説明

膨脹グラファイトシートを低減された圧力下で型押しする方法および装置

膨脹グラファイトシートを型押しする改良された方法は、材料を大気圧より低い圧力にさらし、その後、材料を型押しすることによって、材料内から気体の少なくとも一部を除去する工程を含む。好ましくは、材料がさらされる圧力は、約400torr以下である。膨脹グラファイトシート材料を、大気圧より低い圧力で型押しする改良された装置は、少なくとも1つの型押しデバイスと、型押装置を材料に向かって駆動するように調節された、少なくとも1つの圧縮デバイスと、少なくとも1つの型押しデバイスを含み、材料を収容するように調節された型押チャンバであって、型押しデバイスが、加圧デバイスによって、材料に対して駆動されるときには実質的に気密である、型押チャンバと、該型押チャンバ内の圧力を低減する排気デバイスとを含む。該型押チャンバ内の雰囲気は、不活性ガス、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなどを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、膨脹グラファイトシート材料を真空下で型押しする方法および装置に関する。
【0002】
(発明の背景)
電気化学的燃料電池は、反応物、すなわち、燃料およびオキシダントを変換して、電力および反応生成物を生成する。電気化学的燃料電池は、概して、2つの電極、すなわち、カソードおよびアノードの間に配置された電気触媒を用いる。電極は、両方とも、電解質と電極との間の界面に配置され、所望の電気化学的反応を誘導する電気触媒を含む。アノードに供給される燃料流体ストリームは、例えば、実質的に純水素、または水素を含む改質油ストリームなどであり得る。あるいは、液体燃料のストリーム、例えば、水性メタノールなどが用いられ得る。オキシダント流体ストリームは、カソードに供給されるが、典型的には、酸素、例えば、実質的に純酸素、または空気などの希釈酸素ストリームを含む。
【0003】
固体ポリマー燃料電池は、固体ポリマー燃料電池(イオン交換膜とも呼ばれる)を用いる。膜は、典型的には、2つの電極層の間に置かれ、膜電極アセンブリ(「MEA」)を形成する。膜は、典型的には、選択的なプロトン伝導体であり、バリアとしても機能して、燃料およびオキシダントストリームを、MEAの反対側で、互いから分離させる。MEAは、典型的には、2つのプレートの間に配置され、燃料電池アセンブリを形成する。プレートは、集電体として機能し、隣接する電極用のサポートを提供する。アセンブリは、典型的には、圧縮されて、プレートと電極との間の良好な電気接触が容易になり、燃料電池部材の間の充分なシーリングが容易になる。複数の燃料電池アセンブリが、直列、または並列に結合されて、燃料電池スタックを形成する。燃料電池スタックにおいて、プレートは、隣接する2つの燃料電池アセンブリによって共有され得る。このような場合、プレートは、隣接する2つの燃料電池アセンブリの流体ストリームを流動的に分離するセパレータとしても役立つ。
【0004】
流体フローフィールドプレートとして公知の燃料電池プレートは、対向する主表面のうち、片面または両面に形成され、反応物および/または冷却流体を、このような主表面の特定の部分に方向付ける、片方だけが覆われた(open−faced)チャネルを有する。片方が覆われたチャネルは、反応生成物、消耗した反応物ストリーム、および/または加熱された冷却剤ストリームを除去する際の通路を提供する。例示的な流体フローフィールドプレートは、例えば、1991年1月29に付与された米国特許第4,988,583号に載っている。流体フローフィールドプレートの主表面がMEAに面する場合、片方だけが覆われたチャネルは、典型的には、反応物を、実質的に全ての隣接するMEAの電気化学的アクティブ領域に方向付ける。流体フローフィールドプレートが、他の流体フローフィールドプレートに面する場合、協同面によって形成されるチャネルは、燃料電池の温度を制御する冷却剤を伝えるための用いられ得る。
【0005】
流体フローフィールドプレートを製造する従来の方法は、グラファイト化された炭素樹脂複合材料から形成された固いプレートの表面に、フローチャネルを彫ることまたは削ることを必要とする。これらの製造方法は、機械加工処理に起因する達成可能な最小のセル厚、プレートの浸透性、必要な機械的特性を厳しく制限する。さらに、このようなプレートは、原料のコストも、機械加工のコストも高価である。グラファイトプレート表面へのチャネルなどの機械加工は、ツールの大幅な摩耗を引き起こし、長い処理時間を必要とする。
【0006】
あるいは、流体フローフィールドプレートは、1994年4月5日に付与された米国特許第5,300,370号に記載のように、積層処理によって作成され得る。この特許において、導電性のある、流体不浸透セパレータ層と、導電性ステンシル層とが結合されて、少なくとも1つの片方だけが覆われたチャネルを形成する。このような積層された流体フローフィールドアセンブリは、別々の層を形成し、連結すること関する製造工程の数に起因して、単層プレートより高い製造コストを有する傾向がある。
【0007】
あるいは、流体フローフィールドプレートは、十分に圧縮可能、または成形可能であり、型押しを可能にする、導電性のある、実質的に流体不浸透性の材料から形成され得る。膨脹グラファイトシートは、概して、典型的な燃料電池の反応物および冷却剤に対して比較的不浸透であり、従って、燃料、オキシダント、および冷却流体ストリームを互いから流動的に分離することができるので、この目的に適する。また、膨脹グラファイトシートは、圧縮可能であり、主表面のうち、片面または両面にチャネルを形成するため、型押し処理が用いられ得る。例えば、1996年6月18日に付与された米国特許第5,527,363号は、主表面に型押しされたフローチャネルを有する、2つの膨脹グラファイトシートの間に置かれる、金属ホイルまたはシートを含む流体フローフィールドプレートを記載する。
【0008】
しかし、膨脹グラファイトシート材料の型押しは、問題となり得る。型押し処理の間、圧縮の際に、好都合に遊離し得る気体(例えば、空気)は、シート材料内に溜まって、場合によっては、型押しされた材料の層間剥離および/またはブリスターの原因となる。燃料電池における流体フローフィールドプレートのようないくつかの適用例において、例えば、膨脹グラファイトシートプレートの層間剥離および/またはブリスターは、所望されない。例えば、膨脹グラファイトシートプレートの層間剥離および/またはブリスターは、プレートを弱め、プレートが流体をより浸透させるようになる。結果として、プレート材料は、それほど均一でなくなり、導電性において所望されない局所的な差を表し得る。層間剥離および/またはブリスターは、プレート状の流体チャネルに影響を与え得る表面欠陥になり得る。さらに、上記の問題は、製造中に検出することが困難であり、後日になって表面に現れ得る。続いて型押しプレートに樹脂が含浸される適用例の場合は、最終的に、層間剥離および/またはブリスターは、プレート材料における、樹脂で充填されるボイド(void)になり得る。用いられる樹脂が非導電性である場合、所望しない非導電性領域が、プレート内に分散されることになる。
【0009】
(発明の要旨)
膨脹グラファイトシートを型押しする改良された方法は、材料を大気圧より低い圧力にさらし、その後、材料を型押しすることによって、材料内から気体の少なくとも一部を除去する工程を含む。例えば、材料は、型押し雰囲気中、大気圧より低い低減された圧力で型押しされ、低減された圧力は、少なくとも型押し工程の間は維持される。好ましくは、材料がさらされる圧力は、約400torr以下である。より好ましくは、圧力は、350torr未満であり、さらに好ましくは、170torr未満であり、一層好ましくは、50torr未満である。型押し雰囲気は、不活性ガス、例えば、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどを含み得る。この方法は、型押し工程の間、型押し雰囲気から気体を排出し続ける工程をさらに含み得る。
【0010】
膨脹グラファイトシート材料は、少なくとも1つの膨脹グラファイトシートを含む複数のシート材料を含み得、この方法は、型押し工程の間、複数のシート材料を積層する工程をさらに含む。複数のシート材料は、少なくとも1つの金属箔のシートを含み得る。
【0011】
膨脹グラファイトシート材料を、大気圧より低い圧力で型押しする改良された装置は、以下のものを含み得る。
【0012】
(a)少なくとも1つの型押しデバイス、 (b)型押デバイスを材料に向かって駆動するように調節された、少なくとも1つの圧縮デバイス、 (c)少なくとも1つの型押しデバイスを含み、材料を収容するように調節された型押チャンバであって、型押しデバイスが、加圧デバイスによって、材料に対して駆動されるときには実質的に気密である、型押チャンバ、および (d)該型押チャンバ内の圧力を低減する排気デバイス。
【0013】
少なくとも1つの型押しデバイスは、プレートダイまたはローラーダイを含み得、少なくとも1つの加圧デバイスは、プレス圧盤またはローラーを含み得る。この装置は、気密シールを維持する、型押チャンバに関連付けられた少なくとも1つのシーリング部材をさらに含み得る。シーリング部材は、少なくとも1つのOリング、ベロー、圧縮可能シール、または膨脹式空気袋を含み得る。好ましくは、排気デバイスは、型押チャンバ内の圧力を、約400torr以下に低減することができる。排気デバイスは、型押チャンバの圧力を、より好ましくは、350torr未満、さらに好ましくは、170torr未満、一層好ましくは、50torr未満に低減することができる。
【0014】
装置は、型押チャンバに流動的に接続可能な不活性ガス源をさらに含み得る。不活性ガスは、窒素、ヘリウムおよびアルゴンからなる群から選択され得る。
【0015】
膨脹グラファイトシート材料を型押しする、他の改良された装置は、以下のものを含む。
【0016】
(a)材料を収容し、少なくとも材料がチャンバ内にあるときには、大気圧より下に低減された圧力を維持するように調節されたチャンバ、 (b)型押チャンバ内の圧力を低減する排気メカニズム、および (c)チャンバに関連付けられ、チャンバから材料を収容する少なくとも1つのローラーダイ。
【0017】
ある実施形態において、装置のチャンバは、チャンバの内部表面から延び、材料に接触するように調節された少なくとも1つの弾性部材を含む。例えば、チャンバは、上方部分および下方部分を含み得る。上方部分は、そこから下向きに延びる複数の弾性シーリング部材を含み、下方部分は、そこから上向きに延びる複数の弾性シーリング部材を含む。両方のシーリング部材のセットが、材料に接触するように調節される。
【0018】
上記の実施形態は、材料をチャンバに向ける、少なくとも1つの送りローラーをさらに含み得る。送りローラーは、例えば、ピンローラーであり得る。
【0019】
他の実施形態において、装置のチャンバは、材料の主面に接触し、実質的に気密なシールがローラーと材料の表面のそれぞれとの間に形成されるように調節される。チャンバは、少なくとも2対の対向するローラーを含み得る。対向するローラーの対のそれぞれは、材料対向する主面と接触するように調節される。ローラーのうち少なくとも1つは、装置に関連付けられたローラーダイであり得る。
【0020】
装置の実施形態は、その中で、気密シールを維持する、チャンバに関連付けられた少なくとも1つのシーリング部材をさらに含み得る。シーリング部材は、例えば、ローラーの各端部に位置するシーリング部材、またはローラーの円柱状表面に接触するように調節された弾性部材、あるいは、その両方を含み得る。
【0021】
ローラーが駆動され得るか、または、装置が、材料をチャンバに向ける、少なくとも1つの送りローラー、例えば、ピンローラーをさらに含み得る。
【0022】
(好適な実施形態の詳細な説明)
この説明および添付の特許請求の範囲において、「膨脹グラファイトシート材料」とは、膨脹グラファイトを含むシート材料を意味する。このグラファイトには、例えば、1999年3月23日に付与された米国特許第5,885,728号に記載の複合体のような、グラファイトの複合体が含まれる。「膨脹グラファイトシート材料」には、膨脹グラファイトを含む層を1つ以上含む積層体も含まれる。
【0023】
上述したように、膨脹グラファイトシート材料を型押しする場合、圧縮の際に、好都合に遊離される気体は、シート材料内に溜まって、場合によっては、型押しされたシートの層間剥離および/またはブリスターの原因となり得る。理論によって制約されることなしに、気体は、シート材料の異方性の結果として溜まると考えられる。気体(概して、流体)は、膨脹グラファイトシート材料内を、対向した、平行に並んでいるシートの表面、およびシートを構成するグラファイト粒子の面に対して平行な方向に容易に流れる傾向がある。しかし、膨脹グラファイトシート材料の表面層は、それに対して平行な構成している原子の層および剥離したグラファイト粒子の並び方に起因して、「z方向」、すなわち、対向した、平行にならんでいるシートの平面に直交する方向に、流体フローに抵抗する傾向がある。従って、型押しの間、気体は、シート材料からz方向に流れ出ない傾向にあり、その代わり、端から流れ出す。これは、型押しの間、膨脹グラファイトシート材料内に気体が溜まる結果となり得る。型押しの前、または、型押しと同時に、膨脹グラファイトシート材料内の気体の少なくとも一部分を除去することによって、最終的な型押しされた製品におけるブリスターまたは剥離が低減され得る。膨脹グラファイトシート材料内の気体の少なくとも一部分を除去する1つの方法として、大気圧より低い圧力での型押しがある。
【0024】
図1は、本発明の型押装置のある実施形態の部分分解断面図である。型押装置100において、膨脹グラファイトシート102は、ダイ104とバッキングプレート106との間に位置する。スリーブ108は、バッキングプレート106およびダイ104を収容するように適合される。あるいは、バッキングプレートおよびスリーブ108は、一体構造を有していてもよい。スリーブ108、バッキングプレート106、およびダイ104の協同面は、型押チャンバ110を規定する。また、スリーブ108は、ピストン112を収容するように適合され、ダイ104は、ピストン112に取り外し可能に取り付けられる(図1においては、取り外されている)。
【0025】
動作中、膨脹グラファイトシート102は、バッキングプレート106の上に置かれ、ピストン112は、ダイ104をシート102へと駆動する。Oリング114および116は、それぞれ、スリーブ108とピストン112との間、スリーブ108とバッキングプレート106との間に実質的に気密なシールを形成する。型押チャンバ110内の空気(または他のガス)の少なくとも一部が、ポンプ(図示せず)によって、装置100の周囲に配置された複数のポート118を介して引き出され、型押チャンバ110内の圧力を大気圧より下に低減する。その後、ピストン112は、バッキングプレート106へとさらに駆動され、ダイ104を膨脹グラファイトシート102に接触させて型押しさせる。型押チャンバ110内の低減された圧力は、型押し処理の間、維持される。型押しが完了した後、型押チャンバ110内の圧力は、大気圧に戻るままにされ、ピストン112は、スリーブ108から分離され、型押しされた膨脹グラファイトシートは、取り外され得る。
【0026】
図2aおよび2bは、本発明の装置の他の実施形態の部分分解断面図である。型押装置200において、膨脹グラファイトシート102(図示せず)は、バッキングプレート202とダイ204との間に位置する。カバープレート206およびピストン208は、それぞれ、バッキングプレート202およびダイ204を収容するように調節される。カバープレート206は、ピストン208を収容し、スリーブ210に嵌合して接触するように調節されるが、この状態は、図2bに最も良好に示されている(図2bにおいては、明瞭化のため、バッキングプレート202およびダイ204が省略されている)。開位置において、スリーブ210は、バネ214によって、ピストン108のリム212に対して保持されるが、この状態は、図2aに最も良好に示されている。ピストン208、カバープレート206およびスリーブ210の協同面は、型押チャンバ216を規定する。
【0027】
動作中、カバープレート206およびスリーブ210の嵌合面は、ともに駆動され、接触する。Oリング218は、その間に実質的に気密なシールを形成する。ピストン208は、カバープレート206へとさらに駆動され、カバープレート206は、スリーブ210にピストン208を下に摺動させ、バネ214を圧縮させる。バネ214の圧縮は、Oリング218によって形成された実質的に気密なシールを維持することに役立つ。Oリング220は、スリーブ210とピストン208との間に実質的に気密なシールを維持する。型押チャンバ216内の空気(または他の気体)の少なくとも一部が、ポンプ(図示せず)によってポート222を介して引き出され、型押チャンバ216内の圧力を大気圧より下に低減する。その後、ピストン208は、さらにバッキングプレート202へと駆動され、ダイ204を膨脹グラファイトシートに接触させて、型押しする。型押チャンバ216内の低減された圧力は、型押し処理の間、維持される。型押しが完了した後、型押チャンバ216内の圧力は、大気圧に戻ってもよく、ピストン208は、スリーブ210から分離され、型押しされた膨脹グラファイトシートは取り除かれ得る。
【0028】
上記の実施形態において説明されたように、型押しされたグラファイトシートは、1つの主表面のみで、隆起した形状を有する。膨脹グラファイトシートの両面に形状を型押しすることが所望される場合、型押装置100は、バッキングプレート106に関連付けられた他のダイを含んでもよいし、または、装置200内のバッキングプレート202が他のダイと交換されてもよい。シート材料は、型押しと同時に、打ち抜かれてもよい。
【0029】
図3は、本発明の型押装置のさらに他の実施形態の断面図である。型押装置300において、膨脹グラファイトシート(図示せず)は、ダイ302と304との間に位置する。カバープレート306は、ダイ302を収容するように調節され、上方圧盤308に取り付けられている。支持プレート310は、ダイ304を収容するように調節され、下方圧盤312に取り付けられている。カバープレート306のスカート314は、支持プレート310を嵌合して収容するよう取り付けられている。カバープレート306および支持プレート310の協同面は、型押チャンバ316を規定する。
【0030】
動作中、膨脹グラファイトシートは、ダイ304の上に置かれ、上方圧盤308は、カバープレート306を支持プレート310へと駆動する。円柱スリーブ318は、ガイド柱320を収容し、型押しの間、装置300の部材の適切な位置合わせを容易にする。Oリング322は、スカート314と支持プレート310との間に実質的に気密なシールを形成する。型押チャンバ316内の空気(または他の気体)の少なくとも一部は、ポンプ(図示せず)によってポート324を介して引き出され、型押チャンバ316内の圧力を、大気圧より下に低減する。その後、ダイ302および304は、互いに向かってさらに駆動され、膨脹グラファイトシートに接触し、型押しする。型押チャンバ316内の低減された圧力は、型押し処理の間維持される。型押しが完了した後、型押チャンバ316内の圧力は大気圧に戻ってもよく、カバープレート306は支持プレート310から分離され、型押しされた膨脹グラファイトシートは、取り除かれ得る。
【0031】
図4aおよび4bは、本発明の型押装置のさらに別の実施形態の断面図である。型押装置400において、膨脹グラファイトシート(図示せず)は、ダイ402と404との間に位置する。カバープレート406および支持プレート408は、それぞれ、ダイ402およびダイ404を収容するように調節される。カバープレート406および支持プレート408は、それぞれ、上方支持盤および下方支持盤(図示せず)にも取り付けられている。圧縮可能シール410がカバープレート406の周囲に結合されている。カバープレート406、支持プレート408、および圧縮可能シール410の協同面が、型押チャンバ412を規定し、この状態は、図4bに最も良好に示されている。
【0032】
圧縮可能シール410は、上方取り付け具414および下方取り付け具416を含む。ガイドピン418は、下方取り付け具416に接続され、下方取り付け具414のスレーブ420に滑って係合する。バネ422は、上方取り付け具414と下方取り付け具416とを離す力を加える。図4aに示すように、装置400が、開位置にある場合、保持クリップ424および426は、上方取り付け具414と下方取り付け具416とが離れることを防ぐ。
【0033】
動作中、カバープレート406は、下方の支持プレート408へと駆動され、圧縮可能シール410が下方の支持プレート408と接触する。弾性面シール428は、下方取り付け具416と支持プレート408との間に、実質的に気密なシールを形成する。カバープレート406が、支持プレート408へとさらに駆動されるにつれ、バネ422は、圧縮され、上方取り付け具414に結合された摺動シールリング430を、下方取り付け具416を通過して、嵌合しながら摺動する(図4b参照)。Oリング432は、その間に、実質的に気密なシールを形成する。ブート434は、上方取り付け具414および下方取り付け具416に取り付けられ、Oリング436および438は、それぞれ、ブート434と上方取り付け具414との間、およびブート434と下方取り付け具416との間に実質的に気密なシールを形成する。ブート434は、シールリング430およびOリング432によって提供されるシールのバックアップとして設けられる。しかし、所望される場合、なくても適切なシールが維持される限りにおいて、ブート434は省略されてもよい。型押チャンバ412内の空気(または他の気体)の少なくとも一部が、ポンプ(図示せず)によってポート440を介して引き出され、型押チャンバ412内の圧力が大気圧より下に低減される。その後、カバープレート406は、支持プレート408へとさらに駆動され、ダイ402および404を、グラファイトシートに接触されて、型押しする。型押チャンバ412内の低減された圧力は、型押し処理の間、維持される。型押しが完了した後、型押チャンバ412内の圧力は、大気圧に戻ってもよく、カバープレート406は、支持プレート408から分離され、型押しされた膨脹グラファイトシートが取り除かれる。圧縮可能シール410の設計は、本発明の装置にとって本質的ではなく、他の適切な設計が用いられてもよい。例えば、装置の仕様に依存して、真空チャンバ412内の気密シールが維持される限りにおいて、弾力シールが用いられてもよい。
【0034】
図5は、本発明の型押装置のさらなる実施形態の部分分解断面図である。型押装置500において、膨脹グラファイトシート(図示せず)は、ダイ502とダイ504との間に位置する。カバープレート506および支持プレート508は、それぞれ、ダイ502および504を収容するように調節される。また、カバープレート506および支持プレート508は、それぞれ、上方圧盤および下方圧盤(図示せず)に取り付けられている。カバープレート506のスカート510は、支持プレート508に嵌合して収容するように調節される。カバープレート506および支持プレート508の協同面は、型押チャンバ512を規定する。
【0035】
動作中、膨脹グラファイトシートは、ダイ504の上に置かれ、カバープレート506は、支持プレート508へと駆動される。Oリング514は、スカート510と支持プレート508との間に、実質的に気密なシールを形成する。型押チャンバ512内の空気(または他のガス)の少なくとも一部が、ポンプ(図示せず)によって、装置500の周りに間隔を空けて配置されているポート516を介して引き出され、型押チャンバ512内の圧力が、大気圧より下に低減される。その後、ダイ502および504は、互いに向かってさらに駆動され、膨脹グラファイトシートに接触し、型押しする。型押チャンバ512内の低減された圧力は、型押し処理の間、維持される。型押しが完了した後、型押チャンバ512内の圧力は、大気圧に戻ってもよく、カバープレート506は、支持プレート508から分離され、型押しされた膨脹グラファイトシートが取り除かれ得る。
【0036】
図6aおよび図6bは、本発明の装置のさらなる実施形態の断面図である。型押装置600において、膨脹グラファイトシート(図示せず)は、ダイ602とダイ604との間に位置する。カバープレート606および支持プレート608は、それぞれ、ダイ602およびダイ604を収容するように調節される。また、カバープレート606および支持プレート608は、それぞれ、上方圧盤および下方圧盤(図示せず)に取り付けられる。膨脹式空気袋610は、カバープレート606に固定されている。空気袋クランプ612は、カバープレート606を覆うように空気袋610を固定することに役立つ。空気(または、他のガス)が導入され得、開口部614を介して空気袋610から取り除かれ得る。開口部614は、空気袋610内の圧力が、オペレータによって手動で、または、自動コントローラによって、制御されることを可能にする。カバープレート606、支持プレート608、および空気袋610の協同面は、型押しチャンバ616を含む。
【0037】
動作中、膨脹グラファイトシートは、ダイ604の上に置かれ、カバープレート606は、支持プレート608へと駆動される。空気袋610は、図6bに示すように、カバープレート606と支持プレート608との間に、実質的に気密なシールを形成するために適切な圧力まで膨脹される。あるいは、空気袋610は、カバープレート606と支持プレート608との間に気密なシールが形成される限り、圧縮可能シールによって置き換えられてもよい。型押チャンバ616内の空気(または他の気体)の少なくとも一部が、ポンプ(図示せず)によって、ポート618を介して引き出され、型押チャンバ616内の圧力が、大気圧より下に低減される。その後、ダイ602および604は、互いに向かってさらに駆動され、膨脹グラファイトシートに接触し、型押しする。型押チャンバ616内の低減された圧力は、型押し処理の間、維持される。型押しが完了した後、型押チャンバ616内の圧力は、大気圧まで戻ってもよく、カバープレート606は、支持プレート608から分離され、型押しされた膨脹グラファイトシートは、取り除かれ得る。
【0038】
上記の実施形態は、プレス圧盤を用いて、膨脹グラファイトシート材料を型押しするとして説明されているが、型押しする方法として他の方法が用いられてもよい。例えば、図3〜6の実施形態のうちいずれかのプレートダイの一方が、ローラーダイと取り換えられてもよい。ローラーは、シート材料をダイに対して押すために用いられ得、表面にダイ形状を有し得る。しかし、プレス圧盤の実施形態が好ましい。
【0039】
同様に、上記の実施形態は、真空ポートを用いて、型押チャンバから型押し大気の少なくとも一部を引き出すとして説明された、本発明の方法および装置は、このようなポートに限定されない。例えば、下方のダイ、ダイの支持、または両方が多孔性であってもよく、型押し大気の少なくとも一部が、多孔性部品から引き出され得る。多孔性部品は、例えば、アルミニウム発泡体などから製造され卯が、当業者にとって公知である。しかし、上述したように、真空ポートの仕様が好ましい。
【0040】
本明細書中および添付の特許請求の範囲で用いられる「実質的に気密」とは、必ずしも、密閉封止された状態を意味しない。この点については、概して、実質的に気密な状態とは、空気(または他の気体)の流入が、チャンバ内の圧力が、型押しの間、大気圧より低い圧力に維持されているように、制限されている限り、達成される。
【0041】
また、本発明の方法および装置は、型押しのあいだ、局所化された大気の制御を可能にする。例えば、上記の本発明の実施形態は、型押チャンバ内の気圧を低減する前に、不活性ガス(例えば、窒素)を型押チャンバに供給する不活性ガス源をさらに含み得る。例えば、型押しおよび/または積層の間、酸化条件が有害である、適用例などにおいて、不活性雰囲気は、所望され得る。このように、局所化された型押し雰囲気を制御することが所望される場合、実質的に気密な型押チャンバが、型押しの間、実質的に密閉封止されることが望ましい。
【0042】
さらに、上記の本発明の装置の実施形態は、型押チャンバから、型押し/積層処理の間に、遊離され得る任意の気体および蒸気の除去を可能にする。有害な気体または蒸気が、安全な様態で、捕捉され、格納され、処分され得る。例えば、装置は、真空ポートとポンプとの間に、フィルタをさらに含み得、任意の有毒な気体を収集および濾過する。あるいは、正の圧力差が、型押しの後に型押チャンバ内において確立されて、任意の有毒な気体がフィルタまたは他の適切な捕捉手段へと取り除かれ得る。さらなる代替例として、このような気体は、適切である場合には、環境に排出され得る。有毒な気体を安全に除去する他の方法が、当業者にとって明らかである。
【0043】
上記の実施形態の全てにおいて、型押チャンバ内の低減された圧力が、好ましくは、型押し処理の間、維持される。型押しが完了した後、型押チャンバの圧力は、大気圧に戻ってもよく、型押し部材は、分離され、型押しされた膨脹グラファイトシートは、除去され得る。型押チャンバ内の低減された圧力を維持することによって、膨脹グラファイトシート内に溜められる気体の量は低減され、概して、型押しされた材料が所与の用途において不適切になるようなグラファイトシート内の大きいブリスターの形成が防がれる。例えば、型押しされたグラファイトシートが、燃料電池用途において、フローフィールドプレートとして用いられる場合、大きいブリスターは、いくつかの理由で、所望されない。例えば、大きいブリスターは、構造的にプレートを弱めるか、不規則な表面特性を生成するか、または、プレートに型押しされた所望のフロー経路を妨害する。あるいは、型押しシートが、続いて、不浸透性を高めるために、含浸剤(例えば、樹脂)によって含浸される場合、大きいブリスターが存在すると、プレートの膨脹グラファイトマトリクス内の固体含浸剤のポケットの原因となり得る。さらなる例として、大きいブリスターが存在すると、積層された膨脹グラファイトシートの層間剥離の原因となり得る。
【0044】
型押チャンバ内の圧力は、部分的には、膨脹グラファイトシートをブリスターを避けるように型押するために必要な時間を決定する。概して、型押チャンバの圧力がより高ければ、型押しは、気体がシート内に溜まることを避け、ブリスターを防ぐためには、よりゆっくりと行われる必要があり、処理の部分歩留まりがより低くなる。好ましくは、型押し処理の間の型押チャンバ内の圧力は、約400torr以下である。より好ましくは、圧力は、350torr未満である。さらに好ましくは、型押チャンバ内の圧力は、170torr未満であり、いっそう好ましくは、50torr未満である。
【0045】
上記の実施形態は、膨脹グラファイトシート材料の型押しに、型押チャンバ内の圧力が、少なくとも型押し工程の間、大気圧より低い圧力で維持される、型押チャンバを用いる。本発明者らは、大気圧より低い圧力でチャンバ内に位置付け、続いて、シート材料を大気圧で型押しすることによって、膨脹グラファイトシート材料内の気体の少なくとも一部を取り除くことが可能であることも発見した。
【0046】
膨脹グラファイトシート材料内の気体の少なくとも一部が、低減された圧力で除去され、シート材料を大気圧にさらすことが、気体が再入することを可能にする。再度、任意の特定の理論によって制限されることなく、膨脹グラファイトシート材料の異方性が、実質的に端からのシート材料へのガスの流入も制限する。膨脹グラファイトシート材料が、大きなブリスターまたは層間剥離を引き起こすために充分な量の気体がシート材料に再導入される前に型押しされる限り、型押しは、型押しされた製品の品質に悪影響を及ぼすことなく、発生し得る。
【0047】
図7aは、本発明の装置の他の実施形態の断面図である。図7bは、図7aの装置のAで示した部分の断面図である。図7cは、図7aの装置のAで示した部分の下半分の上面図である。図7dは、以下で説明するシールの2つの実施形態の側面図である。
【0048】
型押装置700において、膨脹グラファイトシート701は、ハウジング706内のローラー702とローラー704との間に向けられる。型押装置700は、シール708および710(図7aまたは図7bには図示せず。図7cおよび7dを参照のこと)をさらに含み得、ローラー702および704の端部と、ハウジング706の隣接する部分との間に、実質的に気密なシールを提供する。図7cに、ハウジング706内に位置する、2つのローラー704を示す。2つのローラー704のうち一方は、所定の位置にシール708および710を有し、もう一方は、シールを有さない。シール708および710の形状は、本発明の装置において、重要な特徴ではない。この点から、シールは、ローラーの端部で実質的に気密なシールを形成することができる限り、あらゆる形状を有し得る。シール708は、図7dのシール708aおよび図7cのシール708のように、個別に形成されてもよいし、所望される場合には、図7dのシール708bのように、一体化されたシール部材として形成されてもよい。当然、同じことがシール710にも当てはまる。シールは、必要に応じて、ハウジング706内の1つ以上のローラーとともに用いられ得る。
【0049】
本発明の装置の実施形態は、ローラー702および704の円柱状表面に接触するように調節され、その間に、実質的に気密なシールを提供するローラーシール716をさらに含み得る。ローラーシール716は、実質的に気密なシールを提供する、適切な弾性があり、摩擦が低い任意の材料、例えば、黄銅、またはTeflon(登録商標)(W.L.Gore&Associates,Inc.、Elkton,Maryland,USA)シートを含み得る。図7aおよび7bに、それぞれ、関連付けられたローラーシール716を有するローラー702および704を示すが、これは必ずしも必要ではない。装置は、ローラーシールを含まなくてもよいし、ローラーの一部または全てと腱連付けられたローラーシールを含んでもよい。
【0050】
動作中、膨脹グラファイトシート701は、ローラー702および704へと向けられ得る。ローラー702および704の表面は、シート701と接触し、(必要に応じて)シール708および710と接触し、ローラーシール716と接触して、協同して、チャンバ718内に、実質的に気密なシールを形成する。チャンバ718内の気体の少なくとも一部が、ポンプ(図示せず)によって、ポート720を介して引き出され、チャンバ718内の圧力が、大気圧より下に低減される。チャンバ718内の圧力を大気圧より下に低減することによって、膨脹グラファイトシート701の内部における気体の一部が除去される。膨脹グラファイトシート701のチャンバ718を出る部分は、膨脹グラファイトシート701に接触し、型押しする型押しダイ712および714に向けられる。
【0051】
図7a〜図7cには、2対より多い対向するローラー702および704を有する型押装置700を示すが、この構成は、実質的に気密なシールを維持することができるチャンバを形成するために必ずしも必要ではない。例えば、このようなチャンバは、2対のローラー702および704のみから形成されてもよい。あるいは、ローラー702または704のセットのいずれかが、実質的に平坦で、滑らかな表面によって置き換えられてもよい。この場合は、適切なチャンバは、滑らかな表面に対向する、2つのローラー(例えば、2つのローラー702、または2つのローラー704)によって形成され得る。
【0052】
本実施形態は、膨脹グラファイトシート材料701をハウジング706およびローラーダイ712および714に向ける、ハウジング706に関連付けられた供給ローラーをさらに含み得る。あるいは、ローラー702および704のうちの1つが駆動され得る。
【0053】
ローラーの円柱状表面は、ローラーと膨脹グラファイトシール材料との間にシールを提供するのに役立つ材料を含み得る。例えば、ローラーの円柱状表面は、シールに役立ち得る、弾性材料、例えば、ウレタンを含み得る。
【0054】
図8は、本発明の装置の他の実施形態の断面図である。型押装置800において、膨脹グラファイトシート801は、送りローラー802および804の間に向けられ、ハウジング806の中へと向けられる。弾性部材808は、膨脹グラファイトシート801に接触し、その間に、実質的に気密なシールを提供する。ハウジング806には、ローラーダイ810および812が、それぞれ隣接する。
【0055】
動作中、膨脹グラファイトシート801が、送りローラー802および804によって、ハウジング806に向けられる。シート801に接触している弾性部材808は、協同して、ハウジング806のチャンバ814内において、実質的に気密なシールを形成する。チャンバ814内の気体の少なくとも一部が、ポンプ(図示せず)によって、ポート816を介して引き出され、チャンバ814内の圧力が大気圧より下に低減される。チャンバ814内の圧力を大気圧より下に低減することによって、膨脹グラファイトシート材料801の内部の気体の一部が除去される。膨脹グラファイトシート801のチャンバ806を出る部分は、ローラーダイ810および812に向けられ、型押しされる。
【0056】
図9は、本発明の装置の他の実施形態の断面図である。型押装置900において、膨脹グラファイトシート901は、くびれ904を介して、ハウジング902に向けられている。所望される場合、装置900は、膨脹グラファイトシート901をハウジング902に向ける1つ以上の送りローラーを含んでもよい。チャンバ908内に位置する弾性部材906は、膨脹グラファイトシート901に接触し、その間に、実質的に気密なシールを提供する。ハウジング902には、ローラーダイ910および912が、それぞれ隣接する。
【0057】
動作中、膨脹グラファイトシート901は、ハウジング902内のくびれ904に向けられる。くびれ904は、膨脹グラファイトシート901の自由な移動は可能にするが、ハウジング902と膨脹グラファイトシート901との間の空気の自由な移動は制限するようにサイズが決定される。シート901と接触している弾性部材906は、協同して、その間に、実質的に気密なシールを形成する。チャンバ908内の気体の少なくとも一部が、ポンプ(図示せず)によって、ポート914を介して引き出される。くびれ904は、ハウジング902の外部からチャンバ908への空気(または他の気体)の流入を制限して、ポンプがチャンバ908内の圧力を大気圧より下に低減することを可能にする。チャンバ908内の圧力を大気圧より下に低減することによって、膨脹グラファイトシート901の内部の気体の一部が除去される。膨脹グラファイトシート901のハウジング902を出ている部分は、ローラーダイ910および912に向けられ、型押しされる。
【0058】
代替的な実施形態において、装置900は、弾性部材906の代わりに、図7aまたは図7bに示すような少なくとも1セットのローラーダイを含み得る。さらに、1つ以上のローラーが、ローラーダイによって置き換えられ得、別個のローラーダイ910および912の必要性をなくす。
【0059】
図8および9には、2対より多い弾性部材を有する型押装置を示しているが、実質的に気密なシールを維持することができるチャンバを形成するために、必ずしもこの構成が必要ではない。例えば、このようなチャンバは、1対の弾性部材のみから形成されてもよい。あるいは、対向する弾性部材の対のいずれかは、実質的に平坦で、滑らかな表面によって置き換えられてもよい。この場合、平坦な表面に対向する1つの弾性部材によって、適切なチャンバが形成され得る。複数の弾性部材は、より良好な、またはより信頼できるシールを提供し得る。
【0060】
図7a、図8、および図9に示す本発明の実施形態において、1対のローラーダイが示されている。これは、膨脹グラファイトシートの両方の主面の型押しを可能にする。あるいは、膨脹グラファイトシート材料の一方の側のみに形状を型押しすることが所望される場合、ローラーダイの対のうちの一方が、実質的に平坦なローラーによって置き換えられ得る。あるいは、ローラーの対のうちの一方が省略され得、膨脹グラファイトシートは、型押しの間、1つのローラーダイによって、比較的平坦な表面上で支持され得る。
【0061】
さらなる代替例として、図7aに示す本発明の装置の実施形態において、ローラー702および704のうちの1つ、または、ローラー702または704の1対は、それぞれ、1つ、または1対のローラーダイによって置き換えられ得る。例えば、膨脹グラファイトシート材料701と接触する、ローラー702および704の最後の対は、材料を型押しするため、ローラーダイによって置き換えられ得る。このようにして、別個のローラーダイ712および724が省略され得る。
【0062】
図7a、図8、および図9に示す本発明の実施形態において、膨脹グラファイトシート材料は、好ましくは、大きなブリスターまたは層間剥離を引き起こすのに充分な量の気体がシート材料に再導入される前に、型押しされる。大きなブリスターまたは層間剥離が型押しされたシート内で起こり得る前に、膨脹グラファイトシート材料に再導入され得る気体の量は、チャンバを出る、シート内の気体の量に依存する。膨脹グラファイトシート材料内のこの気体の量は、部分的には、チャンバ内の圧力に依存する。概して、型押チャンバ内の圧力が高ければ高いほど、型押しの前に、型押しされた製品に悪い影響を与えることなく、膨脹グラファイトシート材料に再導入され得る気体が少なくなる。好ましくは、チャンバ内の圧力は、約400torr以下であり、より好ましくは、350torr未満である。さらに好ましくは、チャンバ内の圧力は、170torr未満であり、一層好ましくは、50torr未満である。
【0063】
気体が膨脹グラファイトシートに再導入されるレートは、シートの厚さ、シートのグレード(組成)、シートが装置を通過するスピード、およびチャンバとローラーダイのニップとの間の距離に依存する。膨脹グラファイトシート材料内の気体の量、およびシート材料への気体の再導入のレートの両方が、型押しの間、シート材料にある気体の量に影響する。
【0064】
従って、チャンバ内の圧力、膨脹グラファイトシート材料が装置を通過するスピード、およびチャンバとローラーダイのニップとの間の距離は、膨脹グラファイトシート材料の所与の厚さおよびグレードについて、型押しされたシートにおいてブリスターまたは層間剥離の原因となり得る気体の再導入を最小限にするように、制御され得る。膨脹グラファイトシートの所与のグレードおよび厚さについてのパラメータの特定の組合せは、当業者によって、経験に基づいて決定され得る。
【0065】
図7a、図8、および図9に示す本発明の実施形態は、膨脹グラファイトシートのバッチを型押しすることに適し、特に、膨脹グラファイトシート材料の連続型押しに適する。例えば、実施形態は、膨脹グラファイトシート材料のロールの連続型押しに用いられて、流体フローフィールドプレートを製造する。型押しの後、膨脹グラファイトシートは、このように形成されたプレートを分離させるように、横に切られる。
【0066】
本発明の方法および装置は、膨脹グラファイトシートの主面の一方または両方に形状を型押しするように用いられ得る。シートの主面の両方に型押しされた型押しされた形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、フローチャネルは、膨脹グラファイトシートの主面の両方に型押しされて、一般的にバイポーラプレートと呼ばれるものを製造し得る。フローチャネルは、同じ寸歩および/または方向を有してもよいし、異なる寸法および方向を有していてもよい。
【0067】
本発明は、互いに積層され、必要に応じて他の材料と積層される、1つ以上の膨脹グラファイトシートを含む積層を型押しするためにも用いられ得る。また、積層媒体と装置の部材との互換性に依存して、型押しと同時に積層を行うためにも用いられ得る。
【0068】
上記の実施形態の全てにおいて、膨脹グラファイトシートの表面は、所望される場合、型押しのあいだに、さらに気体を除去するため、穴が開けられ得る。例えば、ピンローラーが用いられて、膨脹グラファイトシートの表面に穴が開けられ得る。これは、手動で行われてもよいし、膨脹グラファイトシートに穴を開ける機構が本発明の装置に組み込まれていてもよい。例えば、図7a、図8、および図9に示す本発明の装置の実施形態は、膨脹グラファイトシートをハウジングに向けるピンローラーをさらに含み得る。また、ピンローラーが用いられて、膨脹グラファイトシートの表面に穴が開けられて、型押しプロセスの間に気体がさらに除去される。あるいは、ピンローラーの対向する対が用いられ、ピンローラーのうちの一方または両方が膨脹グラファイトシートの表面に穴を開け得る。穴を開けるメカニズムによって、膨脹グラファイトシートに開けられる穴の深度を大きくすることは、型押しの間のブリスターの形成を低減する傾向がある。反対に、あまりに深く膨脹グラファイトシートに穴を開けることは、得られる型押しされた製品の外観または構造的な一体性に所望しない効果をもたらし得る。適切な侵入の度合いは、例えば、膨脹グラファイトシート材料の厚さ、シート材料のグレード(組成)、型押し後の処理、および、型押しされたシート材料の最終用途に依存する。従って、膨脹グラファイトシートに穴を開けることが用いられる場合、適切な侵入の度合いを経験的に決定する際には、注意深くなる必要がある。
【0069】
本発明の方法および装置が用いられて、流体フローフィールドプレートが製造される場合、ダイは、複数のプレートパターンを組み込み得る。例えば、ローラーダイは、各型押し工程が、1つより多いプレートを製造するように、複数のプレートパターンを組み込み得る。1つの型押し工程につき、複数のプレートを平行して処理することは、部品について、製造サイクル時間の低減につながり得る。
【0070】
本発明の特定の要素、実施形態、および適用例が示され、説明されてきたが、当然、本発明はこれらに限定されず、当業者によって、特に、上記の説明に照らして、改変を為され得ることが理解される。従って、本発明の範囲内に含まれる特徴を組み込んだ添付の特許請求の範囲がこのような改変例を含むと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の型押装置のある実施形態の部分分解断面図である。
【図2a】
図2aは、本発明の装置の他の実施形態の部分分解断面図である。
【図2b】
図2bは、本発明の装置の他の実施形態の部分分解断面図である。
【図3】
図3は、本発明の型押装置のさらに別の実施形態の部分分解断面図である。
【図4a】
図4aは、本発明の型押装置のさらに別の実施形態の断面図である。
【図4b】
図4bは、本発明の型押装置のさらに別の実施形態の断面図である。
【図5】
図5は、本発明の型押装置のさらなる実施形態の部分分解断面図である。
【図6a】
図6aは、本発明の型押装置のさらなる実施形態の断面図である。
【図6b】
図6bは、本発明の型押装置のさらなる実施形態の断面図である。
【図7a】
図7aは、本発明の装置のさらなる実施形態の断面図である。
【図7b】
図7bは、図7aの装置のAで示した部分の断面図である。
【図7c】
図7cは、図7aの装置のAで示した部分の下半分の上面図である。
【図7d】
図7dは、図7aの装置に組み込まれ得るシールの2つの実施形態の側面図である。
【図8】
図8は、本発明の他の実施形態の断面図である。
【図9】
図9は、本発明の他の実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 膨脹グラファイトシート材料を型押しする方法であって、型押し雰囲気中、大気圧より下に低減された圧力で該材料を型押しする工程と、少なくとも該型押し工程の間、低減された圧力を維持する工程とを包含する、方法。
【請求項2】 前記型押し雰囲気が、不活性ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記不活性ガスが、窒素、ヘリウム、およびアルゴンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】 前記不活性ガスが、実質的に純粋な窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】 前記型押し工程の間、前記型押し雰囲気から気体を排出し続ける工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】 前記材料は、少なくとも1つの膨脹グラファイトシート材料を含む複数のシート材料を含む方法であって、該方法は、前記型押し工程の間、該複数のシート材料を積層する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】 前記複数のシート材料は、少なくとも1つの金属箔のシートを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】 前記低減された圧力は、約400torr以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】 前記低減された圧力は、約350torr以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】 前記低減された圧力は、約170torr以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】 前記低減された圧力は、約50torr以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】 前記材料を型押しする前に、該材料の少なくとも1つの表面に穴を開ける工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】 膨脹グラファイトシートを型押しする方法であって、前記材料を大気圧より低い圧力にさらすことによって、該材料内から前記気体の少なくとも一部を除去する工程と、その後、該材料を型押しする工程とを包含する、方法。
【請求項14】 前記材料は、少なくとも1つの膨脹グラファイトシート材料を含む複数のシート材料を含む方法であって、該方法は、前記型押し工程の間、該複数のシート材料を積層する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】 前記複数のシート材料は、少なくとも1つの金属箔のシート材料を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】 前記低減された圧力は、約400torr以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】 前記低減された圧力は、約350torr以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】 前記低減された圧力は、約170torr以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】 前記低減された圧力は、約50torr以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】 前記材料を前記大気圧より低い圧力にさらす前に、該材料の少なくとも1つの表面に穴を開ける工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】 膨脹グラファイトシート材料を、大気圧より低い圧力で型押しする装置であって、 (a)少なくとも1つの型押しデバイスと、 (b)該型押デバイスを材料に向かって駆動するように調節された、少なくとも1つの圧縮メカニズムと、 (c)該少なくとも1つの型押しデバイスを含み、材料を収容するように調節された型押チャンバであって、該型押しデバイスが、該圧縮メカニズムによって、該材料に対して駆動されるときには実質的に気密である、型押チャンバと、 (d)該型押チャンバ内の圧力を低減する排気メカニズムとを含み、 該排気メカニズムが、前記型押チャンバ内の前記圧力を約350torr以下に低減することができる型押しする装置。
【請求項22】 膨脹グラファイトシート材料を、大気圧より低い圧力で型押しする装置であって、 (a)少なくとも1つの型押しデバイスと、 (b)該型押デバイスを材料に向かって駆動するように調節された、少なくとも1つの圧縮メカニズムと、 (c)該少なくとも1つの型押しデバイスを含み、材料を収容するように調節された型押チャンバであって、該型押しデバイスが、該圧縮メカニズムによって、該材料に対して駆動されるときには実質的に気密である、型押チャンバと、 (d)該型押チャンバ内の圧力を低減する排気メカニズムとを含み、 該排気メカニズムが、前記型押チャンバ内の前記圧力を約170torr以下に低減することができる型押しする装置。
【請求項23】 膨脹グラファイトシート材料を、大気圧より低い圧力で型押しする装置であって、 (a)少なくとも1つの型押しデバイスと、 (b)該型押デバイスを材料に向かって駆動するように調節された、少なくとも1つの圧縮メカニズムと、 (c)該少なくとも1つの型押しデバイスを含み、材料を収容するように調節された型押チャンバであって、該型押しデバイスが、該圧縮メカニズムによって、該材料に対して駆動されるときには実質的に気密である、型押チャンバと、 (d)該型押チャンバ内の圧力を低減する排気メカニズムとを含み、 該排気メカニズムが、前記型押チャンバ内の前記圧力を約50torr以下に低減することができる型押しする装置。
【請求項24】 膨脹グラファイトシート材料を、大気圧より低い圧力で型押しする装置であって、 (a)少なくとも1つの型押しデバイスと、 (b)該型押デバイスを材料に向かって駆動するように調節された、少なくとも1つの圧縮メカニズムと、 (c)該少なくとも1つの型押しデバイスを含み、材料を収容するように調節された型押チャンバであって、該型押しデバイスが、該圧縮メカニズムによって、該材料に対して駆動されるときには実質的に気密である、型押チャンバと、 (d)該型押チャンバ内の圧力を低減する排気メカニズムとを含み、 該型押チャンバに関連付けられた、該型押チャンバ内で気密シールを維持する、少なくとも1つのシーリング部材を含む型押しする装置。
【請求項25】 前記シーリング部材は、Oリング、ベロー、圧縮可能シール、および膨脹式空気袋からなる群から選択される、少なくとも1つのデバイスを含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】 前記シーリング部材が、少なくとも1つのOリングを含む、請求項24に記載の装置。
【請求項27】 前記シーリング部材が、少なくとも1つの圧縮可能シールを含む、請求項24に記載の装置。
【請求項28】 前記シーリング部材が、少なくとも1つの膨脹式空気袋を含む、請求項24に記載の装置。
【請求項29】 膨脹グラファイトシート材料を、大気圧より低い圧力で型押しする装置であって、 (a)少なくとも1つの型押しデバイスと、 (b)該型押デバイスを材料に向かって駆動するように調節された、少なくとも1つの圧縮メカニズムと、 (c)該少なくとも1つの型押しデバイスを含み、材料を収容するように調節された型押チャンバであって、該型押しデバイスが、該圧縮メカニズムによって、該材料に対して駆動されるときには実質的に気密である、型押チャンバと、 (d)該型押チャンバ内の圧力を低減する排気メカニズムとを含み、 該少なくとも1つの型押しデバイスが、ローラーダイである型押しする装置。
【請求項30】 膨脹グラファイトシート材料を、大気圧より低い圧力で型押しする装置であって、 (a)少なくとも1つの型押しデバイスと、 (b)該型押デバイスを材料に向かって駆動するように調節された、少なくとも1つの圧縮メカニズムと、 (c)該少なくとも1つの型押しデバイスを含み、材料を収容するように調節された型押チャンバであって、該型押しデバイスが、該圧縮メカニズムによって、該材料に対して駆動されるときには実質的に気密である、型押チャンバと、 (d)該型押チャンバ内の圧力を低減する排気メカニズムとを含み、 該少なくとも1つの加圧デバイスが、ローラーである型押しする装置。
【請求項31】 膨脹グラファイトシート材料を型押しする装置であって、 (a)該材料を収容し、少なくとも該材料がチャンバ内にあるときには、大気圧より下に低減された圧力を維持するように調節されたチャンバと、 (b)該型押チャンバ内の圧力を低減する排気メカニズムと、 (c)該チャンバに関連付けられ、該チャンバから該材料を収容する少なくとも1つのローラーダイと を包含する、装置。
【請求項32】 前記チャンバの内部表面から延び、前記材料に接触するように調節された少なくとも1つの弾性部材を含む、請求項31に記載の装置。
【請求項33】 前記チャンバが、上側部分および下側部分を含む装置であって、該上側部分が、該上側部分から下向きに延びる複数の弾性シーリング部材を含み、該下側部分が、該下側部分から上向きに延びる複数の弾性シーリング部材を含み、該シーリング部材の両方のセットが、該材料に接触するように調節される、請求項31に記載の装置。
【請求項34】 前記材料を前記チャンバに向ける、少なくとも1つの送りローラーをさらに含む、請求項33に記載の装置。
【請求項35】 前記少なくとも1つの送りローラーは、ピンローラーである、請求項34に記載の装置。
【請求項36】 前記チャンバが、前記材料の主面に接触し、該主面との間に実質的に気密なシールが形成されるように調節された少なくとも2つのローラーを含み、請求項31に記載の装置。
【請求項37】 前記少なくとも1つのローラーおよび前記少なくとも1つのローラーダイが同じである、請求項36に記載の装置。
【請求項38】 前記少なくとも2つのローラーが、少なくとも2対の対向するローラーを含み、該対向するローラーの対のそれぞれが、前記材料の対向する主面に接触するように調節されている、請求項36に記載の装置。
【請求項39】 前記チャンバに関連付けられた、該チャンバ内で気密なシールを維持する少なくとも1つのシーリング部材をさらに含む、請求項36に記載の装置。
【請求項40】 前記少なくとも1つのシーリング部材は、前記少なくとも1つのローラーの各端部に配置されたシーリング部材を含む、請求項39に記載の装置。
【請求項41】 前記少なくとも1つのシーリング部材は、前記少なくとも1つのローラーの円柱状表面に接触し、該円柱状表面との間に実質的に気密なシールを形成するように調節される弾性部材を含む、請求項39に記載の装置。
【請求項42】 前記少なくとも1つのローラーの円柱状表面に接触し、該円柱状表面との実質的に気密なシールが形成されるように調節される弾性部材をさらに含む、請求項39に記載の装置。
【請求項43】 前記少なくとも1つのローラーが駆動される、請求項38に記載の装置。
【請求項44】 前記材料を前記チャンバへと向ける、少なくとも1つの送りローラーをさらに含む、請求項38に記載の装置。
【請求項45】 前記少なくとも1つの送りローラーが、ピンローラーである、請求項44に記載の装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2003−533001(P2003−533001A)
【公表日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−582860(P2001−582860)
【出願日】平成13年5月7日(2001.5.7)
【国際出願番号】PCT/CA01/00654
【国際公開番号】WO01/086743
【国際公開日】平成13年11月15日(2001.11.15)
【出願人】
【氏名又は名称】バラード パワー システムズ インコーポレイティド
【Fターム(参考)】