説明

膣内薬剤放出システム及びその製造方法

本発明は、膣内薬剤放出システムに関する。このシステムは、芯と該芯を包む膜とを含む少なくとも1つのコンパートメントを含み、該芯と該膜とは互いに同一または異なる重合体組成物から実質的になる。このシステムは、さらに、結合手段を含み、それによって閉じた連続的形状を有する薬剤放出システムを構成する。本発明はまた、該膣内薬剤放出システムの製造方法に関する。芯および/または膜は、好ましくは射出成形または押出成形により製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、膣内薬剤放出システムを提供することである。このシステムは、芯と該芯を包む膜とを含む少なくとも1つのコンパートメントを含み、該芯と該膜とは互いに同一または異なる重合体組成物から実質的になる。このシステムは、さらに、結合手段を含み、それによって閉じた連続的形状を有する薬剤放出システムを構成する。本発明のもう1つの目的は、該膣内薬剤放出システムの製造方法を提供することである。芯および/または膜は、好ましくは射出成形または押出成形により製造する。
【背景技術】
【0002】
1種または2種以上の治療的に活性な物質を長時間に亘ってほぼ一定の速さで放出することができる膣内薬剤放出システムは、避妊、ホルモン補充治療などの特定の用途において極めて有用である。薬剤放出システム(特に膣用リング)の数多くの異なる構成や、該システムの製造方法が、文献において知られている。
【0003】
US 特許 3,920,805 は、薬剤を含有しない、中心に位置する芯と、該芯を囲む限定された厚さを有する薬剤含有コーティングとから実質的になる膣用リングとして形成される固体薬剤装置を記載している。その製造方法は、以下の工程を包含する:(1)シロキサンと触媒との混合物を金型の両半部に入れて所謂「中心重合体芯」を提供し、金型を締め、該シロキサン混合物を硬化し、(2)該重合体芯を金型の一半部に入れ、外側金型の一半部を、触媒を含む薬剤含有シロキサン重合体混合物で満たし、該満たされた一半部を第1工程で提供した重合体芯の上に置き、硬化し、(3)第2工程における金型内容物の硬化の後で、外側金型の他の半部を、触媒を含む薬剤含有シロキサン重合体混合物で満たし、この半部と第2工程において硬化した半部とを接着し、全体を再び硬化する。この方法は、形成される膣用リングを何度も操作しなければならないものであって、比較的大きな労力を要する。この方法によって製造されるリングは、スプルーと、リングの外側部分の両半部が結合される所の縁との両方のトリミングを行うことが必要である。というのは、このような縁があるリングが体内に置かれると炎症を引き起こす可能性があるからである。
【0004】
DOW CORNING SA 社による US 4,888,074 は、1つの態様において、人体または動物体への薬剤の制御放出を行うことができるリングの製造方法を提供している。この方法は、薬剤を含有する組成物と第1のエラストマー形成シリコーン組成物とを押出すことにより芯を提供し、第2のエラストマー形成シリコーン組成物を押出すことにより該芯を包むための覆いを提供し、該芯の末端部と該覆いの末端部とを結合することによりリングを形成し、該芯と該覆いとを架橋する。
【0005】
覆いは、押出により芯を形成した後に、押出により芯の上に形成してもよい。しかし、覆いは、芯と同時に押出して形成するのが好ましい。この同時押出成形技術を用いて、覆いの内側にある芯の位置を十分に制御することができ、製造過程中ずっと、芯の位置を適正に保つことができる。好ましくは、芯と覆いとはほぼ同心円状に位置するように維持する。押出成形によって得た芯と覆いとは、形状を維持するのに十分な凝集力を有する。押出成形物の両末端部は、たとえば、該押出成形物を、リング形状を有する金型に入れることによって結合させることができる。結合した両末端部は、たとえば、適当な接着剤化合物または層を成す未硬化のエラストマー形成組成物を用いて固定される。この未硬化のエラストマー形成組成物は、上記の第2のエラストマー形成シリコーン組成物と、好ましくは上記の第1のエラストマー形成シリコーン組成物及び上記の第2のエラストマー形成シリコーン組成物の両方と、架橋できるものである。
【0006】
ALZA CORP 社による US 4,215,691 に記載された膣内用システムは、以下のように製造される。まず、スチレン/ブタジエンブロック共重合体からなるチューブを適当な長さに切り取り、切り取ったものをリング形状にし、円環状に成形する。次に、得られた円環状チューブの内径と等しい外径を有する固体重合体プラグを、塩化メチレンで湿らせ、円環状チューブに挿入して開いているチューブを両末端で接合し、これによって閉じたシステムを形成する。さらに、リングの中空部分である貯蔵部に、ステロイド担体混合物を注入することによって、中空のリングを満たす。最後に、針で開けられた穴を少量の塩化メチレンで塞ぐ。
【0007】
POPULATION COUNCIL 社による US 4,292,965 は、リング形状を有する膣内用装置の製造方法を記載している。その1つの製造方法は、次のようなものである。まず、金型において適当な不活性エラストマーを環状芯リングに成形し、該リングを、避妊ステロイドの混合物を含む不活性で揮発性の溶媒と、不活性で未加硫のエラストマー接着剤との混合物に浸漬させる。次に、溶媒を蒸発するに任せ、該リングを、不活性で未加硫のエラストマーと不活性で揮発性の溶媒との混合物に浸漬させる。溶媒は、蒸発するに任せられて外層を形成するが、所望の厚さの外層が得られるまで蒸発させる。殻である膣内用リングのもう1つの製造方法は、次のようなものである。金型において芯を形成し、芯を硬化し、適当な長さに切り取ってロッドとし、ロッドを一定の重量にし、それを引っ張って、エラストマー混合物と、エストラジオール及びプロゲストーゲンの混合物とを含む塗布用溶液を通過させ、被覆物を重合する。1つのチューブを上記のロッドの上で滑らせて被せることによって膜を形成する。医療用接着剤を、ロッドの両末端と、ロッドの末端の近くの表面とに、適用する。約4cmの長さを有する膨潤したもう1つのチューブをロッドの両末端の上に被せてリングを形成し、接着剤が硬化するまでロッドの両末端を合わせて保持しておく。
【0008】
リングからの薬剤の放出速度を制御するためには、薬剤を含有しない材料からなる覆いに囲まれているリングの芯に薬剤を含有させることが望まれる。正確な放出速度を確保するためには、芯をリングの中心に位置するように制御することが最も重要である。本発明は、芯と膜とを含む少なくとも1つのコンパートメントを包含する、リング形状の薬剤放出システムを提供するものであって、芯−膜システムの両末端は、結合手段によって、結合箇所において非透過性の栓が形成されないような仕方で結合される。
【0009】
発明の概要
本発明は、少なくとも1つのコンパートメントおよび結合手段を包含する膣内薬剤放出システムに関する。コンパートメントは、第1断面直径を有する芯と該芯を包む膜とを含み、該芯と該膜とは互いに同一または異なる重合体組成物から実質的になるものであり、こうして、第1末端と第1断面および第2末端と第2断面を有する芯−膜システムを構成する。結合手段は、第2断面直径と長さを有し、芯−膜システムの第1末端と第2末端とを結合する。結合手段の第2断面直径は、芯の第1断面直径よりも実質的に小さい。
【0010】
本発明の1つの態様においては、結合手段に接着剤が適用されている。
【0011】
本発明の1つのさらなる態様においては、芯−膜システムの第1断面および/または第2断面に接着剤が適用されている。接着剤は、結合手段と芯−膜システムの第1断面および第2断面のうちの少なくとも1つとに適用されていてもよい。
【0012】
本発明の1つの態様においては、結合手段の長さの実質的に半分が芯−膜システムの第1末端の内部に位置し、結合手段の残りの部分が芯−膜システムの第2末端の内部に位置する。
【0013】
本発明の他の1つの態様においては、芯−膜システムの第1末端および/または第2末端における芯の実質的に中心部が開口部を有し、単数または複数の該開口部の中に結合手段が位置する。開口部は芯−膜システムの全長に亘って延びていてもよい。
【0014】
本発明のさらなる1つの態様においては、結合手段は生体適合材料からなる重合体ロッドである。
【0015】
本発明の1つの態様においては、結合手段の長さは5〜25mm、好ましくは10〜20mmである。
【0016】
本発明のさらなる1つの態様においては、芯の断面直径は2〜10mmであり、結合手段の断面直径は0.5〜4.0mmである。
【0017】
本発明の膣内薬剤放出システムは、治療的に活性な種々の物質を長時間に亘って所定の制御放出速度で投与するのに適する。治療的に活性な物質は、たとえば、プロゲストーゲン、プロゲストーゲン活性を有する化合物、もしくはエストロゲン、またはこれらの組み合わせでよい。また、膣内薬剤放出システムは、少なくとも1種の他の治療的に活性な物質または少なくとも1種の健康増進物質をさらに含んでいてもよい。
【0018】
本発明はまた、膣内薬剤放出システムの製造方法に関する。このシステムは芯と該芯を包む膜とを含む少なくとも1つのコンパートメントを含むものであって、該芯と該膜とは互いに同一または異なる重合体組成物から実質的になる。製造方法は、下記工程を包含する:第1断面直径を有する単数または複数の芯を形成し、単数または複数の該芯を膜で包んで、2つの末端を有する芯−膜システムを形成し、そして、該芯−膜システムの2つの末端を第2断面直径を有する結合手段によって互いに結合して、実質的に環状の膣内薬剤放出システムを形成する。結合手段の第2断面直径は単数または複数の該芯の第1断面直径よりも実質的に小さい。
【0019】
本発明の1つの態様においては、芯および/または膜を射出成形または押出成形により製造する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の膣内薬剤放出システムの1例である。
【図2a】本発明の膣内薬剤放出システムの断面である。
【図2b】本発明の膣内薬剤放出システムの断面である。
【図3】本発明の膣内薬剤放出システムの組み立て前の状態である。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は膣内薬剤放出システム(1)に関し、該膣内薬剤放出システム(1)は、少なくとも1つのコンパートメント(1a、1b)であって、第1断面直径(d2)を有する芯(2)と該芯(2)を包む膜(3)とを含み、該芯(2)と該膜(3)とは互いに同一または異なる重合体組成物から実質的になるものであり、こうして、第1末端と第2末端とを有する芯−膜システム(5)を構成するコンパートメント(1a、1b)を含む。本発明の膣内薬剤放出システム(1)はさらに、第2断面直径(d6)と長さ(L)を有し、該芯−膜システム(5)の第1末端と第2末端とを結合するための結合手段(6)を含む、実質的に環状の膣内薬剤放出システム(1)であり、該結合手段(6)の第2断面直径(d6)は該芯(2)の第1断面直径(d2)よりも実質的に小さいことを特徴とする膣内薬剤放出システム(1)である。
【0022】
図1に示す膣内薬剤放出システム(1)の一例は、2つのコンパートメント(1a、1b)を含み、各コンパートメントは芯(2)と該芯(2)を包む膜(3)とを含む。
【0023】
図2aに示すのは、本発明の1つの態様の膣内薬剤放出システム(1)の断面図である。膣内薬剤放出システム(1)は芯(2)、膜(3)および開口部(4)を含み、この態様では、開口部(4)は芯−膜システム(5)の全長に亘って延びている。芯(2)の断面直径(d2)は典型的には2〜10mm、好ましくは3.0〜5.5mm、より好ましくは4.0〜5.0mmである。
【0024】
図2bは、図2aに示す膣内薬剤放出システム(1)における直径、すなわち、芯(2)の第1断面直径(d2)、結合手段(6)の第2断面直径(d6)および開口部(4)の断面直径(d4)を示す。結合手段(6)の長さ(L)は両末端間の距離である。
【0025】
図3は、本発明の膣内薬剤放出システム(1)を開いた状態、すなわち、芯−膜システム(5)の両末端を互いに結合しない状態で示す図である。膜(3)により包まれた芯(2)を各々が有する2つのコンパートメント(1a、1b)からなる芯−膜システム(5)を公知の方法で製造し、適当な長さに切断する。結合手段(6)の一部を、芯−膜システム(5)の一末端から開口部(4)に挿入する。図1に示すような閉じた連続形状の膣内薬剤放出システム(1)を形成するためには、芯−膜システム(5)の他の末端を結合手段(6)にまで引き寄せる。芯−膜システム(5)の両末端に、すなわち結合部分に、間隙を残さないようにすることが決定的に重要である。
【0026】
結合手段(6)の断面直径(d6)は0.5〜4.0mmであり、典型的には1.0〜3.0mmである。結合手段(6)の長さ(L)は、典型的には約5〜25mm、好ましくは10〜20mmである。一方、所望により、用いる材料に応じて、開口部(4)が芯−膜システム(5)の長さ方向の全長に亘って延びている場合は、結合手段(6)が芯−膜システム(5)と同じ長さを有してもよい。結合手段(6)により芯−膜システム(5)の両末端の間に堅固で永久的な結合を達成するためには、図2bに示す開口部(4)の断面直径(d4)と結合手段(6)の断面直径(d6)とを互いに適合させる。正しい放出速度を確保するためには、図2aに示すように、典型的には、開口部(4)を芯−膜システム(5)の中心部に位置させる。結合手段(6)の断面直径(d6)は、開口部(4)の断面直径(d4)と同じでもかまわない。用いる材料によっては、開口部(4)の断面直径(d4)は、結合手段(6)の断面直径(d6)よりもわずかに大きくてもかまわない。典型的には、開口部(4)の断面直径(d4)は、結合手段(6)の断面直径(d6)よりもわずかに小さい。場合によっては、芯−膜システム(5)のいずれの末端にも開口部(4)がないこともあり得え、すなわち、結合手段(6)を芯(2)の材料中に押し込むが、その際、正しい放出速度を確保するためには、芯(2)の材料の中心部に押し込むことが好ましい。
【0027】
本発明によると、結合手段(6)は芯−膜システム(5)の内部に位置し、典型的には芯−膜システム(5)中の開口部(4)に挿入され、芯−膜システム(5)の両末端から、得られる閉じた環状の膣内薬剤放出システム(1)に構造的支持と一体性を与えるのに必要な距離に亘って延びている。典型的には、結合手段(6)の長さ(L)の約半分が芯−膜システム(5)の第1末端の内部に位置し、結合手段(6)の残りの部分が芯−膜システム(5)の第2末端の内部に位置する。こうして、図2に示す開口部(4)が芯−膜システム(5)の末端からわずか数ミリ、典型的には5〜10mmだけ延びており、すなわち、芯−膜システム(5)の各末端中における開口部(4)の長さが、該末端に挿入された結合手段(6)の長さと実質的に一致することがあり得る。さらに、芯−膜システム(5)の両末端間の結合が堅固であり、両末端間に継ぎ目のない一体性が得られる限り、いかなる適合する「開口部(4)−結合手段(6)」の組み合わせ形態も可能であり、本発明の範囲内である。たとえば、図2に関して説明したように、開口部(4)が芯−膜システム(5)の長さ方向の全長に亘って延びており、長さ(L)が5〜25mmの結合手段(6)の長さ(L)の約半分が芯−膜システム(5)の第1末端の内部に挿入され、結合手段(6)の残りの部分が芯−膜システム(5)の第2末端の内部に挿入されていてもよい。
【0028】
実用的には、ヒトの雌性が用いる場合、環状の膣内薬剤放出システム(1)の外径は、典型的には35〜70mm、好ましくは35〜58mmまたは45〜65mm、より好ましくは50〜58mmである。それに応じて、芯−膜システム(5)の長さを適宜選択することができる。
【0029】
芯(2)、膜(3)および結合手段(6)を含む本発明の膣内薬剤放出システム(1)は、その用途や製造方法に適した様々な材料を含むことができる。用いられる材料としては、生体適合性を有し、膣内の通常の条件下で充分な時間に亘って変質しないものが選ばれる。これらの物質は当業者には周知である。適切な材料の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。ジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサンとの共重合体、エチレン/ビニルアセテート共重合体(EVA)、ポリオレフィン(たとえばポリエチレンおよびポリプロピレン)、エチレン/プロピレン共重合体、アクリル酸重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、変性ポリシロキサン(たとえばシロキサン単位のケイ素原子に結合した3,3,3−トリフルオロプロピル基を含むポリシロキサンや、ポリアルキレンオキシド基を含むポリシロキサンであって、該ポリアルキレンオキシド基は、ケイ素−炭素結合によってポリシロキサン単位に結合したアルコキシ末端含有グラフトもしくはブロックの形態で存在しているもの)、ポリメチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリビニルクロライド、ポリビニルアセテート、ポリエーテル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、ポリメチルペンテン、ポリブタジエン、およびこれら少なくとも2種の混合物。好ましい材料は、ポリアルキレンオキシド基を含むポリシロキサン含有エラストマー組成物であって、該ポリアルキレンオキシド基は、ケイ素−炭素結合によってポリシロキサン単位に結合したアルコキシ末端含有グラフトもしくはブロックの形態で存在しており、ポリアルキレオキシド基を含むポリジメチルシロキサンの量が重合体の総量の5〜80重量%であるものである。
【0030】
結合手段(6)は実質的に不活性な材料からなることが好ましい。ここで言う「実質的に不活性」とは、活性成分が、どのような実質的程度においても、芯(2)から結合手段(6)へ、拡散したりその他の仕方で移動したりすることがあり得ないことを意味する。結合手段(6)はまた、膣内薬剤放出システム(1)に用いられる治療的に活性な物質に対してある程度の透過性を示す材料で構成されていてもよい。
【0031】
芯−膜システム(5)の両末端間を堅固に結合するため、そして、結合部分に間隙を残さないようにするためには、たとえば溶媒結合、接着接合、熱溶融、加圧などの手法を用いて結合をさらに向上または強化することができる。溶媒を用いる場合、芯−膜システム(5)の両末端を、それらの表面を粘着性にする有機溶媒で湿らせる。これにより、芯−膜システム(5)の両末端の表面同士を互いに接触させると、互いに結合・接着して、結合手段(6)と共に流体密に一体化する。必要であれば、接着剤または封止剤を少なくとも1つの末端の断面および/または結合手段(6)の表面に適用してから両末端の表面同士を互いに接触させることにより、芯−膜システム(5)の両末端間の結合を向上することができる。
【0032】
接着剤を芯−膜システム(5)の一末端または両末端の断面に適用する場合は、接着剤が、芯(2)に配合する治療的に活性な物質に対する透過性を持つことにより、結合部分に詰まりが生じることを防止すること好ましい。
【0033】
本発明の膣内薬剤放出システムは、治療的に活性な種々の物質を長時間に亘って所定の制御放出速度で投与するのに特に適するものである。本発明の膣内薬剤放出システムにおいては、治療的に活性な物質として、プロゲストーゲン、プロゲストーゲン活性を有する化合物、もしくはエストロゲン、またはこれらの組み合わせを用いることもできる。さらに、細菌および真菌の感染に対する防御性を与えるおよび/または高める能力、および、性行為感染症に対する防御性を高める能力からなる群より選ばれる少なくとも1つの能力を有する少なくとも1種の他の治療的に活性な物質または少なくとも1種の健康増進物質をさらに含んでもよい。
【0034】
本発明の膣内薬剤放出システムは、芯と該芯を包む膜とを含む少なくとも1つのコンパートメントを含み、少なくとも1つの芯および/または膜、または膜の表面が少なくとも1種の治療的に活性な物質または少なくとも1種の健康増進物質を含む。こうして、本発明の膣内薬剤放出システムは、たとえば、芯と該芯を包む膜とを含む1つのコンパートメントを含み、該芯が1種または2種以上の治療的に活性な物質または1種または2種以上の健康増進物質を含むものでもよい。
【0035】
あるいは、本発明の膣内薬剤放出システムは、各々が芯と該芯を包む膜とを含む少なくとも2つのコンパートメントを含み、複数の芯の少なくとも1つが1種または2種以上の治療的に活性な物質または1種または2種以上の健康増進物質を含むものでもよい。あるいはまた、本発明の膣内薬剤放出システムは、芯と該芯を包む膜とを含む少なくとも1つのコンパートメントを含み、少なくとも膜または膜の表面が1種または2種以上の治療的に活性な物質または1種または2種以上の健康増進物質を含むものでもよい。
【0036】
膣内薬剤放出システムの適切なデザインや構造の任意の組合せは、当然なし得るものであって、本発明の範囲内である。
【0037】
本発明はまた、膣内薬剤放出システム(1)の製造方法であって、
該膣内薬剤放出システムは、芯(2)と該芯(2)を包む膜(3)とを含む少なくとも1つのコンパートメント(1a、1b)であって、該芯(2)と該膜(3)とは互いに同一または異なる重合体組成物から実質的になるコンパートメント(1a、1b)を含み、 該製造方法は、下記工程:
第1断面直径(d2)を有する単数または複数の芯(2)を形成し、
単数または複数の該芯(2)を膜(3)で包んで、2つの末端を有する芯−膜システム(5)を形成し、そして
該芯−膜システム(5)の2つの末端を第2断面直径(d6)を有する結合手段(6)によって互いに結合して、実質的に環状の膣内薬剤放出システム(1)を形成する、
を包含し、
該結合手段(6)の第2断面直径(d6)は単数または複数の該芯(2)の第1断面直径(d2)よりも実質的に小さいことを特徴とする製造方法に関する。
【0038】
本発明の1つの態様によると、単数または複数の芯(2)および膜(3)を別々に製造し、その後に、芯(2)を膜(3)で包む。
【0039】
本発明の他の1つの態様によると、単数または複数の芯(2)および膜(3)を同時に射出成形または押出成形により製造する。
【0040】
本発明の膣内薬剤放出システムを製造するために、治療的に活性な物質は、芯または膜の高分子材料に混合し、成形、射出成形、押出成形(たとえば、同時押出および/または混合押出)、または他の適切な方法を用いて成形することによって所望の形状に仕上げることができる。膜で芯を包むためには、たとえば、既成した管状の膜を加圧ガス(たとえば加圧空気)を用いて物理的に伸長または伸展させることによって芯を覆うこともできるし、適切な溶媒(たとえばシクロヘキサン、ジグリム、プロパノール、イソプロパノールまたは溶媒混合物)の中で膨潤させ、膨潤した管状の膜を芯に滑らせて被せることによって芯を覆うこともできるし、押出、成形、噴霧または浸漬によって芯を覆うこともできる。
【0041】
膜の表面または1つの膜は、治療的に活性な物質または健康増進物質の粒子、結晶、微結晶、粉末または懸濁液によって、包まれ、塗布され、振りかけられる。これは公知の方法で行なうことができ、公知の方法の例としては、該物質を適当な溶媒に懸濁させた液を膣内薬剤放出システムの全体または一部に噴霧する方法や、そのような懸濁させた液に膣内薬剤放出システムを浸漬させる方法を挙げることができる。
【0042】
特に好適な製造方法は、フィンランド国特許 FI 97947 に開示されている。この特許は、活性物質を含有する既成したロッドを外膜によって覆うという押出技術を開示している。治療的に活性な物質は、芯のマトリクスである重合体組成物に混合され、公知の押出方法を用いて所望の形状および大きさに仕上げられる。その後、既成した芯を膜層で覆うことができる。これは、たとえば、該芯を押出装置に導入し、その後、別の芯もしくは活性物質を含有しない芯(すなわち、プラセボコンパートメント)または空気を満たした空のスペース(押出中は隔膜を形成するための膜材料に満たされている)を導入することによって行われる。薬剤を含有する芯と膜層とを、同時押出によって同時に製造することもできる。
【0043】
上記の方法によって得られる芯またはコンパートメントは、必要な長さを有する複数の小片に切り分けられ、各小片は任意の適切な方法によって膣に配置するのに適する形状、大きさおよび適合性を有するものに仕上げることができる。膣内薬剤放出システムは様々な形状をとることができる。たとえば、環状(annular)、リング形、卵形、渦巻状、楕円形、環状(toroidal)などの各種の連続的な曲がった形状をとることができる。膣内薬剤放出システムの断面は、ほとんどどのような滑らかな形状でもとることができ、円形、卵形、平坦状、楕円形、星形などの形状をとることができる。
【0044】
本発明によると、結合手段としての細い重合体ロッドを用いて芯−膜システムの末端同士を堅固に連結することによって、閉じた連続形状の膣内薬剤放出システムを形成することができる。結合手段の外直径は芯の直径よりも実質的に小さい。したがって、結合部分で不透過性の栓を形成することがなく、治療的に活性な物質の拡散や透過を可能にする。所望により、芯−膜システムの一末端の他の末端へのよりよいシーリングまたは接着のために、または、結合手段のコンパートメントへのよりよいシーリングまたは接着のために、生体適合性を有する接着剤を用いることができる。
【0045】
本発明の膣内薬剤放出システムは、要求される任意の大きさに製造することができる。正確な大きさは、哺乳類の種類および用途に依存する。実用上、ヒトの雌性については、膣内薬剤放出システム(リング)の外径は、典型的には35〜70mm、好ましくは35〜58mmまたは45〜65mmである。膣内薬剤放出システムの芯の長さは、要求される性能を発揮するように選択される。薬剤を含有するコンパートメントの長さは、たとえば5〜160mmであってよく、膣内薬剤放出システムの全長までの長さであってもよい。
【0046】
本発明によって製造される膣内薬剤放出システムは公知の方法で滅菌することができる。滅菌方法の例としては、加熱による方法、エチレンオキサイドを使用する方法、放射線を使用する方法が挙げられる。
【実施例1】
【0047】
膣内薬剤放出システムを製造するための一般的方法
【0048】
99.3部の市販のポリ(ジメチルシロキサン−ビニルメチルシロキサン)、0.4部のポリ(ヒドロゲンメチルシロキサン−ジメチルシロキサン)架橋剤、0.05部のエチニルシクロヘキサノール阻害剤、およびビニルメチルシロキサン中の(反応種の)白金触媒の0.2部を混練ミルに入れて混合する。得られた混合物を押出して内径1.1mm、外径3.9mmのチューブ形状とし、+115℃で30分間加熱することによって硬化し、冷却する。
【0049】
50部の混合物(内訳は、72.3部の市販のビニル末端ポリ(ジメチルシロキサン−ビニルメチルシロキサン)、25.5部のシリカ充填剤、0.1部のエチニルシクロヘキサノール、2部のポリ(ヒドロゲンメチルシロキサン−ジメチルシロキサン)架橋剤、および0.05部の助触媒であるα−トコフェロール)と50部の混合物(内訳は、97.5部の市販のビニル末端ポリ(ジメチルシロキサン−ビニルメチルシロキサン)、0.1部のエチニルシクロヘキサノール、2部のポリ(ヒドロゲンメチルシロキサン−ジメチルシロキサン)架橋剤、およびビニルメチルシロキサン中の(反応種の)白金触媒の0.3部)とを混合することによって膜を製造する。2つの混合物は個別に調製する。
【0050】
膜材料を集めて、上で製造された芯の上にコート押出を行い、衝撃硬化を行い、外径4.4mmを有するチューブ状のロッドを得る。
【実施例2】
【0051】
ドロスピレノンおよびエストラジオールを含有する薬剤放出システムの製造
【0052】
ドロスピレノンおよびエストラジオールバレレートを含有する膣内薬剤放出システムを製造する。ドロスピレノン(30重量%)を含有する第1の芯はPEO−b−PDMS(重合体の総量の18重量%)とPDMSからなり、芯の長さは130mmである。エストラジオールバレレート(15重量%)を含有する第2の芯はPEO−b−PDMS(重合体の総量の15重量%)とPDMSからなり、芯の長さは40mmである。2つの芯の外径は3.9mmである。PEO−b−PDMS/PDMS(比率20:80)からなる膜で芯を包む。同時押出法により、既成した芯に膜層を適用する。薬剤を含有する2つの芯の間に残された3mmの空のスペースは、製造中に膜材料で満たし、こうして芯の間に隔膜を形成する。膜壁の厚さは0.4mm、芯−膜システムの外径は4.7mmである。長さが10mmで外径が1.2mmであるポリエチレンのロッドを結合手段として用いる。接着剤(Nusil Med 1-4213)を芯−膜システムの1つの末端の断面と結合手段の1つの末端に塗り、ポリエチレンのロッドである結合手段を芯の中に約5mm押し込む。芯−膜システムの他の末端の断面に同じ接着剤を付け、接着剤の付いた該ポリエチレンのロッドを押し込んで芯−膜システムの両末端を互いに係合させる。接着剤を100℃で1時間硬化する。
【実施例3】
【0053】
ドロスピレノン、エチニルエストラジオールおよび Lactobacillus を含有する薬剤放出システムの製造
【0054】
ドロスピレノン、エチニルエストラジオールおよび Lactobacillus rhamnosus を含有する膣内薬剤放出システムを製造する。ドロスピレノン(30重量%)を含有する第1の芯はPEO−b−PDMS(重合体の総量の45重量%)とPDMSからなり、芯の長さは140mmである。エチニルエストラジオール(10重量%)を含有する第2の芯はPEO−b−PDMS(重合体の総量の15重量%)とPDMSからなり、芯の長さは20mmである。PDMSからなる10mmのプラセボ芯を、薬剤を含有する2つの芯の間に入れて、2つの芯を隔てる。すべての芯を押出成形によって製造する。得られる芯は、外径が3.8mmで内径が1.1mmであるチューブ状の芯である。
【0055】
PEO−b−PDMS/PDMS(比率20:80)からなる膜で芯を包む。膜壁の厚さは0.3mm、チューブの内径は3.7〜3.75mm、チューブの外径は4.3〜4.35mmである。長さが10mmで外径が1.2mmであるポリエチレンのロッドを結合手段として用いることにより、薬剤放出システムの両末端を結合して閉じたシステムにする。接着剤(Nusil Med 1-4213)を結合手段の1つの末端に塗り、ポリエチレンのロッドである結合手段を芯の中に約5mm押し込む。芯−膜チューブの断面と結合手段の他の末端とに同じ接着剤を塗布し、芯−膜システムの他の末端に該ポリエチレンのロッドを押し込んで芯−膜システムの両末端を互いに係合させる。接着剤を100℃で1時間硬化する。最後に、薬剤放出システムを、Lactobacillus rhamnosus をハードファット(Witepsol(登録商標))中に懸濁させた懸濁液に浸漬させ、薄い塗膜を形成する。
【実施例4】
【0056】
ドロスピレノンを含有する薬剤放出システムの製造
【0057】
ドロスピレノンを含有する膣内薬剤放出システムを製造する。ドロスピレノン(30重量%)を含有する芯はPEO−b−PDMS(重合体の総量の45重量%)とPDMSからなり、芯の長さは167mmである。芯を押出成形によって製造する。得られる芯は、外径が4.1mmで内径が1.1mmであるチューブ状の芯である。
【0058】
PEO−b−PDMS/PDMS(比率20:80)からなる膜で芯を包む。膜壁の厚さは0.4mm、チューブの内径は4.05mm、チューブの外径は4.85mmである。長さが12mmで外径が1.1mmであるポリエチレンのロッドを結合手段として用いることにより、薬剤放出システムの両末端を結合して閉じたシステムにする。接着剤(Nusil Med 1-4213)を結合手段の1つの末端に塗り、ポリエチレンのロッドである結合手段を芯の中に約6mm押し込む。芯−膜チューブの断面と結合手段の他の末端とに同じ接着剤を塗布し、芯−膜システムの他の末端に該ポリエチレンのロッドを押し込んで芯−膜システムの両末端を互いに係合させる。接着剤を100℃で1時間硬化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膣内薬剤放出システムであって、
少なくとも1つのコンパートメント(1a、1b)であって、第1断面直径(d2)を有する芯(2)と該芯(2)を包む膜(3)とを含み、該芯(2)と該膜(3)とは互いに同一または異なる重合体組成物から実質的になるものであり、こうして、第1末端と第1断面および第2末端と第2断面を有する芯−膜システム(5)を構成するコンパートメント(1a、1b)、および
第2断面直径(d6)と長さ(L)を有し、該芯−膜システム(5)の第1末端と第2末端とを結合するための結合手段(6)、
を包含し、
該結合手段(6)の第2断面直径(d6)は該芯(2)の第1断面直径(d2)よりも実質的に小さいことを特徴とする膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項2】
結合手段(6)に接着剤が適用されていることを特徴とする、請求項1に記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項3】
芯−膜システム(5)の第1断面および/または第2断面に接着剤が適用されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項4】
結合手段(6)の長さ(L)の実質的に半分が薬剤放出システムの第1末端の内部に位置し、結合手段(6)の残りの部分が薬剤放出システムの第2末端の内部に位置することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項5】
芯−膜システム(5)の第1末端および/または第2末端における芯(2)の実質的に中心部が開口部(4)を有し、単数または複数の該開口部(4)の中に結合手段(6)が位置することを特徴とする、請求項4に記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項6】
芯(2)の実質的に中心部が開口部(4)を有し、該開口部(4)が芯−膜システム(5)の全長に亘って延びており、該開口部(4)の中に結合手段(6)が位置することを特徴とする、請求項4に記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項7】
結合手段(6)が生体適合材料からなる重合体ロッドであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項8】
結合手段(6)の長さ(L)が5〜25mm、好ましくは10〜20mmであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項9】
芯(2)の断面直径(d2)が2〜10mmであり、結合手段(6)の断面直径(d6)が0.5〜4.0mmであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項10】
治療的に活性な種々の物質を長時間に亘って所定の制御放出速度で投与するのに適することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項11】
治療的に活性な物質がプロゲストーゲン、プロゲストーゲン活性を有する化合物、もしくはエストロゲン、またはこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項10に記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項12】
少なくとも1種の他の治療的に活性な物質または少なくとも1種の健康増進物質をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の膣内薬剤放出システム(1)。
【請求項13】
膣内薬剤放出システム(1)の製造方法であって、
該膣内薬剤放出システムは、芯(2)と該芯(2)を包む膜(3)とを含む少なくとも1つのコンパートメント(1a、1b)であって、該芯(2)と該膜(3)とは互いに同一または異なる重合体組成物から実質的になるコンパートメント(1a、1b)を含み、 該製造方法は、下記工程:
第1断面直径(d2)を有する単数または複数の芯(2)を形成し、
単数または複数の該芯(2)を膜(3)で包んで、2つの末端を有する芯−膜システム(5)を形成し、そして
該芯−膜システム(5)の2つの末端を第2断面直径(d6)を有する結合手段(6)によって互いに結合して、実質的に環状の膣内薬剤放出システム(1)を形成する、
を包含し、
該結合手段(6)の第2断面直径(d6)は単数または複数の該芯(2)の第1断面直径(d2)よりも実質的に小さいことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
単数または複数の該芯(2)および/または該膜(3)を射出成形または押出成形により製造することを特徴とする、請求項13に記載の膣内薬剤放出システム(1)の製造方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509359(P2012−509359A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543785(P2011−543785)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050921
【国際公開番号】WO2010/058070
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(507331379)
【Fターム(参考)】