説明

膨張性ポリマーで構成される塞栓形成デバイス

血管動脈瘤の塞栓形成などのような、体腔の閉塞のためのデバイス、ならびにかかるデバイスの作製および使用方法が開示される。該デバイスは、新規の膨張性物質、新規の基礎構造、またはその両方から成り得る。提供されるデバイスは、非常に柔軟性があり、身体組織、導管、腔、などに対する損傷を軽減しつつ、または与えることなく、設置が可能である。該デバイスは膨張性物質として、イオン化官能基を有するヒドロゲルを備え、ヒドロゲルは少なくとも1つのマクロマーを備え、さらに、ヒドロゲルは環境応答性であり、さらに、ヒドロゲルは約0.1mgから約85mgまでの非膨張時の曲げ抵抗を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/814,309号(2006年6月15日出願)の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、血管動脈瘤の塞栓形成のような体腔の閉塞のためのデバイス、ならびに、かかるデバイスの作製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの臨床的症状において、塞栓形成による体腔、血管、および他の内腔の閉塞が望まれる。例えば、避妊手術のための卵管の閉塞、ならびに卵円孔開存症、動脈管開存症、および左心耳、および心房中隔欠損症のような、心臓欠陥の閉塞治療がある。かかる症状における閉塞デバイスの機能は、患者の治療上の便益のために、腔、内腔、血管、空隙、もしくは欠陥の中への、またはそれらを通過する体液の流れを実質的に遮断または阻止することである。
【0004】
多くの臨床的症状において、血管の塞栓形成がまた、望まれる。例えば、血管塞栓形成は、血管からの出血を制御するために、腫瘍への血液供給を閉塞するために、および血管動脈瘤、特に頭蓋内動脈瘤を閉塞するために使用されてきた。近年、動脈瘤の治療のための血管塞栓が多くの注目を集めている。従来技術では、いくつかの異なる治療様式が示されてきた。有望な取り組みの一つが、血栓形成マイクロコイルの使用である。これらのマイクロコイルは、生体適合性金属合金(代表的には、白金またはタングステンのような放射線不透過性材料)、または好適なポリマーで作製され得る。マイクロコイルの例は、以下の特許、すなわち、特許文献1(Ritchartら)、特許文献2(Butlerら)、特許文献3(Cheeら)、特許文献4(Palermo)、特許文献5(Phelpsら)、特許文献6(Dormandy,Jr.ら)、特許文献7(Dormandy,Jr.ら)、特許文献8(Mirigian)、特許文献9(Ken)、特許文献10(Mariant)、特許文献11(Horton)、特許文献12(Snyder)および特許文献13(Berensteinら)において開示され、これらのすべてが、参考として本明細書において援用される。
【0005】
ある程度の成功を収めた特定の種類のマイクロコイルは、特許文献14(Guglielmiら)に記載される、ググリエルミ(Guglielmi)離脱型コイル(「GDC」)である。GDCは、ハンダ接続によってステンレス鋼の送達ワイヤに固定された、白金線コイルを用いる。コイルが動脈瘤の内側に設置された後に、電流が送達ワイヤに流され、ハンダ接合を電解し、それによって、コイルを送達ワイヤから離脱する。電流の通電はまた、コイル上に正の電荷を生じ、負の電荷を持つ血液細胞、血小板、およびフィブリノゲンを引き付け、それによって、コイルの血栓形成を増進する。異なる直径および長さを有するいくつかのコイルが、動脈瘤が完全に充填されるまで、動脈瘤の中に詰められ得る。かくして、コイルは、動脈瘤の中に血栓を生成して保持し、その移動および分裂を阻止する。
【0006】
マイクロコイル血管閉塞デバイスの分野における、より最近の進展は、Greene,Jr.らに属する特許文献15、Greene,Jr.らに属する特許文献16、および同時係属中の、Martinezに属する米国特許出願第10/631,981号の中で例示されており、そのすべてが主題発明の譲受人に譲渡されており、参考として本明細書において援用される。これらの特許は、コイルの外表面に配置された1つ以上の膨張性要素を有する、マイクロコイルを備える血管閉塞デバイスを開示している。膨張性要素は、任意の多数の膨張性高分子ヒドロゲルで形成され得、または代替的に、血流のような生理環境に暴露されるときに、環境パラメータ(例えば、温度またはpH)の変化に応答して膨張する、環境に敏感なポリマーで形成され得る。
【0007】
本発明は、新規の血管閉塞デバイス、新規の膨張性要素、およびそれらの組み合わせである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,994,069号明細書
【特許文献2】米国特許第5,133,731号明細書
【特許文献3】米国特許第5,226,911号明細書
【特許文献4】米国特許第5,312,415号明細書
【特許文献5】米国特許第5,382,259号明細書
【特許文献6】米国特許第5,382,260号明細書
【特許文献7】米国特許第5,476,472号明細書
【特許文献8】米国特許第5,578,074号明細書
【特許文献9】米国特許第5,582,619号明細書
【特許文献10】米国特許第5,624,461号明細書
【特許文献11】米国特許第5,645,558号明細書
【特許文献12】米国特許第5,658,308号明細書
【特許文献13】米国特許第5,718,711号明細書
【特許文献14】米国特許第5,122,136号明細書
【特許文献15】米国特許第6,299,619号明細書
【特許文献16】米国特許第6,602,261号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、搬送部材、新規の膨張性要素、およびそれらの組み合わせを備える、新規の血管閉塞デバイスを対象とする。一般的に、膨張性要素は膨張性ポリマーを備える。一部の実施形態においては、送達機構への連結を可能にし、また一部の実施形態においては、デバイスの放射線不透過性を増進する構造を提供することによって、搬送部材は、膨張性要素の送達を支援するために使用され得る。
【0010】
一実施形態において、膨張性ポリマーは、2005年4月12日に発行された、Cruiseらに属する米国特許第6,878,384号に記載されたもののような、環境に敏感な高分子ヒドロゲルであり、該特許は、参考として本明細書において援用される。別の実施形態において、膨張性ポリマーは、アクリル酸ナトリウムおよびポリ(エチレングリコール)誘導体から成る、新規のヒドロゲルである。別の実施形態において、膨張性ポリマーは、プルロニック(Pluronics)(登録商標)誘導体を備えるヒドロゲルである。
【0011】
一実施形態において、膨張性ポリマーは、イオン化官能基を有し、かつマクロマーから作られる、新規のヒドロゲルである。ヒドロゲルは、環境応答性を有し得、約0.1ミリグラムから約85ミリグラムまでの非膨張時の曲げ抵抗を有し得る。マクロマーは、非イオン性および/またはエチレン性不飽和であり得る。
【0012】
別の実施形態において、マクロマーは、約400から約35,000まで、より好ましくは約5,000から約15,000まで、さらにより好ましくは約8,500から約12,000までの分子量を有し得る。別の実施形態において、ヒドロゲルは、ポリエーテル、ポリウレタン、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせから作られ得る。別の実施形態において、イオン化官能基は、塩基性基(例えば、アミン、その誘導体、またはそれらの組み合わせ)、または酸性基(例えば、カルボン酸、その誘導体、またはそれらの組み合わせ)を備え得る。イオン化官能基が塩基性基を備える場合には、塩基性基は、塩基性基のpKaを上回るpHで脱プロトン化され、または、塩基性基のpKa未満のpHでプロトン化され得る。イオン化官能基が酸性基を備える場合には、酸性基は、酸性基のpKa未満のpHでプロトン化され、または、酸性基のpKaを上回るpHで脱プロトン化され得る。
【0013】
別の実施形態において、マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)のビニル、アクリレート、アクリルアミド、またはメタクリレート誘導体、あるいはそれらの組み合わせを備え得る。別の実施形態において、マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドを備え得る。別の実施形態において、ヒドロゲルは、非結合アクリルアミドを実質的に含まず、より好ましくは含まない。
【0014】
別の実施形態において、マクロマーは、少なくとも2つのエチレン性不飽和部分を含有する化合物に架橋され得る。エチレン性不飽和化合物の例は、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、その誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。別の実施形態において、ヒドロゲルは、重合開始剤を使用して調製され得る。好適な重合開始剤の例は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを備える。重合開始剤は、水性または有機溶媒に溶解し得る。例えば、アゾビスイソブチロニトリルは水溶性ではない。しかしながら、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩のような、アゾビスイソブチロニトリルの水溶性誘導体が入手可能である。別の実施形態において、ヒドロゲルは、生理的条件において、実質的に再吸収されない、分解されない、またはその両方であり得る。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、動物内移植のための、環境応答性ヒドロゲルを調製するための方法を含む。本方法は、ヒドロゲルを形成するために、少なくとも1つの、好ましくは非イオン性のマクロマーを、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分、少なくとも1つのイオン化官能基および少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する、少なくとも1つのマクロマーまたはモノマー、少なくとも1つの重合開始剤、ならびに少なくとも1つの溶媒と、組み合わせるステップを含む。溶媒は、水性もしくは有機溶媒、またはそれらの組み合わせを含み得る。別の実施形態において、溶媒は水である。次に、ヒドロゲルは、環境応答性ヒドロゲル、好ましくは生理的条件に応答するヒドロゲルを調製するために、処理され得る。イオン化官能基は、酸性基(例えば、カルボン酸、その誘導体、またはそれらの組み合わせ)、または塩基性基(例えば、アミン、その誘導体、またはそれらの組み合わせ)であり得る。イオン化官能基が酸性基を備える場合には、処理するステップは、ヒドロゲルを酸性環境で培養して、酸性基をプロトン化するステップを含み得る。イオン化官能基が塩基性基を備える場合には、処理するステップは、ヒドロゲルを塩基性環境で培養して、塩基性基を脱プロトン化するステップを含み得る。特定の実施形態において、動物に移植後に、酸性基は脱プロトン化が可能であり、または逆に、塩基性基はプロトン化が可能であることが、好ましい。
【0016】
別の実施形態において、エチレン性不飽和マクロマーは、ビニル、アクリレート、アクリルアミド基を有し得、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。別の実施形態において、エチレン性不飽和マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)、その誘導体、またはそれらの組み合わせに基づく。別の実施形態において、エチレン性不飽和マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせである。別の実施形態において、エチレン性不飽和マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドである。エチレン性不飽和マクロマーは、約5重量%から約40重量%まで、より好ましくは、約20重量%から約30重量%までの濃度で使用され得る。溶媒は、約20重量%から約80重量%までの濃度で使用され得る。
【0017】
別の実施形態において、組み合わせるステップはまた、エチレン性不飽和化合物を備える、少なくとも1つの架橋剤を加えるステップを含む。本発明の特定の実施形態において、架橋剤は、必要であるとは限らない。換言すれば、ヒドロゲルは、複数のエチレン性不飽和部分を有するマクロマーを使用して、調製され得る。別の実施形態において、重合開始剤は、酸化還元重合開始剤であり得る。別の実施形態において、重合開始剤は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせであり得る。別の実施形態において、組み合わせるステップは、ポロシゲンを加えるステップをさらに含む。
【0018】
別の実施形態において、エチレン性不飽和マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドを含み、少なくとも1つのイオン化基および少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有するマクロマーまたはモノマーまたはポリマーは、アクリル酸ナトリウムを含み、重合開始剤は、過硫酸アンモニウムおよびN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミンを含み、溶媒は水を含む。
【0019】
別の実施形態において、エチレン性不飽和マクロマーは、約400から約35,000グラム/モルまで、より好ましくは、約2,000から約25,000グラム/モルまで、さらにより好ましくは、約5,000から約15,000グラム/モルまで、さらにより好ましくは、約8,000から約12,500グラム/モルまで、そしてさらにより好ましくは、約8,500から約12,000グラム/モルまでの分子量を有する。別の実施形態において、環境応答性ヒドロゲルは、生理的条件において、実質的に再吸収されない、または分解されない、あるいはその両方であり得る。特定の実施形態において、環境応答性ヒドロゲルは、非結合アクリルアミドを実質的に含まず、または完全に含み得ない。
【0020】
一実施形態において、搬送部材は、金属、プラスチック、または類似の物質で作製されるコイルあるいはマイクロコイルを備える。別の実施形態において、搬送部材は、金属、プラスチック、または類似の物質で作製される編組あるいは編地を備える。別の実施形態において、搬送部材は、チューブに切り込まれた複数の切り込みまたは溝を有する、プラスチックあるいは金属のチューブを含む。
【0021】
一実施形態において、膨張性要素は、搬送部材の中に一般的に同軸的に配置される。別の実施形態において、耐延伸性部材が、膨張性要素と平行に配置される。別の実施形態において、耐延伸性部材は、膨張性要素に被されるか、結び付けられるか、または巻きつけられる。別の実施形態において、耐延伸性部材は、膨張性要素の中に配置される。
【0022】
一実施形態において、膨張性要素および搬送部材を備えるデバイスは、送達システムに着脱可能に連結される。別の実施形態において、本デバイスは、押込みまたは注入によって、導管を通じて体内に送達されるように構成される。
【0023】
一実施形態において、膨張性要素は環境に敏感であり、体液に暴露されると遅れ膨張を呈する。別の実施形態において、膨張性要素は、体液と接触するとすぐに膨張する。別の実施形態において、膨張性要素は、細胞増殖のための表面または足場を形成し得る、多孔性または網状の構造を備える。
【0024】
一実施形態において、膨張性要素は、病巣の充填を促進するために、搬送部材の直径を上回る寸法にまで膨張する。別の実施形態において、膨張性要素は、細胞増殖のための足場の提供、調合薬、タンパク質、遺伝子、線維素のような生体化合物、などの治療薬の放出のために、搬送部材の直径と同じか、またはそれ未満の寸法にまで膨張する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、膨張性要素の膨張前の、本発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、膨張状態における、図1に類似のデバイスを示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の代替的な実施形態の斜視図である。
【図4】図4は、搬送部材が有窓チューブ、編組または編地を備える、代替的な実施形態の斜視図である。
【図5】図5は、膨張性要素とほぼ平行に走る耐延伸性部材を組み込んだ、代替的な実施形態の斜視図である。
【図6】図6は、膨張性要素とほぼ絡み合う耐延伸性部材を組み込んだ、代替的な実施形態の斜視図である。
【図7】図7は、膨張性要素が、搬送部材の外側にループまたは折り曲げ部を形成した、代替的な実施形態の斜視図である。
【図8】図8は、膨張性要素が搬送部材よりも大きな直径にまで膨張しない、図1および図2に示すものと類似のデバイスを示す、代替的な実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で使用されるとき、「マクロマー」の用語は、少なくとも1つの活性重合部位または結合部位を含む、巨大分子を指す。マクロマーは、モノマーよりも大きな分子量を有する。例えば、アクリルアミドモノマーは、約71.08グラム/モルの分子量を有するが、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドマクロマーは、約400グラム/モル以上の分子量を有し得る。好ましいマクロマーは、非イオン性、すなわち、あらゆるpHで非荷電である。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「環境応答性」の用語は、これに限定されないが、pH、温度、および圧力を含む環境の変化に敏感な物質(例えば、ヒドロゲル)を指す。本発明における使用に好適な膨張物質の多くは、生理的条件において環境応答性である。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「再吸収されない」の用語は、身体組織によって容易におよび/または実質的に、分解および/または吸収され得ない物質(例えば、ヒドロゲル)を指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「非膨張時」の用語は、ヒドロゲルが実質的に水和しておらず、従って膨張していない状態を指す。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「エチレン性不飽和」の用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、化学物質(例えば、マクロマー、モノマー、またはポリマー)を指す。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「曲げ抵抗」の用語は、試料(例えば、非膨張時のヒドロゲル)が、抵抗供給アームまたは羽根を横切って定常的かつ均一に移動させられるときに、試料によって呈される抵抗を指す。試料が抵抗供給アームまたは羽根を曲げ、および解放する時点で、抵抗供給アームまたは羽根の最大変位が測定される。その最大変位は、機械に適した変換率、その較正、および、もしあれば、抵抗供給アームまたは羽根と関連付けられる抵抗の大きさ(例えば重量)を使用して、曲げ「抵抗」または「剛性」に変換される。ここで、曲げ抵抗の測定単位はミリグラム(mg)であり、本質的には、試料を曲げるために必要とされる力の大きさである。
【0032】
図1〜図8を参照すると、本発明は、膨張性要素1および搬送部材2を備えるデバイスである。膨張性要素1は、好適な様々な生体適合性ポリマーで作製され得る。一実施形態において、膨張性要素1は、米国特許第7,070,607号および第6,684,884号に記載されたもののような、生体吸収性または生分解性のポリマーで作製され、それらの開示は、参考として本明細書において援用される。別の実施形態において、膨張性要素1は、柔らかな適合物質、より好ましくは、ヒドロゲルのような膨張性物質で作製される。
【0033】
一実施形態において、膨張性要素1を形成する物質は、米国特許第6,878,384号に記載のもののような、環境応答性ヒドロゲルであり、その開示は、参考として本明細書において援用される。具体的には、米国特許第6,878,384号に記載のヒドロゲルは、pHまたは温度のような環境パラメータの変化に応答して、制御された容積膨張を呈する種類のものである。これらのヒドロゲルは、(a)少なくともその一部が環境パラメータの変化に対して敏感な、少なくとも1つのモノマーおよび/またはポリマー、(b)架橋剤、および(c)重合開始剤を含有する、液体混合物を形成することによって調製される。必要な場合には、ポロシゲン(例えば、NaCl、氷晶、または蔗糖)が、混合物に加えられ得、その後、得られた固体のヒドロゲルから除去され、細胞増殖を可能にするのに十分な多孔性を有するヒドロゲルを提供する。制御された膨張率が、イオン化官能基(例えば、アミン、カルボン酸)を有するエチレン性不飽和モノマーの組み込みを通じて提供される。例えば、アクリル酸が架橋ネットワークに組み込まれる場合には、ヒドロゲルは低pH溶液中で培養され、カルボン酸基をプロトン化する。余分な低pH溶液が洗い流され、ヒドロゲルが乾燥された後に、ヒドロゲルは、生理学的pHの食塩水、または血液を充填されたマイクロカテーテルを通じて導入され得る。ヒドロゲルは、カルボン酸基が脱プロトン化するまでは、膨張できない。逆に、アミン含有モノマーが架橋ネットワークに組み込まれる場合には、ヒドロゲルは高pH溶液中で培養され、アミンを脱プロトン化する。余分な高pH溶液が洗い流され、ヒドロゲルが乾燥された後に、ヒドロゲルは、生理学的pHの食塩水、または血液を充填されたマイクロカテーテルを通じて導入され得る。ヒドロゲルは、アミン基がプロトン化するまでは、膨張できない。
【0034】
別の実施形態において、膨張性要素1を形成する物質は、米国特許第6,878,384号に記載のものと類似の、環境応答性ヒドロゲルであり得るが、しかしながら、エチレン性不飽和で、かつ好ましくは非イオン性のマクロマーが、少なくとも1つのモノマーまたはポリマーを置換または増強する。出願人は意外にも、本実施形態に従って調製されたヒドロゲルが、米国特許第6,878,384号に従って調製されたものよりも、その非膨張状態においてより柔らかく、および/またはより柔軟性を有し得ることを見出した。確かに、本実施形態に従って調製されたヒドロゲルは、約0.1mgから約85mgまで、約0.1mgから約50mgまで、約0.1mgから約25mgまで、約0.5mgから約10mgまで、または約0.5mgから約5mgまでの、非膨張時曲げ抵抗を有し得る。出願人はまた、エチレン性不飽和で、かつ非イオン性のマクロマー(例えばポリ(エチレングリコール)、およびその誘導体)が、より柔らかい非膨張時ヒドロゲルを調製するためだけではなく、イオン化基を含有するモノマーまたはポリマーと組み合わせて、また環境応答性を有するように処理され得る、ヒドロゲルを調整するためにも使用され得ることを見出した。非膨張時の柔軟性の意外な増加は、ヒドロゲルが、例えばより容易に動物に適用され、または、身体組織、導管、腔、などへの損傷を軽減あるいは与えずに適用されることを可能とする。
【0035】
イオン化官能基を有するモノマーまたはポリマーと組み合わせて、非イオン性マクロマーから調製されたヒドロゲルは、やはり、環境パラメータの変化に応答して、制御された容積膨張を呈することができる。これらのヒドロゲルは、溶媒の存在下で、(a)複数のエチレン性不飽和部分を有する、少なくとも1つの、好ましくは非イオン性の、マクロマー、(b)少なくとも1つのイオン化官能基および少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する、マクロマーまたはポリマーまたはモノマー、および(c)重合開始剤を、組み合わせることによって調整され得る。特定の実施形態において、選択された成分が、ヒドロゲルを形成するのに十分であり得るので、この種のヒドロゲルについては、架橋のために架橋剤は必要ではない場合があることは、記す意義がある。以前に記載のとおり、ポロシゲンが、混合物に加えられ得、その後で得られたヒドロゲルから除去されて、細胞増殖を可能にするのに十分な多孔性を有するヒドロゲルを提供する。
【0036】
非イオン性マクロマー含有ヒドロゲルの制御された膨張率は、少なくとも1つのイオン化官能基(例えばアミン、カルボン酸)を有する、少なくとも1つのマクロマーまたはポリマーまたはモノマーの導入を通じて提供され得る。上記で論じたように、官能基が酸である場合には、ヒドロゲルは低pH溶液中で培養され、基をプロトン化する。余分な低pH溶液が洗い流され、ヒドロゲルが乾燥された後に、ヒドロゲルは、好ましくは食塩水を充填されたマイクロカテーテルを通じて導入され得る。ヒドロゲルは、酸性基が脱プロトン化するまでは、膨張できない。逆に、官能基がアミンである場合には、ヒドロゲルは高pH溶液中で培養され、基を脱プロトン化する。余分な高pH溶液が洗い流され、ヒドロゲルが乾燥された後に、ヒドロゲルは、好ましくは食塩水を充填されたマイクロカテーテルを通じて導入され得る。ヒドロゲルは、アミンがプロトン化するまでは、膨張できない。
【0037】
より具体的には、一実施形態において、ヒドロゲルは、少なくとも1つの不飽和部分を有する少なくとも1つの非イオン性マクロマー、少なくとも1つのイオン化官能基および少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を有する少なくとも1つのマクロマーまたはモノマーまたはポリマー、少なくとも1つの重合開始剤、および溶媒を組み合わせることによって調製される。任意ではあるが、エチレン性不飽和架橋剤および/またはポロシゲンがまた、組み込まれ得る。溶媒中の非イオン性マクロマーの好ましい濃度は、約5%から約40%(w/w)まで、より好ましくは、約20%から約30%(w/w)までの範囲である。好ましい非イオン性マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)、その誘導体、およびそれらの組み合わせである。誘導体は、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、およびポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートを含むが、これらに限定されない。ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドは、ポリ(エチレングリコール)の好ましい誘導体であり、約8,500から約12,000までの範囲の分子量を有する。マクロマーは、20未満の重合部位、より好ましくは、10未満の重合部位、より好ましくは、約5以下の重合部位、より好ましくは、約2から約4までの重合部位を有し得る。ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドは、2つの重合部位を有する。
【0038】
少なくとも1つのイオン化官能基を有する好ましいマクロマーまたはポリマーまたはモノマーは、カルボン酸もしくはアミノ部分を有する化合物、またはそれらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。アクリル酸ナトリウムは、好ましいイオン化官能基含有化合物であり、94.04g/モルの分子量を有する。溶媒中の、イオン化マクロマーまたはポリマーまたはモノマーの好ましい濃度は、約5%から約40%(w/w)まで、より好ましくは、約20%から約30%(w/w)までの範囲である。選択されたイオン化マクロマーまたはポリマーまたはモノマーの少なくとも一部分、好ましくは、約10%〜50%、より好ましくは、約10%〜30%は、pH感受性を有するべきである。遊離アクリルアミドは、本発明のマクロマー含有ヒドロゲルには使用されないことが好ましい。
【0039】
使用に際して、架橋剤は、任意の多官能エチレン性不飽和化合物であり得るが、好ましくは、N,N’−メチレンビスアクリルアミドである。ヒドロゲル物質の生分解性が望まれる場合には、生分解性架橋剤が選択され得る。溶媒中の架橋剤の濃度は、約1%w/w未満、好ましくは、約0.1%(w/w)未満であるべきである。
【0040】
上記記載のとおり、溶媒が加えられる場合には、溶媒は、使用されるマクロマーもしくはモノマーもしくはポリマー、架橋剤、および/またはポロシゲンの溶解度に基づいて選択され得る。液体のマクロマーまたはモノマーまたはポリマー溶液が使用される場合には、溶媒は必ずしも必要ではない。好ましい溶媒は水であるが、しかし、様々な水性および有機溶媒が使用され得る。溶媒の好ましい濃度は、約20%から約80%(w/w)まで、より好ましくは、約50%から約80%(w/w)までの範囲である。
【0041】
架橋密度は、マクロマーまたはポリマーまたはモノマー濃度、マクロマー分子量、溶媒濃度、および、使用される場合には、架橋剤濃度の、変化を通じて操作され得る。上記記載のとおり、ヒドロゲルは、酸化還元、放射、および/または熱によって架橋され得る。重合開始剤の好ましい種類は、酸化還元によって作用するものである。好適な重合開始剤は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。過硫酸アンモニウムとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとの組み合わせは、本発明の実施形態を含む、マクロマーでの使用に対して好ましい重合開始剤である。
【0042】
重合が完了した後に、本発明のヒドロゲルは、水、アルコール、または他の好適な洗浄溶液で洗浄され得、任意のポロシゲン、任意の未反応の残留マクロマー、モノマー、およびポリマーならびに任意の非組み込みオリゴマーを除去する。好ましくは、これは、最初に蒸留水の中でヒドロゲルを洗浄することによって達成される。
【0043】
本発明のヒドロゲルは、上記で論じたように、ヒドロゲルネットワーク上に存在するイオン化官能基をプロトン化または脱プロトン化することによって、環境応答性になされ得る。ヒドロゲルが調製され、必要な場合には洗浄されると、ヒドロゲルは、ヒドロゲルを環境応答性にするために処理され得る。イオン化官能基がカルボン酸基であるヒドロゲルネットワークについては、ヒドロゲルは低pH溶液中で培養される。溶液中の遊離プロトンが、ヒドロゲルネットワーク上のカルボン酸基をプロトン化する。培養の時間および温度ならびに溶液のpHが、膨張率に対する制御量に影響を及ぼす。一般的に、培養の時間および温度は、膨張制御量に正比例し、その一方で、培養溶液のpHは、それに反比例する。
【0044】
培養溶液の水分含有量がまた、膨張制御に影響を及ぼすことが見出された。この点に関しては、水分含有量が高いほど、大きなヒドロゲル膨張が可能となり、プロトン化に利用可能なカルボン酸基の数を増加させると考えられる。水分含有量およびpHの最適化が、膨張率を最大限に制御するために必要とされる。膨張の制御は、とりわけ、デバイスの位置決め/再位置決め時間に影響を及ぼす。一般的に、約0.1分〜約30分の位置決め/再位置決め時間が、本発明に従ったヒドロゲルデバイスに対しては好ましい。
【0045】
培養後に、余分な処理溶液が洗浄され、ヒドロゲル物質は乾燥される。低pH溶液で処理されたヒドロゲルは、非処理ヒドロゲルよりも小さな寸法にまで乾燥することが観察された。この効果は、これらのヒドロゲルを有するデバイスがマイクロカテーテルを介して送達され得るので、望ましい。
【0046】
イオン化官能基がアミン基であるヒドロゲルネットワークについては、ヒドロゲルは高pH溶液で培養される。カルボン酸官能基とは異なり、脱プロトン化は、ヒドロゲルネットワークのアミン基上で、高pHで生じる。培養溶液のpHを除いては、培養は、カルボン酸含有ヒドロゲルのものと同様に行われる。すなわち、培養の時間および温度ならびに溶液のpHは、膨張制御量に正比例する。培養が完了した後に、余分な処理溶液は洗浄され、ヒドロゲル物質は乾燥される。
【0047】
好適な実施形態において、膨張性要素1は、(a)少なくとも2つの架橋性基を有する、少なくとも1つの、好ましくは非イオン性である、エチレン性不飽和マクロマーまたはポリマーまたはモノマー、(b)少なくとも1つの架橋性基、および環境パラメータの変化に敏感な少なくとも1つの部分を有する、少なくとも1つのモノマーおよび/またはポリマー、ならびに(c)重合開始剤、から成る膨張性ヒドロゲルである。一部の実施形態において、モノマーおよびポリマーは水溶性であり得、その一方で、他の実施形態において、それらは非水溶性であり得る。構成要素(a)および(b)にとって好適なポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)−コポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(アミノ酸)、デキストラン、ポリ(エチルオキサゾリン)、多糖類、タンパク質、グリコサミノグリカン、および炭水化物、ならびにそれらの誘導体を含む。好ましいポリマーは、特に構成要素(a)について、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である。代替案として、部分的または完全に生物分解するポリマーが、利用され得る。
【0048】
一実施形態は、溶媒の存在下で、(a)約5%から約40%までの非イオン性の、エチレン性不飽和マクロマーまたはポリマーまたはモノマー、(b)少なくとも1つのイオン化官能基を有する、約5%から約40%までのエチレン性不飽和モノマーまたはポリマー、および(c)重合開始剤、を組み合わせるステップを含む。好適なイオン化エチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸、またそれらの誘導体を含む。少なくとも1つのイオン化官能基を有する好適なモノマーの1つは、アクリル酸ナトリウムである。2つのエチレン性不飽和部分を有する好適なマクロマーは、400グラム/モルと30,000グラム/モルとの間の分子量を有する、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートおよびポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、ならびにポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドを含む。複数のエチレン性不飽和基を有するマクロマーを使用することで、多官能ポリマーによって架橋剤機能が果たされるので、架橋剤の排除が可能となる。一実施形態において、ヒドロゲルは、約5%から約40%までのアクリル酸ナトリウム、約5%から約40%までのポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、および残量の水を備える。
【0049】
アクリル酸ナトリウム/ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドヒドロゲルは、先に記載した環境応答性ヒドロゲルの、機械的性質を向上するために使用される。アクリル酸ナトリウム/ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドヒドロゲルは、アクリル酸ナトリウム/アクリルアミドヒドロゲル(例えば、カリフォルニア州Aliso ViejoのMicroVention社製の、ヒドロゲル塞栓形成システム(HES)で使用されるもの)よりも柔らかであるために、それを組み込んだデバイスは、より柔軟であり得る。HESが比較的硬いために、MicroVention社は、インプラントを暖かい流体中に浸す、または蒸気を当てることによって、デバイスを予備軟化することを推奨している。加えて、アクリルアミドベースのヒドロゲルの硬さが、搬送部材(HESについてはマイクロコイル)が二次的構成を担うことを妨げるために、アクリルアミドで作製されるデバイスは、予備軟化される以前には比較的直線状である。アクリル酸ナトリウム/ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドヒドロゲルで作製されるデバイスは、搬送部材2または類似の搬送部材に加熱固定された二次的構成に形成するために、食塩水または血液のような温かい流体に浸す、または蒸気に暴露する、などの予備軟化手法を必要とし得ない。従って、例えばアクリル酸ナトリウムおよびポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドを備える実施形態において、例えば図1に示す搬送部材2の内腔3の内部に配置されるか、あるいはMartinezの’981出願またはGreeneの’261に示されるもののような搬送要素の上に配置された、実質的に連続した長さのヒドロゲルが、事前処理(例えば、蒸気、流体、血液への暴露)なしに、搬送部材の形に事前形成された二次的構成を形成する。これは、事前処理ステップの排除を可能にするので、デバイスの使用をより容易にし、また、より柔らかいデバイスは病巣に損傷を与えにくいために、デバイスは患者の中に配置されたときに、より安全であり得る。
【実施例】
【0050】
3gのアクリルアミド、1.7gのアクリル酸、9mgのビスアクリルアミド、50mgのN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、15mgの過硫酸アンモニウム、および15.9gの水が組み合わされ、0.020インチのチューブ内で重合された。チューブ状のポリマーがチューブから取り出され、米国特許第6,878,384号に従ったヒドロゲル1を調製した。
【0051】
4.6gのポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、3.3gのアクリル酸ナトリウム、100mgのN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、25mgの過硫酸アンモニウム、および15.9gの水が組み合わされ、0.020インチのチューブ内で重合された。チューブ状のポリマーがチューブから取り出され、本発明のマクロマー含有ヒドロゲル実施形態に従った、ヒドロゲル2を調製した。
【0052】
ヒドロゲル2と同一のヒドロゲルが調製されたが、しかしながら、それは、本発明に従って追加的に酸処理され、ヒドロゲル2−酸を調製した。
【0053】
白金マイクロコイル(大)は、0.014インチの外径および0.0025インチの糸線を有する。白金マイクロコイル(小)は、0.010インチの外径および0.002インチの糸線を有する。
【0054】
測定羽根に5グラムの釣り合い重りを取り付けた、Gurley 4171ETチューブ状試料剛性試験機を使用して、非膨張時のヒドロゲル試料の曲げ抵抗、およびマイクロコイルの曲げ抵抗が得られた。試料の長さは1インチであった。それぞれ5個の複製試料の測定された抵抗の平均値および標準偏差が、下記の表にまとめられている。
【0055】
【表1】

結果は、第1世代ヒドロゲル1(HES)、第2世代マクロマー含有ヒドロゲル2、酸処理された第2世代マクロマー含有ヒドロゲル2、およびマイクロコイルの間の、相対的剛性の大きな差異を示している。ヒドロゲル1は白金マイクロコイル(大)の20倍近い剛性を有し、しかるに、ヒドロゲル2は白金マイクロコイル(大)の5倍未満の剛性を有する。酸処理されたヒドロゲル2は、白金マイクロコイル(大)よりも低い剛性を有し、白金マイクロコイル(小)とほぼ同程度の剛性を有する。当業者は、本発明で開示された方法および物質によって、はるかに柔軟性のある非膨張時クロマー含有ヒドロゲルが提供されることを認識する。医療デバイスにおいて使用されるときには、これらのヒドロゲルは、同様により柔軟性のある医療デバイスをもたらし得る。
【0056】
別の実施形態において、例えば、副腎皮質ステロイド(例えばプレドニゾンおよびデキサメタゾン)のような抗炎症薬;または亜酸化窒素またはヒドララジンのような血管拡張剤;またはアスピリンおよびヘパリンのような抗血栓剤;または他の治療用化合物、イガイ付着タンパク質(MAP)のようなタンパク質、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン(DOPA)のようなアミノ酸、遺伝子、または細胞物質などの、生物活性化合物を、連結するために適した部分を膨張性要素1に与えるために、モノマーが使用される。米国特許第5,658,308号、WO99/65401号、Polymer Preprints 2001、42(2)、147「Synthesis and Characterization of Self−Assembling Block Copolymers Containing Adhesive Moieties」(Kui Hwangらによる)、およびWO00/27445号を参照されたく、これらの開示は、参考として本明細書において援用される。ヒドロゲル物質に組み込むための部分の例は、ヒドロキシル基、アミン、およびカルボン酸を含むが、これらに限定されない。
【0057】
別の実施形態において、膨張性要素1は、例えばヨウ素を含有するモノマーおよび/またはポリマーの組み込み、またはタンタルおよび白金のような放射線不透過性金属の組み込みによって、放射線不透過性を与えられ得る。
【0058】
一部の実施形態において、搬送部材2は柔軟で細長い構造である。搬送部材2の好適な構成は、螺旋状コイル、編組、およびスロット付きまたは螺旋切り込み付きチューブを含む。搬送部材2は、白金、タングステン、PET、PEEK、テフロン(登録商標)、ニチノール、ナイロン、鋼、などの、任意の好適な生体適合性金属またはポリマーで作製され得る。搬送部材は、螺旋、箱、球体、平らな輪、J字型、S字型、または当該分野において公知の他の複雑な形状のような、二次的構成に形成され得る。適切な形状の例がHortonの第5,766,219号、Schaeferの出願第10/043,947号、およびWallaceの第6,860,893号において開示されており、そのすべてが、参考として本明細書において援用される。
【0059】
先に記載の通り、本発明の一部の実施形態は、十分に柔らかで柔軟なポリマーを備え得るので、実質的に連続した長さの膨張性要素1が、デバイスを予備軟化したり、あるいはそれを血液、流体、または蒸気に暴露することなしに、もともと搬送部材2に設定された構成と類似の二次的構成を形成する。
【0060】
一部の実施形態において、搬送部材2は、少なくとも1つの空隙7を組み込み、該空隙は、膨張性要素1が該空隙を通って膨張できる寸法である(本構成の一実施形態を図1〜図2に示す)。他の実施形態において、搬送部材2は、少なくとも1つの空隙7を組み込み、該空隙は、膨張性要素1の体液への暴露を可能にするが、膨張性要素1は必ずしも該空隙を通って膨張しない(本構成の一実施形態を図8に示す)。他の実施形態においては、実質的な空隙が、搬送部材2に組み込まれない。むしろ、流体がデバイスの末端から浸透し得、あるいは内腔を通って送達システム内に注入され、膨張性要素1が膨張して、搬送部材2の内部を埋め尽くす。
【0061】
図1に示す一実施形態において、膨張性要素1は、アクリルアミドまたはポリ(エチレングリコール)ベースの膨張性ヒドロゲルを備える。搬送部材2は、コイルを備える。少なくとも1つの空隙7が、搬送部材2の中に形成される。膨張性要素1は、搬送部材2によって画定される内腔3の中に、概ね同軸構成に配置される。先端4が、例えばレーザ、ハンダ、接着剤、またはヒドロゲル物質自体を融解することによって、デバイス11の遠位端に形成される。膨張性要素1は、近位端から遠位端までに連続して存在し得、または、デバイスの一部分に存在して、遠位端または近位端、あるいはその両方に到達する手前で終了し得る。
【0062】
一実施例として、一実施形態において、本デバイスは、脳動脈瘤を治療するために寸法設定される。当業者は、本実施例において使用される寸法が、より大きな、またはより小さな病巣を治療するために、再度拡大または縮小され得ることを認識する。本実施形態において、膨張性要素1は、膨張前には約0.001インチ〜0.030インチであり、膨張後には約0.002インチ〜0.25インチである。膨張性要素は、例えば、約5%〜30%のアクリル酸ナトリウム、400と30,000グラム/モルとの間の範囲内の分子量を有する、10%〜30%のポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、および残余の水である。膨張率が、アクリル酸ナトリウム、PEGジアクリルアミド、および水の相対的な量を変化させることによって制御され得ることを、当業者は認識する。本実施形態における搬送部材2は、直径約0.005インチ〜0.035インチの範囲のマイクロコイルである。代替的な実施形態において、マイクロコイルは、0.008フィート〜0.016フィートの範囲の直径を有する。マイクロコイルは、0.0005インチ〜0.01インチの範囲の糸線を有し得る。代替的な実施形態において、糸線は、0.00075インチ〜0.004インチの範囲である。インプラント11は、0.5糸線(0.00025インチ)長から20糸線(0.2インチ)長の範囲の少なくとも1つの空隙7を備える。代替的な実施形態において、空隙の範囲は、約0.00025インチから0.005インチである。好適な一実施形態において、マイクロコイルは、0.012インチの直径および0.002インチの糸線と、0.0013インチの空隙7を有する。連結部分13が近位端付近に設置されて、インプラント11が送達システムに着脱可能に連結され、またはカテーテルを通じて押し込みまたは注入されることができるようにする。送達システムの実施例は、Fitzに属する同時係属中の出願第11/212,830号、Guglielmiに属するUS6,425,893号、Ritchartに属するUS4,994,069号、Diazに属するUS6,063,100号、およびBerensteinに属するUS5,690,666号の中に見出され、それらの開示は、参考として本明細書において援用される。
【0063】
本実施形態において、インプラント11は、膨張性要素1を形成するために先に記載した通り、ヒドロゲル物質を配合および混合することによって製作される。搬送部材2は、螺旋状または複雑な形の周りに巻きつけられ、次いで、当該分野において公知の技術によって加熱固定され、二次的な0.5mm〜30mmの範囲の直径および5mm〜100cmの範囲の長さを形成する。加工、洗浄、および任意の酸処理の後に、膨張性要素1は、搬送部材2の内腔3に通される。膨張性要素1の遠位端は、搬送部材2の遠位端に、例えば結び目を形成することによって、結び付けられる。UV硬化接着剤またはエポキシのような接着剤が使用され得、膨張性要素1と搬送部材2との間の接着をさら強化し、遠位先端4を形成する。代替案として、先端は、例えばレーザ溶接またはハンダボールによって形成され得る。
【0064】
一部の実施形態において、膨張性要素1が膨張するときに、空隙7のサイズおよび膨張率に依存して、図7に示す通りループまたは折り曲げ部12が生じ得る。ループまたは折り曲げ部12がデバイスの機能性に影響を及ぼすとは限らないが、一部の実施形態において、ループまたは折り曲げ部12の形成を防止することが望ましい。これは、膨張性要素1を搬送部材2の中に設置する前、または膨張性要素1の遠位端が搬送部材2に固定された後のいずれかに、膨張性要素1を延伸することによって達成され得る。例えば、膨張性要素1の遠位端が搬送部材2に固定されると、膨張性要素1は初期長さの101%と1000%との間の最終長さに延伸され(例えば、初期長さが1インチである場合には、膨張性要素は1.01インチ〜10.0インチに延伸される)、または膨張後に膨張性要素1にループが生じるのを防ぐのに十分な長さに延伸される。例えば、先に記載の脳動脈瘤治療の実施形態においては、膨張性要素1は、初期長さの約125%〜600%である最終長さに延伸される。代替的な実施形態において、膨張性要素1は、初期長さの約125%〜300%である最終長さに延伸される。好適な一実施形態において、膨張性要素は初期長さの約267%である最終長さに延伸される。延伸後、膨張性要素1は搬送部材2の長さに合わせて切り取られ得、次いで、搬送部材2の近位端付近に、例えば結び目を付ける、接着剤で接着する、または当該分野において公知の他の技術によって、接着され得る。
【0065】
インプラント11が製作されると、当該分野において公知の方法によって、それは先に記載の送達システムに取り付けられる。本デバイスはまた、膨張性要素1を架橋するため、およびその膨張を制御するために、例えば電子ビームまたはガンマ線照射に暴露され得る。これは米国特許第6,537,569号に記載されており、該特許は、本出願の譲受人に譲渡され、参考として本明細書において援用される。
【0066】
これまで、従来のデバイス(例えば、HES)の二次的寸法は、これらのデバイスが比較的硬いために、一般に治療部位の寸法(つまり、容積)よりも1〜2mm小さくサイズ設定されている。本発明のインプラント11の増加した柔軟性、およびその全体的な設計が、インプラント11の二次的形状を、治療部位とほぼ同じ寸法、またはさらに若干大きい寸法とすることを可能とする。このサイズ設定はさらに、インプラントが治療部位内で移動、またはそこから滑り出る危険を最小化する。
【0067】
HESデバイスのような従来のインプラントデバイスは、現在、使用者に約5分間の再位置決め時間を提供する。しかしながら、本発明のインプラント11は、再位置決め時間を増加させる。一部の実施形態において、処置中の再位置決め時間が約30分間にまで増加され得る。この点において、使用者は、より長い再位置決め時間を提供され、望ましいインプラント構成をより良く達成できる。
【0068】
図2は、膨張性要素1が空隙7を通って搬送部材2よりも大きな寸法にまで膨張した後の、図1に示すものと類似のインプラント11を示す。
【0069】
図3は、複数の膨張性要素1が搬送部材2の中に互いにほぼ平行に存在する、インプラント11を示す。一実施形態において、本構成は、1つの膨張性要素1をインプラント11の先端4の周りで輪にして、膨張性要素1の両端を搬送部材2の近位端に結び付けることによって、作製される。別の実施形態において、複数本の膨張性要素1が、搬送部材2の長さに沿って接着され得る。これらの実施形態の作製は、先に記載の通り、膨張性要素1を延伸すること、および/または搬送部材2の空隙を形成することを含み得る。
【0070】
図4は、インプラント11が非コイル状の搬送部材2を備える実施形態を示す。一実施形態において、搬送部材2は、膨張性要素1がそれを介して体液と接触できるような溝穴、穴、または他の有窓部を形成するために、ポリイミド、ナイロン、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、PEEK、テフロン(登録商標)、炭素繊維または熱分解炭素、シリコーン、または当該分野において公知の他のポリマーのような、プラスチックのチューブまたはシートを、例えば鋸刃、レーザ、または水噴流で切断することによって形成される。本実施形態におけるプラスチックはまた、タングステン粉末、ヨウ素、または硫酸バリウムのような、放射線不透過性物質を備え得る。別の実施形態において、搬送部材2は、白金、鋼、タングステン、ニチノール、タンタル、チタニウム、クロム−コバルト合金、などのような、金属のチューブまたはシートを、例えば、酸腐食、レーザ、水噴流、または当該分野において公知の他の技術で切断することによって形成される。別の実施形態において、搬送部材2は、有窓部を形成するために、金属またはプラスチックの繊維を編組にする、編地にする、または巻き重ねることによって形成される。
【0071】
図5は、搬送部材2、膨張性要素1、および耐延伸性部材10を備えるインプラント11を示す。耐延伸性部材10は、送達および再位置決めの間に、搬送部材2が延伸したり、または巻き戻るのを防ぐために使用される。耐延伸性部材10は、鋼、ニチノール、PET、PEEK、ナイロン、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、および当該分野において公知の他の様々な縫合物質のような、様々な金属またはプラスチックの繊維で作製され得る。インプラント11の製作は、Kenに属するUS6,013,084号およびMarksに属するUS5,217,484号(これらは共に、参考として本明細書において援用される)に記載のように、耐延伸性部材10の端部を搬送部材2の端部に取り付けることによってなされ得る。代替案として、Fitzに属する同時係属中の出願第11/212,830号に記載のように、耐延伸性部材10の遠位端は、搬送部材2の遠位端付近に、また近位端は送達システムに取り付けられた耐延伸性部材10に、取り付けられ得る。
【0072】
図6は、膨張性要素1を覆い、それに結び付けられた、またはそれに絡み合った耐延伸性部材10を備える、代替的な実施形態である。これは、膨張性要素の1全長にわたってなされ得、あるいは、一区域のみにおいて覆う、または結び付けがなされ得て、耐延伸性部材10を接着要素として使用することによって膨張性要素1の搬送要素2への接着を助長する。
【0073】
図7は、搬送要素2の外側に突出する膨張性要素1のループまたは折り曲げ部12を示す。一部の実施形態において、例えば、先に記載のとおり膨張性要素1を延伸することによって、この状態を避けることが望まれ得る。これは、例えば小さなマイクロカテーテルを通じて送達するように構成された実施形態において、インプラント11が送達中にマイクロカテーテルの中で動きが取れなくなることを防ぐために行われる。他の実施形態において、ループまたは折り曲げ部がインプラント11内に予め形成されるように、膨張性要素1に弛みが加えられ得る。これは、ループまたは折り曲げ部は膨張性要素1の全長を増すことになるので、例えば大容量の充填が必要とされる実施形態において行われる。
【0074】
図8は、膨張性要素1が、初期寸法よりも大きいが、搬送部材2の外側寸法よりも小さい寸法にまで膨張するよう構成される、実施形態を示す。これは、膨張性要素1がヒドロゲルを含む実施形態において、例えばPEGジアクリルアミドのアクリル酸ナトリウムに対する割合を調節することによって行われ得る。代替案として、比較的高い線量の放射が、膨張性要素1を架橋するために使用され得、かくしてその膨張を制限する。図8に示すような実施形態は、低容積の充填が必要とされるときに望ましく、また膨張性要素1が提供する、組織の成長および増殖のための基材を有することが望ましい。脳動脈瘤の治療に使用される実施形態において、本構成は、最終のまたは「仕上げ」コイルとして、または小動脈瘤(直径10mm未満の)を治療するために寸法設定されたデバイスにおいて、または設置された最初の「枠組み」もしくは3−Dコイルとして、使用される。一実施形態において、膨張性要素1は、細胞増殖および治癒を促すための網状基質を提供するために、先に記載のとおりポロシゲンを組み込むヒドロゲルを備える。先に記載のとおり、例えば成長ホルモンまたはタンパク質を膨張性要素1に組み込むことは、インプラント11の生物学的応答を引き出す能力をさらに強化し得る。
【0075】
本発明の一実施形態において、血管閉塞デバイスは、外表面を有する膨張性ポリマー要素と、膨張性ポリマー要素の外表面の少なくとも一部分を覆う搬送部材とを備え、膨張性要素の外表面の内部には搬送部材は配置されない。
【0076】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、内腔を有するコイルと、外表面を有するヒドロゲルポリマーとを備え、ヒドロゲルポリマーは、該コイルの内腔内に配置され、ヒドロゲルポリマーは、ヒドロゲルポリマーの外表面の内部にコイルを含まない。
【0077】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、二次的構成に形成された搬送部材と、膨張性要素とを備え、膨張性要素は、十分な柔らかさを有するように配合されたポリマーで作製され、膨張性要素は前処理なしに、実質的に搬送部材に形成された二次的構成の形状をとる。
【0078】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、二次的構成に形成された搬送部材と、実質的に連続した長さのヒドロゲルとを備え、本デバイスは前処理なしに、実質的に搬送部材に形成された二次的構成の形状をとる。
【0079】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、内側内腔を有するマイクロコイルと、内側内腔の中に配置された膨張性要素とを備える。本実施形態において、膨張性要素は、アクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、プルロニック、およびポリ(プロピレンオキシド)から成る群から選択される、ヒドロゲルを含む。
【0080】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、コイルと、コイル内に少なくとも部分的に配置されたヒドロゲルポリマーとを備え、ヒドロゲルは初期長さを有し、ヒドロゲルポリマーは該初期長さよりも長い第2の長さに延伸されている。
【0081】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、膨張性要素と、内側内腔を画定する搬送部材とを備え、膨張性要素は搬送部材の内側内腔の中に配置され、膨張性要素は、膨張性要素のループが搬送部材を通って突出することを防ぐための十分な長さに延伸されている。
【0082】
本明細書において開示された本発明はまた、医療デバイスを製造する方法を含む。本方法は、内側内腔を有する搬送部材と、膨張性要素とを提供するステップと、膨張性要素を搬送部材の内側内腔の中に挿入するステップと、膨張性要素を延伸するステップとを含む。
【0083】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、搬送要素によって封入された膨張性要素を含み、膨張性要素は実質的に全体に、かつ実質的に均一に、膨張特性を有する物質から成る。
【0084】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、搬送要素と、膨張性要素とを備え、搬送要素は一次形状とは異なる二次的形状を有し、膨張性要素は、通常の未処理状態において、搬送部の二次的形状に十分適合するほどに柔軟である。
【0085】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、搬送部と膨張性要素とを含み、膨張性要素は、膨張性要素が搬送部に沿って延伸された状態で、搬送部に固定される。
【0086】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、搬送部に沿って複数の空隙を有する搬送部と、搬送部の内側包絡面に沿って配置された膨張性要素とを含み、膨張性要素は空隙の内部には膨張するが、搬送部の外側包絡面を越えては膨張しないように、膨張性要素の膨張が制御される。
【0087】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、搬送部材と、膨張性要素とを含み、膨張性要素は、搬送部に沿って延在する複数本から成る。
【0088】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、搬送部と、膨張部材とを含み、搬送部は非コイル状の円筒形状構造であり、膨張部材は搬送部の内側に配置される。
【0089】
別の実施形態において、血管閉塞デバイスは、搬送部と、膨張部材と、耐延伸性部材とを含み、該膨張部材および該耐延伸性部材は搬送部の内部領域に配置され、耐延伸性部材は該搬送部の上で緊張された状態にある。
【0090】
本明細書において開示された本発明はまた、体内の病巣を治療する方法を含む。本方法は、搬送部材と膨張性要素とを含む血管閉塞デバイスを提供するステップであって、搬送部材が病巣とほぼ同じ直径である二次的構成に形成される、ステップと、血管閉塞デバイスを病巣に挿入するステップとを含む。
【0091】
本明細書および添付図面において、本発明の好適な実施形態が説明されたが、多くの変形形態および修正形態が当業者に対して示唆されることが認識される。従って、本発明の範囲は、本明細書に記載された特定の実施形態および実施例に制限されず、代替的な実施形態および均等物を包含するとみなされるべきである。
【0092】
他に指示されていない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される、成分、分子量のような特性、反応条件、などの量を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。従って、それに反した指示がない限り、本明細書および付属の特許請求の範囲で説明される数値パラメータは近似値であり、それは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて異なり得る。少なくとも、また特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効桁数に照らして、かつ通常の丸め手法を適用することによって、解釈されるべきである。本発明の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において説明される数値は、できる限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定において得られた標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を、本質的に含む。
【0093】
本発明を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)使用される、不定冠詞と定冠詞(「a」、「an」、「the」という用語)、および同様の指示物は、本明細書において他に指示がないか、文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。本明細書における数値範囲の列挙は、単に、その範囲内に入るそれぞれの単独の値を、個別に指すための簡易法としての役割を果たすことが意図されている。本明細書において他に指示されていない限り、個別の値のそれぞれは、本明細書において個別に列挙されているものとして、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書において他に指示されないか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書において提供される任意の、かつすべての実施例、または例示的な言葉遣い(例えば、「のような」)の使用は、単に本発明をより解りやすくすることを意図しており、特許請求されるもの以外に、本発明の範囲に制限を加えるものではない。本明細書における言葉遣いは、本発明の実践に必須な任意の非特許請求要素を指していると解釈されるべきではない。
【0094】
本明細書において開示された発明の代替的な要素または実施形態のグループ分けは、制限として解釈されるべきではない。各グループ構成要素は、個別に、あるいはグループの他の構成要素または本明細書に見られる他の要素との任意の組合せで、参照され、また請求特許され得る。グループの1つ以上の構成要素が、便宜上および/または特許性の理由から、グループに含まれ、またはグループから削除され得ることが予期される。任意のかかる包含または削除が生じるときには、本明細書は、修正されたグループを含むものとみなされ、従って、付属の特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュグループの書面による記載を満たす。
【0095】
本発明を実行するうえで発明者らに知られる最良の形態を含む、本発明の特定の実施形態が、本明細書において説明されている。言うまでもなく、前述の説明を読めば、これらの記載された実施形態の変形形態が、当業者には明らかとなる。本発明者は、当業者がかかる変形形態を適切に利用することを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で、本発明が実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法令により許される範囲で、本明細書に付属する特許請求の範囲において列挙される主題のあらゆる修正形態および均等物を含む。また、そのすべての可能な変形形態の中の前述の要素の任意の組み合わせは、本明細書において他に指示されていないか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0096】
なお、多数の特許および刊行物が、本明細書を通して参照された。前述の参考文献および刊行物の各々は、その全体が個別に、参考として本明細書において援用される。
【0097】
最後に、本明細書において開示された本発明の実施形態は、本発明の原理を例示するものであることが理解されるべきである。利用され得る他の修正形態は、本発明の範囲内である。かくして、制限としてではなく一例として、本発明の代替的な構成が、本明細書の教示に従って利用され得る。従って、本発明は、示され記載されたように厳密には、それに限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物内での移植のためのデバイスであって、該デバイスは、イオン化官能基を有するヒドロゲルを備え、該ヒドロゲルは少なくとも1つのマクロマーを備え、さらに、該ヒドロゲルは環境応答性であり、さらに、該ヒドロゲルは約0.1mgから約85mgまでの非膨張時の曲げ抵抗を有する、デバイス。
【請求項2】
前記マクロマーは、約400グラム/モルから約35,000グラム/モルまでの分子量を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ヒドロゲルは、ポリエーテル、ポリウレタン、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記イオン化官能基は、塩基性基を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記塩基性基は、アミン、その誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記塩基性官能基は、前記官能基のpKaを上回るpHで脱プロトン化され、または該官能基のpKa未満のpHでプロトン化され得る、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記イオン化官能基は、酸性基を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記酸性基は、カルボン酸、その誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記酸性官能基は、前記官能基のpKa未満のpHでプロトン化され、または該官能基のpKaを上回るpHで脱プロトン化され得る、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ヒドロゲルは、ビニル、アクリレート、アクリルアミド、メタクリレート、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)、その誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドを備える、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記ヒドロゲルは、実質的にアクリルアミドを含まない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記マクロマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物で架橋される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記マクロマーは、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、その誘導体、またはそれらの組み合わせで架橋される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記ヒドロゲルは、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせから選択される、重合開始剤を使用して重合される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記ヒドロゲルは、実質的に再吸収されない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
動物内での移植のための環境応答性ヒドロゲルを調製するための方法であって、
a)ヒドロゲルを調製するために、少なくとも1つのエチレン性不飽和マクロマー、少なくとも1つのイオン化官能基を備える少なくとも1つのマクロマーまたはモノマー、少なくとも1つの重合開始剤、および少なくとも1つの溶媒を組み合わせるステップと、
b)生理的状態に応答する環境応答性ヒドロゲルを調製するために、該ヒドロゲルを処理するステップと、
を包含する、方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのイオン化官能基は、酸性基を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処理するステップは、前記酸性基をプロトン化するために、前記ヒドロゲルを酸性環境で培養するステップを包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記酸性基は、カルボン酸、その誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのイオン化官能基は、塩基性基を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記処理するステップは、前記塩基性基を脱プロトン化するために、前記ヒドロゲルを塩基性環境で培養するステップを包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記塩基性基は、アミン、その誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒は、水、エチルアルコール、またはそれらの組み合わせを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒は水を備える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つのイオン化官能基を備える前記少なくとも1つのマクロマーまたはモノマーは、ビニル基、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つのエチレン性不飽和マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)、その誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのエチレン性不飽和マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つのエチレン性不飽和マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドを備える、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記エチレン性不飽和マクロマーは、約5重量%から約40重量%までの濃度である、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記溶媒は、約20重量%から約80重量%までの濃度である、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記組み合わせるステップは、複数のエチレン性不飽和部分を有する化合物を備える、少なくとも1つの架橋剤を加えるステップをさらに包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記重合開始剤は、酸化還元重合開始剤を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
前記重合開始剤は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
前記組み合わせるステップは、ポロシゲンを加えるステップをさらに包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
前記酸性基は、動物に移植後に、脱プロトン化が可能である、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
前記塩基性基は、動物に移植後に、プロトン化が可能である、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記エチレン性不飽和マクロマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドを備え、少なくとも1つのイオン化官能基を備える前記少なくとも1つのマクロマーまたはモノマーは、アクリル酸ナトリウムを備え、前記少なくとも1つの重合開始剤は、過硫酸アンモニウムおよびN,N,N’,N’テトラメチルエチレンジアミンを備え、前記溶媒は、水を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項41】
前記エチレン性不飽和マクロマーは、約400グラム/モルから約35,000グラム/モルまでの分子量を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項42】
前記環境応答性ヒドロゲルは、実質的に再吸収されない、請求項19に記載の方法。
【請求項43】
前記環境応答性ヒドロゲルは、実質的にアクリルアミドを含まない、請求項19に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つのエチレン性不飽和マクロマーは、非イオン性である、請求項19に記載の方法。
【請求項45】
前記環境応答性ヒドロゲルは、約0.1mgから約85mgまでの非膨張時の曲げ抵抗を有する、請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−500917(P2010−500917A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530704(P2009−530704)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/071395
【国際公開番号】WO2007/147145
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(308016264)マイクロベンション, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】