説明

膨張性の発熱性ゲル形成組成物

本発明は、主に消費者製品および医療産業に有用な、膨張性の発熱性ゲル形成組成物の分野に属する。より詳細には、本発明は、電気または可燃燃料を必要とせずに表面および物体を加熱するための、熱生成が効率的で長続きする、膨張性の粒子状の発熱性ゲル形成組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Exothermic Gel with Long Lasting Heat Formation」という発明の名称で2009年7月26日に出願された米国仮特許出願第61/228,594号;および「Expandable Exothermic Gel−Forming Compositions」という発明の名称で2010年3月19日に出願された同第61/315,807号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、主に消費者製品および医療産業に有用な、膨張性の発熱性ゲル形成組成物の分野に属する。より詳細には、本発明は、電気または可燃燃料を必要とせずに表面および物体を加熱するための、熱生成が効率的で長続きする、膨張性の粒子状の発熱性ゲル形成組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
電気または可燃燃料を使用せずに「その場で」熱を生成できることが、多種多様な用途において望まれている。化粧品産業において、様々な化粧品を皮膚および頭皮に塗布するために、熱が必要とされる。医学界において、熱を加えることは、理学療法、整形外科、創傷治癒、関節炎の治療などの際に重要である。消費者製品においては、他の加熱手段が不便であるかまたは利用できないとき、食品および他の物質を初めに加熱するだけでなく、それらを保温できることが必要とされる。
【0004】
このような用途における発熱化学反応の有用性が記載されてきた。例えば、軍隊は、少なくとも1973年以来、戦場において食料を加熱するための「無炎加熱装置(flameless heating device)」(FDE)を使用してきた。このFDEは、マグネシウムアノード、炭素電極および電解質塩からなる「高温シート」の形態であった。最近になって軍隊は、半固体のポリエチレンマトリックスに取り込まれたマグネシウム−鉄アロイ粒子から構成される化学的加熱パッドを用いる、自給式/取り外し式の(dismounted)食料加熱装置(DRHD)を開発した(米国特許第4,522,190号明細書)。
【0005】
熱を生成するために金属アロイ粒子を用いる他の例として、化粧品産業において、吸収材料としての紙をベースとする「フラフ(fluff)」とともに使用することが記載されてきた。しかしながら、このようなシステムは、エネルギー潜在力が比較的低いため、短期間の発熱反応、ならびに不均一な加熱を呈する。
【発明の概要】
【0006】
したがって、均一で、制御可能でかつ長続きし、便利な形式で熱を生成するのに使用可能な組成物が必要とされている。
【0007】
以下は、権利請求される主題のいくつかの態様の基本的な理解を与えるための、簡略化された概要(サマリー)を示す。この概要は、広範な概説ではないし、主な/重要な要素を特定し、または権利請求される主題の範囲を規定するものでもない。概要の目的は、後に示されるより詳細な説明への前置きとして、簡略化された形態でいくつかの概念を示すことである。
【0008】
一実施形態において、本発明は、高吸水性ポリマー(Super AbsorbentPolymer,SAP)と混合されたガルバニックアロイ粒子(galvanic alloy particle)を含む、膨張性の発熱性粒子状ゲル形成組成物に関し、該ゲルは少なくとも2倍(体積/体積)に膨張し、水性液体および塩に曝されると、少なくとも1時間にわたり熱を生成する。
【0009】
塩は、水性液体中に存在してもよく、またはゲル形成組成物に組み込まれてもよく、その場合、塩をゲル形成組成物と接触させると塩は水性液体に溶解し、こうして塩をガルバニックアロイ粒子およびSAPに触れさせる。
【0010】
一実施形態において、電解質は、塩化カリウム、塩化ナトリウムもしくは塩化カルシウム、またはそれらの混合物を含む。
【0011】
ガルバニックアロイ粒子は、マグネシウムおよび鉄を含み得る。
【0012】
さらに、この組成物は、任意選択的にバインダーおよび/または封入材(encapsulant)を含み得る。
【0013】
SAPとして、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムを用いることができる。
【0014】
膨張性組成物は、水などの水溶液と接触すると、例えば、2倍、5倍あるいは10倍(体積/体積)にまで膨張し得る。
【0015】
一つの例示的実施形態において、ゲル形成組成物は、乾燥重量の出発グラム当たり400グラムを超える湿重量の吸収能を有する。
【0016】
この組成物は、ガルバニックアロイ粒子から形成することができ、このガルバニックアロイ粒子は、2〜20重量%の鉄と80〜98重量%のマグネシウムとの混合物から形成される。さらに、この組成物は、ガルバニックアロイ粒子と高吸水性ポリマーを20:1〜5:1の重量比で混合することによって形成することができる。
【0017】
別の実施形態において、ガルバニックアロイ粒子は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのポリマーによってマイクロカプセル化される(microencapsulated)。
【0018】
この組成物は、水性の活性剤溶液とともに、キットの一部でもあり得る。このようなキットにおいて、電解質は、発熱性粒子状ゲル形成組成物または水性の活性剤溶液のいずれかに含まれる。
【0019】
本発明の他の態様は、本明細書の全体を通して見いだされる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、主に消費者製品および医療産業に有用な、膨張性の発熱性ゲル形成組成物の分野に属する。より詳細には、本発明は、電気または可燃燃料を必要とせずに表面および物体を加熱するための、熱生成が長続きし且つ効率的な、膨張性の粒子状の発熱性ゲル形成組成物の使用に関する。
【0021】
本発明の発熱性ゲル形成組成物は、一般に、高吸水性ポリマーと混合されたガルバニックアロイ粒子から形成される。一実施形態において、ガルバニックアロイ粒子および/または粒子状ゲル形成組成物は、発熱反応を制御するために、ある程度の量の成分がカプセル化されるように、さらに処理される。ゲル形成組成物は、水性の電解質溶液などの活性剤溶液と接触すると活性化される。ガルバニックアロイ粒子は、一般に、異なる酸化電位を有する2種の金属剤からなり、ゲル形成組成物または活性剤溶液のいずれかは、少なくとも1つの電解質も含む。
【0022】
ガルバニックアロイ粒子
本発明のアロイ(合金)粒子は、一般に、各々が異なる酸化電位を有する2種以上の金属剤の混合物からなり、組成物の2種の成分が活性剤溶液を介して互いに電気的に接触すると、電気化学反応において一方がカソードとして働き、他方がアノードとして働くようになっている。
【0023】
本発明に使用するための例示的な金属剤としては、銅、ニッケル、パラジウム、銀、金、白金、炭素、コバルト、アルミニウム、リチウム、鉄、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、マグネシウム、MgNi、MgNi、MgCa、MgCa、MgCO、およびそれらを組合せた混合物が挙げられる。例えば、白金が炭素上に分散されてなる分散体を、カソード材料として使用することができる。米国特許第3,469,085号明細書;同第4,264,362号明細書;同第4,487,817号明細書;および同第5,506,069号明細書を参照されたい。
【0024】
例示的なアノード材料はマグネシウムであり、マグネシウムは水と反応して、水酸化マグネシウム(Mg(OH))および水素ガスを形成し、大量の熱を生成する。高い標準酸化電位を有する他の金属剤(リチウムなど)もアノード材料として働き得るが、コストおよび安全性の観点からあまり好ましくない。カソード材料は、アノード材料より低い標準酸化電位を有するであろう。電気化学的相互作用の際にカソードは消費されないが、アノードの腐食によって放出される電子のための部位として働き、電解質中の正電荷のイオンを中和する。例示的なカソード材料としては、鉄、銅およびコバルトが挙げられる。
【0025】
ガルバニックアロイの製造には、従来の溶解または機械的合金化など、通常のいずれの方法でも用いることができる。機械的合金化の方法は、高エネルギーボールミルを用いて、ボール−粉体−ボールの衝突により生じる機械的変形を繰り返すことで、初期の粉体混合物の成分間で固相反応を引き起こすことを含む。このような機械的変形は、例えば、金属成分すなわち活性金属粒子および不動態化金属粒子に対し繰り返し行われる平坦化、破砕、および溶接を含むことができる。鋼球間に捕捉された粒子と鋼球とが衝突する衝撃から生じる、得られるエネルギーにより、原子的に清浄な粒子表面が形成される。これらの原子的に清浄な粒子表面は、互いの冷間溶接をもたらす。
【0026】
ミリング前の金属成分の粒径は、数マイクロメートル〜数百マイクロメートルの範囲で幅を持つことができる。一実施形態において、効率的な合金化を促進するために、200マイクロメートル未満の平均粒径、たとえば100〜150マイクロメートルなど、を有するのが望ましいであろう。
【0027】
酸素または特定の他の反応性化合物への曝露により、冷間溶接効果を低減するかまたは完全になくす表面層が生成される。したがって、清浄な表面の再酸化を防止し、それによってガルバニ電池反応を減少させる、粒子表面における酸化物被膜の形成を避けるために、ミルの中は通常、不活性雰囲気が保たれる。本明細書において用いられる「不活性ガス」は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどの非反応性ガスであり、非酸化性ガス、二酸化炭素も含む。不活性ガスは、水を実質的に含まないようにすべきである(10ppm未満、たとえば5ppm未満または1ppm未満など)。
【0028】
一般に、ミリングプロセスが長時間にわたって進行されると、粒子構造がより微細なものとなり、カソード粒子のサイズが減少する。しかしながら、ミリングプロセスのある時点を過ぎると、カソード材料がアノード材料全体の中に微細に分散されすぎるため、さらなるミリングは腐食速度の低下をもたらす。これが起こると、電解質との接触に利用可能なカソード/アノード粒子表面積の比率が低下するため、腐食速度が低下する。ミリングプロセスから得られる、機械的に合金化された粉末は、その全体にわたって分散された、より小さい不動態化金属粒子を含む活性金属マトリックスで構成される小粒子である。したがって、ミリング時間は、導電性に関して最良の結果が得られるように最適化されるべきである。一実施形態において、ガルバニックアロイ粒子は、マグネシウムおよびニッケル、マグネシウムおよび鉄、マグネシウムおよび銅、ならびにマグネシウムおよびコバルトから構成される(米国特許第4,264,362号明細書)。マグネシウム含有アロイにおいてマグネシウムは、通常、75重量%超、80重量%超、90重量%超または95重量%超などの、より多量に存在する。
【0029】
高吸水性ポリマー
本発明のゲル形成組成物は、「スラッシュパウダー」、「不水溶性吸収性ヒドロゲル形成ポリマー」、「ヒドロゲル形成」ポリマーまたは「親水コロイド」とも呼ばれる、高吸水性ポリマー(SAP)を含む。水溶液と組み合わせられたときに膨張したゲルが生成されるため、SAPの使用は重要である。この水性ゲルは、比熱容量が高いため、発熱反応によって生成される、かなりの量の熱を貯蔵することができる。このためゲルは、(ゲルなしで行われる発熱反応と比較して)比較的長時間にわたって熱いままであり、加熱される物体が比較的一定の高温に保たれ得る持続時間を長くする。さらに、ゲル形成組成物は膨張し、それによって外部の物体に熱を伝達するための、より大きな表面積が得られる。
【0030】
「高吸水性ポリマー」という用語は、水に曝されたときに乾燥ポリマー1グラム当たり200グラムまで膨張可能であることを意味する。一般に、SAPは、解離されたイオン性官能基を有する可撓性ポリマー鎖が緩く架橋された、三次元網目構造である。水などの特定の材料に対するSAPの吸収能は、浸透圧、その材料とのポリマーの親和性、ならびにポリマーのゴム弾性によって決まる。SAP内部のイオン濃度と、周囲の水溶液のイオン濃度との差によって、利用可能な浸透圧の強さが決まる。したがって、浸透圧により、SAPが大量の水を吸収できる。さらに、周囲の溶液に対する特定のポリマーの親和性も、ポリマーの吸収能に影響する。このためSAPは、周囲の浸透圧によるポリマーの吸収能およびポリマーの水に対する親和性に基づき、水素結合による水分子の溶媒化によって、溶解することなく大量の水および他の水溶液を吸収することができ、網目構造のエントロピーが上がり、SAPは大いに膨張する。
【0031】
これに対し、SAPの吸収力を抑制する要因は、その網目構造からもたらされるゲルの弾性に見出される。ポリマーの比ゴム弾性は、ポリマーの架橋密度とともに増大し、ある特定のSAPの吸収能は、そのゴム弾性がその吸水力との均衡を得ると、最大に達する。
【0032】
高吸水性ポリマーの例は:ポリアクリル酸塩ベースのポリマー、ビニルアルコール−アクリル酸塩ベースのポリマー、PVAベースのポリマーまたはイソブチレン−無水マレイン酸ポリマーである。SAPの他の例としては、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどの多糖類;ポリビニルアルコールおよびポリビニルエーテルなどの非イオン性タイプ;ポリビニルピリジン、ポリビニルモルホリノン、およびN,N−ジメチルアミノエチルもしくはN,N−ジエチルアミノプロピルアクリレートおよびメタクリレートなどの陽イオン性タイプ;ならびに加水分解デンプン−アクリロニトリルグラフトコポリマー、部分的に中和された加水分解デンプン−アクリロニトリルグラフトコポリマー、加水分解アクリロニトリルまたはアクリルアミドコポリマーおよびポリアクリル酸を含むカルボキシ基が挙げられる。
【0033】
高吸水性ポリマーを作製する方法はよく知られており、所望の膨潤性が達成されるように容易に最適化することができる。例えば、SAPは、開始剤の存在下で水酸化ナトリウムと混合されたアクリル酸を重合して、ポリアクリル酸のナトリウム塩(すなわち「ポリアクリル酸ナトリウム」)を形成することから作製できる。また、SAPを作製するのに用いられる他の材料は、ポリアクリルアミドコポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、架橋されたカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマーおよび架橋されたポリエチレンオキシドである。
【0034】
多くのタイプのSAPが市販されているが、ほとんどは、アクリレートとアクリル酸との少し架橋されたコポリマー、ならびに逆相懸濁重合、乳化重合または溶液重合によって調製されるグラフト化デンプン−アクリル酸ポリマーである。逆相懸濁重合は、一般に、ポリアクリルアミドベースのSAPを調製するのに用いられ、非溶媒中にモノマー溶液を分散させて細かいモノマー液滴を形成し、この液滴に安定剤が添加されることを含む。次に、開始剤の熱分解からのラジカルによって重合が開始される。
【0035】
特に好適であることが分かっている高吸水性ポリマーとしては、例えば、住友精化株式会社(日本、大阪)製造のアクアキープ(登録商標)高吸水性ポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、即効型のアクアキープ(登録商標)としてアクアキープ(登録商標)10SH−Pが好適であることが分かっている。さらなる市販品のポリマーとして、Stockhausen Inc.(Greensboro、NC)から入手可能なCABLOC 80HS;Emerging Technologies,Inc.(Greensboro、NC)から入手可能なLIQUIBLOCK(登録商標)2G−40;Hoechst Celanese Corporation(Bridgewater、NJ)から入手可能なSANWET IM1000F;株式会社日本触媒(日本、大阪)から入手可能なアクアリックCA;および住友化学株式会社(日本)から入手可能なスミカゲルである。さらなるSAPは、Dow Chemical(Midland、Mich.)およびChemdal(Arlington Heights,Ill.)などのいくつかのメーカーからも市販されている。上記のSAPのいずれも、ポリマーの大部分(50%超、好ましくは70%超(重量/重量))が1グラム当たり200グラム以上の吸収能を有する限り、2種以上のポリマーのブレンドとして含まれ得る。
【0036】
吸収測定は、ティーバッグ法(tea−bag method)、遠心分離法およびふるい法を含むいくつかの方法で行うことができる。ティーバッグ法によれば、試料を約5×5cmの袋に入れ、袋の周囲を封止する。次いで袋を、過剰の水または0.9%NaCl溶液のいずれかを入れた皿に入れ、試料に溶液を吸収させ、袋の中で1時間または試料が平衡に達するまで自由に膨潤させる。その後、袋を取り出して、過剰溶液から試料を分離し、秤量して、膨潤容量を計算する。そして、ポリマー試料の吸収能を、下式にしたがって計算することができる。
【数1】

上記式中:Aは試料の吸収度であり;Aはティーバッグ材料の吸収度であり;mは吸収後の試料を含むティーバッグの重量であり;mは空の乾燥ティーバッグの重量であり;mは乾燥試料の重量である。
【0037】
一実施形態において、SAP(または、2種以上のブレンドが用いられる場合にはSAPの少なくとも大部分)は、少なくとも200g/gの吸収能を有し、1gのSAPは、200gまでの水を吸収することができる。
【0038】
別の実施形態において、SAPは、20秒以下、より好ましくは10秒以下または5秒以下の吸収速度を有する「即効性ポリマー」または「FAP」でもある。これらの秒単位の吸水速度は、通常、様々なSAPのメーカーの規格に含まれる。
【0039】
任意選択のバインダー
ゲル形成組成物は、SAPに加えて、ポリマーまたはプラスチックなどの少なくとも1種のバインダーを任意選択的に含む。例示的なバインダーとしては、天然樹脂、合成樹脂、ゼラチン、ゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリ(ビニルアセタール)(例えば、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)、ポリ(ウレタン)、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)、ポリ(カーボネート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(オレフィン)、セルロースエステル、およびポリ(アミド)が挙げられる。バインダーは、水または有機溶媒に溶解させた溶液またはエマルジョンとしてゲル形成組成物に添加され、公知の方法を用いて一緒に混合され得る。
【0040】
任意選択のカプセル化
発熱反応を制御し、発熱ゲルが高温に保たれる時間を延長するための1つの手法は、ガルバニックアロイ粒子またはゲル形成組成物をカプセル化して、保存期間を延長し、かつ活性化溶液に曝されたときのエネルギーの放出を制御することである。
【0041】
本明細書において用いられる「カプセル化」は、封入材料が粒子の表面に付着されるように、ガルバニックアロイ粒子またはゲル形成組成物の少なくとも一部が好適な封入材料に実質的に包まれることを意味する。
【0042】
本明細書において用いられる「好適な封入材料」または「封入材」とは、ゲル形成組成物の配合条件および製造条件に耐えるほど十分に強固な材料であって、配合物と適合し、その性能に悪影響を与えないことを意味する。ただし、熱生成の延長は、悪影響ではない。さらに、好適な封入材料は組成物に付着する。封入材の付着は、化学共有結合によって、または非共有結合性相互作用(例えば、イオン相互作用、ファンデルワールス相互作用、双極子間相互作用など)によって起こり得る。
【0043】
本明細書において用いられる「マイクロカプセル化された」は、封入された成分の平均直径が約1μm〜約1000μmであることを意味する。封入された成分が楕円形または非対称である場合、平均直径は、成分の最大長さを有する部分で測定される。
【0044】
一実施形態において、組成物はマイクロカプセル化され、カプセル化された生成物は、約1μm〜約1000μm、あるいは約1μm〜約120μm、あるいは約1μm〜約50μm、あるいは約1μm〜約25μmの平均直径を有する。別の実施形態において、封入された生成物は、約100μm〜約800μm、または約500μm〜約700μm(600μmなど)の平均直径を有する。
【0045】
好適な封入材料の非限定的な例としては、ポリスチレン、メタクリレート、ポリアミド、ナイロン、ポリ尿素、ポリウレタン、ゼラチン、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリスチレン、およびエチルセルロース分解性ポリマーマトリックスが挙げられる。一実施形態において、封入材料は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)、ポリ(グリシジルメタクリレート)(PGMA)、ポリスチレン、またはそれらの組合せである。代替的な実施形態において、封入材は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。好適な封入材料は、約5kDa〜約250kDa、あるいは約200kDa〜約250kDa、あるいは約50kDa〜約75kDa、あるいは約10kDa〜約50kDa、あるいは約10kDa〜約25kDaの分子量を有することができる。
【0046】
アロイ成分のいずれかまたは全て(すなわち、カソードおよびアノードの両方)、カソードおよび/またはアノードのいずれかを別個に、バインダーを用いてまたは用いずにカプセル化することができることも理解されたい。様々な成分の被膜の異なる組合せを用い、公知の封入技術を用いた通常の最適化によって、組成物の用途に基づいて、理想的な封入形式を決定することができる。例えば、長期間の治療効果を得ることを目的としたボディラップ(body wrap)については、熱生成期間を延長するために溶解性の低い被膜が望ましいであろう。あるいは、薬剤の投与には、より短い期間にわたってより高い温度を得るために、溶解性の高い被膜が望ましいであろう。
【0047】
上記の被膜の化学的特性、ならびに、ナノテクノロジー、エネルギー材料および医療分野などの様々な分野へのそれらの使用はよく知られており、このような最適化は、この膨大な知識に基づいて容易に達成され得る。
【0048】
製造方法
ゲル形成組成物は、ドラムミキサー、ブラウン(braun)ミキサー、リボンブレンダー、ブレードブレンダー、V形ブレンダー、バッチ式ミキサーなどの様々な市販のミキサーおよびブレンダーのいずれかを用いて、SAPとガルバニックアロイ粒子との混合物から調製することができる。好ましいブレンダーは、ガルバニックアロイ粒子または高吸水性ポリマーを過度にせん断しないものである。用いられる機器のタイプに応じて、2種の主成分および何らかの任意選択の成分が、連続してまたは同時に混合容器に添加され、均一に混合された生成物が形成されるまで混合が行われる。
【0049】
粒子状ゲル形成組成物は、膨張の体積および速度、ならびに熱の生成および保持を測定することによって検査される。粒子状ゲル形成組成物は、(体積/体積で)少なくとも2倍、好ましくは5倍、あるいは10倍にまで膨張した場合、最適であるとみなされる。少なくとも110°Fの温度を達成し、少なくとも105°Fの温度を1時間保つことが可能である場合、「効率的」であるとみなされる。
【0050】
活性化溶液
本発明の活性化溶液は、一般に、水などの水溶液である。ゲル形成組成物または活性化溶液のいずれかが、発熱反応を開始させるのに必要な少なくとも1種の電解質を含有することに留意することも重要である。本明細書に用いられる「電解質」という用語は、導電性の自由イオンを含有する物質を意味する。電解質溶液は、通常、イオン溶液であり、酸、塩基または塩の溶液として一般的に存在する。塩は、水などの水性溶媒に入れられると、その構成要素に解離する。好ましい電解質の例としては、塩化カリウム、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムが挙げられる。
【0051】
使用
本発明のゲル形成組成物は、水和されたときに膨張するゲルマトリックスを形成し、エネルギー放出とエネルギー管理との間のバランスを作り出すために有用である。これは、SAPとガルバニックアロイ粒子との一種の共生関係によってもたらされる。ゲル化可能な粒子状物質は、水を非常に速く吸収し、アロイの反応可能性を抑える。その後、水分がゲル成分からアロイ成分へと移行されるにつれて、制御された反応が起きる。この反応により、熱および水素ガスが放出され、アロイの酸化物が生成される。この熱はゲルに戻され、ゲルは、熱を空気中に逃がさずに蓄える。この相乗的な蓄熱および分配システムは、医療、治療および美容処置などの商業用途に有益な効果をもたらす。ゲル形成粒子は、水和されると膨張するため、いくつもの異なる装置のいずれかに組み込むことができ、膨潤すると求められた場所で膨張し、それを用いて発熱ゲルの均一な覆いを生成し、それによって表面積の接触を最大にし、不均一な熱の領域をなくすことができる。
【実施例】
【0052】
以下に続く実施例において、重量比、混合時間などの条件は、特定の使用目的のために容易に最適化され得る。例えば、飲料加温カップなどの消費者製品においては、皮膚に接触することを意図した医療用品向けの温度よりも高い温度を達成する組成物を製造することが望ましいであろう。
【0053】
実施例1
ガルバニックアロイ粒子
一実施形態において、密閉したボールミル中で、2〜20重量%の鉄と80〜98重量%のマグネシウムとを一緒に混合することによって、マグネシウム−鉄粒子を調製する。ミリングの前に不活性乾燥ガスを用いて空気を抜く。生成物が均一になるまで、室温または室温に近い温度(例えば、15〜50℃)でミリングを続ける。
【0054】
主に水蒸気の放出による重量の減少を測定することによって、食塩水(例えば、0.5〜10%の塩化ナトリウム)と接触させた際の、ガルバニックアロイ生成物の反応能力を検査する。
【0055】
実施例2
ゲル形成組成物
20:1〜5:1のガルバニックアロイ粒子対高吸水性ポリマーの重量比で、上述したガルバニックアロイ粒子を高吸水性ポリマーと混合する。塩化ナトリウムなどの電解質を、例えば、0.05〜10%の重量パーセントで混合物に添加する。電解質は発熱反応の触媒であるため、この割合がより高いと、より低い割合よりも高い温度が得られるであろう。
【0056】
混合物を好適な混合装置の中に入れ、均一になるまで混合する。
【0057】
実施例3
ゲル形成組成物の性能
実施例2の所与の重量の粒子状ゲル形成組成物を、重さを量った(tared)ビーカーに入れ、ビーカーを、125°Fなどの一定の温度の水浴に入れる。所与の体積の水溶液(例えば、水)をビーカーに添加する。ビーカー中の組成物の温度を1時間モニターし、例えば5分ごとの間隔で記録する。
【0058】
組成物が少なくとも110°Fの温度に達し、少なくとも105°Fの温度を1時間保った場合、その組成物を合格(acceptable)とみなす。
【0059】
本発明の性質を説明するために本明細書に記載され、例示された詳細、材料、工程および部品配置の多くのさらなる変更が、添付の特許請求の範囲に表される本発明の原理および範囲内で、当業者によってなされ得ることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸水性ポリマーと混合されたガルバニックアロイ粒子を含む、膨張性の発熱性粒子状ゲル形成組成物であって;
前記ゲル形成組成物が、少なくとも2倍(体積/体積)に膨張し、水および電解質に曝されると少なくとも1時間にわたり熱を生成する組成物。
【請求項2】
前記発熱性粒子状ゲル形成組成物が、電解質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記電解質が、塩化カリウム、塩化ナトリウムまたは塩化カルシウムを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ガルバニックアロイ粒子が、マグネシウムおよび鉄を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記発熱性粒子状ゲル形成組成物が、少なくとも1種のバインダーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記高吸水性ポリマーが、ナトリウムポリアクリルアミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ゲル形成組成物が、少なくとも5倍(体積/体積)に膨張する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ゲル形成組成物が、少なくとも10倍(体積/体積)に膨張する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記発熱性粒子状ゲル形成組成物が、400g/gを超える吸収能を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ガルバニックアロイ粒子が、2〜20重量%の鉄と80〜98重量%のマグネシウムとの混合物から形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ガルバニックアロイ粒子と高吸水性ポリマーとを、重量比20:1〜5:1で混合することによって形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ガルバニックアロイ粒子が、ポリマーによってマイクロカプセル化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の膨張性の発熱性粒子状ゲル形成組成物と、水性の活性剤溶液とを含むキット。
【請求項15】
電解質をさらに含み、該電解質は前記発熱性粒子状ゲル形成組成物または前記水性の活性剤溶液のいずれかに含まれる、請求項12に記載のキット。

【公表番号】特表2013−500460(P2013−500460A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522933(P2012−522933)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/043226
【国際公開番号】WO2011/017047
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(512020187)フォエバー ヤング インターナショナル、 インク. (3)
【Fターム(参考)】