説明

膜転位剤および製薬学的有効成分の複合物

【課題】経口投与された有効成分の吸収を促進する送達系の提供。
【解決手段】輸送ペプチド(膜転位ペプチド)として特定のアミノ酸配列を含む逆反転ペプチドを含んでなる組成物、それらを含んでなるキメラ分子、該ペプチドと有効成分又は活性粒子との複合体。多様な作用物質の膜輸送を達成し、製薬学的有効成分の細胞中への取り込みを高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2000年9月27日出願の特許出願第09/671,089号明細書(そっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)の一部継続出願であり、また、表題「Lipid−Comprising Drug Delivery Complexes and Method for Their Production(脂質を含んでなる薬物送達複合体およびそれらの製造方法)」で2001年4月30日出願の米国仮出願第________号(そっくりそのまま本明細書に組み込まれる)の利益もまた主張する。
【0002】
本発明は、細胞中へ、細胞内区画の中へ若しくは外へ、そして細胞層を横切る製薬学的有効成分の取り込みを高めるペプチドに関する。より具体的には、本発明は、直接若しくは製薬学的有効成分が負荷された粒子からのいずれかで、細胞中へ、細胞内区画の中へ若しくは外へ、そして細胞層を横切る製薬学的有効成分の取り込みを高める膜転位(membrane translocating)ペプチド、そのおよびそれをコードするヌクレオチド配列に関する。
【背景技術】
【0003】
胃腸管(以下「GIT」)を内張りする上皮は経口で投与された製薬学的有効成分(以下「有効成分」)の吸収に対する主要な障壁である。GITの上皮を横切る吸収は、細胞を通る経細胞輸送および細胞間の傍細胞輸送によることができる。経細胞輸送は、限定されるものでないが受容体媒介性、輸送体媒介性、チャンネル媒介性、飲作用およびエンドサイトーシスの機構ならびに拡散を挙げることができる。傍細胞輸送は限定されるものでないが接着結合を通る動きを挙げることができる。GITの上皮を横切る身体中への有効成分の取り込みの非侵襲的増強方法の開発がとりわけ興味深い(非特許文献1)。
【0004】
非侵襲的方法を開発するために、GIT内の特異的GIT膜受容体、輸送体、チャンネル、飲作用若しくはエンドサイトーシス性の標的経路に優先的に結合する特定のペプチド配列(以下「ターゲッティングペプチド」)を同定するのにファージディスプレイが使用されてきた。ファージディスプレイライブラリーを用いてスクリーニングされた標的経路には、GIT膜輸送体HPT1、hPEPT1、D2HおよびhSI.HPT1ならびにhPEPT1輸送ジペプチドおよびトリペプチドが包含される。DH2は中性および塩基性アミノ酸を輸送し、また、ある範囲のアミノ酸転位酵素の輸送活性化タンパク質である。hSIは糖代謝に関与しかつ空腸の刷子縁タンパク質の9%を含んでなる。HPT1、hPEPT1、D2HおよびhSI膜輸送体と相互作用する特定のペプチド配列が、以下の4出願(そのそれぞれはそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)すなわち米国特許出願第09/079,819号、同第09/079,723号および同第09/079,678号明細書、ならびに第WO 98/51325号明細書として公開されたPCT出願第PCT/US98/10088号明細書で同定されている。
【0005】
固有の細胞膜転位特性をもつペプチドを同定するために標的経路に基づかないアッセイが使用されている。これらの細胞膜転位ペプチドは細胞膜の脂質と直接相互作用しかつそれらに浸透する(非特許文献2)。カポジの線維芽細胞増殖因子のシグナル配列の中央の疎水性h領域すなわちAAVLLPVLLAAP(配列番号1)が膜転位ペプチドであると考えられている。本ペプチド(配列番号1)は、細胞内タンパク質の機能および細胞内過程を研究するために、脂質二重層を通って生存細胞中に多様な短いペプチド(<25mer)を送達するための担体として使用されている(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。配列番号1を含有する41kDaのグルタチオンS−トラン
スフェラーゼ融合タンパク質(配列番号1に融合されたGST−Grbs−SH)が、NIH 3T3線維芽細胞中に輸入されかつ上皮増殖因子誘導性のEGFR−Grb2会合およびMAPキナーゼ活性化を阻害することが示されている(非特許文献7)。しかしながら、これらの研究は、有効成分が膜転位ペプチドに複合体形成されている場合、若しくは有効成分が粒子中に組み込まれかつ該粒子が膜転位ペプチドで修飾(以下「複合体形成」)されている場合に細胞中へ、細胞内区画の中へ若しくは外へ、または細胞層を横切る有効成分の取り込みを高める膜転位ペプチドの使用を取り扱っていない。
【0006】
有効成分は限定されるものでないが経口、鼻、粘膜、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、クモ膜下腔および皮下を挙げることができる多様な経路により動物に投与し得るとは言え経口投与が好ましい経路であるために、細胞膜を横切る有効成分の動きを高める能力は重要である。鼻、粘膜、局所および経皮投与は粘膜若しくは皮膚を通り循環中への薬物吸収に依存する。静脈内投与は、高濃度の薬物の急速な蓄積からの副作用、患者不快感および注入部位での感染症をもたらし得る。筋肉内投与は注入部位で疼痛を引き起こし得る。皮下投与は大容量若しくは刺激性物質に適さない。経口投与は好ましい経路であるとは言え、多くの有効成分はGITの上皮を横切って効率的に吸収されない。これは、GITの管腔内での有効成分の酵素的分解、有効成分に対するGITの上皮の制限された浸透性、有効成分の大きな分子サイズおよび有効成分の親水性の特性から生じる(非特許文献8)。経口製剤を開発するためには、有効成分は、GITの管腔内での酵素的分解から保護され、有効濃度でGITの吸収性上皮細胞に提示され、そして頂端から側底の方向で上皮を横切って「動かされ」なければならない。
【0007】
従って、経口薬物投与の利点により、経口で飲み込まれた有効成分をGITの管腔内での酵素的分解から保護しかつGITを内張りする上皮細胞の中に、そして横切る経口で飲み込まれた有効成分の吸収を促進する送達系に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Evers,P.Developments in Drug Delivery:Technology and Markets,Financial Times Management Report、1995
【非特許文献2】Fongら Drug Development Research 33:64、1994
【非特許文献3】Linら J.Biol.Chem.271:5305、1996
【非特許文献4】Liuら Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11819、1996
【非特許文献5】Rojasら J.Biol.Chem.271:27456、1996
【非特許文献6】Rojasら、Biochem.Biophys.Res.Commun.234:675、1997
【非特許文献7】Rojasら Nature Biotechnology 16:370、1998
【非特許文献8】Fix,JA.J.Pharmac.Sci.85:1282、1996
【発明の概要】
【0009】
本発明は、膜転位ペプチド(以下「MTLP」若しくは「転位ペプチド」のいずれかと互換性に称される)若しくはそれをコードするヌクレオチド配列、MTLP−有効成分複合体およびMTLP−活性粒子複合体を提供することにより上で示された必要性を成就し、ここでMTLPが脂質膜を横切る有効成分若しくは活性粒子(active part
icle)の動きを高める。より具体的には、本発明は、MTLP、MTLP−有効成分複合体およびMTLP−活性粒子複合体を提供し、ここでMTLPは、ヒトを包含する動物中の、細胞内へ、細胞内区画の中へ若しくは外へ、および細胞層を横切る有効成分若しくは活性粒子の動きを高める。MTLP、MTLP−有効成分複合体およびMTLP−活性粒子複合体の作成方法もまた包含される。
【0010】
組成物およびそれらのペプチド
より正確には、第一の一般的一局面において、本発明は転位ペプチドを含んでなる組成物であり、前記転位ペプチドは、輸送ペプチド、前記輸送ペプチドを含んでなる伸長されたペプチド、および前記輸送ペプチドの最低4アミノ酸の輸送体活性フラグメント(transport−active fragment)よりなる群から選択され、前記輸送ペプチドはL−ペプチド、d−ペプチドおよび逆反転(retroinverted)ペプチドよりなる群から選択され、かつ
前記L−ペプチドは配列番号2〜13および15〜24よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、
前記d−ペプチドは、配列番号2〜24のL−ペプチドのd−体に対応する配列番号102〜124よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、また、
該逆反転ペプチドは、配列番号2〜24のL−ペプチドの逆反転体に対応する配列番号202〜224のペプチドよりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0011】
該組成物(第一の一般的局面)の特定の一態様は、末端若しくは末端近くのリシンがある役割を演じているものであり:
該L−ペプチドは配列番号2〜4、16、23および24よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、
該d−ペプチドは配列番号2〜4、16、23および24のL−ペプチドのd−体に対応する配列番号102〜104、116、123および124よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、また、
該逆反転ペプチドは、配列番号2〜4、16、23および24のL−ペプチドの逆反転体に対応する配列番号202〜204、216、223および224のペプチドよりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0012】
該組成物の別の特定の態様において、輸送ペプチドは部分的に若しくは完全に環状である。関連する一態様において、輸送ペプチドのいかなるフラグメントもまた部分的に若しくは完全に環状である。とりわけ興味深い環状ペプチドは、
L−ペプチドが配列番号5〜13よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し;
d−ペプチドが配列番号5〜13のL−ペプチドのd−体に対応する配列番号105〜113よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、かつ
逆反転ペプチドが、配列番号5〜13のL−ペプチドの逆反転体に対応する配列番号205〜213のペプチドよりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する
ものである。
【0013】
該組成物の別の特定の態様において、転位ペプチドは輸送ペプチドの伸長されたペプチドである。好ましくは、伸長されたペプチドは長さが100アミノ酸を超えず、より好ましくは長さが50アミノ酸を超えない。
【0014】
該組成物のさらなる一態様において、転位ペプチドは輸送ペプチドである。
【0015】
輸送体活性フラグメントが輸送ペプチドの最低6アミノ酸、より好ましくは8アミノ酸であることが好ましい。
【0016】
好ましい態様において、転位ペプチドのカルボキシル端基はアミド基を創製するように修飾されているものである。
【0017】
上の組成物には転位ペプチドを含んでなるものが緊密に関係し、前記転位ペプチドは輸送ペプチド、前記輸送ペプチドを含んでなる伸長されたペプチド、および前記輸送ペプチドの最低4アミノ酸の輸送体活性フラグメントよりなる群から選択され、前記輸送ペプチドはそのカルボキシル端でアミド基で封鎖されたアミノ酸配列、配列番号14を有するL−ペプチドであり、かつ、前記フラグメントのいずれもまたそのカルボキシル端でアミド基で封鎖されている。
【0018】
前述の組成物は例えば有効成分をさらに含むことができ、ここで該転位ペプチドは有効成分と複合体形成されて転位ペプチド−有効成分複合体を形成する。
【0019】
加えて、該組成物は例えば活性粒子をさらに含むことができ、ここで該転位ペプチドは活性粒子と複合体形成されて転位ペプチド−活性粒子複合体を形成する。
【0020】
キメラペプチド
転位ペプチドを含んでなるキメラポリペプチドもまた本発明の一部である。具体的には、こうしたポリペプチドは、(A)本発明の転位ペプチド、(B)転位可能なペプチド、および転位ペプチドを転位可能なペプチドに直接連結するアミノ酸リンカー配列を含んでなり、前記転位可能なペプチドは3と200アミノ酸との間であり、また、前記アミノ酸リンカー配列は1と20アミノ酸との間である。
【0021】
該キメラペプチドの特定の態様において、転位可能なペプチドは3と30アミノ酸との間である。
【0022】
他の態様において、転位可能なペプチドはオピオイドペプチド(その例は本明細書の別の場所に列挙されている)である。
【0023】
いくつかの特定の態様において、リンカー配列は7アミノ酸を超えず、好ましくは3アミノ酸を超えない。いくつかの有用な態様において、リンカー配列は1アミノ酸である。
【0024】
いくつかの好ましい態様において、リンカー配列中のアミノ酸の最低50%がリシンである。より好ましくは、リンカー配列中のアミノ酸の最低80%がリシンである。最も好ましくは、リンカー配列中のアミノ酸の全部がリシンである。
【0025】
キメラ構築物
キメラ構築物は本発明のキメラペプチドに緊密に関係する。こうした構築物は、(A)本発明の転位ペプチド、(B)転位可能なペプチド、および(C)転位ペプチドを転位可能なペプチドに直接連結する非アミノ酸リンカーを含んでなり、前記転位可能なペプチドは3と200アミノ酸との間である。
【0026】
好ましい非アミノ酸リンカーは1000未満(より好ましくは500未満)の分子量を有するものである。
【0027】
好ましい非アミノ酸リンカーは、転位ペプチドがElan207でありかつ転位可能なペプチドがκオピオイドペプチドである場合に、対応するキメラペプチドに対して単一リシンリンカーが提供するところのSIF中の安定性の最低50%(より好ましくは最低100%)をキメラ構築物に提供するものである(37℃で1時間、ここで安定性はキメラ構造若しくはペプチドの構造の保持により示される)。
【0028】
好ましい非アミノ酸リンカーは、転位ペプチドがElan207でありかつ転位可能なペプチドがκオピオイドペプチドである場合に対応するキメラペプチドのものの2倍を超えないIC50をもつキメラ構築物を提供するものであり、また、IC50は本明細書に記述される放射標識κペプチドラット脳ホモジェネートアッセイで測定する。
【0029】
非アミノ酸リンカーについての上の好ましい局面の2種若しくはそれ以上がなおより好ましい。
【0030】
非アミノ酸リンカーの例は:
未置換および置換双方のアルキル、アリール、若しくは大環状R基を包含し得る炭化水素基である。アルキルはいかなる直鎖状、分枝状、飽和、不飽和若しくは環状のC1−20アルキル基も意味することを意図している。アリールは6員環に基づくいかなる芳香族環状炭化水素も意味することを意図している。大環状化合物(macrocycle)は7個以上の炭素原子を含有する最低1個の環を含有するR基を指す。置換は、最低1個の炭素原子が原子H、C、N、O、S、F、Cl、BrおよびIを含んでなるいずれかの官能基に共有結合されているいかなるアルキル、アリール、若しくは大環状基を意味することを意図している。詳細については、第WO 01/01/13957号明細書として公開された特許出願第PCT/US00/23440号明細書(その5〜7ページはそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0031】
付加的な可能なリンカーは、第WO 99/67284号明細書として公開されたPCT出願/US99/13660号明細書、とりわけ21〜23ページに要約されている。
【0032】
いくつかのリンカーは、リンカーの切断が体内の特定の部位、例えば特定の組織、特定の液体、特定の細胞若しくは特定の亜細胞区画でのみ望ましい状況に十分に適する。リンカーのいくつかがこうした切断特異性を表す例は、後に続くようにそれらのリンカーの後のカッコ内に示す。すなわち
アミド(アミダーゼ感受性)
カルバメート(血漿中で安定、誘発性の放出)
ジスルフィド(血漿中で安定、細胞区画中で還元される、BBBの横断の間に還元される)
エステル(pH感受性、エステラーゼ感受性)
カーボネート(pH感受性、非特異的酵素的分解)。
【0033】
本発明の方法
本発明の組成物を利用する方法がそれらに関する。
【0034】
本発明の一方法は、本発明のキメラペプチドを経口で投与することを含んでなる、血液にキメラペプチドを送達するものである。
【0035】
本発明の別の方法は、本発明のキメラ構築物を投与することを含んでなる、体内の組織、液体、細胞および亜細胞区画よりなる群から選択される部位へのキメラ構築物の送達方法である。
【0036】
本発明の別の方法は、転位ペプチド−有効成分複合体を使用することを含んでなり、該転位ペプチドは脂質膜を横切る有効成分の動きを高める、脂質膜を横切る有効成分の動きを高めるためである。
【0037】
本発明の別の方法は、転位ペプチド−活性粒子複合体を使用することを含んでなり、該
転位ペプチドは脂質膜を横切る活性粒子の動きを高める、脂質膜を横切る活性粒子の動きを高める方法である。
【0038】
本発明のなお別の方法は、脂質膜を横切って有効成分を輸送する高められた能力を有する化合物の同定方法であり、該化合物は、上皮細胞層の細胞膜、細胞内膜、頂端および基底膜よりなる群から選択される膜を横切る輸送について転位ペプチドと競合する。特定の一態様において、上皮細胞層は分極した上皮細胞層である。
【0039】
本発明の別の方法は、転位ペプチド−有効成分複合体および転位ペプチド−活性粒子複合体よりなる群から選択される複合体をこうした処置の必要な動物に経口で投与することを含んでなる、動物における病理学的障害の治療方法であり、ここで該病理学的障害を治療するのに有効な量の有効成分が該動物の胃腸の上皮を横切って循環中に動かされる。
【0040】
本発明のMTLPは、完全長のMTLPと関連する1種若しくはそれ以上の既知の機能的活性を表すことが可能である。こうした機能的活性は、限定されるものでないが、膜と相互作用する能力、および限定されるものでないが分極し分化したヒト由来Caco−2細胞を挙げることができる上皮細胞を横切るレポーター薬物分子(fMLP)の輸送について競合する能力を挙げることができる。付加的な機能的活性は、限定されるものでないが、限定されるものでないが抗MTLP抗体に結合する能力および膜との相互作用についてMTLPと競合する能力を挙げることができる抗原性;ならびに、限定されるものでないが抗体生成を刺激する能力を挙げることができる免疫原性を挙げることができる。
【0041】
MTLP−有効成分複合体の作成方法は、限定されるものでないがMTLPおよび有効成分の共有結合ならびにMTLPおよび有効成分の非共有結合を挙げることができる。MTLP−活性粒子複合体の作成方法は、限定されるものでないが、限定されるものでないがナノ粒子、微粒子、カプセル、リポソーム、非ウイルスベクター系およびウイルスベクター系を挙げることができる粒子中に有効成分を組み込むことを挙げることができる。MTLPは、限定されるものでないが、活性粒子への吸着、活性粒子への非共有結合、ならびに、活性粒子、該活性粒子を合成するのに使用したポリマー(1種若しくは複数)、該ポリマーを合成するのに使用した単量体(1種若しくは複数)および活性粒子を含んでなる他の成分への直接若しくはリンカーを介してのいずれかの共有結合を挙げることができる方法により活性粒子に複合体形成し得る。
【0042】
本発明はまたMTLPをコードするヌクレオチド配列も包含する。ヌクレオチド配列の作成方法は限定されるものでないが組換え手段を挙げることができる。
【0043】
MTLP、MTLP−有効成分複合体およびMTLP−活性粒子複合体は、単独で、限定されるものでないが標的経路、核取り込み経路およびエンドソーム経路に結合する分子、粘膜接着を可能にする分子、脂質膜を横切る若しくは水を満たされた孔を通る拡散を助長する分子、ならびに細胞内トラフィッキングを調節若しくは指図する分子を挙げることができる他の分子とともに若しくはそれに複合されて使用し得る。すなわち、多様な機構を同時に使用することにより有効成分の生物学的利用性を高めうる。
【0044】
関係する発明は、以下すなわち
粒子が微粒子である、転位ペプチド−活性粒子複合体を含んでなる組成物;
粒子がナノ粒子である、転位ペプチド−活性粒子複合体を含んでなる組成物;
該粒子がリポソームである、転位ペプチド−活性粒子複合体を含んでなる組成物;
その表面上に転位ペプチドを発現するよう改変されているウイルスDNA粒子を含んでなる組成物;
ウイルス産生および精製後に転位ペプチドに複合体形成されるウイルスDNA粒子を含ん
でなる組成物;
哺乳動物細胞中でのウイルス産生およびそれからの精製後に転位ペプチドに複合体形成されるウイルスDNA粒子を含んでなる組成物;ならびに
転位ペプチドに複合体形成されている、ウイルスに基づかない遺伝子送達系を含んでなる組成物
における転位ペプチド(すなわちMTLP)の使用である。
【0045】
さらなる関係する発明は、以下の方法すなわち
脂質膜を横切る有効成分の動きを高める方法;
有効成分の細胞中への取り込みを高める方法;
細胞層を横切る有効成分の取り込みを高める方法;
上皮細胞中への有効成分の取り込みを高める方法;
上皮細胞層を横切る有効成分の取り込みを高める方法;
GITを内張りする上皮細胞層を横切り動物の循環中への有効成分の取り込みを高める方法;
脂質膜を横切る活性粒子の動きを高める方法;
細胞中への活性粒子の取り込みを高める方法;
細胞層を横切る活性粒子の取り込みを高める方法;
上皮細胞中への活性粒子の取り込みを高める方法;
上皮細胞層を横切る活性粒子の取り込みを高める方法;
GITを内張りする上皮細胞層を横切り動物の循環中への活性粒子の取り込みを高める方法;
ウイルスに基づかない遺伝子送達系による細胞内遺伝子送達の提供方法;
転位ペプチドに複合体形成されている、ウイルスに基づかない遺伝子送達系による細胞内遺伝子送達の提供方法;
完全長の転位ペプチドの不可欠の機能的活性を保持する転位ペプチドを同定するための迅速スクリーニング方法の提供方法;
機能的活性をアッセイするための細胞に基づくスクリーニングの提供方法;および
転位ペプチドの特性を特徴づけるための細胞に基づくスクリーニングの提供方法
における転位ペプチドの使用である。
【0046】
本発明の別の局面は、ある量の転位ペプチド−有効成分複合体の経口投与による病理学的障害の診断方法の提供方法であり、該有効成分は、診断薬の全身濃度が該病理学的障害を診断するのに有効であるような診断薬である。
【0047】
本発明の別の局面は、転位ペプチド−有効成分複合体の経口投与による病理学的障害の予防方法の提供方法であり、該有効成分は、予防薬の全身濃度が該病理学的障害を予防するのに有効であるような予防薬である。
【0048】
本発明の別の局面は、転位ペプチド−有効成分複合体の経口投与による病理学的障害の治療方法であり、該有効成分は、治療薬の全身濃度が該病理学的障害を治療するのに有効であるような治療薬である。
【0049】
本発明の別の局面は、転位−活性粒子複合体の経口投与による病理学的障害の診断方法の提供方法であり、該活性粒子は、診断薬の全身濃度が該病理学的障害を診断するのに有効であるような診断薬を含有する。
【0050】
本発明の別の局面は、転位ペプチド−活性粒子複合体の経口投与による病理学的障害の予防方法の提供方法であり、該活性粒子は、予防薬の全身濃度が該病理学的障害を予防するのに有効であるような予防薬を含有する。
【0051】
本発明の別の局面は、転位ペプチド−活性粒子複合体の経口投与による病理学的障害の治療方法の提供方法であり、該活性粒子は、治療薬の全身濃度が該病理学的障害を治療するのに有効であるような治療薬を含有する。
【0052】
本発明の他の目的、特徴および利点は、開示される態様の以下の詳細な記述および付属として付けられる請求の範囲の吟味後に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ZElan094(16mer)(配列番号2)のハイドロパシープロットを示す。
【図2】開放ループラットモデルにおけるZElan094−インスリンナノ粒子複合体ならびにHAX42、PAX2およびP31−インスリンナノ粒子複合体からのインスリンのin vivo送達後の全身の血中インスリン濃度を示す。各点は6〜7動物の平均である。
【図3】開放ループラットモデルにおけるZElan094−インスリンナノ粒子複合体ならびにHAX42、PAX2およびP31−インスリンナノ粒子複合体からのインスリンのin vivo送達後の全身血糖値を示す。各点は6〜7動物の平均である。
【図4】MTLP、ZElan094、178、187およびターゲッティングペプチドZElan022の存在下でのCaco−2単層を横切るレポーター薬物H−fMLPの輸送を示す。
【図5】増大する濃度のMTLP、ZElan094の存在下でのCaco−2単層を横切るレポーター薬物H−fMLPの輸送を示す。
【図6】Caco−2単層を横切るH−κペプチド複合物の輸送を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、新規膜転位ペプチド(MTLP、あるいは「転位ペプチド」)、それをコードするヌクレオチド配列、MTLP−有効成分複合体およびMTLP−活性粒子複合体に関し、MTLPは膜を横切る有効成分若しくは活性粒子の動きを高める。より具体的には、本発明は、新規MTLP、それをコードするヌクレオチド配列、MTLP−有効成分複合体およびMTLP−活性粒子複合体に関し、MTLPは、ヒトを包含する動物中の細胞の中へ、細胞内区画の中へおよび外へ、ならびに細胞層を横切るMTLP−有効成分複合体中の有効成分、MTLP−活性粒子複合体中の有効成分およびMTLP活性粒子複合体中の活性粒子の動きを高める。MTLPの作成方法および使用方法もまた包含する。
【0055】
本発明はまた、有効成分の全身濃度が病理学的障害を診断、予防若しくは治療するのに有効であるような、ある量のMTLP−有効成分複合体若しくはMTLP−活性粒子複合体を動物に投与することによる、病理学的障害の診断、予防若しくは処置の必要な動物における病理学的障害の診断、予防若しくは治療方法も提供する。
【0056】
本明細書で使用されるところの「有効成分」はヒトを包含する動物で使用し得るいかなる診断、予防若しくは治療薬も包含する。
【0057】
本明細書で使用されるところの「活性粒子」は1種若しくはそれ以上の有効成分が負荷されている粒子である。
【0058】
本明細書で使用されるところの膜転位ペプチドは、生理学的膜の脂質と直接相互作用しかつそれに浸透するペプチドである。
【0059】
本明細書で使用されるところの「MTLP」は、本明細書で言及されるいかなる転位ペ
プチドも指す一般的用語である。配列が本明細書に記述されている特定のMTLPは、その全部が順にMTLPであるより大きなペプチド若しくはポリペプチドの一部であり得る。MTLPの輸送活性フラグメントもまたMTLPである。
【0060】
転位ペプチドの「輸送活性フラグメント」は、実施例15で本明細書に記述されるWistarラットモデルでの十二指腸内点滴注入後にκペプチドと比較してκペプチドの血漿H生物学的利用率を30%だけ増大させるものである。
【0061】
「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は若干の程度まで本明細書で互換性に使用され、そして2者間の正確な大きさの境界は意図していない。
【0062】
「転位ペプチドを含んでなる組成物」は、特定のペプチドのみよりなる均一な組成物のみならず、しかしまたこうした転位ペプチドのアミノ若しくはカルボキシル端に共有結合されている末端基部分を包含する付加的成分を含有する組成物も包含し得る。アミド、ダンシルおよびビオチン基のような末端基部分中のこうしたものの特定の例を本明細書に提供する。
【0063】
「転位ペプチド」という用語は多様な可能な輸送ペプチドの一群を指す請求の範囲の表現において便宜性のため使用される。転位ペプチドと輸送ペプチドの間の機能の生化学的差異は意図していない。
【0064】
本明細書で使用されるところの「複合体形成される」は、有効成分若しくは活性粒子へのMTLPの吸着、非共有結合および共有結合を包含する。
【0065】
本明細書で使用されるところの「MTLP−有効成分複合体」は有効成分に複合体形成されている1種若しくはそれ以上のMTLPを包含する。
【0066】
本明細書で使用されるところの「MTLP−活性粒子複合体」は活性粒子に複合体形成されている1種若しくはそれ以上のMTLPを包含する。
【0067】
使用される有効成分は、診断、予防若しくは治療されるべき病理学的状態、それが投与されるべき個体、および投与経路に依存する。有効成分は、限定されるものでないが、造影剤、抗原、抗体、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、遺伝子、遺伝子を修正するハイブリッドオリゴヌクレオチド、アプタマーオリゴヌクレオチド、三重らせんを形成するオリゴヌクレオチド、リボザイム、シグナル伝達経路阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、DNA修飾剤、治療的遺伝子、治療的遺伝子送達のための系、限定されるものでないが米国薬局方および他の既知の薬局方に列挙されるものを挙げることができる薬物および他の作用物質を挙げることができる。
【0068】
薬物は、限定されるものでないが、ペプチド、タンパク質、ホルモンおよび鎮痛薬、心血管系薬、麻酔薬、アンタゴニスト、キレート剤、化学療法剤、鎮静薬、降圧薬、抗狭心症薬、抗偏頭痛薬、抗凝固薬、制吐薬、抗腫瘍薬および抗利尿剤を挙げることができる。ホルモンは、限定されるものでないが、インスリン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子調節タンパク質、心房性ナトリウム利尿タンパク質、コロニー刺激因子、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン、ソマトトロピン、ソマトスタチン、ソマトメジン、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、オキシトシン、エストラジオール、成長ホルモン、酢酸リュープロリド、第VIII因子、テストステロンおよびそれらの類似物を挙げることができる。鎮痛薬は、限定されるものでないが、フェンタニル、スフェンタニル、ブトルファノール、ブプレノルフィン、レボルファノール、モルヒネ、ヒドロモルホ
ン、ヒドロコデイン、オキシモルホン、メサドン、リドカイン、ブピバカイン、ジクロフェナク、ナプロキセン、バペリンおよびそれらの類似物を挙げることができる。抗偏頭痛薬は、限定されるものでないがヘパリン、ヒルジンおよびそれらの類似物を挙げることができる。抗凝固薬は、限定されるものでないがスコポラミン、オンダンセトロン、ドンペリドン、エトクロプラミドおよびそれらの類似物を挙げることができる。心血管系薬、降圧薬および血管拡張薬は、限定されるものでないが、ジルチアゼム、クロニジン、ニフェジピン、ベラパミル、硝酸イソソルビド、有機硝酸塩、ニトログリセリンおよびそれらの類似物を挙げることができる。鎮静剤は、限定されるものでないがベンゾジアゼピン類、フェノチオジン類およびそれらの類似物を挙げることができる。麻酔薬は、限定されるものでないがナルトレキソン、ナロキソンおよびそれらの類似物を挙げることができる。キレート剤は、限定されるものでないがデフェロキサミンおよびその類似物を挙げることができる。抗利尿薬は、限定されるものでないがデスモプレシン、バソプレシンおよびそれらの類似物を挙げることができる。抗腫瘍薬は、限定されるものでないが、5−フルオロウラシル、ブレオマイシン、ビンクリスチン、プロカルバジン、テメゾラミド、CCNU、6−チオグアニン、ヒドロキシ尿素およびそれらの類似物を挙げることができる。
【0069】
有効成分は中性若しくは塩の形態で処方し得る。製薬学的に許容できる塩は、限定されるものでないが、遊離アミノ基と形成されるもの;遊離カルボキシル基と形成されるもの;ならびに、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカイン由来のものを挙げることができる。有効成分は、限定されるものでないが可溶性、不溶性、浸透性、非浸透性、生物分解性若しくは胃保持性ポリマー若しくはリポソームを挙げることができる製薬学的に許容できる成分から調製される粒子中に負荷し得る。こうした粒子は、限定されるものでないが、ナノ粒子、生物分解性ナノ粒子、微粒子、生物分解性微粒子、ナノスフェア、生物分解性ナノスフェア、マイクロスフェア、生物分解性マイクロスフェア、カプセル、エマルション、リポソーム、ミセルおよびウイルスベクター系を挙げることができる。
【0070】
MTLPは機能的活性を有する。こうした機能的活性は、限定されるものでないが、細胞中、細胞内区画の中へおよび外へ、ならびに細胞層を横切る有効成分の取り込みを高めること、ならびに、細胞中へ、細胞層を横切る若しくは細胞内区画の中へおよび外への有効成分の取り込みを高めることにおいて完全長のペプチドと競合することを挙げることができる。
【0071】
本発明のMTLPの例は、限定されるものでないが一次アミノ酸配列として実質的に表1に描かれるところのアミノ酸配列の全部若しくは一部を含有するものを挙げることができる。
【0072】
【表1】

【0073】
配列番号2のアミノ酸配列を有するL−ペプチドはKKAAAVLLPVLLAAPであることができる。ZElan094を含んでなる組成物は配列番号2のL−ペプチドを含んでなり、また、K(ε−ダンシル)基およびアミド基双方をさらに含んでなる。
【0074】
16残基の疎水性ペプチドZElan094(配列番号2)は配列において12残基の疎水性ペプチド配列AAVLLPVLLAAP(配列番号1)(Rojasら Nature Biotechnology 16:370、1998)に関係づけられる。しかしながら、16残基のZElan094は、それがN末端に4個の付加的アミノ酸残基KKKAおよびC末端に封鎖するアミドを有するために12残基の配列番号1と異なる。これらのN末端およびC末端の修飾はそれぞれMTLPの溶解性およびin vivo安定性を高めるよう設計されている。NH末端のアラニンは該ペプチドのαらせんの特性にもまた寄与しうる。
【0075】
本発明のMTLPは、ZElan094の全部若しくは一フラグメントを含んでなるかまたはZElan094の連続するアミノ酸の最低4個を有するペプチドを包含する。本発明のMTLPはZElan094の領域に実質的に相同である配列もまた包含する。好ましくは、これらは同一の大きさの配列にわたって最低70%、80%若しくは90%の同一性を示す。
【0076】
当業者はMTLPの活性を有意に変えることなくそれら中の化学的変化をなし得ること
が理解される。
【0077】
MTLP、ZElan094、Felan 094、ZElan 094R、176−193、204NおよびN204のペプチド配列(配列番号2〜24)をコードする核酸配列の例を表2(配列番号25〜47)に提供する。しかしながら、ヌクレオチドのコーディング配列の縮重により、実質的に同一のアミノ酸をコードする異なるヌクレオチド配列を使用してよい。すなわち、異なるコドンの置換により変えられたヌクレオチド配列が機能的に同等なアミノ酸をコードしてサイレント変化を生じさせ得る。
【0078】
MTLPは、化学的方法(米国特許第4,244,946号、同第4,305,872号および同第4,316,891号明細書;Merrifieldら J.Am.Chem.Soc.85:2149、1964;Valeら Science 213:1394、1981;Markiら J.Am.Chem.Soc.103:3178、1983);組換えDNA法(Maniatis、Molecular Cloning、a Laboratory Manual、第2版 Cold Spring Harbor
Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1990);ウイルス発現、若しくは当業者に既知の他の方法を使用して合成してよい。
【0079】
化学的方法は限定されるものでないが固相ペプチド合成を挙げることができる。簡潔には、固相ペプチド合成はC末端アミノ酸のカルボキシル基を樹脂に結合すること、およびN−α保護アミノ酸を連続的に付加することよりなる。保護基は当該技術分野で既知のいずれであってもよい。成長するペプチド鎖にアミノ酸を付加する前に、前のアミノ酸の保護基を除去する(Merrifield J.Am.Chem.Soc.85:2149
1964;Valeら Science 213:1394、1981;Markiら
J.Am.Chem.Soc.103:3178、1981)。その後、合成されたペプチドを当該技術分野で既知の方法により精製する。
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
好ましくは、固相ペプチド合成は、限定されるものでないがApplied Biosystems Inc.(ABI)モデル431Aを挙げることができる自動ペプチド合成機を使用し、ABIにより供給される「Fastmoc」合成プロトコルを使用して行う。このプロトコルはカップリング剤としてヘキサフルオロリン酸2−(1H−ベンゾトリアゾル−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(HBTU)を使用する(Knorrら Tet.Lett.30:1927、1989)。合成は0.25mmolの商業的に入手可能な4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−(9−フルオレニルエトキシカルボニル)アミノメチル)フェニノキシポリスチレン樹脂上で実施し得る(Rink H.Tet.Lett.28:3787、1987)。Fastmocプロトコルに従いFmoncアミノ酸(1mmol)をカップリングする。N−メチルピロリドン(NMP)を溶媒として用い、HBTUはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解する。以下の側鎖で保護されたFmocアミノ酸誘導体、すなわちFmocArg(Pmc)OH;FmocAsn(Mbh)OH;FmocAsp(tBu)OH;FmocCys(Acm)OH;FmocGlu(tBu)OH;FmocGln(Mbh)OH;FmocHis(Tr)OH;FmocLys(Boc)OH;FmocSer−(tBu)OH;FmocThr(tBu)OH;FmocTyr(tBu)OH(略語:Acm:アセトアミドメチル;Boc:tert−ブトキシカルボニル;tBu:tert−ブチル;Fmoc:9−フルオレニルメトキシカルボニル;Mbh:4,4’−ジメトキシベンズヒドリル;Pmc:2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル;Tr:5 トリチル。)を使用する。
【0083】
各合成の終わりにペプチドの量を紫外分光法によりアッセイする。乾燥ペプチド樹脂のサンプル(約3〜10mg)を秤量し、その後DMA中20%ピペリジン(10ml)を添加する。30分の超音波処理後に、ジベンゾフルベン−ピペリジン付加物(N末端のFmoc基の切断により形成される)のUV(紫外)吸光度を301nmで記録する。ペプチド置換(mmol/g)を、等式:
【0084】
【数1】

【0085】
(式中Aは301nmでの吸光度、vはDMA中20%ピペリジンのml、7800はジベンゾフルベン−ピペリジン付加物の励起係数(mol/dm/cm)、およびwはペプチド樹脂のサンプルのmgである)
に従って計算する。DMA中20%ピペリジンを使用してN末端のFmoc基を切断し、その後無水酢酸およびDMA中ピリジンを使用してアセチル化する。ペプチド樹脂はDMA、CHClおよびジエチルエーテルで徹底的に洗浄する。
【0086】
切断および脱保護に使用される方法(Kingら Int.J.Peptide Protein Res.36:255、1990)は、限定されるものでないが、風乾したペプチド樹脂を硫化エチルメチル(EtSMe)、エタンジチオール(EDT)およびチオアニソール(PhSMe)でおよそ20分間処理すること、ならびに95%水性トリフルオロ酢酸(TFA)を添加することを挙げることができる。1グラムのペプチド樹脂あたり、TFA:EtSMe:EDT:PhSme(10:0.5:0.5:0.5)の比のおよそ50mlのこれらの試薬を使用する。混合物をN雰囲気下RTで3時間攪拌し、濾過しかつTFA(2×3ml)で洗浄する。合わせた濾液を真空中で蒸発させ、そして無水ジエチルエーテルを黄/橙色残渣に添加する。生じる白色沈殿を濾過により単離する。合成したペプチドの精製は、限定されるものでないがイオン交換、アフィニティー、サイジングカラムおよび高速液体クロマトグラフィー、遠心分離若しくは示差的溶解性を挙げることができる標準的方法により行う。
【0087】
ペプチドの組換えDNA発現方法は当業者に公知であり、そして、限定されるものでないが哺乳動物系、昆虫系、植物系およびウイルス系を挙げることができる生物学的系での発現を包含する(Maniatis,T.Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1990)。例えば、MTLPは、ウイルス、ウイルスコートタンパク質、ウイルスキャプシドタンパク質若しくはウイルス表面タンパク質に融合されたウイルスにより発現させ得る。さらに、MTLP−ウイルスタンパク質複合体は、目的のウイルスを産生させるために使用される哺乳動物宿主若しくはヘルパーウイルス中で発現させ得る。
【0088】
完全長ペプチドの伸長バージョン若しくはフラグメントをコードする遺伝子の製造において、改変した遺伝子が、所望の活性がコードされている遺伝子領域中の翻訳終止シグナルにより中断されない同一の翻訳読み枠内に留まることを確実にするよう注意を払うべきである。
【0089】
さらに、限定されるものでないがバクテリオファージM13若しくはバクテリオファージFdを挙げることができるファージディスプレイベクターを、該バクテリオファージの
遺伝子IIIタンパク質産物若しくは遺伝子VIIタンパク質産物に融合されたMTLPを発現するように改変し得る。限定されるものでないが、例えば表1に示されるもののようなアラニン走査位置変異体、連続的ランダム位置走査変異体およびそれ由来の配列を挙げることができるMTLP若しくは潜在的MTLPをコードする配列のライブラリーを創製し得、バクテリオファージの遺伝子III若しくは遺伝子VIIいずれかに同じ読み枠でクローン化し得る。その後、該ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングして、膜を横切って有効成分若しくは活性粒子を輸送する高められた能力を有する新たなMTLPを同定し得る。
【0090】
キメラ若しくは融合ペプチドは、限定されるものでないが、MTLP、または好ましくは多様なペプチドのアミノ酸配列にそのアミノ末端、そのカルボキシ末端若しくは内部の部位でペプチド結合を介して結合した完全長のペプチド配列若しくはその一部分の最低1ドメイン若しくはモチーフよりなるその複数の反復配列を含んでなるものを挙げることができる。キメラペプチドの製造方法は、限定されるものでないが、多様なペプチドのコーディング配列に同じ読み枠で結合したMTLPコーディング配列を包含する核酸の組換え発現を挙げることができる。当該技術分野で既知の方法を使用して、所望のアミノ酸配列をコードする核酸配列を適正な順序で相互に連結しそしてキメラ産物を発現させる。例えば、いずれかの異種タンパク質をコードする核酸に融合されたMTLP核酸の部分を含んでなるキメラ遺伝子が構築されてよい。あるいは、キメラMTLPは、限定されるものでないがペプチド合成機を挙げることができる技術を使用して合成してよい。
【0091】
オピオイドペプチドは、後に続くところの、コルチコトロピン−リポトロピン前駆体、プロエンケファリンA前駆体およびβ−ネオエンドルフィン−ジノルフィン前駆体中に含有されるものを包含する。すなわち、
【0092】
COLI_HUMAN(P01189)
コルチコトロピン−リポトロピン前駆体(プロオピオメラノコルチン)(POMC)は:NPP;メラノトロピンγ(γ−MSH);コルチコトロピン(副腎皮質刺激ホルモン)(ACTH);メラノトロピンα(α−MSH);コルチコトロピン様中間体ペプチド(CLIP);リポトロピンβ(β−LPH);リポトロピンγ(γ−LPH);メラノトロピンβ(β−MSH);β−エンドルフィン;およびMet−エンケファリン]
を含有する。
【0093】
PENK_HUMAN(P01210)
プロエンケファリンA前駆体は:Met−エンケファリン;およびLeu−エンケファリンを含有する。
【0094】
NDDB_HUMAN(P01213)
β−ネオエンドルフィン−ジノルフィン前駆体(プロエンケファリンB)(プレプロジノルフィン)は:β−ネオエンドルフィン;ジノルフィン;Leu−エンケフェアリン;リモルフィン;およびリューモルフィン]を含有する。
【0095】
SWISSPROTデータベースから得られるところのそれらのアミノ酸配列は後に続くとおりである:
【0096】
【表4】

【0097】
【表5】

【0098】
それらが2002年4月17日に出現したところの受託番号P01189、P01210およびP01213のSwissProtデータベース記録は、そっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0099】
付加的なオピオイドペプチドは、限定されるものでないが:
【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
[ここで以下の略語を使用する:
Pen−ペニシラミン
Nle−ノルロイシン(CH3−CH2−CH2−CH2−CH−(NH2)COOH)NleS−CH3−CH2−CH2−CH2−CH−(NH2)SO3H
Tic−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸
Aib−α−アミノイソ絡酸
cy−シクロ]
を挙げることができる。
【0103】
MTLPは、限定されるものでないがホモ二官能性およびヘテロ二官能性架橋分子の使用を挙げることができる方法により、限定されるものでないが検出可能な標識、吸着を助長する分子、トキシン若しくは固体支持体を挙げることができる他の分子に連結してよい(Carlssonら Biochem.J.173:723、1978;Cumberら Methods in Enzymology 112:207、1978;Jueら Biochem.17:5399、1978;Sunら Biochem.13:2334、1974;Blattlerら Biochem.24:1517、1985;Liuら Biochem.18:690、1979;YouleとNeville Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:5483、1980;Lernerら Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:3403.1981;JungとMoroi Biochem.Biophys.Acta 761:162 1983;Caulfieldら Biochem.81:7772、1984;Staros Biochem.21:3950、1982;Yoshitakeら Eur.J.Biochem.101:395、1979;Yoshitakeら J.Biochem.92:1413、1982;PilchとCzech J.Biol.Chem.254:3375、1979;Novickら J.Biol.Chem.262:8483.1987;LomantとFairbanks J.Mol.Biol.104:243、1976;HamadaとTsuruo Anal.Biochem.160:483、1987;Hashidaら J.Applied Biochem.6:56、1984;MeansとFeeney Bioconjugate Chem.1:2、1990)。
【0104】
MTLPは、免疫原を免疫特異的に結合する抗体を生成させるための免疫原として使用しうる。こうした抗体は、限定されるものでないがポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖Fabフラグメント、F(ab’)フラグメントおよびFab発現ライブラリーを挙げることができる。こうした抗体の用途は、限定されるものでないが局在化、画像化、診断、処置および処置の有効性のモニタリングを挙げることができる。例えば、MTLP中に導入されたダンシル基若しくは何らかの他のエピトープのような該ペプチドの1ドメインに特異的な抗体若しくは抗体フラグメントを使用して、MTLPの存在を同定し、MTLPを粒子表面に結合し、粒子上のMTLPの量を定量し、生理学的サンプル中のMTLPの量を測定し、細胞若しくは組織サンプル中のMTLPを免疫細胞化学的に局在化し、in vivo投与後にMTLPを画像化し、また、イムノアフィニティーカラムクロマトグラフィーによりMTLPを精製し得る。
【0105】
MTLPの機能的活性は、当業者に既知の適するin vivo若しくはin vitroアッセイにより測定し得る。これらは、限定されるものでないがイムノアッセイ、免疫放射測定アッセイ、免疫拡散アッセイおよび免疫蛍光アッセイならびにウェスタンブロット分析を挙げることができる。
【0106】
MTLPは、有効成分若しくは活性粒子の標的を細胞、細胞内区画若しくは細胞層に向け、かつ、細胞の中へ、細胞内区画の中へおよび外へ、ならびに細胞層を横切る有効成分若しくは活性粒子の取り込みを高めるよう機能する。細胞は、限定されるものでないが上皮、内皮および中皮細胞、単細胞生物体ならびに植物細胞を挙げることができる。細胞層は、限定されるものでないが胃腸管、肺上皮、血液脳関門および血管内皮を挙げることができる上皮、内皮および中皮細胞層を包含する。好ましくは細胞は上皮細胞でありかつ細胞層は上皮細胞層である。最も好ましくは、細胞はGITの上皮細胞でありかつ細胞層はGITの上皮細胞層である。細胞内区画は、限定されるものでないが核、ミトコンドリア、小胞体およびエンドソーム区画を挙げることができる。MTLPは、細胞内トラフィッ
キングを調節若しくは指図する有効成分若しくは活性粒子の取り込みを高めるのに使用し得る。さらに、MTLPは細胞内遺伝子送達を高めるのに使用し得る。すなわち、遺伝子若しくはプラスミドDNAを陽イオン性脂質ポリマー系内に被包化若しくは複合体形成し、そして該陽イオン性脂質ポリマー系の表面をMTLP若しくはターゲッティングペプチドと複合体形成させる。あるいは、プラスミドDNAを凝縮させ、凝縮物を陽イオン性脂質と複合体形成し、そして陽イオン性脂質の表面をMTLP若しくはターゲッティングペプチドと複合体形成させる。
【0107】
MTLPを有効成分に複合体形成する(MTLP−有効成分複合体)のに使用される方法は、限定されるものでないが、直接若しくは連結部分を介してのいずれかでのMTLPおよび有効成分の共有結合、MTLPおよび有効成分の非共有結合、ならびに融合タンパク質(MTLPは、限定されるものでないが治療的タンパク質を挙げることができる有効成分に同じ読み枠で融合されている)の生成を挙げることができる。
【0108】
有効成分が負荷された粒子にMTLPを複合体形成する(MTLP−活性粒子複合体)のに使用される方法は、限定されるものでないが、活性粒子への吸着、活性粒子への非共有結合;活性粒子、活性粒子を合成するのに使用されるポリマー(1種若しくは複数)、該ポリマーを合成するのに使用される単量体(1種若しくは複数);および活性粒子を含んでなるいずれかの他の成分への直接若しくはリンカーを介してのいずれかでの共有結合を挙げることができる。さらに、MTLPは、遅延放出(徐放性)粒子若しくは装置に複合体形成し得る(Medical Applications of Controlled Release、LangerとWise(編)、CRC Press、フロリダ州ボカレイトン、1974;Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、SmolenとBall(編)、Wiley、ニューヨーク、1984;Rangerら J.Macromol.Sci.Rev.Macrimol.Chem.23:61、1983;Levyら Science 228:190、1985;Duringら
Ann.Neurol.25:351、1989;Howardら J.Neurosurg.71:105 1989)。
【0109】
ウイルスに基づく遺伝子送達系に使用される方法は、限定されるものでないが、ウイルスベクター中に組み込まれているMTLP−ウイルス融合タンパク質を発現する、ウイルス粒子および哺乳動物細胞若しくはヘルパーウイルスの表面上でMTLPを発現するように核酸レベルで改変されているベクターを挙げることができる。
【0110】
本発明はまた、治療上有効な量のMTLP−有効成分複合体若しくはMTLP−活性粒子複合体および製薬学的に許容できる担体(E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences)を含んでなる製薬学的製剤も提供する。「製薬学的に許容できる」という用語は、動物、およびより具体的にはヒトでの使用のための、国若しくは州政府の規制当局により承認されているかまたは米国薬局方若しくは他の一般に認識されている薬局方に列挙されている担体を挙げることができる。「担体」という用語は、MTLP−有効成分複合体若しくはMTLP−活性粒子複合体がそれとともに投与される希釈剤、補助物質、賦形剤若しくはベヒクルを指す。こうした製薬学的担体は、水、およびラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などのような石油、動物、植物若しくは合成起源のものを包含する油のような無菌の液体であり得る。水は、該製薬学的製剤が経口で投与される場合に好ましい担体である。生理的食塩水溶液ならびに水性D−ブドウ糖およびグリセロール溶液もまた、とりわけ注入可能な溶液の液体担体として使用し得る。適する製薬学的賦形剤は、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピ
レングリコール、水、エタノールなどを包含する。製剤は、所望の場合は少量の湿潤剤若しくは乳化剤、またはpH緩衝剤もまた含有し得る。これらの組成物は、限定されるものでないが溶液、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤および徐放製剤を挙げることができる。該製剤は、伝統的結合剤およびトリグリセリドのような担体を含む坐剤であり得る。経口製剤は、限定されるものでないが、製薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロースおよび炭酸マグネシウムを挙げることができる標準的担体を包含し得る。こうした製剤は、該有効成分の必要な個体への適正な投与のための形態を提供するように適する量の担体と一緒に治療上有効な量の有効成分若しくは粒子中に負荷された有効成分を含有することができる。
【0111】
限定されるものでないが経口、鼻、局所、粘膜、静脈内、腹腔内、皮内、クモ膜下腔、筋肉内、経皮および浸透圧を挙げることができる当該技術分野で既知のいかなる経路も、MTLP−有効成分複合体若しくはMTLP−活性粒子複合体を投与するのに使用してよい。好ましくは投与は経口であり、ここでMTLPはGITの上皮細胞中へかつGITの上皮を横切り循環中への有効成分の取り込みを高める。特定の一病理学的状態の診断、予防若しくは処置のため投与されるべき有効成分の正確な量は、該病理学的障害、該病理学的障害の重症度、使用される有効成分および投与経路に依存することができる。投与されるべき有効成分の量および投与スケジュールは、標準的臨床技術を使用して実地医家により決定し得る。加えて、有効成分の投与のための至適の範囲の同定を補助するために場合によってはin vitroアッセイを使用してよい。
【0112】
以下の実施例は同時にしかしながらそのいかなる制限も構成することなく本発明をさらに具体的に説明するのに役立つであろう。対照的に、本明細書の記述を読んだ後に本発明の技術思想および/若しくは付属として付けられる請求の範囲の範囲から離れることなく当業者にそれら自身を示唆すると思われる多様な他の態様、改変およびそれらの同等物に対する方策が有されるかもしれないことが明瞭に理解されるはずである。
【0113】
[実施例]
【実施例1】
【0114】
ペプチド合成
膜転位ペプチドZElan094、204Nおよび204、ならびにターゲッティングペプチドHAX42、PAX2、P31およびSni34(米国特許出願第09/079,819号、同第09/079,723号および同第09/079,678号明細書)はfmoc合成プロトコル(Anaspec,Inc.、カリフォルニア州サンノゼ)を使用して化学的に合成した。抗ダンシル抗体でのペプチドの検出を可能にするために、各配列のN末端にダンシル基を付加した(表1)。
【0115】
Zelan094(配列番号2)の物理的特徴を表3に示す。
【0116】
【表8】

【実施例2】
【0117】
MTLP−活性粒子複合体およびターゲッティングペプチド−活性粒子複合体の製造
活性粒子はコアセルベーション法を使用してポリマーから製造した。好ましくは、粒子径は約5nmと750μmとの間、より好ましくは約10nmと500μmとの間、および最も好ましくは約50nmと800nmとの間である。MTLP若しくはターゲッティングペプチドは、当業者に既知の多様な方法を使用して粒子に複合体形成した。
【0118】
以下はコアセルベートした粒子の一般的製造方法である。
【0119】
相A ポリマー剤、表面活性剤、表面安定剤、表面修飾剤若しくは界面活性剤を水に溶解する(A)。好ましくは、作用物質は、約50〜100の加水分解%および約500〜500,000kDaの分子量範囲を有するポリビニルアルコール(下で「PVA」)若しくはその誘導体である。より好ましくは、該作用物質は80〜100の加水分解%および約10,000〜150,000kDaの分子量範囲を有するPVAである。混合物(A)を10〜2000rpm、およびより好ましくは100〜600rpmの低剪断条件下で攪拌する。塩、緩衝剤若しくは他の修飾剤を使用して該溶液のpHおよびイオン強度を改変してよい。ポリマー、塩若しくは他の粘度改変剤を使用して該溶液の粘度を改変してよい。
【0120】
相Aは限定されるものでないが乳化剤、洗剤、可溶化剤、湿潤剤、起泡剤、消泡剤、凝集剤および解膠剤を挙げることができる作用物質を包含してよい。例は、限定されるものでないが、ドデカン酸ナトリウム、ドデシル(ラウリル)硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、セトステアリルアルコール、ステアリン酸ならびにステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸ナトリウムのようなその塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、コール酸トリエタノールアミンナトリウムのような陰イオン性界面剤;臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(セトリミド)、ヨウ化ドデシルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウムのような陽イオン性界面剤;ヘキサオキシエチレンモノヘキサデシルエーテル、ポリソルベート(Tween)、ソルビタンエステル(Span)、マクロゴール(Macrogol)エーテル、ポロキサルコール(Poloxalkol)(ポロキサマー(Poloxamer))、PVA、PVP、グリコールおよびグリセロールエステル、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、デキストラン、高級脂肪アルコールのような非イオン性界面剤;ならびに、N−ドデシルアラニン、レシチン、タンパク質、ペプチド、多糖、半合成多糖、ステロール含有物質のような両性界面剤、ならびに水酸化マグネシウムおよびモントモリロナイト粘土のような微細に粉砕された固形物を挙げることができる。
【0121】
相B ポリマーを水と混合可能な有機溶媒に溶解して有機相(B)を形成する。好ましくは、有機相は、使用されるポリマーに依存して0:100 アセトン:エタノールから100:0 アセトン:エタノールまでの比のアセトン−エタノール混合物である。結果として生じる粒子生成物の物理的および化学的特性を改変するために、他のポリマー、ペプチド、糖、塩、天然のポリマー、合成ポリマー若しくは他の作用物質を有機相(B)に添加してよい。
【0122】
ポリマーは可溶性、浸透性、非浸透性、生物分解性若しくは胃腸保持性であってよい。それらは天然若しくは合成のポリマーおよびコポリマーの混合物であってよい。こうしたポリマーは、限定されるものでないがポリラクチド、ポリグリコリド、DL、LおよびD体のポリ(ラクチド−コグリコリド)(PLGA)、コポリオキザレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリウレタン、アルブミン、カゼイン、キトサン誘導体、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、多糖、アルギン酸、ポリペプチドなど、それらのコポリマー、それらの混合物、それらの鏡像異性体、それらの立体異性体およびそれらのいかなるMTLP複合物も挙げることができる。合成ポリマーは、限定されるものでないがアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロールエーテル;セルロースエステル、ニトロセルロール、アクリル酸およびメタクリル酸ならびにそれらのエステル、デキストラン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリウレタンならびにそれらのコポリマーを挙げることができる。
【0123】
相C 相Bを連続的速度で相A中に攪拌する。好ましくは温度を周囲より上に上昇させることおよび/若しくは真空ポンプを使用することにより溶媒を蒸発させる。結果として生じる粒子は懸濁液(C)の形態にある。
【0124】
有効成分は相Aに添加しても相Bに添加してもよい。有効成分の負荷量は範囲0〜90%w/wにあってよい。MTLP若しくはターゲッティングペプチドは相Cに添加してよい。MTLPおよびターゲッティングペプチドの負荷量は範囲0〜90%w/wにあってよい。
【0125】
相D 粒子(D)は、限定されるものでないが高「g」力での遠心分離、濾過、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー若しくは電荷分離を挙げることができる標準的コロイド分離技術を使用して懸濁液(C)から分離する。液相を廃棄し、そして粒子(D)を限定されるものでないが水、塩溶液、緩衝液若しくは有機溶媒を挙げることができる洗浄溶液に再懸濁する。粒子は標準的コロイド分離技術を使用して洗浄液体から分離し、そして2回若しくはそれ以上洗浄する。MTLP若しくはターゲッティングペプチドを使用して粒子を洗浄してよいか、あるいは最終洗浄液に溶解してよい。粒子を乾燥する。
【0126】
ポリマー、ペプチド、糖、塩、天然および/若しくは生物学的ポリマーまたは他の作用物質の二次相を、当該技術分野で既知のいずれかの適する方法により、予め形成された微粒子コア上に付着させてよい。乾燥した粒子は例えば打錠、被包化若しくは噴霧乾燥によりさらに加工し得る。形成された粒子の放出プロファイルは、使用されるおよび/若しくは所望の処方に依存して即時放出から徐放性若しくは遅延放出まで変動しうる。
【実施例3】
【0127】
ウシインスリン負荷MTLP被覆ナノ粒子−MTLPを最終洗浄液に添加
即効型ウシインスリン(28.1IU/mg)をナノ粒子210mgあたり300IUのインスリンの理論的負荷量でポリラクチド−コグリコリド(PLGA、Boehringer Ingelheim、インジアナ州インジアナポリス)に組み込み、そして該ナノ粒子をダンシル化ZElan094(配列番号2)で被覆した。
【0128】
【表9】

【0129】
製造法:
1.水を沸騰近くに加熱し、PVAを5%wvまで添加し、そして溶液を冷却まで攪拌した(相A)。
2.アセトンおよびエタノールを混合して有機相(相B)を形成した。
3.PLGAをアセトンおよびエタノール(段階2)に添加しそして攪拌により溶解した(相B)。
4.IKATM反応容器を25℃に設定した。相A(段階1)を反応容器に添加しかつ400rpmで攪拌した。
5.ウシインスリンを攪拌している相A(段階4)に添加した。
6.清浄なチューブおよび未使用の(green)針を使用して、相B(段階3)を、40に設定した蠕動ポンプを使用して攪拌している溶液(段階5)にゆっくりと滴下した。
7.IKATM反応容器の口を開放することおよび400rpmで一夜攪拌することにより溶媒を蒸発させて懸濁液(相C)を形成した。
8.懸濁液、相C(段階7)をXL90遠心機中、12,500ないし15,000rpmで4℃で25ないし40分間遠心分離した。
9.上清を廃棄し、粒子「ケーキ」を粉砕し、そして粒子(相D)をXL90遠心機中12,500ないし15,000rpmで4℃で10〜15分間の遠心分離により200mlのHOで2回洗浄した。ダンシル化ZElan094(配列番号2)を最終洗浄液に添加した。
10.上清をデカンテーションし、「ケーキ」を粉砕し、そして粒子を真空オーヴン中で乾燥した。乾燥した粒子を粉砕し、セキュリテナー(securitainer)に入れかつ分析した。インスリン負荷は5%すなわち50mgインスリン/g粒子であった。HPLCで測定したインスリン効力は51.4mg/gであった。走査型電子顕微鏡検査は、直径が約300〜400nmの分離した合理的に球状の粒子を示した。
【実施例4】
【0130】
ウシインスリン負荷MTLP被覆ナノ粒子−相CにMTLPを添加
即効型ウシインスリン(28.1IU/mg)を、ナノ粒子210mgあたり300IUのインスリンの理論的負荷量でPLGAナノ粒子中に組み込み、そしてナノ粒子をMTLP ZElan094(配列番号2)で被覆した。
【0131】
【表10】

【0132】
製造法:
実施例3の段階1〜4を参照されたい。
段階5.インスリンおよびZElan094を攪拌しているPVA溶液に添加した。
実施例3の段階6〜9を参照されたい。
粒子(段階9)を粉砕し、セキュリテナーに入れかつ分析した。
【実施例5】
【0133】
ウシインスリン負荷MTLP被覆ナノ粒子−遠心分離1時間前にMTLPを添加
即効型ウシインスリン(28.1IU/mg)を、ナノ粒子210mgあたり300IUのインスリンの理論的負荷量でPLGAナノ粒子中に組み込み、そしてナノ粒子をダンシル化ZElan094(配列番号2)で被覆した。
【0134】
【表11】

【0135】
製造法:
実施例3の段階1〜7を参照されたい。
段階8.ZElan094を攪拌している粒子懸濁液に添加した。1時間後に懸濁液を12,500〜14,000rpmで4℃で20ないし40分間遠心分離した。
実施例3の段階9〜10を参照されたい。
【実施例6】
【0136】
ウシインスリン負荷MTLP被覆ナノ粒子−MTLP複合ポリマー
即効型ウシインスリンを、後に続くとおり、ナノ粒子210mgあたり300IUのインスリンの理論的負荷量でPLGA−ダンシル化ZElan094(配列番号2)複合物ナノ粒子に組み込む。
【0137】
【表12】

【0138】
製造法は、段階3でRG504HおよびRG504H−ZElan094複合物を相B(段階2)に添加することを除き、実施例3の段階1〜10でのとおりである。
【実施例7】
【0139】
ウシインスリン負荷ターゲットペプチド被覆ナノ粒子
即効型ウシインスリン(28.1IU/mg)を、ナノ粒子210mgあたり300IUのインスリンの理論的負荷量でPLGAナノ粒子中に組み込み、そしてナノ粒子をターゲッティングペプチド、ダンシル化ZElan011、055、091、101、104、128、129および144(米国特許出願第09/079,819号、同第09/079,723号および同第09/079,678号明細書)で被覆した。
【0140】
【表13】

【0141】
(米国特許出願第09/079,819号、同第09/079,723号および同第09/079,678号明細書、ならびに第WO 98/51325号明細書として公開されたPCT出願第PCT/US98/10088号明細書))
【0142】
製造法:
実施例3の段階1〜10を参照されたい。
【0143】
インスリン負荷量は5%すなわち50mgインスリン/g粒子であった。
【実施例8】
【0144】
動物試験
MTLP−インスリン粒子複合体(実施例3)およびターゲッティングペプチド−インスリン粒子複合体(実施例7)からのin vivoでの経口インスリンの生物学的利用性を、開放ループラットモデルで評価した。
【0145】
59匹のWistarラット(300〜350g)を4時間絶食させ、そして、MTLP−インスリン粒子複合体若しくはターゲッティングペプチド−インスリン粒子複合体の投与15ないし20分前に、0.525mlのケタミン(100mg/ml)+0.875mlのリンゴ酸アセプロマジン−BP(2mg/ml)の筋肉内注入により麻酔した。ラットを9群(各群は6若しくは7匹の動物を含有)に分割した。1.5mlのPBSに懸濁したおよそ200mgのMTLP−インスリン(300IU)粒子複合体を、6匹のラットのそれぞれの幽門の2〜3cm下に十二指腸内に注入した(群5)。1.5mlのPBSに懸濁したおよそ200mgのターゲッティングペプチド−インスリン(300IU)粒子複合体を、6〜7匹のラットのそれぞれの幽門の2〜3cm下に十二指腸内に注入した(群1〜4および6〜9)。試験群を表4に示す。
【0146】
【表14】

【0147】
全身血を、0分、ならびにZElan094−インスリン粒子複合体若しくはターゲッティングペプチド−インスリン粒子複合体の十二指腸内投与後15、30、45、60および120分に、各ラットの尾静脈からサンプリングした(0.4ml)。グルコメーター(Glucometer)(Bayer;0.1ないし33.3μm/mol/L)を使用して各サンプルの血糖値を測定した。血液を遠心分離しかつ血漿を保持した。血漿インスリンはPhadeseph RIAキット(Pharmacia、ニュージャージー州ピスカタウェイ;3ないし240μU/ml)を使用して二重でアッセイした。
【0148】
図2は、ZElan094−インスリン粒子複合体(群5)ならびにターゲッティングペプチドZElan091(群1)、144(群2)、129(群3)、101(群4)、128(群6)、104(群7)および011(群8)−インスリン粒子複合体の十二指腸内投与後の血漿インスリン濃度を示す。図2に示されるとおり、十二指腸内投与後60分の間に、ZElan094−インスリン粒子複合体がインスリン送達の最も強力な増強を提供し、次いでZElan055、129および094、101、128、091および133、ならびに011−インスリン粒子複合体であった。これらのデータは、MTLP−インスリン粒子複合体を使用して得られる血漿インスリン濃度が、ターゲッティングペプチド−インスリン粒子複合体を使用して得られたものより大きかったことを示す。
【0149】
MTLP−インスリン粒子複合体およびターゲッティングペプチド−インスリン粒子複合体から送達されたインスリンが生物活性(bioactive)であったことを確実にするために、血糖値を測定した。図3に示されるとおり、十二指腸内投与後20分の間に血糖値は約6.0〜9.5mmol/Lの間から約4.5〜7.0mmol/Lまで下落し、そして対照値(PBS)の有意に下に最低60分間留まった。MTLP−インスリン粒子複合体を受領した動物およびターゲッティングペプチド−インスリン粒子複合体を受
領した動物の間で、60分および120分に血糖値の有意の差異は存在しなかった。これらのデータは、ダンシル化ZElan094−インスリン粒子複合体ならびにダンシル化Zelan011、055、091、144、129、101、129、128および104−インスリン粒子複合体から送達されたインスリンが生物活性のままであったことを示す。さらに、これらのデータは、MTLP−インスリン粒子複合体から送達されたインスリンが、血糖値の有意のかつ持続性の減少を可能にしたことを示す。
【実施例9】
【0150】
DNA含有リポソームおよびDNA含有MTLP被覆リポソームの製造
DNA含有リポソームおよびDNA含有MTLP被覆リポソームは、後に続くとおり製造した:
溶液1 12nmolのリポフェクタミン(Gibco BRL、メリーランド州ロックビル)±0.6mgのプロタミン硫酸を、最終容量75mlのoptiMEM中で調製した。
溶液2 1mgのpHM6lacZ DNA(Boehringer Mannheim)を最終容量75mlのoptiMEM中で調製した。レポータープラスミドpHM6lacZは、細菌のβ−ガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子を含有する。
溶液3 溶液1および溶液2を合わせ、そしてRTで15分間インキュベートして複合体形成を可能にした。
溶液4 ZElan094、204N若しくは204(配列番号2、23、24)を溶液3に100mMの最終濃度まで添加しそしてRTで5分間インキュベートした。600mlのoptiMEMを添加しそして溶液を穏やかに混合した。
【0151】
DNA含有リポソームおよびDNA含有MTLP被覆リポソーム複合体は、走査型電子顕微鏡検査(SCM)若しくは透過型電子顕微鏡検査(TEM)で分析して複合体リポソーム形成を確認し、また、ζ電位分析により表面荷電特性を確認した。
【実施例10】
【0152】
リポソームおよびMTLP−リポソームからCaco−2細胞中へのDNAの送達
リポソームおよびMTLP被覆リポソームからCaco−2細胞中へのDNAの送達を、細胞上清中の総タンパク質1mgあたりのβ−ガラクトシダーゼ発現として計算した。β−ガラクトシダーゼ発現はBoehringer Mannheimの化学発光キットを使用して測定した。タンパク質はPierceの微量(Micro)ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイを使用して測定した。
【0153】
Caco−2細胞は1mlの培地中1×10細胞/ウェルでプレーティングしそして5%CO中37℃で一夜インキュベートした。細胞を0.5mlのoptiMEMで2回洗浄した。ZElan094、204N若しくは204(配列番号2、23、24)(溶液4、実施例9)を、洗浄した細胞の三重のウェルにそれぞれ添加し(250μl/ウェル)そして37℃で4時間インキュベートした。4時間後に、2×ウシ胎児血清を含有する250μlのoptiMEMを添加し、そして細胞を37℃で追加の20時間インキュベートした。トランスフェクション後24時間に細胞をBoehringer Mannheimの溶解緩衝液で溶解した。ライセートをエッペンドルフ遠心機中14,000rpmで2分間遠心分離しそして上清を収集した。
【0154】
表5は、DNA送達粒子としてZElan094、ZElan204NおよびZElan204(配列番号2、23、24)被覆リポソームを使用した、総タンパク質1mgあたりの相対的β−ガラクトシダーゼ発現を示す。
【0155】
【表15】

【0156】
MTLP、ZElan094、204NおよびN204(配列番号2、23および24)被覆リポソームは、リポフェクタミン+DNAおよびリポフェクタミン+DNA+プロタミン対照リポソームが送達したよりも多くのDNAをCaco−2細胞に送達した。さらに、b−ガラクトシダーゼ発現により示されるとおり、核局在化配列(NLS)の付加によりC末端で改変されているZElan094誘導体ZElan204Nは、Caco−2細胞中へのDNAの送達およびそれ内でのDNAの発現の双方を高めることにおいて最も効果的であった。陽イオン性脂質およびDNA凝縮剤とともにのMTLP、ZElan094およびその誘導体は、細胞への遺伝子のターゲッティングおよび細胞による遺伝子のその後の取り込み双方を高めた。
【0157】
MTLPは細胞中への有効成分および活性粒子双方の取り込みを高めるため、限定されるものでないがZElan094およびZElan 204Nを挙げることができるMTLPは、有効成分および活性粒子送達系としてのポリマーに基づく粒子系およびリポソームに基づく粒子系上のコーティング剤として使用し得る。さらに、MTLPは、限定されるものでないがアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスおよびワクシニアウイルスを挙げることができるウイルスベクターに基づく粒子系上のコーティング剤としてもまた使用し得る。こうした系においては、ウイルスそれ自身がMTLPをコードしてよく、ここで、MTLPをコードするDNA配列は1種若しくはそれ以上のウイルスキャプシドタンパク質または1種若しくはそれ以上のウイルス表面タンパク質をコードする1種若しくはそれ以上の遺伝子に同じ読み枠でクローン化されている。あるいは、遺伝子送達に使用するウイルスの表面は、限定されるものでないが哺乳動物細胞を挙げることができる細胞からのウイルス産生および精製後にMTLPで修飾してもよい。
【実施例11】
【0158】
細胞層を横切る基質輸送に対するMTLPおよびターゲッティングペプチドの効果。
【0159】
Caco−2単層を横切るジペプチド14C−gly−sarおよびレポーター分子H−fMLPの輸送に対するMTLP、ZElan094、ZElan178およびZElan187(配列番号2、7および16)ならびにターゲッティングペプチドZElan022(米国特許出願第09/079,819号、同第09/079,723号および同第09/079,678号明細書、ならびに第WO 98/51325号明細書として
公開されたPCT出願第PCT/US98/10088号明細書)の効果を測定した。Caco−2単層はトランスウェル−スナップウェル(Transwell−Snapwell)上で増殖させた。各実験の間にCaco−2単層のTEERを測定することにより細胞の生存率を決定した。TEERの有意の下落は測定されなかった。細胞浸透性は各実験の間にCaco−2単層を横切るマンニトール流入を測定することにより決定した。MTLP、ZElan094の存在下でマンニトール流入の増大は測定されなかった。
【0160】
MTLP、ZElan094、ZElan178およびZElan187(配列番号2、7および16)ならびにターゲッティングペプチドZElan022(米国特許出願第09/079,819号、同第09/079,723号および同第09/079,678号明細書)、ならびに第WO 98/51325号明細書として公開されたPCT出願第PCT/US98/10088号明細書)の非存在および存在下でのCaco−2単層を横切るジペプチド14C−gly−sarおよびレポーター分子H−fMLPの流入を2時間にわたって測定し、また、浸透係数の低下を非放射性基質の存在下で決定した。
【0161】
表6に示されるとおり、MTLP、ZElan094、178および187はレポーター分子H−fMLPの輸送を阻害した(図4)が、しかしジペプチド14C−gly−sarの輸送は阻害しなかった。ターゲッティングペプチドZElan022はレポーター分子H−fMLPの輸送を阻害した(図4)。分極したCaco−2細胞を横切るfMLPの輸送について競合するMTLP、ZElan094、178および187の能力は、この新規輸送アッセイを使用してZElan094の誘導体、フラグメント、モチーフ、類似物およびペプチド模倣物ならびにZElan094に機能的に類似の小有機分子をスクリーニングして改良された輸送の特徴を有するものを同定し得ることを示す。
【0162】
【表16】

【0163】
NS:放射標識薬物の輸送において実験(+MTLP)と対照細胞(−MTLP)との間に有意差なし。
【0164】
さらに、MTLPがレポーター分子H−fMLPの輸送を阻害したがしかしジペプチド14C−gly−sarの輸送を阻害しなかったことは、fMLP輸送に対するそれらの効果が分極した上皮細胞中での膜の一般化した混乱によらないことを示唆する。さらに
、fMLPはGIT中の炎症においてある役割を演じていることが既知であるため、Caco−2単層を横切るfMLPの輸送を減少させるMTLPは、GITにおけるfMLPの化学誘引物質効果を減少させることにより局所炎症の予防において治療的役割を有するかもしれない。
【実施例12】
【0165】
細胞層を横切るH−fMLPの輸送に対する増大する濃度のMTLPの効果。
【0166】
Caco−2単層を増殖させかつ生存率について実施例11でのとおり試験した。Caco−2単層を横切るH−fMLPの輸送を0から200μg/mlまでのMTLP、ZElan094の存在下で測定した。図5に示されるとおり、MTLP、ZElan094は試験した最低濃度(13mg/mlすなわち7.1ml)でさえH−fMLP輸送を阻害した。これは、MTLP、ZElan094が上皮細胞層を横切るfMLP輸送の強力な阻害剤であることを示す。
【実施例13】
【0167】
模擬腸液中でのMTLPの安定性
MTLP、ZElan094およびZElan207(配列番号2および102)を水に溶解し、そしてブタ由来パンクレアチンを含有する模擬腸液pH6.8(SIF+パンクレアチン)と37℃で混合した。混合物を37℃で60分間までインキュベートし、指定された時間点でアリコートを採取した。SIFとリガンドとの間の反応を停止するために、適切な時間点後にクエンチ溶液で反応をクエンチした。
【0168】
模擬腸液の組成は後に続くとおりであった:
アミラーゼ 25USP単位
リパーゼ 2.0USP単位
プロテアーゼ 25USP単位
(Sigma P8096)
【0169】
およそ1mgのリガンドを1mlの水に溶解した。リガンドのこの標準ストック溶液を使用してリガンド+SIF+パンクレアチンを含有する溶液を調製した。50μLのリガンド溶液を、後に続くとおり別個のエッペンドルフ中でSIF+パンクレアチンの容量と混合した:
【0170】
【表17】

【0171】
増大するSIF:リガンド比が分解の程度および速度に対する影響を有したかどうかをモニターするために2種の異なる容量のSIFを利用した。適切な時間点で、100μLの混合物を500μLのクエンチ溶液(アセトニトリル:水 30:70)にピペッティングすることにより、リガンドとSIFとの間の反応を停止した。20μLの混合物をHPLC系に注入した。
【0172】
HPLC実験
カラム: Jupiter C18 RP、5μm、300Å、250×4.6mm、TCD#188
移動相: A:水中0.1%トリフルオロ酢酸中10%アセトニトリル
B:アセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸
流速: 1.0ml/分
温度: 周囲
注入容量: 20μl
検出器λ: 220nm
分析時間: 38分
【0173】
SIF+パンクレアチンの非存在下でのリガンドの回収について確認するため、水およびクエンチ溶液中のリガンドの対照サンプルを調製した。
【0174】
時間点のいずれでもリガンドZELAN094(配列番号2)の回収は得られなかった。分解生成物がクロマトグラフでみられた。
【0175】
時間点のいずれでも回収が得られなかったため、結果の表はZELAN094について提示していない。これはペプチドピークの消失により示される。このリガンドは、従ってSIF媒体との接触に際してほぼ直ちに分解される。分解生成物が保持時間12.158、13.55および14.067分に出現している。
【0176】
対照は、SIF+パンクレアチンが存在しない場合に該ペプチドが37℃で長時間分解
されないことを示した。また、クエンチ溶液は回収に影響を及ぼさない。上で使用したHPLC法は安定性を示すアッセイとして至適化されていないが、リガンドピークの消失および新たな成分のピークの出現を明らかに見ることができたことを覚えておくべきである。
【0177】
SIF溶液からのZELAN207(配列番号102)の回収を下に表にまとめる。
【0178】
【表18】

【0179】
1時間までのSIFとのインキュベーションは親ペプチドの>90%の回収を可能にし、Dアミノ酸置換が該ペプチドの安定性プロファイルを大きく増大させたことを示した。
【実施例14】
【0180】
in vitro(Caco−2)およびin vivo(十二指腸内;覚醒ラットモデル)でのモデルオピオイドペプチドの送達についてMTLPの評価
【0181】
A.SIF中でのオピオイドペプチドの安定性
モデルのD−体のオピオイドペプチド(H−ffir−NH2;κ受容体特異的;分子量581Da)をSIF中での安定性について評価した。
【0182】
パンクレアチン(Fisher Scientific)を1mg/mlで1×リン酸緩衝溶液に溶解した。溶液のpHを0.01M NaOHで7.5に調節し、そしてそれを水浴中で37℃に加熱した。2個の乾燥ペプチドサンプルを秤量した。一方のサンプルは対照として1.0mg/mlでリン酸緩衝溶液に溶解した。第二のサンプルは安定性分析のため1.0mg/mlでSIFに溶解した。
【0183】
HPLC分析条件
以下の勾配とともにC−18ショートカラム(Betasilカラム、5μm(50×3mm)PN:055−701−3)を用いるRP−HPLC分析:
【0184】
【表19】

【0185】
・系上のダイオードアレイ検出器、214nmを分析に使用
・ペプチド対照を最初に注入
・SIF中溶液を0、1、3および24時間に注入
【0186】
LCMS分析
・対照および24時間のサンプルをLCMSにより分析
κペプチド、H−ffir−NH2は24時間にわたって非常に安定であった(表9を参照されたい)。質量分析は、最初および24時間後に検出可能なただ1種の化合物を伴いこの結果を確認した。κペプチドをターゲッティング試験におけるさらなる評価に適するモデル薬物として選択した。
【0187】
【表20】

【0188】
B.in vitroでのκペプチド複合物の合成および評価
κペプチド、H−ffir−NH2ならびに多様なMTLP(ELAN094、ELAN207、ELAN208およびELAN178)の複合物を多様な形式で合成して、in vivo評価のためのその後のバッチ合成の至適の複合戦略を決定した。構造的形式は:
i)C末端若しくはN末端オピオイドペプチド、
ii)リシンリンカーと/伴わずに複合物形成
iii)未標識/ビオチン標識
を包含した。
【0189】
複合後にオピオイドペプチドの完全性を評価して、さらなる試験における包含のため適合性を評価した。オピオイド活性は競合アッセイ(ラット脳ホモジェネートへの放射標識κペプチドの結合についての競合)を使用してin vitroで評価した。結果はIC50値、すなわち放射標識リガンドの結合を50%だけ阻害する複合物の濃度として表す。
【0190】
【表21】

【0191】
表10において、3 Elan207(配列番号102)複合物をH−ffir−NH2ペプチド対照(未複合)と比較する。3種の複合物は、1)リシンリンカーにより207のN末端に複合されたH−ffir−NH2(P10−110)、2)リシンリンカーにより207のC末端に複合されたH−ffir−NH2(P10−114)および3)直接すなわちリンカーなしで207のN末端に複合されたH−ffir−NH2(P10−118)である。アッセイは3回の別個の機会に実施した(第5日に二重および第82日に三重)。オピオイド活性は1)および3)に記述されたところの複合により有意に低下される。2)、すなわちC末端およびリシンリンカーを使用して、オピオイド活性は保持されるか若しくはなお高められ、リンカーアミノ酸および/若しくはこの形式で誘導されるコンホメーションに対する必要性を示唆する。該アッセイは細胞に基づき、そしていくつかの変動にかけられるが、しかしながら該傾向は全体を通じて一貫したままである。
【0192】
IC50値は、至適のオピオイド活性がリシンリンカーによるELAN207 MTLPのC末端へのオピオイドペプチドの複合後に保持されたことを示した。オピオイド活性がELANの添加により高められていたかもしれないことに注意されたい。
【0193】
表11において、ELAN094、178、207および208(配列番号2、7、102および202)ビオチン標識複合物を、H−ffir−NH2ペプチド対照(未複合)と比較する。
【0194】
【表22】

【0195】
IC50値は:
i)ELAN207オピオイドペプチド複合物(P34−154)がビオチン標識後に活性を保持した
ii)C末端オピオイドペプチドおよびリシンリンカーを伴うELAN094(P37−114)、178(P37−116)および208(P37−115)オピオイドペプチド複合物が、ELAN207(P34−154)で観察されたものに同等の活性を表した
ことを示した。
【0196】
ペプチド複合物P37−114(ELAN094)およびP34−154(ELAN207)はin vitro試験のためトリチウム標識した形式で合成した。
【実施例15】
【0197】
C.in vitroでのトリチウム化κペプチド複合物の合成および評価
κペプチド、H−ffir−NH2ならびにMTLP、ELAN094およびELAN207(配列番号2、102)の複合物を、標準的ペプチド合成プロトコルを使用して合成した。κペプチド上の2個のフェニルアラニン残基をトリチウム交換により標識し、そして放射ペプチドの純度をRP−HPLCにより評価した。>95%のペプチド純度および42〜54Ci/mmolの比活性が達成された。
【0198】
トリチウム化オピオイドペプチド複合物を、分化したCaco−2細胞単層を通る浸透性について、すなわち膜転位ペプチド部分の完全性を評価するために評価した。κペプチド複合物およびκペプチド対照の双方が10−6cm/秒範囲の浸透係数を表し、それらがin vivoでの経口の生物学的利用性の評価に適する候補であるとみられることを示した。ZELAN094若しくはZELAN207ペプチド複合物をκペプチド対照(n=5)と比較した場合、浸透性の有意の増大は検出可能でなかった。最高の輸送値は最初の30分に得られ、次いで60分で2〜4倍減少した。これらの知見の意義は不明確である。該データは、i)κ受容体特異的な機構、およびii)膜浸透性ペプチドの脂質相互作用による直接的膜相互作用、により発生する二重の結合/取り込み事象を暗示するかもしれない。
【0199】
図6は、分化したCaco−2細胞単層を横切るトリチウム化κペプチド複合物およびκペプチド対照の輸送についての結果を示す。
【0200】
D.in vivoでのトリチウム化κペプチド複合物の評価
κペプチドの腸吸収に対するELAN094およびELAN207 MTLP(配列番号2、102)の可能な増強効果を覚醒ラットモデルで検査した。
【0201】
実験:
試験は非無作為化並行群デザインであった。250〜350gの重量範囲内のWistarラットを使用した。全動物は試験開始前16時間絶食させた。水は全時点で利用可能であった。
【0202】
処置レジメン:
群1(n=6)
10μCiのH−κペプチド−Kaffiralin−1(普通のκペプチド)の静脈内注入(尾静脈注入)。
群3(n=6)
100μCiのH−κペプチド−Elan094(分析済)の十二指腸内点滴注入。Elan094リガンドは膜転位配列を含有する。
群4(n=6)
100μCiのH−κペプチド−Elan207(分析済)の十二指腸内点滴注入。Elan207リガンドは膜転位配列を含有する。
群10(n=6)
100μCiのH−κペプチド−Kaffiralin−1の十二指腸内点滴注入。
【0203】
Hの生物分析:血漿サンプル
血漿(100〜250μl)はBTS−450(有機組織可溶化剤)で1mlまでにし、そして1時間インキュベートした。10mlのシンチレーション液を添加しそして放射活性を測定した。
【0204】
結果:
該試験は、覚醒ラットモデルにおける十二指腸内点滴注入後のトリチウム標識κペプチド複合物の全身の生物学的利用率を評価するようデザインされた非無作為化並行群生物試験であった。各ラットは1処置のみを受領し、そして血漿サンプルをトリチウム含量について分析した。AUClast、Amax、tmax、分布容積(Vd)およびクリアランスの計算は基礎補正済データに基づいた。絶対的生物学的利用率は効力補正済データを使用して計算した。
【0205】
トリチウム化リガンドのストック溶液を異なる日にラットに投与した。これらのストック溶液は効力について補正するために分析した。特定の1日に分析したデータは、群4および群4の1反復の生物学的利用率の相違を示唆した。群4(反復)に投与したストック溶液を再分析することを決定した。群4(反復)の再分析を包含する全処置についての効力補正係数を下に要約する:
効力補正分析:
【0206】
【表23】

【0207】
日の数字は表10のものと無関係である。
【0208】
絶対的生物学的利用率および薬物動態パラメータの平均を下に要約する。
【0209】
絶対的H生物学的利用率(%)
順位序列の処置についての絶対的H生物学的利用率は以下のとおりであった:処置3−100μCiのH−κペプチド−Elan094(ID)について46.48±6.24%(CV 13.4%)であり、処置4−100μCiのH−κペプチド Elan207(ID)(反復)について16.60±2.50%(15.1%)であり、処置4−100μCiのH−κペプチド Elan207(ID)(元)について11.52±0.96%(CV 8.3%)であり、また、送達増強剤リガンドの非存在下で、処置10−100μCiのH−κペプチド Kaffiralin−1(ID)は7.94±1.92%(CV 24.1%)であった。これは、処置3−100μCiのH−κペプチド−Elan094(ID)での送達におけるおよそ6倍の増大、処置4−100μCiのH−κペプチド Elan207(ID)(反復)でのおよそ2倍の増大を表す。類似の送達が、増強剤リガンドの非存在下で処置10−100μCiのH−κペプチド Kaffiralin−1(ID)でのκペプチドの絶対的H生物学的利用率に比較して、処置4−100μCiのH−κペプチド Elan207(ID)(元)で観察された。
【0210】
H AUClast(dpm/ml.h)
順位序列でのID処置のAUClastは後に続くとおりであった。すなわち、処置3−100μCiのH−κペプチド−Elan094(ID)について260642.53±35010.58dpm/ml.h(CV 13.4%)であり、処置4−100μCiのH−κペプチド Elan207(ID)(反復)について249021.32±37503.78dpm/ml.h(CV 15.1%)であり、処置4−100μCiのH−κペプチド−Elan207(ID)(元)について162743.70±13549.10dpm/ml.h(CV 8.3%)であり、処置1−10μCiのH−κペプチド−Kaffiralin−1(IV)について132184.24±13288.32dpm/ml.h(CV 10.1%)であった一方、リガンドの非存在下で、処置10−100μCiのH−κペプチド Kaffiralin−1(ID)は73098.43±9493.88dpm/ml.h(CV% 13.0)であった。
【0211】
H Amax(dpm/ml)
大きさの順序でのID処置の投与後の最大放射活性は後に続くとおりであった。すなわち、処置1−10μCiのH−κペプチド−Kaffiralin−1(IV)について903603.03±186855.31dpm/ml(CV 20.7%)であり、処置4−100μCiのH−κペプチド Elan207(ID)(反復)について201464.40±44854.19dpm/ml(CV 22.3%)であり、処置3−100μCiのH−κペプチド−Elan094(ID)について158512.67±18907.79dpm/ml(CV% 11.9)であり、処置4−100μCiのH−κペプチド−Elan207(ID)(元)について100041.17±6274.57dpm/ml(CV% 6.3)であり、κペプチド単独の処置10−100μCiのH−κペプチド Kaffiralin−1(ID)については70925.33±23631.28dpm/ml(CV% 33.3)であった。
【0212】
H tmax(h)
最大放射活性に達する時間は全ID処置について0.08±0.00時間であった。
【0213】
分布容積(ml)
処置1、10μCiの3H−κペプチド−Kaffiralin−1(IV)の観察された容積は963.87±255.65ml(CV 26.5%)であった。
【0214】
クリアランス(ml/h)
処置1、10μCiの3H−κペプチド−Kaffiralin−1(IV)の観察されたクリアランスは142.85±17.24ml/h(CV 12.1%)であった。
【0215】
Elan207 MTLP(配列番号102)は、κペプチド対照の投与に比較してそれぞれ1.5倍の増大を超える絶対的H生物学的利用率を示した。群4のストックの再分析(反復)後に再計算した絶対的生物学的利用率は群4(元)について観察されたものに匹敵した。この反復のデータの相関は、模擬腸液中でのELAN207およびκペプチドの観察された安定性と一緒にすれば、観察された放射活性が血漿中の無傷の放射ペプチド複合物の存在と関連していることを示唆するとみられる。放射活性プロファイルは、検証のための高トリチウムカウントを表す血漿サンプルのLCMS分析と相互に関連づけられるであろう。
【0216】
Elan094 MTLP(配列番号2)は、κペプチド対照の投与に比較しておよそ5.8倍を超える絶対的H生物学的利用率を示した。模擬腸液中でのELAN094ペプチドの固有の不安定性は、放射活性プロファイルをこの例においては慎重に解釈すべきであることを示唆するとみられることに注意されたい。親ELAN094κペプチド複合物がin vivoで分解されており、そして従って観察された放射活性は血漿中での無傷の放射ペプチド複合物の存在と関連づけられないかもしれないことが可能である。
【0217】
H κペプチドの迅速な送達は、全処置について0.08時間の観察されたtmaxを伴い全処置で観察された。これは、κペプチドが全身循環中へ迅速に胃腸障壁を横断することを示唆する。吸収が非常に迅速であったため、最初のサンプリング点(投与後5分)で最大放射活性が測定されたという事実によりAUCが過小評価されているかもしれないことに注意すべきである。
【0218】
H 生物分析:組織サンプル
組織を秤量しそして代表的サンプル(約0.1g)をシンチレーションバイアルに取り出した。組織を1mlのBTS−450(有機組織可溶化剤)で可溶化した。10mlのシンチレーション液を添加しかつ放射活性を測定した。放射活性はdpm/組織初期重量として表した。
【0219】
結果:
結果を表14に要約する。
【0220】
【表24】

【0221】
順位序列でのIV投与後の組織分布は後に続くとおりであった。すなわち、GI内容物>肝>GI洗浄液>GI組織>腎>血漿。H標識がκペプチドに結合されたまま留まったと想定すれば、このデータは、IV投与後に、投与されたH κペプチド−Kaffiralin−1がラット全体に広範に分布されておりかつ主としてGI、とりわけGI内容物に濃縮されていたことを示唆する。GI内容物中の濃度はおそらく胆汁排泄によるとみられる。しかしながら、投与した用量のわずか34.43±13.36%(CV 38.8%)がt=6hで回収されており、いくらかのκペプチドが排泄されていたか若しくはおそらく他の部位に分布されていたことを示唆する。
【0222】
カテーテル中で回収された%
カテーテル中で回収された、投与した用量の%は、多様な処置について0.06から0.39%の範囲にわたった。このデータは、投与した用量の無視できる量がカテーテル中で失われることを示唆する。
【0223】
血漿中で回収された%
血漿中で回収された、投与した用量の%をt=6hで計算した。投与した用量の%は多様な処置について0.06から0.42%の範囲にわたった。多様な処置の順位序列は後に続くとおりであった。すなわち、処置3−100μCiのH−κペプチド−Elan094(ID)について0.42±0.08%(17.7%)であり、処置1−10□CiのH κペプチド−Kaffiralin−1(IV)について0.16±0.03%(CV 18.9%)であり、処置4−100μCiのH−κペプチド−Elan207(ID)(元)について0.10±0.01%(CV 9.2%)であり、また、送達増強剤リガンドの非存在下の処置10−100μCiのH−κペプチド Kaffiralin−1(ID)で、投与した用量の%は0.06±0.01%(CV 11.6%)であった。この順位序列は、多様な処置についてのBiostudy 1000003のデータパックで報告された絶対的生物学的利用率について観察されたものと同一に相関する。
【0224】
肝で回収された%
肝で回収された、投与した用量の%は0.26から6.66%の範囲にわたった。IV投与すなわち処置1−10μCiのH κペプチド−Kaffiralin−1(IV)後の回収%は6.66±1.77%(CV 26.6%)であった。この回収率はいずれかの他の処置についての肝組織中で回収された量をはるかに超えた。
【0225】
腎組織中で回収された%
腎で回収された、投与した用量の%は多様な処置について0.12から0.51%の範囲にわたった。このデータは、H κペプチドの投与した用量の無視できる量がt=6hに腎組織中に蓄積していたことを示唆する。
【0226】
GI管中で回収された%
GI管中で回収された、投与した用量の%は27.10から89.26%の範囲にわたった。GI管はGI組織、GI内容物およびGI洗浄液にさらに細分することができ、それぞれの範囲はそれぞれ1.62〜11.97%、23.50〜65.68%および1.98〜25.84%であった。GI管で回収された、投与した用量の%として提示されるデータはGI組織の6区分の総和を表す。GI管内で、最高レベルの放射活性は後のほうの区分と関連した(生データの表を参照されたい)。GI区分6およびその対応するGI内容物と関連する回収された放射活性は、他の区分について観察されたものより高かった。
【0227】
要約すれば、H κペプチド−リガンド複合物の投与した用量の最大の%は主としてGI管、およびより具体的にはGI内容物で回収された。H標識がκペプチドに結合されたまま留まったと想定すれば、全部の投与した用量が回収されたわけではなく、κペプチド−リガンド複合物が排泄されていたか若しくはラット内の他の部位に分布していたかもしれないことを示唆する。CNS組織のような分布についての他の潜在的部位は本試験で分析されなかったことに注意しなければならない。これらの測定値はH κペプチドのみのものでありかつ無傷の複合物のものでない。
【0228】
本発明は本明細書に記述される特定の態様により範囲を制限されるべきでない。本明細書に記述されたものに加えて、本発明の多様な改変が、前述の記述および付随する図面から当業者に明らかとなるであろう。こうした改変は付属として付けられる請求の範囲の範囲内にあることを意図している。
【0229】
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
【0230】
1. 輸送ペプチド、前記輸送ペプチドを含んでなる伸長されたペプチド、および前記輸送ペプチドの最低4アミノ酸の輸送活性フラグメントよりなる群から選択され、前記輸送ペプチドはL−ペプチド、d−ペプチドおよび逆反転ペプチドよりなる群から選択され、かつ、
前記L−ペプチドは配列番号2〜13および15〜24よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、
前記d−ペプチドは配列番号2〜24のL−ペプチドのd−体に対応する配列番号102〜124よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、また、
逆反転ペプチドは、配列番号2〜24のL−ペプチドの逆反転体に対応する配列番号202〜224のペプチドよりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、
転位ペプチドを含んでなる組成物。
【0231】
2. 前記L−ペプチドが、配列番号2〜4、16、23および24よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、
前記d−ペプチドが、配列番号2〜4、16、23および24のL−ペプチドのd−体に対応する配列番号102〜104、116、123および124よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、
逆反転ペプチドが、配列番号2〜4、16、23および24のL−ペプチドの逆反転体に対応する配列番号202〜204、216、223および224のペプチドよりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、
1.に記載の組成物。
【0232】
3. 前記輸送ペプチドが部分的に若しくは完全に環状である、1.に記載の組成物。
【0233】
4. 前記輸送ペプチドのいかなるフラグメントもまた部分的に若しくは完全に環状である、3.に記載の組成物。
【0234】
5. 前記L−ペプチドが配列番号5〜13よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し;
前記d−ペプチドが配列番号5〜13のL−ペプチドのd−体に対応する配列番号105〜113よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、
逆反転ペプチドが、配列番号5〜13のL−ペプチドの逆反転体に対応する配列番号205〜213のペプチドよりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する
4.に記載の組成物。
【0235】
6. 前記転位ペプチドが輸送ペプチドの伸長されたペプチドである、1.に記載の組成物。
【0236】
7. 伸長されたペプチドが、長さが100アミノ酸を超えない、6.に記載の組成物。
【0237】
8. 伸長されたペプチドが、長さが50アミノ酸を超えない、7.に記載の組成物。
【0238】
9. 転位ペプチドが輸送ペプチドである、1.に記載の組成物。
【0239】
10. 輸送活性フラグメントが輸送ペプチドのうちの最低6アミノ酸である、1.に記載の組成物。
【0240】
11. 輸送活性フラグメントが輸送ペプチドのうちの最低8アミノ酸である、1.に記載の組成物。
【0241】
11A. 転位ペプチドが、Elan 094、Elan178、Elan207およびElan208よりなる群から選択される、1.に記載の組成物。
【0242】
12. 転位ペプチドのカルボキシル端基がアミド基を創製するように修飾されている、1.に記載の組成物。
【0243】
13. 輸送ペプチド、前記輸送ペプチドを含んでなる伸長されたペプチド、および前記輸送ペプチドの最低4アミノ酸のうちの輸送活性フラグメントよりなる群から選択され、前記輸送ペプチドはそのカルボキシル端でアミド基で封鎖されたアミノ酸配列配列番号14を有するL−ペプチドであり、かつ、前記フラグメントのいずれもまたそのカルボキシル端でアミド基で封鎖されている、転位ペプチドを含んでなる組成物。
【0244】
14. 転位ペプチドが有効成分と複合体形成して転位ペプチド−有効成分複合体を形成する、有効成分をさらに含んでなる1.若しくは13.に記載の組成物。
【0245】
15. 転位ペプチドが活性粒子と複合体形成して転位ペプチド−活性粒子複合体を形成する、活性粒子をさらに含んでなる1.若しくは13.に記載の組成物。
【0246】
16. 転位ペプチド−有効成分複合体を使用することを含んでなり、該転位ペプチドが脂質膜を横切る有効成分の動きを高める、脂質膜を横切る有効成分の動きを高める方法。
【0247】
17. 転位ペプチド−活性粒子複合体を使用することを含んでなり、該転位ペプチドが脂質膜を横切る活性粒子の動きを高める、脂質膜を横切る活性粒子の動きを高める方法。
【0248】
18. 化合物が、上皮細胞層の細胞膜、細胞内膜、頂端および基底膜よりなる群から選択される膜を横切るfMLPの輸送について該転位ペプチドと競合する、脂質膜を横切る有効成分を輸送する高められた能力を有する化合物の同定方法。
【0249】
19. 上皮細胞層が分極した上皮細胞層である、18.に記載の方法。
【0250】
20. 転位ペプチド−有効成分複合体および転位ペプチド−活性粒子複合体よりなる群から選択される複合体を病理学的障害の処置の必要な動物に経口で投与することを含んでなり、病理学的障害を治療するのに有効な量の有効成分が動物の胃腸の上皮を横切り循環中に移動される、動物における病理学的障害の治療方法。
【0251】
21. (A)1.若しくは13.に記載の転位ペプチド、(B)転位可能なペプチド、および(C)転位可能なペプチドに転位ペプチドを直接連結するアミノ酸リンカー配列を含んでなり、前記転位可能なペプチドが3と200アミノ酸との間であり、かつ、前記アミノ酸リンカー配列が1と20アミノ酸との間である、キメラポリペプチド。
【0252】
22. 前記転位可能なペプチドが3と30アミノ酸との間である、21.に記載のキメラペプチド。
【0253】
23. 転位可能なペプチドがオピオイドペプチドである、21.に記載のキメラペプチド。
【0254】
24. 前記リンカー配列が7アミノ酸を超えない、21.に記載のキメラペプチド。
【0255】
25. 前記リンカー配列が3アミノ酸を超えない、24.に記載のキメラペプチド。
【0256】
26. 前記リンカー配列が1アミノ酸である、25.に記載のキメラペプチド。
【0257】
27. 前記リンカー配列中のアミノ酸の最低50%がリシンである、26.に記載のキメラペプチド。
【0258】
28. 前記リンカー配列中のアミノ酸の最低80%がリシンである、26.に記載のキメラペプチド。
【0259】
29. リンカー配列中のアミノ酸の全部がリシンである、26.に記載のキメラペプチド。
【0260】
30. 21.に記載のキメラペプチドを経口で投与することを含んでなる、血液へのキメラペプチドの送達方法。
【0261】
31. 1.に記載の転位ペプチドをコードする核酸分子。
【0262】
32. 転位ペプチドがL−体のペプチドである、31.に記載の核酸分子。
【0263】
33. 21.に記載のキメラタンパク質をコードする核酸分子。
【0264】
34. キメラペプチドがL−体のペプチドである、33.に記載の核酸分子。
【0265】
35. (A)1.若しくは13.に記載の転位ペプチド、(B)転位可能なペプチド、および(C)転位可能なペプチドに転位ペプチドを直接連結する非アミノ酸リンカーを含んでなり、前記転位可能なペプチドが3と200アミノ酸との間である、キメラ構築物。
【0266】
36. 35.に記載のキメラ構築物を投与することを含んでなる、身体内の組織、液体、細胞および細胞内区画よりなる群から選択される部位へのキメラ構築物の送達方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送ペプチドおよび前記輸送ペプチドを含んでなる伸長されたペプチドよりなる群から選択され、前記輸送ペプチドはZElan207のアミノ酸配列kkaaavllpvllaapであるd−体アミノ酸配列を含んでなる逆反転ペプチドである、
転位ペプチドを含んでなる、製薬学的有効成分の細胞中への取り込みを高めるための組成物。
【請求項2】
前記輸送ペプチドが部分的に若しくは完全に環状である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記転位ペプチドが輸送ペプチドの伸長されたペプチドであり、前記輸送ペプチドはZElan207のアミノ酸配列kkaaavllpvllaapであるd−体アミノ酸配列を含んでなる逆反転ペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
伸長されたペプチドが、長さが100アミノ酸を超えない、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
伸長されたペプチドが、長さが50アミノ酸を超えない、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
転位ペプチドが輸送ペプチドであり、前記輸送ペプチドはZElan207のアミノ酸配列kkaaavllpvllaapであるd−体アミノ酸配列を含んでなる逆反転ペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
転位ペプチドのカルボキシル端基がアミド基を創製するように修飾されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
転位ペプチドが有効成分と複合体形成して転位ペプチド−有効成分複合体を形成する、有効成分をさらに含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
転位ペプチドが活性粒子と複合体形成して転位ペプチド−活性粒子複合体を形成する、活性粒子をさらに含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
(A)輸送ペプチドおよび前記輸送ペプチドを含んでなる伸長されたペプチドよりなる群から選択され、前記輸送ペプチドはZElan207のアミノ酸配列kkaaavllpvllaapであるd−体アミノ酸配列を含んでなる逆反転ペプチドである、転位ペプチド、(B)転位可能なペプチド、および(C)転位可能なペプチドに転位ペプチドを直接連結するアミノ酸リンカー配列を含んでなり、前記転位可能なペプチドが3と200アミノ酸との間であり、かつ、前記アミノ酸リンカー配列が1と20アミノ酸との間である、キメラポリペプチド。
【請求項11】
前記転位可能なペプチドが3と30アミノ酸との間である、請求項10に記載のキメラペプチド。
【請求項12】
転位可能なペプチドがオピオイドペプチドである、請求項10に記載のキメラペプチド。
【請求項13】
前記リンカー配列が7アミノ酸を超えない、請求項10に記載のキメラペプチド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−254700(P2010−254700A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128982(P2010−128982)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【分割の表示】特願2003−586178(P2003−586178)の分割
【原出願日】平成15年4月21日(2003.4.21)
【出願人】(507222516)エラン コーポレーション ピーエルシー (4)
【Fターム(参考)】