説明

自動クランプ装置

【課題】コストダウンが可能で制御が容易で小形とし、機構も簡単にする。
【解決手段】取付台2に取り付けられたクランプシリンダ23内に旋回軸24の一端を回転自在で軸方向移動自在に挿入してピストン23aと一体とするとともに、旋回軸24の他端に旋回ヘッド25を取り付け、旋回ヘッド25には移動軸26を径方向移動可能に取り付け、移動軸26の一端にはクランプ部27を設けるとともに、移動軸26の他端にカムフォロア28を設ける。又、取付台2には角度の変化により旋回軸24との距離が変化する溝29aを有するクランプ部長さ調整ガイド29を設け、該ガイド29の溝29aとカムフォロア28とを係合してカムフォロア28を旋回させてクランプ部27の径方向長さを調整し、サーボモータ32により駆動される旋回角度調整軸30をクランプシリンダ23内に挿入して旋回軸24の軸方向穴24aに軸方向移動自在で回転不能に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動変速機の試験装置等において自動変速機等のワークを自動クランプする自動クランプ装置、特にワークの形状に対応してクランプ位置を変えることができる自動クランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は自動変速機の試験装置の簡単な構成を示し、1は取付台2に図示しないクランプ装置によりクランプされた自動変速機であるワーク、3はワーク1の入力側に連結された駆動モータ、4はワーク1の出力側に連結されたダイナモメータである。上記構成において、駆動モータ3の駆動によりワーク1が回転し、その出力がダイナモメータ4により吸収され、測定される。
【0003】
図3(a),(b)は従来の自動クランプ装置の旋回ヘッドの側面図及び自動クランプ装置の全体構成図を示し、5は取付台2に取り付けられた軸受台であり、中空の旋回軸6は軸受7を介して軸受台5に回転自在に支持され、旋回軸6の一端には旋回ヘッド8が取り付けられ、旋回ヘッド8はラック9を移動自在に支持し、ラック9はクランプ部22を支持するとともに、ピニオン10と噛合する。又、11,12は支持台13上に支持されたサーボモータであり、サーボモータ11の回転軸にはピニオン14及びギヤ15を介して回転軸16の一端が連結され、回転軸16は中空の旋回軸6に貫通され、回転軸16の他端にはピニオン10が取り付けられる。又、サーボモータ12の回転軸にはピニオン17及びギヤ18を介して旋回軸6の他端が連結され、この旋回軸6の他端は支持台13上に設けられた軸受台19に軸受20を介して回転自在に支持される。又、21は取付台2に取り付けられたクランプシリンダであり、そのピストン21aの先端は支持台13に連結される。
【0004】
上記構成において、クランプ部22の径方向の移動、即ち長さの調整は、サーボモータ11の回転によりピニオン14及びギヤ15を介して回転軸16を回転させ、ピニオン10及びラック9を介してクランプ部22を径方向に移動させることにより行う。クランプ部22の旋回は、サーボモータ12の駆動によりピニオン17及びギヤ18を介して旋回軸6を回転させ、旋回ヘッド8を旋回させることにより行う。さらに、ワークを取付台2にクランプする際には、クランプシリンダ21の駆動により支持台13を軸方向に動かし、旋回軸6及び回転軸16も軸方向に動かし、旋回ヘッド8及びクランプ部22を動かしてワークを取付台2にクランプする。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【特許文献1】特開平11−114755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示した従来の自動クランプ装置においては、サーボモータ11,12を2個使用しており、クランプ部22の回転角と径方向長さを測定するセンサも必要となり、コストが高くなった。又、クランプ部22のクランプ動作をさせるためにクランプシリンダ21も必要とし、サイズが大きくなった。さらに、サーボ系も2種必要とし、制御のプログラムも複雑になった。又、クランプ動作の際にはサーボモータ11,12も移動させる必要があるために、機構が複雑になった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、サーボモータを1個としてコストダウンを可能とするとともに、制御も容易で小形とし、かつ機構も簡単にすることができる自動クランプ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の請求項1に係る自動クランプ装置は、ワークを取付台へ自動的にクランプする自動クランプ装置において、取付台に取り付けられたクランプシリンダと、クランプシリンダ内に一端が挿入されてそのピストンと一体的に設けられ、回転自在でかつ軸方向移動自在に設けられた旋回軸と、旋回軸の他端に取り付けられた旋回ヘッドと、旋回ヘッドに径方向移動可能に設けられた移動軸と、移動軸に設けられ、ワークを取付台へクランプするクランプ部と、移動軸に設けられたカムフォロアと、取付台に設けられ、カムフォロアと係合してカムフォロアを旋回させることによりクランプ部の径方向長さを調整するクランプ部長さ調整ガイドと、一端がクランプシリンダに挿入されて旋回軸に軸方向移動自在にかつ回転不能に連結され、他端にサーボモータが連結された旋回角度調整軸とを備えたものである。
【0009】
請求項2に係る自動クランプ装置は、角度の変化により旋回軸との距離が変化する溝を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のようにこの発明の請求項1,2によれば、クランプ部の位置を旋回方向、径方向及び軸方向に変化させることができ、変速機等のワークの形状に対応してクランプ位置を変えることができ、多種類のワークに対応することができる。又、1個のサーボモータによりクランプ部の旋回と径方向長さ調整を行っており、サーボモータが1個で済み、コストダウンが可能となるとともに、小形化が可能となり、制御も簡単になった。又、従来同様、クランプシリンダを用いているが、クランプシリンダ内に旋回軸及び旋回角度調整軸を収納しているので、これによっても小形化が可能になった。さらに、クランプ動作の際にサーボモータの位置を動かす必要がないので、機構が簡単になり、これによっても小形化が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面とともに説明する。図1(a),(b)はこの発明の実施最良形態による自動クランプ装置の旋回ヘッドの側面図及び全体構成図を示す。なお、図1(a)にはクランプ部長さ調整ガイド29の側面図を便宜上示している。23は一端が取付台2に取り付けられたクランプシリンダ、24はクランプシリンダ23内に一端が挿入されてそのピストン23aと一体的に設けられた旋回軸であり、旋回軸24は回転自在でかつ軸方向移動自在に設けられる。又、旋回軸24の他端には旋回ヘッド25が取り付けられ、旋回ヘッド25には移動軸26が径方向移動可能に設けられ、移動軸26の一端にはワークを取付台2にクランプするクランプ部27が取付台2方向の軸方向に突出して設けられ、移動軸26の他端にはカムフォロア28が取付台2方向の軸方向に突出して設けられる。
【0012】
又、取付台2の旋回ヘッド25側にはカムフォロア28と係合するクランプ部長さ調整ガイド29が設けられ、クランプ部長さ調整ガイド29は半径が角度により変化する形状の溝29a、即ち角度の変化により旋回軸24との距離が変化する溝29aを有しており、溝29aの端部イと旋回軸24の中心との距離は、溝29aの端部ロと旋回軸24の中心との距離より長い。溝29aとカムフォロア28と係合した状態でカムフォロア28を旋回させることによりクランプ部27の径方向長さを調整することができる。30は一端がクランプシリンダ23に挿入されるとともに、旋回軸24の軸方向穴24aに軸方向移動自在にかつ回転不能に挿入された旋回角度調整軸であり、旋回角度調整軸30の他端にはギヤ31が取り付けられ、ギヤ31はサーボモータ32の回転軸に取り付けられたピニオン33と噛合する。
【0013】
上記構成において、クランプ部27の径方向の長さ調整を行う際には、クランプシリンダ23の駆動によりピストン23aを右動させ、これと一体の旋回軸24を右動させ、カムフォロア28をクランプ部長さ調整ガイド29の溝29aと係合させる。次に、サーボモータ32の駆動によりピニオン33、ギヤ31、旋回角度調整軸30、旋回軸24、旋回ヘッド25及び移動軸26を介してカムフォロア28を旋回させると、移動軸26がクランプ部長さ調整ガイド29の溝29aの形状に沿って移動し、クランプ部27の径方向長さが変化する。このため、所定の径方向長さになるまでカムフォロア28を旋回させ、所定の径方向長さになったら旋回を停止させる。この状態でクランプシリンダ23の駆動により旋回軸24を左動させ、カムフォロア28をクランプ部長さ調整ガイド29から離し、サーボモータ32の駆動によりクランプ部27をクランプ位置まで旋回させる。ここで、クランプシリンダ23の駆動によりクランプ部27を右動させ、ワークを取付台2にクランプする。
【0014】
上記した実施最良形態においては、クランプ部27の位置を旋回方向、径方向及び軸方向に変化させることができ、多種類の変速機を試験する試験機に適用することができる。特に、変速機の将来の機種の形状が不明でクランプ位置が決められない場合でも、将来改造することなく、適用することができる。又、1個のサーボモータ32によりクランプ部27の旋回と径方向長さ調整を行っており、サーボモータが1個で済み、コストダウンが可能となるとともに、小形化が可能となり、制御も簡単になった。又、従来同様、クランプシリンダ23を用いているが、クランプシリンダ23内に旋回軸24及び旋回角度調整軸30を収納しているので、これによっても小形化が可能になった。さらに、クランプ動作の際にサーボモータ32の位置を動かす必要がないので、機構が簡単になり、これによっても小形化が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施最良形態による自動クランプ装置の旋回ヘッドの側面図及び全体構成図である。
【図2】自動変速機の試験装置の構成図である。
【図3】従来の自動クランプ装置の旋回ヘッドの側面図及び自動クランプ装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0016】
1…ワーク
2…取付台
23…クランプシリンダ
23a…ピストン
24…旋回軸
24a…軸方向穴
25…旋回ヘッド
26…移動軸
27…クランプ部
28…カムフォロア
29…クランプ部長さ調整ガイド
29a…溝
30…旋回角度調整軸
32…サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを取付台へ自動的にクランプする自動クランプ装置において、取付台に取り付けられたクランプシリンダと、クランプシリンダ内に一端が挿入されてそのピストンと一体的に設けられ、回転自在でかつ軸方向移動自在に設けられた旋回軸と、旋回軸の他端に取り付けられた旋回ヘッドと、旋回ヘッドに径方向移動可能に設けられた移動軸と、移動軸に設けられ、ワークを取付台へクランプするクランプ部と、移動軸に設けられたカムフォロアと、取付台に設けられ、カムフォロアと係合してカムフォロアを旋回させることによりクランプ部の径方向長さを調整するクランプ部長さ調整ガイドと、一端がクランプシリンダに挿入されて旋回軸に軸方向移動自在にかつ回転不能に連結され、他端にサーボモータが連結された旋回角度調整軸とを備えたことを特徴とする自動クランプ装置。
【請求項2】
前記クランプ部長さ調整ガイドは、角度の変化により旋回軸との距離が変化する溝を有することを特徴とする請求項1記載の自動クランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−51610(P2008−51610A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227259(P2006−227259)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】