説明

膨れ防止剤および水性コーティング組成物

【課題】少ない工程数でかつ環境に優しい材料のみを用い、一定の厚さを有しても膨れ現象を容易かつ確実に防止することのできる塗膜を実現する。
【解決手段】水と、前記水によって膨潤するとともに前記水に分散している層状粘土化合物と、を含むことを特徴とする水性分散体を、膨れ防止剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状粘度化合物を含む水性コーティング組成物用膨れ防止剤および水性コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート床の表面やコンクリート構造物などの壁面に施工するコーティング組成物(塗料)としては、水性のものが非常に多く使用されているが、例えば水性コーティング組成物をコンクリート構造物に施工する際、太陽光や外気を含む気象条件などの環境の影響を受けて水性コーティング組成物中の水分が蒸発し、当該蒸発に伴って、形成した塗膜に膨れが生じる現象(いわゆる膨れ現象)が発生することが多い。
【0003】
本発明者らは、上記のような膨れ現象は、以下のようなメカニズムによって発生すると考えている。即ち、図1に示すように、例えばコンクリート構造物の被塗布面1の上に下地材(例えばセメント系下地調製塗材(JIS A 6906))2を配置し、その下地材2上に水性コーティング組成物を塗布して塗膜(塗布層)3を形成した場合、まず、塗布層3のうち、被塗布面1側の部分3aおよび太陽光や外気に直接接する部分3bの表面から次第に皮張って緻密な膜が形成される。
【0004】
その後、塗布層3は太陽光や外気の影響を受け、部分3aと部分3bとの間において水性コーティング組成物に含まれる水分が蒸発する。部分3bの表面には既に緻密な膜が形成されているため,部分3aと部分3bとの間に水蒸気が封じ込められることとなり、当該水蒸気が部分3bの表面を内部から押し上げ、上記のような膨れが発生するのである。
【0005】
ここで、上記の水性コーティング組成物を用いたポリマーセメント系防水塗料においては、セメント水和反応に水分が消費されることから、上記のような塗布層内部における水蒸気の発生に起因する膨れ現象はないとも考えられる。ところが、環境によってはセメント水和反応は必ずしも迅速に進行するものではなく、水分がセメント水和反応に消費される前に蒸発して水蒸気となってしまい、上記と同様のメカニズムによって膨れ現象を生じるという問題がある。
【0006】
このような膨れ現象を防止する方法に関しては、例えば特許文献1において、樹脂防水材の施工後に閉じ込められた水分が床を突き上げることによる膨れが発生するケースや、下地のひび割れなどが防水層に波及してクラックとなり漏水する場合に対処することを意図して、ポリオール、水、イソシアネート化合物、水硬性セメントおよび必要により配合される骨材、充填材を含む床用調整材から形成された下地層に、弾性層、熱硬化性樹脂と繊維補強材とからなる強化樹脂層、必要により設けられるトップコート層とが重層されて仕上げられていることを特徴とする床構造体およびその施工法が提案されている。
【0007】
また、例えば特許文献2においては、外気から受ける熱、温度およびその温度差の影響により、塗膜が膨れることが少ない水性塗料を提供することを意図して、合成樹脂エマルションを主成分とする水性塗料において、その水性塗料より形成される塗膜の1次乾燥(温度20℃、湿度65%RH、24時間の条件)による1次乾燥率が70.0〜90.0重量%、さらに、1次乾燥後塗膜の2次乾燥(温度70℃、湿度65%RH、168時間の条件)による2次乾燥率が5.0〜18.0重量%であることを特徴とする水性塗料が提案されており、さらに具体的には、高沸点有機溶剤を水性塗料に添加することによって膨れ現象を防止することが提案されている。
【特許文献1】特開2004-183388号公報
【特許文献2】特開2002-285091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術は、まず、膨れ防止層として、ポリオール、水、イソシアネート化合物、水硬性セメントおよび必要により配合される骨材、充填材を含む床用調整材から形成された下地層を被塗布面に施工し、ついで、弾性層、強化樹脂層およびトップコート層を順次施工するものであることから、工程数が多く施工手順が煩雑であるという問題がある。
【0009】
また、上記特許文献2記載の技術は高沸点有機溶剤を用いることを必須としているところ、環境問題の観点から、建築材料に対する揮発性有機化合物(VOC)放散量の規制が厳しくなってきている昨今においては、その使用は実情に沿わないという問題がある。
【0010】
以上のような状況に鑑み、本発明は、少ない工程数でかつ環境に優しい材料のみを用い、一定の厚さを有しても膨れ現象を容易かつ確実に防止することのできる塗膜を実現し得る水性コーティング組成物用膨れ防止剤、ならびにこれを含む水性コーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決すべく、本発明は、水と、前記水によって膨潤するとともに前記水に分散している層状粘土化合物と、を含む水性分散体からなること、を特徴とする水性コーティング組成物用膨れ防止剤を提供する。
前記層状粘土化合物としては、スメクタイトを用いるのが好ましく、前記スメクタイトとしては、モンモリロナイト、サポナイトおよびヘクトライトよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0012】
前記層状粘土化合物としては、前記スメクタイトを含むベントナイトを用いてもよい。
また、前記スメクタイトは有機変性されたものであるのも好ましい。
さらに、前記層状粘土化合物としては雲母を用いることもできる。
【0013】
また、本発明は、上記の水性コーティング組成物用膨れ防止剤と樹脂エマルションとを含むことを特徴とする水性コーティング組成物を提供する。この水性コーティング組成物は一液型の塗料としても二液型の塗料としても用いることができる。
前記水性コーティング組成物は、前記樹脂エマルション中の樹脂固形分100質量部に対し、前記水27〜60質量部および前記層状粘土化合物0.1〜2.0質量部を含有するのが好ましい。
また、前記水性コーティング組成物は、さらに水硬セメントを含有していてもよい。この場合は、前記水性コーティング組成物をいわゆるポリマーセメント系防水塗料として用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少ない工程数でかつ環境に優しい材料のみを用い、高温条件下においても膨れ現象を容易かつ確実に防止することのできる一定の厚さを有する塗膜を形成し得る水性コーティング組成物および水性コーティング組成物用膨れ防止剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上記のような課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、水と、前記水によって膨潤するとともに前記水に分散している層状粘土化合物と、を含むことを特徴とする水性分散体を用いれば、水性コーティング組成物を塗布した際の膨れ現象を防止し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
ここで、本発明の水性分散体が膨れ防止剤としての機能を発揮するメカニズムについての、層状粘土化合物としてスメクタイトに代表させて本発明者らによる考察を説明する。
【0016】
本発明の膨れ防止剤に用いられる層状粘土化合物であるスメクタイトは、微細な板状結晶が積み重なって積層構造を形成しており,水中でその層間に水分子を取り込むことにより膨潤する。さらに、水で膨潤したスメクタイトにせん弾力を加えると、積層構造が崩れてバラバラとなり、図2の(a)に示すような、マイナスの電荷を有する結晶表面とプラスの電荷を有する結晶端面とを有する結晶の層4が、多数集まって互いに会合し、図2の(b)に示すようないわゆるカードハウス構造5からなるネットワークを形成している。
【0017】
そして、このようなカードハウス構造を形成するスメクタイトを含む本発明の水分散体を水性コーティング組成物に添加すると、当該水性コーティング組成物を被塗布面に塗布した際に、膨れ現象の原因となる水分が分子レベルで上記の電荷分布を有するカードハウス構造内に取り込まれてトラップされ、トラップされた水分は塗膜の形成に伴って穏やかに徐放することから、膨れ現象を防止することができるものと考えられる。
【0018】
上記の考察は、本発明者らの実験の結果からも妥当であると考えられる。なぜなら、まず本発明における水性分散体からなる膨れ防止剤を調製し、ついで当該膨れ防止剤を水性コーティング組成物に添加した場合には、上記のような膨れ防止現象を防止することができたが、上記層状粘土化合物を直接水性コーティング組成物に添加した場合にはかかる膨れ現象を十分に防止することができなかったからである。後者の場合には、水による造膜遅延効果が不十分であるとともに、上記カードハウス構造が十分に形成されていなかったためであると考えられる。
【0019】
なお、スメクタイトなどの層状粘土化合物は、従来から、水系塗料のレオロジーコントロール剤、水系塗料における顔料の沈降防止およびタレ防止、ならびに化粧品の増粘剤として利用がされていることは知られている(例えば特開昭61‐6119号公報)。しかしながら、まず水に分散させて上記のようなカードハウス構造を有する水分散体を調製し、当該水分散体を水性コーティング組成物に用いるという方法によって、膨れ防止現象を防止する点については知られていない。したがって、本発明の水性分散体は、水性コーティング組成物に膨れ防止効果たけでなく、従来の増粘効果も付与し得るものである。
【0020】
ここで、本発明の膨れ防止剤を構成する成分について説明する。本発明の膨れ防止剤は、水と、前記水によって膨潤するとともに前記水に分散している層状粘土化合物と、を含む水性分散体からなることを特徴とする。なお、当該膨れ防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲で上記水性分散体以外の成分も含み得る。
本発明における「層状粘土化合物」とは、水によって膨潤するとともに当該水に均一に分散するものであればよく、より具体的には、上記のようなカードハウス構造を形成し得るものであることが必要である。なお、このようなカードハウス構造が形成されているか否かは、電子顕微鏡によって確認することができる。
【0021】
上記層状粘土化合物としては、入手の容易性などの理由から、例えば天然または合成スメクタイトおよび雲母を用いることが好ましい。
また、スメクタイトとしては、塗工性を良好に保ち、膨れ防止に有効な膨潤性およびチクソ性を付与できるものとして膨潤力30ml/2g以上(日本ベントナイト工業界標準試験方法 JBAS-104-77)を示す高膨潤性粘土化合物であるという理由から、モンモリロナイト、サポナイトおよびヘクトライトよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0022】
なお、前記層状粘土化合物としては、前記スメクタイトを主成分として含むベントナイトを使用することも可能である。ただし、この場合、ベントナイトは本発明の効果を損なわない範囲でベントナイト以外の副成分を含んでいてもよい。
もちろん、ベントナイトを精製して得られるモンモリロナイト、サポナイトおよびヘクトライトよりなる群から選択される少なくとも1種を用いてもよい。
【0023】
また、前記スメクタイトは、水性コーティング組成物に対する水性分散体の増粘効果と水性コーティング組成物の耐水性とをバランスよく保持し、当該スメクタイトの分散性を向上させるという観点から、有機変性されたものであるのも好ましい。
有機変性の方法としては、従来公知の方法を用いることができるが、例えば脂肪鎖を有するCa2+、Mg2+、NH4+、Na+およびK+などのイオンを、スメクタイトの層間にイオン交換により導入したり、シラン化合物でスメクタイトの表面を処理したりする方法などが挙げられる。なお、前者においては、水中における層同士の電気的引力が弱いため、層間への水分子の取り込みが起こり易く、膨れ防止剤として十分な膨潤性およびチクソ性を示すという理由から、Na+およびK+などの一価のイオンを導入することが好ましい。
【0024】
また、本発明の水性分散体からなる膨れ防止剤は、上記水と、層状粘土化合物以外の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば界面活性剤、湿潤材、可塑剤などの各種添加剤などを含んでいてもよい。
さらに、取扱性および水性コーティング組成物中での分散性などの観点から、本発明の膨れ防止剤の粘度は、1〜3000mPa・s程度(BM型粘度計、3号ローター、6rpm、20℃)であるのが好ましい。
【0025】
上記の本発明の膨れ防止剤は、水および層状粘土化合物を混合し、当該混合物にせん断力を加えることができれば特に制限されることなく従来公知の方法によって攪拌して調製することができる。例えばディスパーおよびメカニカルスターラーなどを用いて混合、攪拌することによって得ることができる。
【0026】
上記のような構成を有する本発明の膨れ防止剤は、水性コーティング組成物用膨れ防止剤として好適に用いることができる。したがって、本発明は、上記水性分散体からなる膨れ防止剤と、バインダーとして樹脂を含有する樹脂エマルションとを含むこと、を特徴とする一液型または二液型の水性コーティング組成物をも提供する。
【0027】
ここで、本発明の膨れ防止剤を水性コーティング組成物に用いた場合、当該組成物中におけるカードハウス構造は、層状粘土化合物の種類ならびに樹脂エマルション(バインダー)のpHおよび電荷状態によって異なる場合がある。そこで、本発明者らは、図2の(b)において説明したような理想的なカードハウス構造を構築することができるように、水性コーティング組成物の成分および組成を検討した。
【0028】
樹脂エマルションとしては、本発明の効果を損なわない範囲で種々のものを使用することができるが、例えば酢酸ビニル系、ポリアクリル酸エステル系、アクリル−スチレン共重合体系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−塩化ビニル共重合体系、酢酸ビニル−アクリル共重合体系、酢酸ビニル−ベオバ共重合体系、スチレン−ブタジエン系、エポキシ系およびウレタン系などの樹脂のうちの少なくとも1種のエマルションを用いればよい。
【0029】
ただし、上記樹脂エマルションは、膨れ防止剤を構成する水性分散体を安定的に分散させることができ、膨れ防止剤として有効なカードハウス構造を構築させるべくスメクタイト結晶(層)の面と端部が効率的に静電結合できる環境であるという理由から、ノニオン性〜弱アニオン性であるのが好ましく、さらに、強いアルカリ性および酸性条件下ではスメクタイト粒子の表面電荷が変動し、膨れ防止剤として有効なカードハウス構造の形成が阻害されるという理由から、pH4.5〜10.0を有しているものであるのが好ましい。
【0030】
また、本発明の水性コーティング組成物は、樹脂エマルション中の樹脂固形分100質量部に対し、水27〜60質量部および層状粘土化合物0.1〜2.0質量部を含有することが好ましい。
この範囲を逸脱しなければ、樹脂エマルションおよび層状粘土化合物の種類を変更しても、得られる水性コーティング組成物のチクソトロピック性が低減し過ぎることがなく、層状粘土化合物も凝集せず、さらに、膨れ現象を防止し得る塗膜を得ることができる。
【0031】
なかでも、本発明の水性コーティング組成物中の層状粘土化合物の含有量としては、膨れ防止効果をより確実に得ることができるという観点から、樹脂固形分100質量部に対し、0.5〜2.0質量部であるのが好ましく、さらには、塗工性および塗膜物性も十分なものとするという観点から、1.0〜2.0質量部であるのが特に好ましい。
【0032】
また、本発明の水性コーティング組成物における水の含有量としては、造膜速度の制御し易く、膨れ防止現象を確実に防止し得るという観点から、樹脂固形分100質量部に対して40〜60質量部であるのがより好ましい。
本発明の水性コーティング組成物は、先に述べた本発明の水性分散体および上記樹脂エマルションを、従来公知の方法で混合、攪拌(混練)することによって得ることができる。
【0033】
以上のような、本発明の水性コーティング組成物は一液型および二液型のいずれとしても用いることができる。先に述べた本発明の水性分散体からなる膨れ防止剤を、本発明の水性コーティング組成物を塗工する直前に添加してもよく(二液型)、予め水性コーティング組成物に添加して保存してから塗工してもよい。
【0034】
また、本発明の水性コーティング組成物は、水硬セメントを含んでいてもよく、この場合は、ポリマーセメント系防水塗料として用いることができる。なお、水硬セメントを用いて施工直前に水性コーティング組成物に混練する場合、上記膨れ防止剤の添加は水硬セメント混練前および後のいずれであっても構わない。
【0035】
なお、本発明の水性コーティング組成物は、上記膨れ防止剤、樹脂エマルションおよび必要に応じて水硬セメントに加えて、本発明の効果を損なわない範囲において、例えば炭酸カルシウムおよびシリカなどの無機フィラー、顔料、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤などを必要に応じて含んでいてもよい。
【実施例】
【0036】
以下においては、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0037】
《実施例1》
まず、モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製のクニピアF)1.0質量部と水40質量部とを混合、攪拌して、本発明の水性分散体からなる膨れ防止剤を得た。
つぎに、エチレン−酢酸ビニルエマルション(住友化学(株)製のS400HQ、樹脂固形分50%)100質量部と上記膨れ防止剤41質量部とを混合、攪拌し、ついで、アルミナセメント134質量部を加えて混合、攪拌することにより、本発明の水性コーティング組成物1(粘度30000mPa・s(27℃)、BM型粘度計、3号ローター、6rpm、以下同様。)を得た。
【0038】
《実施例2》
まず、モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製のクニピアF)1.5質量部、水60質量部、および分散剤である非イオン界面活性剤(サンノプコ(株)製のSNウェットL)0.25質量部を混合、攪拌して、本発明の水性分散体からなる膨れ防止剤を得た。
【0039】
つぎに、アクリル樹脂エマルション(昭和高分子(株)製のAP1761、樹脂固形分50%)24質量部、水酸化マグネシウム(鋼管鉱業(株)製のマグラックスST)28質量部、炭酸カルシウム(清水工業(株)製のKK600)10質量部、酸化チタン(富士チタン工業(株)製のTR−700)10質量部、増粘剤(信越化学(株)製の60SH−4000)0.08質量部、分散剤(花王(株)製のポイズ530)0.7質量部、湿潤剤(花王(株)製のエマルゲンL−40)0.5質量部および消泡剤(サンノプコ(株)製のSNデフォーマー317)0.5質量部を混合して混合物を得た。そして、当該混合物に、前記アクリル樹脂エマルションの樹脂固形分100質量部に、上記膨れ防止剤61.75質量部を加えて混合、攪拌することにより、本発明の水性コーティング組成物2(粘度3000mPa・s(27℃))を得た。
【0040】
《実施例3》
まず、ヘクトライト(エレメンティス(株)製のベントンCT)2.0質量部と水50質量部とを混合、攪拌して、本発明の水性分散体からなる膨れ防止剤を得た。
つぎに、主剤としてビスフェノールA型液状エポキシ樹脂および硬化剤としてポリアミドアミンを含む二液型水性塗料(大関化学工業(株)製のパラコートEM)と上記膨れ防止剤とを、樹脂固形分100質量部に対して上記膨れ防止剤52質量部となるように混合、攪拌し、ついで、ポルトランドセメント150質量部を加えて混合、攪拌することにより、本発明の水性コーティング組成物3(粘度50000mPa・s(27℃))を得た。
【0041】
《実施例4》
まず、モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製のクニピアF)0.2質量部と水30質量部とを混合、攪拌して、本発明の水性分散体からなる膨れ防止剤を得た。
つぎに、エチレン−酢酸ビニルエマルション(住友化学(株)製のS400HQ、樹脂固形分50%)100質量部と上記膨れ防止剤30.2質量部とを混合、攪拌し、ついで、アルミナセメント134質量部を加えて混合、攪拌することにより、本発明の水性コーティング組成物4(粘度15000mPa・s(27℃))を得た。
【0042】
《実施例5》
まず、モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製のクニピアF)2.0質量部と水28質量部とを混合、攪拌して、本発明の水性分散体からなる膨れ防止剤を得た。
つぎに、エチレン−酢酸ビニルエマルション(住友化学(株)製のS400HQ、樹脂固形分50%)100質量部と上記膨れ防止剤30質量部とを混合、攪拌し、ついで、アルミナセメント134質量部を加えて混合、攪拌することにより、本発明の水性コーティング組成物5(粘度50000mPa・s(27℃))を得た。
【0043】
《比較例1》
エチレン−酢酸ビニルエマルション(住友化学(株)製のS400HQ、樹脂固形分50%)100質量部とアルミナセメント134質量部を加えて混合、攪拌することにより、比較用組成物1(粘度30000mPa・s(27℃))を得た。
【0044】
《比較例2》
エチレン−酢酸ビニルエマルション(住友化学(株)製のS400HQ、樹脂固形分50%)100質量部と水40部とを混合、攪拌した後、さらにアルミナセメント134質量部を加えて混合、攪拌することにより、比較用組成物2(粘度10000mPa・s(27℃))を得た。
【0045】
《比較例3》
エチレン−酢酸ビニルエマルション(住友化学(株)製のS400HQ、樹脂固形分50%)100質量部とモンモリロナイト(クニミネ工業(株)製のクニピアF)1.0質量部とを混合、攪拌した後、さらにアルミナセメント134質量部を加えて混合、攪拌することにより、比較用組成物3(粘度50000mPa・s(27℃))を得た。
【0046】
《比較例4》
アクリル樹脂エマルション(昭和高分子(株)製のAP1761、樹脂固形分50%)24質量部、水酸化マグネシウム(鋼管鉱業(株)製のマグラックスST)28質量部、炭酸カルシウム(清水工業(株)製のKK600)10質量部、酸化チタン(富士チタン工業(株)製のTR−700)10質量部、増粘剤(信越化学(株)製の60SH−4000)0.08質量部、分散剤(花王(株)製のポイズ530)0.7質量部、湿潤剤(花王(株)製のエマルゲンL−40)0.5質量部および消泡剤(サンノプコ(株)製のSNデフォーマー317)0.5質量部を混合、攪拌することにより、比較用組成物4(粘度3000mPa・s(27℃))を得た。
【0047】
《比較例5》
主剤としてビスフェノールA型液状エポキシ樹脂および硬化剤としてポリアミドアミンを含む二液型水性塗料(大関化学工業(株)製のパラコートEM)100質量部と、ポルトランドセメント600質量部とを混合、攪拌することにより、比較用組成物5(粘度50000mPa・s(27℃))を得た。
【0048】
[評価試験1]
スレート板(900mm×900mm×5mm)および容積1/4程度まで水を張ったポリプロピレン製容器(410mm×310mm×100mm)に静置した歩道板(300mm×300mm×60mm)を、真夏晴天下の気温35±1℃の屋外にて約3時間程度日光に曝した。
その後、本発明の水性コーティング組成物1および3〜5ならびに比較用組成物1〜3および5を、歩道板には鏝を用いて、また、スレート板には刷毛を用いて、塗布量1.98kg/m2、膜厚1〜1.5mm程度になるように塗布し、約5時間放置した。
【0049】
放置後、塗膜の膨れの有無を目視にて観察し、発生した膨れ部分の直径を定規で測定した。その結果を、各組成物の膨れ防止剤の塗料への目視による分散性の評価および塗工性の官能評価とともに表1に示した。
分散性については、ダマなどが見られず、塗料に均一に分散していた場合を○とし、ダマが生じまた1分間の建築現場用ディスパーでの攪拌のうちに分散できなかった場合を×とした。
一方、塗工性については、鏝・刷毛さばきが比較的軽く、水性コーティング組成物がよく延び、またダレが生じず1度塗りで上記の膜厚を実現することができた場合を○とし、鏝・刷毛さばきが重いかまたは極端に軽く、ダレが生じたり延びが悪かった場合を×とした。
【0050】
[評価試験2]
評価試験2ではセメントが添加されておらず組成物の粘度が低いため塗布量および膜厚ともに値を低く設定し、また、刷毛のみを用いて試験を行った。
スレート板(900mm×900mm×5mm)を、真夏晴天下の気温35±1℃の屋外にて約3時間程度日光に曝した。その後、本発明の水性コーティング組成物2および比較用組成物4を、刷毛を用いて、塗布量0.5kg/m2、膜厚0.3mm程度になるように塗布し、約5時間放置した。
放置後、塗膜の膨れの有無を目視にて観察し、発生した膨れ部分の直径を定規で測定した。その結果を、各組成物の膨れ防止剤の塗料への分散性および塗工性の評価とともに表1に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示す結果から、本発明の水性分散体からなる膨れ防止剤を含む水性コーティング組成物を用いれば、少ない工程数でかつ環境に優しい材料のみを用い、高温条件下においても膨れ現象を容易かつ確実に防止することのできる一定の厚さを有する塗膜を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の水性分散体は、各種水性コーティング組成物の膨れ防止剤として好適に用いることができる。したがって、本発明は塗料の分野において広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】コンクリート構造物の表面の塗膜において膨れが発生する様子を説明するための概略断面図である。
【図2】層状粘土化合物がカードハウス構造を形成する様子を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0055】
1 被塗布面
2 下地材
3 塗膜
4 結晶の層
5 カードハウス構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、前記水によって膨潤するとともに前記水に分散している層状粘土化合物と、を含む水性分散体からなること、を特徴とする水性コーティング組成物用膨れ防止剤。
【請求項2】
前記層状粘土化合物がスメクタイトを含有すること、を特徴とする請求項1記載の水性コーティング組成物用膨れ防止剤。
【請求項3】
前記スメクタイトがモンモリロナイト、サポナイトおよびヘクトライトよりなる群から選択される少なくとも1種であること、を特徴とする請求項2記載の水性コーティング組成物用膨れ防止剤。
【請求項4】
前記層状粘土化合物が前記スメクタイトを含むベントナイトであること、を特徴とする請求項2または3記載の水性コーティング組成物用膨れ防止剤。
【請求項5】
前記スメクタイトが有機変性されたものであること、を特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の水性コーティング組成物用膨れ防止剤。
【請求項6】
前記層状粘土化合物が雲母であること、を特徴とする請求項1記載の水性コーティング組成物用膨れ防止剤。
【請求項7】
請求項6記載の膨れ防止剤と、樹脂エマルションとを含むこと、を特徴とする一液型または二液型の水性コーティング組成物。
【請求項8】
前記樹脂エマルション中の樹脂固形分100質量部に対し、前記水27〜60質量部および前記層状粘土化合物0.1〜2.0質量部を含有すること、を特徴とする請求項7記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
さらに水硬セメントを含有すること、を特徴とする請求項8記載の水性コーティング組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−316109(P2006−316109A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137575(P2005−137575)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(503236326)株式会社パラテックスジャパン (4)
【Fターム(参考)】