説明

膜反応装置

【課題】熱交換効率が高く、その結果淡水の製造効率が高い膜蒸留装置を提供する。
【解決手段】第1枠体3の第1流通室3aには、上下方向に延びる第1隔壁部9を設ける。これにより、第1流通室3aの内部に上下方向へ互いに平行に延びる複数の第1通路3hを形成する。第2枠体5の第2流通室5aには、上下方向に延びる第2隔壁部11を設ける。これにより、第2流通室5aの内部に上下方向へ互いに平行に延びる複数の第2通路5hを形成する。第1通路3hには、高温海水を下端部から上端部に向かって流す。第2通路5hには、低温淡水を上端部から下端部に向かって流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器、電気透析装置及び膜蒸留装置等の膜反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、膜蒸留装置は、特許文献1に記載されているように、第1枠体、第2枠体及び蒸留膜(膜体)を備えている。図18は、そのような膜蒸留装置の概略構成を示す。膜蒸留装置の第1枠体Aは、平面視長方形の枠状をなしており、その内部が第1流通室A1になっている。第1流通室A1を構成する内面には、第1流入口A2及び第1流出口A3が形成されている。第1流入口A2及び第1流出口A3は、第1流通室A1の二つの隅部を結ぶ対角線L1上の一端部と他端部とにそれぞれ配置されている。第1流入口A2には、原料水たる高温海水が供給される。そして、そこから第1流通室A1に流入する。第1流通室A1に流入した海水は、図18において実線で示すように、扇状に広がりながら対角線L1の他端側に向かって流れた後、狭まりながら対角線L1に沿って流れる。そして、第1流出口A3から流出する。
【0003】
第1枠体Aの一方の面には、蒸留膜(図示せず)が第1流通室A1に臨んで設けられている。この蒸留膜は、気体の透過は許容するが、液体及び固体の透過を阻止する。したがって、高温の海水が第1流通室A1内を流れるときには、高温の海水から発生する水蒸気が蒸留膜を透過して第1流通室A1から外部に出る。
【0004】
第2枠体Bは、第1枠体Aと同一形状及び同一寸法を有しており、第1枠体Aと同一姿勢で配置されている。しかも、第2枠体Bは、第1枠体Aと蒸留膜を介して対向するよう、図1において第1枠体Aの裏側に配置されている。第2枠体Bには、第1枠体Aの第1流通室A1、第1流入口A2及び第1流出口A3に対応する第2流通室B1、第2流入口B2及び第2流出口B3が形成されている。第2流入口B2及び第2流出口B3は、第1流入口A2及び第1流出口A3が配置された対角線L1と交差する他の対角線L2上に配置されている。
【0005】
第2流通室B1には、冷却水たる低温の海水が第2流入口B2から流入する。第2流通室B1内に流入した海水は、図18において波線で示すように、扇状に広がりながら対角線L2に沿って流れ、その後狭まりながら対角線L2に沿って流れる。そして、第2流出口B3から流出する。低温の海水は、第2流通室B1内を流れるときに、蒸留膜を透過した水蒸気を冷却して凝縮させる。これによって、淡水が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−197205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の膜蒸留装置においては、高温海水が対角線L1に沿って流れ、低温海水が対角線L2に沿って流れるので、第1流通室A1及び第2流通室B1のうち、両対角線L1,L2が交差する交差部及びその近傍を含む部分(円Cで囲まれる部分)では、熱交換が行われるが、円Cの外側に位置する部分では、熱交換がほとんど行われない。しかも、円C内の部分においても、高温海水と低温海水とが、交差する方向に流れており、互いに逆方向に流れていない。つまり、対向流になっていない。このため、熱交換効率が悪く、淡水の製造効率が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、この発明に係る膜反応装置は、内部に第1流通室を有する第1枠体と、上記第1枠体の一端面に設けられて上記第1流通室を覆う膜体と、内部に第2流通室を有する第2枠体とを備え、上記第1流通室と上記第2流通室とが上記膜体を介して互いに対向するよう、上記第1枠体と上記第2枠体とが上記膜体を介して互いに対向して配置され、上記第1枠体には、上記第1流入室の内面にそれぞれ開口する第1流入口及び第1流出口が形成され、上記第2枠体には、上記第2流通室の内面にそれぞれ開口する第2流入口及び第2流出口が形成され、高温流体が、上記第1流入口から上記第1流通室に流入し、上記第1流入室内を流れて上記第1流出口から流出し、上記高温流体より低温である低温流体が、上記第2流入口から上記第2流通室に流入し、上記第2流通室内を流れて上記第2流出口から流出する膜反応装置において、上記第1流通室の内部にその一端側から他端側へ向かって延びる第1隔壁部が形成されることにより、上記第1流通室の内部が互いに平行に延びる複数の第1通路に区画され、上記第2流通室の内部に、上記第1隔壁部と平行に延びる第2隔壁部が形成されることにより、上記第2流通室の内部が上記第1通路と平行に延びる複数の第2通路に区画され、上記第1通路の長手方向の一端部及び他端部に上記第1流入口及び上記第1流出口がそれぞれ開口させられ、上記第1流入口が開口する上記第1通路の一端部と同一側に位置する上記第2通路の端部に上記第2流出口が開口させられ、上記第1流出口が開口する上記第1通路の他端部と同一側に位置する上記第2通路の端部に上記第2流入口が開口させられていることを特徴としている。
この場合、上記第1隔壁部の長手方向の両端部が上記第1流通室の内面に対してそれぞれ離間させられ、上記第1流通室の内部には、周縁部が上記第1枠体の内周部に固定された第1網体が設けられ、この第1網体に上記第1隔壁部が設けられ、上記第2隔壁部の長手方向の両端部が上記第2流通室の内面に対してそれぞれ離間させられ、上記第2流体室の内部には、周縁部が上記第2枠体の内周部に固定された第2網体が設けられ、この第2網体に上記第2隔壁部が設けられていることが望ましい。
上記第1流通室の上記第1流入口が開口する端部には、上記第1通路の長手方向と直交する方向に延び、かつ上記第1通路の一端部に連通した第1流入路が形成され、上記第1流通室の上記第1流出口が開口する他端部には、上記第1流入路と平行に延び、かつ上記第1通路の他端部に連通した第1流出路が形成され、上記第1流入路及び上記第1流出路の長手方向において互いに逆側に位置する端部に上記第1流入口及び上記第1流出口がそれぞれ開口させられ、上記第2流通室の上記第2流入口が開口する端部には、上記第1流入路と平行に延び、かつ上記第2通路の一端部に連通した第2流入路が形成され、上記第2流通室の上記第2流出口が開口する端部には、上記第2流入路と平行に延び、かつ上記第2通路の他端部に連通した第2流出路が形成され、上記第1流入口と逆側に位置する上記第2流入路の端部に上記第2流入口が開口させられ、上記第1流出口と逆側に位置する上記第2流出路の端部に上記第2流出口が開口させられていることが望ましい。
また、この発明に係る膜蒸留装置は、請求項1〜3に記載の膜反応装置において、上記高温流体が水を溶媒とする高温溶液であり、上記膜体が、上記高温溶液の水蒸気の透過を許容し、かつ上記高温溶液の他の構成物質の透過を阻止する蒸留膜であり、上記蒸留膜を透過した水蒸気が上記冷却流体によって冷却されて液体の水とされることを特徴としている。
さらに、この発明に係る膜反応装置の製造方法は、請求項2に記載の膜反応装置を製造するための製造方法であって、上記第1流通室の内部に周縁部が上記第1枠体の内周部に固定された第1網体を設け、この第1網体に上記第1隔壁部を設け、上記第2流体室の内部に周縁部が上記第2枠体の内周部に固定された第2網体を設け、この第2網体に上記第2隔壁部を設けることを特徴とすしている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を有するこの発明に係る膜反応装置によれば、第1通路内を流れる高温流体と第2通路内を流れる低温流体とが互いに平行に、しかも互いに逆向きに流れる。つまり、高温流体と低温流体とは対向流となって流れる。したがって、熱交換効率を向上させることができる。特に、膜反応装置として膜蒸留装置を用いた場合には、淡水の製造効率を向上させることができる。
また、この発明に係る膜反応装置の製造方法によれば、第1、第2隔壁部を第1、第2網体に設けることにより、第1、第2隔壁部を第1、第2枠体からそれぞれ離間した状態で設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明の第1実施の形態を示す平面図である。
【図2】図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。
【図3】図3は、図1のY−Y線に沿う断面図である。
【図4】図4は、図2のX−X線に沿う断面図である。
【図5】図5は、図2のY−Y線に沿う断面図である。
【図6】図6は、この発明の第2実施の形態を示す平面図である。
【図7】図7は、図6のX−X線に沿う断面図である。
【図8】図8は、図6のY−Y線に沿う断面図である。
【図9】図9は、図7のX−X線に沿う断面図である。
【図10】図10は、図7のY−Y線に沿う断面図である。
【図11】図11は、この発明の第3実施の形態を示す平面図である。
【図12】図12は、図11のX−X線に沿う断面図である。
【図13】図13は、図11のY−Y線に沿う断面図である。
【図14】図14は、図11のZ−Z線に沿う断面図である。
【図15】図15は、図12のX−X線に沿う断面図である。
【図16】図16は、図13のX−X線に沿う断面図である。
【図17】図17は、図14のX−X線に沿う断面図である。
【図18】図18は、従来の膜蒸留装置の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図5は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態は、この発明を膜反応装置の一例としての膜蒸留装置1に適用したものである。勿論、この発明は、膜蒸留装置1以外の膜反応装置、例えば熱交換器や電気透析装置にも適用可能である。
【0012】
まず、膜蒸留装置1の構成及び作用を概略的に説明すると、図2及び図3に示すように、膜蒸留装置1は、上板2、上第1枠体(第1枠体)3、上蒸留膜(蒸留膜)4、第2枠体5、下蒸留膜(蒸留膜)4′、下第1枠体(第1枠体)3′及び下板6を有している。これらの部材2〜6は、図2及び図3において上から下(以下、この実施の形態において上下は、特に断わらない限り、図2及び図3における上下を意味するものとする。)に向かって順次重ねられている。
【0013】
上第1枠体3は、その内部に第1流通室3aを有している。この第1流通室3aには、上板2に設けられた第1ポートP1から80°C程度に加熱された高温海水(溶液)が流入する。第1流通室3aに流入した高温海水は、第1流通室3aを通過した後、上板2に設けられた第2ポートP2から外部に排出される。第1流通室3aには、水を溶媒とする溶液であれば、海水以外のものを流入させてもよい。
【0014】
第2部材5は、その内部に第2流通室5aを有している。この第2流通室5aには、上板2に設けられた第3ポートP3から低温の淡水が流入する。第2流通室5aに流入した淡水は、第2流通室5aを通過した後、上板2に設けられた第4ポートP4から外部に流出する。
【0015】
下第1枠体3′は、第1枠体3と同様に構成されており、その内部に第1流通室3aを有している。第1流通室3a内には、第1ポートP1から高温海水が流入し、その内部を通過した後、第2ポートP2から外部に流出する。
【0016】
なお、第1〜第4ポートP1〜P4は、上板2の異なる箇所にそれぞれ配置されている。特に、この実施の形態では、上板2の4つの隅部にそれぞれ配置されている。すなわち、図1に示すように、第1ポートP1は左下に位置する隅部に配置され、第2ポートP2は右上に位置する隅部に配置され、第3ポートP3は左上に位置する隅部に配置され、第4ポートP4は右下に位置する隅部に配置されている。
【0017】
第1流通室3a,3a内を高温海水が流れるときには、高温海水から発生する水蒸気が上下の蒸留膜4,4′をそれぞれ透過して第2流通室5a内に入り込む。第2流通室5a内に入り込んだ水蒸気は、第2流通室5a内を流れる淡水によって直ちに冷却されて凝縮し、淡水と一緒に流れる。したがって、第4ポートP4から流出する淡水の量は、第3ポートP3から第2流通室5a内に流入する淡水の量より多くなっており、その増量分が膜製造装置1によって製造された淡水として取り出される。
【0018】
増量分以外の淡水は、冷却手段(図示せず)によって再度冷却された後、第3ポートP3に戻される。一方、第2ポートP2から流出した高温海水は、取り出された淡水の分だけ第1ポートP1から第1流通室3a内に流入した高温海水の量より少なくなっており、その減少分だけ新たな海水が追加され、その後加熱手段(図示せず)によって再度加熱されて第1ポートP1に戻される。第2ポートP2から流出した高温海水については、再度利用することなく廃棄してもよい。ただし、その場合には、高温海水を廃棄する前にその熱を利用して他の新たな海水を加熱することが望ましい。そして、廃棄すべき高温海水によって加熱された新たな海水は、加熱手段(図示せず)によって所定の温度までさらに加熱された後、第1ポートP1に送られる。
【0019】
次に、上記概略構成及び作用を有する膜蒸留装置1の詳細な構成を説明する。
上板2は、下板6と共に膜蒸留装置1全体の形状を一定の形状に維持するためのものであり、剛性の高い樹脂又は海水に侵されない金属(チタン若しくは鉄などにテフロン(登録商標)コートなどの防錆処理したもの)その他の材料によって平板状に形成されている。特に、この実施の形態では、上板2を上下方向(第1及び第2枠体3,4の対向方向)から見たときの形状、つまり平面視形状が長方形に形成されている。上板2の平面視形状は、他の形状にしてもよい。また、上板2は、第1流通室3a内を流れる高温海水その他の高温の溶液に接触する。そこで、上板2は、それらの溶液に対して耐食性を有する材料で構成したり、あるいは第1流通室3aに臨む上板2の下面に溶液に対する耐食性が高く、かつシール性に優れた材料からなる被覆層を設けたりすることが望ましい。
【0020】
上第1枠体3は、その内部に上下に開口する第1流通室3aが形成されることによって枠状をなしており、平面視において上板2と同一の外形状を有している。しかも、第1枠体3は、上板2と同一の姿勢で配置されている。したがって、第1枠体3の上面全体が上板2の下面に接触している。これにより、第1流通室3aの上端開口部が閉じられている。第1枠体3は、その第1流通室3a内を高温海水等の溶液が流れることから、溶液に対する耐食性に優れている材料によって構成することが望ましく、樹脂その他の材料によって構成されている。特に、この実施の形態では、シール材としてのパッキンを製造する際に用いられるゴムによって第1枠体3が構成されている。なお、上第1枠体3の厚さは、例えば1.5mm程度であり、図面上は、第1枠体3の厚さが、その長さ及び幅に対して誇張されている。第1枠体3は、必ずしもその平面視形状を上板2と同一にする必要がなく、第1流通室3aが上板2によって遮蔽される限り、上板2と異なる形状にしてもよい。また、第1流通室3aは、その上端部を上第1枠体3の上面に開口させることなく、閉じた状態で形成してもよい。
【0021】
第1枠体3の第1流通室3aは、平面視長方形をなしており、その長手方向を第1枠体3の長手方向と同一方向に向けて配置されている。上記のように、第1流通室3aの上端開口部は上板2によって遮蔽されている。一方、第1流通室3aの下側の開口部は、上蒸留膜4によって遮蔽されている。この結果、第1流通室3aが外部に対して密封されている。
【0022】
上蒸留膜4及び下蒸留膜4′は、気体の透過を許容し、液体及び固体の透過を阻止するという性質を有する透過膜、例えば多孔質の膜で構成されている。蒸留膜4,4′の材料としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂が用いられる。蒸留膜4,4′は、互いに同一形状、同一寸法を有しており、第1枠体3と同一の平面視形状に形成されている。したがって、上蒸留膜4は、第1枠体3の下面全体及び第2枠体5の上面全体に接触させられている。一方、下蒸留膜4′は、第2枠体5の下面全体及び下第1枠体3′の上面全体に接触させられている。蒸留膜4,4′の厚さは、通常、10〜500μm程度であるが、図面上では蒸留膜4,4′の厚さが、その長さ及び幅に対して誇張されている。
【0023】
第2枠体5は、その内部に上下に開口する第2流通室5aが形成されることによって枠状をなしており、平面視において上板2と同一の外形状を有している。しかも、第2枠体5は、第1枠体3と同一の姿勢で配置されている、したがって、第2枠体5は、その上面全体が第1枠体3の下面全体と上蒸留膜4を介して上下に対向しており、第2枠体5の上面全体が、第1枠体3の下面全体に上蒸留膜4を介して接触している。第1枠体5の下面には、下蒸留膜4′が設けられている。第2枠体5の上下の面に上蒸留膜4及び下蒸留膜4′がそれぞれ設けられているので、第2枠体5は、高温海水等の溶液に接触することがなく、淡水が接触するだけである。したがって、第2枠体5は、海水等の溶液に対する耐食性に優れた材料で構成する必要がないが、この実施の形態では第1枠体3を構成する材料と同一の材料によって構成されている。つまり、ゴムによって構成されている。第2枠体5の厚さは、例えば1.5mm程度であるが、図面上は、その長さ及び幅に対して誇張されている。
【0024】
第2枠体5の第2流通室5の上下の開口部は、上蒸留膜4及び下蒸留膜4′によって閉じられている。第2流通室5aは、第1流通室3aと同一の平面視形状に形成されている。しかも、第2流通室5aは、平面視したとき、第1流通室3aと同一位置に同一姿勢で配置されている。したがって、第2流通室5a全体が、第1流通室3a全体と上蒸留膜4(下蒸留膜4′)を介して上下に対向している。第2流通室5a全体と第1流通室3a全体とが対向する限り、第1枠体3(3′)と第2枠体5とは、互いに異なる外形状に形成してもよい。
【0025】
下板6は、上記のように、上板2と共に、膜蒸留装置1全体の形状を一定の形状に維持するものであり、上板2と同様の材料によって構成されている。しかも、下板5は、平面視形状が上板2と同一形状に形成されている。この結果、この実施の形態の膜蒸留装置1においては、上板2、上第1枠体(第1枠体)3、上蒸留膜(膜体)4、第2枠体5、下蒸留膜(膜体)4′、下第1枠体(第1枠体)3′及び下板6の平面視における外形状が互いに同一形状とされている。しかし、必ずしもそのように構成する必要がなく、互いに異なる外形状にしてもよい。
【0026】
上記上板2、上第1枠体3、上蒸留膜4、第2枠体5、下蒸留膜4′、下第1枠体3′及び下板6は、その順に重ねられており、互いに隣接する部材どうしが接着固定されている。これによって、膜蒸留装置1全体が一定の形状に維持されている。上板2〜下板6までの各部材は、隣接するものどうしを接着固定することなく、上板2から下板6まで貫通する貫通孔(図示せず)を複数形成し、各貫通孔にボルト(図示せず)を挿通するともに、このボルトにナット(図示せず)を螺合させて締め付けることにより、各部材を相互に固定してもよい。
【0027】
図1及び図4に示すように、第1流通室3aを区画する第1枠体3(3′)の内面には、第1流入凹部(第1流入口)3b及び第1流出凹部(第1流出口)3cがそれぞれ形成されている。第1流入凹部3bは、第1流通室3aを区画する第1枠体3(3′)の4つの内面のうちの図4において左側((以下、この実施の形態において、左右は、図4及び図5における左右を意味するものとする。))に位置する内面(以下、左内面という。)3dに形成されている。しかも、第1流入凹部3bは、平面視において第1ポートP1が配置された隅部と同一の隅部に位置するよう、左内面3dのうちの図4における上端部に配置されている。図2に示すように、第1流入凹部3bは、上板2の上面から下第1枠体3′まで延びる第1流入孔7Aを介して第1ポートP1に連通している。したがって、第1ポートP1に供給された高温海水は、第1流入側連通孔7A及び第1流入凹部3bを介して第1流通室3aに流入する。
【0028】
図1及び図4に示すように、第1流出凹部3cは、第1流通室3aを区画する第1枠体3(3′)の4つの内面のうちの右内面3eに形成されている。しかも、第1流出凹部3cは、平面視において第2ポートP2が配置された隅部と同一の隅部に位置するよう、右内面3eのうちの図4における下端部に配置されている。図3に示すように、第1流出凹部3cは、上板2の上面から下第1枠体3′まで延びる第1流出孔7Bを介して第2ポートP2に連通している。したがって、第1流通室3aから第1流出凹部3cに入り込んだ高温海水は、第1流出孔7Bを通って第2ポートP2に至り、さらに外部に流出する。
【0029】
図1及び図5に示すように、第2流通室5aを区画する第2枠体5の内面には、第2流入凹部(第2流入口)5b及び第2流出凹部(第2流出口)5cがそれぞれ形成されている。第2流入凹部5bは、第2流通室5aを区画する4つの内面のうちの右内面に配置されている。しかも、第2流入凹部5bは、平面視において第3ポートP3が配置された隅部と同一の隅部に位置するよう、右内面の図5における上端部に配置されている。図2に示すように、第2流入凹部5bは、上板2の上面から第2枠体5まで延びる第2流入孔7Cを介して第3ポートP3に連通している。したがって、第3ポートP3に供給された淡水は、第2流入孔7C及び第2流入凹部5bを介して第2流通室5aに流入する。
【0030】
図1及び図5に示すように、第2流出凹部5cは、第2枠体5の4つの内面のうちの左内面5eに形成されている。しかも、第2流出凹部5cは、平面視において第4ポートP4が配置された隅部と同一の隅部に位置するよう、左内面5eの図5における下端部に配置されている。図3に示すように、第2流出凹部5cは、上板2の上面から第2枠体5まで延びる第2流出孔7Dを介して第4ポートP4に連通している。したがって、第2流通室5aを通過した淡水は、第2流出凹部5cに入り込み、そこから第2流出孔7Dを通って第4ポートP4に至り、さらに外部に流出する。
【0031】
第1枠体3には、第1網体8が設けられている。第1網体8は、高温海水等の溶液に対する第1網体8の厚さは、第1枠体3の厚さと同一か若干薄くなっている。第1網体8の平面視における外形状は、第1枠体3の外形状と同一に設定されている。しかも、第1網体8は、第1枠体3と同一姿勢で配置されており、その周縁部が第1枠体3の周縁部に全周にわたって埋設されている。この結果、第1網体8が第1流通室3aの全体にわたって設けられている。したがって、第1流通室3a内の圧力と第2流通室5a内の圧力との差圧によって蒸留膜4が上板2側に押されたとしても、蒸留膜4は、第1網体8に接触するだけであり、上板2に接触することがない。ここで、仮に蒸留膜4が上板2に直接接触したものとすると、高温海水はその接触部分を流れることができなくなり、その分だけ第1流通室3aの流通面積が狭くなる。このため、高温海水の円滑な流通が妨げられる。この点、第1流通室3aに第1網体8が設けられたこの膜蒸留装置1においては、蒸留膜4が差圧によって押されたとしても上板2に接触することがなく、第1網体8に接触するだけである。第1網体8は、多数の網目を有する。したがって、蒸留膜4が第1網体8に接触したとしても、高温海水は第1網体8の網目を通って流れることができる。よって、高温海水の円滑な流通を確保することができる。なお、第1網体8の外形寸法は、第1枠体3の内形寸法(第1流通室3aの平面視における寸法)より大きくする限り、第1枠体3の外形寸法より小さくしてもよい。
【0032】
第1網体8には、複数の第1隔壁部9が設けられている。第1隔壁部9は、各種の樹脂その他の材料で構成することができるが、通常は第1枠体3を構成する材料と同一の材料によって構成されている。特にこの実施の形態では、第1隔壁部9を構成する材料としてゴムが採用されている。第1隔壁部9の厚さは、第1枠体3の厚さと同一に設定されている。したがって、第1隔壁部9の厚さ方向の両面は、第1枠体3の上下の両面とそれぞれ同一平面上に位置しており、上板2及び蒸留膜4にそれぞれ密に接触している。しかも、第1隔壁部9内においては、第1網体8の網目が第1隔壁部9を構成する材料によって塞がれている。したがって、第1隔壁部9が形成された部分を高温海水が流れることはない。
【0033】
複数の第1隔壁部9は、第1流通室3aを区画する4つの内面のうちの図4における上下の内面3f,3gに対して上下方向へ離間するとともに、互いに離間して配置されている。しかも、複数の第1隔壁部9は、左右の内面3d,3eと直交する方向、つまり上下の内面3f,3gと平行な方向に延びている。この結果、上内面3fとこれに隣接する第1隔壁部9との間、互いに隣接する二つの第1隔壁部9,9間、及び下内面3gとこれに隣接する第1隔壁部9との間には、左右方向へ互いに平行に延びる複数の第1通路3hが形成されている。第1隔壁部9は、一つだけ形成してもよい。その場合には、第1通路3hが二つだけ形成される。
【0034】
図4に示すように、第1隔壁部9の長手方向の両端部、つまり左右方向の両端部は、左右の内面3d,3eに対して左右方向へそれぞれ離間させられている。この結果、左内面3dと第1隔壁部9との間、及び右内面3eと第1隔壁部9との間には、第1通路3hと直交する方向に延びる第1流入路3i及び第1流出路3jがそれぞれ形成されている。第1流入路3iは、その上端部において第1流入凹部3bと連通するとともに、各第1通路3hの左端部と連通している。したがって、高温海水は、第1流入凹部3bから第1流入路3iに流入する。そして、第1流入路3i内を流れて各第1通路3hに流入する。一方、第1流出路3jは、各第1通路3hと連通するとともに、下端部において第1流出凹部3cと連通している。したがって、第1通路3h内を流れた高温海水は、第1流出路3jに入り込んでその内部を流れた後、第1流出凹部3cに流入する。
【0035】
第1網体8及び第1隔壁部9は、次のようにして設けることができる。勿論、ここで述べる設置方法は、多数の設置方法の一例であり、他の設置方法を採用することも可能である。
【0036】
第1枠体3に第1網体8を設ける場合には、第1枠体3の厚さの半分の厚さを有する点以外第1枠体3と同一形状、同一寸法を有する一対の半体を用意する。ただし、一対の半体は、加硫する前のゴムによって構成しておく。そして、一対の半体をその厚さ方向に対向させて配置するとともに、一対の半体間に第1網体8を配置する。その後、一対の半体を接近移動させ、その周縁部を互いに接触させる。これにより、一対の半体を一体化する。このとき、一対の半体を構成するゴムが加硫前のものであって大きな流動性を有しているから、一対の半体を互いに接触させると、第1網体8を構成する線材が一対の半体の内部に入り込むとともに、各半体を構成するゴムが第1網体8の網目内に入りこむ。したがって、一対の半体の周縁部どうしは、それらの間に第1網体8が埋設された状態で隙間なく一体化される。その後、一対の半体を構成するゴムを加硫することにより、第1枠体3を完成させることができるとともに、第1枠体3に第1網体8を設けることができる。
【0037】
第1網体8に第1隔壁部9を設ける場合には、第1隔壁部9の厚さの半分の厚さを有する点以外、第1隔壁部9と同一形状、同一寸法を有する一対の半体を用意する。ただし、一対の半体は、加硫する前のゴムによって構成しておく。そして、一対の半体をその厚さ方向に対向して配置するとともに、一対の半体間に第1網体8を配置する。その後、一対の半体を接近移動させて互いに接触させる。これにより、一対の半体を一体化する。このとき、一対の半体を構成するゴムが加硫前のものであって、大きな流動性を有しているから、一対の半体を互いに接触させると、第1網体8を構成する線材が一対の半体の内部に入り込むとともに、各半体を構成するゴムが第1網体8の網目内に入りこむ。したがって、一対の半体どうしは、それらの間に第1網体8が埋設された状態で隙間なく一体化される。その後、一対の半体を構成するゴムを加硫することにより、第1隔壁部9を完成させることができる。しかも、第1隔壁部9内に第1網体8が埋設される結果、第1網体8に第1隔壁部9が保持状態で設けられる。
【0038】
第2枠体5aには、第2網体10が設けられている。第2網体10の厚さ第2枠体5の厚さと同一か若干薄くなっている。第2網体10の平面視における外形寸法は、第2枠体5の外形寸法と同一に設定されている。第2網体10の外形寸法は、第2枠体5の内形寸法(第2流通室5aの内形寸法)より大きくする限り、第2枠体5の外形寸法より小さくしてもよい。いずれにしても、第2網体10の周縁部は、第2枠体5の周縁部に全周にわたって埋設されている。この結果、第2網体10が第2流通室5a全体にわたって設けられている。したがって、第2流通室5a内の圧力と第1流通室3a内の圧力との差圧によって蒸留膜4(4′)が上板2(下板6)側に押されたとしても、蒸留膜4(4′)は、第2網体10に接触するだけであり、上板2(下板6)に接触することがない。ここで、仮に蒸留膜4(4′)が上板(下板6)に直接接触したものとすると、その接触部分は淡水が流れなくなり、その分だけ第2流通室5aの流通面積が狭くなる。この結果、淡水の円滑な流通が妨げられる。この点、第2流通室5aに第2網体10が設けられたこの膜蒸留装置1においては、蒸留膜4(4′)が差圧によって押されたとしても上板2(下板6)に接触することがなく、第2網体10に接触するだけである。しかも、第2網体10は、多数の網目を有している。したがって、蒸留膜4(4′)に第2網体10が接触したとしても、淡水は第2網体10の網目を通って流れることができる。よって、淡水の円滑な流通を確保することができる。
【0039】
図5に示すように、第2網体10には、第1隔壁部9と同数の第2隔壁部11が設けられている。第2隔壁部11は、各種の樹脂その他の材料で構成することができるが、通常は第2枠体5を構成する材料と同一の材料によって構成される。特にこの実施の形態では、第2隔壁部11を構成する材料としてゴムが採用されている。第2隔壁部11の厚さは、第2枠体5の厚さと同一に設定されている。したがって、第2隔壁部11の厚さ方向の両面は、第2枠体5の上下の両面と同一平面上に位置しており、下蒸留膜4′及び下板6にそれぞれ密に接触している。しかも、第2隔壁部11を構成する材料は、第2網体10の網目内に入りこんで塞いでいる。したがって、第2隔壁部11が形成された部分を淡水が流れることはない。
【0040】
複数の第2隔壁部11は、第2流通室5aを区画する4つの内面のうちの図5において上下に位置する内面5f,5gに対して上下方向へ離間するとともに、互いに離間して配置されている。しかも、複数の第2隔壁部11は、左右の内面5d,5eと直交する方向、つまり上下の内面5f,5gと平行な方向に延びている。この結果、上内面5fとこれに隣接する第2隔壁部11との間、互いに隣接する二つの第2隔壁部11,11間、及び下内面5gとこれに隣接する第2隔壁部11との間には、左右方向へ互いに平行に延びる複数の第2通路5hが形成されている。平面視において第2隔壁部11が第1隔壁部9と同一位置に配置され、しかも第2隔壁部11が第1隔壁部9と同一寸法に形成されているので、各第2通路5hは、平面視において各第1通路5hと同一寸法を有しており、各第1通路3hと同一位置に配置されている。第2隔壁部11は、一つだけ形成してもよい。その場合には、第2通路5hが二つだけ形成される。
【0041】
第2隔壁部11の長手方向の両端部、つまり左右方向の両端部は、左右の内面5d,5eに対して左右方向へそれぞれ離間させられている。この結果、右内面5dと第2隔壁部11との間、及び左内面5eと第2隔壁部11との間には、第2通路5hと直交する方向に延びる第2流入路5i及び第2流出路5jがそれぞれ形成されている。第2流入路5iは、その上端部において第2流入凹部5bに連通するとともに、各第2通路5hと連通している。したがって、淡水は、第2流入凹部5bから第2流入路5iに流入し、第2流入路5i内を流れた後、各第2通路5hに流入する。一方、第2流出路5jは、各第2通路5hと連通するとともに、下端部において第2流出凹部5cに連通している。したがって、各第2通路5h内を流れた淡水は、第2流出路5j内を流れて第2流出凹部5cに流入する。
【0042】
第2枠体5に第2網体10を設ける方法は、第1枠体3に第1網体8を設ける方法と同一であり、第2網体10に第2隔壁部11を設ける方法は、第1網体8に第1隔壁部9を設ける方法と同一である。そこで、それらの方法についての説明は省略する。
【0043】
上記構成の膜蒸留装置において、第1ポートP1に高温海水を供給すると、その高温海水は、図1に実線で示すように、第1流入孔7A及び第1流入凹部3bを通り、第1流通室3aの第1流入路3iに流入する。そして、第1流入路3iから各第1通路3hに入り、その内部を流れた後、第1流出路3jに入る。そこから、第1流出凹部3cに入り込み、第1流出孔7Bを通って第2ポートP2へ至り、外部に排出される。
【0044】
一方、第3ポートP3に低温の淡水を供給すると、その淡水は、第2流入孔7C及び第2流入凹部5bを通って第2流通室5aの第2流入路5iに入り込む。そして、第2流入路5iから各第2通路5hに入ってその内部を流れた後、第2流出路5jに入り、さらに第2流出凹部5cに入り込む。第2流出凹部5cに入り込んだ淡水は、第2流出孔7Dを通って第4ポートP4へ至り、そこから外部に排出される。
【0045】
ここで、第1流通室3aの第1通路3h内を流れる高温海水と、第2流通室5aの第2通路5h内を流れる淡水とは、互いに平行に逆方向へ流れる。つまり、第1通路3h内を流れる高温海水と第2通路5h内を流れる淡水とは、いわゆる対向流となって流れる。したがって、高温海水と淡水との間の熱交換効率が向上し、淡水の製造効率を向上させることができる。しかも、高温海水と淡水との熱交換は、第1及び第2隔壁部9,11が形成された部分を除いて、第1及び第2流通室3a,5aの全域にわたって行われる。したがって、淡水の製造効率をより一層向上させることができる。
【0046】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態に関しては、上記実施の形態と異なる構成部分についてのみ説明することとし、同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図6〜図10は、この発明の第2実施の形態を示す。この第2実施の形態の膜蒸留装置(膜反応装置)1Aは、上記膜蒸留装置1を改良したものである。すなわち、図9及び図10に示すように、この膜蒸留装置1Aにおいては、第2流入凹部5bが第1流出凹部3cに対しその上側に近接して配置され、第2流出凹部5cが第1流入凹部3bに対しその下側に近接して配置されている。これに対応して、第3及び第4ポートP3,P4が第1、第2ポートP1、P2にそれぞれ近接して配置されるとともに、第2流入孔7C及び第2流出孔7Dが第1流入孔7A及び第1流孔7Bにそれぞれ近接して配置されている。
【0048】
このように構成された膜蒸留装置1Aにおいては、第1流入路3i及び第2流出路5jの、第1流入凹部3bと第2流出凹部5cとの間に位置する部分を除き、第1流入路3iを流れる高温海水と第2流出路5jを流れる淡水とを対向流にすることができる。同様に、第1流出路3j及び第2流入路5iの、第1流出凹部3cと第2流入凹部5bとの間に位置する部分を除き、第1流出路3jを流れる高温海水と第2流入路5iを流れる淡水とを対向流にすることができる。したがって、高温海水と淡水との間の熱交換効率をさらに向上させることができ、ひいては淡水の製造効率をさらに向上させることができる。
【0049】
膜蒸留装置1Aについては、次のように構成することによってさらに改良することができる。すなわち、第1流入凹部3bと第2流出凹部5cとを、平面視において同一位置に配置するとともに、第1流出凹部3cと第2流入凹部5bとを平面視において同一位置に配置するのである。このように配置した場合には、第1流入路3iを流れる高温海水と第2流出路5jを流れる淡水とを、第1流入路3i及び第2流出路5jの全長にわたって対向流にすることができるとともに、第1流出路3jを流れる高温海水と第2流入路5iを流れる淡水とを、第1流出路3j及び第2流入路5iの全長にわたって対向流とすることができる。したがって、熱交換効率及び淡水の製造効率をより一層向上させることができる。
【0050】
ただし、上記の配置構造を採用する場合には、第2流入凹部5bと第2流入孔7Cとを平面視において互いに離間するように配置する必要がある。そのようにしなければ、第2流入孔7Cが第1流出孔7Bと平面視において同一位置に配置することになってしまうからである。そこで、第2枠体5には、互いに離間した第2流入凹部5bと第2流入孔7Cとを連通させる通路を形成する必要がある。同様に、第2流出凹部5cと第2流出孔7Dとを互いに離間させ、第2枠体5には、第2流出凹部5cと第2流出孔7Dとを連通させる通路を形成する必要がある。
【0051】
図11〜図17は、この発明の第3実施の形態を示す。この実施の形態の膜蒸留装置(膜反応装置)1Bにおいては、図1〜図10に示す実施の形態においける左右方向が上下方向を向くように配置されている。図12〜図14に示すように、第2枠体5の厚さ方向(図12〜図14において左右方向;第1、第2枠体3,5の対向方向)の両面に、不透過膜12,12がそれぞれ固着されている。不透過膜12は、第2枠体5と同一の平面視形状を有しており、二つの不透過膜12,12によって第2枠体5の第2流通室5aの両端開口部が遮蔽されている。不透過膜12は、気体、液体及び固体の透過を阻止し、かつ良好な熱伝導性を有する材質によって構成されている。不透過膜12は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂フィルムによって構成されているが、他の材料からなるフィルムによって構成してもよい。
【0052】
また、図12〜図14に示すように、上第1枠体3と第2枠体5との間、及び下第1枠体3′と第2枠体5との間には、第3枠体13がそれぞれ配置されている。第3枠体13は、第1枠体3,3′の第1流入凹部3b及び第1流出凹部3cや第2枠体5の第2流入凹部5b及び第2流出凹部5cに代えて、後述する水抜き凹部(水抜き口)13b及びガス抜き凹部(ガス抜き凹部)13cが形成された点を除き、第1枠体3,3′や第2枠体5と同一材料により同一形状、同一寸法に形成されている。勿論、第3枠体13は、第2枠体5と異なる材料で異なる形状及び寸法に形成してもよい。ただし、第3流入室13aは第2流通室5aと同一形状とし、かつ第2流通室5a全体と対向するように配置することが望ましい。
【0053】
第3枠体13の開口部の一端部は、蒸留膜4(4′)によって遮蔽され、他端部は不透過膜12によって遮蔽されている。これにより、第3枠体13の内部に凝縮室13aが形成されている。凝縮室13aは、第1及び第2枠体3,5の対向方向から見たとき、第1流通室3a及び第2流通室5aと同一形状を有しており、同一位置に配置されている。したがって、凝縮室13aは、蒸留膜4(4′)を介して第1流通室3aに接し、不透過膜12を介して第2流通室5aに接している。第3枠体13には、第3網体14が設けられ、その結果第3網体14の一部が凝縮室13a内に設けられている。なお、網体14には、第1、第2隔壁部9,11と同一寸法を有する隔壁部を第1、第2隔壁部9,11と平行に設けてもよい。
【0054】
第3枠体13の凝縮室13aを区画する内面には、水抜き凹部13b及びガス抜き凹部13cが形成されている。図11及び図15〜図17に示すように、水抜き凹部13bは、第1、第2枠体3,5の対向方向から見たとき、第1流入凹部3bと第2流出凹部5cとの間に、特にこの実施の形態ではそれらの間の中央に位置するように配置されている。一方、ガス抜き凹部13cは、第2流入凹部5bと第1流出凹部3cとの間の中央に位置するように配置されている。図14に示すように、水抜き凹部13bは、水排出孔7Eを介して第5ポートP5に連通しており、ガス抜き凹部13cは、ガス排出孔7Fを介して第6ポートP6に連通している。
【0055】
上記構成の膜蒸留装置1Bにおいては、高温海水が第1流通室3a内を流れる間に高温海水から発生した水蒸気が蒸留膜4(4′)を透過して凝縮室13a内に流入する。凝縮室13a内に流入した水蒸気は、第2流通室5a内を流れる淡水によって冷却されて液体の水になる。この水は、水抜き凹部13b、水排出孔7Eを介して第5ポートP5に至り、そこから外部に淡水として取り出される。高温海水から発生して上流膜4(4′)を透過した気体のうち、凝縮されない気体は、ガス抜き凹部13c、ガス排出孔7Fを介して第6ポートに至り、そこから外部に排出される。
【0056】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、上板2から下板6までの各部材を一体的に固定して一つのブロックとし、その一つのブロックだけで膜蒸留装置1(1A,1B)としているが、そのようなブロックを前後、左右又は上下に並べてそれら全部のブロックを一つの膜蒸留装置としてもよい。
また、上記の実施の形態においては、第1隔壁部9が第1枠体3(3′)と別体に形成されているが、第1隔壁部9の両端部が第1流通室3aの内面に連なるよう、第1隔壁部9を第1枠体3(3′)と一体に形成してもよい。ただし、その場合には、第1隔壁部9の両端部の厚さを薄くし、その両端部の薄い部分をそれぞれ第1流入路3i及び第1流出路3jの一部とする。このような変形は、第2隔壁部12に対しても適用可能である。
さらに、上記の実施の形態においては、高温海水(溶液)から淡水を製造するために膜体として蒸留膜4,4′が用いられているが、この発明を例えば熱交換機に用いる場合には、蒸留膜4,4′に代えて不透過膜が膜体として用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、膜蒸留装置、熱交換器及び電気透析装置等の各種の膜反応装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 膜蒸留装置(膜反応装置)
1A 膜蒸留装置(膜反応装置)
1B 膜蒸留装置(膜反応装置)
3 上第1枠体(第1枠体)
3′ 下第1枠体(第1枠体)
3a 第1流通室
3b 第1流入凹部(第1流入口)
3c 第1流出凹部(第1流出口)
3h 第1通路
3i 第1流入路
3j 第1流出路
4 上蒸留膜(蒸留膜)
4′ 下蒸留膜(蒸留膜)
5 第2枠体
5a 第2流通室
5b 第2流入凹部(第2流入口)
5c 第2流出凹部(第2流出口)
5h 第2通路
5i 第2流入路
5j 第2流出路
8 第1網体
9 第1隔壁部
10 第2網体
11 第2隔壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1流通室を有する第1枠体と、上記第1枠体の一端面に設けられて上記第1流通室を覆う膜体と、内部に第2流通室を有する第2枠体とを備え、上記第1流通室と上記第2流通室とが上記膜体を介して互いに対向するよう、上記第1枠体と上記第2枠体とが上記膜体を介して互いに対向して配置され、上記第1枠体には、上記第1流入室の内面にそれぞれ開口する第1流入口及び第1流出口が形成され、上記第2枠体には、上記第2流通室の内面にそれぞれ開口する第2流入口及び第2流出口が形成され、高温流体が、上記第1流入口から上記第1流通室に流入し、上記第1流入室内を流れて上記第1流出口から流出し、上記高温流体より低温である低温流体が、上記第2流入口から上記第2流通室に流入し、上記第2流通室内を流れて上記第2流出口から流出する膜反応装置において、
上記第1流通室の内部にその一端側から他端側へ向かって延びる第1隔壁部が形成されることにより、上記第1流通室の内部が互いに平行に延びる複数の第1通路に区画され、
上記第2流通室の内部に、上記第1隔壁部と平行に延びる第2隔壁部が形成されることにより、上記第2流通室の内部が上記第1通路と平行に延びる複数の第2通路に区画され、
上記第1通路の長手方向の一端部及び他端部に上記第1流入口及び上記第1流出口がそれぞれ開口させられ、
上記第1流入口が開口する上記第1通路の一端部と同一側に位置する上記第2通路の端部に上記第2流出口が開口させられ、上記第1流出口が開口する上記第1通路の他端部と同一側に位置する上記第2通路の端部に上記第2流入口が開口させられていることを特徴とする膜反応装置。
【請求項2】
上記第1隔壁部の長手方向の両端部が上記第1流通室の内面に対してそれぞれ離間させられ、上記第1流通室の内部には、周縁部が上記第1枠体の内周部に固定された第1網体が設けられ、この第1網体に上記第1隔壁部が設けられ、
上記第2隔壁部の長手方向の両端部が上記第2流通室の内面に対してそれぞれ離間させられ、上記第2流体室の内部には、周縁部が上記第2枠体の内周部に固定された第2網体が設けられ、この第2網体に上記第2隔壁部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の膜反応装置。
【請求項3】
上記第1流通室の上記第1流入口が開口する端部には、上記第1通路の長手方向と直交する方向に延び、かつ上記第1通路の一端部に連通した第1流入路が形成され、上記第1流通室の上記第1流出口が開口する他端部には、上記第1流入路と平行に延び、かつ上記第1通路の他端部に連通した第1流出路が形成され、上記第1流入路及び上記第1流出路の長手方向において互いに逆側に位置する端部に上記第1流入口及び上記第1流出口がそれぞれ開口させられ、
上記第2流通室の上記第2流入口が開口する端部には、上記第1流入路と平行に延び、かつ上記第2通路の一端部に連通した第2流入路が形成され、上記第2流通室の上記第2流出口が開口する端部には、上記第2流入路と平行に延び、かつ上記第2通路の他端部に連通した第2流出路が形成され、上記第1流入口と逆側に位置する上記第2流入路の端部に上記第2流入口が開口させられ、上記第1流出口と逆側に位置する上記第2流出路の端部に上記第2流出口が開口させられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜反応装置。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の膜反応装置において、
上記高温流体が水を溶媒とする高温溶液であり、上記膜体が、上記高温溶液の水蒸気の透過を許容し、かつ上記高温溶液の他の構成物質の透過を阻止する蒸留膜であり、上記蒸留膜を透過した水蒸気が上記冷却流体によって冷却されて液体の水とされることを特徴とする膜蒸留装置。
【請求項5】
請求項2に記載の膜反応装置を製造するための製造方法であって、
上記第1流通室の内部に周縁部が上記第1枠体の内周部に固定された第1網体を設け、この第1網体に上記第1隔壁部を設け、上記第2流体室の内部に周縁部が上記第2枠体の内周部に固定された第2網体を設け、この第2網体に上記第2隔壁部を設けることを特徴とする膜反応装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−200809(P2011−200809A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71647(P2010−71647)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】