説明

膜1型マトリックス金属タンパク質阻害剤およびその使用

非リン酸化可能形態のMT1-MMP細胞質ドメインを含む可溶性ポリペプチドが優性ネガティブ様式でMT1-MMPを阻害することができるという知見に基づいて、本発明はペプチド阻害剤などのMT1-MMP阻害剤を含む組成物、およびMT1-MMP活性に関連する疾患を治療するための方法を提供する。そのような疾患としては、癌、関節炎、ならびに心疾患、および血管疾患が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜1型メタロプロテイナーゼ(MT1-MMPまたはMMP-14)を阻害することができる化合物、ならびにこれらの化合物を用いて癌、心疾患および血管疾患、ならびに関節炎などの疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外マトリックス(ECM)の破壊と再モデリングは、癌、心疾患および血管疾患、ならびに関節炎などの疾患プロセスに関与している。
【0003】
癌は、異常細胞の制御されない増殖を特徴とする疾患である。癌細胞は、限りある寿命を有する正常細胞において強制される障壁を乗り越え、無制限に増殖する。癌細胞の増殖が続くにつれて、癌細胞がさらにより活動的な増殖表現型を表すまで遺伝子変化が持続し得る。治療しないまま放置した場合、転移、すなわち、リンパ系または血流を経由する体内の遠くの領域への癌細胞の拡散が起こり、健康な組織を破壊する。
【0004】
癌転移には、癌細胞が、通常は血液またはリンパ系に進入することにより、元の腫瘍部位を離れ、体内の他の領域に拡散することが必要である。従って、転移細胞は、それらが元々発生した組織から自由になる必要がある。このプロセスは、ECM構造の破壊を含み得る。
【0005】
関節炎はまた、ECMの変化と関連している。変形性関節症(変形性関節炎)においては、関節軟骨のECMの分解が起こり、疼痛、凝り、限られた動き、圧痛、および腫れなどの症候をもたらす。
【0006】
ECMの変化はまた、特に、疾患の初期段階において、アテローム性動脈硬化症などの心血管疾患と関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かくして、ECMの変化またはECMの分解を制御するための新しい手法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、非リン酸化可能(リン酸化不可能な)形態の膜1型メタロプロテイナーゼ(MT1-MMP)の細胞質ドメインを含む可溶性ポリペプチドが、MT1-MMP活性を阻害することができること、およびそのような阻害がMT1-MMP配列の膜貫通部分または細胞外部分を必要としないという驚くべきことを見出した。従って、本発明は、MT1-MMP配列の位置573に突然変異または欠失を有するMT1-MMP細胞質配列を含む可溶性ポリペプチドなどの、MT1-MMP活性を阻害することができる組成物を特徴とする。MT1-MMP活性は、コラーゲン分解、癌細胞の運動性および侵襲性の増加、ならびに心疾患、血管疾患、および関節炎などの疾患と関連している。かくして、これらの組成物は、これらの疾患、またはMT1-MMP活性の低下が望ましい任意の疾患の治療において有用であり得る。また、そのような組成物を、本明細書に記載のように、これらの疾患を治療するのに用いられる標準的な治療剤と共に投与することもできる。
【0009】
従って、第1の態様において、本発明は、膜1型マトリックスメタロプロテイナーゼ(MT1-MMP)の細胞質ドメインまたはその断片と実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド(例えば、可溶性ポリペプチド)であって、MT1-MMP活性を阻害(例えば、選択的に阻害)することができる前記ポリペプチドを含む組成物を特徴とする。このアミノ酸配列は、位置573の置換、欠失、または改変などのヒトMT1-MMP配列の位置573に対応するアミノ酸位置にリン酸化可能なチロシンを欠いてもよい。特定の実施形態においては、置換を、天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)、非天然アミノ酸、またはその改変形態を用いて行った。前記アミノ酸配列は、ヒトMT1-MMPの細胞質ドメインの対応する配列と比較して0、1、2、3、4、5、6、または7個の置換を有してもよい。特定の実施形態においては、前記アミノ酸配列は、ヒトMT1-MMPの細胞質ドメイン、またはヒトMT1-MMP配列(例えば、RRHGTPRRLLFCQRSLLDKV(配列番号118)もしくはそのMT1-MMP阻害断片)の位置573に対応する位置に欠失、置換、もしくは改変を有するヒトMT1-MMPの細胞質ドメインの配列と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、もしくは98%)同一である。
【0010】
他の実施形態においては、前記ポリペプチドは、送達ベクター(例えば、本明細書に記載の任意のものなどの、細胞膜に浸透することができる、特定の細胞型に進入することができるか、または血液脳関門(BBB)を通過することができるアミノ酸)を含む。細胞膜に浸透することができるアミノ酸配列は、アンテナペディアタンパク質のホメオドメインの第3へリックス(配列番号119)、アンテナペディアリーダーペプチド(CT)(配列番号120)、アンテナペディアペプチドアミド(配列番号121)、Cys(Npys)-アンテナペディアペプチドアミド(配列番号122)、細胞質形質導入ペプチド(CTP)(例えば、本明細書に記載のもの)、HSV-1 VP22、(Arg)9(配列番号137)、Cys(Npys)-(Arg)9(配列番号138)、Cys(Npys)-(D-Arg)9、[Cys58]105Y細胞浸透ペプチド(配列番号139)、ペプチド105Y(配列番号140)、ブフォリン(配列番号141)、キメララビウイルス糖タンパク質断片(RVG-9R;配列番号142)、Cys(Npys)-TAT(47-57)(配列番号143)、Cys-TAT(47-57)(配列番号144)、脂質膜移行ペプチド(配列番号145)、D-異性体-脂質膜移行ペプチド、マストパラン(配列番号146)、マストパラン7(配列番号147)、マストパランX(配列番号148)、MEK1由来ペプチド阻害因子1(配列番号149)、ミリストイル-MEK1由来ペプチド阻害因子1(配列番号150)、ステアリル-MEK-1由来ペプチド阻害因子1アミド(配列番号151)、膜透過性配列(配列番号152)、HIV関連MPG(配列番号153)、アミノペプチダーゼNリガンド(CD13)、NGRペプチド(配列番号154)、NGRペプチド1、NGRペプチド2(配列番号155)、NGRペプチド3(配列番号156)、NGRペプチド4、Pep-1(Chariot(商標);配列番号157)、SynB1(配列番号158)、ビオチン-TAT(47-57)(配列番号159)、TAT(47-57)(配列番号160)、TAT(47-57)GGG-Cys(Npys)(配列番号161)、TAT(48-57)(配列番号162)、Tat-C(48-57)(配列番号163)、経皮ペプチド(配列番号164)、トランスポータン(配列番号165)、およびトランスポータン10(配列番号166)からなる群より選択されるポリペプチドと実質的に同一であってよい。特定の実施形態においては、前記ポリペプチドは、配列RQIKIWFQNRRMKWKK (配列番号119)およびRRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号118) (例えば、配列RQIKIWFQNRRMKWKKRRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号176))を含む。特定の実施形態においては、BBBを通過することができるアミノ酸配列は抗体であるか、またはAngiopep-2(配列番号97)もしくはAngiopep-1(配列番号67)と少なくとも90%同一(例えば、100%同一)である。前記ポリペプチドは、Angiopep-2(配列番号97)と配列RRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号118)(例えば、配列TFFYGGSRGKRNNFKTEEYRRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号178))の両方を含んでもよい。さらに他の実施形態においては、特定の細胞型に進入することができるアミノ酸配列は、Angiopep-7(配列番号112)と少なくとも90%同一(例えば、100%同一)である。
【0011】
前記組成物を、リポソーム製剤として製剤化することができる。リポソームは、送達ベクター(例えば、本明細書に記載の任意のもの)を含んでもよい。送達ベクターは、リポソームの外部表面上にあってもよい。
【0012】
前記組成物のいずれかを、製薬上許容し得る担体(例えば、本明細書に記載の任意のもの)と共に製剤化することができる。
【0013】
別の態様において、本発明は、細胞中でのMT1-MMPリン酸化を減少させる方法を特徴とする。前記方法は、上記態様の組成物(例えば、本明細書に記載の任意の組成物)を前記細胞に投与することを含む。この細胞は、被験体(例えば、ヒト)中に存在するものであってもよい。
【0014】
別の態様において、本発明は、MT1-MMP活性の増加を特徴とする疾患を治療する(例えば、予防的に)方法を特徴とする。この方法は、前記疾患(例えば、癌、心疾患もしくは血管疾患、または関節炎)を治療するのに十分な量の第1の態様に記載の組成物(例えば、本明細書に記載の任意の組成物)を被験体に投与することを含む。
【0015】
別の態様において、本発明は、癌を有する被験体を治療する(例えば、予防的に)方法を特徴とする。この方法は、癌(例えば、脳癌、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、ホジキン病、非ホジキン病、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、頭蓋咽頭腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、神経鞘腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、肺癌、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、および結腸癌からなる群より選択される癌;またはグリア芽腫、星状細胞腫、グリオーマ、髄芽腫、オリゴデンドローマ、神経膠腫、上衣腫、および髄膜腫からなる群より選択される脳癌)を治療するのに十分な量の第1の態様に記載の組成物(例えば、本明細書に記載の任意の組成物)を被験体に投与することを含む。
【0016】
別の態様において、本発明は、心疾患または血管疾患を有する被験体を治療する(例えば、予防的に)方法を特徴とする。前記方法は、前記疾患(例えば、血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤、頸動脈疾患、末梢動脈疾患、および腎動脈疾患からなる群より選択されるか、または心疾患が高血圧性心疾患である場合)を治療するのに十分な量の第1の態様に記載の組成物(例えば、本明細書に記載の任意の組成物)を被験体に投与することを含む。
【0017】
別の態様において、本発明は、関節炎を有する被験体を治療する方法を特徴とする。この方法は、関節炎(例えば、変形性関節症、慢性関節リウマチ、または本明細書に記載の任意の型の関節炎)を治療するのに十分な量の第1の態様に記載の組成物(例えば、本明細書に記載の任意の組成物)を被験体に投与することを含む。
【0018】
上記方法のいずれかにおいて、被験体はヒトであってよい。
【0019】
「MT1-MMP阻害剤」とは、少なくとも1種のMT1-MMP活性を低下させる(例えば、少なくとも1%、5%、10%、15%、25%、50%、75%、85%、90%、9%、98%、99%、99.9%)ことができる化合物(例えば、可溶性ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物質)を意味する。MT1-MMP活性は、プロMMP-2の活性化ならびにI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、Ln-1、ビトロネクチン、アグリカン、テナシン、ニドゲン、ペルレカン、フィブリノゲン/フィブリン、フィブリリン、α1PI、α2M、Ln-5、CD44、およびtTGなどのタンパク質の分解を含む。他のMT1-MMP活性は、本明細書に記載されており、当業界で公知である。
【0020】
「選択的に阻害する」MT1-MMP阻害剤とは、少なくとも1種のMT1-MMP活性を低下させることができるが(例えば、MT1-MMPに結合することにより)、他のタンパク質(例えば、他の膜メタロプロテイナーゼ)の活性を実質的に低下させない(例えば、実質的に結合しない)阻害剤を意味する。
【0021】
「送達ベクター」とは、治療剤に結合させた場合、部分または化合物(例えば、ポリペプチド)の非存在下の場合と比較して生物学的障壁を通過する(例えば、細胞膜もしくは血液脳関門を通過する)治療剤の輸送を増加させることができる部分または化合物を意味する。
【0022】
「BBBを通過して効率的に輸送される」送達ベクターとは、Angiopep-6と少なくとも同程度に効率的に(すなわち、WO 2008/144919に記載のin situ脳かん流アッセイにおいてAngiopep-1(250 nM)のものより38.5%以上効率的に)BBBを通過することができるベクターを意味する。従って、「BBBを通過して効率的に輸送されない」ベクターまたはコンジュゲートは、より低レベルで脳に輸送される(例えば、Angiopep-6よりも非効率的に輸送される)。
【0023】
「特定の細胞型に効率的に輸送される」ベクターまたはコンジュゲートとは、対照物質よりも、またはコンジュゲートの場合、非コンジュゲート化薬剤(例えば、MT1-MMP阻害剤)と比較して、少なくとも10%(例えば、25%、50%、100%、200%、500%、1,000%、5,000%、もしくは10,000%)高い程度で、その細胞型に蓄積する(例えば、細胞への輸送の増加、細胞からの流出の減少、もしくはその組合せによる)ことができるベクターまたはコンジュゲートを意味する。
【0024】
「実質的な同一性」または「実質的に同一である」とは、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチド配列が、それぞれ、参照配列と同じポリペプチドもしくはポリヌクレオチド配列を有するか、または2個の配列を最適に整列させた場合、それぞれ、参照配列内の対応する位置で同じである特定の割合のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有することを意味する。例えば、参照配列と「実質的に同一である」アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する。ポリペプチドについては、比較配列の長さは、一般的には少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、75、90、100、150、200、250、300、または350個の連続するアミノ酸(例えば、完全長配列)であろう。核酸については、比較配列の長さは、一般的には少なくとも5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の連続するヌクレオチド(例えば、完全長ヌクレオチド配列)であろう。配列同一性を、デフォルト設定(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705)で配列分析ソフトウェアを用いて測定することができる。そのようなソフトウェアは、種々の置換、欠失、および他の改変に相同性の程度を割り当てることにより類似配列を一致させることができる。
【0025】
「実質的に純粋な」または「単離された」とは、他の化学成分から分離された化合物(例えば、ポリペプチドもしくはコンジュゲート)を意味する。典型的には、化合物が他の成分を少なくとも30重量%含まない場合、その化合物は実質的に純粋である。特定の実施形態においては、前記調製物は、他の成分を少なくとも50重量%、60重量%、75重量%、85重量%、90重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、または99重量%含まない。精製ポリペプチドを、例えば、そのようなポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドの発現によるか、またはポリペプチドを化学的に合成することにより取得することができる。例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析などの任意の好適な方法により、純度を測定することができる。
【0026】
「増加した」とは、対照値と比較して少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、500%、または1000%の増加を意味する。
【0027】
「対照」とは、健康または正常な被験体(例えば、癌またはMT1-MMP活性の増加に関連する疾患を有さない被験体)に関連する値または量を意味する。
【0028】
被験体における疾患、障害、または症状を「治療すること」とは、被験体に治療剤を投与することにより、疾患、障害、または症状の少なくとも1個の症候を減少させることを意味する。
【0029】
被験体における疾患、障害、または症状を「予防的に治療すること」とは、疾患の兆候の前に治療剤を被験体に投与することにより、疾患、障害、または症状の発生頻度または重篤度を減少させること(例えば、予防すること)を意味する。
【0030】
「有効量」とは、臨床的に関連する様式で患者を治療するのに必要とされる、単独の、または別の治療計画と組合わせた、化合物の量を意味する。
【0031】
「被験体」とは、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を意味する。
【0032】
「血管疾患」とは、血管構造に対する変化と関連する任意の疾患を意味する。そのような疾患としては、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、腹部大動脈瘤(AAA)、胸部大動脈瘤、頸動脈疾患、末梢動脈疾患(PAD)、および腎動脈疾患が挙げられる。
【0033】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】MT1-MMPの構造ならびにM14、ACM-14、およびscACM-14ポリペプチドの配列を示す略図である。
【図2】HT-1080線維肉腫細胞中での非リン酸化可能なMT1-MMPの発現が、無胸腺ヌードマウスに埋め込んだ場合、これらの細胞の腫瘍増殖を減少させることを示す画像のセットである。
【図3】scACM-14およびACM-14の細胞への取込みを示す顕微鏡写真のセットである。
【図4】scACM-14ではなく、ACM-14によるMT1-MMPリン酸化の阻害を示すウェスタンブロットの写真である。
【図5】ACM-14またはscACM-14の存在下または非存在下でのグリア芽腫細胞(U-97)、髄芽腫細胞(DAOY)、前立腺腺癌細胞(PC-3)、乳腺癌細胞(MDA-MB-231)、骨肉腫細胞(MG-63)、および線維肉腫細胞(HT-1080)の2Dおよび3D培養物中での腫瘍増殖を示すグラフのセットである。ACM-14の存在下での三次元腫瘍増殖の減少が全ての細胞において観察された。
【図6】ビヒクルのみ、scACM-14またはACM-14で処理した無胸腺ヌードマウスに埋め込んだ線維肉腫細胞の腫瘍サイズを示すグラフである。ACM-14処理は腫瘍サイズを有意に減少させることが観察される。
【図7】ビヒクルのみ、scACM-14またはACM-14を投与した線維肉腫細胞を埋め込んだ無胸腺ヌードマウスの生存を示すグラフである。ACM-14を投与したマウスは、ビヒクルまたはscACM-14を投与したマウスよりも長い生存時間を示した。
【図8】Angiopep-ACM-14コンジュゲートの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明者らは、非リン酸化可能形態の膜1型メタロプロテイナーゼ(MT1-MMP)の細胞質ドメインを含む可溶性ポリペプチドが、MT1-MMP活性を阻害することができることを見出した。MT1-MMP活性は、癌、関節炎、線維症、およびアテローム性動脈硬化症などの疾患と関連するため、本明細書に記載のMT1-MMP阻害剤をこれらの疾患の治療において用いることができる。
【0036】
本発明者らはさらに、MT1-MMP阻害ポリペプチドが、細胞の細胞質にこのポリペプチドを送達することができるベクターにコンジュゲートさせた場合、哺乳動物への投与の際に癌の増殖を阻害することができることを示した。そのようなベクターとしては、細胞膜に浸透することができるアンテナペディアタンパク質のホメオドメインの第3へリックスが挙げられる。MT1-MMPポリペプチド/アンテナペディア第3へリックスホメオドメイン融合タンパク質は、腫瘍形成を阻害し、癌腫瘍を有するマウスにおける生存を増加させ、かくして、そのようなタンパク質を用いて、癌、心疾患および血管疾患、ならびに関節炎などのMT1-MMP活性の低下が望ましい疾患を治療することができる原理の証明を提供する。
【0037】
MT1-MMPとその生物活性
MT1-MMPは、膜結合型コラゲナーゼである。その活性は、例えば、Itohら、J Cell Physiol 206:108, 2006に記載されている。MT1-MMP活性の増加は、細胞外マトリックスの分解の増加ならびに癌の侵襲、増殖、および血管新生の増加と関連している。MT1-MMPは、基底膜の成分であるIV型コラーゲンを分解する、膜メタロプロテイナーゼ-2の活性化に関与する。MT1-MMPは、触媒ドメインを除去するタンパク質溶解的プロセッシングにより負に調節されている。このプロセッシングは、MT1-MMPの下方調節をもたらす。
【0038】
MT1-MMPの基質としては、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、Ln-1、ビトロネクチン、アグリカン、テナシン、ニドゲン、ペルレカン、フィブリノゲン/フィブリン、フィブリリン、α1PI、α2M、Ln-5、CD44、およびtTGが挙げられる(例えば、Hijovaら、Bratisl Lek Listy 106:127-132, 2005を参照)。
【0039】
MT1-MMPは、Tyr573でSrcキナーゼによりリン酸化される。MT1-MMPリン酸化は、化学誘因物質スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)で刺激した場合、HT-1080線維肉腫細胞中で増加する。S1Pは内皮細胞の移動および毛細血管様構造への分化を増加させる。さらに、細胞をS1Pで刺激した場合、細胞周囲へのリン酸化されたMT1-MMPの細胞内局在化が誘導される。最後に、MT1-MMPのリン酸化は、3Dコラーゲンマトリックスの増殖および腫瘍細胞の足場依存的増殖において重要である(Nyalendoら、Carcinogenesis 29:1655-1664, 2008)。
【0040】
MT1-MMPと疾患
MT1-MMPは、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の分解を含む疾患と関連している。MT1-MMP活性は、例えば、腫瘍細胞移動および侵襲において重要な役割を果たすことが示されている。MT1-MMPは、ECMタンパク質(d’Orthoら、Eur J Biochem 250:751-757, 1997; Hiraokaら、Cell 95:365-377, 1998; Peiら、J Biol Chem 271:9135-9140, 1996)ならびにいくつかの細胞表面結合接着受容体(Belkinら、J Biol Chem 276:18415-18422, 2001; Kajitaら、J Cell Biol 153:893-904, 2001)をタンパク質溶解する。MT1-MMPは、多くの型の腫瘍において過剰発現され(Nakadaら、Am J Pathol 154, 417-428, 1999; Zhaiら、Cancer Res 65, 6543-6550, 2005)、その酵素により媒介されるI型コラーゲンフィブリルの高密度架橋メッシュワークの細胞周囲でのタンパク質溶解は、組織侵襲活性を有する新生物細胞を付与し(Sabehら、J Cell Biol 167, 769-781, 2004)、別の増殖制限的三次元(3D)マトリックスにおける腫瘍細胞増殖を持続させる(Hotaryら、Cell 114, 33-45, 2003)。
【0041】
MT1-MMP発現は、変形性関節症および慢性関節リウマチなどの関節炎とも関連している。軟骨における、コラーゲンなどのECMタンパク質の分解は、関節炎の特徴である。コラゲナーゼとして作用し得るMT1-MMPレベルの上昇は、変形性関節症(Imaiら、Am J Pathol 151:245-256, 1997)および慢性関節リウマチ(Konttinenら、Ann Rheum Dis 58:691-697, 1999)の両方において観察されている。かくして、MT1-MMP活性は、関節疾患において役割を果たすと考えられる。
【0042】
また、MT1-MMP活性は血管疾患とも関連している。MT1-MMPは、平滑筋細胞および動脈硬化性プラーク中のマクロファージ中で発現される。MT1-MMP発現は、これらの細胞中での前炎症分子により上方調節される(Tripathiら、Circulation 99:3103-3109, 1999)。血管疾患は内皮細胞および平滑筋構造の変化を含むため、MT1-MMPはアテローム性動脈硬化症の進行に関与すると考えられる。
【0043】
MT1-MMP阻害剤
本発明の組成物は、MT1-MMP活性(例えば、本明細書に記載の任意のMT1-MMP活性)を阻害することができるポリペプチドまたはペプチド模倣剤などのMT1-MMP阻害剤を含む。特定の実施形態においては、前記ポリペプチドは、ヒトMT1-MMPの細胞質ドメイン(RRHGTPRRLLYCQRSLLDKV; 配列番号117)と実質的に同一である(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%)アミノ酸配列を含む。前記ポリペプチドは、ヒトMT1-MMP配列の位置573に対応する位置のチロシンに置換、改変、または欠失を有してもよい。このチロシンを、任意の天然アミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、およびVal)、非天然アミノ酸、またはその改変形態で置換してもよい。特定の実施形態においては、チロシンをフェニルアラニンで置換する(例えば、RRHGTPRRLLFCQRSLLDKV; 配列番号118)。他の実施形態においては、チロシンをチロシン類似体で置換する。チロシン類似体の例は、米国特許第6,469,047号およびPCT公開WO 2002/085923(例えば、図26)に記載されている。
【0044】
他の実施形態においては、MT1-MMP阻害剤ポリペプチドは、MT1-MMP細胞質ドメインの断片と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む。この断片は、ヒトMT1-MMP配列(例えば、本明細書に記載のもの)のTyr573に置換、改変、または欠失を有してもよい。特定の実施形態においては、前記断片は、MT1-MMP細胞質ドメインのN末端から欠失した0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15個のアミノ酸、MT1-MMP細胞質ドメインのC末端から欠失した0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15個のアミノ酸、またはその組合せを有する。特定の実施形態においては、前記断片はヒトMT1-MMP配列の残基573に対応する位置に1個のアミノ酸を含む。
【0045】
前記MT1-MMP阻害ポリペプチドはいずれも、ヒト野生型配列と比較して0、1、2、3、4、5、6、または7個の置換(例えば、保存的もしくは非保存的)を有してもよい。特定の実施形態においては、前記ポリペプチドはペプチド模倣剤(例えば、本明細書に記載のもの)であってよい。
【0046】
送達ベクター
本明細書に記載のMT1-MMP阻害治療剤は、標的細胞への治療剤の送達を増強することができるか、または血液脳関門(BBB)などの生物学的障壁を通過する治療剤の輸送を改善するための送達ベクターと共に存在してもよい。送達ベクターとしては、細胞浸透性ペプチド、BBBを通過して輸送され得るペプチド、および特定の細胞型への送達を増強することができるリポソームが挙げられる。特定の実施形態においては、ポリペプチド送達ベクターは、MT1-MMP阻害剤と融合タンパク質を形成する。他の実施形態においては、送達ベクターをMT1-MMP阻害剤と化学的にコンジュゲートさせる。
【0047】
細胞浸透性ペプチドベクター
特定の実施形態においては、送達ベクターは細胞浸透性ペプチドである。そのようなペプチドは、治療剤への細胞浸透性ペプチドの結合に際して、細胞膜を通過して治療剤を送達することができる。特定の実施形態においては、細胞浸透性ペプチドは、アンテナペディアタンパク質のホメオドメインの第3へリックス(RQIKIWFQNRRMKWKK; 配列番号119)、または関連ペプチド(例えば、アンテナペディアリーダーペプチド(CT) (KKWKMRRNQFWVKVQRG; 配列番号120)、アンテナペディアペプチドアミド(RQIKIWFQNRRMKWKK-NH2; 配列番号121)、およびCys(Npys)-アンテナペディアペプチドアミド(C(Npys)-RQIKIWFQNRRMKWKK-NH2: 配列番号122))である。
【0048】
特定の実施形態においては、前記ペプチドは細胞質形質導入ペプチド(CTP)である。そのようなペプチドは米国特許第7,101,844号に記載されており、アミノ酸配列YGRRARRRRRR (配列番号123)、YGRRARRRARR (配列番号124)、YGRRARRAARR (配列番号125)、YKRKARRAARR (配列番号126)、YARKARRAARR (配列番号127)、YKRAARRAARR (配列番号128)、YEREARRAARR (配列番号129)、YAREARRAARR (配列番号130)、YGRAARRAARR (配列番号131)、YRRAARRAARA (配列番号132)、YPRAARRAARR (配列番号133)、PARAARRAARR (配列番号134)、YGRRRRRRRRR (配列番号135)、およびYRRRRRRRRRR (配列番号136)が挙げられる。
【0049】
他の実施形態においては、前記ペプチドは、HSV-1 VP22、(Arg)9 (配列番号137)、Cys(Npys)-(Arg)9 (配列番号138)、Cys(Npys)-(D-Arg)9、[Cys58]105Y細胞浸透性ペプチド(CSIPPEVKFNKPFVYLI; 配列番号139)、ペプチド105Y (SIPPEVKFNKPFVYLI; 配列番号140)、ブフォリン(TRSSRAGLQFPVGRVHRLLRK; 配列番号141)、キメララビウイルス糖タンパク質断片(RVG-9R) (YTIWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNGGGGRRRRRRRRR; 配列番号142)、Cys(Npys)-TAT(47-57) (C(Npys)YGRKKRRQRRR-NH2; 配列番号143)、Cys-TAT(47-57) (CYGRKKRRQRRR-NH2; 配列番号144)、脂質膜移行ペプチド(KKAAAVLLPVLLAAP; 配列番号145)、D-異性体-脂質膜移行ペプチド(「全D」KKAAAVLLPVLLAAP)、マストパラン (INLKALAALAKKIL-NH2; 配列番号146)、マストパラン7 (INLKALAALAKALL-NH2; 配列番号147)、マストパランX (INWKGIAAMAKKLL-NH2; 配列番号148)、MEK1由来ペプチド阻害剤1 (MPKKKPTPIQLNP; 配列番号149)、ミリストイル-MEK1由来ペプチド阻害剤1 (Myr-MPKKKPTPIQLNP; 配列番号150)、ステアリル-MEK-1由来ペプチド阻害剤1アミド(Ste-MPKKKPTPIQLNP-NH2; 配列番号151)、膜透過性配列(MPS; AAVALLPAVLLALLAK; 配列番号152)、HIV関連MPG (GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKSKRKV; 配列番号153)、アミノペプチダーゼNリガンド(CD13)、NGRペプチド(CNGRCG、Cys1-Cys5ジスルフィド架橋; 配列番号154)、NGRペプチド1 (Cys-Asn-Gly-Arg-Cys-Gly-Gly-D-Lys-D-Leu-D-Ala-D-Lys-D-Leu-D-Ala-D-Lys-D-Lys-D-Leu-D-Ala-D-Lys-D-Leu-D-Ala-D-Lys-NH2 (ジスルフィド架橋: 1-5))、NGRペプチド2 (CNGRCGGLVTT (ジスルフィド架橋: 1-5); 配列番号155)、NGRペプチド3 (CNGRC-NH2 (ジスルフィド架橋: 1-5); 配列番号156)、NGRペプチド4 (Cys-Asn-Gly-Arg-Cys-Gly-Gly-D-Lys-D-Lys-D-Leu-D-Lys-D-Leu-D-Leu-D-Leu-D-Lys-D-Leu-D-Leu-OH (ジスルフィド架橋: 1-5))、Pep-1 (Chariot(商標); KETWWETWWTEWSQPKKKRKV; 配列番号157)、SynB1 (RGGRLSYSRRRFSTSTGRA; 配列番号158)、ビオチン-TAT(47-57) (ビオチン-YGRKKRRQRRR; 配列番号159)、TAT(47-57) (YGRKKRRQRRR; 配列番号160)、TAT(47-57) GGG-Cys(Npys) (YGRKKRRQRRRGGG-C(Npys)-NH2; 配列番号161)、TAT(48-57) (GRKKRRQRRR; 配列番号162)、Tat-C(48-57) (CGRKKRRQRRR; 配列番号163)、経皮ペプチド (ACSSSPSKHCG; 配列番号164)、トランスポータン (GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL; 配列番号165)、およびトランスポータン10 (AGYLLGKINLKALAALAKKIL-NH2; 配列番号166)である。
【0050】
細胞に進入するか、または細胞に蓄積することができるポリペプチドベクター
本発明者らは、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉などの細胞型に進入し、蓄積することができるポリペプチドを開発した。例えば、PCT公開WO 2008/144919を参照されたい。そのようなペプチドとしては、これらの細胞型に進入することができるが、血液脳関門を効率的に通過しないAngiopep-7(TFFYGGSRGRRNNFRTEEY; 配列番号112)が挙げられる。これらの細胞型に進入し、蓄積することができる他のペプチドとしては、BBBを通過することもできる以下に記載のAngiopepペプチドが挙げられる。
【0051】
特定の実施形態においては、前記ポリペプチドは、Angiopep-7と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む。このポリペプチドは、Angiopep-7配列と比較して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のアミノ酸置換を含むか、またはAngiopep-7の断片(例えば、肝臓、肺、脾臓、筋肉、もしくは膵臓からなる群より選択される少なくとも1種の細胞型に蓄積することができる断片)であってもよい。特定の実施形態においては、Angiopep-7ポリペプチドは、N末端またはC末端システイン残基(例えば、CTFFYGGSRGRRNNFRTEEY (配列番号115)およびTFFYGGSRGRRNNFRTEEYC (配列番号116))を含んでもよい。
【0052】
特定の実施形態においては、前記ポリペプチドは、式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
(式中、X1〜X19(例えば、X1〜X6、X8、X9、X11〜X14、およびX16〜X19)はそれぞれ独立に、任意のアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびValなどの天然アミノ酸)であるか、または存在せず、X1、X10、およびX15の少なくとも1個(例えば、2もしくは3個)はアルギニンである)
を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、X7はSerもしくはCysである;またはX10およびX15はそれぞれ独立に、ArgもしくはLysである。いくつかの実施形態においては、X1〜X19の残基は、包括的に、配列番号1〜105および107〜116のいずれか1個のアミノ酸配列のいずれか(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)と実質的に同一である。いくつかの実施形態においては、アミノ酸X1〜X19の少なくとも1個(例えば、2、3、4、または5個)はArgである。いくつかの実施形態においては、前記ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはその両方に1個以上のさらなるシステイン残基を有する。前記ポリペプチドは、特定の細胞型に蓄積することができ、BBBを効率的に通過してもよい(または通過しなくてもよい)。
【0053】
血液脳関門を通過することができる送達ベクター
特定の実施形態においては、前記治療剤を、血液脳関門を通過することができる送達ベクターに結合させる。そのようなポリペプチドとしては、アプロチニン(例えば、米国特許出願第2006/0189515号に記載)、抗体、および本明細書に記載の他のものなどの、アプロチニン由来Angiopepシリーズのペプチドおよびその類似体が挙げられる。
【0054】
Angiopepペプチド
特定の実施形態においては、前記治療剤を、表1に記載の配列のいずれか、またはその断片と実質的に同一であるポリペプチドに結合させる。そのようなポリペプチドの特定例は、Angiopep-1 (配列番号67)、Angiopep-2 (配列番号97)、Angiopep-3 (配列番号107)、Angiopep-4a (配列番号108)、Angiopep-4b (配列番号109)、Angiopep-5 (配列番号110)、またはAngiopep-6 (配列番号111)の配列を有するものである。ペプチドベクターは、任意の長さのもの、例えば、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、35、50、75、100、200、もしくは500個のアミノ酸、またはこれらの数の間の任意の範囲のものであってよい。特定の実施形態においては、ペプチドベクターは、長さ10〜50アミノ酸である。前記ポリペプチドを、組換え遺伝子技術または化学的合成により製造することができる。このポリペプチドは、C末端システイン、N末端システイン、またはその両方を含んでもよい。
【表1】

【0055】

【0056】

【0057】

【0058】
特定の実施形態においては、Angiopepポリペプチドは、BBBを効率的に通過することができ、式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
(式中、X1〜X19(例えば、X1〜X6、X8、X9、X11〜X14、およびX16〜X19)はそれぞれ独立に、任意のアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびValなどの天然アミノ酸)であるか、または存在せず、X1、X10、およびX15の少なくとも1個(例えば、2もしくは3個)はアルギニンである)
を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、X7はSerもしくはCysである;またはX10およびX15はそれぞれ独立に、ArgもしくはLysである。いくつかの実施形態においては、X1〜X19の残基は、包括的に、配列番号1〜105および107〜116のいずれか1個のアミノ酸配列のいずれか(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)と実質的に同一である。いくつかの実施形態においては、アミノ酸X1〜X19の少なくとも1個(例えば、2、3、4、または5個)はArgである。いくつかの実施形態においては、前記ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはその両方に1個以上のさらなるシステイン残基を有する。
【0059】
抗体
特定の実施形態においては、BBBを通過するトランスサイトーシスを媒介することができる受容体に結合する抗体または抗体フラグメントを、BBBを通過してMT1-MMP阻害剤を輸送するための送達ベクターとして用いる。受容体への結合後、抗体はBBBを通過して輸送され得る。従って、薬剤をそのような抗体にコンジュゲートさせるか、またはさもなければ結合した場合、そのような抗体を用いて、BBBを通過して薬剤を輸送することができる。これらの抗体としては、抗インスリン受容体抗体(米国特許出願公開第2004/0101904号に記載)、抗トランスフェリン受容体抗体(Pardridgeら、Pharmacol. Exp. Ther. 256:66-70, 1991に記載)が挙げられる。
【0060】
トランスサイトーシスを媒介することができる受容体を標的とするさらなる抗体を、当業界ではよく知られた方法を用いて作製することができる。特定の実施形態においては、この抗体はヒト抗体であるか、またはヒト化抗体である。
【0061】
他のペプチド
送達ベクターとして用いることができるBBBを通過することができる他のペプチドとしては、ラビウイルス糖タンパク質(RVG; YTIWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNG; 配列番号167)、p97、トランスフェリン、インスリン、受容体関連タンパク質(RAP)、組織型プラスミノゲンアクチベーター(tPA)、およびラクトフェリンが挙げられる。LRPリガンド、インスリン様増殖因子(IGF)、レプチン、低密度リポタンパク質(LDL)が挙げられ、BBBを通過することができ、また、米国特許出願公開第2003/0129186号および第2004/0102369号に記載されている。ナイセリア・ゴノロア(Neisseria gonorrhoeae)のF62 Lazタンパク質のH.8領域(CSQEPAAPAAEATPAGEAPASEAPAAEAAPADAAEAPAA; 配列番号168)または少なくとも4個の完全もしくは不完全なAAEAPリピートを有するペプチドなどのさらに他のペプチドが、米国特許出願公開第2008/0213185号に記載されている。そのようなペプチドは、BBBを通過することができる。
【0062】
さらに他のポリペプチドとしては、アプロチニン、ビクニン、アミロイドβ前駆体タンパク質、およびKunitz阻害剤タンパク質などのKunitzドメイン含有ポリペプチドが挙げられる。
【0063】
リポソーム送達系
MT1-MMP阻害剤を、リポソームを用いて特定の組織に送達することもできる。特定の実施形態においては、MT1-MMP阻害治療剤(例えば、ポリペプチド)を、イムノリポソームを用いて標的細胞に送達する。この手法においては、前記ポリペプチドをリポソーム(例えば、当業界で公知の任意の好適なリポソーム)中に封入し、リポソームをその外部表面上で、標的細胞上で発現される抗原に結合することができる抗体にコンジュゲートさせる。一例においては、イムノリポソームは癌細胞を標的とする。そのようなイムノリポソームは、抗EGF受容体抗体(例えば、Mamotら、Cancer Res 63:3154-61, 2003に記載)、抗-HER2抗体(例えば、Kirpotinら、Biochemistry, 36:66-75, 1997およびParkら、Proc Natl Acad Sci USA 92:1327-1331, 1995に記載)、抗-MUC1抗体(例えば、Moaseら、Biochim Biophys Acta 1510:43-55, 2001に記載)、抗-CC52抗体(Kampsら、J Drug Target 8:235-45, 2000)、抗ガングリオシドG(M3)抗体(DH2)または抗-Le(x)抗体(SH1)(例えば、Namら、Oncol Res 11:9-16, 1999に記載)を用いることができる。
【0064】
BBBを通過する送達を、同様に達成することもできる。例えば、MT1-MMP阻害剤を含むリポソームを、BBBを通過するトランスサイトーシスを媒介することができる受容体に対する抗体にコンジュゲートさせることができる。そのような抗体は上記されており、抗トランスフェリン抗体および抗インスリン受容体抗体が挙げられる。
【0065】
ポリペプチド誘導体およびペプチド模倣剤
天然アミノ酸からなるポリペプチドに加えて、ペプチド模倣剤またはポリペプチド類似体も本発明により包含され、本発明の組成物において用いられる送達ベクターまたはMT1-MMP阻害剤を形成することができる。ポリペプチド類似体は、鋳型ポリペプチドのものと類似する特性を有する非ペプチド薬剤として製薬業界において一般的に用いられている。非ペプチド化合物は「ペプチド模倣物質」またはペプチド模倣剤と呼ばれる(Fauchereら、Infect. Immun. 54:283-287,1986 およびEvansら、J. Med. Chem. 30:1229-1239, 1987)。治療上有効なペプチドまたはポリペプチドと構造的に関連するペプチド模倣物質を用いて、等価な、または増強された治療または予防効果をもたらすことができる。一般的には、ペプチド模倣剤は、天然受容体結合ポリペプチドなどの模範的ポリペプチド(すなわち、生物活性もしくは薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似するが、当業界でよく知られた方法(Spatola, Peptide Backbone Modifications, Vega Data, 1:267, 1983; Spatolaら、Life Sci. 38:1243-1249, 1986; Hudsonら、Int. J. Pept. Res. 14:177-185, 1979; およびWeinstein, 1983, Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein(編)Marcel Dekker, New York)によって、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-CH2SO-、-CH(OH)CH2-、-COCH2-などの結合により置換されていてもよい1個以上のペプチド結合を有する。そのようなポリペプチド模倣物質は、より経済的な生産、より高い化学的安定性、増強された薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効能、効率)、低下した抗原性などの天然ポリペプチドを超える有意な利点を有してもよい。
【0066】
本明細書に記載のペプチドベクターはBBBを効率的に通過するか、または特定の細胞型(例えば、本明細書に記載のもの)を標的化することができるが、その有効性はプロテアーゼの存在により減少し得る。同様に、本発明において用いられるMT1-MMP阻害剤の有効性も同様に減少し得る。血清プロテアーゼは、切断のためのL-アミノ酸およびペプチド結合などの特定の基質要求性を有する。さらに、血清中のプロテアーゼ活性の多くの顕著な成分であるエキソペプチダーゼは通常、ポリペプチドの第1のペプチド結合に対して作用し、遊離N末端を要する(Powellら、Pharm. Res. 10: 1268-1273, 1993)。これに照らせば、改変された型のポリペプチドを使用することが有利であることが多い。改変ポリペプチドは、元のL-アミノ酸ポリペプチドの構造特性を保持するが、有利には、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼによる切断の影響を容易に受ける。
【0067】
コンセンサス配列の1個以上のアミノ酸の同じ型のD-アミノ酸との体系的置換(例えば、エナンチオマー;L-リジンの代わりにD-リジン)を用いて、より安定なポリペプチドを作製することができる。かくして、本明細書に記載のポリペプチド誘導体またはペプチド模倣剤は、全てのL-、全てのD-または混合D,Lポリペプチドであってよい。ペプチダーゼは基質としてD-アミノ酸を用いることができないため、N末端またはC末端D-アミノ酸の存在は、ポリペプチドのin vivoでの安定性を増加させる(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。逆-Dポリペプチドは、L-アミノ酸を含むポリペプチドと比較して、逆配列に整列された、D-アミノ酸を含むポリペプチドである。かくして、L-アミノ酸ポリペプチドのC末端残基は、D-アミノ酸ポリペプチドにとってN末端などになる。逆D-ポリペプチドは、L-アミノ酸ポリペプチドと同じ三次コンフォメーション、従って、同じ活性を保持するが、in vitroおよびin vivoで酵素的分解に対してより安定であり、かくして、元のポリペプチドよりも高い治療効力を有する(BradyおよびDodson, Nature 368:692-693, 1994ならびにJamesonら、Nature 368:744-746, 1994)。逆-D-ポリペプチドに加えて、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変異を含む拘束されたポリペプチドを、当業界でよく知られた方法により作製することができる(Rizoら、Ann. Rev. Biochem. 61:387-418, 1992)。例えば、拘束されたポリペプチドを、ジスルフィド架橋を形成することができるシステイン残基を付加することにより作製し、それによって環状ポリペプチドを得ることができる。環状ポリペプチドは遊離NまたはC末端を有さない。従って、それらはエキソペプチダーゼによるタンパク質溶解の影響を受けにくいが、それらは勿論、エンドペプチダーゼの影響を受けやすく、ポリペプチド末端で切断しない。N末端もしくはC末端D-アミノ酸を有するポリペプチドと環状ポリペプチドのアミノ酸配列は通常、それぞれ、N末端もしくはC末端D-アミノ酸残基の存在、またはその環状構造を除いて、それらが一致するポリペプチドの配列と同一である。
【0068】
分子内ジスルフィド結合を含む環状誘導体を、アミノおよびカルボキシ末端などの環化のために選択される位置に好適なS-保護されたシステインまたはホモシステイン残基を組込みながら、従来の固相合成により調製することができる(Sahら、J. Pharm. Pharmacol. 48:197, 1996)。鎖集合の完了後、(1)S-保護基を選択的に除去して、対応する2個の遊離SH-官能基の結果として生じる支持体上での酸化を用いてS-S結合を形成させた後、支持体から生成物を従来通り除去し、好適な精製手順を行うか、または(2)側鎖を完全に脱保護すると共に支持体からポリペプチドを除去した後、高度に希釈した水性溶液中で遊離SH-官能基を酸化することにより、環化を実施することができる。
【0069】
分子内アミド結合を含む環状誘導体を、環化のために選択される位置に、好適なアミノおよびカルボキシル側鎖保護されたアミノ酸誘導体を組込みながら、従来の固相合成により調製することができる。分子内-S-アルキル結合を含む環状誘導体を、環化のために選択される位置に、好適なアミノ保護側鎖を有するアミノ酸残基および好適なS保護システインまたはホモシステインを組込みながら、従来の固相化学により調製することができる。
【0070】
ポリペプチドのN末端またはC末端残基に作用するペプチダーゼに対する耐性を付与するための別の有効な手法は、改変ポリペプチドが最早ペプチダーゼの基質ではなくなるように、ポリペプチド末端に化学基を付加することである。1つのそのような化学的改変は、いずれか、または両方の末端でのポリペプチドのグリコシル化である。特定の化学的改変、特に、N末端グリコシル化は、ヒト血清中でのポリペプチドの安定性を増加させることが示された(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。血清安定性を増強する他の化学的改変としては、限定されるものではないが、アセチル基などの1〜20個の炭素の低級アルキルからなるN末端アルキル基の付加、および/またはC末端アミドもしくは置換アミド基の付加が挙げられる。特に、本発明は、N末端アセチル基および/またはC末端アミド基を担持するポリペプチドからなる改変ポリペプチドを含む。
【0071】
また、誘導体がポリペプチドの所望の機能的活性を保持するという条件で、通常はポリペプチドの一部ではないさらなる化学部分を含む他の型のポリペプチド誘導体も本発明に含まれる。そのような誘導体の例としては、(1)アミノ末端もしくは別の遊離アミノ基のN-アシル誘導体(ここで、アシル基はアルカノイル基(例えば、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル)、アロイル基(例えば、ベンゾイル)もしくはF-mocなどのブロッキング基(フルオレニルメチル-O-CO-)であってよい);(2)カルボキシ末端または別の遊離カルボキシもしくはヒドロキシル基のエステル;(3)アンモニアもしくは好適なアミンとの反応により産生されたカルボキシ末端もしくは別の遊離カルボキシル基のアミド;(4)リン酸化誘導体;(5)抗体もしくは他の生物リガンドにコンジュゲートさせた誘導体または他の型の誘導体が挙げられる。
【0072】
本明細書に記載のポリペプチドへの追加アミノ酸残基の付加の結果生じるより長いポリペプチド配列も、本発明に包含される。そのようなより長いポリペプチド配列は、上記のポリペプチドと同じ生物活性および特異性(例えば、細胞指向性)を有すると期待することができる。実質的な数の追加アミノ酸を有するポリペプチドは排除されないが、いくつかの大きいポリペプチドは有効な配列を隠す配置をとり、それによって標的(例えば、LRPまたはLRP2などのLRP受容体ファミリーのメンバー)への結合を阻害し得ると認識されている。これらの誘導体は競合的アンタゴニストとして作用し得る。かくして、本発明はポリペプチドまたは伸長を有する本明細書に記載のポリペプチドの誘導体を包含するが、この伸長は該ポリペプチドまたはその誘導体の細胞標的化活性を破壊しないのが望ましい。
【0073】
本発明に含まれる他の誘導体は、短いストレッチのアラニン残基またはタンパク質溶解のための推定部位などにより(例えば、カテプシンによる、例えば、米国特許第5,126,249号および欧州特許第495 049号を参照されたい)、直接的に、またはスペーサーを介して互いに共有結合した、本明細書に記載のような、2個の同じか、または2個の異なるポリペプチドからなる二重ポリペプチドである。本明細書に記載のポリペプチドの多量体は、同じか、または異なるポリペプチドまたはその誘導体から形成された分子のポリマーからなる。
【0074】
本発明はまた、そのアミノもしくはカルボキシ末端、またはその両方で、異なるタンパク質のアミノ酸配列に連結された、本明細書に記載のポリペプチド、またはその断片を含むキメラまたは融合タンパク質であるポリペプチド誘導体も包含する。そのようなキメラまたは融合タンパク質を、該タンパク質をコードする核酸の組換え発現により製造することができる。例えば、キメラまたは融合タンパク質は、等価な、またはより高い機能的活性を有するキメラまたは融合タンパク質をもたらすことが望ましい1個の記載のポリペプチドと共有される少なくとも6個のアミノ酸を含んでもよい。
【0075】
ペプチド模倣剤を同定するためのアッセイ
上記のように、本明細書に記載のポリペプチドの主鎖形状および薬理作用団展示(ペプチド模倣剤)を複製するために作製された非ペプチジル化合物は、より高い代謝安定性、より高い効力、より長い作用期間、およびより良好な生体利用能の特性を有することが多い。
【0076】
ペプチド模倣化合物を、生物ライブラリー、空間的にアドレス可能な平行固相もしくは液相ライブラリー、解析を要する合成ライブラリー方法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー方法、およびアフィニティクロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法などの、当業界で公知のコンビナトリアルライブラリー方法におけるいくつかの手法のいずれかを用いて取得することができる。生物ライブラリー手法はペプチドライブラリーに限られるが、他の4つの手法はペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーにも適用可能である(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)。分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当業界で、例えば、DeWittら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909, 1993); Erbら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994); Zuckermannら(J. Med. Chem. 37:2678, 1994); Choら(Science 261:1303, 1993); Carellら(Angew. Chem, Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994および同書、2061); およびGallopら(Med. Chem. 37:1233, 1994)に見出すことができる。化合物のライブラリーを、溶液中(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992)またはビーズ(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌もしくは胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869, 1992)上もしくはファージ(ScottおよびSmith, Science 249:386-390, 1990)上、またはルシフェラーゼ上で提供し、酵素標識を好適な基質の生成物への変換の決定により検出することができる。
【0077】
一度、本明細書に記載のポリペプチドを同定したら、限定されるものではないが、溶解度の差(例えば、沈降)、遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティ、イオン交換、およびサイズ排除)などの任意の数の標準的な方法、またはペプチド、ペプチド模倣剤、もしくはタンパク質の精製のために用いられる任意の他の標準的な技術により単離および精製することができる。同定された目的のポリペプチドの機能特性を、当業界で公知の任意の機能アッセイを用いて評価することができる。細胞内シグナリングにおける下流の受容体機能を評価するためのアッセイを用いるのが望ましい(例えば、細胞増殖)。
【0078】
例えば、本発明のペプチド模倣化合物を、以下の3段階プロセス:(1)本明細書に記載のポリペプチドを走査して、本明細書に記載の特定の細胞型を標的化するのに必要な二次構造の領域を同定すること;(2)コンフォメーションが拘束されたジペプチド代理物を用いて、主鎖形状を改良し、これらの代理物に対応する有機プラットフォームを提供すること;および(3)最良の有機プラットフォームを用いて、天然ポリペプチドの所望の活性を模倣するように設計された候補のライブラリー中の有機薬理作用団を展示すること、を用いて取得することができる。より詳しくは、この3段階は以下の通りである。段階1においては、リード候補ポリペプチドを走査し、その構造を短縮して、その活性のための要件を同定する。一連の元のポリペプチド類似体を合成する。段階2においては、最良のポリペプチド類似体を、コンフォメーション的に拘束されたジペプチド代理物を用いて調査する。ヨードリジジン-2-オン、ヨードリジジン-9-オンおよびキノリジジノンアミノ酸(それぞれ、I2aa、I9aaおよびQaa)を、最良のペプチド候補の主鎖形状を研究するためのプラットフォームとして用いる。これらの、および関連するプラットフォーム(Halabら、Biopolymers 55:101-122, 2000およびHanessianら、Tetrahedron 53:12789-12854, 1997に概説されている)を、ポリペプチドの特定の領域に導入して、異なる向きの薬理作用団の方向を合わせることができる。これらの類似体の生物学的評価により、活性のための形状要件を模倣する改良されたリードポリペプチドを同定する。段階3においては、最も活性の高いリードポリペプチドに由来するプラットフォームを用いて、天然ペプチドの活性を担う薬理作用団の有機代理物を展示する。この薬理作用団と足場を、平行合成形式で混合する。ポリペプチドの誘導および上記段階を、当業界で公知の方法を用いる他の手段により達成することができる。
【0079】
前記ポリペプチド、ポリペプチド誘導体、ペプチド模倣剤または本明細書に記載の他の小分子から決定された構造機能相関を用いて、類似するか、またはより良好な特性を有する類似体分子構造を精製し、調製することができる。従って、本発明の化合物はまた、本明細書に記載のポリペプチドの構造、極性、電荷特性および側鎖特性を共有する分子も含む。
【0080】
まとめると、本明細書の開示に基づいて、当業者であれば、薬剤を特定の細胞型(例えば、本明細書に記載のもの)に対して標的化するための化合物を同定するのに有用であるペプチドおよびペプチド模倣剤スクリーニングアッセイを開発することができる。本発明のアッセイを、低効率、高効率、または超高効率スクリーニング形式のために開発することができる。本発明のアッセイは、自動化に従うアッセイを含む。
【0081】
リンカー
MT1-MMPを送達ベクターに共有結合させる実施形態においては、MT1-MMP阻害剤を、直接的に(例えば、ペプチド結合などの共有結合を介して)またはリンカーを介して送達ベクターに結合することができる。リンカーとしては、化学的連結剤(例えば、切断可能なリンカー)およびペプチドが挙げられる。
【0082】
いくつかの実施形態においては、リンカーは化学的連結剤である。MT1-MMP阻害剤(例えば、ポリペプチドもしくはペプチド模倣剤)とベクターペプチドを、スルフヒドリル基、アミノ基(アミン)、および/もしくは炭水化物または任意の好適な反応基を介してコンジュゲートさせることができる。ホモ二官能性およびヘテロ二官能性交叉リンカー(コンジュゲーション剤)が、多くの商業的起源から利用可能である。交叉連結に利用可能な領域を、本発明のポリペプチド上に見出すことができる。交叉リンカーは、可撓性アーム、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の炭素原子を含んでもよい。交叉リンカーの例としては、BS3([ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート];BSは、接近可能な一次アミンを標的化するホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである)、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミドと1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド;NHS/EDCは一次アミン基とカルボキシル基とのコンジュゲーションを可能にする)、スルホ-EMCS([N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド;スルホ-EMCSは、スルフヒドリル基およびアミノ基に対して反応するヘテロ二官能性反応基(マレイミドおよびNHS-エステル)である)、ヒドラジド(多くのタンパク質は露出した炭水化物を含み、ヒドラジドは一次アミンにカルボキシル基を連結するための有用な試薬である)、ならびにSATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオ酢酸;SATAは、アミンと反応し、保護されたスルフヒドリル基を付加する)が挙げられる。
【0083】
共有結合を形成するために、化学反応基として、ヒドロキシル部分が、ペプチドを改変するのに必要なレベルで生理学的に許容し得る、様々な活性カルボキシル基(例えば、エステル)を用いることができる。具体的な薬剤としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、マレイミドプロピオン酸(MPA)、マレイミドヘキサン酸(MHA)、およびマレイミドウンデカン酸(MUA)が挙げられる。
【0084】
第一級アミンは、NHSエステルのための主要な標的である。タンパク質のN末端上に存在する接近可能なα-アミン基およびリジンのε-アミンはNHSエステルと反応する。NHSエステルコンジュゲーション反応物が第一級アミンと反応する時にアミド結合が形成され、N-ヒドロキシスクシンイミドを遊離する。これらのスクシンイミドを含有する反応基を、本明細書ではスクシンイミジル基と呼ぶ。本発明の特定の実施形態においては、タンパク質上の官能基はチオール基であり、化学反応基はγ-マレイミド-ブチリルアミド(GMBAもしくはMPA)などのマレイミド含有基であろう。そのようなマレイミド含有基を、本明細書ではマレイド基と呼ぶ。
【0085】
マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5-7.4である場合、ペプチド上のスルフヒドリル基に対して最も選択的である。pH 7.0では、マレイミド基とスルフヒドリル(例えば、血清アルブミンまたはIgGなどのタンパク質上のチオール基)との反応速度は、アミンとの反応速度よりも1000倍速い。かくして、マレイミド基とスルフヒドリルとの間に安定なチオエーテル結合を形成させることができる。
【0086】
他の実施形態においては、前記リンカーは、少なくとも1個のアミノ酸(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、40または50個のアミノ酸のペプチド)を含む。特定の実施形態においては、リンカーは1個のアミノ酸(例えば、Cysなどの任意の天然アミノ酸)である。他の実施形態においては、米国特許第7,271,149号に記載のような、配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(式中、nは1、2、3、4、5または6である)を有するペプチドなどのグリシン-リッチペプチドを用いる(配列番号169〜174)。他の実施形態においては、米国特許第5,525,491号に記載のような、セリン-リッチペプチドリンカーを用いる。セリンリッチペプチドリンカーとしては、式[X-X-X-X-Gly]y(式中、Xのうち最大2個はThrであり、残りのXはSerであり、yは1〜5である)のもの(例えば、Ser-Ser-Ser-Ser-Gly(式中、yは2以上である)(配列番号175))が挙げられる。いくつかの事例においては、リンカーは1個のアミノ酸(例えば、GlyまたはCysなどの任意のアミノ酸)である。
【0087】
好適なリンカーの例は、コハク酸、Lys、Glu、およびAsp、またはGly-Lysなどのジペプチドである。リンカーがコハク酸である場合、その1個のカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、その他のカルボキシル基は、例えば、ペプチドまたは置換基のアミノ基とアミド結合を形成することができる。リンカーがLys、Glu、またはAspである場合、そのカルボキシル基はアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、そのアミノ基は、例えば、置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成することができる。Lysをリンカーとして用いる場合、さらなるリンカーを、Lysのε-アミノ基と置換基との間に挿入することができる。1つの特定の実施形態においては、さらなるリンカーは、例えば、Lysのε-アミノ基と、および置換基に存在するアミノ基とアミド結合を形成するコハク酸である。一実施形態においては、さらなるリンカーは、GluまたはAsp(例えば、Lysのε-アミノ基とアミド結合を形成し、置換基に存在するカルボキシル基と別のアミド結合を形成する)である、すなわち、置換基はNε-アシル化リジン残基である。
【0088】
疾患の治療
MT1-MMPは癌、心疾患または血管疾患、および関節炎などの疾患と関連しているため、本明細書に記載のMT1-MMP阻害剤および該阻害剤を含む組成物(例えば、医薬組成物)を用いて、MT1-MMPの阻害が望ましい任意の疾患を治療する(例えば、予防的に)ことができる。
【0089】
本発明に従って治療することができる癌の例としては、グリア芽腫、グリオーマ、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病)、肺癌(例えば、扁平上皮癌、腺癌、もしくは大細胞癌)、結腸直腸癌、卵巣癌(例えば、卵巣腺癌)、前立腺癌、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、肉腫および癌腫などの固形腫瘍、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、および上皮癌などの癌が挙げられる。いくつかの場合、癌は脳癌(例えば、グリア芽腫、星状細胞腫、グリオーマ、髄芽腫、およびオリゴデンドローマ、神経膠腫、上衣腫、および髄膜腫)である。
【0090】
本発明の組成物を用いて治療することができる関節炎の型としては、変形性関節症、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、リウマチ性多発筋痛、および強直性関節炎が挙げられる。
【0091】
本発明の組成物を用いて治療することができる心疾患および血管疾患としては、高血圧性心疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、腹部大動脈瘤(AAA)、胸部大動脈瘤、頸動脈疾患、末梢動脈疾患(PAD)、および腎動脈疾患が挙げられる。
【0092】
製剤、投与、および用量
本発明はまた、治療上有効量の本発明のMT1-MMP阻害化合物を含む医薬組成物を特徴とする。この組成物を、様々な薬剤送達系における使用のために製剤化することができる。1種以上の生理学的に許容し得る賦形剤または担体を、適切な製剤のために前記組成物中に含有させてもよい。本発明における使用にとって好適な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA、第17版、1985に見出される。薬剤送達のための方法の簡単な概説については、例えば、Langer (Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0093】
前記医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のために、非経口、鼻内、局所、経口、または経皮手段などによる局所投与について意図される。前記医薬組成物を、非経口的に(例えば、静脈内、筋肉内、もしくは皮下注射による)、または経口摂取により、または血管もしくは癌症状により影響を受けた領域での局所適用もしくは動脈内注射により投与することができる。さらなる投与経路としては、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、心室内、硬膜内、ならびに鼻、眼、強膜内、眼窩内、直腸、局所、またはエアロゾル吸入投与が挙げられる。また、デポー注射または浸食性埋込み物もしくは成分などの手段による、持続放出投与も本発明に具体的に含まれる。かくして、本発明は、許容し得る担体、好ましくは、水性担体、例えば、水、緩衝化水、塩水、PBSなどに溶解もしくは懸濁された上記の薬剤を含む非経口投与のための組成物を提供する。前記組成物は、pH調整剤および緩衝化剤、等張性調整剤、湿潤剤、洗剤などの、生理的条件を近似するのに必要とされる製薬上許容し得る補助物質を含んでもよい。本発明はまた、錠剤、カプセルなどの製剤のための結合剤または充填剤などの不活性成分を含んでもよい、経口送達のための組成物も提供する。さらに、本発明は、クリーム、軟膏などの製剤のための溶媒または乳化剤などの不活性成分を含んでもよい、局所投与のための組成物を提供する。
【0094】
これらの組成物を、従来の滅菌技術により滅菌するか、または滅菌濾過することができる。得られる水溶液を、そのまま使用するために包装するか、または凍結乾燥することができ、凍結乾燥調製物を投与前に滅菌水性担体と混合する。典型的には、調製物のpHは、3〜11、5〜9または6〜8(例えば、7〜8または7〜7.5)であろう。固体形態で得られた組成物を、錠剤またはカプセルの密封包装などの、それぞれ固定量の上記薬剤を含有する複数の単回投与単位中に包装することができる。また、固体形態の組成物を、局所適用可能なクリームまたは軟膏用に設計された搾れるチューブなどの、自在量のための容器中に包装することができる。
【0095】
有効量を含む組成物を、予防的または治療的処置のために投与することができる。予防的適用においては、MT1-MMP活性と関連する疾患に対する素因が臨床的に決定されたか、またはそれに対する罹患性が高い被験体に組成物を投与することができる。本発明の組成物を、臨床疾患の開始を遅延させる、減少させるか、または好ましくは防止するのに十分な量で被験体(例えば、ヒト)に投与することができる。治療的適用においては、組成物を、既に疾患に罹患している被験体(例えば、ヒト)に、症状およびその合併症の兆候を治癒させるか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与する。この目的を達成するのに十分な量を、「治療上有効量」、疾患または医学的症状と関連するいくつかの兆候を実質的に改善するのに十分な化合物の量と定義する。例えば、MT1-MMP活性と関連する疾患(例えば、本明細書に記載のもの)の予防的処置において、疾患または症状の任意の兆候を減少させる、防止する、遅延させる、抑制する、または停止させる薬剤または化合物は、治療上有効であろう。治療上有効量の薬剤または化合物は、疾患もしくは症状を治癒させるには必要ではないが、疾患もしくは症状の開始が遅延し、隠されるか、もしくは防止されるか、または疾患もしくは症状の兆候が改善するか、または疾患もしくは症状の期間が変化するか、または例えば、重篤度が低いか、もしくは個体において回復が加速するような、疾患もしくは症状のための治療を提供するであろう。
【0096】
本明細書に記載の組成物の有効量は、疾患もしくは症状の重篤度ならびに患者の体重および一般的状態に依存し得るが、一般的には、患者1人あたり、用量あたり、約0.05μg〜約1 g(例えば、0.5〜100 mg)の同等用量の薬剤である。初回投与および追加投与のための好適な計画は、典型的には、初回投与、次いで、毎時間、毎日、毎週、もしくは毎月の間隔で1回以上の反復投与、次いで、その後の投与である。本発明の組成物中に存在する薬剤の合計有効量を、比較的短い期間にわたってボーラスもしくは輸液として単回用量として哺乳動物に投与するか、または複数回用量をより長期間にわたって(例えば、4〜6、8〜12、14〜16、もしくは18〜24時間毎、または2〜4日毎、1〜2週間毎、月に1回の投与)投与する、分割治療プロトコルを用いて投与することができる。あるいは、血中で治療上有効濃度を維持するのに十分な連続静脈内輸液が意図される。
【0097】
当業者であれば、本発明の組成物内に存在し、哺乳動物(例えば、ヒト)に適用される本発明の方法において用いられる1種以上の薬剤の治療上有効量を、哺乳動物の年齢、体重、および症状の個体差を考慮しながら決定することができる。治療された被験体において望ましい結果(例えば、MT1-MMP活性の低下)をもたらす量である有効量の本発明の薬剤を被験体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与する。また、当業者であれば、治療上有効量を経験的に決定することもできる。
【0098】
また、患者は、約0.05〜1 gの用量の薬剤を週に1回以上(例えば、週に2、3、4、5、6、もしくは7回以上)、週に0.1〜2,500(例えば、2,000、1,500、1,000、500、100、10、1、0.5、もしくは0.1)μgの用量の薬剤を受けてもよい。患者はまた、2または3週間毎に1回、用量あたり0.1〜3,000μgの範囲の前記組成物の薬剤を受けてもよい。
【0099】
有効量を含む本発明の組成物の単回または複数回投与を、治療する医師により選択される用量レベルおよびパターンを用いて実行することができる。用量および投与スケジュールを、患者における疾患または症状の重篤度に基づいて決定および調整し、医師により一般的に実施される方法または本明細書に記載の方法に従って治療過程を通してモニターすることができる。
【0100】
本発明の化合物を、従来の治療方法もしくは療法と組合わせて用いるか、または従来の治療方法もしくは療法とは別々に用いることができる。
【0101】
本発明の化合物を他の薬剤との組合せ療法において投与する場合、それらを連続的または同時的に個体に投与してもよい。あるいは、本発明に従う医薬組成物は、本明細書に記載の製薬上許容し得る賦形剤、および当業界で公知の別の治療剤もしくは予防剤と共に本発明の化合物の組合せから構成されていてもよい。
【0102】
組合せ療法
本発明の組成物を、当業界で公知の任意の他の療法計画と共に製剤化または投与することができる。例えば、本発明の組成物を用いて癌を治療する場合、前記組成物を、当業界で公知の任意の抗増殖剤(例えば、本明細書に記載のもの)と共に投与することができる。
【0103】
癌を治療するためのさらなる治療剤としては、以下の表2に示されるものが挙げられる。
【表2】

【0104】

【0105】

【0106】

【0107】

【0108】
血管疾患または心疾患を治療するためのさらなる治療剤としては、抗炎症剤、例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID;例えば、デトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメアート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメオン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン、サリチル酸コリン、サルサレート、ならびにサリチル酸ナトリウムおよびサリチル酸マグネシウム)、ステロイド(例えば、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン)、抗細菌剤(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、アモキシシリン、もしくはメトロニダゾール)、血小板凝集阻害剤(例えば、アブシキシマブ、アスピリン、シロスタゾール、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド、チクロピジン、もしくはチロフィバン)、抗凝固剤(例えば、ダルテパリン、ダナパロイド、エノキサパリン、ヘパリン、チンザパリン、もしくはワルファリン)、解熱剤(例えば、アセトアミノフェン)、チクロピジン、クロピドグレル、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、β遮断剤、ペントキシフィリン、シロスタゾール、エストロゲン置換療法、脂質低下剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、ニコチン酸、ゲンフィブロジル、プロブコール、エゼチミブ、もしくはアトルバスタチン、ロスバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、およびフルバスタチンなどのスタチン)などの薬剤が挙げられる。
【0109】
慢性関節リウマチを治療するためのさらなる治療剤としては、CD20結合抗体(例えば、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、HuMax-CD20、およびその変異体)、DMARDS(疾患改変抗リウマチ剤)、NSAID(非ステロイド性抗炎症剤)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン;ミコフェノール酸モフェチル(CellCept(登録商標);Roche))、鎮痛剤、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、糖質コルチコステロイド、シクロホスファミド、HUMIRA(商標)(アダリムマブ;Abbott Laboratories)、ARAVA(登録商標)(レフルノミド)、REMICADE(登録商標)(インフリキシマブ;Centocor, Inc.)、ENBREL(エタネルセプト;Amgen)、ACTEMRA(トシリズマブ;Roche, Switzerland)、およびCOX-2阻害剤(例えば、GW406381)が挙げられる。DMARDとしては、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アザチオプリン、D-ペニシラミン、金もしくは金塩(経口もしくは筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリン、シクロスポリンA、ブドウ球菌タンパク質A免疫吸着およびインターロイキン-1遮断剤(例えば、アナキンラおよびインターロイキン-1受容体アンタゴニスト)が挙げられる。DMARDは、TNFα遮断剤(例えば、アダリムマブ(ヒトモノクローナル抗TNFα抗体)、CDP870(UCB)、ペグスネルセプト、およびアタシセプト)、インフリキシマブ(キメラモノクローナル抗TNAα抗体)、ならびにエタネルセプト(ヒト75 kD(p75)腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド結合部分とヒトIgG1のFc部分からなる「イムノアドヘシン」融合タンパク質)であってもよい。ACTEMRA(トシリズマブ)は、ヒト化抗ヒトインターロイキン-6(IL-6)受容体である。NSAIDとしては、アセトアミノフェン、イブプロフェン、アスピリン、アヘン剤、またはリドカイン(局所用)が挙げられる。慢性関節リウマチを治療するのに用いられる他の薬剤としては、ピオグリタゾン、カナキヌマブ、p38キナーゼ阻害剤(例えば、SCIO-469、VX-702、BMS-582949、およびPH-797804)、MEK阻害剤(例えば、ARRY-438162)、ロシグリタゾン、トリプテリジウム・ウィルフォルジ(Tripterygium wilfordi) Hook F、SBI-087、Cura-100、AZD5672 (AstraZeneca)、パクリタキセル、ルミラコキシブ、ゴリムマブ、エストロゲン受容体βアゴニスト(例えば、ERB-041)、A3アデノシン受容体アゴニスト(例えば、CF101; Can-Fite BioPharma)、ロキシスロマイシン、ADL5859 (Adolor Corp.)、GW856553 (GlaxoSmithKline)、ASK8007 (Astellas Pharma、Inc.)、HE3286 (Hollis-Eden Pharmaceuticals、San Diego、Calif.)、TRU-015 (Wyeth)、ベリムマブ、AZD9056 (AstraZeneca)、ACZ885 (Novartis)、GSK3152314A (GlaxoSmithKline)、抗IL-17抗体(例えば、AIN457 (Novartis)およびAMG 827 (Amgen))、フェンタニル経皮パッチ(Janssen Pharmaceutica N.V.、Belgium)、バルデコキシブ、CNTO 136 (Centocor、Inc.)、イマチニブ(Novartis)、JAK-3阻害剤(例えば、CP-690,550 (Pfizer))、カテプシン-S阻害剤(例えば、RWJ-445380 (Johnson & Johnson))、ISIS 104838 (Isis Pharmaceuticals)、MM-093 (Merrimack Pharmaceuticals)、ウシII型コラーゲン、ロバスタチン、抗RANKリガンド抗体(例えば、デノスマブ(Amgen))、dnajペプチド、エトリコキシブ(Merck)、SB-681323 (GlaxoSmithKline)、ロフェコキシブ(Merck)、オメガベン、抗CD19抗体(例えば、MDX-1342 (Medarex))、AMG 108 (Amgen)、TMI-005 (Wyeth)、アバタセプト(Bristol-Myers-Squibb)、バミネルセプト(Biogen-Idec)、フォスタマチニブジナトリウム(Rigel Pharmaceuticals)、テムシロリムス(Wyeth)、ARRY-371797 (Array BioPharma)、ナタリズマブ(Elan Pharmaceuticals)、AMG 719 (Amgen)、CE-224,535 (Pfizer)、TAK-715 (Takeda)、TAK-783 (Takeda)、BG9924 (Biogen Idec)、GW274150 (GlaxoSmithKline)、GSK1827771 (GlaxoSmithKline)、CH-1504 (Chelsea Therapeutics)、セルトリズマブペゴール(UCB)、トラマドール、LY2127399 (Eli Lily)、クルクミン、MTRX1011A (Tolerex/Genetech)、AMG 714 (Amgen)、CAM-3001 (MedImmune)、BIIB023 (Biogen Idec)、SSR150106 (Sanofi-Aventis)、STA 5326 (Synta Pharmaceuticals)、P38阻害剤(4) (Hoffman-La Roche)、エトリコキシブ(Merck)、MEDI-522 (MedImmune)、γ-リノレン酸、ラミプリル(Sanofi-Aventis)、CRx-102 (CombinatoRx)、エファリズマブ、LY2189102 (Eli Lily)、MK-0873 (Merck)、フォントリズマブ(PDL BioPharma)、マラビロク(Pfizer)、HuMax-CD4 (Genmab)、CP-195,543 (Pfizer)、メロキシカム(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals)、ブシラミン、PD 0360324 (Pfizer)、FANG(30)、PLA-695 (Wyeth)、PG-760564 (Procter & Gamble)、MK0812 (Merck)、tgAAC94 (Targeted Genetics)、SMP-114 (Dainippon Sumitomo Pharma Europe)、RhuDex (Medigene)、MK0359 (Merck)が挙げられる。RAの従来の治療については、例えば、「Guidelines for the management of rheumatoid arthritis」、Arthritis & Rheumatism 46:328-346 (2002)を参照されたい。
【0110】
これらのさらなる治療剤を、MT1-MMP阻害治療剤の投与の14日、7日、2日、1日、12時間、6時間、もしくは1時間以内に、またはそれらと同時に投与することができる。さらなる治療剤は、本発明のMT1-MMP阻害治療剤と同じか、または異なる医薬組成物中に存在してもよい。異なる医薬組成物中の存在する場合、異なる投与経路を用いてもよい。例えば、MT1-MMP阻害治療剤を経口投与することができるが、第2の薬剤を静脈内、筋肉内、または皮下注射により投与することができる。
【0111】
以下の実施例は、本発明を制限するよりもむしろ例示することを意図するものである。
【0112】
(実施例)
【実施例1】
【0113】
MT1-MMP由来ペプチドの作製
以下の実施例に記載の実験を実施する際に、以下のペプチドを作製した。まず、MT1-MMPの細胞質ドメインの配列を有するペプチド(RRHGTPRRLLYCQRSLLDKV; 配列番号117)、ならびにヒトMT1-MMP配列のアミノ酸573に対応する位置のチロシンの代わりにフェニルアラニンを有する、このペプチドの非リン酸化可能形態(RRHGTPRRLLFCQRSLLDKV; 配列番号118)を作製した。非リン酸化可能形態のペプチドを「M-14」と命名した。
【0114】
さらに、アンテナペディアタンパク質のホメオドメインの細胞浸透性第3へリックス(RQIKIWFQNRRMKWKK; 配列番号119)に融合させたM-14配列を有するペプチドを作製した。この融合ペプチドはACM-14と呼ばれ、配列:ビオチン-Ahx-RQIKIWFQNRRMKWKK-RRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号176)を有する。対照として使用するために、細胞質MT1-MMPドメイン配列がスクランブル化(scrambled)された融合ペプチドの型を作製した。このペプチドは、配列:ビオチン-Ahx-RQIKIWFQNRRMKWKK-TLRQRRCLPHFDSGLRKVRL (配列番号177)を有し、scACM-14と呼ばれる。これらのペプチドを図1に示す。
【実施例2】
【0115】
Y573F MT1-MMPの発現は腫瘍増殖を阻害する
HT1080線維肉腫細胞を、WT MT1-MMPまたはY573F MT1-MMPを用いて安定にトランスフェクトした。HT1080細胞は、高レベルのMT1-MMPを発現する非常に活動的な癌細胞である。両群の細胞を、無胸腺ヌードマウスに皮下移植し、腫瘍増殖をモニターした。図2に示されるように、MT1-MMPの細胞質ドメインを発現する細胞は有意な腫瘍増殖を示したが、Y573F突然変異体を発現する細胞を受けたマウスにおいては、腫瘍増殖は観察されなかった。
【実施例3】
【0116】
ACM-14およびscACM-14は線維肉腫細胞により効率的に取り込まれる
ACM-14およびscACM-14が腫瘍細胞に進入することができるかどうかを決定するために、HT-1080線維肉腫細胞をそれぞれのペプチド(1μM)と共に1時間インキュベートし、免疫蛍光および共焦点顕微鏡によりペプチド取込みを分析した。図3に示されるように、ACM-14およびそのスクランブル型(scACM-14)を両方とも細胞中で可視化したところ、効率的で迅速な細胞取込みが示された。
【実施例4】
【0117】
MT1-MMPリン酸化の選択的阻害
本発明者らは、線維肉腫細胞中での完全長MT1-MMPのY573F突然変異体の過剰発現が、内因性MT1-MMPのSrc媒介性リン酸化を減少させることを見出した(Nyalendoら、J Biol Chem 282, 15690-15699, 2007)。このプロセスにおけるACM-14の効果を決定するために、本発明者らはin vitroリン酸化アッセイを実施した。GST-MT1-MMP細胞質尾部融合タンパク質(GST-MT)を、ATPの存在下で組換えSrcキナーゼと共にインキュベートし、リン酸化産物をウェスタンブロッティングにより分析した。図4に示されるように、GST-MTのSrc媒介性チロシンリン酸化は、ACM-14とのインキュベーションにより完全に阻害された。この阻害は対照ペプチドscACM-14については観察されなかったが、これはACM-14がin vitroでMT1-MMPリン酸化を選択的に阻害することを示している。これらの驚くべき結果は、MT1-MMPタンパク質の他の部分の非存在下でMT1-MMPリン酸化を阻害するには、非リン酸化可能形態のMT1-MMPの細胞質ドメインのみで十分であることを示唆している。
【実施例5】
【0118】
3Dコラーゲンマトリックス内での腫瘍細胞増殖の阻害
平面条件(2D)および腫瘍形成条件(3D)下での腫瘍細胞増殖に対するACM-14の効果を評価した。異なる腫瘍細胞系を前記ペプチドと共にインキュベートし、コラーゲンフィルム(2D)の上で、またはコラーゲンゲル(3D)内で増殖させた。図5に提供されるように、ACM-14は2D条件では腫瘍細胞増殖に影響しない。対照的に、ACM-14は、3Dコラーゲンゲル中ではいくつかの腫瘍細胞の増殖を有意に減少させる。実際、ACM-14を用いるヒト脳癌細胞の処理は、3Dマトリックス中でそれらの増殖を低下させるが(グリア芽腫細胞については50%の減少および髄芽腫細胞については35%の減少)、スクランブル化ペプチド(scACM-14)を用いる処理はこれらの細胞の増殖に対する効果がない。ACM-14はまた、前立腺癌、乳癌、骨癌、および線維肉腫細胞の3D増殖を阻害する。
【実施例6】
【0119】
in vivoでの腫瘍増殖の阻害
in vivoでの異種移植片腫瘍形成に対するACM-14の効果も調査した。線維肉腫細胞を、無胸腺ヌードマウスの脇腹に皮下的に埋め込んだ。約100 mm3まで腫瘍を増殖させた後、マウスを治療のために3群に無作為に分割した(ビヒクル、scACM-14、およびACM-14)。マウスに、10 mg/kgのペプチドまたはビヒクルを毎日皮下投与した。ACM-14は埋込みの26日後に腫瘍増殖を70%強く低下させる(図6)。ACM-14を受けたマウスの生存は、10日目までに劇的に増加した(図7)。さらに、ACM-14投与後、17%の腫瘍が完全に退縮し、完全に消失した。
【実施例7】
【0120】
Angiopep-M14コンジュゲート
BBBを通過するM14ペプチドの送達のために、M14配列とAngiopepペプチド配列を含む融合ペプチド(例えば、配列番号178)を作製する。本実施例においては、Angiopepペプチドは、哺乳動物被験体のBBBを通過することができるAngiopep-2の配列を有する(図8)。
【0121】
他の実施形態
本明細書に記載の全ての特許;2008年12月17日に出願された米国特許仮出願第61/138,375号などの特許出願;および刊行物は、あたかもそれぞれ独立した特許、特許出願、または刊行物が具体的かつ個々に参照により組み入れられると示されるのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜1型マトリックスメタロプロテイナーゼ(MT1-MMP)の細胞質ドメインまたはその断片と実質的に同一のアミノ酸配列を含む可溶性ポリペプチドであって、MT1-MMP活性を阻害することができる前記ポリペプチドを含む組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドがMT1-MMP活性を選択的に阻害する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸配列が、ヒトMT1-MMP配列の位置573に対応するアミノ酸位置のリン酸化可能なチロシンを欠く、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミノ酸配列が、前記位置573に置換、欠失、または改変を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記置換がフェニルアラニンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記アミノ酸配列が、ヒトMT1-MMPの細胞質ドメインの配列と比較して0、1、2、3、4、5、6、または7個の置換を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アミノ酸配列が、ヒトMT1-MMPの細胞質ドメイン、またはヒトMT1-MMP配列の位置573に対応する位置に欠失、置換、もしくは改変を有するヒトMT1-MMPの細胞質ドメインの配列と少なくとも80%同一である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミノ酸配列がRRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号118)、またはそのMT1-MMP阻害断片である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、細胞膜に浸透することができるか、特定の細胞型に進入することができるか、または血液脳関門(BBB)を通過することができるアミノ酸配列をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
細胞膜に浸透することができる前記アミノ酸配列が、アンテナペディアタンパク質のホメオドメインの第3へリックス(配列番号119)、アンテナペディアリーダーペプチド(CT)(配列番号120)、アンテナペディアペプチドアミド(配列番号121)、Cys(Npys)-アンテナペディアペプチドアミド(配列番号122)、細胞質形質導入ペプチド(CTP)、HSV-1 VP22、(Arg)9 (配列番号137)、Cys(Npys)-(Arg)9 (配列番号138)、Cys(Npys)-(D-Arg)9、[Cys58]105Y細胞浸透性ペプチド(配列番号139)、ペプチド105Y (配列番号140)、ブフォリン(配列番号141)、キメララビウイルス糖タンパク質断片(RVG-9R; 配列番号142)、Cys(Npys)-TAT(47-57) (配列番号143)、Cys-TAT(47-57) (配列番号144)、脂質膜移行ペプチド(配列番号145)、D-異性体-脂質膜移行ペプチド、マストパラン(配列番号146)、マストパラン7 (配列番号147)、マストパランX (配列番号148)、MEK1由来ペプチド阻害因子1 (配列番号149)、ミリストイル-MEK1由来ペプチド阻害因子1 (配列番号150)、ステアリル-MEK-1由来ペプチド阻害因子1アミド (配列番号151)、膜透過性配列(配列番号152)、HIV関連MPG (配列番号153)、アミノペプチダーゼNリガンド(CD13)、NGRペプチド(配列番号154)、NGRペプチド1、NGRペプチド2 (配列番号155)、NGRペプチド3 (配列番号156)、NGRペプチド4、Pep-1 (Chariot(商標); 配列番号157)、SynB1 (配列番号158)、ビオチン-TAT(47-57) (配列番号159)、TAT(47-57) (配列番号160)、TAT(47-57) GGG-Cys(Npys) (配列番号161)、TAT(48-57) (配列番号162)、Tat-C(48-57) (配列番号163)、経皮ペプチド(配列番号164)、トランスポータン(配列番号165)、およびトランスポータン10(配列番号166)からなる群より選択されるポリペプチドと実質的に同一である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
細胞膜に浸透することができる前記アミノ酸配列が、アンテナペディアタンパク質のホメオドメインの第3へリックス(RQIKIWFQNRRMKWKK; 配列番号119)である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、配列RQIKIWFQNRRMKWKK (配列番号119)およびRRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号118)を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、配列RQIKIWFQNRRMKWKKRRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号176)を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
BBBを通過することができる前記アミノ酸配列が、Angiopep-2(配列番号97)またはAngiopep-1(配列番号67)と少なくとも90%同一である、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
BBBを通過することができる前記アミノ酸配列が、Angiopep-1(配列番号67)またはAngiopep-2(配列番号97)である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、Angiopep-2(配列番号97)および配列RRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号118)の両方を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、配列TFFYGGSRGKRNNFKTEEYRRHGTPRRLLFCQRSLLDKV (配列番号178)を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
特定の細胞型に進入することができるアミノ酸配列が、Angiopep-7(配列番号112)と少なくとも90%同一である、請求項9に記載の組成物。
【請求項19】
特定の細胞型に進入することができる前記アミノ酸配列が、Angiopep-7(配列番号112)である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物がリポソーム製剤である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記リポソームが、前記リポソームの外部表面上にあるペプチドベクターを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が製薬上許容し得る担体と共に製剤化されたものである、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を細胞に投与することを含む、細胞中のMT1-MMPリン酸化を減少させる方法。
【請求項24】
前記細胞が被験体中に存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
MT1-MMP活性の増加を特徴とする疾患を治療する方法であって、該疾患を治療するのに十分な量の請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を被験体に投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記疾患が、癌、心疾患または血管疾患、および関節炎からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
癌を有する被験体を治療する方法であって、癌を治療するのに十分な量の請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を前記被験体に投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
前記癌が、脳癌、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、ホジキン病、非ホジキン病、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、頭蓋咽頭腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、神経鞘腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、肺癌、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、および結腸癌からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記脳癌が、グリア芽腫、星状細胞腫、グリオーマ、髄芽腫、オリゴデンドローマ、神経膠腫、上衣腫、または髄膜腫である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
心疾患または血管疾患を有する被験体を治療する方法であって、該疾患を治療するのに十分な量の請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を該被験体に投与することを含む、前記方法。
【請求項31】
前記血管疾患が、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤、頸動脈疾患、末梢動脈疾患、および腎動脈疾患からなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記心疾患が高血圧性心疾患である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
関節炎を有する被験体を治療する方法であって、該関節炎を治療するのに十分な量の請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物を該被験体に投与することを含む、前記方法。
【請求項34】
前記関節炎が変形性関節症または慢性関節リウマチである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記被験体がヒトである、請求項24〜34のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−512185(P2012−512185A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541049(P2011−541049)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001858
【国際公開番号】WO2010/069074
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511093410)アンジオケム インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】