説明

腹式呼吸の特徴を抽出するための方法、及び、この方法を使用するシステム

【課題】腹式呼吸の標準モデルを必要とせず、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法に先だって実施される、学習プロセスを実施することなしに、腹式呼吸の特徴を抽出する。
【解決手段】受けた腹式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数、オイラー角関数、及び、複数の固有モード関数の各々の瞬時周波数関数を計算し、複数の瞬時周波数関数を、所定のゼロ点閾値領域と比較することにより、腹式呼吸の特徴を抽出する方法によって、複数の瞬時周波数関数の1つが、腹式呼吸の特徴を含む、腹式呼吸特徴関数と定義される。この様な方法にて、腹式呼吸の特徴が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法、及び、腹式呼吸の特徴を抽出するシステムに関し、より具体的には、腹式呼吸の標準モデルを必要とせず、かつ腹式呼吸の特徴を抽出するための方法に先だって実施され、人に標準的な腹式呼吸の行い方を学ばせる学習プロセスを実施することなしに、腹式呼吸の特徴を抽出することが可能な、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法、及び腹式呼吸の特徴を抽出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、腹式呼吸が、リハビリテーションやストレス解消治療に重要な役割を果たしている。しかし、心臓手術を受けようとしている患者など、腹式呼吸を行う必要がある人は、医者、又は、看護婦等の、教師に従って、ある期間、訓練を受けなければならない。その上、その人は、腹式呼吸の標準モデルを、依然として学習しなければならないので、腹式呼吸を正しく行ったかどうか等の訓練の結果を効率よく評価することが、今のところは出来ない。さらにその上、その標準モデルは、子供から高齢者までの様々な全ての範囲の人々に、必ずしも、適切とはいえない。
【0003】
上述の様に、標準モデルを学ぶ人に 多くの時間とある程度のコストがかかる、学習プロセスを実施しなくてはならない。とりわけ重要なことは、その人が、腹式呼吸を教える教師と同じ場所にいなければならないことであり、このことは、その人に、特に、高齢者に、移動の困難さをもたらす。
【0004】
結果として、腹式呼吸の標準モデルを必要とせず、かつ腹式呼吸の特徴を抽出するための方法に先だって実施され、呼吸する人に標準的な腹式呼吸の行い方を学ばせる、学習プロセスを実施することなしに、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法、及び、腹式呼吸の特徴を抽出することが可能な、腹式呼吸の特徴を抽出するシステム。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの目的は、腹式呼吸の標準モデルを必要とせず、かつ腹式呼吸の特徴を抽出するための方法に先だって実施される学習プロセスを実施することなしに、腹式呼吸の特徴を抽出することが可能な、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、腹式呼吸の標準モデルを必要とせず、かつ腹式呼吸の特徴を抽出するための方法に先だって実施される学習プロセスを実施することなしに、腹式呼吸の特徴を抽出することが可能な、腹式呼吸の特徴を抽出するシステムを提供することである。
【0007】
その目的を達成するため、本発明の腹式呼吸の特徴を抽出するための方法は、以下のステップを含む:
腹式呼吸信号を受ける;
複数の固有モード関数を計算するため、腹式呼吸信号に、経験的モード分解プロセスを実施する;
複数の固有モード関数と、複数の固有モード関数にヒルベルト変換を実施した後に得られた結果とに基づいて、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数を計算する;
複数の固有モード関数の各々の瞬時周波数関数を計算するため、時間に関して、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数の偏導関数をとり、かつ複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値を抽出する;
及び、
所定のシーケンスに従い、複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値をゼロ点閾値領域とそれぞれ比較し、かつ複数の瞬時周波数関数の1つの複数の最大値の全てがゼロ点閾値領域に入るという結果が得られた時、複数の最大値を有する瞬時周波数関数が腹式呼吸特徴関数として定義される。
【0008】
その目的を達成するため、本発明の腹式呼吸の特徴を抽出するシステムは、以下を含む:
腹式呼吸信号を検出するための、検出モジュール;
腹式呼吸特徴関数を抽出するための検出モジュールと連結された計算モジュール;及び、
腹式呼吸特徴関数を出力するための計算モジュールと連結された腹式呼吸特徴出力モジュール、ここで、
計算モジュ−ルは、腹式呼吸の特徴を抽出する方法を実施することにより、腹式呼吸信号から、腹式呼吸特徴関数を抽出し、かつ
腹式呼吸の特徴を抽出する方法は、以下のステップ:
腹式呼吸信号を受ける;
複数の固有モード関数を計算するため、腹式呼吸信号に経験的モード分解プロセスを実施する;
複数の固有モード関数と、複数の固有モード関数にヒルベルト変換を実施した後に得られた結果とに基づいて、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数を計算する;
複数の固有モード関数の各々の、瞬時周波数関数を計算するため、時間に関して、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数の偏導関数をとり、かつ複数の瞬時周波数関数の各々の、複数の最大値を抽出する;及び、
所定のシーケンスに従い、複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値をゼロ点閾値領域とそれぞれ比較し、複数の瞬時周波数関数の1つの複数の最大値の全てがゼロ点閾値領域に該当するという結果が得られる時、複数の最大値を有する瞬時周波数関数が腹式呼吸特徴関数として定義される、
を含む。
【0009】
腹式呼吸の特徴を抽出する方法により、受け取った腹式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数を計算することが出来るので、その次に、複数の固有モード関数の各々の、オイラー角関数を計算することが出来る。後で、複数の固有モード関数の各々の、時間に関する、オイラー角関数の偏導関数をとることにより、複数の固有モード関数の各々の瞬時周波数関数を計算することが出来る。その次に、複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値を抽出し、ゼロ点閾値領域と比較することが出来る。最後に、比較の結果に関して、受け取った腹式呼吸信号に対応する腹式呼吸特徴関数を定義することが出来る。それ故、本発明の腹式呼吸の特徴を抽出するための方法は、腹式呼吸の標準モデルを必要とせず、かつ腹式呼吸の特徴を抽出するための方法に先だって実施される学習プロセスの実施を実施することなしに、受けた腹式呼吸信号から、直接、腹式呼吸の特徴を抽出することが可能である。
【0010】
また、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法を実施する計算モジュール、腹式呼吸を受けるために使用される検出モジュール、及び、腹式呼吸特徴関数を出力するために使用される腹式呼吸特徴出力モジュールを含むことにより、本発明の腹式呼吸の特徴を抽出するシステムは、腹式呼吸の標準モデルを必要とせず、かつ腹式呼吸の特徴を抽出するための方法に先だって実施される学習プロセスの実施を実施することなしに、腹式呼吸の特徴を抽出することが可能である。
【0011】
本発明の他の目的、効果、及び新規の機能は、添付図面と併用すると、以下の詳細な記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施態様に記載の、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法のフローチャートである。
【図2】腹式呼吸の特徴を抽出するシステムの斜視図である。
【図3A】胸式呼吸を行う人の胸部に装着されたベルトによって取得された胸式呼吸信号を示す。
【図3B】図3Aに示された胸式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数の1つを示す。
【図4A】胸式呼吸を行う人の腹部に装着されたベルトによって取得された腹式呼吸信号を示す。
【図4B】図4Aに示された腹式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数の1つを示す。
【図5A】腹式呼吸を行う人の胸部に装着されたベルトによって取得された胸式呼吸信号を示す。
【図5B】図5Aに示された胸式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数の1つを示す。
【図6A】腹式呼吸を行う人の腹部に装着されたベルトによって取得された腹式呼吸信号を示す。
【図6B】図6Aに示された腹式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数の1つを示す。
【図7A】図6Aに示された腹式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数のうちの5つについて、5つの瞬時周波数関数を示す。
【図7B】図6Aに示された腹式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数のうちの5つについて、5つの瞬時周波数関数を示す。
【図7C】図6Aに示された腹式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数のうちの5つについて、5つの瞬時周波数関数を示す。
【図7D】図6Aに示された腹式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数のうちの5つについて、5つの瞬時周波数関数を示す。
【図7E】図6Aに示された腹式呼吸信号に対応する、複数の固有モード関数のうちの5つについて、5つの瞬時周波数関数を示す。
【図8】本発明の第2の実施態様に記載の、腹式呼吸の特徴を抽出するシステムの斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施態様に記載の、腹式呼吸の特徴を抽出するシステムの計算モジュールによって実施された、腹式呼吸の特徴を抽出する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施態様に記載の、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法のフローチャートである図1に示す様に、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法は、以下のステップを含む:
(A)腹式呼吸信号を受ける;
(B)複数の固有モード関数を計算するため、腹式呼吸信号に、経験的モード分解プロセスを実施する;
(C)複数の固有モード関数と、複数の固有モード関数にヒルベルト変換を実施した後に得られた結果とに基づいて、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数を計算する;
(D)複数の固有モード関数の各々の瞬時周波数関数を計算するため、時間に関して、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数の偏導関数をとり、かつ複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値を抽出する;
及び、
(E)所定のシーケンスに従い、複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値をゼロ点閾値領域とそれぞれ比較し、かつ複数の瞬時周波数関数の1つの複数の最大値の全てが、ゼロ点閾値領域に入るという結果が得られた時、複数の最大値を有する瞬時周波数関数が、腹式呼吸特徴関数として定義される。
【0014】
以下において、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法の上述の工程の各々の操作が、図面を伴って詳細に記述される。
【0015】
腹式呼吸の特徴を抽出するシステムの斜視図である図2を参照されたい。腹式呼吸の特徴が抽出されようとしている人が、2つのベルト21、22を、その人の胸部と腹部周りにそれぞれ装着している。次いで、その人は、さらに指示されるまで、その人の意志で腹式呼吸及び/又は胸式呼吸を行う。
【0016】
腹式呼吸の特徴を抽出するための方法が実施されている時間内に、その人の胸部の変位と腹部の変位の双方が、2つのベルト21、22により、それぞれに、及び、同時に、取得される。2つのベルト21、22が、PZT素子を用いることにより、その変位を対応する電気的信号に変換する。腹式呼吸信号と呼ばれる電気的信号が一旦得られると、その信号は、結線、例えば、ケーブル又は無線接続等の可能な信号伝送手段を経て、コンピュータ及び/又はポータブルデバイス23に伝送される。コンピュータ及び/又はポータブルデバイス23は、その記憶装置の内に、本発明の第1の実施態様に記載の腹式呼吸の特徴を抽出するための方法に対応するプログラムを保管している。
【0017】
一旦、腹式呼吸の特徴を抽出するシステムのコンピュータ及び/又はポータブルデバイス23が、本発明の第1の実施態様に記載の腹式呼吸の特徴を抽出するための方法のステップ(A)である腹式呼吸信号を受けると、ステップ(B)が直ちに実行される。図1に示す様に、ステップ(B)において、腹式呼吸信号の各々の複数の固有モード関数を計算するため、取得された腹式呼吸信号に経験的モード分解プロセスが実行される。
【0018】
本実施態様において、その人が胸式呼吸と腹式呼吸のいずれかを行っている間、2つのベルト21、22によって取得される2つの呼吸信号がある。次いで、これらの呼吸信号の各々に、本実施態様においては、それらの2つに対応する複数の固有モード関数を計算するため、経験的モード分解プロセス、これはEMDプロセスと略語化される、で処理される。
【0019】
例えば、図2に示す様に、一旦、ベルト21によって取得された呼吸信号が、コンピュータ及び/又はポータブルデバイス23によって受けられた時点で、胸式呼吸信号に対応する複数の固有モード関数、いわゆるIMFを得るために、コンピュータ及び/又はポータブルデバイス23は、図3Aに示されたものなどの呼吸信号にEMDプロセスを実施する。図3Aに示される場合には、図3Aに示された胸式呼吸信号から得られた、即ち、「分解された」、16個のIMFがある。
【0020】
図3Aに示された胸式呼吸信号に対応する、全てのIMFが得られた後、これらのIMFのうち、11番目のみが、一例として、図3Bに示されている。注目すべきは、図3Bに示されるこれらのIMFからどれを選択するかは、任意的であり、これらのIMFからの選択は、本発明の範囲を制約するものではないことである。
【0021】
以下の8つの図面においては、即ち、図3Aから図6Bでは、4つの呼吸信号及びEMDプロセスの実施後得られた4つのIMF、並びに、選択されたものが、それぞれ示されている。上述の様に、胸式呼吸を行っている人の胸部に装着されたベルト21によって取得された胸式呼吸信号が、図3Aに示されている。図3Aに示された呼吸信号にEMDプロセスの実施後に得られたIMF、及び選択されたものが、図3Bに示されている。
【0022】
同様に、胸式呼吸を行っている人の腹部に装着されたベルト22によって取得された腹式呼吸信号が、図4Aに示されており、一方、図4Aに示された呼吸信号にEMDプロセスの実施後得られたIMF、及び選択されたものが、図4Bに示されている。その上、腹式呼吸を行っている人の胸部に装着されたベルト21によって取得された胸式呼吸信号が、図5Aに示されており、一方、図5Aに示された呼吸信号にEMDプロセスの実施後得られたIMF、及び選択されたものが、図5Bに示されている。
【0023】
また、腹式呼吸を行っている人の腹部に装着されたベルト22によって抽出された腹式呼吸信号が、図6Aに示されており、一方、図6Aに示された呼吸信号にEMDプロセスの実施後得られたIMF、及び選択されたものが、図6Bに示されている。
【0024】
本発明の呼吸信号などの信号にEMDプロセスを実施することは、この分野で、例えば、非線形及び非定常データ・プロセッシング分野で公知であり、EMDプロセスの実施に関する詳細な記述は、以下では省略される。
【0025】
図6に示されたものの様な、腹式呼吸信号の、複数のIMFが得られた後、本発明の第1の実施態様に記載の腹式呼吸の特徴を抽出するための方法のステップ(C)が実施される。本実施態様において、図6Aに示された腹式呼吸信号に対応する16個のIMFがある。しかし、複数のIMFの数は限定されるものではなく、IMFの特性次第で、腹式呼吸信号に応じて1個から16個のIMFがあり得る。また、複数のIMFの各々は、特性周波数を有し、異なったIMFの特性周波数の値は互いに異なっている。
【0026】
図1に示す様に、ステップ(C)において、複数のIMFの各々のオイラー角関数が、複数のIMFと、複数のIMFにヒルベルト変換を実施した後に得られた結果とに基づいて計算される。本実施態様においては、16個のIMFがあるので、これらの16個のIMFに、それぞれ、ヒルベルト変換実施後、16個の結果が得られる。それ故、ステップ(C)の実施後、16個のオイラー角関数が得られる。
【0027】
関数にヒルベルト変換を実施することは、信号処理分野などの、この分野で、公知であるので、ヒルベルト変換の実施に関する詳細な記述は、以下省略される。
【0028】
16個のIMFの全てにヒルベルト変換を実施した後、16個のオイラー角関数が得られる。本実施態様において、オイラー角関数は、オイラーの公式における、オイラー角と時間の間の関数関係を記述する関数である。オイラーの公式は、次の様に表わされ得る:

ここで、rは大きさを表し、θはオイラー角を表わす。
【0029】
それ故、オイラー角関数は、固有モード関数と、IMFにヒルベルト変換を実施した後に得られた結果とに基づいて計算されるので、オイラー角関数は次の様に表わすことが出来る:

ここで、raは、a次の固有モード関数の大きさを表し、θaは、a次の固有モード関数のオイラー角を表わし、Hは、ヒルベルト変換を表わす。
【0030】
上述の様に、16個のオイラー角関数は、ステップ(C)の実施後に得られる。次いで、本発明の第1の実施態様に記載の腹式呼吸の特徴を抽出するための方法のステップ(D)において、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数の偏導関数を、時間に関して、取ることにより、 複数の固有モード関数の各々の瞬時周波数関数が計算される。瞬時周波数関数は次の様に表わすことが出来る:

ここで、ωaは、a次の固有モード関数の瞬時周波数関数を表わし、θaは、a次の固有モード関数のオイラー角を表わす。
【0031】
上述の様に、腹式呼吸を行っている人の腹部に装着されたベルト22によって取得された呼吸信号に対応する、図6Aに示された16個のIMFがあるので、16個のオイラー角関数の、時間に関しての、偏導関数を取った後、16個の瞬時周波数関数が得られる。図7Aから図7Eを参照すると、そこに16個の瞬時周波数関数の内の5個が示されている。注目すべきは、これらの5つの図面に示されるこれら5個の瞬時周波数関数のどれを選択するかは任意であり、これらの瞬時周波数関数からの選択は、本発明の範囲を制約するものではないことである。
【0032】
これらの瞬時周波数関数の全てが得られた後、これらの瞬時周波数関数の各々の複数の最大値、本実施態様においては、それらの16個が抽出される。その上、これらの5つの図から分かる様に、これら5つの瞬時周波数関数の各々の複数の最大値は、極大値である。
【0033】
最後に、本発明の第1の実施態様に記載の腹式呼吸の特徴を抽出するための方法のステップ(E)において、複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値を、ゼロ点閾値領域と、それぞれ、所定のシーケンスに従って比較する。その上、本実施態様においては、所定のシーケンスは、IMFのより高い特性周波数値を有するIMFにて始まり、より低い特性周波数値を有するIMFで終了するシーケンスである。換言するならば、複数の瞬時周波数関数は、対応するIMFの特性周波数値に従い、配列される。
【0034】
結果として、本実施態様において、最も高い特性周波数値を有するIMFに対応する瞬時周波数関数の、複数の最大値が、最初に、ゼロ点閾値領域と、即ち、図7Aに示された瞬時周波数関数と、比較される。
【0035】
図7Aに示す様に、ゼロ点閾値領域71は、瞬時周波数関数の値が、−0.5と0.5の間である領域である。さらに、ゼロ点閾値領域71は、−0.5と0.5の間であるので、ゼロ点閾値領域71は、ゼロ点閾値±0.5領域とも呼ばれる。図7Aに明確に示されている様に、瞬時周波数関数の複数の最大値の大部分は、ゼロ点閾値領域71の上限より大きい。即ち、複数の瞬時周波数関数の最大値の全てがゼロ点閾値領域に該当するという結果は、抽出することが出来ない。
【0036】
その次に、図7Bに示されたものの様に、所定のシーケンスにおいて、次の瞬時周波数関数に取りかかる。図に明確に示されている様に、瞬時周波数関数の複数の最大値のいくつかは、ゼロ点閾値領域71の上限より大きい。即ち、瞬時周波数関数の複数の最大値の全てがゼロ点閾値領域に該当するという結果は、抽出することが出来ない。
【0037】
次に、同様な方法で、図7Cに示されたものの様に、所定のシーケンスにおいて、次の瞬時周波数関数に取りかかる。図に明確に示されている様に、瞬時周波数関数の複数の最大値の内の最も大きいものは、即ち、広域(global)最大値は、ゼロ点閾値領域71の上限より大きい。即ち、瞬時周波数関数の複数の最大値の全てがゼロ点閾値領域に該当するという結果は、抽出することが出来ない。
【0038】
次に、同様に、図7Dに示されたものの様に、所定のシーケンスにおいて、次の瞬時周波数関数に取りかかる。図に明確に示されている様に、瞬時周波数関数の複数の最大値の内の最も大きいものは、即ち、93秒付近で上昇している広域最大値は、ゼロ点閾値領域71の上限より大きい。即ち、瞬時周波数関数の複数の最大値の全てがゼロ点閾値領域に該当するという結果は、抽出することが出来ない。
【0039】
しかし、図7Eに示されたものの様に、所定のシーケンスにおける、次の瞬時周波数関数において、瞬時周波数関数の複数の最大値の内の最も大きいものは、ゼロ点閾値領域71の上限より小さく、瞬時周波数関数の複数の最大値の内の最も小さいものは、ゼロ点閾値領域71の下限より大きい。即ち、瞬時周波数関数の複数の最大値の全てがゼロ点閾値領域に該当するという結果が得られる。
【0040】
この時、即ち、複数の瞬時周波数関数の1つの、複数の最大値の全てがゼロ点閾値領域に該当するという結果が得られる時、複数の最大値を有する、瞬時周波数関数は、腹式呼吸特徴関数と定義される。この実施態様において、図7Eに示された瞬時周波数関数は、図6Aに示された腹式呼吸信号に対応して、腹式呼吸特徴関数と定義される。さらにその上、本実施態様において、時間次元での、腹式呼吸特徴関数の、複数の最小値の分布は、腹式呼吸の周期である。
【0041】
注目すべきは、本発明の第1の実施態様に記載の腹式呼吸の特徴を抽出するための方法を実施することにより、図5Aに示す腹式呼吸信号、図6Aに示す腹式呼吸信号等の、他の腹式呼吸信号に対応する、全ての腹式呼吸特徴関数を、それぞれ、抽出することが出来ることである。
【0042】
本発明の第2の実施態様に記載の腹式呼吸の特徴を抽出するシステムの斜視図である、図8を参照されたい。図に示す様に、本発明の第2の実施態様に記載の、腹式呼吸の特徴を抽出するシステムは以下を含む:
検出モジュール81、検出モジュール81と連結されている計算モジュール82、及び、計算モジュール82と連結されている腹式呼吸特徴出力モジュール83。ここで、検出モジュール81は、腹式呼吸信号を検出するために用いられ、一方、計算モジュール82は、腹式呼吸特徴関数を抽出するために用いられる。さらに、腹式呼吸特徴出力モジュール83は、腹式呼吸特徴関数を出力するために用いられる。
【0043】
さらに、計算モジュール82は、腹式呼吸特徴を抽出する方法を実施することにより、腹式呼吸信号から、腹式呼吸特徴関数を抽出する。図9に示す様に、腹式呼吸特徴を抽出する方法は、以下のステップを含む:
(A)腹式呼吸信号を受ける;
(B)複数の固有モード関数を計算するため、腹式呼吸信号に経験的モード分解プロセスを実施する;
(C)複数の固有モード関数と、複数の固有モード関数にヒルベルト変換を実施した後に得られた結果とに基づいて、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数を計算する;
(D)複数の固有モード関数の各々の瞬時周波数関数を計算するため、時間に関して、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数の偏導関数をとり、かつ複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値を抽出する;及び、
(E)所定のシーケンスに従い、複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値をゼロ点閾値領域と比較し、複数の瞬時周波数関数の1つの複数の最大値の全てが、ゼロ点閾値領域に該当するという結果が得られる時、複数の最大値を有する瞬時周波数関数が、腹式呼吸特徴関数として定義される。
【0044】
本実施態様において、本発明の第2の実施態様に記載の、腹式呼吸の特徴を抽出するシステムの検出モジュール81は、ベルトに一体化される。例えば、好ましくは、腹部まわりに、人が、その人の身体に着けたベルトである。さらに、図8に示す様に、検出モジュール81は、その人の身体の変位を抽出するための、圧電ユニット811、及び、圧電ユニットからのアナログ信号出力を、対応するデジタル信号に変換するため、圧電ユニットに電気的に接続された、アナログ・デジタル変換ユニット812を含む。その上、検出モジュールの大きさと重さを最小にするため、検出モジュールは、システムオンチップ(SoC)である。
【0045】
さらに、図8に示す様に、腹式呼吸特徴出力モジュール83は、腹式呼吸特徴関数を、第3世代(3G)技術、又は、ワイファイ(WiFi)技術などの、無線接続を通じて、リモート・サーバー(図示せず)に出力するための、無線接続伝送ユニット831を含む。
【0046】
本発明の第2の実施態様に記載の、腹式呼吸の特徴を抽出するシステムの計算モジュール82によって実施される、腹式呼吸の特徴を抽出する方法は、本発明の第1の実施態様に記述された、腹式呼吸の特徴を抽出する方法と同一であるので、腹式呼吸の特徴を抽出する方法の操作に関する、詳細な記述は、本実施態様の記述を簡略にするため、本明細書には、省略されている。
【0047】
本発明が、その好ましい実施態様に関連して説明されたが、多くの、他の、可能である、修正や変化を、本明細書に請求されている様な、本発明の精神と範囲を逸脱せずに、行うことが出来ることは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹式呼吸の特徴を抽出するための方法であって、以下のステップ:
腹式呼吸信号を受ける;
複数の固有モード関数を計算するため、腹式呼吸信号に、経験的モード分解プロセスを実施する;
複数の固有モード関数と、複数の固有モード関数にヒルベルト変換を実施した後に得られた結果とに基づいて、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数を計算する;
複数の固有モード関数の各々の、瞬時周波数関数を計算するため、時間に関する、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数の偏導関数をとり、かつ複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値を抽出する;
及び、
所定のシーケンスに従い、複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値を、ゼロ点閾値領域とそれぞれ比較し、かつ複数の瞬時周波数関数の1つの、複数の最大値の全てが、ゼロ点閾値領域に入るという結果が得られた時、複数の最大値を有する瞬時周波数関数が、腹式呼吸特徴関数として定義される:
を含む、腹式呼吸の特徴を抽出するための方法。
【請求項2】
オイラー角関数は、オイラーの公式における、オイラー角と時間の間の関数関係を記述する関数であり、オイラーの公式は、次の様に表わされる請求項1に記載の方法。

ここで、rは大きさを表し、θはオイラー角を表わす。
【請求項3】
複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値が極大値である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の固有モード関数の数が1と16の間であり、複数の固有モード関数の各々は特性周波数を有し、かつ異なった固有モード関数の特性周波数の値は互いに異なっている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
所定のシーケンスが、固有モード関数のより高い特性周波数値を有する固有モード関数にて始まり、より低い特性周波数値を有する固有モード関数で終了する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ゼロ点閾値領域が、瞬時周波数関数の値が、−0.5と0.5の間である領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
時間次元での、腹式呼吸特徴関数の、複数の最小値の分布は、腹式呼吸の周期である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
腹式呼吸の特徴を抽出するシステムであって、
腹式呼吸信号を検出するための、検出モジュール;
腹式呼吸特徴関数を抽出するための検出モジュールと連結された計算モジュール;
及び、腹式呼吸特徴関数を出力するための、計算モジュールと連結された、腹式呼吸特徴出力モジュールを含み、ここで、
計算モジュールは、腹式呼吸の特徴を抽出する方法を実施することにより、腹式呼吸信号から、腹式呼吸特徴関数を抽出し、
腹式呼吸の特徴を抽出する方法は、以下のステップ:
腹式呼吸信号を受ける;
複数の固有モード関数を計算するため、腹式呼吸信号に経験的モード分解プロセスを実施する;
複数の固有モード関数と、複数の固有モード関数にヒルベルト変換を実施した後に得られた結果とに基づいて、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数を計算する;
複数の固有モード関数の各々の瞬時周波数関数を計算するため、時間に関して、複数の固有モード関数の各々のオイラー角関数の偏導関数をとり、かつ複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値を抽出する;及び、
所定のシーケンスに従い、複数の瞬時周波数関数の各々の複数の最大値を、ゼロ点閾値領域とそれぞれ比較し、複数の瞬時周波数関数の1つの、複数の最大値の全てが、ゼロ点閾値領域に該当するという結果が得られる時、複数の最大値を有する瞬時周波数関数が、腹式呼吸特徴関数として定義される、
を含む、腹式呼吸の特徴を抽出するシステム。
【請求項9】
検出モジュールがベルトに一体化され、かつ検出モジュールが、圧電ユニット及びアナログ・デジタル変換ユニットを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
検出モジュールが、システムオンチップである、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
腹式呼吸特徴出力モジュールが、無線接続伝送ユニットを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
オイラー角関数は、オイラーの公式における、オイラー角と時間の間の関数関係を記述する関数であり、オイラーの公式は、次の様に表わされる、請求項8に記載のシステム。

ここで、rは大きさを表し、θはオイラー角を表わす。
【請求項13】
複数の固有モード関数の数が、1と16の間であり、かつ複数の固有モード関数の各々は、特性周波数を有し、かつ異なった固有モード関数の特性周波数の値は、互いに異なっている、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
所定のシーケンスが、固有モード関数のより高い特性周波数値を有する固有モード関数にて始まり、より低い特性周波数値を有する固有モード関数で終了する、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
ゼロ点閾値領域が、瞬時周波数関数の値が−0.5と0.5の間である領域である、請求項8に記載のシステム。
【請求項16】
時間次元での、腹式呼吸特徴関数の、複数の最小値の分布は、腹式呼吸の周期である、請求項8に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9】
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