説明

膨化小豆およびその製造法

【課題】生小豆を水に浸漬して膨潤させた後、一度煮て、灰汁を抜くというような下ごしらえ作業を行うことなく、米と一緒に炊飯するだけで、粒が割れずに見栄えが良く、また明るい紫紺色をした小豆入りご飯を作ることができる粒状の膨化小豆を得る。
【解決手段】生小豆をゲージ圧力0.4〜0.65MPa、温度180〜210℃の過熱水蒸気で加圧加熱した後、大気圧下に放出して、かさ密度が700〜780g/Lである粒状の膨化小豆を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米と一緒に炊飯したときに粒が割れずに見栄えの良い小豆入りご飯ができる粒状の膨化小豆とその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
生小豆はそのまま米と一緒に炊くと小豆が充分に調理されずに、食味が悪くなってしまう。そのため、小豆入りご飯を作るには、小豆の下ごしらえ作業が必要である。その作業は、一般に生小豆を水に浸漬して膨潤させた後、一度煮て、灰汁を抜くというような作業で、手間がかかる。
従来、膨化小豆を得る手段として、原料生小豆をゲージ圧力4〜7kg/cmの範囲で、飽和蒸気温度よりも80〜130℃高い過熱水蒸気を用いて(すなわちゲージ圧力0.4〜0.7MPaの範囲で、232〜300℃の過熱水蒸気を用いて)、数秒間加圧加熱し、瞬時に常圧下に放出し、その際の水分の蒸発によって組織を中から破壊する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、従来法で得られる膨化小豆を、下ごしらえ作業を行うことなく、米と一緒に炊飯して小豆入りご飯を作ると、該膨化小豆は、粒が割れて、色も黒ずんだ紫紺色となり、見栄えの悪いものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−25678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、米と一緒に炊飯したときに粒が割れずに見栄えが良く、また明るい紫紺色をした小豆入りご飯ができる粒状の膨化小豆を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、生小豆を過熱水蒸気で加圧加熱した後、大気圧下に放出して得た、かさ密度700〜780g/Lの粒状の膨化小豆を用いることにより上記課題を解決できることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の膨化小豆およびその製造法である。
(1)生小豆を過熱水蒸気で加圧加熱した後、大気圧下に放出して得られるものであって、かさ密度が700〜780g/Lである粒状の膨化小豆。
(2)粒状の膨化小豆が、生小豆をゲージ圧力0.4〜0.65MPa、温度180〜210℃の過熱水蒸気で加圧加熱した後、大気圧下に放出して得たものである、前記(1)に記載の粒状の膨化小豆。
(3)粒状の膨化小豆が小豆入りご飯用である前記(1)または(2)に記載の粒状の膨化小豆。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小豆の粒が割れずに表面に亀裂がほとんど生じず、見栄えの良い、明るい紫紺色をした小豆入りご飯を作ることができる粒状の膨化小豆が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の膨化小豆およびその製造法について詳述する。
まず、生小豆を、過熱水蒸気で加圧加熱した後、大気圧下に放出して粒状の膨化小豆を得る。
【0009】
処理手段としては、回分式、連続式のいずれを用いてもよいが、連続式は効率がよいので好ましい。この装置としては、例えば、特公昭46−34747号公報に記載された、気流加熱方式による膨化食品製造方法および装置が挙げられる。
【0010】
粒状の膨化小豆を得るための過熱水蒸気による加圧加熱条件としては、圧力0.4〜0.65MPa(ゲージ圧)、温度180〜210℃、処理時間2〜10秒が必要である。
【0011】
本発明において、この条件を採用することは極めて重要であって、すなわち、それぞれ圧力、温度が低すぎたり、処理時間が短すぎると、小豆入りご飯としたときに小豆が硬すぎて食感が悪くなる。反対にそれぞれ圧力、温度が高すぎたり、処理時間が長すぎると小豆の粒が割れたり表面に亀裂が生じて外観が悪くなり、食感が軟らかすぎ、また、色も黒ずんだ紫紺色となるので好ましくない。
【0012】
本発明において、粒状の膨化小豆のかさ密度は、小豆を1リットル(L)容メスシリンダーに入れ、軽くたたいて、かさが変化しなくなるまで充填した後、重量を測定して、容積あたりの重量を算出したものをいう。
【0013】
粒状の膨化小豆のかさ密度は、過熱水蒸気による加圧加熱時の圧力と温度を調節することにより調整することができる。かさ密度を指標とすることで、膨化小豆が小豆入りご飯に適したものかを判断することができる。
本発明において、粒状の膨化小豆のかさ密度は極めて重要で、好ましくは700g〜780g/Lである。かさ密度が700g/L未満では、粒状の膨化小豆の表面に亀裂が生じ、小豆の色が黒ずんだ紫紺色に変わり、外観が悪くなる。また、780g/Lを超えると小豆入りご飯にしたときに食感が硬くなり食味が悪くなってしまう。
【0014】
このようにして得られる粒状の膨化小豆は、水浸漬などの下ごしらえ作業を行うことなく米と一緒に炊くことが可能である特徴を有し、小豆入りご飯用の小豆として好適なものである。よって、通常の小豆入りご飯の調理法での下ごしらえ作業を行なわなくても、米と一緒に炊飯するだけで、良好な食感を有し、小豆の粒が割れずに表面に亀裂がほとんど生じない、また、明るい紫紺色を呈した、見栄えの良い小豆入りご飯ができる。
【0015】
本発明の小豆入りご飯は、粒状の膨化小豆を米と一緒に炊いたものであればよく、米は粳米でも糯米でもよい。また、精米度合いは一般的な精白米、5分つきや玄米などのいずれでもよい。さらに、雑穀ごはんとして、他の穀類、大麦、はと麦、黒豆、きび、あわ、ひえ、もち麦、キヌア、赤米、緑米、黒米、アマランサス、とうもろこし、黒ゴマ、白ゴマ、玄米、たかきびなどと一緒に炊飯してもよい。
【0016】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0017】
(小豆の膨化処理)
生小豆(かさ密度886g/L)を気流加熱方式による膨化食品製造装置(特公昭46−34747号公報に記載)を用いて、細長い流路内を高速で流れる、過熱水蒸気の流れに3秒間流動させながら、表1記載の圧力および処理温度で、加圧加熱し、加熱された小豆を過熱水蒸気の流れから分離して捕集し、その補集された小豆を大気圧下に放出して膨化させ、表1記載のかさ密度を有する粒状の膨化小豆を得た。
【0018】
(表1)

【実施例2】
【0019】
(粒状の膨化小豆を使用した小豆入りご飯の調理)
白米(無洗米)150gに水を白米の1.5倍である225g加えた後、さらに上記実施例1で得られた粒状の膨化小豆15gと水15gを加え、炊飯器(シャープ社製KS−K102型5.5合炊き)を使用して常法に従って炊飯し、小豆入りご飯を得た。
【0020】
(小豆入りご飯の評価)
小豆入りご飯の該小豆における粒の割れ、色、食味について、実際に喫食して評価した。表2に粒状の膨化小豆のかさ密度、およびその膨化小豆を使用して炊飯した小豆入りご飯の該小豆の外観と食味の評価を示す。
【0021】
(表2)

【0022】
表2の結果から、かさ密度が700g/L未満の比較例1(かさ密度662g/L)の粒状の膨化小豆は、粒の割れが少しあり、色も黒ずんだ紫紺色となり、見栄えが悪いことがわかる。かさ密度が780g/Lを超える比較例2(かさ密度785g/L)の粒状の膨化小豆は、外観は良いものの、生煮えであり食味が悪いことがわかる。これに対し、かさ密度が700〜780g/Lである本発明1、2および3(かさ密度707、746および773g/L)の粒状の膨化小豆は、粒が割れず、明るい紫紺色をして見栄えが良く、食味が良好であることがわかる。また、本発明によれば、生小豆を水に浸漬して膨潤させた後、一度煮て、灰汁を抜くというような下ごしらえ作業を行うことなく、米と一緒に炊飯するだけで、良好な食感を有し、小豆の粒が割れずに表面に亀裂がほとんど生じない、明るい紫紺色を呈した、見栄えの良い小豆入りご飯ができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生小豆を過熱水蒸気で加圧加熱した後、大気圧下に放出して得られるものであって、かさ密度が700〜780g/Lである粒状の膨化小豆。
【請求項2】
粒状の膨化小豆が、生小豆をゲージ圧力0.4〜0.65MPa、温度180〜210℃の過熱水蒸気で加圧加熱した後、大気圧下に放出して得たものである、請求項1に記載の粒状の膨化小豆。
【請求項3】
粒状の膨化小豆が小豆入りご飯用である請求項1または2に記載の粒状の膨化小豆。