膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造
【課題】 天井に膜天井シートを密着させることで、例えばアスベストを使用した天井の場合にアスベストの飛散を防ぐことができ、天井の封じ込めとしての信頼性を向上させた。
【解決手段】 膜天井１は、壁面３に設けられた木廻り縁４に膜天井廻り縁５を固定し、膜天井廻り縁５に第一膜天井シート６の周縁に取り付けた係止部材８を係止させて第一膜天井シート６を天井２に沿って敷設させている。木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間にシーリング材１０が設けられている。天井２と第一膜天井シート６との間に形成される密封空間Ｔと室内空間Ｒとを連通させる吸込み開口を設け、吸込み開口から吸気することで第一膜天井シート６を接着材９を介して天井２に密着させるようにした。
【解決手段】 膜天井１は、壁面３に設けられた木廻り縁４に膜天井廻り縁５を固定し、膜天井廻り縁５に第一膜天井シート６の周縁に取り付けた係止部材８を係止させて第一膜天井シート６を天井２に沿って敷設させている。木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間にシーリング材１０が設けられている。天井２と第一膜天井シート６との間に形成される密封空間Ｔと室内空間Ｒとを連通させる吸込み開口を設け、吸込み開口から吸気することで第一膜天井シート６を接着材９を介して天井２に密着させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、建築物における膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、住宅などの天井や壁の建築資材には、保温性、耐火性の効果が高いといった理由からアスベスト（石綿）が多く使用されていた。しかしながら、周知のとおり、アスベストは、非常に微細な繊維形状をなしており、とくにアスベストが室内空間に露出している部分が剥がれ落ちると空気中にアスベストが飛散し、それを人が吸引したときに人体に与える影響が大きく社会的問題となっている。このような背景から、近年では、アスベストが使用されている建築物の改装（リフォーム）が行われている。
その改装方法として、アスベスト部分を除去する方法が一般的に多く実施されている。この方法の場合、解体作業が発生するため、住人の引越しが必要になるうえ、解体範囲をフィルム材等で密封状態に取り囲み、さらにその中で解体作業を行う作業員は防塵マスク等を使用した大掛かりな装備が必要であった。
これに対し、アスベストを除去せずに残置した状態で改装する方法として、アスベストを囲い込む方法や封じ込める方法がある（例えば、特許文献１、２参照）。
特許文献１は、吹き付けによってアスベスト層に飛散防止処理剤をコーティング処理し、アスベスト層の所定箇所にボルトを貫通させて基盤に固定させたアスベスト層の封じ込め方法である。
特許文献２は、既存の天井面に沿って新たに膜天井シートを敷設する方法である。膜天井シートは、天井面の周囲に沿って配置されている既設の木廻り縁に垂直材および水平材からなる断面略Ｌ字形の膜天井廻り縁をステープルで固定し、膜天井シートの周縁に設けられた断面Ｕ字形の係止部材を膜天井廻り縁の水平材の先端に形成された断面鉤形の係止部に引っ掛けることで既存の天井面に沿って敷設される。
【特許文献１】特許第２６１２９０８号公報
【特許文献２】特開２００４−１９７４４８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、特許文献１は、コーティング処理した吹き付け面が室内空間に面しており、この吹き付け面が劣化により亀裂が入ったり剥がれ落ちるなどすると、コーティング処理した裏面のアスベスト層が露出してアスベスト片が室内空間に飛散するという問題があった。
特許文献２は、天井と膜天井シートとの間に例えば１０〜２０ｍｍ程度の空間があるため、天井面が剥がれ落ちてアスベスト片が飛散することになる。そして、このアスベスト片が膜天井廻り縁と木廻り縁との隙間を通過して室内に入り込むといった問題があった。したがって、アスベストの封じ込め（囲い込み）対策としては不十分であり、信頼性という点で改善の余地があった。
【０００４】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、天井に膜天井シートを密着させることで、例えばアスベストを使用した天井の場合にアスベストの飛散を防ぐことができ、天井の封じ込めとしての信頼性を向上させた膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上記目的を達成するため、本発明に係る膜天井シートを用いた天井改修方法は、第一膜天井シートを天井に沿って敷設する膜天井シートを用いた天井改修方法であって、接着材を介して第一膜天井シートと天井とを密着させるようにしたことを特徴としている。
本発明では、天井の大部分の範囲に第一膜天井シートが密着していることから、例えばアスベストが使用されている天井が剥がれ落ちる場合において、アスベスト片の飛散を防止することができる。このため、アスベスト封じ込めにおける信頼性を向上させることができる。
【０００６】
また、本発明に係る膜天井シートを用いた天井改修方法では、第一膜天井シートを天井に密着させる前に、第一膜天井シートを水平に敷設して第一膜天井シート及び天井の間に形成される密封空間と、室内空間とを連通する吸込み開口を所定箇所に設け、吸込み開口から吸気して第一膜天井シートを、予め天井または第一膜天井シートに付着させた接着材を介して天井に密着させるようにすることが好ましい。
本発明では、吸込み開口から室内空間側に吸気させると、空間が真空状態となり水平に敷設されていた第一膜天井シートが天井側に吸い寄せられて密着する。天井と第一膜天井シートとの間には接着材が設けられているため、第一膜天井シートは天井に固着した状態を保持することができる。
【０００７】
また、本発明に係る膜天井構造では、第一膜天井シートを天井に沿って敷設させた膜天井構造であって、第一膜天井シートと天井とを密着させる接着材が設けられていることを特徴としている。
本発明では、天井の大部分の範囲に第一膜天井シートが密着しているため、例えばアスベストが天井に使用された天井が剥がれ落ちるなどの場合において、アスベスト片の飛散を防止できる。
【０００８】
また、本発明に係る膜天井構造では、室内壁面または既設の廻り縁に、第一膜天井シートの周縁を係止させる膜天井廻り縁が固定され、膜天井廻り縁の被固定面と膜天井廻り縁との間にシーリング材が設けられていることが好ましい。
本発明では、膜天井廻り縁とその被固定面との間が隙間無く密着していることで、気密性、接着性が向上されるため、天井と第一膜天井シートとの間の空間が密封されて天井が囲い込まれた状態とすることができる。
【０００９】
また、本発明に係る膜天井構造では、第一膜天井シートの下方に１または複数の第二膜天井シートを設けていることが好ましい。
本発明では、第二膜天井シートが室内空間側に敷設されるため、天井に接着した見栄えの悪い第一膜天井シートが第二膜天井シートの裏面に隠れて見えなくなり、室内天井の仕上げ効果を奏し、外観上の問題もなくなる。
【００１０】
また、本発明に係る膜天井構造では、第一膜天井シートは透明性を有していることが好ましい。
本発明では、第一膜天井シートを天井に沿って敷設した後でも、第一膜天井シートが透明であることから、敷設した第一膜天井シートを取り外すことなく天井の状態を目視点検することができる。
【発明の効果】
【００１１】
本発明の膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造によれば、天井の大部分の範囲に第一膜天井シートが密着しているため、例えばアスベストが天井に使用される場合において天井面が剥がれ落ちる際にアスベスト片が飛散することを防止できる。このため、アスベストの封じ込め（囲い込み）における信頼性を向上させることができる。
また、接着材を例えば吹き付け手段によって吹き付けることができ、施工中にアスベストを含んだ天井に触れることなく施工できることから、安全性を向上させることができる。このため、施工中における住人の引越しも不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造の実施の形態について、図１乃至図５に基づいて説明する。
図１は本発明の実施の形態による膜天井の設置状態を示す図、図２は膜天井シートの取付け状況を示す拡大図、図３は第一膜天井シートと天井との接着施工工程を示す図、図４は膜天井シートにおける気密試験装置を示す説明図、図５は気密試験結果を示すグラフである。
【００１３】
図１に示すように、本実施の形態による膜天井１は、住宅などの建築物の室内においてアスベストが使用された天井２を改装（リフォーム）する際に、天井２に沿うようにして第一膜天井シート６を敷設したものである。室内の四方の各壁面３の上端部には、天井２の周縁部全周にわたって既設の木廻り縁４が取り付けられている。
ここで、アスベストが使用された天井２は、例えば従来多く使用されていたアスベストを含んだ天井材料や吹付け材仕上げの材料による天井を対象とする。
【００１４】
図２に示すように、膜天井１は、垂直材５Ａおよび水平材５Ｂを配してなる断面略Ｌ字形をなして木廻り縁４に重なるように固定された膜天井廻り縁５と、天井２に沿って敷設された第一膜天井シート６と、第一膜天井シート６の下方に所定間隔（例えば１０ｍｍ程度の間隔）をもって敷設された第二膜天井シート７とから概略構成されている。膜天井廻り縁５の垂直材５Ａの上端には、断面略鉤形の第一係止部５１が形成されている。また、膜天井廻り縁５の水平材５Ｂの端部には、断面略鉤形の第二係止部５２が形成されている。
ここで、膜天井廻り縁５の被固定面は、木廻り縁４である。
【００１５】
第一膜天井シート６及び第二膜天井シート７は、例えば塩化ビニル樹脂製の材質（例えば、リフォジュールシート（登録商標）、フクビ化学工業社製）で弾力性を有するシートを使用する。
また、第一膜天井シート６は、透明性を有する材料を使用する。そして、天井２の点検を行うときは、第二膜天井シート７を取り外すことで、第一膜天井シート６を介して天井２の状態を確認することができる。
【００１６】
図２に示すように、第一膜天井シート６には、その周縁に断面略Ｕ字形の係止部材８が全周に連続して設けられている。そして、係止部材８の溝部８ａを第一係止部５１に引っ掛けることによって、第一膜天井シート６は天井２に沿って敷設させることができる。
また、第一膜天井シート６と天井２とを密着させる接着材９が設けられている（図１参照）。この接着材９は、例えば第一膜天井シート６を敷設する前に予め天井２の略全面にわたって吹き付け手段などによって吹き付けておく。
【００１７】
図２に示すように、木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間に挟持されるようにしてシーリング材１０が設けられている。このシーリング材１０として、例えば弾性樹脂（ブチルゴムを含む）の両面に接着剤（粘着剤）を塗付加工してなる両面テープなどを使用することが好ましい。そして、膜天井廻り縁５の垂直材５Ａは、シーリング材１０を介してビス１１によって木廻り縁４を貫通させて壁面３に固定されている。
【００１８】
第二膜天井シート７は、図２に示すように、その周縁に断面略Ｕ字形の第二係止部材１２が設けられ、第二係止部材１２の溝部１２ａが第二係止部５２に引っ掛けられている。
なお、この第二膜天井シート７は、室内天井として好みのデザインのシートを使用することができる。
【００１９】
次に、このような構成をなす膜天井１の施工方法について図面に基づいて説明する。
先ず、図１に示すように、天井２の略全面にスプレーガンなどの吹き付け手段によって、接着材９を吹き付けておく。
そして、木廻り縁４にシーリング材１０を介して膜天井廻り縁５を重ね合わせ、水平方向に所定間隔（例えば１２０ｍｍピッチ）ごとにビス１１を膜天井廻り縁５の上から打ち込ませて木廻り縁４に膜天井廻り縁５を固定する。
【００２０】
次いで、図２に示すように、第一膜天井シート６の周縁に設けた係止部材８を、例えばコテ状の治具（図示省略）を使用して係止部材８の溝部８ａに挟み込みながら膜天井廻り縁５の第一係止部５１にはめ込んで係止させる。これにより、膜天井廻り縁５の内側に第一膜天井シート６が敷設（図中二点鎖線Ｓの位置）される。このとき、第一膜天井シート６と天井２との間には、室内空間Ｒと遮断された密封空間Ｔが形成されて天井２が囲い込まれた状態となる。
なお、先行して膜天井廻り縁５を取り付け、その後で天井２に接着材９を吹き付けるようにしてもかまわない。
【００２１】
続いて、図３に示すように、係止部材８と第一係止部５１とが係止されている任意の位置で、第一係止部５１に引っ掛けた係止部材８を部分的に取り外して室内空間Ｒと密封空間Ｔと連通する吸込み開口１３を形成させ、この吸込み開口１３に例えば管（図示省略）を取り付けて真空ポンプなどを使用して吸気する。そうすると、第一膜天井シート６は、密封空間Ｔ内の空気が吸い込まれて真空状態となり、張っていた第一膜天井シート６が天井２側（矢印Ｅ方向に）吸い寄せられて図中二点差線Ｕの位置に示すように接着材９に接着する。これにより、第一膜天井シート６は密着した状態で保持されることになる。
なお、吸込み開口１３に取り付けた管の周囲には吸気時に空気が抜けないように密閉させておくことが好ましい。さらに、吸込み開口１３は、１箇所に限定されず所定箇所に複数箇所に設けてもかまわない。
次いで、吸込み開口１３を形成させるために取り外しておいた部分の係止部材８を第一係止部５１に係止させて吸込み開口１３を塞いでおく。
【００２２】
なお、通常の膜天井シートは、天井２への敷設面積に対して略８割の面積比率に加工されたものを、設置する際に引き伸ばすようにテンションをかけながら膜天井廻り縁５に固定させている。これに対し、第一膜天井シート６は、同等又は少し大きな（例えば、１割程度）面積比率のものを使用する。つまり、天井２に接着材９を介して接着させる第一膜天井シート６では、テンションを与えた状態で膜天井廻り縁５に固定してしまうと、第一膜天井シート６は吸気により天井２に接着する際、元の固定状態（図２に示す二点鎖線の位置）に戻る作用が働くことになる。したがって、接着材９と第一膜天井シート６とが剥がれ易くなるうえ、接着乾燥するまでのあいだ真空状態としておく必要があり、吸気時間が大きくなるため、上述したようにテンションをかけない寸法にしておくことが好ましい。
【００２３】
その後、第二膜天井シート７の第二係止部材１２を第二係止部５２に引っ掛けることで、膜天井１の設置が完了となる（図２参照）。
このように膜天井１の仕上げの状態は、第二膜天井シート７が第一膜天井シート６の下方、即ち室内空間Ｒ側に敷設されるため、天井２に接着した見栄えの悪い第一膜天井シート６が第二膜天井シート７の裏面に隠れて見えなくなり、室内天井の仕上げ効果を奏し、外観上の問題もなくなる。
【００２４】
（試験例）
次に、上述した第一膜天井シート６及び第二膜天井シート７において、設置状態における気密性を確認した気密性試験（以下、試験と呼ぶ）について図４及び図５に基づいて説明する。
本試験では、木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間にシーリング材１０を設けた実施の形態による試験Ａ（通気孔なしと称する）と、シーリング材１０を設けない比較例による試験Ｂ（通気孔ありと称する）とを実施した。
図４は、実施の形態による試験Ａによって使用する気密試験装置２０の概略を示した図である。気密試験装置２０は、膜天井シート２４が設けられた試験体２１と、箱の一面に試験体２１を備えて膜天井１が設置される室内に相当させてなる圧力箱体２２と、膜天井シート２４に対向する圧力箱体２２の他面に設けられた送排気孔２３とから概略構成されている。
【００２５】
試験体２１は、圧力箱体２２の一面の外周部に固定された木廻り縁４と、シーリング材１０（弾性樹脂製の両面テープ）を介して固定された硬質ポリ塩化ビニル樹脂製の膜天井廻り縁５と、膜天井廻り縁５の内周側に取り付けられた膜天井シート２４（塩化ビニル樹脂製、リフォジュールシート（登録商標）、フクビ化学工業社製）とから構成されている。シーリング材１０を設けて木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間を密着させたことにより、この間に通気孔が形成されない状態とする。
一方、比較例の試験Ｂを示した図については省略するが、気密試験装置２０は、試験体においてシーリング材１０が省略されたものであり、木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間に通気孔が形成された状態となっている。
このように構成される気密試験装置２０は、送排気孔２３から図示しない送風機を使用して圧力箱体２２の内部を加圧及び減圧させるようにする。
また、気密試験装置２０には、圧力箱体２２の内圧Ｐ１（Ｐａ）を計測する圧力計２５と、膜天井シート２４の外方側で圧力箱体２２から流出した通気量Ｑ（ｍ３／時間）を測定するための通気量測定器２６とが設けられている。
【００２６】
図４に示すように、試験方法としては、送排気孔２３から図示しない送風機を使用して圧力箱体２２の内部を所定の内圧Ｐ１となるように加圧あるいは減圧する。そして、内圧Ｐ１と圧力箱体２２の外側の外圧Ｐ２（Ｐａ）との圧力差ΔＰ（＝Ｐ１−Ｐ２）を変化値とし、この変化値に応じて試験体２１と圧力箱体２２との隙間から圧力箱体２２外方に漏出する通気量Ｑを測定する。このような試験方法によって、実施の形態による試験Ａと比較例による試験Ｂにおける夫々の試験体２１を使用して試験を行う。
【００２７】
次に、上述した気密試験装置２０によって試験を実施した試験結果について説明する。
図５に示す試験結果は、試験Ａと試験Ｂにおける、圧力差ΔＰ値（横軸）に対する通気量Ｑ（縦軸）の変化を示したグラフである。図５のグラフＡが試験Ａ、グラフＢが試験Ｂを示している。
これによると、グラフＢに示す通気孔ありの試験Ｂは、圧力差ΔＰが増加するにしたがって通気量Ｑも増加する傾向になっている。一方、グラフＡに示す通気孔なしの試験Ａは、圧力差ΔＰの増加にかかわらず通気量Ｑはゼロに近い値となっていることが分かる。
このようなことから、木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間にシーリング材１０を設けることで、圧力箱体２２の内部を略密封状態にできることが確認された。
【００２８】
上述した本実施の形態による膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造は、第一膜天井シート６を天井２に（隙間無く）密着させることで、天井２の大部分の範囲を封じ込めることができる。このため、アスベストが剥がれ落ちて室内空間Ｒにアスベスト片が飛散することを防止できる。また、施工中に天井２に触れることなく施工できることから、安全性を向上させることができ、アスベストの封じ込め（囲い込み）における信頼性を向上させることができる。
また、施工中に天井２に触れることなく施工できることから、安全性を向上させることができる。
【００２９】
次に、本実施の形態の第一〜第三変形例について、図６及び図７に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図６は本発明の実施の形態の第一変形例による膜天井の設置状態を示す図であって、図２に対応する図であって、図２に対応する図、図７（ａ）、（ｂ）は本発明の実施の形態の第二変形例及び第三変形例による膜天井の設置状態を示す図であって、図２に対応する図である。
図６に示すように、本第一変形例は、実施の形態における膜天井廻り縁５の第一係止部５１（図２参照）に代えて、垂直材５Ａの上端に第二水平材５Ｃが設けられ、この第二水平材５Ｃの端部に断面略凹形の第三係止部５３が形成されている。第三係止部５３には、第二水平材５Ｃより下方斜め方向に突出した凹部一端をなす突出部５３ａと、突出部５３ａに対向した位置に受け部５３ｂとが形成されている。
第一変形例では、上述したコテ状の冶具を使用することなく、第一膜天井シート６を膜天井廻り縁５取り付けることができる。なお、本第一変形例では、室内空間Ｒ側から係止部材８が見えてしまうが、第二膜天井シート７を敷設することにより隠れるためとくに問題はない。
本第一変形例では、第一膜天井シート６が天井２に密着される前工程において、第三係止部５３の突出部５３ａに係止部材８の一端８ｂを係止させ、第一膜天井シート６の引張力によって係止部材８の他端８ｃが受け部５３ｂに当接することで、係止部材８が第三係止部５３に係止される。
【００３０】
また、第二変形例及び第三変形例では、図７（ａ）及び（ｂ）に示すように、膜天井廻り縁５の第一係止部５１の上方を覆うようにして垂直材５Ａの上端に第二水平材５Ｃが設けられていて、膜天井廻り縁５の第二水平部材５Ｃは接着材９を介して天井２に取り付けることができる構造である。
これら第一〜第三変形例では、膜天井１は、膜天井廻り縁５の上面が天井２に接して配置できるため、実施の形態と比較して第一膜天井シート６と天井２とが密着しない範囲を少なくすることができる。
【００３１】
以上、本発明による膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では係止部材８の一部分を第一係止部５１から取り外して吸込み開口１３を形成させているが、これに限定されることはなく、例えば予め第一膜天井シート６に開閉可能な部材を取り付けておくようにしてもよい。
また、本実施の形態ではアスベストが使用された天井２を対象としているが、アスベストを含まない吹き付け天井やコンクリートが露出した天井などで剥がれ落ちを防止するための改装に適用してもかまわない。
また、本実施の形態では接着材９を吹き付け手段によって天井２に吹き付けているが、例えば第一膜天井シート６の上面（天井側）に接着材９を塗布しておくようにしてもかまわない。そして、吹き付け手段に限定されることはなく、塗布する手段であってもよい。
また、本実施の形態では第二膜天井シート７を一段としているが、例えば外観を重要視しない用途（倉庫など）の場合には第二膜天井シート７を設けなくてもよく、また二段以上として複数を設けてもよい。
また、第一膜天井シート６は透明なもので目視点検を可能としたものであるが、とくに点検などの必要がない場合などでは透明性を有するシートであることに限定はされない。
さらに、本実施の形態では膜天井廻り縁５をビス１１によって木廻り縁４に取り付けたものであるが、膜天井廻り縁５の固定方法はこれに限定されることはない。要は、テンションをかけて敷設した膜天井シートの引張力によって木廻り縁４や膜天井廻り縁５が外れないようにしておけばよいのであって、例えば各壁面３同士の膜天井廻り縁５に突っ張り用の補強材を設けておくようにしてもよい。
さらに、木廻り縁４が設けられていない場合に適用することもでき、その場合は膜天井廻り縁５を壁面３に直接固定すればよい。
さらにまた、本実施の形態および変形例では膜天井廻り縁５と係止部材８との係止方法が異なっているが、係止方法について限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【００３２】
【図１】本発明の実施の形態による膜天井の設置状態を示す図である。
【図２】膜天井シートの取付け状況を示す拡大図である。
【図３】膜天井シートと天井との接着施工工程を示す図である。
【図４】膜天井シートにおける気密試験装置を示す説明図である。
【図５】気密試験結果を示すグラフである。
【図６】実施の形態の第一変形例による膜天井の設置状態を示す図であって、図２に対応する図である。
【図７】（ａ）、（ｂ）は実施の形態の第二変形例及び第三変形例による膜天井の設置状態を示す図であって、図２に対応する図である。
【符号の説明】
【００３３】
１ 膜天井
２ 天井
３ 壁面
４ 木廻り縁
５ 膜天井廻り縁
５１ 第一係止部
５２ 第二係止部
５３ 第三係止部
６ 第一膜天井シート
７ 第二膜天井シート
８ 係止部材
９ 接着材
１０ シーリング材
１２ 第二係止部材
１３ 吸込み開口
Ｒ 室内空間
Ｔ 密封空間
【技術分野】
【０００１】
本発明は、建築物における膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、住宅などの天井や壁の建築資材には、保温性、耐火性の効果が高いといった理由からアスベスト（石綿）が多く使用されていた。しかしながら、周知のとおり、アスベストは、非常に微細な繊維形状をなしており、とくにアスベストが室内空間に露出している部分が剥がれ落ちると空気中にアスベストが飛散し、それを人が吸引したときに人体に与える影響が大きく社会的問題となっている。このような背景から、近年では、アスベストが使用されている建築物の改装（リフォーム）が行われている。
その改装方法として、アスベスト部分を除去する方法が一般的に多く実施されている。この方法の場合、解体作業が発生するため、住人の引越しが必要になるうえ、解体範囲をフィルム材等で密封状態に取り囲み、さらにその中で解体作業を行う作業員は防塵マスク等を使用した大掛かりな装備が必要であった。
これに対し、アスベストを除去せずに残置した状態で改装する方法として、アスベストを囲い込む方法や封じ込める方法がある（例えば、特許文献１、２参照）。
特許文献１は、吹き付けによってアスベスト層に飛散防止処理剤をコーティング処理し、アスベスト層の所定箇所にボルトを貫通させて基盤に固定させたアスベスト層の封じ込め方法である。
特許文献２は、既存の天井面に沿って新たに膜天井シートを敷設する方法である。膜天井シートは、天井面の周囲に沿って配置されている既設の木廻り縁に垂直材および水平材からなる断面略Ｌ字形の膜天井廻り縁をステープルで固定し、膜天井シートの周縁に設けられた断面Ｕ字形の係止部材を膜天井廻り縁の水平材の先端に形成された断面鉤形の係止部に引っ掛けることで既存の天井面に沿って敷設される。
【特許文献１】特許第２６１２９０８号公報
【特許文献２】特開２００４−１９７４４８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、特許文献１は、コーティング処理した吹き付け面が室内空間に面しており、この吹き付け面が劣化により亀裂が入ったり剥がれ落ちるなどすると、コーティング処理した裏面のアスベスト層が露出してアスベスト片が室内空間に飛散するという問題があった。
特許文献２は、天井と膜天井シートとの間に例えば１０〜２０ｍｍ程度の空間があるため、天井面が剥がれ落ちてアスベスト片が飛散することになる。そして、このアスベスト片が膜天井廻り縁と木廻り縁との隙間を通過して室内に入り込むといった問題があった。したがって、アスベストの封じ込め（囲い込み）対策としては不十分であり、信頼性という点で改善の余地があった。
【０００４】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、天井に膜天井シートを密着させることで、例えばアスベストを使用した天井の場合にアスベストの飛散を防ぐことができ、天井の封じ込めとしての信頼性を向上させた膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上記目的を達成するため、本発明に係る膜天井シートを用いた天井改修方法は、第一膜天井シートを天井に沿って敷設する膜天井シートを用いた天井改修方法であって、接着材を介して第一膜天井シートと天井とを密着させるようにしたことを特徴としている。
本発明では、天井の大部分の範囲に第一膜天井シートが密着していることから、例えばアスベストが使用されている天井が剥がれ落ちる場合において、アスベスト片の飛散を防止することができる。このため、アスベスト封じ込めにおける信頼性を向上させることができる。
【０００６】
また、本発明に係る膜天井シートを用いた天井改修方法では、第一膜天井シートを天井に密着させる前に、第一膜天井シートを水平に敷設して第一膜天井シート及び天井の間に形成される密封空間と、室内空間とを連通する吸込み開口を所定箇所に設け、吸込み開口から吸気して第一膜天井シートを、予め天井または第一膜天井シートに付着させた接着材を介して天井に密着させるようにすることが好ましい。
本発明では、吸込み開口から室内空間側に吸気させると、空間が真空状態となり水平に敷設されていた第一膜天井シートが天井側に吸い寄せられて密着する。天井と第一膜天井シートとの間には接着材が設けられているため、第一膜天井シートは天井に固着した状態を保持することができる。
【０００７】
また、本発明に係る膜天井構造では、第一膜天井シートを天井に沿って敷設させた膜天井構造であって、第一膜天井シートと天井とを密着させる接着材が設けられていることを特徴としている。
本発明では、天井の大部分の範囲に第一膜天井シートが密着しているため、例えばアスベストが天井に使用された天井が剥がれ落ちるなどの場合において、アスベスト片の飛散を防止できる。
【０００８】
また、本発明に係る膜天井構造では、室内壁面または既設の廻り縁に、第一膜天井シートの周縁を係止させる膜天井廻り縁が固定され、膜天井廻り縁の被固定面と膜天井廻り縁との間にシーリング材が設けられていることが好ましい。
本発明では、膜天井廻り縁とその被固定面との間が隙間無く密着していることで、気密性、接着性が向上されるため、天井と第一膜天井シートとの間の空間が密封されて天井が囲い込まれた状態とすることができる。
【０００９】
また、本発明に係る膜天井構造では、第一膜天井シートの下方に１または複数の第二膜天井シートを設けていることが好ましい。
本発明では、第二膜天井シートが室内空間側に敷設されるため、天井に接着した見栄えの悪い第一膜天井シートが第二膜天井シートの裏面に隠れて見えなくなり、室内天井の仕上げ効果を奏し、外観上の問題もなくなる。
【００１０】
また、本発明に係る膜天井構造では、第一膜天井シートは透明性を有していることが好ましい。
本発明では、第一膜天井シートを天井に沿って敷設した後でも、第一膜天井シートが透明であることから、敷設した第一膜天井シートを取り外すことなく天井の状態を目視点検することができる。
【発明の効果】
【００１１】
本発明の膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造によれば、天井の大部分の範囲に第一膜天井シートが密着しているため、例えばアスベストが天井に使用される場合において天井面が剥がれ落ちる際にアスベスト片が飛散することを防止できる。このため、アスベストの封じ込め（囲い込み）における信頼性を向上させることができる。
また、接着材を例えば吹き付け手段によって吹き付けることができ、施工中にアスベストを含んだ天井に触れることなく施工できることから、安全性を向上させることができる。このため、施工中における住人の引越しも不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造の実施の形態について、図１乃至図５に基づいて説明する。
図１は本発明の実施の形態による膜天井の設置状態を示す図、図２は膜天井シートの取付け状況を示す拡大図、図３は第一膜天井シートと天井との接着施工工程を示す図、図４は膜天井シートにおける気密試験装置を示す説明図、図５は気密試験結果を示すグラフである。
【００１３】
図１に示すように、本実施の形態による膜天井１は、住宅などの建築物の室内においてアスベストが使用された天井２を改装（リフォーム）する際に、天井２に沿うようにして第一膜天井シート６を敷設したものである。室内の四方の各壁面３の上端部には、天井２の周縁部全周にわたって既設の木廻り縁４が取り付けられている。
ここで、アスベストが使用された天井２は、例えば従来多く使用されていたアスベストを含んだ天井材料や吹付け材仕上げの材料による天井を対象とする。
【００１４】
図２に示すように、膜天井１は、垂直材５Ａおよび水平材５Ｂを配してなる断面略Ｌ字形をなして木廻り縁４に重なるように固定された膜天井廻り縁５と、天井２に沿って敷設された第一膜天井シート６と、第一膜天井シート６の下方に所定間隔（例えば１０ｍｍ程度の間隔）をもって敷設された第二膜天井シート７とから概略構成されている。膜天井廻り縁５の垂直材５Ａの上端には、断面略鉤形の第一係止部５１が形成されている。また、膜天井廻り縁５の水平材５Ｂの端部には、断面略鉤形の第二係止部５２が形成されている。
ここで、膜天井廻り縁５の被固定面は、木廻り縁４である。
【００１５】
第一膜天井シート６及び第二膜天井シート７は、例えば塩化ビニル樹脂製の材質（例えば、リフォジュールシート（登録商標）、フクビ化学工業社製）で弾力性を有するシートを使用する。
また、第一膜天井シート６は、透明性を有する材料を使用する。そして、天井２の点検を行うときは、第二膜天井シート７を取り外すことで、第一膜天井シート６を介して天井２の状態を確認することができる。
【００１６】
図２に示すように、第一膜天井シート６には、その周縁に断面略Ｕ字形の係止部材８が全周に連続して設けられている。そして、係止部材８の溝部８ａを第一係止部５１に引っ掛けることによって、第一膜天井シート６は天井２に沿って敷設させることができる。
また、第一膜天井シート６と天井２とを密着させる接着材９が設けられている（図１参照）。この接着材９は、例えば第一膜天井シート６を敷設する前に予め天井２の略全面にわたって吹き付け手段などによって吹き付けておく。
【００１７】
図２に示すように、木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間に挟持されるようにしてシーリング材１０が設けられている。このシーリング材１０として、例えば弾性樹脂（ブチルゴムを含む）の両面に接着剤（粘着剤）を塗付加工してなる両面テープなどを使用することが好ましい。そして、膜天井廻り縁５の垂直材５Ａは、シーリング材１０を介してビス１１によって木廻り縁４を貫通させて壁面３に固定されている。
【００１８】
第二膜天井シート７は、図２に示すように、その周縁に断面略Ｕ字形の第二係止部材１２が設けられ、第二係止部材１２の溝部１２ａが第二係止部５２に引っ掛けられている。
なお、この第二膜天井シート７は、室内天井として好みのデザインのシートを使用することができる。
【００１９】
次に、このような構成をなす膜天井１の施工方法について図面に基づいて説明する。
先ず、図１に示すように、天井２の略全面にスプレーガンなどの吹き付け手段によって、接着材９を吹き付けておく。
そして、木廻り縁４にシーリング材１０を介して膜天井廻り縁５を重ね合わせ、水平方向に所定間隔（例えば１２０ｍｍピッチ）ごとにビス１１を膜天井廻り縁５の上から打ち込ませて木廻り縁４に膜天井廻り縁５を固定する。
【００２０】
次いで、図２に示すように、第一膜天井シート６の周縁に設けた係止部材８を、例えばコテ状の治具（図示省略）を使用して係止部材８の溝部８ａに挟み込みながら膜天井廻り縁５の第一係止部５１にはめ込んで係止させる。これにより、膜天井廻り縁５の内側に第一膜天井シート６が敷設（図中二点鎖線Ｓの位置）される。このとき、第一膜天井シート６と天井２との間には、室内空間Ｒと遮断された密封空間Ｔが形成されて天井２が囲い込まれた状態となる。
なお、先行して膜天井廻り縁５を取り付け、その後で天井２に接着材９を吹き付けるようにしてもかまわない。
【００２１】
続いて、図３に示すように、係止部材８と第一係止部５１とが係止されている任意の位置で、第一係止部５１に引っ掛けた係止部材８を部分的に取り外して室内空間Ｒと密封空間Ｔと連通する吸込み開口１３を形成させ、この吸込み開口１３に例えば管（図示省略）を取り付けて真空ポンプなどを使用して吸気する。そうすると、第一膜天井シート６は、密封空間Ｔ内の空気が吸い込まれて真空状態となり、張っていた第一膜天井シート６が天井２側（矢印Ｅ方向に）吸い寄せられて図中二点差線Ｕの位置に示すように接着材９に接着する。これにより、第一膜天井シート６は密着した状態で保持されることになる。
なお、吸込み開口１３に取り付けた管の周囲には吸気時に空気が抜けないように密閉させておくことが好ましい。さらに、吸込み開口１３は、１箇所に限定されず所定箇所に複数箇所に設けてもかまわない。
次いで、吸込み開口１３を形成させるために取り外しておいた部分の係止部材８を第一係止部５１に係止させて吸込み開口１３を塞いでおく。
【００２２】
なお、通常の膜天井シートは、天井２への敷設面積に対して略８割の面積比率に加工されたものを、設置する際に引き伸ばすようにテンションをかけながら膜天井廻り縁５に固定させている。これに対し、第一膜天井シート６は、同等又は少し大きな（例えば、１割程度）面積比率のものを使用する。つまり、天井２に接着材９を介して接着させる第一膜天井シート６では、テンションを与えた状態で膜天井廻り縁５に固定してしまうと、第一膜天井シート６は吸気により天井２に接着する際、元の固定状態（図２に示す二点鎖線の位置）に戻る作用が働くことになる。したがって、接着材９と第一膜天井シート６とが剥がれ易くなるうえ、接着乾燥するまでのあいだ真空状態としておく必要があり、吸気時間が大きくなるため、上述したようにテンションをかけない寸法にしておくことが好ましい。
【００２３】
その後、第二膜天井シート７の第二係止部材１２を第二係止部５２に引っ掛けることで、膜天井１の設置が完了となる（図２参照）。
このように膜天井１の仕上げの状態は、第二膜天井シート７が第一膜天井シート６の下方、即ち室内空間Ｒ側に敷設されるため、天井２に接着した見栄えの悪い第一膜天井シート６が第二膜天井シート７の裏面に隠れて見えなくなり、室内天井の仕上げ効果を奏し、外観上の問題もなくなる。
【００２４】
（試験例）
次に、上述した第一膜天井シート６及び第二膜天井シート７において、設置状態における気密性を確認した気密性試験（以下、試験と呼ぶ）について図４及び図５に基づいて説明する。
本試験では、木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間にシーリング材１０を設けた実施の形態による試験Ａ（通気孔なしと称する）と、シーリング材１０を設けない比較例による試験Ｂ（通気孔ありと称する）とを実施した。
図４は、実施の形態による試験Ａによって使用する気密試験装置２０の概略を示した図である。気密試験装置２０は、膜天井シート２４が設けられた試験体２１と、箱の一面に試験体２１を備えて膜天井１が設置される室内に相当させてなる圧力箱体２２と、膜天井シート２４に対向する圧力箱体２２の他面に設けられた送排気孔２３とから概略構成されている。
【００２５】
試験体２１は、圧力箱体２２の一面の外周部に固定された木廻り縁４と、シーリング材１０（弾性樹脂製の両面テープ）を介して固定された硬質ポリ塩化ビニル樹脂製の膜天井廻り縁５と、膜天井廻り縁５の内周側に取り付けられた膜天井シート２４（塩化ビニル樹脂製、リフォジュールシート（登録商標）、フクビ化学工業社製）とから構成されている。シーリング材１０を設けて木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間を密着させたことにより、この間に通気孔が形成されない状態とする。
一方、比較例の試験Ｂを示した図については省略するが、気密試験装置２０は、試験体においてシーリング材１０が省略されたものであり、木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間に通気孔が形成された状態となっている。
このように構成される気密試験装置２０は、送排気孔２３から図示しない送風機を使用して圧力箱体２２の内部を加圧及び減圧させるようにする。
また、気密試験装置２０には、圧力箱体２２の内圧Ｐ１（Ｐａ）を計測する圧力計２５と、膜天井シート２４の外方側で圧力箱体２２から流出した通気量Ｑ（ｍ３／時間）を測定するための通気量測定器２６とが設けられている。
【００２６】
図４に示すように、試験方法としては、送排気孔２３から図示しない送風機を使用して圧力箱体２２の内部を所定の内圧Ｐ１となるように加圧あるいは減圧する。そして、内圧Ｐ１と圧力箱体２２の外側の外圧Ｐ２（Ｐａ）との圧力差ΔＰ（＝Ｐ１−Ｐ２）を変化値とし、この変化値に応じて試験体２１と圧力箱体２２との隙間から圧力箱体２２外方に漏出する通気量Ｑを測定する。このような試験方法によって、実施の形態による試験Ａと比較例による試験Ｂにおける夫々の試験体２１を使用して試験を行う。
【００２７】
次に、上述した気密試験装置２０によって試験を実施した試験結果について説明する。
図５に示す試験結果は、試験Ａと試験Ｂにおける、圧力差ΔＰ値（横軸）に対する通気量Ｑ（縦軸）の変化を示したグラフである。図５のグラフＡが試験Ａ、グラフＢが試験Ｂを示している。
これによると、グラフＢに示す通気孔ありの試験Ｂは、圧力差ΔＰが増加するにしたがって通気量Ｑも増加する傾向になっている。一方、グラフＡに示す通気孔なしの試験Ａは、圧力差ΔＰの増加にかかわらず通気量Ｑはゼロに近い値となっていることが分かる。
このようなことから、木廻り縁４と膜天井廻り縁５との間にシーリング材１０を設けることで、圧力箱体２２の内部を略密封状態にできることが確認された。
【００２８】
上述した本実施の形態による膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造は、第一膜天井シート６を天井２に（隙間無く）密着させることで、天井２の大部分の範囲を封じ込めることができる。このため、アスベストが剥がれ落ちて室内空間Ｒにアスベスト片が飛散することを防止できる。また、施工中に天井２に触れることなく施工できることから、安全性を向上させることができ、アスベストの封じ込め（囲い込み）における信頼性を向上させることができる。
また、施工中に天井２に触れることなく施工できることから、安全性を向上させることができる。
【００２９】
次に、本実施の形態の第一〜第三変形例について、図６及び図７に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図６は本発明の実施の形態の第一変形例による膜天井の設置状態を示す図であって、図２に対応する図であって、図２に対応する図、図７（ａ）、（ｂ）は本発明の実施の形態の第二変形例及び第三変形例による膜天井の設置状態を示す図であって、図２に対応する図である。
図６に示すように、本第一変形例は、実施の形態における膜天井廻り縁５の第一係止部５１（図２参照）に代えて、垂直材５Ａの上端に第二水平材５Ｃが設けられ、この第二水平材５Ｃの端部に断面略凹形の第三係止部５３が形成されている。第三係止部５３には、第二水平材５Ｃより下方斜め方向に突出した凹部一端をなす突出部５３ａと、突出部５３ａに対向した位置に受け部５３ｂとが形成されている。
第一変形例では、上述したコテ状の冶具を使用することなく、第一膜天井シート６を膜天井廻り縁５取り付けることができる。なお、本第一変形例では、室内空間Ｒ側から係止部材８が見えてしまうが、第二膜天井シート７を敷設することにより隠れるためとくに問題はない。
本第一変形例では、第一膜天井シート６が天井２に密着される前工程において、第三係止部５３の突出部５３ａに係止部材８の一端８ｂを係止させ、第一膜天井シート６の引張力によって係止部材８の他端８ｃが受け部５３ｂに当接することで、係止部材８が第三係止部５３に係止される。
【００３０】
また、第二変形例及び第三変形例では、図７（ａ）及び（ｂ）に示すように、膜天井廻り縁５の第一係止部５１の上方を覆うようにして垂直材５Ａの上端に第二水平材５Ｃが設けられていて、膜天井廻り縁５の第二水平部材５Ｃは接着材９を介して天井２に取り付けることができる構造である。
これら第一〜第三変形例では、膜天井１は、膜天井廻り縁５の上面が天井２に接して配置できるため、実施の形態と比較して第一膜天井シート６と天井２とが密着しない範囲を少なくすることができる。
【００３１】
以上、本発明による膜天井シートを用いた天井改修方法および膜天井構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では係止部材８の一部分を第一係止部５１から取り外して吸込み開口１３を形成させているが、これに限定されることはなく、例えば予め第一膜天井シート６に開閉可能な部材を取り付けておくようにしてもよい。
また、本実施の形態ではアスベストが使用された天井２を対象としているが、アスベストを含まない吹き付け天井やコンクリートが露出した天井などで剥がれ落ちを防止するための改装に適用してもかまわない。
また、本実施の形態では接着材９を吹き付け手段によって天井２に吹き付けているが、例えば第一膜天井シート６の上面（天井側）に接着材９を塗布しておくようにしてもかまわない。そして、吹き付け手段に限定されることはなく、塗布する手段であってもよい。
また、本実施の形態では第二膜天井シート７を一段としているが、例えば外観を重要視しない用途（倉庫など）の場合には第二膜天井シート７を設けなくてもよく、また二段以上として複数を設けてもよい。
また、第一膜天井シート６は透明なもので目視点検を可能としたものであるが、とくに点検などの必要がない場合などでは透明性を有するシートであることに限定はされない。
さらに、本実施の形態では膜天井廻り縁５をビス１１によって木廻り縁４に取り付けたものであるが、膜天井廻り縁５の固定方法はこれに限定されることはない。要は、テンションをかけて敷設した膜天井シートの引張力によって木廻り縁４や膜天井廻り縁５が外れないようにしておけばよいのであって、例えば各壁面３同士の膜天井廻り縁５に突っ張り用の補強材を設けておくようにしてもよい。
さらに、木廻り縁４が設けられていない場合に適用することもでき、その場合は膜天井廻り縁５を壁面３に直接固定すればよい。
さらにまた、本実施の形態および変形例では膜天井廻り縁５と係止部材８との係止方法が異なっているが、係止方法について限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【００３２】
【図１】本発明の実施の形態による膜天井の設置状態を示す図である。
【図２】膜天井シートの取付け状況を示す拡大図である。
【図３】膜天井シートと天井との接着施工工程を示す図である。
【図４】膜天井シートにおける気密試験装置を示す説明図である。
【図５】気密試験結果を示すグラフである。
【図６】実施の形態の第一変形例による膜天井の設置状態を示す図であって、図２に対応する図である。
【図７】（ａ）、（ｂ）は実施の形態の第二変形例及び第三変形例による膜天井の設置状態を示す図であって、図２に対応する図である。
【符号の説明】
【００３３】
１ 膜天井
２ 天井
３ 壁面
４ 木廻り縁
５ 膜天井廻り縁
５１ 第一係止部
５２ 第二係止部
５３ 第三係止部
６ 第一膜天井シート
７ 第二膜天井シート
８ 係止部材
９ 接着材
１０ シーリング材
１２ 第二係止部材
１３ 吸込み開口
Ｒ 室内空間
Ｔ 密封空間
【特許請求の範囲】
【請求項１】
第一膜天井シートを天井に沿って敷設する膜天井シートを用いた天井改修方法であって、
接着材を介して前記第一膜天井シートと前記天井とを密着させるようにしたことを特徴とする膜天井シートを用いた天井改修方法。
【請求項２】
前記第一膜天井シートを前記天井に密着させる前に、前記第一膜天井シートを水平に敷設して前記第一膜天井シート及び前記天井の間に形成される密封空間と、室内空間とを連通する吸込み開口を所定箇所に設け、
該吸込み開口から吸気して前記第一膜天井シートを、予め前記天井または前記第一膜天井シートに付着させた前記接着材を介して前記天井に密着させるようにしたことを特徴とする請求項１に記載の膜天井シートを用いた天井改修方法。
【請求項３】
第一膜天井シートを天井に沿って敷設させた膜天井構造であって、
前記第一膜天井シートと前記天井とを密着させる接着材が設けられていることを特徴とする膜天井構造。
【請求項４】
室内壁面または既設の廻り縁に、前記第一膜天井シートの周縁を係止させる膜天井廻り縁が固定され、
前記膜天井廻り縁の被固定面と前記膜天井廻り縁との間にシーリング材が設けられていることを特徴とする請求項３に記載の膜天井構造。
【請求項５】
前記第一膜天井シートの下方に１または複数の第二膜天井シートを設けていることを特徴とする請求項３または４に記載の膜天井構造。
【請求項６】
前記第一膜天井シートは透明性を有していることを特徴とする請求項３乃至５のいずれかに記載の膜天井構造。
【請求項１】
第一膜天井シートを天井に沿って敷設する膜天井シートを用いた天井改修方法であって、
接着材を介して前記第一膜天井シートと前記天井とを密着させるようにしたことを特徴とする膜天井シートを用いた天井改修方法。
【請求項２】
前記第一膜天井シートを前記天井に密着させる前に、前記第一膜天井シートを水平に敷設して前記第一膜天井シート及び前記天井の間に形成される密封空間と、室内空間とを連通する吸込み開口を所定箇所に設け、
該吸込み開口から吸気して前記第一膜天井シートを、予め前記天井または前記第一膜天井シートに付着させた前記接着材を介して前記天井に密着させるようにしたことを特徴とする請求項１に記載の膜天井シートを用いた天井改修方法。
【請求項３】
第一膜天井シートを天井に沿って敷設させた膜天井構造であって、
前記第一膜天井シートと前記天井とを密着させる接着材が設けられていることを特徴とする膜天井構造。
【請求項４】
室内壁面または既設の廻り縁に、前記第一膜天井シートの周縁を係止させる膜天井廻り縁が固定され、
前記膜天井廻り縁の被固定面と前記膜天井廻り縁との間にシーリング材が設けられていることを特徴とする請求項３に記載の膜天井構造。
【請求項５】
前記第一膜天井シートの下方に１または複数の第二膜天井シートを設けていることを特徴とする請求項３または４に記載の膜天井構造。
【請求項６】
前記第一膜天井シートは透明性を有していることを特徴とする請求項３乃至５のいずれかに記載の膜天井構造。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２００７−１００３２０（Ｐ２００７−１００３２０Ａ）
【公開日】平成１９年４月１９日（２００７．４．１９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−２８８３３５（Ｐ２００５−２８８３３５）
【出願日】平成１７年９月３０日（２００５．９．３０）
【出願人】（５９７０５３５２２）リフォジュール株式会社 (8)
【出願人】（００００１００６５）フクビ化学工業株式会社 (150)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年４月１９日（２００７．４．１９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年９月３０日（２００５．９．３０）
【出願人】（５９７０５３５２２）リフォジュール株式会社 (8)
【出願人】（００００１００６５）フクビ化学工業株式会社 (150)
【Ｆターム（参考）】
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