘡(smallpox)の根絶を可能にする重要な属性のうちの1つであった。最近、60年代に備蓄されたDryvaxのワクシニアウイルスが、数十年後、依然として、効力があることが実証された。ポックスウイルスの凍結乾燥および保管のための手順は、当該分野において周知であり、本明細書中に開示されるいくつかの実施形態についての組換えのポックスウイルスワクチンに適用され得た。
【0090】
以下の実施例は、本明細書中に示される特定の実施形態を実証するために含まれる。続く実施例において開示される技術が、本明細書中に開示される実施においてよく機能するように見出された技術を代表することが、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、開示される特定の実施形態において、多くの変更がなされ得ることを認識すべきであり、依然として、本明細書中の趣旨および範囲から外れることなく、似ているまたは類似の結果を得るべきである。
【実施例】
【0091】
実施例1
タンパク質発現
いくつかの例示的な方法において、Y.pestisのF1、V、およびV307抗原の発現を、MVA/Y.pestis組換えウイルスを感染させた細胞からのタンパク質の免疫ブロット分析によって評価した。発現レベルを、MVA許容のCEF細胞および非許容の哺乳動物のVero細胞の感染後に細胞全体の抽出物および細胞培養上清において評価した(図2A〜2E)。MVA/F1組換え体によるF1タンパク質の発現を、細胞ペレットおよび細胞培養上清の両方において検出した。MVA/F1感染CEF細胞において、F1莢膜抗原を、予測されるタンパク質(約18キロダルトン、kd;予測されるタンパク質)および約23kdにある高い分子量の形態と合致する2つのより低い分子量の形態として観測した(図2A)。その23kdの形態は、細胞上清において、より優勢であり、このことは、それが優先して分泌されていることを示唆した。莢膜F1タンパク質は、脊椎動物細胞の場合、1つの予測されるN−グリコシレーション部位および6つの予測されるo−グリコシレーション部位を有する。従って、上記23kdの形態がグリコシル化タンパク質を表し得ると仮定した。CEFによって発現されるF1の脱グリコシル化は、上記23kdの形態を排除し、18kdの形態のみが残った(図2E)。約34kdおよびそれを超えるより高い分子量の形態をまた、上記細胞ペレットにおいて観測した。これらの形態は、ダイマーおよび他のマルチマーと合致し;上記F1莢膜タンパク質は、分泌の際にマルチマー構造を強固に(avidly)形成する。広範囲にわたる変性の際にはこれらの形態を観測しなかった(例えば、図2Eを参照のこと)。MVA/IRES/tPA/F1ウイルスを感染させたCEF細胞において、唯一より低い分子量の形態が低レベルで発現することを、上記細胞ペレットにおいて観測した。
【0092】
MVA/F1組換えウイルスを感染させた哺乳動物のVero細胞において、18kdのより低い分子量の形態は、上記細胞ペレットおよび上記細胞培養上清の両方において23kdのグリコシル化された形態よりも優勢であった(図2B)。再度、上記23kdの形態は、脱グリコシル化の際に消失した(データ示さず)。見かけの分子量が33kd、36kd、および39kdであるより高い分子量の形態をまた検出し、それらは培養上清において、比較的より顕著であった。MVA/IRES/tPA/F1組換えウイルスを感染させたVero細胞において、唯一F1抗原が低レベルで発現することを上記細胞ペレットにおいて検出した。IRES/tPA構築物によって導かれる発現のレベルの低減は、以前に記載されているアライグマのポックスウイルスにおいて作製された同様の構築物とは対照的であった。その場合、IRES/tPAは、感染させた細胞において、より高レベルの発現および分泌を導いた。
【0093】
VおよびV307抗原の発現パターンは、よりシンプルであり、感染させたCEF細胞およびVero細胞の両方において同様であった(例えば、図2Cおよび2Dを参照のこと)。MVA/VまたはMVA/V307組換えウイルスのいずれかを感染させた細胞は、それぞれ約36kdおよび35kdの単一形態を発現し、予測されるサイズ(37kdおよび35kd)と合致した。MVA/IRES/tPA/Vを感染させた細胞は、約36kdおよび40kdの2つの分子形態を発現した。より高い分子量の形態は、tPA/V融合物のサイズと合致し、それは優先的に分泌された。対照的に、MVA/IRES/tPA/V307組換えウイルスを感染させた細胞は、35kdの単一形態のみを発現した。予測されたVおよびV307のオープンリーディングフレームは、脊椎動物細胞の場合、コンセンサスグリコシレーション配列をコードしない。V抗原発現の場合、IRES/tPAの付加は、タンパク質の発現レベルをわずかに低減した。感染させたCEF細胞において、細胞のV抗原に対する分泌されたV抗原の比は、IRES/tPA配列の付加でわずかに高められたようであった(図2C)。しかし、その比は、感染させたVero細胞において、全ての構築物間で矛盾がないようであった(図2D)。
【0094】
図2A〜2Eは、0.5pfu/細胞のMOIでの組換えMVA−ペストウイルスでトランスフェクションされた、CEF細胞またはVero細胞の単層に関する実験を例示する。トランスフェクション後の48時間後に、方法に記載されるように細胞を収集し、細胞抽出物および上清抽出物を、調製し、SDS−PAGEに供し、その後、ウエスタンブロット分析に供した。(A)CEF細胞抽出物(c)および上清(s)画分におけるF1の発現。(B)Vero細胞抽出物(c)および上清(s)画分におけるF1発現。(C)CEF細胞(c)および上清(s)画分におけるVおよびV307発現。(D)Vero細胞(c)および上清(s)画分におけるVおよびV307発現。(E)F1の分子形態に及ぼすグリコシダーゼ処理の作用。グリコシダーゼで処理された(+)または処理されていない(−)、CEF細胞および上清(sup)画分からのF1発現。F1対照レーンは、E.coliにおいて、caf1オペロン発現ベクターから発現された10ngを含む(約質量18kd)。
【0095】
組換えMVAウイルスによって導かれるF1、V、およびV307抗原の発現を免疫ブロット分析によって評価した。種々のMVA組換え体からの抗原の発現を、MVA許容のCEF細胞および非許容の哺乳動物のVero細胞において評価した(図2Aおよび2B)。MVA/F1組換え体は、細胞抽出物および細胞上清の両方においてF1タンパク質の発現を引き起こした。cF1莢膜抗原の凝集に起因して、発明者らは、SDS−PAGEにおいて、代表的に、F1タンパク質のモノマーおよびダイマー形態の両方を観測する。上清形態は、より高い分子量のものであり、それは、おそらくF1タンパク質のグリコシレーションに起因する(図2AおよびB)。MVA/V構築物は、Vero(図2D)と比較して、CEFにおいて著しくより高い発現を示した(図2C)。MVA/VおよびMVA/V307は、CEFにおいて、同様の発現レベルを有した(図2C)。MVA/IRES/tPA/V307の発現は、MVA/VまたはMVA/V307と比較してより低いが、V307タンパク質は、より効率的に分泌された。(図2C)。
【0096】
概要
1つの実施例において、脳心筋炎ウイルス(EMVC)内部リボソーム進入部位(IRES)の翻訳調節下で、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)分泌シグナルを有する、Yersinia pestis由来の低カルシウム応答V(V307)抗原の短縮型バージョンを含む構築物組成物を、マウスに投与した。上記構築物組成物は、マウスにおいて、Y.pestisのCO92(莢膜に被われている)株またはJava 9(莢膜に被われていない)株を用いる、それぞれ鼻内または腹腔内へのチャレンジに対して、高められた免疫原性を与え、一貫して有意な保護を与えた(87.5%〜100%)。V抗原の完全バージョンを発現するMVA構築物は、高度に免疫原性であったが、この実験において、CO92株またはJava 9株それぞれに対して有意に低い保護(37.5%)を提供した。莢膜タンパク質(F1)を発現するMVA構築物は、検出可能な抗体を顕在化させ損ねたが、CO92またはJava 9のチャレンジに対して、それぞれ50%および25%の保護を与えた。この研究において試験された全てのMVAベクター化(vectored)ペストワクチンは、重症複合免疫不全(SCID)マウスにおいて全く安全であることが示された。MVAは、もともとの生の弱毒化されたワクシニア株よりも優れた安全性を有する第二世代の痘瘡(smallpox)ワクチンとして使用するために備蓄されている。従って、組換えのMVA/IRES/tPA/V307ワクチンは、痘瘡(smallpox)およびペストに対する保護を同時に提供する潜在力を有する。
【0097】
これらの実施例において、以下を試験した:i)Y.pestisのF1およびV抗原を発現するためのMVAの適切性;ii)マウスにおけるMVAベースの組換え体の免疫原性および保護能力;iii)組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)の分泌シグナルと組み合わせた脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム進入部位(IRES)が、MVAベースのワクチン候補の免疫原性および保護能力に与える影響;ならびにiv)免疫無防備状態マウスにおけるMVA組換え体の安全性。その調査結果により、Y.pestis V抗原の短縮された形態を発現する組換えMVAウイルスが、IRESおよびtPA(MVA/IRES/tPA/V307)の存在下で、マウスにおいて、Y.pestisの種々の株でのチャレンジに対して増加した免疫原性、安全性、および保護を提供したことが実証された。
【0098】
さらに、Y.pestisのF1およびV抗原を発現および輸送し得るMVAベクター化候補ワクチンの安全性および有効性の研究を記載した。BALB/cマウスにおける免疫原性研究において、V抗原を発現するMVAベクター化ワクチンは、ロバストな(robust)抗体応答を顕在化させた。これらのMVA/V構築物の強い免疫原性の潜在力を考慮して、その後の研究は、この抗原に焦点を合わせた。Vタンパク質は、3つの病原性Yersinia種(例えば、Y.enterocolitica、Y.pseudotuberculosis、およびY.pestis)によるヒトまたは動物の感染症に必要とされる。1つの実施例において、V抗原のバリアントを発現するMVAであって、ここでこのV抗原が、インビボでの内因性のIL−12、TNF−α、およびIFN−γの抑制に関係するセグメントを除去するように短縮される、MVAを免疫原性および保護について試験した。さらに、短縮されたV抗原の免疫原性および保護能力に及ぼす、IRES翻訳調節配列とtPA分泌シグナルとの組み合わせの効果を調べた。V抗原を発現する全てのMVA構築物が免疫原性であることを見出した。全ての生成されたMVA構築物の保護能力を、肺ペストのマウスモデルにおいて試験するとき、MVA/IRES/tPA/V307は、非常に毒性であるY.pestis CO92株を用いた35LD50ならびに350LD50での致命的なチャレンジに対する保護を一貫して誘導した。MVA/V307構築物での観測される保護は、MVA/IRES/tPA/V307ワクチンによって誘導されたものよりも有意に低かった(P<0.05)。従って、IRES/tPAプロセシングシグナル(processing signal)は保護免疫応答を増強するようである。
【0099】
これらの研究において、MVA/F1ワクチンは、F1抗原に対する有意な抗体応答を顕在化させ損ねた。しかし、免疫されたマウスの50%が、Y.pestis CO92株でのチャレンジに対して、11日間のメジアン生存期間を有して保護された。F1に対する非常に低い抗体応答、またはタンパク質に対する細胞免疫応答のいずれかは、Y.pestis感染から保護する一因となり得る。
【0100】
MVA/IRES/tPA/V307構築物によって顕在化される高レベルの抗原特異的抗体の生産は、これらの研究において観測される高レベルの保護を説明し得る。しかし、MVA/V構築物は、高い抗V抗体タイターを生み出したが、チャレンジからの保護は、より低かった。
【0101】
Y.pestisの、天然に存在する莢膜に被われていないバリアントは、毒性であることが示されている。有効なペストワクチンは、Y.pestisの、莢膜に被われているバリアントおよび莢膜に被われていないバリアントの両方による感染に対して保護できるべきである。これらの研究において、MVA/IRES/tPA/V307を有するワクチン候補構築物は、Y.pestisの莢膜に被われていない株(Java 9)に対して完全な保護を与えた。予備データは、この保護が、抗体によって部分的に媒介されること、すなわち、それは、Java 9チャレンジから保護される抗MVA/IRES/tPA/V307抗体の受身移入を示唆する。
【0102】
これらのMVAベクター化ペストワクチンを、免疫無防備状態(SCID)マウスにおいて安全性について試験した。複製能力のあるポックスウイルスを用いたSCIDマウスの感染は、著しい体重減少、および基礎をなす免疫欠損を有するワクチン接種された個体に起こり得る、播種性のウイルス血症に類似するポックスウイルス病変を引き起こす。これらの研究において、ペスト抗原を発現するMVA構築物が、SCIDマウスにおいて安全であること、および有効なB細胞免疫またはT細胞免疫が存在しない場合であっても全身性の疾患を誘導し損なうことが実証された。
【0103】
これらの研究により、Y.pestis抗原を有効に発現し、保護免疫応答を生み出すためのMVAの潜在力が実証される。シグナル配列と組み合わせてV307抗原を発現するMVA構築物は、非常に免疫原性であること、安全であること、Y.pestisでの鼻内または腹腔内へのチャレンジに対して保護を与えることを示した。
【0104】
全てのMVA−V構築物は免疫原性であるが、マウスにおいて、ペストに対する保護について試験するとき、MVA/IRES/tPA/V307は、非常に毒性であるY.pestis CO92株での致命的なチャレンジに対して87.5%〜100%の保護を誘導した。この調査結果は、ペストに対する高められた保護を提供することにおけるV307に基く、サブユニット候補ワクチンの改善された免疫原性特性を示している、以前の報告と一致している。
【0105】
これらの調査結果により、例えば、MVAは第二世代の痘瘡(smallpox)ワクチンとして使用するために備蓄されているので、バイオディフェンスのための新たなワクチン接種戦略の開発がもたらされる。2つの生物学的脅威、痘瘡(smallpox)およびペストに対する保護免疫応答を同時に生み出すワクチンは、価値のあるバイオディフェンスの道具であり得る。
【0106】
図1は、rMVA/Y.pestis抗原ウイルスの構築を例示する。この実施例において、Y.pestis抗原、F1、V、およびV307のそれぞれについての発現カセットをpdIIIGFPに挿入した。EMCV−EMCV IRES配列、その後のtPA分泌シグナルを含んだ別のカセットをV307抗原コード配列に融合させた。上記カセットを、SmaIおよびBamHI制限酵素部位を含むようにPCRによって生成した。各発現カセットを、MVAのHindIII Aフラグメント内の欠失IIIに隣接するDNAセグメント(flank 1およびflank 2)を含んだプラスミドに挿入した。上記プラスミドはまた、複数のクローニング部位(MCS)の上流に、強い合成の初期/後期ワクシニアウイルスプロモーター、および多様な合成のワクシニアウイルス初期/後期プロモーターの制御下にある、GFPのためのコード配列を含んだ。
【0107】
実施例2
MVA構築物の免疫原性
別の例示的な方法において、BALB/cマウスの群を、F1、V、またはV307抗原をコードするMVA/Y.pestis構築物を用いて筋肉内に免疫した。単一の免疫(ブースト前)後および2回の免疫(チャレンジ前)後の、抗体のタイターをELISA分析によって評価した。MVA/V構築物によって顕在化したチャレンジ前の抗体のタイターは、MVA/V307構築物よりも有意に高かった(P<0.05)が、これらの構築物によって誘導されたブースト前のタイター間で有意差はなかった(図3B)。IRESおよびtPA配列の、免疫原性に及ぼす作用を調べた。図3Bに示されるように、IRESおよび分泌シグナル(MVA/IRES/tPA/V307)の制御下でのV307の発現は、その免疫原性を著しく高めた。ブースト前およびチャレンジ前の、抗体のタイターの両方は、MVA/V307よりもMVA/IRES/tPA/V307で免疫されたマウスにおいて有意に高かった(P<0.05)。MVA/IRES/tPA/V307およびMVA/V307構築物によって顕在化したIgGサブクラスの分析は、IgG1サブクラスとIgG2aサブクラスとの間でバランスのとれた応答を示した(データ示さず)。V抗原を発現するMVA構築物は、一次免疫と比較して、抗体応答に及ぼす有意なブースター作用(P<0.05)を、全ての免疫されたマウスにおいて誘導した(図3B)。MVA/F1またはMVA/IRES/tPA/F1構築物で免疫されたマウスにおいて、ブースター作用は検出されなかった。さらに、MVA/F1またはMVA/IRES/tPA/F1構築物によって顕在化したチャレンジ前の抗体のタイターは、V抗原を発現する構築物によって誘導されたタイターよりも有意に低かった(P>0.05)(図3Aおよび3B)。
【0108】
図3は、マウスにおけるMVA/ペストワクチンに対する免疫応答を例示する。8匹の4〜6週齢のBALB/cマウスの群を、MVA−ペストワクチンを用いて筋肉内にワクチン接種した。28日間隔てられた2回の免疫後、血清サンプルを最初のワクチン接種後28日目および42日目に収集し、ELISAによって分析してF1またはV抗原に対する体液性免疫応答を決定した。(A)F1抗原に対する抗体応答。(B)MVA/ペストワクチンで免疫されたマウス由来のV抗原に対する抗体応答。
【0109】
実施例3
ペストチャレンジに対する保護
他の例において、本明細書中に開示されるいくつかの構築物の導入後、動物モデルをペストに対する保護を評価するために使用した。MVA/IRES/tPA/V307でワクチン接種された全てのマウスは、Y.pestisのCO92(35 LD50)株またはJava 9(100 LD50)株のいずれかでの致命的なペストチャレンジから生き残った(図4Aおよび4B)。さらに、MVA/IRES/tPA/V307で免疫したマウス由来のプールされた免疫血清の、ナイーブBALB/cマウスへの受身移入は、対照のマウスと比較して、Y.pestisのJava 9株に対して有意な保護を与えた(P<0.05)(データ示さず)。対照的に、MVA/V307、MVA/V、またはMVA/IRES/tPA/Vで免疫されたマウスの25%のみ、37.5%〜50%が、それぞれY.pestisのCO92株でのチャレンジから生き残った(図4A)。MVA/F1またはMVA/IRES/tPA/F1で免疫したマウスは、それぞれY.pestisのCO92株またはJava 9株でのチャレンジに対して50%または25%の生存率を有した(図4Aおよび4B)。
【0110】
図4は、MVA/ペストワクチンで免疫されたマウスのカプラン−マイヤーの生存率の分析を例示する。追加免疫の2週間後、マウスを(A)1×105pfu(35LD50)のY.pestis(CO92)を用いて鼻内に、または(B)100cfu(100 LD50)のY.pestis(Java 9)を用いて腹腔内にチャレンジし、生存率を2週間の期間にわたって記録した。
【0111】
実施例4
MVA/IRES/tPA/V307ワクチンの最小保護用量
リード(lead)候補ワクチンの最小保護用量を確立するために、8匹のBALB/cマウスの群を、漸増する用量(5×105pfu、5×106pfu、または5×107pfu)のMVA/IRES/tPA/V307を用いて免疫し(予備刺激およびブースト)、次にCO92 Y.pestis株の35LD50または350LD50のいずれかでチャレンジした。漸増する用量のMVA/IRES/tPA/V307で免疫したマウスでは、それぞれ3.38、3.75、または4.25(log10)という、チャレンジ前の抗体のタイターを有する、対応する免疫応答の増加が顕在化した。最も高い免疫用量(5×107)は、より低い用量と比較して、有意により高い抗体のタイター(P<0.05)を顕在化させ、それは、CO92 Y.pestis株の35LD50または350LD50のいずれかでのチャレンジのそれぞれに対して、有意な保護(87.5%)を与えた(下の表2)。MVA/IRES/tPA/V307ワクチンのうちの2つのより低い用量で免疫され、その後、Y.pestisの35LD50でチャレンジされたマウスの生存率間に有意差はなかった(P>0.05)(表2)。チャレンジ用量における10倍の増加(350LD50)により、MVA/IRES/tPA/V307ワクチンの最低用量(5×105pfu)によって与えられる生存率が減少し、MVA/GFP対照群の生存率との有意差がなかった(P>0.05)(表2)。しかし、対照群と比較しての有意な保護(P=0.01)を、Y.pestisの350LD50でのチャレンジに対して5×106pfuのワクチンで免疫したマウスに与えた。
【0112】
【表2】
免疫無防備状態のマウスにおけるMVA/ペストワクチン候補の安全性
ワクシニア−Wyethが接種された群における全てのマウスは、その尾および足におけるポックス病変、ならびに持続する体重減少によって特徴付けられる臨床疾患症状を発達させ、感染後5〜7週間以内に死亡した。MVAwtまたはMVA/Y.pestisワクチン構築物からの動物のうち、どれも、全くポックス病変を発達させなかった。ワクシニア−Wyeth群における体重減少は、MVAwtまたはMVA/ペストワクチン構築物で感染させた群においてよりも有意に大きかった(P<0.0001)(図5)。
【0113】
実施例5
抗体のタイター
図6は、筋肉内経路または皮内経路を介して、種々の分泌シグナルを発現する、5×107PFUのMVA/ペストワクチンで免疫されたマウスの群(n=10)を表す。MVA/ペストワクチンを用いた、予備刺激およびブースト免疫後の抗体のタイター(平均値±SD)をElisaによって分析した。MVA/tPA/V307(IM)またはMVA/IRES/tPA/V307(ID)で免疫されたマウスからのブースト後のタイター(post−boost titer)は、MVA/C13L/V307またはMVA/IRES/tPA/V307(IM)群よりも有意に高かった(P値**<0.01、*<0.05)。
【0114】
マウスの種々の免疫された群からの、ブースト前の抗体のタイター間で有意差はなかった。tPAの共発現(MVA/tPA/V307)は、C13L分泌シグナルを共発現するワクチン(MVA/C13L/V307、P<0.01)、または追加的にIRES翻訳エンハンサーを発現するワクチン(MVA/IRES/tPA/V307、P<0.05)と比較して、筋肉内に投与されたMVA/ペストワクチンの免疫原性を有意に改善した。MVA/IRES/tPA/V307の皮内投与は、ワクチンの免疫原性を有意に増加させた(P<0.05)。
【0115】
材料および方法
MVA組換えワクチンの構築
トランスファープラスミドpdIIIGFP(提供された)を、Y.pestis抗原を発現する組換えMVAを生成するために使用した。このプラスミドは、1)MVAのHindIII Aフラグメント内の欠失IIIに隣接するDNAセグメント(flank 1およびflank 2)、2)複数のクローニング部位(MCS)の上流に、強い合成の初期/後期(SEL)ワクシニアウイルスプロモーター、および3)多様なSELプロモーターの制御下にある緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を含んだ(図1)。ECMV IRES配列、その後のtPA分泌シグナルを含む第二のトランスファープラスミドpdIIIGFP/IRES/tPAを、pdIIIGFPにIRES/tPAカセットを挿入することによって生成した。Y.pestis抗原、F1、全長V、およびaa307で短縮されたV(V307)のそれぞれのための発現カセットを、pdIIIGFPまたはpdIIIGFP/IRES/tPAに挿入した。発現カセットを、pdIIIGFPまたはpdIIIGFP/IRES/tPAへの挿入に適切な制限酵素部位を含むようにPCRによって生成した(表1)。そのPCR産物を、pdIIIGFPまたはpdIIIGFP/IRES/tPAのMCSにクローン化し、得られたプラスミドをpdIIIGFP/F1、pdIIIGFP/IRES/tPA/F1、pdIIIGFP/V、pdIIIGFP/IRES/tPA/V、pdIIIGFP/V307、およびpdIIIGFP/IRES/tPA/V307と呼んだ。
【0116】
【表1】
組換えMVA−ペストウイルスを、以前に記載されるように生成した。手短に言えば、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)を、0.05の多重度で野生型MVAで感染させ、1時間(h)後に、その細胞をLipofectamineTM(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて、トランスファーベクターのそれぞれでトランスフェクションした。トランスフェクション後48時間〜72時間に、単層を収集し、500RCFで5分間、4℃にて遠心分離し、細胞を凍結融解(freeze−thaw)および音波処理(設定3でのVirtis600を用いて15秒間、2回)によって破壊した。GFPを発現する、可能性のある組換えウイルスを含む、その破壊した細胞の抽出物を、新鮮なCEF細胞上に蒔き(plated)、0.8%のアガロースで覆った。48〜72時間後、組換えウイルスによって生成されたプラークを、蛍光によって検出し、ガラスピペットで培地に取った。その細胞/ウイルスサンプルを上に記載されるように音波処理し、蒔いた。3回連続のプラーク単離後、高いタイターのウイルスストックを、その後のインビトロおよびインビボでの特徴付けのために、CEF細胞において調製した。
【0117】
Y.pestis抗原のインビトロでの発現
F1、V、V307、またはIRES/tPA/F1、IRES/tPA/V、IRES/tPA/V307抗原を含む、組換えMVAウイルスのインビトロでの発現を、免疫ブロット分析によって決定した。CEF細胞またはVero細胞を、6ウェルプレートに蒔き、血清を含まない条件で、0.5または5のMOIにて、それぞれ組換えMVA/F1、MVA/IRES/tPA/F1、MVA/V、MVA/IRES/tPA/V、MVA/V307、またはMVA/IRES/tPA/V307ウイルスを用いて感染させた。感染後48時間に、感染させた細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Mini Protease tabs,Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)の存在下で収集し、洗浄し、1×ローディングバッファーに再懸濁して、95℃まで5分間加熱した。感染させた細胞からの上清を遠心分離し、3kDaのカットオフ膜(Nanosep 3K Omega,Pall,Inc.,East Hills,NY)を用いた限外濾過によって濃縮した。その上清を次に、等しい体積の2×ローディングバッファーと合わせ、95℃まで5分間加熱した。上清および細胞サンプルをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分割し、組織内で(in−house)生産されたポリクローナルウサギ抗F1または抗V血清を用いる免疫ブロット分析のためにニトロセルロース膜に移した。特定病原体未感染(SPF:specific pathogen free)ウサギに、精製されたF1(caf1オペロン発現システム由来)またはV(ATCC,BEI Resources,Manassas,VA,カタログ番号NR−3832)タンパク質を接種することによって、そのポリクローナル抗体を生成した。これらの抗体は、免疫ブロット分析に用いられるとき、CEFまたはVeroから発現されるMVA野生型に対してわずかなバックグラウンド(minor background)を示した。
【0118】
F1グリコシレーション状態を、タンパク質脱グリコシル化酵素混合物(New England Biolabs(NEB),Ipswich,MA,カタログ番号P6039S)を用いて分析した。手短に言えば、Vero細胞およびCEF細胞を、以前に記載されるように、MVA/F1またはMVA/IRES/tPA/F1で感染させ、収集した。30μlのH2Oに懸濁した細胞ペレット、および濃縮した上清を、NEBキットプロトコルを用いて処理した。18μlの再懸濁した細胞ペレットおよび濃縮した上清サンプルを100℃で10分間、変性させた。10%のNP40を含むG7反応バッファーを、反応体積が50μlになるように加えた。各反応物を分け、半分を2.5μlのNEB脱グリコシル化酵素カクテルで処理し、37℃で4時間インキュベートした。各反応物10μlを電気泳動に供し、ポリクローナルウサギ抗F1血清を用いてウエスタンによって分析した。
【0119】
Yersinia pestis培養物
Y.pestis培養物の調製およびその後の動物チャレンジ実験を、以前に記載されるように行った。手短に言えば、作業用ストック(working stock)を調製するために、75μLの凍結Y.pestis分離菌を融解し、ボルテックスし、血液寒天プレート(Remel,Lenexa,KS)上に広げ、28℃で48時間インキュベートした。細菌叢(bacterial lawn)を、上記寒天プレートから削り、0.2%のキシロースを有する、200mlのHeart Infusion Broth(Difco Laboratories,Detroit,MI)に入れ、28℃で48時間インキュベートした。最終ストックを、その肉汁培養物(v/v)に20%のグリセロールを加えることによって調製し、−80℃にてアリコートで保管した。Y.pestisの細菌株CO92およびJava 9を提供した。この研究のためのえり抜きのF−株は、C12株であった(これは当時、入手可能ではなかった);それゆえ、容易に入手可能であったF1−Java 9を使用した。
【0120】
免疫およびチャレンジ
8匹の4〜6週齢のメスのBALB/cマウス(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN)の群は、後肢への筋肉内注射によって、各ワクチン候補での一次免疫および追加免疫(28日離して)を受けた。50μl中5×107プラーク形成単位(pfu)の用量を、両方の注射のために使用した。対照群を、組換えF1タンパク質(rF1−40μg)、空のMVAベクター(MVA/GFP−5×107pfu)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS−50μL)のいずれかで免疫した。追加免疫の2週間後に、全ての動物を、野生型Y.pestis CO92株を用いて、その細菌の1×105コロニー形成単位(cfu)(35LD50)を含む接種材料10μL(各鼻孔に5μL)の鼻内点滴注入によって、チャレンジした。Y.pestisのJava 9株でチャレンジされた動物は、100cfu(100LD50)を含む100μlの接種材料を腹腔内に受けた。この研究に使用されたJava 9の分離菌は、鼻内経路を介しては、より低い毒性であったが、腹腔内に使用されるとき、毒性が高かった。チャレンジされた動物を2週間モニターした。
【0121】
8匹の4〜6週齢のナイーブマウスの群に対して、2用量のMVA/IRES/tPA/V307で免疫されたマウスに由来する、100,000のタイターを有するブースト後のプール血清100μlで、腹腔内に受動免疫した。その受動免疫マウスに対し、100cfu(100LD50)の、Y.pestisのJava 9株を含む、接種材料100μlを腹腔内にチャレンジした。チャレンジした動物を2週間モニターした。Y.pestisのCO92またはJava 9凍結ストック培養物の安定性および毒性の表現型を、細菌数および致死量についてアリコートを試験することによって確認した。コロニー形成単位の数を、血液寒天上に100μLの各希釈物を蒔き、28℃で48時間インキュベートすることによって決定した。それぞれY.pestisのCO92またはJava 9細菌培養物の10倍希釈物で、11〜12週齢のBALB/cマウスの群に鼻内(10μL)接種または腹腔内(100μL)接種することによって、致死量(LD50)の値を決定した。接種後、動物を14日間モニターし、死亡率を記録し、LD50を当該分野において公知である方法によって計算した。
【0122】
血清学
血清サンプルを、一次ワクチン接種後28日目およびブースト後(チャレンジ前)14日目に収集し、Y.pestisのF1またはV抗原に対する抗体のタイターを評価した。血清の総IgGならびにIgG1およびIgG2aサブクラスのタイターを、以前に記載されるように、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)によって測定した。手短に言えば、96ウェルのELISAプレートを、精製された組換えF1またはV抗原(1ウェルにつき、100μLの炭酸バッファー中0.1μg、pH9.6)で、4℃にて一晩、コーティングした。コーティングされたプレートを、PBS中0.05%のTween20(洗浄バッファー)で2回洗浄して、ブロッキングバッファー(PBS中1%のBSA)で、室温(RT)にて1時間すすいだ。血清サンプルを次に、ELISA希釈剤(洗浄バッファー中0.1%のBSA)中1:100〜1:100,000まで段階的に希釈し、調製したELISAプレートに3つ組で加えた。以前の研究からの、組換えF1またはV抗原で接種されたマウスに由来する、公知の陰性および陽性血清サンプルを、対照として使用し、プレートを室温で1時間インキュベートした。洗浄後、1ウェルにつき100μLの、ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)結合体化ウサギ抗マウスIgG(Abcam Inc,Cambridge,MA)の1:10,000希釈物を各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、1ウェルにつき100μLのテトラメチルベンジジン(TMB)クロモゲン(Invitrogen,Calsbad,CA)を、各ウェルに加え、暗所にて5分間インキュベートした。その反応を次に、1ウェルにつき100μLの2mM H2SO4(Sigma,St Louis,MO)を加えることによって止めた。比色定量を、マイクロプレートリーダー(ELx800−BioTek,Winooski,VT)を用いて、450nmの試験波長および630nmの参照波長で評価した。陽性(公知の陰性血清サンプルの平均値+3標準偏差を超えた)であった最も高い希釈度を終点と考え、その逆数値(reciprocal value)をタイターとして記録した。
【0123】
MVAベースのワクチン構築物の安全性
6匹の5週齢のBALB/cSCIDマウス(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN)の群に対して、1×108pfuのMVA/F1、MVA/V、MVA/V307、MVA/IRES/tPA/V307または野生型MVA(MVAwt)を腹腔内に接種した。さらなる群は、1×106pfuのワクシニアWyeth株を、同じ経路によって受けた。マウスを3ヶ月間毎日モニターし、それらの体重を毎週記録した。マウスは、自然に死亡するか、または以前に記載されるように、2未満(BCS<2)のボディコンディションスコアを示したときに安楽死させた。
【0124】
統計解析
ブースト前の抗体およびチャレンジ前の抗体のタイターに及ぼすワクチン群の作用を評価するために、一元ANOVAを使用した。ワクチン群の作用が統計的に有意であった場合(Kruskal−Wallis検定によってP<0.05)、0.05の調整していないP値を用いて、群中での全てのペアをなす比較を行った。生存率の分析を行って、CO92またはJava 9でのチャレンジに対するワクチンの有効性を評価した;報告されたP値は、フィッシャーの正確検定からのものである。全ての統計解析について、GraphPad Prism 5ソフトウェア(La Jolla, CA)を用いて、0.05未満の確率値を有意であると考えた。
【0125】
本明細書中に開示される、および請求される、全ての組成物および方法は、本開示を考慮して、過度の実験なく作製および実施され得る。上記組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載されるが、本明細書中の概念、趣旨、および範囲から外れることなく、上記組成物および方法、ならびに本明細書中に記載される方法の工程および工程の連続において、バリエーションが適用され得ることが、当業者に明らかである。より具体的には、化学的、および生理学的の両方に関連する特定の薬剤が、本明細書中に記載される薬剤の代わりに用いられ得、他方、同じまたは同様の結果が達成される。当業者に明らかである全てのこのような同様の置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような趣旨、範囲、および概念の内にあるとみなされる。
【図2A−2D】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体に投与するための組成物であって、
該組成物は、1つまたはそれより多くの構築物を含み、
該構築物は、1つまたはそれより多くの腸内細菌由来の1つまたはそれより多くのペプチドをコードする1つまたはそれより多くの弱毒化または改変されたポックスウイルス;および
少なくとも1つの哺乳動物の分泌シグナル配列、または少なくとも1つの翻訳調節領域を含み、
ここで、1つまたはそれより多くの該構築物は、該被験体において、1つまたはそれより多くの該腸内細菌に対する免疫応答を生み出すことが可能である、
組成物。
【請求項2】
ワクチン組成物が、莢膜に被われていない腸内細菌および莢膜に被われている腸内細菌に対して前記被験体を保護することが可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1つまたはそれより多くの腸内細菌に関連する1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、Yersinia spp由来の1つまたはそれより多くのペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1つまたはそれより多くの前記弱毒化されたポックスウイルスが、改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、改変されたワクシニアコペンハーゲン株、NYVAC、LC16m8、CVI−78、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記弱毒化されたポックスウイルスのうちの1つが、改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1つまたはそれより多くの腸内細菌に関連する1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、Yersinia sppに関連する1つまたはそれより多くのペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記Yersinia sppがYersinia pestisである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
1つまたはそれより多くの翻訳調節配列が、1つまたはそれより多くの内部リボソーム進入部位(IRES)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
1つまたはそれより多くの前記翻訳調節配列が、1つまたはそれより多くの非翻訳領域(UTR)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、莢膜タンパク質(F1)、低カルシウム応答(V)抗原、該低カルシウム応答V抗原の短縮型バージョン、F1およびVのうちの1つもしくはそれより多くからの変異した形態、またはそれらの組み合わせの、全てもしくは一部を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、C末端の短縮を有する1つまたはそれより多くの低カルシウム応答(V)抗原(LcrV)を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記C末端の短縮により、免疫抑制性配列が除かれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、1つまたはそれより多くの低カルシウム応答(V)抗原(LcrV)を含み、該低カルシウム応答(V)抗原(LcrV)が、LcrVの163個までの連続した残基の欠失、内部欠失、90個までの連続した残基の内部欠失、LcrVタンパク質のアミノ酸240〜325に広がる内部欠失、LcrVの50個までの連続した残基のC末端の欠失、長さが少なくとも275残基のLcrVタンパク質、およびLcrVの残基271〜300の欠失を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、1つまたはそれより多くのV307ペプチドを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
被験体に投与するためのワクチン組成物であって、
該組成物は、1つまたはそれより多くの弱毒化または改変されたワクシニアウイルスのうちの1つまたはそれより多くの構築物を含み、
該構築物は、Yersinia pestis由来のV307;ならびに
哺乳動物の分泌シグナル配列および翻訳調節領域のうちの1つまたはそれより多くを含み、
ここで、1つまたはそれより多くの該構築物は、被験体において、Yersinia pestisに対する免疫応答を誘導することが可能である、
ワクチン組成物。
【請求項16】
被験体において腸内細菌に対する免疫応答を誘導するための方法であって、
該方法は、該被験体に組成物を投与する工程であって、
該組成物が、1つまたはそれより多くの構築物を含み、
該構築物が、1つまたはそれより多くのYersinia pestis由来の1つまたはそれより多くのペプチド;少なくとも1つのシグナル配列;および1つまたはそれより多くの弱毒化ワクシニアウイルスを含む、工程を含み、
ここで、該組成物は、該被験体において該腸内細菌に対する免疫応答を誘導することが可能である、
方法。
【請求項17】
1つまたはそれより多くの前記ワクシニアウイルスが、改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、改変されたワクシニアコペンハーゲン株、NYVAC、LC16m8、CVI−78、またはそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つまたはそれより多くの前記Yersinia spp.がYersinia pestisを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物の投与が、前記被験体への該組成物の皮内投与を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)核酸構築物であって、
該構築物は、以下:
(i)1つまたはそれより多くの検出可能な配列(複数可)またはマーカー(複数可)をコードする核酸配列に、作動可能に連結されるウイルスの翻訳調節配列、あるいは
(ii)発現構築物に作動可能に連結される哺乳動物またはウイルスの分泌シグナル配列(ここで、該発現構築物の発現は、1つまたはそれより多くの腸内細菌由来の1つまたはそれより多くのペプチドおよび1つまたはそれより多くの該マーカーの翻訳を引き起こすことが可能である)、ならびに
(iii)1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチド由来の1つまたはそれより多くの核酸配列、あるいは1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチドをコードする1つまたはそれより多くの核酸配列が組み込まれ得る核酸配列
のうちの1つまたはそれより多くに作動可能に連結される改変されたワクシニアアンカラ(MVA)核酸構築物のプロモーターを含む、
構築物。
【請求項21】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、莢膜タンパク質(F1)、低カルシウム応答(V)抗原、該低カルシウム応答V抗原の短縮型バージョン、またはそれらの組み合わせの、全てまたはフラグメントを含む、請求項20に記載の構築物。
【請求項22】
前記哺乳動物の分泌シグナル配列が、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)リーダー配列、補因子リーダー配列、プレプロインスリンリーダー配列、インベルターゼリーダー配列、免疫グロブリンAリーダー配列、オボアルブミンリーダー配列、およびP−グロビンリーダー配列、または他のプロリーダー配列、またはそれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の構築物。
【請求項23】
ワクチンキットであって、該ワクチンキットは、
少なくとも1つの構築物組成物であって、該構築物組成物は、少なくとも1つのペプチド(複数可)をコードすることが可能である構築物を含み、ここで該ペプチドは、タンパク質、腸内細菌のタンパク質フラグメントまたは遺伝子セグメントおよび哺乳動物の分泌シグナル配列である、構築物組成物;ならびに
少なくとも1つの容器を含む、
ワクチンキット。
【請求項24】
前記ペプチドのうちの少なくとも1つがV307である、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
被験体に送達するための送達デバイスをさらに含む、請求項23に記載のキット。
【請求項26】
分子構築物を生成するためのキットであって、該キットは、
少なくとも1つの改変されたワクシニアウイルスエレメント、腸内細菌由来の少なくとも1つのV307エレメント、および哺乳動物の分泌シグナル配列;ならびに
少なくとも1つの容器を含む、
キット。
【請求項1】
被験体に投与するための組成物であって、
該組成物は、1つまたはそれより多くの構築物を含み、
該構築物は、1つまたはそれより多くの腸内細菌由来の1つまたはそれより多くのペプチドをコードする1つまたはそれより多くの弱毒化または改変されたポックスウイルス;および
少なくとも1つの哺乳動物の分泌シグナル配列、または少なくとも1つの翻訳調節領域を含み、
ここで、1つまたはそれより多くの該構築物は、該被験体において、1つまたはそれより多くの該腸内細菌に対する免疫応答を生み出すことが可能である、
組成物。
【請求項2】
ワクチン組成物が、莢膜に被われていない腸内細菌および莢膜に被われている腸内細菌に対して前記被験体を保護することが可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1つまたはそれより多くの腸内細菌に関連する1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、Yersinia spp由来の1つまたはそれより多くのペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1つまたはそれより多くの前記弱毒化されたポックスウイルスが、改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、改変されたワクシニアコペンハーゲン株、NYVAC、LC16m8、CVI−78、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記弱毒化されたポックスウイルスのうちの1つが、改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1つまたはそれより多くの腸内細菌に関連する1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、Yersinia sppに関連する1つまたはそれより多くのペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記Yersinia sppがYersinia pestisである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
1つまたはそれより多くの翻訳調節配列が、1つまたはそれより多くの内部リボソーム進入部位(IRES)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
1つまたはそれより多くの前記翻訳調節配列が、1つまたはそれより多くの非翻訳領域(UTR)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、莢膜タンパク質(F1)、低カルシウム応答(V)抗原、該低カルシウム応答V抗原の短縮型バージョン、F1およびVのうちの1つもしくはそれより多くからの変異した形態、またはそれらの組み合わせの、全てもしくは一部を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、C末端の短縮を有する1つまたはそれより多くの低カルシウム応答(V)抗原(LcrV)を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記C末端の短縮により、免疫抑制性配列が除かれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、1つまたはそれより多くの低カルシウム応答(V)抗原(LcrV)を含み、該低カルシウム応答(V)抗原(LcrV)が、LcrVの163個までの連続した残基の欠失、内部欠失、90個までの連続した残基の内部欠失、LcrVタンパク質のアミノ酸240〜325に広がる内部欠失、LcrVの50個までの連続した残基のC末端の欠失、長さが少なくとも275残基のLcrVタンパク質、およびLcrVの残基271〜300の欠失を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、1つまたはそれより多くのV307ペプチドを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
被験体に投与するためのワクチン組成物であって、
該組成物は、1つまたはそれより多くの弱毒化または改変されたワクシニアウイルスのうちの1つまたはそれより多くの構築物を含み、
該構築物は、Yersinia pestis由来のV307;ならびに
哺乳動物の分泌シグナル配列および翻訳調節領域のうちの1つまたはそれより多くを含み、
ここで、1つまたはそれより多くの該構築物は、被験体において、Yersinia pestisに対する免疫応答を誘導することが可能である、
ワクチン組成物。
【請求項16】
被験体において腸内細菌に対する免疫応答を誘導するための方法であって、
該方法は、該被験体に組成物を投与する工程であって、
該組成物が、1つまたはそれより多くの構築物を含み、
該構築物が、1つまたはそれより多くのYersinia pestis由来の1つまたはそれより多くのペプチド;少なくとも1つのシグナル配列;および1つまたはそれより多くの弱毒化ワクシニアウイルスを含む、工程を含み、
ここで、該組成物は、該被験体において該腸内細菌に対する免疫応答を誘導することが可能である、
方法。
【請求項17】
1つまたはそれより多くの前記ワクシニアウイルスが、改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)、改変されたワクシニアコペンハーゲン株、NYVAC、LC16m8、CVI−78、またはそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つまたはそれより多くの前記Yersinia spp.がYersinia pestisを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物の投与が、前記被験体への該組成物の皮内投与を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
改変されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)核酸構築物であって、
該構築物は、以下:
(i)1つまたはそれより多くの検出可能な配列(複数可)またはマーカー(複数可)をコードする核酸配列に、作動可能に連結されるウイルスの翻訳調節配列、あるいは
(ii)発現構築物に作動可能に連結される哺乳動物またはウイルスの分泌シグナル配列(ここで、該発現構築物の発現は、1つまたはそれより多くの腸内細菌由来の1つまたはそれより多くのペプチドおよび1つまたはそれより多くの該マーカーの翻訳を引き起こすことが可能である)、ならびに
(iii)1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチド由来の1つまたはそれより多くの核酸配列、あるいは1つまたはそれより多くの腸内細菌関連ペプチドをコードする1つまたはそれより多くの核酸配列が組み込まれ得る核酸配列
のうちの1つまたはそれより多くに作動可能に連結される改変されたワクシニアアンカラ(MVA)核酸構築物のプロモーターを含む、
構築物。
【請求項21】
Yersinia pestis由来の1つまたはそれより多くの前記ペプチドが、莢膜タンパク質(F1)、低カルシウム応答(V)抗原、該低カルシウム応答V抗原の短縮型バージョン、またはそれらの組み合わせの、全てまたはフラグメントを含む、請求項20に記載の構築物。
【請求項22】
前記哺乳動物の分泌シグナル配列が、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)リーダー配列、補因子リーダー配列、プレプロインスリンリーダー配列、インベルターゼリーダー配列、免疫グロブリンAリーダー配列、オボアルブミンリーダー配列、およびP−グロビンリーダー配列、または他のプロリーダー配列、またはそれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の構築物。
【請求項23】
ワクチンキットであって、該ワクチンキットは、
少なくとも1つの構築物組成物であって、該構築物組成物は、少なくとも1つのペプチド(複数可)をコードすることが可能である構築物を含み、ここで該ペプチドは、タンパク質、腸内細菌のタンパク質フラグメントまたは遺伝子セグメントおよび哺乳動物の分泌シグナル配列である、構築物組成物;ならびに
少なくとも1つの容器を含む、
ワクチンキット。
【請求項24】
前記ペプチドのうちの少なくとも1つがV307である、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
被験体に送達するための送達デバイスをさらに含む、請求項23に記載のキット。
【請求項26】
分子構築物を生成するためのキットであって、該キットは、
少なくとも1つの改変されたワクシニアウイルスエレメント、腸内細菌由来の少なくとも1つのV307エレメント、および哺乳動物の分泌シグナル配列;ならびに
少なくとも1つの容器を含む、
キット。
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1】
【図2E】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1】
【図2E】
【公表番号】特表2013−512256(P2013−512256A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541206(P2012−541206)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/058094
【国際公開番号】WO2011/066454
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(509276526)インビラジェン, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/058094
【国際公開番号】WO2011/066454
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(509276526)インビラジェン, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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