説明

膵臓癌、卵巣癌、および他の癌の検出および処置

本願は、変性CD70に特異的に結合する抗体を使用する、卵巣癌、膵臓癌および他の癌の診断、予後、予防および処置の方法を提供する。一局面において、抗体は、未変性のCD70への結合と比較して、変性CD70に特異的に結合するものが提供される。いくつかの実施形態において、上記抗体は、未変性のCD70への結合と比較して、固定した卵巣SK−OV−3癌細胞株もしくは膵臓PANC−1癌細胞株上の変性CD70に特異的に結合する。上記抗体は、モノクローナル抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体)であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2008年4月11日に出願された米国仮特許出願第61/044,457号の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
CD70は、種々の正常細胞タイプおよび悪性細胞タイプによって発現される細胞膜結合型分子および分泌型分子の腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのメンバーである。CD70は、カルボキシル末端細胞の外側に露出され、アミノ末端が形質膜のサイトゾル側に見いだされるII型膜貫通タンパク質である(非特許文献1;非特許文献2)。ヒトCD70は、20アミノ酸の細胞質ドメイン、18AAの膜貫通ドメイン、および2つの潜在的N結合型グリコシル化部位を有する155AAの細胞外ドメインを含む(非特許文献1;非特許文献2)。抗CD70抗体によって放射性同位体標識したCD70発現細胞の特異的免疫沈降は、29kDaおよび50kDaのポリペプチドを生じる(非特許文献2;非特許文献3)。TNF−αおよびTNF−βに対するその相動性に基づいて、トリマー構造が、CD70に関して推定されている(非特許文献4)。
【0003】
CD70は、ヒトにおける正常組織上で限定した発現を有する。このことは、CD70を癌治療についての魅力的な標的にする。しかし、CD70発現は、ごく少数の癌(例えば、腎細胞癌、結腸癌、非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫のうちの特定のタイプ)で同定された。癌細胞上でのCD70発現は、代表的には、未変性のCD70に結合する抗体を使用して(例えば、免疫組織化学によって)検出される。固定した患者サンプル上でのCD70発現の検出は、CD70に対する十分な特異性を欠いている不十分な品質の抗体に起因して、問題があることが判明した。特に、交叉反応性およびバックグラウンド染色は、固定したサンプルにおけるCD70の検出を妨害する。本発明は、この要求および他の要求に解答する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bowmanら,1994,J.Immunol.152:1756−61
【非特許文献2】Goodwinら,1993,Cell 73:447−56
【非特許文献3】Hintzenら,1994,J.Immunol.152:1762−73
【非特許文献4】Petschら,1995,Mol.Immunol.32:761−72
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、CD70に対する抗体を使用して、診断、予後判定、予防および処置するための方法、ならびに卵巣癌、膵臓癌および他の癌の処置をモニタリングするための方法を提供する。本発明は、診断、予後判定、予防および処置するための方法、ならびに肺、頭頸部癌(喉頭もしくは咽頭)、黒色腫、神経膠芽腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫)、腎細胞癌(明細胞癌および乳頭状癌を含む)、結腸直腸癌および膀胱癌の処置をモニターするための方法をさらに提供する。
【0006】
一局面において、抗体は、未変性のCD70への結合と比較して、変性CD70に特異的に結合するものが提供される。いくつかの実施形態において、上記抗体は、未変性のCD70への結合と比較して、固定した卵巣SK−OV−3癌細胞株もしくは膵臓PANC−1癌細胞株上の変性CD70に特異的に結合する。上記抗体は、モノクローナル抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体)であり得る。好ましくは、上記抗体は、ATCCに寄託されかつアクセッション番号PTA−8733を割り当てられたハイブリドーマによって生成される抗体SG−21.1C1もしくはATCCに寄託されかつアクセッション番号PTA−8734を割り当てられたハイブリドーマによって生成される抗体SG−21.5D12以上の特異的結合で、ホルマリン固定したパラフィン包埋の細胞もしくは組織上の変性CD70に結合する。特に、上記抗体の非特異的交叉反応性は、抗体SG−21.1C1のものよりも、抗体SG−21.5D12のものよりも小さい。いくつかの実施形態において、上記抗体は、変性CD70への特異的結合について、抗体SG−21.1C1と、もしくは抗体SG−21.5D12と競合し得る。
【0007】
別の局面において、診断キットは、未変性のCD70と比較して、変性CD70に特異的に結合する抗体を含むものが提供される。関連局面において、患者の組織サンプル中のCD70の発現を検出するための方法が提供される。上記組織サンプルは、上記患者からの膵臓、卵巣、肺、喉頭、咽頭、乳房、腎臓、脳、結腸、血液もしくは皮膚に由来し得る。上記組織(issue)固定され、上記CD70タンパク質は変性される。上記固定した組織サンプルは、未変性のCD70と比較して、変性CD70 に特異的に結合する抗体と接触させられ、上記固定された組織サンプルへの上記抗体の結合は、CD70が、上記サンプルにおいて発現されている回中を決定するために検出される。上記固定された組織サンプル上のCD70の発現は、上記患者がCD70発現癌を有する可能性を示す。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、ホルマリンで固定され、パラフィン中に包埋される。
【0008】
別の局面において、膵臓、卵巣、肺、喉頭、咽頭、乳房、もしくは皮膚の癌を有する患者を診断するか、予後を判定するか、上記患者の処置プロトコルを決定するか、または上記患者の処置をモニタリングするための方法が提供される。上記方法は、上記患者の膵臓、卵巣、肺、喉頭、咽頭、乳房、もしくは皮膚に由来するサンプル中の細胞におけるCD70発現を決定する工程を包含し、ここで検出可能なCD70発現の存在は、上記患者の診断、予後判定、上記患者の処置プロトコルの決定、もしくは上記患者の処置のモニタリングにおいて使用される。上記サンプルは、ホルマリン固定したパラフィン包埋サンプルであり得る。上記方法は、上記決定する工程が、CD70の検出可能なレベルを示す場合、上記患者にCD70抗体もしくはCD70抗体薬物結合体の有効レジメンを施す工程をさらに包含し得る。
【0009】
別の局面において、CD70陽性癌を処置するための方法が提供される。上記方法は、CD70に対する結合剤の有効レジメンを、CD70の検出可能な発現を有する、膵臓、卵巣、肺、喉頭、咽頭、乳房、もしくは皮膚の癌を有する患者に施す工程を包含し、ここで上記結合剤は、抗体、抗体誘導体もしくは抗体薬物結合体である。上記抗体は、エフェクター機能を有し得る。上記患者は、外科手術、照射および/もしくはCD70に対して指向されない薬剤での化学療法による処置を以前に受けたことがあり得るが、上記癌の寛解が誘導されなかった。いくつかの実施形態において、上記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、もしくはヒト抗体(例えば、モノクローナル抗体1F6もしくは2F2のキメラ形態もしくはヒト化形態)である。上記抗体薬物結合体は、細胞傷害性薬剤(例えば、抗チューブリン剤、DNA副溝結合剤、もしくはDNA副溝アルキル化剤)を含み得る。上記抗体薬物結合体における上記抗体は、リンカー(例えば、細胞内条件下で切断可能なリンカー)を介して、細胞傷害性薬剤もしくは細胞増殖抑制剤に結合体化され得る。
【0010】
別の局面において、組み合わせ診断・薬学的キットは、診断における使用のための変性CD70に特異的に結合する抗体および治療における使用のためのCD70の未変性の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を含む。
【0011】
本発明の局面は、添付の図面、図、表とともに考慮れば、例示的実施形態の以下の詳細な説明を参照することによってもっともよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、786−O、293F:CD70形質転換細胞および293F非トランスフェクト細胞からのタンパク質抽出物中の変性CD70を検出するための、抗体SG−21.1C1およびSG−21.5D12を使用するタンパク質抽出物のウェスタンブロットを示す。
【図2】図2は、上記SG21.1C1抗体を使用する、ホルマリン固定したパラフィン包埋の(FFPE)膵臓細胞株PANC−1上のCD70タンパク質発現を示す。
【図3】図3は、SG21.1C1抗体を使用する、卵巣細胞株Ovcar−3、SK−OV−3、Ca−Ov−3およびTOV−21GにおけるCD70タンパク質発現を示す。
【図4】図4は、抗体SG−21.1C1もしくはSG−21.5D12によって検出される膵臓腫瘍サンプル中のCD70タンパク質発現 対 コントロールmIgGによって検出される膵臓腫瘍サンプル中のCD70タンパク質発現を示す。
【図5】図5は、色素原ファストレッド(濃い色)を使用して、上記SG−21.1C1抗体によって検出される正常膵臓細胞もしくは膵臓腫瘍細胞上のCD70タンパク質発現を示す。
【図6】図6は、膵臓癌細胞におけるCD70タンパク質発現の評価を示す。x軸は、CD70染色強度を示し、y軸は、CD70陽性である面積の割合を示す。
【図7】図7は、卵巣腫瘍におけるCD70タンパク質発現の評価を示す。x軸は、CD70染色強度を示し、y軸は、CD70陽性である面積の割合を示す。
【図8】図8は、卵巣癌細胞株SKOV−3に対する種々のヒト化1F6抗体薬物結合体のインビトロ細胞傷害性活性の評価を示す。
【図9−1】図9A〜Cは、以下の細胞株上でのヒト化1F6抗体薬物結合体のインビトロ細胞傷害性活性の評価を示す:(A)CD70トランスフェクトした膵臓細胞株であるHPAFII。(B)CD70トランスフェクトしたPANC−1膵臓細胞株。(C)CD70トランスフェクトしたMiaPaCa−2細胞株。
【図9−2】図9A〜Cは、以下の細胞株上でのヒト化1F6抗体薬物結合体のインビトロ細胞傷害性活性の評価を示す:(A)CD70トランスフェクトした膵臓細胞株であるHPAFII。(B)CD70トランスフェクトしたPANC−1膵臓細胞株。(C)CD70トランスフェクトしたMiaPaCa−2細胞株。
【図10】図10は、ヌードマウス中のCD70トランスフェクトしたMiaPaCa膵臓癌(pancreatic carcinoma tumor)に対するヒト化1F6抗体薬物結合体のインビボ効力の評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(定義)
別段示されない限り、以下の用語および語句は、本明細書で使用される場合、以下の意味を有することが意図される。
【0014】
用語「抗体」とは、(a)特異的抗原(例えば、CD70)に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む免疫グロブリンポリペプチドおよび免疫グロブリンポリペプチドの免疫学的に活性な部分(すなわち、免疫グロブリンファミリーのポリペプチドもしくはそのフラグメント)、または(b)上記抗原(例えば、CD70)に免疫特異的に結合するこのような免疫グロブリンポリペプチドもしくはフラグメントの保存的に置換された誘導体をいう。抗体は、一般に、例えば、Harlow&Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988)に記載されている。状況から別段明らかでなければ、抗体への言及はまた、以下により詳細に記載される抗体誘導体もしくは薬物結合体を含む。
【0015】
「抗体誘導体」とは、上記で定義されるように、上記抗体と通常は結合していない異種分子の共有結合によって(例えば、異種ポリペプチドの付着によって、またはグリコシル化、脱グリコシル化、アセチル化、もしくはリン酸化によってなど)改変される抗体を意味する。
【0016】
用語「モノクローナル抗体」とは、任意の真核生物細胞もしくは原核生物細胞クローン、またはファージクローンを含む単一細胞株から得られ、上記ものクローナル抗体が生成される方法に由来しない抗体をいう。従って、用語「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマ技術を介して生成される抗体に限定されない。
【0017】
「抗原」とは、抗体が特異的に結合する実体である。
【0018】
用語「阻害する」もしくは「〜の阻害」とは、測定可能な量まで低下させること、または完全に妨げることを意味する。
【0019】
用語「薬剤(因子)(agent)」とは、エレメント、化合物、もしくは分子実体(例えば、薬学的化合物、治療用化合物、もしくは薬理学的化合物を含む)を意味する。薬剤は、天然もしくは合成のもの、またはこれらの組み合わせであり得る。「治療剤」とは、単独で、もしくは別の薬剤(例えば、あるプロドラッグとの組み合わせでのプロドラッグ変換酵素)との組み合わせのいずれかで、癌細胞に対して治療的(例えば、有益な)効果を発揮する薬剤である。代表的には、本明細書に記載される方法および組成物に従って有用な治療剤は、細胞傷害性効果もしくは細胞増殖抑制効果を発揮するものである、
「細胞傷害性効果」とは、細胞に対する薬剤の効果に言及して、上記細胞の死滅させることを意味する。
【0020】
「細胞増殖抑制効果」とは、細胞増殖の阻害を意味する。
【0021】
「細胞傷害性薬剤」とは、細胞に対して細胞傷害性効果もしくは細胞増殖抑制効果を有し、それによって、それぞれ、細胞集団内の細胞の増殖を除去するもしくは阻害する薬剤を意味する。
【0022】
用語「除去する(deplete)」とは、CD70発現細胞に対するCD70抗体の効果の状況において、上記CD70発現細胞の数の減少もしくはその排出をいう。
【0023】
用語「機能的」とは、本明細書に記載される方法に従って使用されるべき抗CD70抗体もしくはその誘導体の状況において、上記抗体もしくはその誘導体は、(1)CD70に結合し得ること、および/または(2)単独で、もしくは細胞傷害性薬剤に結合体化される場合に、CD70発現細胞の増殖を除去もしくは阻害することを示す。
【0024】
用語「予防」とは、(a)上記CD70発現癌、またはその臨床的症状もしくは診断的症状のうちの1つ以上の発生もしくは開始をブロックするために、(b)上記CD70発現癌の開始の重篤度を阻害するために、あるいは(c)上記CD70発現癌の開始の可能性を低下させるために、CD70発現癌の臨床的症状もしくは診断的症状の発生の前に、被験体へ抗CD70抗体−薬物結合体(ADC)もしくはADC誘導体を投与すること(例えば、膵臓癌もしくは卵巣癌の損を有するかまたはそれらを獲得するリスクの高い個体へ投与すること)に言及する。
【0025】
用語「処置」もしくは「処置する」とは、上記疾患の臨床的症状もしくは診断的症状の低下もしくは排除によって、任意の臨床ステージにおいて上記CD70発現癌の上記臨床的症状もしくは診断的症状の開始の後に、上記被験体へ抗CD70抗体、抗体薬物結合体もしくはADC誘導体を投与することによって明示されるように、患者におけるCD70発現癌の進行を遅らせるか、停止させるか、もしくは逆転させることに言及する。処置は、例えば、症状の重篤度、症状の回数、もしくは再発の頻度の低下を含み得る。
【0026】
用語「薬学的に受容可能な」とは、連邦政府もしくは州政府の当局により承認されていること、または米国局方、もしくは動物およびより具体的にはヒトにおける使用について他の一般に認識されている局方に列挙されていることを意味する。用語「薬学的に適合性の成分」とは、CD70抗体と一緒に投与される、薬学的に受容可能な希釈剤、アジュバント、賦形剤、もしくはビヒクルをいう。
【0027】
用語「有効量」とは、薬剤の投与の状況において、患者におけるCD70発現膵臓癌もしくはCD70発現卵巣癌の出現を阻害するに十分であるか、または上記癌の1つ以上の臨床的症状もしくは診断的症状を改善するに十分な薬剤の量をいう。薬剤の有効量は、「有効レジメン」において本明細書に記載される方法に従って投与される。用語「有効レジメン」とは、CD70発現癌の処置を達成するに適切な上記薬剤の量と投与頻度との組み合わせをいう。
【0028】
用語「患者」とは、診断的処置、予防的処置、もしくは治療的処置を受けるヒトおよび他の哺乳動物被験体を含む。
【0029】
略語「AFP」とは、ジメチルバリン−バリン−ドライソロイシン(dolaisoleuine)−ドラプロリン(dolaproine)−フェニルアラニン−p−フェニレンジアミンをいう。
【0030】
略語「MMAE」とは、モノメチルオーリスタチン(auristatin)Eをいう。
【0031】
略語「AEB」とは、オーリスタチン Eとパラアセチル安息香酸とを反応させることによって生成されるエステルをいう。
【0032】
略語「AEVB」とは、オーリスタチン Eとベンゾイル吉草酸とを反応させることによって生成されるエステルをいう。
【0033】
略語「MMAF」とは、ドバリン(dovaline)−バリン−ドライソロイシン−ドラプロリン−フェニルアラニンをいう。
【0034】
略語「fk」および「phe−lys」とは、ジペプチドフェニルアラニン−リジンをいう。
【0035】
略語「vc」および「val−cit」とは、ジペプチドバリン−シトルリンをいう。
【0036】
治療剤は、代表的には、望ましくない夾雑物が実質的に混じっていない。このことは、薬剤が、代表的には、少なくとも約50% w/w(重量/重量)純度、ならびに妨害するタンパク質および夾雑物を実質的に含まないことを意味する。ときおり、上記薬剤は、少なくとも約80% w/w、およびより好ましくは、少なくとも90% w/wもしくは約95% w/wの純度である。しかし、従来のタンパク質精製技術を使用すると、少なくとも99% 純度 w/wの均質なペプチドが得られ得る。
【0037】
(詳細な説明)
I.概論
本発明は、CD70に対する抗体を使用して、卵巣癌および膵臓癌を診断、予後判定、予防および処置するための方法、ならびに上記卵巣癌および膵臓癌の処置をモニタリングするための方法を提供する。本発明は、肺癌、頭頸部癌(喉頭もしくは咽頭)、黒色腫、神経膠芽腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫)、腎細胞癌(明細胞癌および乳頭状癌を含む)、結腸直腸癌および膀胱癌の診断、予後判定、予防および上記癌の処置のモニタリングのための方法をさらに提供する。上記方法は、CD70が特定の癌において上昇したレベルで発現されることを示す、実施例で示される結果に対して一部基づく。上記上昇した発現は、変性CD70に特異的に結合する抗体を使用して、卵巣癌組織および膵臓癌組織からのホルマリン固定したパラフィン包埋の(FFPE)サンプル中で検出される。さらに、CD70の上昇した発現はまた、CD70の変性細胞外ドメインに対する抗体を使用して、他の癌組織からのホルマリン固定したパラフィン包埋の(FFPE)サンプル中で検出される。
【0038】
本発明の実施は、機構の理解に依存しないが、特に、卵巣組織および膵臓組織、ならびに他の癌のFFPEサンプル中でCD70を検出することにおける成功が、一般に、未変性のCD70と比較して、このようなサンプル中の変性CD70に優先的に結合する抗体の使用にあると考えられる。膵臓癌および卵巣癌、ならびに/もしくはそのレベルにおける検出可能なCD70の頻度は、CD70が以前に結合していたいくつかの他の癌組織と同程度に高くはないが、正常組織と比較して、癌組織に対して非常に特異的である。従って、CD70が検出可能である卵巣癌もしくは膵臓癌を有する患者において、CD70は、毒性を癌組織に選択的に指向するための特に有用な標的を表す。同様に、他の癌(例えば、肺癌、頭頸部(喉頭もしくは咽頭)癌、黒色腫、神経膠芽腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫)、腎細胞癌(明細胞癌および乳頭状癌を含む)、結腸直腸癌および膀胱癌)を有する患者において、本発明は、このような患者に由来する固定したサンプル中のCD70発現を検出する容易な方法を提供する。
【0039】
(II.CD70に対する抗体)
以下の説明は、最初に、卵巣癌および膵臓癌におけるCD70の検出および上記癌の処置に適用可能なCD70に対する抗体の特性を考慮し、次いで、上記それぞれの適用のための抗体の好ましい特性に焦点を当てる。
【0040】
(A.一般的なCD70に対する抗体)
抗CD70抗体としては、モノクローナル抗体、キメラ抗体(例えば、ヒト定常領域およびマウス可変領域を有する)、ヒト化抗体、貼り合わせ(veneered)抗体、もしくはヒト抗体;一本鎖抗体などが挙げられる。上記免疫グロブリン分子は、任意のタイプまたはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)もしくはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)のものであり得る。
【0041】
抗CD70抗体は、抗原結合抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)、F(ab’)、Fd鎖、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VドメインもしくはVドメインを含むフラグメント(ラクダ、ラマなどに由来するナノボディー(nanobodies)もしくはフラグメント、またはFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、または前出の上記抗体のうちのいずれかのCD70結合フラグメントが挙げられる)であり得る。抗原結合抗体フラグメント(一本鎖抗体を含む)は、上記可変領域単独、もしくは以下の全体もしくは部分と組み合わせて含み得る:ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCLドメイン。また、抗原結合フラグメントは、可変領域と、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCLドメインとの任意の組み合わせを含み得る。代表的には、上記抗体は、ヒト、齧歯類(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ科の動物(camelid)、ウマもしくはニワトリである。
【0042】
上記抗体は、1種特異的(mono−specific)、2種特異的(bi−specific)、3種特異的(tri−specific)、もしくはより多くの複数種特異的(multi−specificity)なものであり得る。複数種特異的抗体は、CD70の異なるエピトープに対して特異的であってもよいし、CD70および異種タンパク質の両方に対して特異的であってもよい(例えば、WO 93/17715;WO 92/08802;WO 91/00360;WO 92/05793;Tuttら,1991,J.Immunol.147:60−69;米国特許第4,474,893号;同第4,714,681号;同第4,925,648号;同第5,573,920号;および同第5,601,819号;Kostelnyら,1992,J.Immunol.148:1547−1553を参照のこと)。本明細書で記載される方法を実施するために有用な複数種特異的抗体(2種特異的抗体および3種特異的抗体を含む)は、CD70および第2の細胞表面レセプターもしくはレセプター複合体(例えば、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーメンバー、TNFレセプタースーパーファミリーメンバー、インテグリン、サイトカインレセプター、ケモカインレセプター、腫瘍組織適合タンパク質、レクチン(C型、S型、もしくはI型)、または補体制御タンパク質)の両方に免疫特異的に結合する抗体である。
【0043】
抗CD70抗体はまた、10−7M、5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M、5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M、5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M、もしくは10−15MのCD70に対するそれらの結合親和性に関して記載され得る。
【0044】
抗CD70抗体は、キメラ抗体であり得る。キメラ抗体は、上記抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子(例えば、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体)である。キメラ抗体を生成するための方法は、当該分野で公知である(例えば、Morrison,Science,1985,229:1202;Oiら,1986,BioTechniques 4:214;Gilliesら,1989,J.Immunol.Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816,397号を参照のこと)。
【0045】
抗CD70抗体はまた、貼り合わせ抗体を含むヒト化抗体であり得る。ヒト化抗体は、所望の抗原を結合し、非ヒト種に由来する1つ以上の相補性決定領域(CDR)、ヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域および定常領域を有する抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、CDRドナー抗体に由来する対応する残基で置換されて、抗原結合を改変するか、または好ましくは改善する。これらフレームワーク置換は、当該分野で周知の方法によって(例えば、上記CDRおよびフレームワーク残基の相互作用をモデリングして、抗原結合によって重要なフレームワーク残基を同定すること、および配列比較して、特定の位置における通常でないフレームワーク残基を同定することによって)同定される(例えば、Queenら,米国特許第5,585,089号;Riecbmannら,1988,Nature 332:323を参照のこと)。抗体は、種々の当該分野で公知の技術(例えば、CDRグラフティング(grafting)(EP 0 239 400;WO 91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;および同第5,585,089号)、貼り合わせもしくは張り替え(resurfacing)(EP 0 592 106;EP 0 519 596;Padlan,Molecular Immunology,1991,28(4/5):489−498;Studnickaら,1994,Protein Engineering 7(6):805−814;Roguskaら,1994,PNAS 91:969−973)、および鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)(これら参考文献の全ては、本明細書に参考として援用される)を使用して、ヒト化され得る。
【0046】
抗CD70抗体はまた、ヒト抗体であり得る。ヒト抗体は、種々の当該分野で公知の方法(例えば、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ法(前出を参照のこと)によって作製され得る。例えば、米国特許第4,444,887号および同第4,716,111号;WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741もまた参照のこと。さらに、選択されたエピトープをんんしきするヒト抗体は、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)が、同じエピトープを認識する完全にヒト抗体の選択をガイドするために使用される「ガイドされた選択」と言われる技術を使用して、生成され得る(例えば、Jespersら,1994,Biotechnology 12:899−903を参照のこと)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを使用して生成され得る。上記抗原に対して指向されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して、免疫したトランスジェニックマウスから得られ得る。ヒト抗体を生成するための技術の総説については、Lonberg and Huszar,1995,Int.Rev.Immunol.13:65−93を参照のこと。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術ならびにこのような抗体を生成するためのプロトコルの詳細な議論については、例えば、PCT公開WO 98/24893;WO 92/01047;WO 96/34096;WO 96/33735;欧州特許第0 598,877号;ならびに米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318号;同第5,885,793号;同第5,916,771号;および同第5,939,598号を参照のこと。
【0047】
抗体は、公知の方法(例えば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイのような技術を使用する、競合的イムノアッセイシステムおよび非競合的イムノアッセイシステム)によって、CD70への特異的結合についてアッセイされ得る(例えば、Ausubelら,編,Short Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,Inc.,New York,第4版.1999);Harlow & Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1999を参照のこと)。
【0048】
さらに、CD70に対する抗体の結合親和性および抗体CD70相互作用のoff−rateは、競合的結合アッセイによって決定され得る。競合的結合アッセイの一例は、漸増量の非標識CD70の存在下での標識CD70(例えば、Hもしくは125I)と上記目的の抗体とのインキュベーションおよび上記標識CD70に結合した上記抗体の検出を含むラジオイムノアッセイである。次いで、CD70に対する上記抗体に親和性および上記結合off−rateは、スキャッチャードプロット分析によるデータから決定され得る。第2の抗体との競合はまた、ラジオイムノアッセイを使用して決定され得る。この場合、CD70は、漸増量の非標識の第2の抗体の存在下で、標識化合物(例えば、Hもしくは125I)に結合体化した上記目的の抗体とインキュベートされる。あるいは、CD70に対する抗体の結合親和性、ならびに抗体−CD70相互作用のon−rateおよびoff−rateは、表面プラスモン共鳴によって決定され得る。
【0049】
抗体は、抗体のタイプに従って、標準的手順によってCD70タンパク質の抗原含有フラグメントから作製され得る(例えば、Kohlerら,Nature,256:495,(1975);Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(C.S.H.P.,NY,1988);Queenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)およびWO 90/07861;Dowerら,WO 91/17271ならびにMcCaffertyら,WO 92/01047(これらの各々は、全ての目的で参考として援用される)を参照のこと)。例として、モノクローナル抗体は、広く種々の技術(例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、およびファージディスプレイ技術、もしくはこれらの組み合わせの使用を含む)を使用して、調製され得る。ハイブリドーマ技術は、一般に、例えば、Harlowら,前出およびHammerlingら,In Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,pp.563−681(Elsevier,N.Y.,1981)において議論されている。上記抗CD70抗体を作製するために使用され得るファージディスプレイ法の例としては、例えば、Briinnanら,1995,J.Immunol.Methods 182:41−50;Amesら,1995,J.Immunol.Methods 184:177−186;Kettleboroughら,1994,Eur.J.Immunol.24:952−958;Persicら,1997,Gene 187:9−18;Burtonら,1994,Advances in Immunology 57:191−280;PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT公開番号WO 90/02809;WO 91/10737;WO 92/01047;WO 92/18619;WO 93/11236;WO 95/15982;WO 95/20401;ならびに米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第;5,571,698号;同第5,427,908号;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号;同第5,733,743号および同第5,969,108号(これらの開示は、本明細書に参考として援用される)において開示されるものが挙げられる。
【0050】
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントを生成するための技術はまた、一般に、当該分野で公知である。例えば、FabおよびF(ab’)フラグメントは、パパイン(Fabフラグメントを生成するため)もしくはペプシン(F(ab’)フラグメントを生成するため)のような酵素を使用して、免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断によって生成され得る。F(ab’)フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のC1ドメインを含む。Fab、Fab’およびF(ab’)フラグメントを組換え生成する技術はまた、例えば、WO 92/22324;Mullinaxら,1992,BioTechniques 12(6):864−869;およびSawaiら,1995,AJRI 34:26−34;ならびにBetterら,1988,Science 240:1041−1043(これらの開示は、本明細書に参考として援用される)で開示されている方法を使用して、使用され得る。
【0051】
一本鎖Fvおよび抗体を生成するために使用され得る技術の例としては、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号;Hustonら,1991,Methods in Enzymology 203:46−88;Shuら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7995−7999;ならびにSkerraら,1988,Science 240:1038−1040に記載されるものが挙げられる。
【0052】
本発明の方法において有用な抗CD70抗体およびその誘導体はまた、組換え発現技術によって生成され得る。CD70に結合し、そして/またはCD70発現細胞の増殖を除去するかもしくは阻害する抗体もしくはその誘導体の組換え発現は、上記抗体もしくはその誘導体をコードする核酸を含む発現ベクターの構築を要する。いったんこのようなタンパク質をコードする核酸が得られたら、上記タンパク質分子を生成するためのベクターは、当該分野で周知の技術を使用して、組換えDNA技術によって生成され得る。Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,第3版,2001);Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,第2版,1989);Ausubelら,Short Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,New York,第4版,1999);およびGlick & Pasternak,Molecular Biotechnology:Principles and Applications of Recombinant DNA(ASM Press,Washington,D.C.,第2版,1998)に記載されるもののような標準的な技術は、組換え核酸方法、、核酸合成、細胞培養、導入遺伝子組み込み、および組換えタンパク質発現のために使用され得る。
【0053】
例えば、抗CD70抗体の組換え発現については、発現ベクターは、プロモーターに作動可能に連結された、上記抗体の重鎖もしくは軽鎖、または重鎖可変ドメインもしくは軽鎖可変ドメインをコードし得る。発現ベクターは、例えば、上記抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含み得(例えば、WO 86/05807;WO 89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照のこと)、そして上記抗体の可変ドメインは、重鎖全体もしくは軽鎖全体の発現のためのこのようなベクターにクローニングされ得る。上記発現ベクターは、公地の技術によって宿主細胞に移入され、上記トランスフェクトされた細胞は、次いで、上記抗CD70抗体を生成するために培養され得る。代表的には、二本鎖抗体の発現については、上記重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、免疫グロブリン分子全体の発現のために、上記宿主細胞において同時に発現され得る。
【0054】
種々の原核生物および真核生物の宿主−発現ベクター系は、抗CD70抗体もしくはその誘導体を発現するために利用され得る。代表的には、真核生物細胞(特に、全組換え抗CD70抗体分子のための)は、上記組換えタンパク質の発現のために使用される。例えば、ヒトサイトメガロウイルスもしくはチャイニーズハムスター卵巣EF−1αプロモーターに由来する主要中間初期遺伝子プロモーターエレメント(intermediate early gene promoter element)のようなベクターとともに、哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(例えば、DG44もしくはCHO−S))は、抗CD70抗体およびその誘導体の生成のための有効な発現系である(例えば、Foeckingら,1986,Gene 45:101;Cockettら,1990,Bio/Technology 8:2;Allison,米国特許第5,888,809号を参照のこと)。
【0055】
他の宿主発現系としては、細菌細胞におけるプラスミドベースの発現系(例えば、Rutherら,1983,EMBO 1,2:1791;Inouye & Inouye,1985,Nucleic Acids Res.13:3101−3109;Van Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.24:5503−5509を参照のこと);昆虫系(例えば、Spodoptera frugiperda細胞におけるAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)発現ベクターの使用);および哺乳動物細胞におけるウイルスベースの発現系(例えば、アデノウイルスベースの系)(例えば、Logan & Shenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:355−359;Bittnerら,1987,Methods in Enzymol.153:51−544を参照のこと)が挙げられる。
【0056】
(B.CD70を検出するための抗体)
検出法において使用するためのCD70に対する抗体の選択は、CD70が、変性CD70もしくは未変性のCD70(細胞上で発現されるように)の検出を要する技術によって検出されるか否かに依存する。標的CD70が変性されるウェスタンブロッティングもしくは免疫組織化学的検出のような方法において、変性形態のCD70(例えば、ヒトもしくはカニクイザルCD70)に結合する抗体を使用することが好ましい。代表的には、このような抗体は、上記未変性の形態(すなわち、天然で存在するままのCD70もしくは変性条件(例えば、溶媒、界面活性剤もしくは高温(例えば、50℃より高い)に曝されることなく単離された場合)よりも変性形態に優先的に結合する。このような抗体は、細胞外部分に由来する変性CD70免疫原(例えば、ヒトもしくはカニクイザルのCD70)、もしくはその免疫原性フラグメントを使用して惹起され得る。変性は、SDS(例えば、0.5%)での上記免疫原の処理および必要に応じて最大80℃までの加熱によってもたらされ得る。変性はまた、免疫原を精製するために使用されるSDSゲルから上記免疫原を溶出することによって、単純にもたらされ得る。あるいは、変性CD70に優先的に結合する抗体は、免疫原としてのCD70の細胞外ドメインから合成ペプチドを使用して生成され得る。いくつかのこのようなペプチドは、短すぎて、上記未変性ペプチドの対応するセグメントのコンホメーションを保持できない。合成ペプチドは、免疫原として使用するために変性され得るが、通常は、変性を要するわけではない。
【0057】
これらおよび他の方法によって生成される抗体は、未変性のCD70と比較して、変性CD70への優先的な結合についてスクリーニングされる。変性CD70抗原および未変性のCD70抗原は、同じアッセイによって、もしくは異なるアッセイによって、アッセイされ得る。特に、後者のアプローチが使用される場合、上記スクリーニングは、未変性のCD70を結合することが公知のコントロール抗体(例えば、以下の治療用抗体(例えば、ヒト化1F6もしくは2F2;米国特許出願公開第2006−0233794号および同第2006−0083736号、ならびに国際特許公開WO 06/113909を参照のこと))で行われ得る。抗体が、上記コントロール抗体の結合比と比較して、未変性のCD70より、変性CD70に対する結合比がより高い場合、上記抗体は、変性CD70に優先的に結合する。
【0058】
膵臓癌および卵巣癌においてCD70の検出するための好ましい抗体は、ホルマリンで固定されかつパラフィン中に包埋された(FFPE)膵臓癌標本もしくは卵巣癌標本上のCD70に優先的に結合するものである。これら抗体は、未処理の膵臓癌細胞もしくは卵巣癌細胞上の未変性のCD70抗原と比較して、上記FFPE処理によって露出されたCD70上のエピトープを優先的に認識する。このような抗体は、FFPE特異的抗CD70抗体といわれる。このような抗体は、未変性のCD70に対する検出可能な特異的結合を欠いている。好ましくは、上記抗体の特異的結合は、抗体SG−21.1C1もしくはSG−21.5D12と同等以上である。特に、上記抗体は、好ましくは、特異的結合条件下でウェスタンブロットもしくは固定細胞の染色によって決定される場合、抗体SG−21.1C1もしくはSG−21.5D12と比較して、他の細胞タンパク質に対して同等以下の検出可能な交叉反応性を有する。
【0059】
他の癌におけるCD70の検出のための好ましい抗体(実施例において以下に記載される)は、ホルマリンで固定されかつパラフィン中に包埋された(FFPE)これら癌標本におけるCD70に特異的に結合するものである。これら抗体は、未変性のCD70抗原または未処理の膵臓癌細胞もしくは卵巣癌細胞と比較して、上記FFPE処理によって露出したCD70上のエピトープを優先的に認識する。このような抗体は、未変性のCD70に対する検出可能な特異的結合を欠いている。好ましくは、上記抗体の特異的結合は、抗体SG−21.1C1もしくはSG−21.5D12の同等以上である。特に、上記抗体は、好ましくは、抗体SG−21.1C1もしくはSG−21.5D12と比較すると、特定の結合条件下で、ウェスタンブロットもしくは固定細胞の染色によって決定される場合、他の細胞タンパク質に対して同等以下の検出可能な交叉反応性を有する。
【0060】
いくつかの例示的なFFPE特異的抗CD70抗体は、mAb SG−21.1C1(SG−21.1C1−B3ともいわれる)およびmAb SG−21.5D12.C3(SG−21.5D12.C3ともいわれる)である。他の好ましい抗体は、変性CD70への特異的結合について、SG−21.1C1.B3もしくはSG−21.5D12.C3と競合する。他の好ましい抗体は、SG−21.1C1.B3の重鎖に由来する3つのCDRを含む重鎖、およびSG−21.1C1.B3の軽鎖に由来する3つのCDRを含む軽鎖を含む。他の好ましい抗体は、SG−21.5D12.C3の重鎖に由来する3つのCDRを含む重鎖、およびSG−21.5D12.C3の軽鎖に由来する3つのCDRを含む軽鎖を含む。他の好ましい抗体は、上記SG−21.1C1.B3の成熟重鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域、および上記SG−21.1C1.B3の成熟軽鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域を含む。他の好ましい抗体は、上記SG−21.5D12.C3の重鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域、および上記SG−21.5D12.C3の成熟軽鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域を含む。
【0061】
(C.治療的適用のためのCD70に対する抗体)
治療的適用のために使用される抗体は、膵臓癌細胞もしくは卵巣癌細胞の上の未変性のCD70抗原の細胞外ドメインに特異的に結合する。治療的適用に使用される抗体はまた、肺、頭頸部(喉頭もしくは咽頭)、黒色腫、神経膠芽腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫)、腎細胞癌(明細胞癌および乳頭状癌を含む)、結腸直腸癌および膀胱癌上の未変性のCD70抗原の細胞外ドメインに特異的に結合し得る。上記抗体は、そのリガンドであるCD27に対するCD70結合に関して、作動的、非作動的もしくは拮抗的であり得る。本発明の実施は、機構の理解に依存しないが、上記抗体は、CD70への結合および細胞内へインターなライズされる結果として、もしくは細胞の外側に蓄積されるCD70への結合によって、細胞傷害性効果もしくは細胞増殖抑制効果を発揮し得ると考えられる。いずれにしても、上記細胞傷害性効果もしくは細胞増殖抑制効果は、上記抗体を、細胞傷害性薬剤もしくは細胞増殖抑制剤に結合体化することによって、促進され得る。CD70へ結合した抗体によって、上記細胞の外側から発揮される上記細胞傷害性効果もしくは細胞増殖抑制効果は、抗体の定常(constant)(エフェクター)機能によって、さらに、もしくは代わりに促進され得る。上記抗体定常ドメインは、種々のIgエフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)および/もしくは抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)における上記抗体の関与)を媒介する。必要に応じて、CD70−結合剤の上記エフェクター機能は、WO2006/113909に記載されるいくつかのアプローチによって増大させられ得る。上記抗体によって発揮される細胞傷害性効果もしくは細胞増殖抑制効果はまた、CD70とそのリガンドであるCD27との相互作用をブロックすることによって促進され得る。
【0062】
好ましい抗CD70抗体は、WO 2004/073656および公開米国出願第2006−0233794号およびWO2006/113909において記載されるように、mAb 1F6もしくは2F2、またはそのキメラ形態もしくはヒト化形態である。好ましい重鎖成熟可変領域は、配列番号1の配列を有し、好ましい軽鎖成熟可変領域は、配列番号2の配列を有する。
【0063】
他の有用な抗体は、配列番号1および配列番号2に対して、それぞれ、少なくとも90%および好ましくは、少なくとも95%もしくは99%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域および成熟軽鎖可変領域を含む。可変領域フレームワークが結合に必要とされる残基に関するガイダンスは、WO2006/113909によって提供される。他の有用な抗CD70抗体もしくはその誘導体は、例えば、イムノアッセイによって決定される場合、CD70へのmAb 1F6もしくは2F2の結合を競合的に阻害し得る。競合的阻害は、抗体が、少なくとも2倍過剰および好ましくは、5倍過剰で存在する場合に、少なくとも50%、より代表的には、少なくとも60%、さらにより代表的には、少なくとも70%、および最も代表的には、少なくとも75%だけ、CD70への1F6もしくは2F2の結合を阻害するか、または上記抗体が、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%だけCD70への1F6もしくは2F2の結合を競合的に阻害することを意味する。
【0064】
他の好ましい抗体は、1F6の重鎖可変領域に由来する3つのCDRを含む重鎖、および1F6の軽鎖可変領域に由来する3つのCDRを含む軽鎖を含む。他の好ましい抗体は、上記2F2の成熟重鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域、および上記2F2の軽鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域を含む。他の好ましい抗体は、上記1F6の成熟重鎖可変領域に対して少なくとも90%、95%もしくは99%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域、および上記1F6の成熟軽鎖可変領域に対して少なくとも90%、95%もしくは99%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域を含む。他の好ましい抗体は、上記2F2の成熟重鎖可変領域(配列番号3)に対して少なくとも90%、95%もしくは99%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域、および上記2F2の成熟軽鎖可変領域(配列番号4)に対して少なくとも90%、95%もしくは99%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域を含む。
【0065】
多くの他のCD70に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第2005−0191299号;および国際公開番号WO 07/038637に記載される。CD70の細胞外ドメインに結合する他の抗体は、以下に記載されるように、単独でか、または誘導体および/もしくは結合体としてかのいずれで適切であるかについて、スクリーニングされ得る。スクリーニングは、標識抗体を使用して、CD70を発現する細胞へのインターナリゼーションを評価し得る。スクリーニングはまた、細胞傷害性を評価し得る。さらなるスクリーニングは、膵臓癌もしくは卵巣癌および他の癌の動物モデルで行われ得る。例えば、SKOV−3卵巣癌細胞株、AN3CA子宮内膜癌細胞株、TOV21G卵巣癌細胞が、使用され得る。また、PANC1膵臓癌細胞株およびMiaPaca2膵臓癌細胞株が、使用され得る。
【0066】
抗CD70抗体の誘導体はまた、本発明の方法の実施において使用され得る。代表的な改変としては、例えば、グリコシル化、脱グリコシル化、アセチル化、peg化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞リガンドもしくは他のタンパク質への連結などが挙げられる。多くの化学的改変のうちのいずれかは、例えば、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、もしくはツニカマイシンの存在下での代謝的合成によって行われ得る。さらに、上記誘導体は、1もしくは数個の伝統的ではないアミノ酸を含み得る。
【0067】
上記抗体誘導体は、マルチマー(例えば、ダイマー)であり得、上記マルチマーは、1種以上のモノマーを含み、ここで各モノマーは、(i)抗CD70抗体の抗原結合領域もしくはこれに由来するポリペプチド領域(例えば、1もしくは数個のアミノ酸の置換によって)、および(ii)マルチマー化(例えば、ダイマー化)ポリペプチド領域を含み、その結果、上記抗体誘導体は、CD70に特異的に結合するマルチマー(例えば、ホモダイマー)を形成する。代表的には、抗CD70抗体の抗原結合領域もしくはこれに由来するポリペプチド領域は、異種タンパク質と組換え融合されるかまたは化学的に融合され、ここで上記異種タンパク質は、ダイマー化ドメインもしくはマルチマー化ドメインを含む。CD70発現癌を処置もしくは予防する目的で被験体に上記抗体誘導体を投与する前に、上記誘導体は、ホモダイマーもしくはヘテロダイマーの形成を可能にする条件に供される。ヘテロダイマーは、同一のダイマー化ドメインを含み得るが、異なるCD70抗原結合領域、異なるダイマー化ドメイン以外は同一のCD70抗原結合領域、もしくは異なるCD70抗原結合領域およびダイマー化ドメインを含み得る。
【0068】
抗CD70抗体誘導体は、抗CD70抗体を2次抗体に結合体化するkとおによって形成され得る(「抗体ヘテロ結合体」)(例えば、米国特許第4,676,980号を参照のこと)。本発明の方法を実施するために有用なヘテロ結合体は、CD70二結合する抗体(例えば、上記モノクローナル抗体1F6もしくは2F2のCDRおよび/もしくは重鎖を有する抗体)、および表面レセプターもしくはレセプター複合体(例えば、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーメンバー、TNFレセプタースーパ^ファミリーメンバー、インテグリン、サイトカインレセプター、ケモカインレセプター、主要組織適合性タンパク質、レクチン(C型、S型もしくはI型)、もしくは補体制御タンパク質)に結合する抗体を含む。
【0069】
CD70に対する抗体およびそれらの誘導体は、細胞傷害性部分もしくは細胞増殖抑制部分に結合体化されて、抗体薬物結合体(ADC)を形成し得る。抗体もしくは抗体誘導体への結合体化に特に適した部分は、化学療法剤、プロドラッグ変換酵素、放射活性同位体もしくは放射活性化合物、または毒素である。例えば、抗CD70抗体もしくはその誘導体は、細胞傷害性薬剤(例えば、化学療法剤)、もしくは毒素(例えば、細胞増殖抑制もしくは細胞破壊薬剤(例えば、アブリン、リシン A、シュードモナス外毒素、もしくはジフテリア毒素))に結合体化され得る。
【0070】
上記抗CD70抗体もしくはその誘導体は、プロドラッグ変換酵素に結合体化され得る。上記プロドラッグ変換酵素は、上記抗体もしくはその誘導体に組換え的に融合され得るか、または公知の方法を使用して、それらに化学的に結合体化され得る。例示的なプロドラッグ変換酵素は、カルボキシペプチダーゼ G2、β−グルクロニダーゼ、ペニシリン−V−アミダーゼ、ペニシリン−G−アミダーゼ、β−ラクタマーゼ、β−グルコシダーゼ、ニトロレダクターゼ、およびカルボキシペプチダーゼ Aである。
【0071】
治療剤をタンパク質(および特に、抗体)に結合体化するための技術は、周知である(例えば、Arnonら,「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy(Reisfeldら編,Alan R.Liss,Inc.,1985);Hellstromら,「Antibodies For Drug Delivery」,in Controlled Drug Delivery(Robinsonら編,Marcel Dekker,Inc.,第2版.1987);Thorpe,「Antibody Carriers Of Cytotoxics In Cancer Therapy:A Review」,in Monoclonal Antibodies ‘84:Biological And Clinical Applications(Pincheraら編,1985);「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy(Baldwinら編,Academic Press,1985);およびThorpeら,1982,Immunol.Rev.62:119−58を参照のこと。例えば、PCT公開WO 89/12624もまた参照のこと)。
【0072】
上記治療剤は、上記抗体から(例えば、加水分解によって、抗体分解によって、または切断剤によって)切断されなければその活性を減少する様式で結合体化され得る。このような治療剤は、上記抗体もしくはその誘導体に、上記CD70発現癌細胞の細胞内環境中での切断に感受性であるが、その細胞外環境に対しては実質的に感受性でない切断可能なリンカーで結合され、その結果、上記結合体は、上記CD70発現癌細胞によって(例えば、pH感受性もしくはプロテアーゼ感受性によって、エンドソーム中に、ライソゾーム環境中に、もしくはカベオラ環境中に)インターナリゼーションされる場合に、上記抗体もしくはその誘導体から切断される。
【0073】
代表的には、上記ADCは、上記治療剤と上記抗CD70抗体もしくはその誘導体との間のリンカー領域を含む。前出で述べたように、代表的には、上記リンカーは、細胞内環境下で切断可能であり、その結果、上記リンカーの切断は、細胞内環境中で(例えば、ライソゾームもしくはエンドソームもしくはカベオラ内で)、上記抗体から上記治療剤を放出する。上記リンカーは、例えば、細胞内ペプチダーゼもしくはプロテアーゼ酵素(ライソゾームプロテアーゼもしくはエンドソームプロテアーゼを含む)によって切断されるペプチジルリンカーであり得る。代表的には、上記ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長もしくは少なくとも3アミノ酸長である。切断剤としては、カテプシンBおよびカテプシンD、ならびにプラスミンが挙げられ得る(例えば、Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67−123を参照のこと)。CD70発現細胞に存在する酵素によって切断可能なペプチジルリンカーは、最も代表的である。例えば、チオール依存性プロテアーゼであるカテプシン−B(これは、癌組織において高く発現される)によって切断可能なペプチジルリンカーが、使用され得る(例えば、Phe−LeuもしくはGly−Phe−Leu−Glyペプチドを含むリンカー)。他のこのようなリンカーは、例えば、米国特許第6,214,345号に記載されている。特定の実施形態において、上記細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチジルリンカーは、Val−CitリンカーもしくはPhe−Lysジペプチドを含む(例えば、米国特許第6,214,345号(これは、上記Val−Citリンカーを有するドキソルビシンの合成を記載する)を参照のこと)。上記治療剤の細胞内タンパク質分解性放出を使用する1つの利点は、上記薬剤が、代表的には、結合体化される場合に減弱され、そして上記結合体の血清安定性が、代表的には、高いことである。
【0074】
上記切断可能なリンカーは、pH感受性であり得、すなわち、特定のpH値における加水分解に対して感受性であり得る。代表的には、上記pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解可能である。例えば、ライソゾーム中で加水分解可能な酸不安定性のリンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis−アコニットアミド(aconitic amide)、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)が使用され得る(例えば、米国特許第5,122,368号;同第5,824,805号;同第5,622,929号;Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67−123;Nevilleら,1989,Biol.Chem.264:14653−14661を参照のこと)。このようなリンカーは、中性pH条件下(例えば、血液中の条件)で比較的安定であるが、pH5.5もしくは5.0未満(上記ライソゾームの近似のpH)では不安定である。特定の実施形態において、上記加水分解可能なリンカーは、チオエーテルリンカー(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して上記治療剤に結合したチオエーテル(例えば、米国特許第5,622,929号を参照のこと))である。
【0075】
他のリンカーは、還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。ジスルフィドリンカーとしては、SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)およびSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)を使用して形成され得るもの、SPDBおよびSMPTが挙げられる(例えば、Thorpeら,1987,Cancer Res.47:5924−5931;Wawrzynczakら,In Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C.W.Vogel編,Oxford U.Press,1987を参照のこと。米国特許第4,880,935号もまた、参照のこと)。
【0076】
上記リンカーはまた、マロネートリンカー(Johnsonら,1995,Anticancer Res.15:1387−93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lauら,1995,Bioorg−Med−Chem.3(10):1299−1304)、もしくは3’−N−アミドアナログ(Lauら,1995,Bioorg−Med−Chem.3(10):1305−12)であり得る。
【0077】
上記リンカーはまた、薬物ユニットに直接結合される切断不能なリンカー(例えば、マレイミド−アルキレン−もしくはマレイミド−アリールリンカーであり得る。活性な薬物−リンカーは、上記抗体の分解によって放出される。
【0078】
代表的には、上記リンカーは、上記細胞外環境に対して実質的に感受性でなく、このことは、上記ADCのサンプル中の上記リンカーのうちのわずか約20%、代表的には、わずか約15%、より代表的には、わずか約10%、およびさらにより代表的には、わずか約5%、わずか約3%、もしくはわずか約1%が、細胞外環境に(例えば、血漿中に)上記ADCもしくはADC誘導体が存在する場合に、切断されることを意味する。リンカーが上記細胞外環境に対して実質的に感受性でないか否かは、例えば、独立して、(a)上記ADCもしくはADC誘導体(「ADCサンプル」)および(b)等モル量の非結合体化抗体もしくは治療剤(「コントロール」サンプル)の両方を、所定の時間(例えば、2時間、4時間、8時間、16時間、もしくは24時間)にわたって、血漿とインキュベートし、次いで、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定される場合、上記ADCサンプル中に存在する非結合体化抗体もしくは治療剤と、コントロールサンプル中に存在する非結合体化抗体もしくは治療剤とを比較することによって、決定される。
【0079】
上記リンカーはまた、細胞のインターナリゼーションを促進し得る。上記リンカーは、上記治療剤に結合体化された場合に(すなわち、上で記載される上記ADCもしくはADC誘導体の上記リンカー−治療剤部分の環境において)、細胞のインターナリゼーションを促進し得る。あるいは、上記リンカーは、上記治療剤および上記抗CD70抗体もしくはその誘導体の両方に結合体化される場合に(すなわち、本明細書に記載される上記ADCもしくはADC誘導体の環境において)細胞のインターナリゼーションを促進し得る。
【0080】
本発明の組成物とともに使用され得る種々のリンカーは、WO 2004−010957に記載され、以下の形態を有する:
【0081】
【化1】

ここで:
−A−は、ストレッチャーユニット(stretcher unit)であり;
aは、0もしくは1であり;
各−W−は、独立してアミノ酸ユニットであり;
wは、独立して、0〜12の範囲に及ぶ整数であり;
−Y−は、スペーサーユニットであり;そして
yは、0、1もしくは2である。
【0082】
代表的なリンカーは、式(Ia)および(Ib;以下を参照のこと)の角括弧内に示され、ここでA−、−W−、−Y−、−D、wおよびyは、上記で定義されるとおりであり、Rは、−C−C10アルキレン−、−C−Cカルボシクロ−、−O−(C−Cアルキル)−、−アリーレン−、−C−C10アルキレン−アリーレン−、−アリーレン−、C−C10アルキレン−、−C−C10アルキレン−(C−Cカルボシクロ)−、−(C−Cカルボシクロ)−C−C10アルキレン−、−C−Cヘテロシクロ−、−C−C10アルキレン−(C−Cヘテロシクロ)−、−(C−Cヘテロシクロ)−C−C10アルキレン−、−(CHCHO)−、および−(CHCHO)−CH−から選択され;そしてrは、1〜10の範囲の整数である。Abは、抗体である。
【0083】
【化2】

上記アミノ酸ユニット(−W−)は、存在する場合、上記ストレッチャーユニット(−A−)を、上記スペーサーユニットが存在する場合には上記スペーサーユニット(−Y−)に連結し、そして上記ストレッチャーユニットを、上記スペーサーユニットが存在しない場合には上記細胞傷害性薬剤もしくは細胞増殖抑制剤(薬物ユニット;D)に連結する。
【0084】
存在する場合、−W−は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチドもしくはドデカペプチドユニットである。wは、2〜12の範囲の整数である。
【0085】
上記スペーサーユニット(−Y−)は、存在する場合、アミノ酸ユニットを上記薬物ユニットに連結する。スペーサーユニットは、2つの一般的タイプのものである:自壊型(self−immolative)および非自壊型(non self−immolative。非自壊型スペーサーユニットは、上記スペーサーユニットのうちの一部もしくは全てが、上記抗CD70抗体−リンカー−薬物結合体もしくは薬物−リンカー化合物からのアミノ酸ユニットの酵素的切断後に、上記薬物ユニットに結合されたままであるものである。非自壊型スペーサーユニットの例としては、(グリシン−グリシン)スペーサーユニットおよびグリシンスペーサーユニットが挙げられる。グリシン−グリシンスペーサーユニットもしくはグリシンスペーサーユニットを含む抗CD70抗体−リンカー−薬物結合体が、腫瘍細胞関連プロテアーゼ、癌細胞関連プロテアーゼ、もしくはリンパ球関連プロテアーゼを介して酵素的切断を受ける場合、グリシン−グリシン−薬物部分もしくはグリシン−薬物部分は、Ab−A−W−から切断される。上記薬物を遊離するために、独立した加水分解反応が、結合した上記グリシン−薬物ユニットを切断するために上記標的細胞内で起こるべきである。
【0086】
あるいは、自壊型スペーサーユニットを含む抗CD70抗体薬物結合体は、上記薬物(D)を、別個の加水分解工程の必要性なしに遊離し得る。これら実施形態において、−Y−は、p−アミノベンジルアルコール(PAB)基の窒素原子を介して−W−に連結され、カーボネート、カルバメートもしくはエーテル基を介して−Dに直接つなげられるPABユニットである。自壊型スペーサーの他の例としては、上記PAB基に電子的に等価な芳香族化合物(例えば、2−アミノイミダゾール−5−メタノール誘導体(例えば、Hayら,1999,Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2237を参照のこと)およびオルトもしくはパラ−アミノベンジルアセタール)が挙げられる。スペーサーが使用され得、これは、アミド結合加水分解の際に容易な環化を受ける(例えば、置換されたおよび置換されていない4−アミノ酪酸アミド(Rodriguesら,1995,Chemistry Biology 2:223)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Stormら,1972,J.Amer.Chem.Soc.94:5815)ならびに2−アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberryら,1990,J.Org.Chem.55:5867))。グリシンのα位で置換されたアミン含有薬物(Kingsburyら,1984,J.Med.Chem.27:1447)の排出はまた、上記抗CD70抗体−リンカー−薬物結合体に適用され得る自壊型スペーサーストラテジーの例である。あるいは、上記スペーサーユニットは、分枝状ビス(ヒドロキシメチル)スチレン(BHMS)ユニットであり、これは、さらなる薬物を組み込むために使用され得る。
【0087】
細胞傷害性薬剤の有用なクラスとしては、例えば、アントラサイクリン、抗チューブリン剤、DNA副溝結合剤、DNA複製インヒビター、化学療法感作剤(chemotherapy sensitizer)などが挙げられる。
【0088】
細胞傷害性薬剤の有用なクラスの例としては、オーリスタチン、カンプトテシン、デュオカルマイシン、エトポシド、マイタンシノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられる。
【0089】
適切な細胞傷害性薬剤としては、例えば、オーリスタチン(例えば、オーリスタチン E、AFP、MMAF、MMAE)、DNA副溝結合剤(例えば、エンジインおよびレキシトロプシン(lexitropsin))、デュオカルマイシン、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ビンカアルカロイド、ドキソルビシン、モルホリノ−ドキソルビシン、およびシアノモルホリノ−ドキソルビシンが挙げられる。
【0090】
上記細胞傷害性薬剤は、化学療法剤(例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、メルファラン、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、マイトマイシン Cもしくはエトポシド)であり得る。さらに、強力な薬剤(例えば、CC−1065アナログ、カリチアマイシン、マイタンシン、ドラスタチン 10のアナログ、リゾキシン、およびパリトキシン)は、上記抗CD70抗体もしくはその誘導体に連結され得る。
【0091】
例示的な実施形態において、上記細胞傷害性薬剤もしくは細胞増殖抑制剤は、オーリスタチン Eもしくはその誘導体であり得る。代表的には、上記オーリスタチン E誘導体は、例えば、オーリスタチン Eとケト酸との間で形成されたエステルである。例えば、オーリスタチン Eは、パラアセチル安息香酸もしくはベンゾイル吉草酸と反応させられて、それぞれ、AEBおよびAEVBを形成し得る。他の代表的なオーリスタチンとしては、AFP、MMAF、およびMMAEが挙げられる。上記オーリスタチン Eおよびその誘導体の合成および構造は、例えば、米国特許出願公開第2005−0238649号および同第2006−0074008号に記載される。
【0092】
上記細胞傷害性薬剤は、DNA副溝結合剤であり得る(例えば、米国特許第6,130,237号を参照のこと)。例えば、上記副溝結合剤は、CBI化合物もしくはエンジイン(例えば、カリチアマイシン)であり得る。
【0093】
上記ADCもしくはADC誘導体は、抗チューブリン剤を含み得る。抗チューブリン剤の例としては、タキサン(例えば、タキソール(登録商標)(パクリタキセル)、タキソテール(登録商標)(ドセタキセル))、T67(Tularik)、ビンカ・アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)、およびオーリスタチン(例えば、オーリスタチン E、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)が挙げられるが、これらに限定されない(例示的オーリスタチンは、以下の式III〜XIIIに示される)。他の適切な抗チューブリン剤としては、例えば、バッカチン誘導体、タキサンアナログ(例えば、エポチロン Aおよびエポチロン B)、ノコダゾール、コルヒチンおよびコルセミド(colcimid)、エストラムスチン、クリプトフィシン(cryptophysin)、セマドチン、マイタンシノイド、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド(discodermolide)、およびエレウテロビンが挙げられる。
【0094】
【化3】

【0095】
【化4】

【0096】
【化5】

上記細胞傷害性薬剤は、マイタンシノイド(抗チューブリン剤の別のグループ)であり得る。例えば、上記マイタンシノイドは、マイタンシンもそくはマイタンシン含有薬物リンカー(例えば、DM−1もしくはDM−4(ImmunoGen,Inc.;Chariら,1992,Cancer Res.52:127−131もまた参照のこと)である。
【0097】
CD70への他の結合剤は、抗体の代わりとして使用され得る。このようなCD70標的化部分は、CD70に結合し、細胞傷害性薬剤に結合体化された場合にCD70発現細胞の増殖を除去もしくは阻害する抗体由来の1つ以上のCDRを含み得る。代表的には、上記タンパク質は、マルチマー、最も代表的には、ダイマーである。
【0098】
他のCD70標的化部分は、CD70に結合するCD27およびその改変体もしくはフラグメントを含み得る。CD70標的化部分は、CD70に特異的に結合するペプチド、リガンドおよび他の分子をさらに含み得る。
【0099】
本明細書に記載される方法において有用な他のCD70標的化部分は、タンパク質−タンパク質相互作用についてのスクリーニングに適した任意の方法を使用して、同定され得る。代表的には、タンパク質は、これらがCD70に特異的に結合する能力、次いで、細胞傷害性薬剤もしくは細胞増殖抑制剤に結合体化した場合に、これらが活性化リンパ球もしくはCD70発現癌細胞に対して細胞増殖抑制効果もしくは細胞傷害性効果を発揮する能力によって最初に同定される。使用され得る方法はとしては、λgt11ライブラリーを抗体でプローブする技術に類似の様式で、発現ライブラリーを標識CD70でプローブすることを包含する、「相互作用クローニング」技術が挙げられる(例えば、Blanar and Rutter,1992,Science 256:1014−1018を参照のこと)。別の方法は、ツーハイブリッド系(Chienら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9578−9582)であり、Clontech(Palo Alto,CA)から市販されている。
【0100】
いったんCD70結合タンパク質が同定されると、それが(単独で、あるいはマルチマー化されるか、またはダイマー化ドメインもしくはマルチマー化ドメインに融合されるか、または細胞傷害性部分もしくは細胞増殖抑制部分に結合体化される場合に)CD70発現癌細胞に対して細胞増殖抑制効果もしくは細胞傷害性効果(細胞傷害性薬剤に結合体化される場合)を発揮する能力は、抗体についてのものに類似の様式で決定される。
【0101】
(III.CD70の検出)
診断的適用についてアッセイされるべきサンプルは、外科的手順(例えば、生検)によって得られ得る。CD70は、代表的には、イムノアッセイ(癌(例えば、膵臓癌もしくは卵巣癌)に由来することが既知のもしくは由来すると疑われる細胞を含むサンプルが、抗体と接触させられる)によって検出される。接触後に、上記標本中における上記細胞への上記抗体の結合事象の存在もしくは非存在が、決定される。上記結合は、この標本中の癌細胞上で発現される抗原の存在もしくは非存在に関連する。一般に、上記サンプルは、検出可能なシグナルを生じ得る、上記抗CD70抗体の標識された特異的結合パートナーと接触させられ得る。あるいは、上記抗CD70抗体自体が、標識され得る。標識のタイプの例としては、酵素標識、放射性同位体標識、非放射活性標識、蛍光標識、毒素標識、および化学発光標識が挙げられる。上記標識からのシグナルの検出は、上記サンプル中のCD70に特異的に結合した上記抗体の存在を示す。
【0102】
上記アッセイが行われる上記サンプルは、固定されるかもしくは凍結されて、組織学的切片化が可能にされ得る。好ましくは、上記切り出された組織サンプルは、アルデヒド固定剤(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド);もしくは重金属固定剤(例えば、塩化第2水銀)中で固定される。より好ましくは、上記切り出された組織サンプルは、上記抗体とのインキュベーションの前に、ホルマリン中で固定され、パラフィンワックス中に包埋される。ホルマリン固定したパラフィン包埋の(FFPE)標本により提供される利点は、組織切片中の細胞の詳細および構造的形態的な詳細が保存されることである(例えば、Foxら,1985,J.Histochem.Cytochem.33:845−853を参照のこと)。必要に応じて、FFPE標本は、クエン酸、EDTA、酵素消化もしくは熱で処理されて、エピトープへの接近性を増大し得る(例えば、Shiら,1991,J Histochem Cytochem.39:741−748を参照のこと)。
【0103】
あるいは、タンパク質画分が、既知のもしくは疑いのある膵臓癌もしくは卵巣癌に由来する細胞から単離され得、ELISA、ウェスタンブロッティング、免疫沈降などによって分析され得る。別のバリエーションにおいて、細胞は、FACS分析によって、好ましくは、別の膵臓細胞マーカーもしくは卵巣細胞マーカーと組み合わせて、CD70の発現のために分析され得る。
【0104】
さらなるバリエーションにおいて、mRNAは、膵臓癌もしくは卵巣癌であることが既知もしくは疑われている細胞から抽出され得る。次いで、上記mRNAもしくはこれに由来する核酸(例えば、cDNA)は、CD70をコードするDNAに結合する核酸プローブへのハイブリダイゼーションによって分析され得る。
【0105】
別のババリエーションにおいて、膵臓癌もしくは卵巣癌は、標識抗CD70抗体を患者に投与し、インビボ画像化によって上記抗体を検出することによって、インビボで検出され得る。
【0106】
組織サンプルにおけるCD70の検出は、定性的もしくは定量的またはその両方であり得る。定性的検出は、CD70発現の存在もしくは非存在を検出することを意味する。定量的表現(quantitative expresdsion)は、CD70の発現の発現レベルを決定することを意味する。問題となっている膵臓組織サンプルもしくは卵巣組織サンプル中のCD70存在および/もしくはレベルは、1つ以上の標準物質に対して決定され得る(しかし、必ずしも必要ではない)。上記標準物質は、歴史的に(historically)もしくは一時的に決定され得る。上記標準物質は、例えば、異なる被験体由来の癌でないことが既知の膵臓サンプルもしくは卵巣サンプル、CD70を発現しないことが既知の上記患者もしくは他の被験体のいずれかに由来する組織、または膵臓細胞株もしくは卵巣細胞株であり得る。上記標準物質はまた、関連しない抗体(例えば、細菌抗原に対して惹起された抗体)と接触させた分析中の上記患者サンプルであり得る。CD70は、非癌性の膵臓組織もしくは卵巣組織では、いかなる顕著な程度にも発現されないので、このような非癌性組織は、ゼロ(バックグラウンド)発現標準物質として使用され得る。
【0107】
CD70への抗CD70抗体の結合からの、(使用される場合)標準物質と比較した検出可能なシグナルの存在は、上記組織サンプル中のCD70の存在を示し、検出可能な結合のレベルは、CD70の発現のレベルの表示を提供する。組織切片に対して行われるアッセイにおいて、上記発現レベルは、CD70の検出可能な発現を示す上記サンプルの表面積のパーセンテージとして表され得る。あるいは、もしくはさらに、上記発現レベル(強度)は、上記サンプル中の全体の発現の尺度もしくは上記サンプル中でCD70を発現する細胞の尺度として使用され得る。
【0108】
(IV.診断、予後測定、設計および処置のモニタリング)
膵臓組織もしくは卵巣組織のサンプル中のCD70の発現の検出は、上記サンプルが癌性であることを示す。同様に、他の患者サンプル中のCD70の発現の検出は、上記患者が、肺、頭頸部(喉頭もしくは咽頭)、黒色腫、神経膠芽腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫)、腎細胞癌(明細胞癌もしくは乳頭状癌を含む)、結腸直腸癌もしくは膀胱癌を有することを示す。治療的適用に使用される抗体は、未変性のCD70抗原の細胞外ドメインに特異的に結合する。
【0109】
CD70の存在および/もしくはレベルによって提供される癌の表示は、診断の手段(例えば、医師による内診(internal examination)もしくは検死(external examination)、X線、CTスキャン(コンピューター断層撮影法)、PETスキャン(陽電子放射断層撮影法)、PET/CTスキャン、超音波、MRI(磁気共鳴画像法)、内視鏡検査法、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、組織学的検査および全体の診断時に達する組織培養と組み合わされ得る。
【0110】
上記医師におそらく最も大きく関連するもののうち、CD70の存在およびレベルは、上記患者のための処置プロトコルを設計するための、特に、CD70に対する抗体、誘導体、ADCもしくは他の結合剤を患者に投与するための有用な情報を提供する。正常な膵臓組織もしくは卵巣組織における検出可能なCD70発現は本質的に存在しないので、癌中のこのレセプターの存在は、治療的処置の標的を提供する。CD70発現のレベルが高くなるほど、および/もしくはCD70を発現する腫瘍のパーセンテージが高くなるほど、処置はより有効になるようである。処置後のCD70の継続した分析は、上記処置が有効であるか否かをモニタリングする手段(上記処置が有効であるCD70陽性シグナルのレベルの低下(すなわち、CD70陽性癌細胞の存在の代用として))を提供する。
【0111】
(V.処置に反応しやすい患者)
上記方法による処置に反応しやすい患者は、通常、上記のように、癌の他の徴候もしくは症状が付随する、彼らの膵臓組織、卵巣組織もしくは他の組織においてCD70の検出可能なレベルを有する。膵臓癌および卵巣癌の両方の種々のサブタイプおよびステージは、以下により詳細に記載されるように存在する。ときおり、本発明の方法によって処置される患者は、他のタイプの処置(例えば、外科手術、化学療法および/もしくは照射)を以前に受けたが、上記癌の増殖の退縮もしくはさらに緩慢化を誘導しなかったことがある。いくらかのこのような患者において、上記癌は、1種以上のこのような治療による処置に不応性である。
【0112】
膵臓癌のリスクのあるいくらかの患者はまた、上記疾患の徴候および症状が現れる前に予防的に処置され得る。このような個体としては、これら疾患を経験したことがある親族を有する者、およびそのリスクが遺伝的マーカーもしくは生化学的マーカーの分析によって決定される者が挙げられる。
【0113】
(A.膵臓癌患者)
膵臓癌は、膵臓の腺内の悪性腫瘍である。膵臓癌患者のうちのほぼ90%は、55歳より高齢である。この癌が見いだされる時点での平均年齢は、72歳である。膵臓癌のリスク因子としては、以下が挙げられる:年齢、男性性、アフリカの民族、喫煙、肉食が高い食事、肥満、糖尿病、慢性膵炎(関連しているが、偶然であるとは知られていない)、特定の農薬、色素、およびガソリンに関する化学物質への職業被爆、家族歴、Helicobacter pylori感染、歯肉炎もしくは歯周病(Pancreatic Cancer.Von Hoffら, ed., Maine;2005.)。膵臓癌のうちのわずか10〜15%が、遺伝性であると考えられる。膵臓癌に関連しているいくつかの遺伝的マーカーは、PNCA1遺伝子、PALLD遺伝子もしくはBRCA2遺伝子における変異が挙げられ得る(例えば、Bankeら,2000,Med.Clin.North Am.84:677−690;Mecklerら,2001,Am.J.Surg.Path.25:1047−1053;Pogue−Geileら,2006,PLoS Med.3:e516;Murphyら,2002,Cancer Res.62:3789−3793を参照のこと)。
【0114】
しかし、現在認識されているリスク分類中の全ての患者が、膵臓癌を発症するわけではない。多くの膵臓癌は、「散発性に」(すなわち、家族歴のない患者において)生じる。
【0115】
膵臓癌に罹患している個体は、病理学報告において得られた、上記腫瘍の組織学に従って認識され得る。組織学は、臨床的処置、管理、および予後の多くの局面を示す。上記腫瘍が、上記膵臓の外分泌腺もしくは内分泌腺から始まるか否かに基づいて、膵臓癌の2つの主要なタイプがある。上記膵臓の外分泌腺から形成される腫瘍は、遙かに一般的である。膵臓腫瘍のうちの約95%は、腺癌である。その残りの5%は、外分泌性の膵臓の他の腫瘍(例えば、漿液性嚢胞腺腫、腺房細胞癌、および膵臓神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor)(例えば、インスリノーマ)を含む。
【0116】
内分泌腫瘍はまた、島細胞腫瘍といわれ、いくつかのサブタイプに分けられる。大部分は良性であるが、いくつかは癌性である。癌の特別なタイプ(膨大部癌(ampullary cancer))が起こり得る。ここの場所で、肝臓からの胆管および膵管が小腸へ注ぐ。このタイプの癌は、しばしば、皮膚および眼の黄疸形成のような徴候を引き起こすので、大部分の膵臓癌より初期の段階で通常は見いだされる。成功裏の処置の見込みは、膨大部癌に罹患している患者についてはより良好である。
【0117】
膵臓癌ステージ分類(staging)は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)基準に従って行われ得る。上記癌のステージは、ローマ数字I〜IVを使用して表示され、ステージIVは、上記癌が拡がりかつより重篤であることを示す。具体的には、ステージIの膵臓癌は、特定のproscribed 感受性領域に拡がっておらず、局施与リンパ節にも遠位への転移も伴っていなかった腫瘍を含む。ステージIIは、十二指腸、胆管、もしくは「膵周囲」組織へと拡がっているが、局所リンパ節にも遠位への転移も伴っていない腫瘍を含む。ステージIIIはの癌は、これら領域へ拡がった可能性も広がっていない可能性もあり、局所リンパ節が巻き込まれたが、遠位への転移は明らかに示されていない腫瘍を含む。ステージIVAは、胃、脾臓、大腸もしくは隣り合う大血管へと拡がり、局所リンパ節が巻き込まれたが、遠位への転移は明らかに示されていない腫瘍を含む。ステージIVBは、任意の種の膵臓腫瘍であって、任意の種のリンパ節状態および遠位への転移が明らかになったものを含む。言及されはしたが、この膵臓癌ステージ分類システムは、その純粋な形態で使用されることは稀である。なぜなら、上記ステージは、患者の予後にも処置選択肢にも完全には適合しないからである。代替手段は、3ステージ分類である(潜在的に切除可能、局所的に進行および転移性)。これは、放射線医学的所見に基づく。他の予後判定因子がまた、考慮される。顕微鏡下で上記細胞がどの程度異常に見えるかを示す癌のグレードは、ときおり、G1からG4までのスケールで位置づけられる。G1の癌は、大部分が正常細胞のように見え、最もよい見通しを有する。外科手術した患者については、上記切除の程度、すなわち、上記腫瘍の全てが除去されるか否かはまた、見通しに関して重要である。これは、ときおり、R0からR2までのスケールに位置づけられる。R0は、認められ得る腫瘍の全てが除去されたものを示し、R2は、認められ得るいくらかの腫瘍が除去されていない可能性があるものを示す。
【0118】
初期の膵臓癌症状は、非特異的かつ変動する。一般的な症状としては、代表的には、背部に放散し、前屈みになる(膵体部もしくは膵尾部の癌において認められる)ことによって緩和される上腹部の疼痛、食欲の喪失、顕著な体重減少および胆管閉塞に関する無痛の黄疸(膵頭部の癌)が挙げられる。しかし、これら症状のうちの全ては、複数の他の原因を有し得、膵臓癌に限定されない。
【0119】
(B.卵巣癌患者)
卵巣癌は、卵巣において始まる癌である。卵巣癌は、通常は、50歳より上の女性において起こるが、より若い女性にも罹患し得る。その原因は未知である。ドイツ・ポーランド・ロシア系ユダヤ人(Ashkenazi Jewish)の女性のような特定の集団は、より高いリスクがあり、しばしば、一般集団より若い年齢でより高いリスクがある。乳癌の履歴、または卵巣癌、乳癌、もしくは他の関連する癌の家族歴(特に、若い年齢での場合)を有する患者は、上昇したリスクを有し得る。子宮癌、結腸がんもしくは他の胃腸癌の強い家族歴は、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌として公知の症候群(HNPCC(Lynch II症候群としても公知))の存在を示し得る。これは、卵巣癌の発症に対して高いリスクを付与する。細胞遺伝学研究およびヘテロ接合性調査がないこと(loss of heterozygosity investigation)は、いくらかの遺伝子もしくは染色体領域が、卵巣癌開始および進行に関与していることを示唆する(例えば、Pejovicら,1992,Genes Chromosomes Cancer,4:58−68;Testaら,1994,Cancer Res.,54:2778−2784:Yang−Fengら,1993,Int.J.Cancer,54:546−551を参照のこと)。卵巣癌に関するリスクの遺伝的マーカーとしては、BRCA1遺伝子もしくはBRCA2遺伝子における変異(Futrealら,1994,Science,266:120−122)が挙げられるが、これらに限定されない。卵巣癌に関する強い遺伝的リスクを有する患者は、子供をもうけ終わった後に予防的卵巣摘出術の使用を考慮し得る。現在認識されているリスク分類における全ての女性が、卵巣癌を発症するわけではない。卵巣癌の大部分は、散発的に生じる。
【0120】
卵巣癌に罹患している個体は、上記腫瘍の履歴に従って認識され、病理報告において得られ得る。組織学は、臨床的処置、管理、および予後の多くの局面を必然的に決定し得る。上記腫瘍が始まる細胞の種類および上記腫瘍が良性であるか癌性であるかに基づいて、卵巣癌には3つの主要なタイプがある。胚細胞腫瘍は、卵を生じる細胞から始まる。間質腫瘍は、卵巣を一緒に保持しかつ女性ホルモンであるエストロゲンおよびプロゲステロンを生成する結合組織細胞から始まる。上皮腫瘍は、卵巣の外表面を覆う細胞から始まる。大部分の卵巣癌は、上皮腫瘍であり、腫瘍の少数が、胚細胞もしくは間質細胞から生じる。
【0121】
卵巣癌は、しばしば、原発性であるが、身体の他の箇所の原発性癌からの、転移の結果である2次性でもあり得る。例えば、乳癌から、もしくは胃腸癌から(この場合、上記卵巣癌は、クルーケンベルク癌である)。表面の上皮−間質腫瘍は、腹腔の内層に始まり得、この場合、上記卵巣癌は、原発性腹膜癌に続発するが、処置は、基本的には、このタイプの原発性卵巣癌と同じである。
【0122】
卵巣癌において、上記癌ステージは以下の通りである:ステージIは、1つもしくは両方の卵巣に限局される;ステージIIは、骨盤に拡がるかもしくは着床(implants;骨盤腔内への浸潤を生じているという意味だと思うのですが)を伴う;ステージIIIは、骨盤の範囲を超えた顕微鏡的な腹腔転移を伴う;または骨盤に限定されるが、小腸もしくは大網(omentum)への拡がりを伴う;およびステージIVは、遠位への転移(例えば、肝臓中、もしくは腹腔の外へ)を伴う。
【0123】
初期卵巣癌は、頻繁に無症候性であるか、またはごく軽度の症状を生じるに過ぎない。これは、上記患者によって無視されてしまうこともある。なぜなら、上記症状は、漠然としたものもしくは非特異的であるかのいずれかであるからである。症状としては、can include 腫脹、骨盤痛もしくは腹痛、食べることに関する問題もしくはすぐに満腹感を感じる問題、泌尿器系の症状(例えば、切迫した感覚もしくは頻尿の感覚が挙げられ得る(例えば、Smithら,2005,Cancer 104(7):1398−1407;The consensus statement released by the American Cancer Society, the Gynecologic Cancer Foundation, and the Society of Gynecologic Oncologists on June 12,2007を参照のこと)。この癌を示す患者のうちの60%より多くは、上記卵巣を超えて既に拡がっている場合、既にステージIIIもしくはステージIVの癌を有する可能性がある。
【0124】
(C.他の癌患者)
上記方法による処置に反応しやすい他の患者は、通常、肺、頭頸部(喉頭もしくは咽頭)、黒色腫、神経膠芽腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫)、腎細胞癌(明細胞癌および乳頭状癌を含む)、結腸直腸癌もしくは膀胱癌のサンプルにおいて検出可能なレベルのCD70を有する。このような患者は、癌の他の徴候もしくは症状が付随し得る。ときおり、本発明の方法によって処置される患者は、以前に他のタイプの処置(例えば、外科手術、化学療法および/もしくは照射)を受けたことがあるが、癌の退縮も癌の増殖の緩徐化も誘導されなかったことがある。いくらかのこのような患者において、上記癌は、1種以上のこのような治療による処置に不応性である。
【0125】
癌のリスクのあるいくらかの患者はまた、上記疾患の徴候および症状が現される前に予防的に処置され得る。このような個体としては、これら疾患を経験したことがある親族を有する個体、および遺伝的マーカーもしくは生化学的マーカーの分析によりリスクが決定される患者が挙げられる。
【0126】
(VI.処置方法)
本発明は、上記抗体、誘導体およびADC、ならびに本明細書で開示される他の抗CD70結合剤(まとめて薬剤)による、膵臓癌もしくは卵巣癌の処置もしくは予防のための方法を提供する。上記組成物は、患者に投与され得る。
【0127】
種々の送達系が、上記薬剤を投与するために使用され得る。上記送達系としては、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻内経路、硬膜外経路、および経口経路が挙げられる。上記薬剤は、例えば、注入もしくはボーラス注射によって、上皮もしくは粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を介する吸収によって、投与され得、他の生物学的に活性な薬剤(例えば、化学療法剤)と一緒に投与され得る。投与は、全身的であってもよいし、局所的であってもよい。
【0128】
上記薬剤は、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、もしくは移植物(上記移植物は、多孔性、非多孔性もしくはゲル様物質(膜(例えば、sialastic膜)もしくは繊維を含む)である)によって、投与され得る。
【0129】
あるいは、上記薬剤は、制御放出系において送達され得る。例えば、ポンプが使用され得る(Langer,1990,Science 249:1527−1533;Sefton,1989,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwaldら,1980,Surgery 88:507;Saudekら,1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照のこと)。あるいは、ポリマー物質が使用され得る(Medical Applications of Controlled Release(Langer & Wise編,CRC Press,Boca Raton,Florida,1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance(Smolen & Ball編,Wiley,New York,1984);Ranger & Peppas,1983,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照のこと。Levyら,1985,Science 228:190;Duringら,1989,Ann.Neurol.25:351;Howardら,1989,J.Neurosurg.71:105もまた参照のこと)。他の制御放出系は、例えば、Langer,前出において議論されている。
【0130】
上記薬剤は、治療上有効なもしくは予防上有効な量の上記薬剤および1種以上の薬学的に適合性の成分を含む薬学的組成物として、投与され得る。例えば、上記薬学的組成物は、代表的には、1種以上の薬学的キャリア(例えば、滅菌液体(例えば、水および油(石油起源、動物起源、植物起源もしくは合成起源のもの(例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、ごま油など)))を含む。水は、上記薬学的組成物が静脈内に投与される場合には、より代表的なキャリアである。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよび振り背ロール溶液はまた、特に、注射用溶液のために、液体キャリアとして使用され得る。適切な薬学的賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。上記組成物はまた、所望であれば、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化剤(例えば、アミノ酸)および/または可溶化剤もしくは安定化剤(例えば、非イオン性界面活性剤(例えば、tween)もしくは糖(例えば、スクロース、トレハロースなど))を含み得る。これら組成物は、液剤、懸濁物、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性処方物などの形態をとり得る。上記組成物は、伝統的な結合剤およびキャリア(例えば、トリグリセリド)とともに、坐剤として処方され得る。経口処方物は、標準的なキャリア(例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、治療上有効な量の核酸もしくはタンパク質を、代表的には、精製された形態において、上記患者への適切な投与のための形態を提供するように、適切な量のキャリアと一緒に含む。上記処方物は、投与様式に対応する。
【0131】
代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、上記医薬はまた、可溶化剤、および注射部位における疼痛を緩和するための局所麻酔剤(例えば、リグノカイン)を含み得る。一般に、上記成分は、別個に、もしくは単位投与形態において一緒に混合されているかいずれかで、例えば、凍結乾燥粉末もしくは密閉式の気密容器(例えば、活性薬剤の量を示すアンプルもしくはサシェ)中の濃縮物として供給される。上記医薬は、注入によって投与されるべきである場合、滅菌の製薬グレードの水もしくは生理食塩水を含む注入ボトルで分与され得る。上記医薬が注射によって投与される場合、注射用滅菌水もしくは生理食塩水のアンプルは、上記成分が投与前に混合され得るように、提供され得る。
【0132】
膵臓癌もしくは卵巣癌の処置もしくは予防において有効な上記薬剤の量は、標準的な臨床技術によって決定され得る。さらに、インビトロアッセイは、必要に応じて、至適投与範囲を同定するのを補助するために使用され得る。上記処方物において使用されるべき正確な用量はまた、投与経路、および膵臓癌もしくは卵巣癌のステージに依存し、上記医師の判断および各患者の環境に従って決定されるべきである。有効用量は、インビトロ試験系もしくは動物モデル試験系から得られる用量応答曲線から外挿され得る。用量は、細胞培養物において決定される場合、IC50(すなわち、症状の最大半値阻害(half−maximal inhibition)を達成する上記試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて処方され得る。
【0133】
例えば、上記薬剤の毒性および治療効力は、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するために標準的な薬学的手順によって、細胞培養物もしくは実験動物において決定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表され得る。大きな治療指数を示す薬剤が好ましい。薬剤が毒性副作用を示す場合、上記標的を罹患組織部位に向ける送達系は、非CD70発現細胞に対する潜在的損傷を最小限にするために使用され得、それによって、副作用を低下し得る。
【0134】
一般に、CD70発現癌を有する患者に投与される抗体、誘導体もしくはADCの投与量は、代表的には、上記被験体の体重の0.1mg/kg〜100mg/kgである。より代表的には、被験体に投与される上記投与量は、上記被験体の体重の0.1mg/kg〜10mg/kg、さらにより代表的には、0.1mg/kg〜5mg/kg、もしくは上記被験体の体重の0.1mg/kg〜3mg/kgである。一般に、ヒト抗体は、外来タンパク質に対する免疫応答に起因して、他の種に由来する抗体より長い、ヒト身体内での半減期を有する。従って、ヒト化抗体、キメラ抗体もしくはヒト抗体を含むADCのより低い投与量およびより低い頻度の投与は、しばしば可能である。
【0135】
CD70に対する抗体、誘導体およびADCはまた、膵臓癌もしくは卵巣癌の処置もしくは予防のために、1種以上の他の治療剤と組み合わせて投与され得る。例えば、組み合わせ治療は、第2の細胞増殖抑制剤もしくは細胞傷害性薬剤(例えば、結合体化されていない細胞増殖抑制剤もしくは細胞傷害性薬剤(例えば、癌の処置のために従来から使用されているもの))を含み得る。組み合わせ治療はまた、例えば、CD70発現癌細胞の表面上のCD70以外のレセプターもしくはレセプター複合体を標的とする薬剤の投与を含み得る。代表的には、このような抗体もしくはリガンドは、CD70発現癌細胞上の細胞表面レセプターに結合し、細胞増殖抑制シグナルもしくは細胞傷害性シグナルを上記CD70発現癌細胞に送達することによって、上記抗CD70抗体の上記細胞傷害性効果もしくは細胞増殖抑制効果を増強する。
【0136】
上記薬剤とともに投与され得る他の薬物は、増殖因子インヒビター、もしくは抗脈管形成因子を含み得る。例えば、エルロチニブといわれる薬物(表皮増殖因子レセプターチロシンインヒビター)は、進行した膵臓癌を処置するために使用され得る(Bareschinoら,2007,Ann Oncol.Suppl 6:35−41)。このような組み合わせ投与は、疾患パラメーター(例えば、書状の重篤度、症状の数、もしくは再発の頻度)に対して相加効果もしくは相乗効果を有し得る。
【0137】
本発明の方法は、他の処置手段(例えば、外科手術、照射、標的化治療、免疫療法、増殖因子インヒビターの使用、もしくは抗脈管形成因子)と組み合わされ得る。
【0138】
外科手術は、好ましい処置であり、頻繁には、その組織学を介して異なる診断のための組織標本を得るために必要である。改善された生存は、上記疾患のより正確なステージ決定および腹部における腫瘍の積極的外科的切除のより高い比率にある。外科手術のタイプは、診断時にどの程度広く癌が存在するか(癌のステージ)、ならびに癌の予測されるタイプおよびグレードに依存する。
【0139】
膵臓の腺癌に罹患している患者については、外科医は、Whipple法(膵頭十二指腸切除術ともいわれる)を行い得る。この手順において、膵島、およびときおり、膵体は、胃および小腸の一部、胆嚢、総胆管の一部、ならびにいくつかのその近辺のリンパ節とともに除去される(例えば、Michalskiら,2007,Nat.Clin.Pract.Oncol.4(9):526−35を参照のこと)。膵臓の内分泌腫瘍(島細胞腫瘍)に罹患している患者については、外科手術は、現実味のある選択肢である(例えば、Akerstrom and Hellman,2007,Best Pract.Res.Clin.Endocrinol.Metab.21(1):87−109を参照のこと)。
【0140】
卵巣癌患者において、外科医は、一方の卵巣(片側の卵巣摘出術)もしくは両方の卵巣(両側の卵巣摘出術)、卵管(卵管摘出術)および子宮(子宮摘出術)を除去し得る。いくつかの非常に初期の腫瘍(例えば、ステージIにおけるもの)については、特に、それらの受精能力を温存することを望んでいる若い女性において、関与している卵巣および卵管のみ(「片側付属器切除術」、USO)が除去される。進行した悪性腫瘍において、完全な切除が可能でない場合、できる限り多くの腫瘍が除去される(腫瘍減量術(debulking surgery))。このタイプの外科手術が成功裏である場合、予後は、大きな腫瘍塊(直径1cmより大きい)が残ったままである患者と比較して、改善される。最小限に侵襲性の外科手術的技術は、外科手術のより少ない合併症を伴う非常に大きな(10cmより大きな)腫瘍の安全な除去を容易にし得る(例えば、Ehrlichら,2007,J.Pediatr.Surg.42(5):890−3を参照のこと)。
【0141】
化学療法とは、癌細胞を死滅させるために抗癌剤もしくは細胞傷害性薬物の使用に言及する。化学療法は、外科手術の前もしくは後に、上記患者に与えられ得る。上記腫瘍の組織学に依存して、いくつかの種類の腫瘍(特に、奇形腫)は、化学療法に対して感受性ではない。薬物(例えば、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル(flourouracil)、シスプラチンもしくはマイトマイシン C)での静脈内化学療法は、膵臓癌を処置するために使用され得る。静脈内化学療法(例えば、ゲムシタビン、トポテカン、ドキソルビシン、リポソーム性ドキソルビシン、カルボプラチン、パクリタキセル)は、卵巣癌を処置するために使用され得る。部分的に静脈内で、部分的に腹腔内である化学療法はまた、メジアン生存時間を改善し得る(The Chemotherapy Source Book(第3版).編.Perry.Lippincott,Williams and Wilkins,2001;Oxford Textbook of Palliative Medicine.(第2版) Derek Doyleら Oxford University Press.1999を参照のこと)。
【0142】
放射線療法は、正常細胞に対して可能な限り害にならないように行うと同時に、癌細胞を死滅させるかもしくは縮小するための、高エネルギー線(例えば、x線)での処置である。照射は、外科手術の前もしくは後に上記患者に与えられ得る。放射線療法はまた、拡がらなかったが、外科手術によって除去できない膵臓癌を処置するために使用され得る。放射線療法は、上記卵巣の癌を処置するためにそれほどしばしば使用されないが、適切であれば、ときおり使用され得る。放射線療法と化学療法の組み合わせは、患者の腫瘍が拡がりすぎて、外科手術によって除去できない患者のために使用され得る。
【0143】
抗CD70抗体、誘導体もしくはADCは、外科手術、化学療法もしくは放射線療法の処置を現在受けている患者に投与され得る。あるいは、患者は、少なくとも1時間および最大数ヶ月まで抗CD70抗体、誘導体もしくはADCの投与の前もしくは後に(例えば、少なくとも1時間、5時間、12時間、1日、1週間、1ヶ月、もしくは3ヶ月だけ上記ADCもしくはADC誘導体の投与の前もしくは後)、外科手術、化学療法もしくは放射線療法を受け得る。
【0144】
(VII.キット)
本発明は、上記検出法とともに使用するための診断キットを提供する。上記キットは、代表的には、上記の検出に有用な変性CD70に特異的に結合する抗体もしくはそのフラグメントを含む。1つ以上のさらなる容器が、上記アッセイにおいて使用されるべき要素(例えば、試薬もしくは緩衝液)を封入し得る。このようなキットはまた、もしくは代わりに、抗体結合の直接的検出もしくは間接的検出に適したレポーター基を含む検出試薬を含み得る。
【0145】
本発明は、膵臓癌および卵巣癌を処置するための薬学的キットをさらに提供する。代表的には、このようなキットは、本明細書に記載されるように、治療用組成物として処方される試薬を含み、キットでの分配に適した種々の形態のうちのいずれかであり得る。このような形態は、上記薬剤(例えば、抗CD70抗体、誘導体もしくはADC)を提供するための液体、散剤、錠剤、懸濁物などの処方物を含み得る。上記キットはまた、注射、上記凍結乾燥抗体、誘導体もしくはADCの再構成もしくは希釈用の薬学的に受容可能な希釈剤(例えば、滅菌水)を含み得る。
【0146】
本発明は、診断および治療のための組み合わされたキットをさらに提供する。このようなキットは、代表的には、固定組織切片での検出において使用するための未変性のCD70より変性CD70に優先的に結合する少なくとも1つの抗体、および処置における使用のために変性CD70よりよくない場合にも、未変性のCD70に少なくとも結合する異なる抗体を含む。
【0147】
キットはまた、代表的には、表示(label)、または本明細書に記載される検出および/もしくは処置の方法において使用するための説明書を含む。上記表示もしくは説明書は、キットの製造、輸送、販売もしくは使用の間の任意のときに、キットに添付されるか、別の方法で付随する任意の書面もしくは記録された資料をいう。これは、医薬もしくは生物学的製品の上記製造、使用もしくは販売を監督する政府機関によって指示された形態における通達であり得る。その通達は、ヒト投与のための製造、使用もしくは販売の機関による承認を示す。上記表示もしくは説明書はまた、広告リーフレットおよび小冊子、パッケージング資料、説明書、オーディオカセットもしくはビデオカセット、コンピューターディスク、ならびに上記薬学的キット上に直接印刷された書面を包含し得る。
【0148】
本発明は、以下の実施例にさらに記載され、これは、本発明の範囲を限定するとは意図されない。以下の実施例において記載される細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)もしくはDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Braunschweig,Germany(DMSZ)によって特定される条件に従って、培養して維持した。細胞培養試薬を、Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA、もしくは他の供給業者から得た。
【実施例】
【0149】
(実施例1:モノクローナル抗体SG−21.1C1.B3およびSG−21.5D12.C3の調製)
モノクローナル抗体SG−21.1C1.B3およびSG−21.5D12.C3は、免疫原(CD70の変性細胞外ドメイン(CD70−ECD))で数回チャレンジしたマウスから除去した脾臓もしくはリンパ節に由来するB細胞を使用して生成した。次いで、これらB細胞を、骨髄腫腫瘍細胞と融合して、ハイブリドーマを生成した。多数のモノクローナル抗体を、このようにして、これらハイブリドーマから生成した。上記ハイブリドーマを希釈して、クローン化および増殖を確実にした。
【0150】
上記種々のクローンに由来する抗体を、カニクイザル(「cyno」)CD70を発現する固定した293F細胞および変性L540cy細胞(これは、CD70を発現する)を使用して、Flag−CD70もしくはディファレンシャルFMATスクリーン(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用する試験(例えば、ELISA)で上記変性CD70抗原に結合する能力について試験した。トランスフェクトしていない293F細胞およびL540cy細胞を、陰性コントロールとして使用した(いくつかのL540cy細胞は、CD70について陽性であった)。
【0151】
その結果は、100個より多いハイブリドーマが、変性CD70に結合するそれらの能力について試験陽性であることを示した。2つの陽性ハイブリドーマに由来する抗体であるSG−21.1C1.B3(「1C1」)およびSG−21.5D12.C3(「5D12」)を、免疫組織化学のために選択した。
【0152】
(実施例2:ホルマリン固定したパラフィン包埋の(FFPE)サンプルの調製)
ホルマリン固定したパラフィン包埋の組織を、Theory and Practice of Histotechnology,第2版.1980,Sheehan,D.C.and Hrapchak,B.B.,編(Battelle Press(Columbus,OH).第3章,pp.59−78)において固定され、記載されるように、標準的な方法に従って調製した。
【0153】
FFPEによる細胞の調製は、上記組織調製のものに類似であった。簡潔には、細胞を、固定の1日前に約15,000細胞/ウェルにおいて適切な培養培地中にプレートした。上記細胞を、以下のように固定した:上記細胞を、PBSで2回洗浄し、次いで、室温において45分間、10% ホルマリンで固定した。その後、上記細胞を、PBSで2回洗浄し、次いで、室温において15分間、PBS+0.5% Triton X−100で透過性にした。次いで、上記細胞を、PBSで1回洗浄し、PBS+0.02% アジ化ナトリウム中に4℃で保存した。FMATスクリーニングの前に、上記PBS+アジ化物を除去し、上記プレートを、室温において30分間、PBS+5% ヤギ血清でブロックした。
【0154】
(実施例3:免疫組織化学のための組織マイクロアレイの調製)
FFPE組織切片の組織マイクロアレイを、US Biomax、TriStarもしくはCybrdiを含む商業的供給源から得た。組織マイクロアレイはまた、Yale Tissue Microassay Construction Protocols,Version 1.0、および最新版に従って調製される。
【0155】
(実施例4.FFPEサンプルについての免疫組織化学試薬としてのモノクローナル抗体SG−21.1C1.B3およびSG−21.5D12.C3の開発)
(A.CD70クローンの免疫組織化学試験)
カニクイザルCD70をコードする発現構築物を、全長カニクイザルCD70遺伝子を発現ベクターへとクローニングすることによって作製した。この構築物を、293F細胞にトランスフェクトした。これら293F:CD70トランスフェクト細胞を、1C1抗体および5D12抗体での染色の陽性コントロールとして供した。上記親293F細胞株を、陰性コントロールとして供した。組織染色については、CD70を発現する786−O細胞を、陽性コントロールとして供した。
【0156】
上記細胞および組織を固定し、実施例2に記載される手順に従って、パラフィンワックス中に包埋した。IHC染色および抗原回復(antigen retrieval)を、Vision BioSystems Bond−maxTM システム(現在のLeica Microsystems)を使用して行った。抗原回復を、EDTA回復法を使用して40分間行った。あるいは、抗原回復を、99〜100℃の温度において1時間にわたってTrilogy抗原回復システム(Cell Marque,Hot Springs,AR)を使用して行った。
【0157】
上記1C1一次抗体もしくは上記5D12一次抗体の両方は、全て固定した293F:CD70トランスフェクト細胞を強く染色したのに対して、上記親293細胞においては、染色は検出されなかった。上記結果はまた、上記786−O細胞(腎細胞癌)において強い染色を示したのに対して、バックグラウンド染色は、Ramos異種移植片コントロールにおいて検出された。
【0158】
上記1C1クローンをさらにサブクローニングし、サブクローン1C1−B3(SG−21.1C1.B3)を選択した。同様に、5D12をさらにサブクローニングし、サブクローン5D12−C3(SG−21.5D12.C3)を選択した。これら2つのサブクローンを精製し、一次抗体として使用して、786−O異種移植片サンプルおよびRamos異種移植片サンプルを染色した。その結果は、1C1−B3および5D12−C3のサブクローニングおよび精製が、上記Ramos異種移植片におけるバックグラウンド染色を除去することを示した。
【0159】
上記抗CD70抗体を生成するハイブリドーマを、10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209にあるAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託した。上記細胞株を、SG−21.1C1.B3と称し、これは、上記抗体1C1を生成し、ATCCアクセッション番号PTA−8733を有する。これを、2007年10月24日にATCCに寄託した;上記細胞株を、SG−21.5D12.C3と称し、上記抗体5D12を生成し、ATCCアクセッション番号PTA−8734を有する。これを、2007年10月24日にATCCに寄託した。
【0160】
(B.2B3抗体と比較した、SG−21抗体1C1および5D12でのウェスタンブロッティング)
SG−21抗体である1C1抗体および5D12抗体が、細胞溶解物および組織溶解物においてCD70を検出するか否かを決定するために、ウェスタンブロット実験を行った。別のCD70結合抗体2B3もまた、比較のために使用した。膜調製物を、786−O細胞、293F:cynoCD70(カニクイザルCD70を発現する)細胞、および陰性コントロールとしての293F細胞から調製した。膜抽出物を調製するために、細胞を低張性緩衝液中で溶解し、4℃において10,000×gで10分間遠心分離して、細片を除去した。次いで、その上清を、4℃において100,000×gで30分間にわたって遠心分離して、上記膜画分をペレット化した。上記膜画分(ペレット)を、50mM Tris+150mM NaClおよび5mM EDTA中の0.5% NP40中に溶解した。全てのサンプル調製を、プロテアーゼインヒビターの存在下で行って、CD70をインタクトなまま保った。上記タンパク質の量を、BCAキット(Pierce)を使用して、570nmで測定した。CD70 ECD(CD70の細胞外ドメイン)およびFlagタグ化CD70−ECDもまた、表充填機方法によって調製した。上記タンパク質サンプルを、90℃において3分間変性し、氷上で3分間冷却した。上記サンプルを、SDS−PAGEを使用して分離し、次いで、検出するためにニトロセルロース膜に転写した。4つの同一のSDS−PAGEゲルおよび膜を調製した。上記膜を、1% BSA含有PBSおよび0.05% Tween(ポリソルベート)含有2% 無脂肪乳でブロックした。次いで、各一次抗体を、0.5μg/mlで上記溶液に添加し、0.05% Tween含有PBS中で、室温において4時間インキュベートした。上記膜を洗浄し、2次抗体−酵素結合体(これは上記一次抗体を認識した)を添加し、室温において45分間インキュベートした。上記膜を洗浄し、化学発光基質とインキュベートして、CD70を検出した。
【0161】
図1を参照すると、上記結果は、SG−21抗体である1C1抗体および5D12抗体が、上記786−Oトランスフェクト体および上記293F:CD70トランスフェクト体においてCD70を検出するが、陰性コントロール293F細胞においては検出しないことを示した。顕著には、上記検出されたバンドは、上記786−Oトランスフェクト体および293F:CD70トランスフェクト体において同一サイズであった。SG−21抗体2B3は、786−Oサンプルおよび293:cynoCD70サンプルにおいてCD70を検出しなかったが、CD70ECDおよびflag−CD70−ECDを検出した。上記結果は、1C1抗体および5D12抗体が、上記サンプル中でCD70を検出することを示した。
【0162】
(C.SG21.1C1抗体を使用する、腫瘍細胞株および非腫瘍細胞株におけるCD70発現)
組織マイクロアレイを、商業的供給源から得たか、もしくは以下の癌のサンプルを含んで特別に作製した:乳癌、卵巣癌、中皮腫、骨肉腫、前立腺癌、肝細胞癌、神経膠芽腫、退形成性星状細胞腫(Anaplastic Astrocytonma)、子宮癌、胎児癌(Embryonic Cancer)、類表皮癌、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非T非B全組織球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫、NHL濾胞性リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、赤白血病、結腸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、腎細胞癌(RCC)、RCC明細胞型、RCC乳頭状型、黒色腫、膵臓癌および膀胱癌。以下の細胞もしくは細胞株もまた、使用した:エプスタイン−バーウイルスをトランスフェクトしたBリンパ芽球細胞株(EBV−LCL)、正常ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)、正常ヒト血管内皮細胞(HUVEC)、正常血管単球(PBMC)、正常ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)、正常ヒト腎臓内皮細胞(HREC)、正常ヒト肺微小血管内皮細胞(HMVEC−L)、正常ヒトendo−乳児皮膚毛細管内皮細胞(normal human endo−neonatal dermal microvascular endothelial cell)(HMVEC−neo)および正常ヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)。
【0163】
上記組織マイクロアレイを、上記のプロトコルを使用して、SG21.1C1抗体で免疫染色した。染色を、以下の細胞株において観察した:卵巣癌細胞株SK−OV−3;神経膠芽腫細胞株GMS−10;多発性骨髄腫細胞株LB、LP−1、AMO−1、I−310(MM.1R)、C2E3(MM.1S)、MOLP−8、JJN−3およびL363;ホジキンリンパ腫細胞株KMH2、HS445、RPMI−1666、L248およびHD−M−YZ;EBV−LCL WIL2−S、FarageおよびIM−9;NHL、卵胞細胞株WSU−NHL;RCC明細胞型細胞株Caki−1、Caki−2、786−Oおよび769−P;RCC乳頭型細胞株CAL54、A498;RCC SK−RC−6およびSK−RC−7;黒色腫細胞株A375MおよびA375SM、膵臓癌細胞株PANC−1ならびに膀胱癌T24。同定しなかったいくつかの細胞株の染色は、弱かったかもしくは混合していた。いくつかの細胞株は、細胞質染色を有する。膵臓細胞株および卵巣細胞株の染色については、それぞれ、図2および図3を参照のこと。
【0164】
(D.1C1抗体および5D12抗体の比較染色)
1C1抗体および5D12抗体を、正常カニクイザル、正常ヒト胸腺、腎臓および骨格筋組織ならびに膵臓腫瘍組織に由来する293F細胞株、293F−cynoCF0細胞株、RCC Caki−1、正常扁桃、骨格筋、膀胱、リンパ組織(リンパ節、胸腺、脾臓)を染色することによって比較した。上記免疫染色プロトコルは、上記のとおりであった。
【0165】
その結果は、1C1および5D12は、293F細胞株および293−cyno CD70細胞株(データは示さず);RCC Caki−1およびカニクイザル扁桃組織(データは示さず);正常カニクイザルに由来するリンパ組織(リンパ節、胸腺、脾臓)(データは示さず)および膵臓腫瘍組織を同様に染色することを示した(図4を参照のこと)。1C1および5D12のうちのいくらかの示差的染色は、正常ヒトおよびサル骨格筋組織、ならびに正常サル膀胱組織において観察された。ここで5D12は、上記組織を染色したが、1C1は染色しなかった。示差的染色はまた、正常ヒト胸腺および腎臓組織において観察された。ここで5D12は、細胞質を染色した。
【0166】
(実施例5:1C1抗体での、正常結腸組織および結腸直腸癌、ならびに正常膵臓組織および膵臓癌組織におけるCD70発現)
異なる癌タイプに由来する腫瘍組織の全パネルを評価する前に、CD70発現を、最初に、結腸癌および膵臓癌においてアッセイした。上記免疫染色プロトコルを、実施例4に記載されるとおりであった。これら研究に使用される色素原は、ファストレッドであった。
【0167】
その結果は、正常結腸組織において、ごく稀なリンパ球が、CD70について陽性染色されることを示した。他の細胞は、CD70について陰性であった。結腸癌組織の一例において、上記腫瘍細胞は、陽性染色された。結腸組織の第2のサンプルにおいて、上記腫瘍細胞は陰性であったが、上記間質は陽性であった。同様に、正常膵臓組織において、上記染色は、CD70について陰性であった。膵臓癌組織の一例において、腫瘍細胞は陽性であり、第2のサンプルにおいて、腫瘍細胞は陰性であったが、上記間質は陽性であった(図5を参照のこと)。
【0168】
(実施例6:SG21.1C1抗体での腫瘍組織におけるCD70発現)
腫瘍組織を、以下の腫瘍タイプから得た:ホジキンリンパ腫、腎臓、リンパ腫、多発性骨髄腫、膵臓、喉頭/咽頭、卵巣、結腸および乳房。上記正常組織および腫瘍組織を、実施例3に記載される組織アレイプロトコルに従って調製し、上記免疫染色プロトコルは、実施例4Aに記載されるとおりであった。1C1抗体を、一次抗体として使用した。免疫組織化学(IHC)発現を、関与した腫瘍の染色強度およびパーセンテージに基づいて評価した。染色強度を、1から4までランク付けした。1は、最小限の染色;2は、軽度の染色;3は、中程度の染色および4は、強い染色を示す。関与した腫瘍のパーセンテージをまた、1から4までランク付けした。1は、0〜5%;2は、5〜25%;3は、25〜75%および4は、75%〜100%を示す。上記測定は定性的であった。ホジキンリンパ腫については、CD70陽性細胞のIHC発現は、Reed−Sternberg細胞評価に基づいてアッセイした。Reed−Sternberg細胞は、起源が未知の、通常は多核の大きな細胞であり、その存在は、ホジキンリンパ腫の特徴である一般的な組織構造である。
【0169】
ホジキンリンパ腫腫瘍組織を、全ての腫瘍中の細胞に対してCF70陽性腫瘍細胞の最高のパーセンテージ(97%もしくは33/34)を有した。腎臓腫瘍は、全ての腫瘍中の細胞に対してCF70陽性腫瘍細胞の2番目に最高のパーセンテージ(70%もしくは14/20)を有した。リンパ球は、全ての腫瘍中の細胞に対してCD70陽性腫瘍細胞の3番目に最高のパーセンテージ(61%もしくは72/119)を有した。多発性骨髄腫は、全ての腫瘍中の細胞に対してCF70陽性腫瘍細胞の4番目に最高のパーセンテージ(42%もしくは13/31)を有した。膵臓癌は、全ての腫瘍中の細胞に対してCF70陽性腫瘍細胞の5番目に最高のパーセンテージ(25%もしくは35/140)を有した。
【0170】
図6は、CD70について陽性シグナルを与える、140個の膵臓サンプルのうちの35個の腫瘍染色の染色強度のグラフおよび%を示す。上記図は、上記染色強度と腫瘍染色のパーセンテージとの間の複雑な関係を示す。すなわち、いくつかの腫瘍は、低い強度以外では細胞染色の高いパーセンテージを有するが、他は、高い強度以外では細胞染色の低いパーセンテージを有し、他は、中間の染色強度および%細胞染色を示す。喉頭/咽頭癌は、全ての腫瘍中の細胞に対してCF70陽性腫瘍細胞の6番目に最高のパーセンテージ(22%もしくは18/82)を有した。卵巣癌は、全ての腫瘍中の細胞に対してCF70陽性腫瘍細胞の7番目に最高のパーセンテージ(15%もしくは37/241)を有した。
【0171】
図7は、241個のCD70染色卵巣癌のうちの37個についての腫瘍染色の染色強度およびパーセントを示す。染色強度と細胞染色のパーセンテージとの間にはいくらかの関連が存在した。結腸直腸癌は、全ての腫瘍中の細胞に対してCF70陽性腫瘍細胞の7番目に最高のパーセンテージ(9%もしくは17/194)を有した。乳癌は、全ての腫瘍中の細胞に対してCF70陽性腫瘍細胞の最低のパーセンテージ(2%もしくは5/204)を有した。
【0172】
まとめるために、CD70陽性腫瘍/全腫瘍に基づいて、染色強度(細胞標的発現)、CD70陽性腫瘍関与のパーセンテージ(腫瘍標的発現)、上記腫瘍タイプの一般的指標ランク付けは、以下のとおりである:ホジキン>腎臓>リンパ腫>多発性骨髄腫>膵臓>喉頭/咽頭>卵巣>結腸直腸>乳房。上記腫瘍組織全ての結果は、表1に示される。
【0173】
【表1】

(実施例7:h1F6−薬物結合体は、卵巣癌細胞株において効力を示す)
これら新しい癌に対する代表的な細胞株に対する既知の抗CD70抗体薬物結合体の効力を確認するために、SKOV−3細胞を調製し、他の細胞株について以前に一般的に記載されるように試験した(国際特許公開WO 2006−113909を参照のこと)。上記細胞を、以下の抗CD70抗体薬物結合体とともにインキュベートした:h1F6−vc−MMAF(4)、h1F6vc−MMAE(4)、1F6mc−MMAF(4)、もしくはh1F6mc−MMAF(8)または遊離MMAF(上記薬物リンカーの詳細については、明細書、ならびに米国特許出願公開第2005−0238649号および同第2006−0233794号を参照のこと。各結合体の後に続く括弧中の数字は、1抗体あたりの平均薬物負荷を示す)。上記SKOV−3細胞を、96時間にわたって、示された濃度の結合体とインキュベートした。これら研究のために、生存性を、Promega CelltiterGloを使用して決定した。
【0174】
【表2】

図8を参照すると、全ての4種の抗CD70 ADCは、この卵巣癌細胞株に対して活性であった。表2を参照すると、そのIC50が示される。これらIC50は、他のCD70発現癌細胞株について報告されたものと一致している。これら結果は、この癌細胞株上のCD70に結合した抗CD70 ADCが、インターナリゼーションされ、上記オーリスタチンペイロード(payload)を放出することを確認する。
【0175】
(実施例8:h1F6−薬物結合体は、CD70トランスフェクト膵臓癌細胞株において効力を示す)
代表的な細胞株に対する既知の抗CD70抗体薬物結合体の効力を確認するために、膵臓細胞株HPAFII、PANC−1およびMiaPaCa−2を、改変カニクイザルCD70コード核酸でトランスフェクトした。MiaPaCa−2細胞は、検出可能なレベルのCD70タンパク質を発現しない。h1F6は、これらトランスフェクトされた細胞株によって発現される未変性のCD70タンパク質に結合する。上記トランスフェクトされた細胞株によって発現されるによるCD70の発現を、FACS分析(データは示さず)によって確認した。h1F6 mc−MMAF(4)(SGN−75)の活性を、他の細胞株について以前に一般的に記載されるように、トランスフェクトした膵臓細胞株に対して試験した(実施例7および国際特許公開WO 2006−113909を参照のこと)(上記結合体の後ろに続く括弧中の数字は、1抗体あたりの平均薬物負荷を示す)。図9A〜Cを参照すると、上記細胞を、96時間にわたって、示された濃度の結合体とインキュベートした。図9Aを参照すると、上記トランスフェクトされたHPAFII細胞に対する結合体の活性を示す。細胞生存性を、Promega CelltiterGloを使用して決定した。
図9Bおよび図9Cを参照すると、トランスフェクトしたPANC−1およびMiaPACa−2トランスフェクト細胞株に対する上記結合体の活性を示す。これら研究のために、細胞生存性を、以前に記載されるように、レザスリン(rezasurin)を用いて決定した。Promega CelltiterGloの上記PANC−1活性。上記結合体は、全てのこれら細胞株に対してインビトロで細胞傷害性活性を示した。
【0176】
(実施例9:h1F6−薬物結合体は、膵臓癌の異種移植片モデルにおいて効力を示す)
ヌード(nu/nu)雌性マウス(7匹動物/群)に、CD70トランスフェクトMiaPaCa腫瘍塊(実施例8に記載されるように調製した)を、トロカールを介して右側腹部へと移植した。SGN−75もしくくは非結合コントロールADC(3mg/kg)のいずれかの投与を、腫瘍が100mmに達したときに開始した(q4d×4ip)。腫瘍容積をモニタリングし、腫瘍容積が1000mmに達したときに、動物を安楽死させた。図10を参照すると、データを、2通りでプロットした:A.メジアン腫瘍容積プロットを、1匹以上の動物を安楽死させるまで核群に対して継続した。B.Kaplan−Meier曲線は、各群における個々の動物について腫瘍が800mmに達する時間を示す。SGN−75での処置は、異種移植片モデルにおいて有効であった。
【0177】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態にまで範囲が限定されない。本明細書に記載されるものに加えて、本発明の種々の改変は、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかになる。このような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。文脈から別段明らかでない限り、任意の工程、要素、実施形態、本発明の特徴もしくは局面は、任意の他のものと組み合わせて使用されうる。本願において言及される全ての特許の包袋、および科学刊行物、アクセッション番号などは、個々に示されるかのように、同程度にまで、全ての目的でそれらの全体が本明細書に参考として援用される。
【0178】
【数1】

【0179】
【数2】

【0180】
【数3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
未変性のCD70への結合と比較して、固定された、卵巣SK−OV−3癌細胞株もしくは膵臓PANC−1癌細胞株上の変性CD70に特異的に結合する抗体。
【請求項2】
キメラ抗体もしくはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ATCCに寄託されかつアクセッション番号PTA−8733を割り当てられたハイブリドーマによって生成される抗体SG−21.1C1もしくはATCCに寄託されかつアクセッション番号PTA−8734を割り当てられたハイブリドーマによって生成される抗体SG−21.5D12以上の特異的結合で、ホルマリン固定したパラフィン包埋の細胞もしくは組織上の変性CD70に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
ATCCに寄託されかつアクセッション番号PTA−8733を割り当てられたハイブリドーマによって生成される抗体SG−21.1C1の、もしくはATCCに寄託されかつアクセッション番号PTA−8734を割り当てられたハイブリドーマによって生成される抗体SG−21.5D12の、変性CD70への特異的結合に対して競合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
ATCCに寄託されかつアクセッション番号PTA−8733を割り当てられたハイブリドーマによって生成される抗体SG−21.1C1もしくはATCCに寄託されかつアクセッション番号PTA−8734を割り当てられたハイブリドーマによって生成される抗体SG−21.5D12である、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
抗体SG−21.1C1の重鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域および抗体SG−21.1C1の軽鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項7】
抗体SG−21.5D12の重鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域および抗体SG−21.5D12の軽鎖可変領域に対して少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項8】
抗体SG−21.1C1の重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のCDRおよび抗体SG−21.1C1の軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域のCDRを含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項9】
抗体SG−21.5D12の重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDRおよび抗体SG−21.5D12の軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域のCDRを含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体および膵臓、卵巣、肺、喉頭、咽頭、乳房、もしくは皮膚の癌の診断、予後もしくはモニタリングを補助することにおいて該抗体を使用するための説明書を含む、診断キット。
【請求項11】
患者の組織サンプルにおけるCD70の発現を検出するための方法であって、該方法は、
該患者から、膵臓、卵巣、肺、喉頭、咽頭、乳房、もしくは皮膚の組織サンプルを得る工程;
該組織サンプルを固定し、該組織サンプル中のCD70を変性させる工程;
該固定した組織サンプルと、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体とを接触させる工程;および
該固定した組織サンプルへの該抗体の結合を検出して、CD70が該サンプルにおいて発現されているか否かを決定する工程;
を包含し、
ここで該固定した組織サンプル上のCD70の発現は、該患者がCD70発現癌を有する可能性を示す、方法。
【請求項12】
コントロール組織サンプルと比較して、前記サンプルにおけるCD70の発現に基づいて、癌を有する患者を診断する工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コントロール組織サンプルと比較して、CD70の発現に基づいて、前記患者における癌の存在を予後を判定する工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記患者のための処置プロトコルを決定する工程をさらに包含し、ここでCD70の検出可能な発現は、該処置プロトコルが、CD70抗体もしくは抗体薬物結合体での処置を含むという指示である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルは、ホルマリンで固定されかつパラフィン中に包埋されている、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
膵臓、卵巣、肺、喉頭、咽頭、乳房、もしくは皮膚の癌を有する患者を診断するか、予後を判定するか、該患者の処置プロトコルを決定するか、もしくは該患者の処置をモニタリングするための方法であって、該方法は、該患者の膵臓、卵巣、肺、喉頭、咽頭、乳房、もしくは該患者の皮膚に由来するサンプル中の細胞においてCD70発現を決定する工程を包含し、ここで検出可能なCD70発現の存在は、該患者の診断、予後判定、処置プロトコルの決定もしくは処置のモニタリングにおいて使用される、方法。
【請求項17】
CD70発現は、ホルマリン固定したパラフィン包埋サンプル中の細胞において決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
CD70発現は、CD70をコードする核酸に対するプローブへのハイブリダイゼーションによって決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記決定する工程が、検出可能なレベルのCD70を示す場合に、CD70抗体もしくはCD70抗体薬物結合体の有効なレジメンを前記患者に施す工程をさらに包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
CD70抗体が投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
CD70抗体薬物結合体が投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
CD70発現は、検出可能なCD70を発現する前記サンプル中の前記細胞の割合として決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
CD70発現は、前記サンプル中の細胞の平均発現レベルとして決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
CD70陽性癌を処置するための方法であって、該方法は、
CD70の検出可能な発現を有する、膵臓、卵巣、肺、喉頭、咽頭、乳房、もしくは皮膚の癌を有する患者に、CD70に対する結合剤の有効レジメンを施す工程
を包含し、ここで該結合剤は、抗体、抗体誘導体、もしくは抗体薬物結合体である、方法。
【請求項25】
前記結合剤は、エフェクター機能を有する抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記結合剤は、抗体薬物結合体である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記患者は、外科手術、照射および/もしくはCD70に指向されない薬剤での化学療法による処置を受けたことがあるが、前記癌の寛解が誘導されなかった、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体は、モノクローナル抗体1F6もしくは2F2、またはそのキメラ形態もしくはヒト化形態である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体薬物結合体は、抗チューブリン剤、DNA副溝結合剤、およびDNA副溝アルキル化剤からなる群より選択される細胞傷害性薬剤を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体薬物結合体は、オーリスタチン、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、ドラスタチン、マイタンシノイド、およびビンカアルカロイドからなる群より選択される細胞傷害性薬剤を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体薬物結合体は、抗チューブリン剤を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記抗チューブリン剤は、オーリスタチン、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサン、バッカチン誘導体、クリプトフィシン、マイタンシノイド、もしくはコンブレタスタチンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗チューブリン剤は、AFP、MMAP、MMAE、AEB、AEVB、オーリスタチン E、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP−16、カンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロン A、エポチロン B、ノコダゾール、コルヒチン、コルセミド(colcimid)、エストラムスチン、セマドチン、ディスコデルモライド、マイタンシン、DM−1、もしくはエレウテロビンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体は、リンカーを介して、細胞傷害性薬剤もしくは細胞増殖抑制剤に結合体化される、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記リンカーは、細胞内条件下で切断可能である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記切断可能なリンカーは、細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチドを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ペプチドは、ジペプチドである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ジペプチドは、val−citリンカーもしくはphe−lysリンカーである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記切断可能なリンカーは、5.5未満のpHで加水分解可能である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記加水分解可能なリンカーは、ヒドラゾンリンカーである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記切断可能なリンカーは、ジスルフィドリンカーである、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記患者は膵臓癌を有し、該膵臓癌は腺癌である、請求項24に記載の方法。
【請求項44】
前記患者は卵巣癌を有し、該卵巣癌は上皮細胞の癌である、請求項24に記載の方法。
【請求項45】
前記患者はヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項46】
組み合わせの診断および薬学的キットであって、該キットは、診断における使用のための請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体、および治療における使用のためのCD70の未変性の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を含む、キット。
【請求項47】
患者の組織サンプル中のCD70の発現を検出するための方法であって、該方法は、
腎臓、脳、もしくは血液の組織サンプルを得る工程;
該組織サンプルを固定し、該組織サンプル中のCD70タンパク質を変性させる工程;
該固定した組織サンプルと、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体とを接触させる工程;および
該固定した組織サンプルへの該抗体の結合を検出して、CD70が該サンプル中で発現されているか否かを決定する工程;
を包含し、
ここで該固定した組織サンプルにおけるCD70の発現は、該患者がCD70発現癌を有する可能性を示す、
方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−520782(P2011−520782A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504225(P2011−504225)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/040275
【国際公開番号】WO2009/126934
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(505314468)シアトル ジェネティックス, インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】