説明

膨化菓子の製造方法及び膨化菓子の製造装置

【課題】膨化菓子の生産性を向上させる製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】搬送コンベアにより送られる生地を、予熱用加熱手段により予熱用の第1出力にて加熱する予熱工程55と、搬送コンベアにより送られる生地を、膨化用加熱手段により膨化用の第2出力にて加熱して膨化させる膨化工程20,22と、搬送コンベアにより送られる生地を、焼き上げ用加熱手段により焼き上げ用の第3出力にて加熱することにより生地を焼き上げる焼き上げ工程27,29とを含む膨化菓子の製造方法であって、前記焼き上げ用加熱手段のうち、搬送方向の先頭に配置された一ブロックの焼き上げ用加熱手段を、前記第3出力から前記第2出力に切り換えて膨化用として用いることにより、膨化用の加熱時間を前記膨化用加熱手段だけを用いて生地を膨化させる場合に比べて増加調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨化菓子の製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
せんべいや、あられなどの米菓に代表される膨化菓子の製造工程は、通常、予熱工程、膨化工程(通常、浮き工程と称される)、焼き目付け工程から構成されている。予熱工程は、生地全体を温める工程である。膨化工程(浮き工程と称されることがある)は、予熱工程で加熱した生地を更に加熱して、生地に含まれる水分を一気に蒸発させることにより生地を膨らませる工程である。焼き目付け工程は、膨化した生地を更に加熱して、膨化した生地の中心部に残る水分を蒸発させつつ生地表面に焼き目を付ける工程である。尚、米菓の製造に使用される焼成装置の一例に下記特許文献のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−161278公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、米菓など膨化菓子の食感は、生地の膨らみ加減や、表面の硬さに左右されることが知られており、良好な食感を得るには、生地を膨らみ加減や表面の硬さを管理する必要がある。すなわち、生地は水分量や厚みにばらつきがあることから、そのような生地の水分量や厚みのばらつきにより、食感が不均一にならないように、生地を膨化させるための加熱時間を調整する必要がある。
【0005】
現状では、加熱時間の調整を、生地を搬送するコンベアの速度で調整していることから、加熱時間を長めに調整する際には、コンベアの搬送速度を遅くすることとなり、膨化菓子の生産性が低下する結果となっていた。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、生産性を低下させることなく、膨化用の加熱時間を調整することが出来る技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の膨化菓子の製造方法は、搬送コンベアにより送られる生地を、予熱用加熱手段により予熱用の第1出力にて加熱する予熱工程と、前記予熱工程に続いて行われ、搬送コンベアにより送られる生地を、膨化用加熱手段により膨化用の第2出力にて加熱して膨化させる膨化工程と、前記膨化工程に続いて行われ、搬送コンベアにより送られる膨化した生地を、焼き上げ用加熱手段により、前記第2出力より小さい、焼き上げ用の第3出力にて加熱することにより、膨化した生地の中心部に残る水分を蒸発させて生地を焼き上げる焼き上げ工程と、を含む膨化菓子の製造方法であって、前記焼き上げ用加熱手段のうち、生地の搬送方向の先頭に配置された一ブロックの焼き上げ用加熱手段を、前記第3出力から前記第2出力に切り換えて膨化用として用いることにより、膨化用の加熱時間を、前記膨化用加熱手段だけを用いて生地を膨化させる場合に比べて、増加調整するところに特徴を有する。尚、ここでいう「出力」とは熱出力の大きさ、すなわち単位面積当たりの発熱量の大きさを意味する。
【0008】
この発明では、焼き上げ用加熱手段の先頭の一ブロックの出力の切り換えにより、膨化用の加熱時間を長くする。そのため、コンベアの搬送速度を下げる必要がなく、菓子の生産性を、従来に比べて向上させることが出来る。
【0009】
本発明の膨化菓子の製造装置は、生地を予熱用の第1出力にて加熱する予熱用加熱手段を有する予熱用焼成装置と、生地を膨化用の第2出力にて加熱する膨化用加熱手段を有する膨化用焼成装置と、前記第2出力より小さい、焼き上げ用の第3出力にて加熱する焼き上げ用加熱手段を有する焼き上げ用焼成装置と、前記予熱用焼成装置、前記膨化用焼成装置、前記焼き上げ用焼成装置に、生地を順送りする搬送コンベアとを備えた膨化菓子の製造装置であって、前記焼き上げ用加熱手段のうち、生地の搬送方向の先頭に配置された一ブロックの焼き上げ用加熱手段は、膨化用の第2出力と焼き上げ用の第3出力に切り換え可能であるところに特徴を有する。尚、ここでいう「出力」とは熱出力の大きさ、すなわち単位面積当たりの発熱量の大きさを意味する。
【0010】
この発明では、焼き上げ用加熱手段の先頭の一ブロックの出力の切り換えにより、膨化用の加熱時間を長くする。そのため、コンベアの搬送速度を下げる必要がなく、菓子の生産性を、従来に比べて向上させることが出来る。
【0011】
この発明の実施態様として以下の構成が好ましい。
・前記予熱用加熱手段は、予熱用の第1出力に対応した第一の密度で配置された複数のヒータであり、前記膨化用加熱手段は、膨化用の第2出力に対応した第二の密度で配置された複数のヒータであり、前記焼き上げ用加熱手段は、生地の搬送方向の先頭にあたる一ブロックにおいて膨化用の第2出力に対応した第二の密度で配置された複数のヒータと、それ以外のブロックにおいて焼き上げ用の第3出力に対応した第三の密度で配置された複数のヒータとを有してなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、膨化菓子の生産性を、従来に比べ向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態における米菓製造装置の平面図
【図2】米菓製造装置の側面図
【図3】各工程の出力の大小関係を示す図
【図4】予熱用焼成装置の構造を模式的に示す平面図
【図5】膨化用焼成装置の構造を模式的に示す平面図
【図6】色付用焼成装置の構造を模式的に示す平面図
【図7】各焼成装置に各工程を対応させた工程対応図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図7によって説明する。
1.米菓製造装置10の構造説明
【0015】
米菓製造装置(本発明の「膨化菓子の製造装置」に相当)10は、うるち米を原料とする米菓(一例として直径が4〜5センチ程度の薄い円盤型の米菓)を製造する装置であり、予熱用焼成装置20と、膨化用焼成装置30と、色付用焼成装置(本発明の「焼き上げ用焼成装置」の一例)40とを図1に示す左右方向に一列状に配置して製造ラインを構成している。尚、本米菓製造装置10では、米菓の生地を図1、図2に示す右手側から左手側に送る構成となっている。
【0016】
予熱用焼成装置20は製造ラインの先頭に配置されている。予熱用焼成装置20は、複数段(例えば12段)の予熱釜23を、製造ラインに沿って一列的に配置した構成となっている。各予熱釜23は同一構造となっていて、箱型の金属フレーム内において、搬送コンベア50の搬送面を挟むようにして、複数本のカーボンランプヒータHを上下に配置している。各カーボンランプヒータHは、装置の奥行き方向(図2参照)に軸を向けて複数本が横並び状に並んで配置されており、かつ上下に配置されたもの同士が対面するように配置されている。尚、図1、図2にて示すA範囲が予熱用焼成装置20に対応する。
【0017】
膨化用焼成装置30は、予熱用焼成装置20の後段に配置されている。膨化用焼成装置30は膨化釜33を1段備えている。膨化釜33は箱型の金属フレーム内において、搬送コンベア50の搬送面を挟むようにして、複数本のカーボンランプヒータHを上下に配置している。各カーボンランプヒータHは、装置の奥行き方向(図2参照)に軸を向けて複数本が横並び状に並んで配置されており、かつ上下に配置されたもの同士が対面するように配置されている。尚、図1、図2にて示すB範囲が膨化用焼成装置30に対応する。
【0018】
色付用焼成装置40は製造ラインの最終段に配置されている。色付用焼成装置40は、複数段(例えば6段)の色付釜(本発明の「焼き上げ用加熱手段」に相当)43を製造ラインに沿って一列的に配置した構成となっている。各色付釜43は同一構造となっていて、箱型の金属フレーム内において、搬送コンベア50の搬送面を挟むようにして、複数本のカーボンランプヒータHを上下に配置している。各カーボンランプヒータHは、装置の奥行き方向(図2参照)に軸を向けて複数本が横並び状に並んで配置されており、かつ上下に配置されたもの同士が対面するように配置されている。尚、図1、図2にて示すC範囲が色付用焼成装置40に対応する。そして、予熱釜23、膨化釜33、色付釜43の各カーボンライトヒータHは同一構造のものである。各カーボンランプヒータHは、ヒータ制御装置(図略)により出力を調整することが出来る。
【0019】
また、米菓製造装置10には、米菓の生地を搬送するため、搬送コンベア50が設けられている。搬送コンベア50は、下側搬送コンベア51と、上側搬送コンベア55とからなる。下側搬送コンベア51は、図1に示すように、予熱用焼成装置20、膨化用焼成装置30、色付用焼成装置40の全装置に渡っており、米菓製造装置10の前段に設けられた移乗装置5を介して供給される米菓の生地を、予熱用焼成装置20、膨化用焼成装置30、色付用焼成装置40に順々に搬送する構成となっている。
【0020】
また、上側搬送コンベア55は、図1に示すように、予熱用焼成装置20に対応する範囲には設けられておらず、膨化用焼成装置30と色付用焼成装置40の両装置に渡っている。上側搬送コンベア55は下側搬送コンベア51と上下に向かい合っていることから、両焼成装置30、40では、米菓の生地は2つの搬送コンベア51、55にて、上下に挟み込まれた状態で搬送されるようになっている。尚、下側搬送コンベア51と上側搬送コンベア55は、いずれも、米菓の生地を搬送する搬送面が、ネット状の金属網で形成されたネットコンベアとなっている。
【0021】
2.各焼成装置の出力とカーボンランプヒータHのヒータピッチ
予熱用焼成装置20は、搬送コンベア50を介して送られてくる米菓の生地全体をゆっくり加熱して、生地の温度を約70℃から約100℃にする役目を果たすものである(予熱工程)。膨化用焼成装置30は、予熱用焼成装置20にて約100℃まで加熱された生地を、短い時間で、更に約130℃まで加熱して、生地に含まれる水分を一気に蒸発させることにより生地を膨らませる役目を果たすものである(膨化工程)。そして、色付用焼成装置40は、膨化した生地を更に加熱して生地の中心部に残る水分を蒸発させて生地を焼き上げつつ、生地表面に焼き目を付ける役目を果たすものである(焼き目付け工程)。
【0022】
ここで、生地の予熱に必要となる予熱用焼成装置20の単位面積当たりの発熱量を第1出力、生地の膨化に必要となる膨化用焼成装置30の単位面積当たりの発熱量を第2出力、生地の焼き目付けに必要となる色付用焼成装置40の単位面積当たりの発熱量を第3出力とすると、図3にて示すように膨化に必要な第2出力が最も大きく、第1出力と第3出力は概ね同程度である。これは、生地を膨化させるには、生地を一気に加熱する必要があるからである。
【0023】
そして、予熱釜23、膨化釜33、色付釜43は上述した第1出力〜第3出力に対応して、カーボンランプヒータHを配置している。すなわち、予熱釜23では、第1出力に対応したやや広め目のピッチP1でカーボンランプヒータHを配置している(図4参照)。
【0024】
一方、膨化釜33では、3本のカーボンランプヒータHをひとまとまりにして、多段に配置している(図5参照)。3本のカーボンランプヒータHは、第2出力に対応した狭ピッチP2(P1>P2)で配置されている。この膨化釜33は、予熱釜23に対してカーボンランプヒータHが密に配置(すなわち、単位面積当たりのヒータ占有面積が大きく設定)されている。
【0025】
また、色付釜43では、生地の搬送方向の先頭に配置された色付釜43Fを除いて、予熱釜23と同様にやや広め目のピッチP1にてカーボンランプヒータHを配置している。一方、先頭の色付釜43Fでは、膨化釜33と同様に、3本のカーボンランプヒータHを1まとまりにして多段に配置しており、カーボンランプヒータHが密に配置されている。すなわち、第2出力に対応した狭ピッチP2でカーボンランプヒータHを配置している(図6参照)。尚、色付釜43Fが、本発明の「生地の搬送方向の先頭に配置された一ブロックの焼き上げ用加熱手段」に相当するものである。
【0026】
このように、先頭の色付釜43Fについて、カーボンランプヒータHを密に配置しているのは、第2出力と第3出力の双方を出力可能とするためである。すなわち、膨化釜33と同様に、3本のカーボンランプヒータHを1まとまりにして密に配置しておけば、3本1組のカーボンランプヒータHを使用することで第2出力が可能であり、カーボンランプヒータを間引いて使用することで第3出力が可能となる。また、予熱釜23におけるカーボンランプヒータHの配置密度、すなわちピッチP1での配置密度が本発明の「第一の密度」に対応し、膨化釜33におけるカーボンランプヒータHの配置密度、すなわちピッチP2での配置密度が本発明の「第二の密度」に対応する。また、色付釜(ただし先頭の色付釜43Fは除く)43におけるカーボンランプヒータHの配置密度、すなわちピッチP1での配置密度が本発明の「第三の密度」に対応する。
【0027】
3.米菓の製造工程
米菓は、以下説明するように予熱工程、膨化工程、焼き目付け工程(本発明の「焼き上げ工程」に相当)の3つの工程を順々に経て製造される。尚、予熱、膨化、焼き目付けには、それぞれ適したヒータ温があり、この実施形態では、予熱に対応してヒータ温を約750℃に設定し、膨化に対応してヒータ温を950℃に設定し、焼き目付けに対応してヒータ温を750℃に設定している。
【0028】
米菓の生地は、不図示のホイロにて蒸されて水分量を調整する前処理を行った後、移乗装置5を介して搬送コンベア50に載せ替えられ、予熱用焼成装置20に搬送される。
【0029】
ホイロにて前処理を行った米菓の生地は一例として、寸法が約58mm×50mm×t3.3mmで、重さが約6g/個であり、水分率は約11%である。
【0030】
ところで、前処理後の生地の厚みはロッド間でばらつきがあることが知られており、本製造工程は、生地の厚みのばらつきに応じて工程の一部を変えるようにしている。すなわち、平均値又はそれより薄い生地の場合と、ばらつきの範囲で生地が平均値より厚い場合とで、先頭に配置された色付釜43Fの出力を使い分けている。したがって、以下では、まず生地の厚みが平均値(一例としてt3.3)の場合の製造工程についてまず説明を行い、その後、ばらつきの範囲で生地が平均値より厚い場合(一例として、3.5mm)の製造工程について説明を行う。
【0031】
<生地の厚みが平均値(3.3mm)の時>
予熱用焼成装置20では、搬送される米菓の生地を、予熱釜23の全カーボンランプヒータHにより第1出力にて約70℃から約100℃に加熱する処理が行われる(予熱工程)。具体的には、ヒータ温が一例として約750℃になるように予熱釜23の全カーボンランプヒータHが出力調整され、米菓の生地が加熱される。そして、予熱用焼成装置20にて約100℃に加熱された米菓の生地は、次に搬送コンベア50により、膨化用焼成装置30に搬送される。
【0032】
膨化用焼成装置30では、予熱用焼成装置20にて約100℃まで加熱された生地を、膨化釜33の全カーボンランプヒータHにより、第2出力にて約130℃まで加熱して、生地に含まれる水分を一気に蒸発させることにより、生地を膨らませる処理が行われる(膨化工程)。具体的には、ヒータ温が一例として約950℃になるように膨化釜33の全カーボンランプヒータHが出力調整され、米菓の生地が加熱される。これにて、米菓の生地は概ね直径80mmの円盤形に膨化する。そして、膨化用焼成装置30にて膨化された米菓の生地は、次に搬送コンベア50により、色付用焼成装置40に搬送される。
【0033】
色付用焼成装置40では、膨化用焼成装置30にて加熱・膨化された生地を、色付釜43のカーボンランプヒータHにより、更に加熱する。具体的に説明すると、色付釜43のうち、先頭の色付釜43Fは一部のカーボンランプヒータHだけを使用、例えば、3本1組のカーボンランプヒータHのうち2本だけを使用して第3出力にて生地を加熱する。また、それ以外の色付釜43は、全カーボンランプヒータHを用いて第3出力にて生地を加熱する。尚、このとき、カーボンランプヒータHは、先頭の色付釜43Fを含む全体が、ヒータ温750℃になるように出力調整される。
【0034】
このように、色付用焼成装置40では、カーボンランプヒータHにより第3出力で生地を加熱して生地表面に焼き目を付ける処理が行われる(焼き目付け工程)。そして、焼き目付け工程を終了した米菓は、色付用焼成装置40より排出され、味付け工程などの次工程に必要に応じて搬送される。
【0035】
以上説明したように、生地の厚みが平均値の場合(平均値以下も同様)、予熱用焼成装置20にて予熱工程が行われ、膨化用焼成装置30にて膨化工程が行われ、色付用焼成装置40にて焼き目付け工程が行われる。
【0036】
そして、米菓の生地をこれら3つの焼成装置20、30、40に、順々に搬送する搬送コンベア50は一定速度Voにて駆動し、図7にて示すように、予熱用焼成装置20では一例として約55秒間生地の予熱が行われ、膨化用焼成装置30では一例として約20秒間生地の膨化が行われ、色付用焼成装置40では一例として29秒間生地の色付けが行われ、全工程で概ね104秒を要する。
【0037】
<ばらつきの範囲で生地が平均値より厚い場合(一例として3.5mmの場合)>
生地の厚みが平均値の場合と、ばらつきの範囲で平均値より厚い場合の相違点は、色付用焼成装置40に設けられた先頭に位置する色付釜43Fの使い方にある。すなわち、生地がばらつきの範囲で平均値より厚い場合、色付釜43Fの先頭部分では、3本1組の全カーボンランプヒータHを使用して膨化用の第2出力にて生地を加熱する。具体的には、3本1組となった先頭のヒータ43FFをヒータ温が一例として約950℃になるように出力調整して全3本のヒータで生地を加熱する。一方、先頭のヒータ43FF以外のヒータは、3本1組のカーボンランプヒータHのうち2本だけを使用して第3出力にて生地を加熱する。
【0038】
これにより、予熱用焼成装置20にて約100℃に加熱された米菓の生地は、膨化用焼成装置30に加えて、色付釜43Fの先頭部分のヒータ43FFでも第2出力で加熱されることになり、生地の厚みが平均値の場合に比べて、膨化工程が長時間行われる。具体的には、図7に示すように平均値の場合(t=3.3mm)、膨化工程は、約20秒間行われる。一方、ばらつきの範囲で生地が平均値より厚い場合(t=3.5mm)、膨化工程は約22秒行われる。また、膨化工程が通常に比べて2秒長くなった分、色付け工程の時間は約2秒短縮し27秒となる。尚、生地が平均値より厚い場合の搬送コンベア50の搬送速度は、通常時と同じく一定速度Voであり、生地が通常より厚いサイズの場合も、通常サイズの場合と同様に、全工程で概ね104秒を要する。
【0039】
尚、色付釜43Fの先頭に設置されたヒータ43FFの出力の切り換えは、手動又は自動のどちらで行ってもよい。すなわち、オペレータがその日に製造する生地の厚みを事前に測定して、ヒータ制御装置にて第2出力又は第3出力のいずれかの出力に切り換える方法や、生地の厚みをセンサなどを使用して検出し、検出結果に対応した出力となるようにヒータ制御装置にて第2出力、第3出力のいずれかを自動選択する方法が適用可能である。
【0040】
4.効果説明
生地が平均値より厚い場合、生地を膨化させる時間を通常に比べて長くしないと、膨化が不十分となり、良好な食感を得ることが出来ないという事情がある。従来は、このような場合、コンベア速度で下げることで、生地を膨化させる時間を長くしていたことから、生産性が低下する結果となっていた。この点、本実施形態では、先頭の色付釜43Fの先頭部分に配置された3本1組のヒータ43FFの出力調整により、生地を膨化させる時間を長くする。従って、搬送コンベア50の搬送速度を下げる必要がなく、米菓の生産性を従来に比べて向上させることが出来る。また生地が平均値より厚い場合、膨化工程が長くなる分だけ、焼き目付け工程が短くなる。しかし、焼き目付け工程は、生地の中心部に残る水分を蒸発させて生地を焼き上げつつ米菓の表面に焼き目を付けさえすればよく、食感にそれほど影響しないので、時間を短くしても影響はほとんどない。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(1)上記実施形態では、膨化菓子の一例として米菓を例示した。具体的には、寸法が約58mm×50mmの大判の米菓を例示した。米菓の形状は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、約30mm×21mmのサイズやそれ以外の大きさでもよい。また、本実施形態では、米菓の厚さを3.3mmにしたが、米菓の厚さは実施例で例示した厚さに限定されるものではなく、例えば、厚いサイズ(例えば、5〜7mm)や、薄いサイズ(例えば、1〜2mm)としてもよい。尚、予熱工程における予熱時間、膨化工程における膨化時間、焼き目付け工程における色付け時間は、これら形状や厚さの相違に応じて、それぞれ個別に設定することが好ましい。また、膨化菓子は米菓に限定されるものではなく、例えば、えびせんべい等であってもよい。
【0043】
(2)また、上記実施形態では、色付釜43Fのうち先頭のヒータ43FFだけを、米菓の厚みの相違に対応して第2出力と第3出力との間で切り換えるようにした。このようにしたのは、調整に必要な時間が2秒と短かったためである。例えば、4秒や6秒の調整が必要な場合には、先頭の色付釜43Fのうち残るヒータ43についても第2出力と第3出力との間で切り換えるようにするとよい。
【0044】
(3)また、上記実施形態では、色付釜43Fの先頭のヒータ43FFの出力切り換え(第2出力と第3出力との間の切り換え)を、生地の厚みの相違に応じて行った例を示したが、生地の水分量の相違に応じて行ってもよい。
【0045】
(4)上記実施形態では、生地を加熱する加熱手段にカーボンランプヒータHを用いたが、加熱手段はカーボンランプヒータHに限定されるものではなく、例えば、ガス式のバーナを使用してもよい。
【0046】
(5)上記実施形態では、米菓の製造方法として、予熱工程、膨化工程、焼き目付け工程の3つの工程を順々に行い、米菓を膨化させつつ焼き目を付ける例を示した。米菓に対して焼き目を付ける必要は必ずしもなく、焼き目付け工程で、生地の中心部に残った水分のみ蒸発させて、焼き目を付けないように生地を焼き上げるようにしてもよい。すなわち、焼き目付け工程を、白焼き工程(本発明の「焼き上げ工程」の一例)としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…米菓製造装置(本発明の「膨化菓子の製造装置」に相当)
20…予熱用焼成装置
23…予熱釜(本発明の「予熱用加熱手段」に相当)
30…膨化用焼成装置
33…膨化釜(本発明の「膨化用加熱手段」に相当)
40…色付用焼成装置(本発明の「焼き上げ用焼成装置」に相当)
43…色付釜(本発明の「焼き上げ用加熱手段」に相当)
H…カーボンランプヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送コンベアにより送られる生地を、予熱用加熱手段により予熱用の第1出力にて加熱する予熱工程と、
前記予熱工程に続いて行われ、搬送コンベアにより送られる生地を、膨化用加熱手段により膨化用の第2出力にて加熱して膨化させる膨化工程と、
前記膨化工程に続いて行われ、搬送コンベアにより送られる膨化した生地を、焼き上げ用加熱手段により、前記第2出力より小さい、焼き上げ用の第3出力にて加熱することにより、膨化した生地の中心部に残る水分を蒸発させて生地を焼き上げる焼き上げ工程と、を含む膨化菓子の製造方法であって、
前記焼き上げ用加熱手段のうち、生地の搬送方向の先頭に配置された一ブロックの焼き上げ用加熱手段を、前記第3出力から前記第2出力に切り換えて膨化用として用いることにより、膨化用の加熱時間を、前記膨化用加熱手段だけを用いて生地を膨化させる場合に比べて、増加調整することを特徴とする膨化菓子の製造方法。
【請求項2】
生地を予熱用の第1出力にて加熱する予熱用加熱手段を有する予熱用焼成装置と、
生地を膨化用の第2出力にて加熱する膨化用加熱手段を有する膨化用焼成装置と、
前記第2出力より小さい、焼き上げ用の第3出力にて加熱する焼き上げ用加熱手段を有する焼き上げ用焼成装置と、
前記予熱用焼成装置、前記膨化用焼成装置、前記焼き上げ用焼成装置に、生地を順送りする搬送コンベアとを備えた膨化菓子の製造装置であって、
前記焼き上げ用加熱手段のうち、生地の搬送方向の先頭に配置された一ブロックの焼き上げ用加熱手段は、膨化用の第2出力と焼き上げ用の第3出力に切り換え可能であることを特徴とする膨化菓子の製造装置。
【請求項3】
前記予熱用加熱手段は、予熱用の第1出力に対応した第一の密度で配置された複数のヒータであり、
前記膨化用加熱手段は、膨化用の第2出力に対応した第二の密度で配置された複数のヒータであり、
前記焼き上げ用加熱手段は、生地の搬送方向の先頭にあたる一ブロックにおいて膨化用の第2出力に対応した第二の密度で配置された複数のヒータと、それ以外のブロックにおいて焼き上げ用の第3出力に対応した第三の密度で配置された複数のヒータとを有してなる請求項2に記載の膨化菓子の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate