説明

腹膜透析方法および装置

腹膜に基づいた(「無血」)人工腎臓が追加の流体の必要性を伴うことなく(「無水」)腹膜の流体を処理する。流体がタンパク質の豊富な流れおよびタンパク質を含まない流れに分けられる。タンパク質の豊富な流れが吸着剤アセンブリを使用して再生され、タンパク質組成が選択された(複数の)タンパク質の除去(「透析液フェレーシス」)によって改質されることが可能である。これが次に添加物で再構成され、腹膜腔の中に戻され、これによってタンパク質損失を減少させ、限外ろ過のためのコロイド浸透圧を供給する。タンパク質を含まない流れは自由水、および再生された流れの組成の最適化のためのアルカリ性または酸性の流体を作り出すために使用される。使用されていないタンパク質を含まない流れは、分離装置を「逆噴流で洗い流す」ことで開通性を維持するために使用されてもよく、余剰分は水分平衡の調節のために捨てられる。先行技術と比較すると、ウレアーゼの固定化は一層多くのタンパク質の豊富な流体が再生されること、および毒素除去のために腹膜腔の中に再循環されることを可能にし、携帯型および装用性の人工腎臓の実施可能な開発を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は腹膜透析である。
【背景技術】
【0002】
不十分な腎臓機能を伴う患者は生存のために透析または腎臓移植のどちらかを必要とする。腎臓移植は成功すると、治療の最も理想的な形態であり、なぜならば持続的な腎臓機能を回復させて患者を正常または殆ど正常な生活に戻すからである。しかしながら、移植における主要な問題は末期の腎不全を伴う患者の拡大しつつある数に対して強まりつつある腎臓提供者の不足、および拒絶反応、慢性の(移植)同種移植片腎障害、および元来の腎臓疾患の再発を含む原因から生じる移植片の機能の悪化である。毒性の副作用を伴う多数の投薬療法に関して生涯にわたる必要性もやはりある。
【0003】
大部分の患者は透析の境遇に置かれ、合衆国では約90%が血液透析(HD)によって治療されている。これは患者の体外に出て人工の膜で構成された密閉区画(人工腎臓としてもやはり知られている透析装置)を通り、患者の中に戻る血液の大量の循環を必要とする。機械によって作り出される新鮮な血液透析液がこの区画の他方の側を通してポンプで送り込まれ、人工膜を通して血液からの水溶性代謝老廃物および余剰の体液を抽出する。透析装置を出て行く使用後の血液透析液は廃棄物として処分される。患者は3から4時間、週に2または3回、医師によって指導される看護士および技師をスタッフとする特殊な治療センターにおいて大部分が治療される。身体外部への血液の大量の流路輸送(体外循環)は厳密な抗凝血およびモニタリングを必要とする。(各々の治療のための血液透析液の生産は血液透析液の30ガロン(120リットル)を調製するための水の約90ガロン(340リットル)および約200ポンド(91kg)の平均重量を備えた機械を必要とする。)代謝老廃物および水は透析の間の2−3日について蓄積され、次いで3−4時間以内に急速に取り除かれるので、大部分の患者は各々の治療の後に吐き気を催し、回復するのに数時間から数日を要することもあり得る。都合の悪いことに、この時までに次の治療が予定されている。
【0004】
透析患者の約10%は腹膜透析(PD)で治療される。PDでは、新鮮な透析液(普通では2リットル)が患者の腹膜によって線引きされる患者の腹部の空腔(腹膜腔)の中に導入される。腹膜の他方の側で循環する血液中の水溶性の代謝老廃物および余剰の水は拡散および対流によって透析液の中に移動する。ある時間の期間の後に、使用済みの透析液が排出されて捨てられる。新たな治療サイクルを始めるために新鮮な透析液が腹膜腔の中に供給される。持続式携帯型腹膜透析(CAPD)の患者は起きている時間に毎日このような交換を3−4回行ない、睡眠中の8−12時間持続する追加の1回の毎夜の治療サイクルを行なう。患者のうちの増えつつある数が現在、透析液の交換を実施するための自動腹膜循環装置を使用して夜間の透析を受けている。通常、透析液の10から20リットルが夜の睡眠の時間全体を通じた5−10回の交換(1回の交換当たり2リットル)のために使用される。透析液の高い費用は殆ど常に、特に残りの腎臓機能が完全に失われている患者において次善の透析という結果につながる。現在のPDの別の欠点は血中タンパク質のうちの無視できない量が腹膜を横切って透析液の中に漏れ、使用済みの腹膜透析液(SPD)と共に捨てられることである。
【0005】
実際、腹膜透析システムのうちの先行技術の問題および限界のうちの多くは、SPDを再生する能力が実在しないか、またはあっても限界を前提にしているという事実に由来する。このような問題および限界は、例えば以下を含む。
1)主として新鮮な透析液の高い費用に起因して、透析液の使用は1日当たり新鮮な透析液の約10から20リットルに限られる。これが今度は他方で患者から取り除かれることが可能な毒素の量を制限する。
2)SPDの中のタンパク質がSPDと共に捨てられ、既に末期の腎不全からタンパク栄養不良にある患者の持続的タンパク損失の状態という結果につながる。
3)カテーテルに加えて2つ以上の接続が透析システムに為される。
4)新鮮な市販透析液中のナトリウムレベルによってナトリウム濃度が決定され、いったん治療が始められると容易に調節されることができない。
5)市販の腹膜透析液は乳酸塩を含み、約5.5のpHを有し、これらの両方が腹膜に炎症および起こり得る損傷を引き起こす可能性がある。
6)市販の腹膜透析液はオートクレーブによる滅菌の間に形成されるグルコース分解生成物を含む。付加的な分解生成物が使用に先立つ透析液の保存期間に形成される。これらの分解生成物もやはり腹膜に損傷を引き起こす可能性がある。さらに、現在入手可能な透析液では3つの異なるグルコース濃度があるのみであり、グルコース濃度の変更に関するニーズは必要とされる濃度に近いグルコース濃度を含む透析液の新たなバッチへの変更を必要とする。
7)現在の腹膜透析液装置では、栄養素、ホルモン、抗生物質、およびその他の治療および健康促進用の薬剤などといった有益な薬剤が容易に溶かし込まれることができない。
8)吸着剤SPD再生を用いる先行技術のシステムはウレアーゼ層を含み、このウレアーゼがSPD内のタンパク質によって置換されることが見込まれる。
9)先行技術のシステムは個々の患者において医師によって処方された決まったレベルでの透析液のナトリウム濃度およびpHを調節および維持しない。
10)ウレアーゼおよび(リン酸ジルコニウムなどの)陽イオン交換体を使用することによって尿素を取り除くために吸着剤SPD再生を用いる先行技術のシステムは、二酸化炭素の無視できない量を発生させるが、液漏れを防止する様式でこのガスおよび他のガスを除去し、その一方で同時に多様な条件下で機能するように設計されたシステム、例えば装用システムにおいて無菌を維持するための手段を提供しない。
11)先行技術の吸着剤SPD再生システムはアンモニウムイオンを発生させ、これはジルコニウム層が使い果たされると吸着剤アセンブリの廃液中に現れる。このようなシステムは通常、アンモニウムイオンに関して廃液を連続的にモニタするための準備を有しておらず、したがってこれらは可聴型、可視型、振動式または他の形態の警報を作動させること、および/またはこの状況に応答してシステムをオフに切り換えることが不可能である。
【0006】
透析用流体の再生および再利用は企図されてきた。例えば、KrausらのUS4338190(1982年7月)は再循環型腹膜透析システムを教示しており、RobertsとLeeのUS5944684(1999年6月)およびRoberts,M.の1999年の論文、A Proposed Peritoneal−Based Wearable Artificial Kidney,Home Hemodial Int,Vol.3,65−67,1999.(RosenbaumらのWO2005/123230)は再循環型血液透析システムを教示している。これらおよび他のすべての参照外部資料は全文が本願明細書に参照により組み入れられる。組み入れられた参考文献中の用語の定義および使用が本願明細書に与えられたこの用語の定義と矛盾する、または正反対である場合、本願明細書に与えられたこの用語の定義が当てはまり、参考文献中のこの用語の定義は当てはまらない。
【0007】
透析用流体の再生、再構成および再利用を企図しているにもかかわらず、先行技術はこの目標を達成する特に実践的な方法を記述していない。例えば、’190号特許は吸着剤カートリッジを使用せず、したがって最新の吸着剤に基づくシステムよりもはるかに非効率的である。Robertsの論文および特許は吸着剤の使用を企図しているが、タンパク質含有流および無タンパク質(限外ろ過)流の別々の処理およびこの後の再合体を必要とする過度に複雑な装置を企図した。付け加えると、先行技術のうちのいずれもが、実践的に使用者によって着用されることが可能であり、本願明細書に述べられた数多くの改善を含んだユニットを教示していない。例えば、’684号特許では、
1)単一の腹膜カテーテルが患者の腹膜腔からの透析液の注入および除去のために使用される。
2)腹膜腔を通る透析液流量が毎時2から3リットルに限られ、腹膜腔内の滞留量が約250から1000mlの量に限られる。
3)再生システムが、ウレアーゼ、およびリン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウムおよび活性炭/木炭などの吸着剤を含む複数の連続した区画を有する単一のアセンブリ内に収納される。
4)再生システム内のウレアーゼは固定されておらず、使用済み腹膜透析液(SPD)中のタンパク質によって置換される可能性があり、したがって再生の目的のためにSPDが限外ろ過画分およびタンパク質画分に分けられ、この後に、患者の腹膜腔の中に再循環されて戻る前に再合体されることを必要とする。
5)ウレアーゼ/ジルコニウムイオン交換吸着剤再生システムでは再生が進行する時間と共に再生透析液中のナトリウム濃度が増大し、水素濃度が減少し、それによって漸進的により高いナトリウムおよびpHを作り上げる。
6)特に、装用性の腎臓の目標が多様な体位を要求する患者の制限されない行動を可能にすることであるとき、再生過程の中で作り出される二酸化炭素の排気のための準備が為されていない。
7)乾燥グルコースの使用のため、および限外ろ過の調節における即座の使用に関するグルコースの現場滅菌のための準備が為されていない。
8)再生透析液の多様な成分の「フィードバックループ」調節選択肢を備えたインラインのモニタのための準備が為されていない。
9)再生腹膜透析液(RPD)が、現場で滅菌されてプログラムされた速度およびタイミングパターンで注入される乾燥または液体の形態の栄養素、治療薬、および他の有益な薬剤で富化される準備が為されていない。
10)「有害」または望ましくないタンパク質、例えばパラプロテインの除去はSPDからのタンパク質画分の分離を必要とする。
11)中分子の尿毒症毒素の除去のための準備が為されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、腹膜透析液が再生、再構成および再使用されることが可能であり、携帯型で装用性の形式を含めた複数の形式で機能することできる向上したシステムに関してニーズがまだ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、腹膜透析液または他の実質的に血液を含まない流体が人または動物(概して本願明細書では「人」または「患者」または「使用者」と称される。)の腹膜腔から引き抜かれ、この流体が比較的タンパク質を豊富に含む流れと比較的タンパク質を含まない流れに分けられる装置、システム、および方法を提供する。比較的タンパク質を豊富に含む流れは毒素を除去するように処理することによって再生され、場合によって添加物で再構成され、次いで腹膜腔の中に再導入される。実質的に固定されたウレアーゼの使用により、先行技術におけるよりも流体の流れのうちの一層高いパーセンテージが比較的タンパク質を豊富に含む流れとして処理されることを可能になる。これは携帯型で装用性でさえある透析ユニットの商業的に実践可能な開発を初めて可能にする。
【0010】
好ましい実施形態の一態様では、比較的タンパク質を豊富に含む流れは平均して使用者の腹膜腔から入来する流れの95−98体積%になり、これは2−5体積%が比較的タンパク質を含まない流れを含むに過ぎないことを意味する。これよりも好ましくない実施形態では、このパーセンテージがさらに低い、好ましくは少なくとも90体積%、少なくとも40体積%、または少なくとも15体積%であることさえあり得る。特に中空糸フィルタを含むタンパク質流体分離装置のすべての実践的タイプが企図されるが、分離装置のタイプがこのパーセンテージを決定付ける必要はない。例えば、入来する流れに対して比較的タンパク質を豊富に含む流れのパーセンテージを変えるため、または別の場合では制御するためにポンプが使用されてもよい。
【0011】
適切な吸着剤システムが少なくとも1つの毒素を取り除くことによってタンパク質を豊富に含む流れを再生する。この吸着剤システムはファンデルワールス力よりも大きい力で基材上に固定されているウレアーゼまたは他の(複数の)酵素を含むことが好ましい。ウレアーゼのこの固定化は入来するタンパク質を多く含む流体流中のタンパク質によって置き換えられることを防止する。出願人ら自身のシステムを含めた以前のシステムは適切に固定されていないウレアーゼを使用したが、これは流体のうちの極めて小さい画分(例えば2−3%)のみがタンパク質を多く含む流体として処理されることが可能であったこと、および使用者の中に再導入される流体のうちの大部分がタンパク質を含まない部分から導き出されていたことを意味した。
【0012】
吸着剤は、吸着剤の少なくとも100グラム(乾燥重量)から成る使用者が交換することのできるアセンブリに含まれることが好ましい。アセンブリがリン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム水和物、および活性炭/木炭のうちの1つ以上を含み得ることが企図される。吸着剤アセンブリは付加的に、または代替形態として、付加的な吸着剤を使用した比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分からの1つ以上の特定のタンパク質の除去(透析フェレーシス)および1つ以上の中分子の尿毒症毒素の除去を目標にしてもよい。
【0013】
好ましい実施形態では、少なくともいくつかの他の処理がタンパク質を豊富に含む流れに起こる。例えば、処理ラインは陽イオンおよび/または陰イオン交換装置を含んでもよく、これは比較的タンパク質を含まない流れの少なくとも一部分の中のH、OH、CO3−−、およびHCO3のうちの少なくとも1つの濃度を変える。吸着剤カートリッジの最終段モジュールとしてリン酸ジルコニウム層を使用することによって水素イオン濃度の安定化が促進されることもやはり可能である。
【0014】
この処理ラインは滅菌装置およびガス抽出装置のうちの1つ以上を都合よく含むこともやはり可能である。ガス抽出装置は(携帯型システム用に)通気口のように単純であってもよく、または(装用性のシステム用の)親水性/疎水性の膜フィルタなどのようにさらに複雑であってもよい。
【0015】
比較的タンパク質を含まない流れ(限外ろ過液)は廃棄物として単純に処理されてもよいが、好ましい実施形態では3つの他の考え得る成果を有する。タンパク質を含まない流れのうちのいくらかがイオン交換装置(陰イオン、陽イオン、または混床式)を通過してもよく、流れのうちのいくらかが逆浸透フィルタを通過してもよく、および/または流れのうちのいくらかが分離装置を逆噴流で洗い流すために使用されてもよい。これら後段の3つのケースでは、次いで流体は比較的タンパク質を多く含む流れに戻して添加される。
【0016】
システムの特性を維持するため、および測定された特性が望ましい範囲の外側に出ると警報を出すかまたはシステムを遮断するためにモニタおよびフィードバックループが企図される。特に企図されるものはナトリウム濃度およびpHに関するモニタリングおよびフィードバックである。モニタリングおよび考え得る遮断は特にアンモニア濃度に関して企図される。
【0017】
好ましい実施形態はグルコース、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムのうちの少なくとも1つを添加することによってタンパク質を豊富に含む流れを再構成する少なくとも1つの富化モジュールもやはり含む。付け加えると、長期間の栄養のための栄養素、および医薬品(例えば抗生物質、化学療法薬)、微量栄養素、ビタミン、ホルモン、およびいずれかの他の治療用および健康の維持および促進用の薬剤および補助剤の投与が患者の中にこれらを導入する方法としてタンパク質を豊富に含む流れに添加され得る(逆透析)ことが企図される。供給は連続的基準で、または例えばセンサフィードバックループのメカニズムを通じて必要性を基準としてプログラムされてもよい。添加物を懸濁状態に保つため、および/またはこれらの溶媒和を容易にするために超音波振動器または他の装置が使用されてもよい。再生されて再構成された流体を腹膜腔の中に戻して導入する流路は流体を抽出するために使用されたものと同じかまたは異なる開口部を使用してもよく、抽出流路と同時または間欠的に操作されてもよい。
【0018】
携帯型システムに関すると、処理ライン全体(使用者が交換可能な吸着剤アセンブリを除く)の乾燥重量は5kgを超えないことが好ましい。使用者が交換可能な吸着剤アセンブリの乾燥重量は5kgを超えないように企図される。
【0019】
装用性のシステムに関すると、処理ライン全体(使用者が交換可能な吸着剤カートリッジを除く)の乾燥重量は1kgを超えないことが好ましい。このようなシステムでは使用者が交換可能な吸着剤アセンブリの乾燥重量は1kgを超えないように企図される。装用性のシステムは概して内蔵型の電力供給源もやはり必要とする。このような供給源は少なくとも8時間連続して処理ラインを動作させるために十分でなければならないが、さらに多いまたはさらに少ない時間用に設計されることもあり得る。さらに装用性を促進するために、システムのモジュールの内部および外部構造、機能、および材料は1)美学的品質および安全性を最適化し、2)透析液の再生および流体水理学を最適化し、3)各モジュールの再生能力および機能寿命を最大にするように設計することが可能であることが好都合である。この目的のために、特に好ましいモジュールは軟式のベルト、パック、または衣料品として構成されることが企図される。使用済みの再生用アセンブリまたは個々の部品は無菌維持型の結合(「スナップ留め」)および切り離し(「スナップ外し」)メカニズムを使用して便利に、および安全に(感覚および運動の器用さに障害のある患者を考慮して)取り外されて交換されることが可能である。
【0020】
好ましい吸着剤アセンブリは比較的長い時間の期間にわたって使用者への流体の比較的高いパーセンテージを再生する。例えば現在好ましい実施形態は実質的に血液を含まない流体のうちの少なくとも80−90%を4時間の期間にわたって、さらに好ましくは少なくとも80−90%を8時間の期間にわたってタンパク質含有精製流体として再生する。別の測定基準を使用すると、現在好ましい実施形態は実質的に血液を含まない流体のうちの少なくとも20リットルを10時間の期間にわたって、さらに好ましくは少なくとも48リットルを24時間の期間にわたって精製流体として再循環させる。さらに別の測定基準を使用すると、現在好ましい実施形態は連続7日の期間中に少なくとも40時間、さらに好ましくは48、56、70、126、または殆ど168時間(電力および化学物質の供給源の交換を除いた全時間)でさえ度重なる処理が起こることを可能にする。
【0021】
概して、本発明の主題事項は、タンパク質含有透析液の再生に基づいた携帯型であって(装用性でさえあって)自動化された腹膜透析システムを提供することによって先行技術の様々な欠陥を克服する。本システムは腹膜透析に基づいているので「無血」であり、SPDが連続的に再生されるので「無水」である。さらに、携帯型人工腎臓内で吸着剤再生を使用することによって、SPD内の腹膜タンパク質が患者に戻されることが可能である。
【0022】
本発明の様々な目的、特徴、態様および利点は、類似した番号が類似した部品を表わしている添付の図面と共に以下の本発明の好ましい実施形態の詳しい説明を読むとさらに明らかになる。
【0023】
(発明の詳細)
図1において、使用済みの腹膜流体がカテーテル110Aを通じて使用者/患者の腹膜腔10から引き出され、分離装置20、限外ろ過処理アセンブリ30、吸着剤アセンブリ40、および1つ以上のイオン交換装置50、場合によって設けられる貯蔵モジュール60、特殊モジュール70、グルコースモジュール80、および富化モジュール90を含む処理ラインに沿って処理される。次いでこの流体はポンプ99によって流入用カテーテル110Bを通じて腹膜腔の中に送り戻される。カテーテル110A、110Bおよび腹膜腔10を差し引いた図1の部品のすべては本願明細書で人工腎臓1と称されることがある。
【0024】
カテーテル110A、110Bは2つの物理的に分離したカテーテル、または1つ以上の管腔を備えた単一のカテーテルのどちらかであると双方向に解釈されるべきである。カテーテル、様々なポンプ14、32、72、82、92、および99、および様々な流体導管112、114、116A、116B、116C、116D、118、120、122、124A、124B、126A、126B、126C、130、132A、132B、132C、132D、134A、134B、134C、136A、136B、および136Cのすべては全体として従来型であってもよい。他方で、これらの部品が再循環流体の十分な処理能力を共同で支えることが重要である。例えば、実質的に血液を含まない流体が精製流体として、精製流体の少なくとも18リットルを10時間の期間にわたって、さらに好ましくは少なくとも20リットル、30リットル、40リットル、および48リットルを同じ時間期間にわたって供給するために十分な速度で再循環させられ得ることが企図される。24時間の期間では、実質的に血液を含まない流体が精製流体として、精製流体の少なくとも48リットル、さらに好ましくは少なくとも60リットル、なおもさらに好ましくは72リットル、なおもさらに好ましくは84リットル、なおもさらに好ましくは96リットルを供給するために十分な速度で再循環させられ得ることが企図される。
【0025】
これらの目的を達成するために、様々な部品が連続7日の期間中に1夜当たり8時間で5夜に相当する少なくとも40時間起こる処理にとって十分に頑丈であることが企図される。さらに好ましい実施形態は連続7日の期間中に少なくとも56または70時間起こる処理を備える。70時間は1夜当たり10時間で7夜に相当する数字である。同様に、少なくともいくつかの実施形態の様々な部品は連続7日の期間中に1日当たり22時間で7日に相当する少なくとも126時間起こる処理にとって十分に頑丈でなければならない。
【0026】
分離装置20は入来する流体を少なくとも2つの流れ、好ましくは比較的タンパク質を豊富に含む流れおよび比較的タンパク質を含まない流れに分割するように動作することができる中空糸または他の材料を含む。比較的タンパク質を豊富に含む流れ(単純化のために「タンパク質の豊富な流れ」)が先行技術で企図されたよりも大幅に大きい流体流のパーセンテージを有することが特に好ましい。例えば、(先行技術におけるような)流入する流れのうちの2−5体積%を含むに過ぎないタンパク質の豊富な流れ、および98−95体積%を含むタンパク質のない流れ(限外ろ過液)ではなく、分離装置20は流入する流れに対してタンパク質の豊富な流れの少なくとも15体積%の平均値を都合よく維持することが可能である。さらに好ましい実施形態では、フィルタ60は少なくとも40体積%、少なくとも60体積%、少なくとも80体積%、少なくとも90体積%、少なくとも95体積%、および少なくとも98体積%の流入する流れに相対した平均のタンパク質の豊富な流れを維持することが可能であり、ここでは平均値は1時間以上の有意の処理期間にわたって取られる。
【0027】
数時間にわたって、述べられた比較的タンパク質を豊富に含む流れと比較的タンパク質を含まない流れとの間の分離は、実質的に血液を含まない流体のうちのどの程度多くが精製流体として再循環されるか決定する過程において重大な要因である。現在好ましい実施形態は少なくとも80%を4時間の期間にわたって、さらに好ましくは少なくとも80%を4時間の期間にわたって、なおもさらに好ましくは少なくとも80%を8時間の期間にわたって再循環させる。
【0028】
先行技術とは対照的に、好ましい実施形態はタンパク質の豊富な流れの中の自己タンパク質の殆どすべてを保持し、それによってタンパク質の損失を最小化または除去することが可能である。もちろん、このようなタンパク質は非感作性であり、腹膜(流体)を横切る再吸収を遅らせるためにコロイド浸透圧を供給する利点を有し、腹膜腔10の中に再導入される流体へのグルコースの添加の必要性を削減または除去する。
【0029】
比較的タンパク質を豊富に含む流れと比較的タンパク質を含まない流れとの間の流体の分布はポンプおよびバルブを含めた様々な方式で制御されることが可能である。図1の実施形態では、この分布を少なくともいくらかの量で変えるためにポンプ32が使用されてもよい。バルブ21がこの目的に使用されることもやはり可能である。
【0030】
限外ろ過処理アセンブリ30は本システムから老廃物流体を取り除くための準備を常に含むように企図されるが、比較的タンパク質を含まない流体流の場合によって付加される取り扱いのための装置を追加で含んでもよい。図1は流体をバルブ33にポンプで送る限外ろ過液ポンプ32を描いており、以下の4つの成果を提供する。
1)タンパク質のない流れのうちのいくらか、および最もあり得る場合では大部分がポンプで廃棄物容器34に送られる。廃棄物容器34内の流体の大部分または全部がおそらく小便器またはトイレに処分され、
2)タンパク質のない流れのうちのいくらかは、タンパク質の豊富な流れの中に戻して添加されることが可能な希釈剤を供給するために逆浸透ユニット35を通してポンプで送られてもよく、
3)タンパク質のない流れのうちのいくらかは、pHおよびおそらく他の因子を変えるために使用者が交換することができるイオン交換モジュール36(陰イオン、陽イオン、または混床式)を通してポンプで送られてもよい。イオン交換モジュール36の産出物もやはりタンパク質の豊富な流れの中に戻して添加されることが可能であり、および/または
4)流れのうちのいくらかは、廃棄物容器34内の流体をポンプで送って分離装置20を通して戻すためのポンプ32を使用することによって分離装置を逆噴流で洗い流すために使用されてもよい。
【0031】
吸着剤アセンブリ40は図2に関連して下記で詳しく述べられる。
【0032】
吸着剤アセンブリ40の下流は1つ以上のモニタ(センサ)202、212、222、232、242、および252であり、これらのすべては図3に関連してさらに十分に述べられる。
【0033】
イオン交換装置50は分岐流路124Aおよび124Bを使用して流路122に並列に接続される。イオン交換装置50は陰イオン交換装置、陽イオン交換装置、または混床式交換装置を含むことが可能であり、交換装置を通過する流体中のH、OH、CO−−、およびHCOのうちの1つ、2つ、3つ、または4つすべて、ならびに他の所望のイオンの濃度を都合よく変えることが可能である。イオン交換装置50の1つの重要な使用法は吸着剤アセンブリ40の中で尿素の変換によって生成されるナトリウムを減少させることである。ナトリウムの生成は時間と共に変化するので、吸着剤アセンブリ40からの流れのうちのどの程度多くが交換装置50に入るかを制御バルブ52が制御する。
【0034】
貯蔵モジュール60は全体が場合によって付加される。装用性または携帯型のどちらかのユニットでは、例えば流体は腹膜腔10から連続的に引き出され、処理され、次いで空腔10の中に再導入され、再導入される流体のどのような貯蔵の必要性も全く伴わなくてよい。しかし間欠的処理が望まれる場合、貯蔵モジュール60が処理された(または半処理された)流体を再導入されるまで保持することが好都合である。企図される貯蔵容量は約500mlから約3リットルの範囲である。言葉の文脈が別の場合を指定しない限り、本願明細書におけるすべての範囲は端点を含めていると解釈されるべきである。
【0035】
尿素の炭酸アンモニウムへの変換、アンモニウムイオンと水素イオンの交換、および吸着剤アセンブリ40内の水素イオンと炭酸塩との反応が二酸化炭素の無視できない量を生成するのでガス除去ユニット65が必要とされる。CO(および処理ラインの中のいずれかの他のガス)は問題になる可能性が高いので、これらは本システムから除去されなければならない。携帯型システムにおいては、除去は単に通気することによって達成されてもよく、ガス除去ユニット65は単に通気口として解釈されるべきである。しかしながら装用性のシステムにおいては、通気口が上下逆になるように使用者/患者が時折り位置付けられると推定されるので通気は実践的ではない。このようなケースでは、ガスの除去は疎水性または疎水性/親水性の組み合わせのフィルタを使用して達成されてもよく、ガス除去ユニット65はこのような(複数の)フィルタを含むものとして解釈されるべきである。バルブ62、64はそれぞれ貯蔵モジュールの中および外への流体の流れを制御する。追加のポンプ(図示せず)が使用されることもやはり可能である。
【0036】
特殊モジュール70は本願明細書では他のモジュールによって充足されない付加的な処理を提供することを意図されている。例えば、特殊モジュール70は1つ以上の特定のタンパク質を流体から除去する透析フェレーシスの機能を提供してもよい。特殊モジュール70を通過する流体の量を制御するためにポンプ72が使用されてもよく、フィルタ74は主要な処理流に戻る流体をろ過する。
【0037】
グルコースモジュール80は処理される流体にグルコース供給導管134によってグルコースを添加する。双方向ポンプ82はこの処理を容易にし、グルコースの3つの濃度のみが利用可能である最新技術とは対照的に、実にグルコース濃度の可変制御を可能にする。フィルタ84は不要な粒子を除去し、無菌を提供する。
【0038】
富化モジュール90は、例えばグルコース、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムのうちの1つ以上を含めたいずれかの望ましい富化材料を十分に添加することが可能である。このような材料は処理される流体に、双方向ポンプ92を使用して富化材料供給導管136Aによって添加されてもよい。医薬品(例えば抗生物質、化学療法薬)、微量栄養素、ビタミン、ホルモン、およびいずれかの他の治療用および健康の維持および促進用の薬剤および補助剤もやはり帰還流体を通じて使用者/患者の中に導入され得ることが企図される。このような付加的な物質の導入は逆透析として知られている。
【0039】
グルコースおよび富化材料のうちの1つ以上が乾燥粉末として供給され、次いで処理される流体中に溶解されてもよい。乾燥したグルコースおよび他の材料は熱滅菌された流体中に存在しがちである分解生成物を避ける傾向を有するので、好都合であると考えられる。図1の実施形態では、乾燥グルコースが処理流体中に溶解され、次いで滅菌フィルタ84を通してろ過されてもよい。同様に、乾燥した富化化学物質が処理流体中に溶解され、次いで滅菌フィルタ94を通してろ過されてもよい。素子70、80および90の各々が場合によって超音波振動装置(それぞれ75、85、および95)などの装置を含んでもよく、これは添加される材料を溶解および/または懸濁することを補助する。
【0040】
間欠処理の通常の例では、適切な電解質溶液の約2リットルが最初の処理のために患者の中に導入される。設定された待機時間(例えば0−1時間)の後に、現時点でSPDである流体を処理ラインの第1の部分に沿って、モジュール30の中に入る少量の画分と共に貯蔵モジュール60の中にポンプで送るために腹膜の流出ポンプ14が起動される。貯蔵モジュール60が約2リットルに満ちると、貯蔵モジュール60はバルブ62で閉じられる。貯蔵モジュールの流出バルブが開かれ、特殊モジュールポンプ72、グルコースポンプ82、富化ポンプ92、および腹膜の流入ポンプ99がすべて起動され、貯蔵モジュールが空になるまで現時点で処理される流体が使用者/患者の中に流れ戻る。次いでこの処理が繰り返される。都合のよいときに廃棄物容器34内の廃棄流体が空にされる。
【0041】
連続処理の通常の例では、適切な電解質溶液の約2リットルを含むシステムが最初の処理のために患者の中に導入される。この全量を一度に全部患者の中に導入するのではなく、さらに少ない流体のボーラス(例えば500−1500ml)が状況に応じて導入されることで処理が開始され、続いて流体が緩やかに、好ましくは34−67ml/minの速度で患者の中にポンプで送られる。同時に、流体は本願明細書に述べられる処理のために殆ど同じ速度で腹膜腔から緩やかに引き出される。
【0042】
8−10時間の治療に関して新鮮な透析液の10−20リットルを使用する現状の技術に比べて、図1の装置を使用する治療は同じ時間期間にわたって再生透析液の20−40リットル(またはさらに多く)を供給することが可能である。これは透析効率に2倍以上の増大をもたらす。さらに、SPDの中の腹膜のタンパク質の再生はタンパク質損失をほぼ取り除き、初回にタンパク質損失を伴わずにタンパク質結合毒素を除去する。再生タンパク質の再循環はコロイド浸透圧もやはり供給し、流体の除去に要するグルコースの量を削減または除去する。いったん開始されると、必要とされる限り(理論的に永久に)透析液がSPDから再生されるので本発明は追加の新鮮な透析液を必要としない。付け加えると、再生される透析液は生理学的pH(7.4)を有し、正常な身体の塩基(重炭酸塩)を含む。両方が正常な身体の生理を維持すること、および腹膜を保護することに有利であると考えられる。現在入手可能な透析液は酸性であって乳酸塩を含み、これらの両方が腹膜にとって有害であることが示されている。
【0043】
カテーテル110Aと110Bとの間の部品のすべてを含む処理ライン全体が小型化および装用性のためにさえ好都合に設計されることが特に企図される。したがって例えば、使用者が交換することのできる吸着剤カートリッジを除く処理ライン全体が、重さが8kgを超えない、さらに好ましくは4kgを超えない、最も好ましくは2kgを超えないように作られてもよい。
【0044】
図2において、吸着剤アセンブリ40は順次流れの順序でフィブリンフィルタ41、精製層42、結合ウレアーゼ双3、リン酸ジルコニウム層44、酸化ジルコニウム水和物層45、活性炭層46、pHを安定させるためのバッファ層47、中分子吸着剤の層48、最後に粒子フィルタ49を含む。これらの層のうちの1つ以上が場合によっては除去されてもよく、単一のアセンブリの層の中にあるように示された実に様々な材料が別々のモジュールまたはカートリッジに収納され、および/またはここに明確に示される順序と異なる順序で含まれてもよいことを当業者は理解する。
【0045】
好ましいフィブリンフィルタは他の粒子状物質(例えば粘液、半固体、および固体)をろ過して除くことが可能である。
【0046】
特に興味深いことは、活性の大幅な損失を伴うことなく容易な滅菌を可能にし、被処理流体中のタンパク質による置換に対する抵抗性を酵素に与える様式で吸着剤アセンブリ内のウレアーゼがマトリックス上に固定されることである。固定化は、ウレアーゼがファンデルワールス力よりも大きい力で基材に取り付けられることを意味すると本願明細書では定義され、おそらく基材へのウレアーゼの共有結合および/またはイオン結合を含めたどのような数の方式でも起こり得る。
【0047】
中分子吸着剤の層48はどのような適切な材料または材料の組み合わせを含むことも考え得る。中分子の尿毒症毒素および中分子を除去するための材料の概念はWinchester,James F.らのThe Potential Application of Sorbents in Peritoneal Dialysis,Contributions to Nephrology,Vol.150,336−43,2006;Vanholder,R.らのReview On Uremic Toxins,Classification,Concentration,And Interindividual Variability,Kidney International,Vol.63,1934−1943,2003;およびChiu AらのMolecular adsorbent recirculating system treatment for patients with liver failure:Hong Kong experience,Liver International,Vol.26,695−702,2006で検討されている。
【0048】
吸着剤アセンブリ40は多くの異なるサイズで供給されることが可能である。殆どの例において、個々のアセンブリが吸着剤の少なくとも100グラムを含むことが企図され、意図される用途に応じてさらに大きいサイズであり、本明細書ではすべての重量は乾燥重量で与えられる。例えば、携帯型ユニットのための吸着剤アセンブリは重さが2.0kgを超えない、さらに好ましくは1.5kgを超えないと見込まれる。これは重さが約2.5kgである通常の血液透析用吸着剤アセンブリと有利に比較し得る。装用性のユニットについては、吸着剤アセンブリは重さが2kgを超えない、さらに好ましくは1kgを超えない、最も好ましくは0.5kgを超えない可能性が高い。
【0049】
吸着剤アセンブリ40は多くの異なる形状で供給されることもやはりあり得る。携帯型ユニットについては、この形状は特に重要ではないが、装用性のユニットについては、ベルトでのアセンブリの携行を容易にするためにアセンブリが比較的平坦であり、可能であれば一方の側でわずかに凹面でさえあることが企図される。
【0050】
図3において、人工腎臓1のバルブの操作およびポンプの作動/動作停止、ならびに本発明のシステムおよび方法の全体的な制御は様々な操作/処理が自動的に起こるようにマイクロコンピュータ200によって制御されることが好都合である。とりわけこのような制御は所望の範囲内の選択成分の濃度を維持し、可能であればある特定の状況が検出されるとユニットを遮断するモニタおよびフィードバックループを含む。
【0051】
この目的のためにマイクロプロセッサ200はナトリウムモニタ202および212から信号を受信し、フィードバックループ204および214を通じてイオン交換装置のバルブ33および52をそれぞれ制御することで比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分の平均ナトリウム濃度を少なくとも1時間の期間にわたって望ましい範囲内に維持してもよい。使用者/患者の中に再導入されるいずれの流体中の好ましいナトリウムの濃度も135−145meq/l、最も好ましくは140meq/lである。
【0052】
同様に、マイクロプロセッサ200はpHモニタ222から信号を受信し、フィードバックループ224を通じてポンプ32を制御することでpHを少なくとも1時間の期間にわたって望ましい範囲内に維持してもよい。現在好ましいpHは6.5と8の間、最も好ましくは約7.4である。
【0053】
マイクロプロセッサ200はまた、比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分のアンモニア濃度が2mg%などといった望ましい上限よりも大きくなると作用を引き起こす信号をアンモニア検出器232およびフィードバックループ234から受信することが好ましい。最も考え得る作用は、アンモニアの存在は吸着剤アセンブリが消耗されて交換されなければならないことを意味するので、ポンプ14および99に動作を停止するように命令することによってシステムを遮断すること、および/または警報300を鳴らすことである。システムの遮断はいずれの適切な方法で達成されてもよい。
【0054】
マイクロプロセッサ200はまた、グルコース検出器242から信号を受信し、フィードバックループ244を通じてポンプ82を制御することで平均グルコース濃度を少なくとも1時間の期間にわたって望ましい範囲内に維持してもよい。現在好ましいグルコース濃度は1.5と4.25g/dlとの間、最も好ましくは約2g/dlである。使用者/患者がグルコース濃度を手動で少なくともいくらかの量で制御できることもやはり企図される。
【0055】
またさらに、マイクロプロセッサ200はカリウム、カルシウム、またはマグネシウム検出器(まとめて)252から信号を受信し、フィードバックループ254を通じてポンプ92を制御することでこれらの元素のうちの1つ以上の平均濃度を少なくとも1時間の期間にわたって望ましい範囲内に維持してもよい。現在望ましいカリウム濃度は0と4meq/Lとの間、最も好ましくは約1meq/Lである。現在望ましいカルシウム濃度は2.5と4meq/Lとの間、最も好ましくは約3.5meq/Lである。現在望ましいマグネシウム濃度は1と3meq/Lとの間、最も好ましくは約2.5meq/Lである。
【0056】
電力源400は人工腎臓およびこれに関連する電子機器に電力供給する電力源である。これは携帯型ユニットについては線電流であり、装用性のユニットについては使用者が交換することのできる再充電可能なバッテリーパックである可能性が最も高い。いずれにしても、携帯型ユニットでさえ無停電電力供給源の機能を果たすバッテリーパックを含むことが有利であると見込まれるので、図3の電力源はバッテリーとして示されている。電力源400は少なくとも5時間、さらに好ましくは少なくとも8時間、なおもさらに好ましくは少なくとも12時間連続して処理ラインを動作させるための十分な電力を有することが好ましい。いくつかのケースでは少なくとも15時間、他のケースでは少なくとも24時間のバッテリー寿命を有することが望ましいと考えられる。これらの時間期間の論理的根拠は、装用性のユニットを備えた使用者/患者は日中の間のこれまでの約4時間および夜眠っている間の最大10時間で吸着剤アセンブリを交換する可能性が高いということである。他のケースでは、使用者/患者が外出中である、またはさらに長いバッテリー寿命が望ましいと考え得るいくつかの他の事情を有することもあり得る。
【0057】
本発明の主題事項の実施形態は先行技術を上回る数多くの恩典を有し、例えば以下を含む。
1)相互接続されたモジュールからの再生用アセンブリの製造は(1つの単一ユニット内に収納されてもいくつかの異なるユニットに収納されても)設計者が(a)携帯性、美学的品質、および安全性を最適化すること、(b)透析液の再生および流れの水理学を最適化すること、および(c)再生能力および各モジュールの機能寿命を最大にすることを可能にする。
2)1時間当たり流体の2−4リットルの再循環が、現在の間欠法における各々の治療のために現在使用されている10−20リットルよりもはるかに優れた毒素の除去を提供することが可能である。
3)透析液の再循環は新鮮な透析液の等しい量を購入して消費するよりもはるかに安価である。
4)いったん治療が開始されると、追加的な透析液の供給の必要性がなく、したがって文献のいくつかで使用される用語のように「無水」である。
5)SPD内のタンパク質は捨てられないで保存され、したがって免疫事象を全く引き起こすことなくタンパク質結合毒素の除去を促進し、コロイド浸透圧を供給する。
6)現在入手可能な腹膜透析循環装置で必要とされるような新鮮な透析液供給源への接続を削除するなどによって接続の数が大幅に削減されることが可能である。
7)特定のタンパク質の除去のために特注で作られたモジュールの組み入れを通じて、企図される実施形態は有害で望ましくないタンパク質の血漿分離交換を提供することが可能である。
8)ナトリウム、グルコース、栄養素、ホルモン、抗生物質、および他の物質の濃度が治療中に、副産物の分解を全く伴うことなくインライン式モニタを使用してすべて制御されることが可能である。
9)再生される腹膜透析液は、タンパク質含有量に加えて、正常なpHを示す独自の特徴を有し、乳酸塩または他の代謝陰イオンではなく重炭酸塩を含む。重炭酸塩の組成、ナトリウム、pH、および他の陽イオンおよび陰イオンは電解質、無機物、および酸−塩基の異常を含めた疾病の管理のための特定の処方に従って単独または組み合わせで変えられることが可能である。
10)本発明の自動化された携帯型人工腎臓は専門の設備資産、医療関係者および必須の患者労務に関して要求の削減を可能にする(それによって患者治療の疲労を避ける。)。永続的な治療スペースが必要とされず、医療および技術相談が規則的基準、例えば毎月1回にスケジュール化されることが可能である。
11)患者の関与は主に毎夜の、または4時間毎の装用性の交換カートリッジおよびグルコースおよび富化モジュールによる携帯型人工腎臓の据え付けにある。
【0058】
このようにして、腹膜透析装置、システムおよび方法の特定の実施形態および応用が開示されてきた。しかしながら、既に述べられた形態に加えてさらに多くの改造形態が本願明細書における発明の概念から逸脱することなく可能であることは当業者に明らかであるはずである。したがって本発明の主題事項は添付の特許請求の精神以外に制限されることはない。さらに、本明細書および特許請求の範囲の両方の解釈において、すべての用語は文脈と一致する最も広範に考え得る方式で解釈されるべきである。特に、「含む」および「含んでいる」という用語は包括的な方式で素子、部品、または工程に言及していると解釈されるべきであり、参照された素子、部品、または工程が存在すること、利用されること、または明確に参照されていない他の素子、部品、または工程と組み合わされることが考え得ることを示している。明細の主張がA、B、C...およびNから成る群から選択される少なくとも何か1つに言及する場合、この文章はこの群から1つの要素のみを要求すると解釈されるべきであって、Aに加えてN、またはBに加えてNなどではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】患者の腹膜腔に連結され、透析液の間欠的な空乏化および再導入に適した携帯型装置を示す概略図である。
【図2】図1の吸着剤アセンブリの構造を示す断面図である。
【図3】図1の装置の中の流体の流れに関するインラインのモニタリングおよび他の制御部を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の腹膜腔からの流体の流れを搬送する第1の流体ライン、
前記流体の流れを比較的タンパク質を豊富に含む流れと比較的タンパク質を含まない流れに分ける分離装置であって、前記比較的タンパク質を豊富に含む流れが少なくともいくらかの時間的期間にわたって平均で前記流体の流れの少なくとも15体積%である分離装置、
前記比較的タンパク質を豊富に含む流れのうちの少なくともいくらかを処理して改質透析液の流れを作り出す処理ライン、および
前記改質透析液の流れのうちの少なくともいくらかを前記腹膜腔の中に導入する第2の流体ライン、
を含むシステム。
【請求項2】
比較的タンパク質を豊富に含む流れが少なくともいくらかの期間にわたって平均で使用済みの透析液の流れの少なくとも40体積%である、請求項1のシステム。
【請求項3】
比較的タンパク質を豊富に含む流れが少なくともいくらかの期間にわたって平均で使用済みの透析液の流れの少なくとも90体積%である、請求項1のシステム。
【請求項4】
分離装置が中空糸フィルタを含む、請求項1のシステム。
【請求項5】
比較的タンパク質を豊富に含む流れ対比較的タンパク質を含まない流れの比に少なくとも一時的に影響を与えるポンプをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項6】
処理ラインが、タンパク質を豊富に含む流れのうちの少なくともいくらかから少なくとも1つの毒素を取り除く吸着剤システムを含む、請求項1のシステム。
【請求項7】
吸着剤システムのうちの少なくともいくらかが、ファンデルワールス力よりも大きい力で基材上に固定されている酵素を含む、請求項6のシステム。
【請求項8】
吸着剤システムが、少なくとも100グラムの吸着剤を有する、使用者が交換することのできるアセンブリを含む、請求項1のシステム。
【請求項9】
処理ラインが、比較的タンパク質を含まない流れの少なくとも一部分におけるH、OH、CO−−、およびHCOのうちの少なくとも1つの濃度を変える陽イオン交換装置および陰イオン交換装置のうちの少なくとも一方を含む処理装置を含む、請求項1のシステム。
【請求項10】
処理ラインが、比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分に対して動作するように配置されたガス抽出装置を含む、請求項1のシステム。
【請求項11】
処理ラインが、前記比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分に対して動作するように配置された滅菌装置を含む、請求項1のシステム。
【請求項12】
システムの特性を測定する少なくとも1つのモニタ、および前記特性が望ましい範囲の外側に出ると信号機を動作させる回路をさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項13】
比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分の平均のナトリウム濃度を少なくとも1時間の期間にわたって望ましい範囲内に維持するナトリウムモニタおよびフィードバックループをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項14】
比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分の平均のpHを少なくとも1時間の期間にわたって望ましい範囲内に維持するpHモニタおよびフィードバックループをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項15】
比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分のアンモニア濃度が2mg%よりも大きくなると作用を引き起こすアンモニア検出器およびフィードバックループをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項16】
グルコース添加モジュール、およびカリウム、カルシウム、およびマグネシウムのうちの少なくとも2つを比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分に共同して添加する少なくとも1つの富化モジュールをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項17】
比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分からの特定のタンパク質の除去を対象とするユニットをさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項18】
比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分に対して動作する超音波振動装置をさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項19】
第2の流体ラインが前記第1の流体ラインと同時に動作可能である、請求項1のシステム。
【請求項20】
使用者が交換することのできる吸着剤カートリッジを除いた処理ラインが5kgを超えない乾燥重量を有する、請求項1のシステム。
【請求項21】
使用者が交換することのできる吸着剤アセンブリが5kgを超えない乾燥重量を有する、請求項1のシステム。
【請求項22】
使用者が交換することのできる吸着剤アセンブリを除いた処理ラインが2kgを超えない乾燥重量を有する、請求項1のシステム。
【請求項23】
使用者が交換することのできる吸着剤アセンブリが2kgを超えない乾燥重量を有する、請求項1のシステム。
【請求項24】
処理ラインが、比較的タンパク質を豊富に含む流れの少なくとも一部分に対して動作するように配置された疎水性/親水性の膜を含む、請求項1のシステム。
【請求項25】
少なくとも8時間連続して処理ラインを動作させるために十分な電力源をさらに含む、請求項1のシステム。
【請求項26】
人の腹膜腔から導き出される実質的に血液を含まない流体を処理する方法であって、
前記実質的に血液を含まない流体を比較的タンパク質を豊富に含む流体と比較的タンパク質を含まない流体に分けること、
少なくとも実質的に固定されたウレアーゼを有する吸着剤で前記比較的タンパク質を豊富に含む流体を処理して精製された再生流体を作り出すこと、および
前記精製された流体のうちの少なくともいくらかを前記腹膜腔の中に戻し入れること、を含む方法。
【請求項27】
再導入する工程が分ける工程と同時に起こる、請求項26の方法。
【請求項28】
再導入する工程が分ける工程と断続して起こる、請求項26の方法。
【請求項29】
フィルタを使用して、比較的タンパク質を豊富に含む流体から比較的タンパク質を含まない流体をろ過して除くことをさらに含む、請求項26の方法。
【請求項30】
(a)精製された流体中の陽イオン、(b)精製された流体中の陰イオン、(c)ガス、および(d)精製された流体中のグルコースレベルのうちの少なくとも2つを制御することをさらに含む、請求項26の方法。
【請求項31】
実質的に血液を含まない流体のうちの少なくとも80%を4時間の期間にわたって精製された流体として人に再循環させることをさらに含む、請求項26の方法。
【請求項32】
前記実質的に血液を含まない流体のうちの少なくとも90%を8時間の期間にわたって前記精製された流体として再循環させることをさらに含む、請求項26の方法。
【請求項33】
精製された流体のうちの少なくとも20リットルを10時間の期間にわたって供給するために十分な速度で、実質的に血液を含まない流体を精製された流体として再循環させることをさらに含む、請求項26の方法。
【請求項34】
精製された流体のうちの少なくとも48リットルを24時間の期間にわたって供給するために十分な速度で、実質的に血液を含まない流体を精製された流体として再循環させる工程をさらに含む、請求項26の方法。
【請求項35】
処理する工程が連続した7日の期間中に少なくとも40時間起こる、請求項26の方法。
【請求項36】
処理する工程が連続した7日の期間中に少なくとも126時間起こる、請求項26の方法。
【請求項37】
処理する工程を装置内、および前記装置を装用する人に具現化することをさらに含む、請求項26の方法。
【請求項38】
逆浸透ユニットおよびイオン交換装置のうちの少なくとも一方を通じて比較的タンパク質を含まない流体の少なくとも一部分を処理し、および次いで結果として得られる生成物を、比較的タンパク質を豊富に含む流体を含む流れの中に添加することをさらに含む、請求項26の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−525071(P2009−525071A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552507(P2008−552507)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/002664
【国際公開番号】WO2007/089855
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(507127440)ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイー・オブ・カリフオルニア (4)
【出願人】(508229390)アメリカ合衆国 (2)
【Fターム(参考)】