説明

自動ワインダ

【課題】上記の負圧源に接続され、異物や糸などを吸引する部材を複数有する自動ワインダの構成を簡素とする技術を提供する。
【解決手段】給糸ボビン3から解舒された糸4を綾振りながら巻取ボビン6,7に巻き取ってパッケージ7を形成するための糸巻取ユニット2と、負圧を発生させるための負圧源62と、を備える。前記糸巻取ユニット2は、糸4及び異物のうち少なくとも何れか一方を吸引するための吸引手段(25,27,20)を複数有する。前記複数の吸引手段(25,27,20)の各基端(25b、27b、20c)と、負圧源62とは、吸引制御ユニット30を介して接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ワインダの構成を簡素とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2001−159038号公報)には、パッケージ側の糸端を吸引保持するサクションマウスとブロアダクトとを連結する連結パイプ内における吸引流の流れを停止させる遮蔽板を供えた構成が開示されている(本文献、第5カラム第19〜20行目)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般に、自動ワインダを構成する各糸巻取ユニットにおいては、走行する糸に付着した異物を除去したり、パッケージから糸端を捕捉したり、する必要がある。このため、自動ワインダには通常、負圧源が備えられており、各糸巻取ユニットには、例えば、走行する糸に付着した異物を負圧源を利用して吸引して除去するクリーニングパイプや、パッケージから糸端を負圧源を利用して吸引捕捉するサクションマウスなどが搭載されている。そして、上記のクリーニングパイプやサクションマウスは、運転中、常に異物・糸端を吸い続けなければならないわけではなく、むしろ、所定の条件が満足されたときに限って異物や糸端を吸引するようにした方が合理的である。
【0004】
しかし、上記の運転を実現するためには、クリーニングパイプやサクションマウスの夫々に制御可能なシャッターを設けざるを得ず、自ずと、自動ワインダの構成が複雑化し、コスト面やメンテナンス面を考慮すると、改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、上記の負圧源に接続され、異物や糸などを吸引する部材を複数有する自動ワインダの構成を簡素とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本願発明の観点によれば、給糸ボビンから解舒された糸を綾振りながら巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成するための糸巻取装置と、負圧を発生させるための負圧源と、を備えた自動ワインダは、以下のように構成される。前記糸巻取装置は、糸及び異物の少なくとも一方を吸引するための複数の吸引手段を有する。前記複数の吸引手段の各基端と前記負圧源とは、吸引制御部を介して接合されている。以上の構成よれば、前記複数の吸引手段による吸引を各吸引手段ごとに設けた吸引制御部により制御する構成と比較して、簡素な構成の自動ワインダが実現される。
【0008】
上記の自動ワインダは、更に、以下のように構成される。前記吸引制御部は、前記複数の吸引手段の上記各基端を閉塞し又は開放するように回動可能であって一体的に形成される遮蔽板を含んで構成される。以上の構成を採用することで、前記吸引制御部の簡素な構成が実現される。
【0009】
上記の自動ワインダは、更に、以下のように構成される。前記吸引制御部は、前記複数の吸引手段による吸引を選択的に制御可能に構成される。以上の構成によれば、前記複数の吸引手段のうち何れか一つの吸引手段による吸引は許容し、この吸引手段以外の吸引手段による吸引は禁止する、といったような自由度の高い制御が実現される。
【0010】
上記の自動ワインダは、更に、以下のように構成される。前記複数の吸引手段の上記各基端は、前記遮蔽板の回動する方向へ相対的にズレている。以上の構成によれば、前記複数の吸引手段のうち何れか一つの吸引手段による吸引は許容し、この吸引手段以外の吸引手段による吸引は禁止する、といったような自由度の高い制御が実現されると共に、このような選択的な制御を前記遮蔽板の回動角の大小に置き換えて制御できるようになる。
【0011】
上記の自動ワインダは、更に、以下のように構成される。前記糸巻取装置は、走行する前記糸に付着している異物を吸引する、第一の集塵手段と、前記給糸ボビン側の糸としての下糸と、前記パッケージ側の糸としての上糸と、を糸継する糸継装置で発生した糸屑を吸引する、第二の集塵手段と、前記上糸を吸引捕捉して前記糸継装置に案内する上糸吸引捕捉案内手段と、のうち少なくとも二つ以上を前記吸引手段として備える。即ち、前記の吸引制御部によって達成される効果は、前記糸巻取装置が上記の各手段のうち少なくとも二つ以上を備えるとき、有意に奏される。
【0012】
上記の自動ワインダは、更に、以下のように構成される。前記糸巻取装置は、走行する前記糸に付着している異物を吸引する、第一の集塵手段と、前記給糸ボビン側の糸としての下糸と、前記パッケージ側の糸としての上糸と、を糸継する糸継装置に付設され、前記糸継装置で発生した糸屑を吸引する、第二の集塵手段と、前記上糸を吸引捕捉して前記糸継装置に案内する上糸吸引捕捉案内手段と、を前記吸引手段として備える。前記吸引制御部は、前記複数の吸引手段の上記各基端を閉塞し又は開放するように回動可能であって一体的に形成される遮蔽板を含んで構成される。前記第一の集塵手段内に形成される流路としての第一吸引流路と、前記第二の集塵手段内に形成される流路としての第二吸引流路と、前記上糸吸引捕捉案内手段内に形成される流路としての第三吸引流路と、は前記遮蔽板の回動により前記負圧源と前記各吸引流路との導通が選択的に許容される。以上の構成によれば、前記糸巻取装置の定常運転時には走行する前記糸に付着している異物を吸引除去すると共に、随時、前記糸継装置で発生した糸屑を吸引回収し、糸継の際にはこれらの吸引を一旦中止し、前記上糸を吸引捕捉して前記糸継装置に案内する、といったような一連の作動が前記遮蔽板の回動のみによって実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動ワインダの糸巻取ユニットを示す模式正面図及びブロック図である。
【0014】
最初に図1に基づいて、自動ワインダ1の糸巻取ユニット2(糸巻取装置)を説明する。この糸巻取ユニット2は、給糸ボビン3から解舒された糸4を綾振ドラム5で綾振りながら巻取チューブ6に巻き取って糸層を形成し、所定長で所定のコーン形状のパッケージ7を形成するものである。図1では糸巻取ユニット2を1台しか図示していないが、このような糸巻取ユニット2が図略の機台上に多数列設されることで、自動ワインダ1が構成されている。
【0015】
なお、本明細書では、巻取チューブ6及びパッケージ7を総称して巻取ボビンと呼ぶ。即ち、糸層が形成されていない巻取ボビンが巻取チューブ6であり、糸層が形成された巻取ボビンがパッケージ7である。
【0016】
糸巻取ユニット2は、前記巻取チューブ6を着脱可能に支持するクレードル8と、前記巻取チューブ6の周面に又はパッケージ7の周面に接触しながら所定の回転数で回転する綾振ドラム5と、を備えている。前記クレードル8は、前記巻取チューブ6の両端を挟持して回転自在に支持できるように構成されている。また、このクレードル8は回動軸10を中心に傾動自在に構成されており、巻取ボビン6,7への糸4の巻取りに伴う巻太り(糸層の径の増大)を、クレードル8が回動することによって吸収できるように構成されている。綾振ドラム5の周面には、巻取ボビン6,7に対して糸4を綾振るための綾振溝9が刻設されている。巻取ボビン6,7は、綾振ドラム5に転接することで従動回転するようになっている。
【0017】
糸巻取ユニット2の制御を担うユニット制御部50は、糸巻取ユニット2毎に備えられている。
【0018】
次に、糸継装置14及びヤーンクリアラ15(糸監視器)、ワキシング装置24、クリーニングパイプ25(吸引手段、第一の集塵手段)を説明する。即ち、前記糸巻取ユニット2は、給糸ボビン3と綾振ドラム5との間の糸走行経路中に、給糸ボビン3側から順に、糸継装置14とヤーンクリアラ15、ワキシング装置24、クリーニングパイプ25を配設した構成となっている。
【0019】
糸継装置14は、ヤーンクリアラ15が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン3からの糸4の糸切れ時に、給糸ボビン3側の糸4としての下糸4Lと、パッケージ7側の糸4としての上糸4Uとを糸継ぎするように構成されている。この糸継装置14には、糸継装置14で発生した糸屑を一時的に収容する集塵器26が付設されており、この集塵器26内に収容されている糸屑を吸引して回収できるように集塵器26には糸屑回収パイプ27(吸引手段、第二の集塵手段)が備えられ、糸屑回収パイプ27の基端27bは後述する吸引制御ユニット30(吸引制御部)に接続されている。
【0020】
また、ヤーンクリアラ15は糸4の太さ欠陥を検出するためのものであって、ヤーンクリアラ15の検出部の部分を通過する糸4の太さを適宜のセンサで検出し、このセンサからの信号をアナライザ23で分析することで、スラブ等の糸欠陥を検出するように構成されている。このヤーンクリアラ15には、糸欠陥を検出した時に直ちに糸4を切断するためのカッター16が付設されている。
【0021】
糸継装置14の下側と上側には、給糸ボビン3側の下糸4Lを吸引捕捉して糸継装置14へ案内する下糸吸引捕捉案内手段17と、パッケージ7側の上糸4Uを吸引捕捉して糸継装置14へ案内する上糸吸引捕捉案内手段20(吸引手段)が設けられている。上糸吸引捕捉案内手段20は、パイプ状に構成されており、先端にマウス22を備える。上糸吸引捕捉案内手段20は、軸21を中心に上下回動可能に設けられるサクションマウス20aと、このサクションマウス20aと後述の吸引制御ユニット30とを連結する連結パイプ20bと、から構成されている。即ち、上糸吸引捕捉案内手段20の基端20cは、吸引制御ユニット30に接続されている。下糸吸引捕捉案内手段17もパイプ状に構成されており、先端に吸引口19を備える。下糸吸引捕捉案内手段17は、軸18を中心に上下回動可能に設けられる中継パイプ17aと、この中継パイプ17aとブロアダクト60とを連結する図示しない連結パイプと、から構成されている。
【0022】
ワキシング装置24は、走行する糸4に対して適宜のワックスを塗布するものである。
【0023】
クリーニングパイプ25は、走行する糸4に付着している異物を吸引して除去するものである。このクリーニングパイプ25の基端25bは吸引制御ユニット30に接続され、クリーニングパイプ25の先端には吸引口25aが形成されている。このクリーニングパイプ25の吸引口25aは、ワキシング装置24と綾振ドラム5との間で走行する糸4に対して近接される。
【0024】
以上に説明したように本実施形態において、糸巻取ユニット2は、糸4又は異物のうち少なくとも何れか一方を吸引するための吸引手段を複数有している。詳しくは、糸巻取ユニット2は、(i)走行する糸4に付着している異物を吸引するクリーニングパイプ25と、(ii)糸継装置14で発生した糸屑を吸引する糸屑回収パイプ27と、(iii)上糸4Uを吸引捕捉して糸継装置14に案内する上糸吸引捕捉案内手段20と、の(i)〜(iii)を上記の吸引手段として備えている。上記のクリーニングパイプ25の基端25b、糸屑回収パイプ27の基端27b、上糸吸引捕捉案内手段20(吸引手段)の基端20cは、何れも吸引制御ユニット30に接続されいる。
【0025】
ブロアダクト60は、略示の負圧発生装置61に連結されている。そして、負圧を発生させるための負圧源62は、ブロアダクト60と負圧発生装置61から構成される。ブロアダクト60は、列設される複数の糸巻取ユニット2の列設方向に沿って延びており、各糸巻取ユニット2が備える吸引制御ユニット30はブロワパイプ70を介して上記のブロアダクト60へ接続されている。
【0026】
自動ワインダ1は、列設される複数の糸巻取ユニット2と、これらの糸巻取ユニット2にとって共通の負圧源62と、から構成されている。
【0027】
以上の構成で各糸巻取ユニット2は前述の吸引制御ユニット30を備え、上記複数の吸引手段25,27,20の各基端25b,27b,20cと、負圧源62とは、吸引制御ユニット30を介して接合されている。即ち、各基端25b,27b,20cは吸引制御ユニット30に接続される。吸引制御ユニット30と負圧源62はブロワパイプ70を介して接続されている。以下、この吸引制御ユニット30の構成を、図2〜4を参照しつつ、詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る吸引制御ユニットの分解図である。図3は、図2の3−3線矢視断面図である。図4は、図3の4−4線矢視端面図である。
【0028】
図2に示されるように、吸引制御ユニット30は、糸巻取ユニット2の図示しないフレームに対して固定される第一平板部31と、この第一平板部31に対して対向する第二平板部32と、第一平板部31と第二平板部32の間に介挿されるシャッター33(遮蔽板)と、このシャッター33を回動させる駆動源としてのシャッター駆動機構34と、を主たる構成としている。
【0029】
第二平板部32には、(i)クリーニングパイプ25の基端25bが接続されるクリーニング孔32aと、(ii)糸屑回収パイプ27の基端27bが接続される糸屑孔32bと、(iii)連結パイプ20bの基端20cが接続されるサクション孔32cと、が穿孔されている。一方、第一平板部31には、前述のブロワパイプ70が接続されるブロワ孔31cが穿孔されている。
【0030】
そして、第二平板部32を第一平板部31に対して締結固定したとき、ブロワ孔31cの中心とサクション孔32cの中心は略一致するようになっている。
【0031】
シャッター33は、図3に示されるように略扇状且つ一体的に形成され、第一平板部31と第二平板部32との間において、各基端25b、27b、20cを閉塞し又は開放するように回動軸33aを中心に回動可能となっている。
【0032】
シャッター駆動機構34は、第一平板部31に設けられるステッピングモータ35と、シャッター33の回動軸33aに固定されるプーリ36と、ステッピングモータ35の出力軸とプーリ36に巻き掛けられる平ベルト37と、から構成される。ステッピングモータ35の出力は、平ベルト37とプーリ36を介してシャッター33に伝動されるようになっている。
【0033】
また、第一平板部31と第二平板部32の間には、シャッター33が回動する空間を保密とするためのシール部材38が介装される。
【0034】
次に、図4を参照されたい。本図に示されるように、前述のクリーニング孔32a及び糸屑孔32b、サクション孔32c、ブロワパイプ70が接続されるブロワ孔31cは、第一平板部31と第二平板部32の間に形成されシャッター33が回動する空間としての接合空間Gを介して相互に連通(接合)されている。本図における太線矢印は、負圧源62による吸引によって発生する空気の流れの方向を略示するものである。
【0035】
次に、図3に基づいて、クリーニング孔32aや糸屑孔32b、サクション孔32cの配設態様と、シャッター33の形状と、を詳細に説明する。本図において、クリーニング孔32aや糸屑孔32bの輪郭は二点鎖線で略示し、サクション孔32cの輪郭はブロワ孔31cの輪郭と重複する関係にあるので割愛した。本図に示されるように、クリーニング孔32a、糸屑孔32b、サクション孔32cは、符号Sで示すシャッター33の回動方向へこの順にズレて配設されている。具体的には、シャッター33の回動軸33aを中心に見て、糸屑孔32bはサクション孔32cよりも時計回り側に穿孔され、クリーニング孔32aは糸屑孔32bよりも時計回り側に穿孔されている。こうして、吸引制御ユニット30は、各吸引手段25、27、20による吸引を選択的に制御可能に構成されている。そして、シャッター33が本図に示される位置にあるとき、シャッター33は、クリーニング孔32a、糸屑孔32b、サクション孔32cのすべてを閉塞する。そして、このシャッター33が時計回り又は反時計回りに回動することによって、例えば図6に示されるようにクリーニング孔32aのみが開放されたり、図7に示されるようにクリーニング孔32aと糸屑孔32bのみが開放されたり、図8に示されるようにサクション孔32cのみが開放されたり、するようになっている。
【0036】
次に、ユニット制御部50による制御を説明する。図1を参照されたい。ユニット制御部50は、図略のCPU(Central Proccessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Randam Access Memory)を備える。ユニット制御部50の有するROMには、CPUなどに遮蔽板制御手段51としての機能を発揮させるための制御ソフトウェアが記憶されている。以下、ユニット制御部50と遮蔽板制御手段51による制御を、図5に示される制御フローに従って説明する。
【0037】
先ず、自動ワインダ1の電源を投入すると(S300)、遮蔽板制御手段51は、図3に示されるようにクリーニング孔32aと糸屑孔32b、サクション孔32cのすべてを閉塞する位置にあるシャッター33を反時計回りに回動させて、図6に示されるようにクリーニング孔32aのみを開放するようにステッピングモータ35に適宜の信号を送信する(S310)。そして、図略の自動玉揚装置は、給糸ボビン3の糸4を巻取チューブ6に巻き掛け、これにより、糸巻取ユニット2による糸4の巻き取りが開始される。この巻き取り中は、クリーニングパイプ25の基端25bがシャッター33によって閉塞されていないので(図4を併せて参照)、走行する糸4に付着している異物(例えば糸4に付着しているワックス粉や糸屑など)は吸引口25aの近傍を通り過ぎる際にブロアダクト60によって吸引除去される。
【0038】
次に、ユニット制御部50は糸継要求があるか判定し(S320)、糸継要求がない場合(S320:NO)は、処理をS350へ進める。一方、糸継要求がある場合(S320:YES)は、遮蔽板制御手段51は、図6に示されるようにクリーニング孔32aのみを開放する位置にあるシャッター33を大きく反時計回りに回動させて、図8に示されるようにサクション孔32cのみを開放するようにステッピングモータ35に適宜の信号を送信する(S330)。これにより上糸吸引捕捉案内手段20のマウス22は吸引状態となり、ユニット制御部50が上糸吸引捕捉案内手段20を回動させると、パッケージ7の外周から糸端が吸引捕捉される。ユニット制御部50は糸継装置14から糸継完了に係る信号を受信するまで待機し(S340:NO)、ユニット制御部50が斯かる信号を受信したら(S340:YES)、遮蔽板制御手段51は、再び図6に示される状態となるようにステッピングモータ35へ適宜の信号を送信し、ユニット制御部50は処理をS350へと進める。
【0039】
ところで、ユニット制御部50は、図略のタイマー回路を用いて上記の巻き取り開始時刻からの経過時間を計測している。この経過時間が所定時間に達していない場合(S350:NO)は、処理はS310へと戻る。一方、この経過時間が所定時間に達している場合(S350:YES)は、遮蔽板制御手段51は、図6に示されるように糸屑孔32bとサクション孔32cを閉塞する位置にあるシャッター33を反時計回りに回動させて、図7に示されるようにクリーニング孔32aに加えて糸屑孔32bも開放するようにステッピングモータ35に適宜の信号を送信する(S360)。これにより、糸継装置14で発生した糸屑がブロアダクト60に吸引回収される。そして、ユニット制御部50は、上記のタイマー回路をリセット(S370)した後に、再び図6の状態となるようにステッピングモータ35へ適宜の信号を送信し、ユニット制御部50は処理をS310へと戻す。
【0040】
(請求項1)
以上説明したように上記実施形態において自動ワインダ1は、以下のように構成される。即ち、自動ワインダ1は、給糸ボビン3から解舒された糸4を綾振りながら巻取ボビン6,7に巻き取ってパッケージ7を形成するための糸巻取ユニット2と、負圧を発生させるための負圧源62と、を備える。前記糸巻取ユニット2は、糸4及び異物のうち少なくとも何れか一方を吸引するための吸引手段(25,27,20)を複数有する。前記複数の吸引手段(25,27,20)の各基端(25b、27b、20c)と、負圧源62とは、吸引制御ユニット30を介して接合される。以上の構成よれば、前記複数の吸引手段(25,27,20)による吸引を各吸引手段(25,27,20)ごとに設けた吸引制御部により制御する構成と比較して、簡素な構成の自動ワインダ1が実現される。
【0041】
(請求項2)
また、前記吸引制御ユニット30は、前記複数の吸引手段(25、27、20)の各基端(25b、27b、20c)を閉塞し又は開放するように回動可能であって一体的に形成されるシャッター33を含んで構成される。以上の構成を採用することで、前記吸引制御ユニット30の簡素な構成が実現される。
【0042】
なお、上記実施形態では、シャッター33は一体的に形成されているが、「一体的に形成されるシャッター33」は、一枚の板から成る場合と、複数の板を継ぎ接ぎして成る場合と、の両方を含む。
【0043】
(請求項3)
また、前記吸引制御ユニット30は、前記複数の吸引手段(25,27,20)による吸引を選択的に制御可能に構成される。以上の構成によれば、前記複数の吸引手段(25,27,20)のうち何れか一つの吸引手段による吸引は許容し、この吸引手段以外の吸引手段による吸引は禁止する、といったような自由度の高い制御が実現される。
【0044】
(請求項4)
また、各吸引手段(25,27,20)の各基端(25b、27b、20c)は、前記シャッター33の回動する方向へ相対的にズレていることが好ましい。以上の構成によれば、前記複数の吸引手段(25,27,20)のうち何れか一つの吸引手段による吸引は許容し、この吸引手段以外の吸引手段による吸引は禁止する、といったような自由度の高い制御が実現されると共に、このような選択的な制御を前記シャッター33の回動角の大小に置き換えて制御できるようになる。
【0045】
(請求項5)
また、上記の前記糸巻取ユニット2は、走行する前記糸4に付着している異物を吸引するクリーニングパイプ25と、前記給糸ボビン3側の糸4としての下糸4Lと、前記パッケージ7側の糸4としての上糸4Uと、を糸継する糸継装置14で発生した糸屑を吸引する糸屑回収パイプ27と、前記上糸4Uを吸引捕捉して前記糸継装置14に案内する上糸吸引捕捉案内手段20と、を前記吸引手段として備える。即ち、前記の吸引制御ユニット30によって達成される効果は、前記糸巻取ユニット2が上記の各手段を備えるとき、有意に奏される。
【0046】
上記実施形態に代えて、クリーニングパイプ25と糸屑回収パイプ27、上糸吸引捕捉案内手段20のうち何れか二つを前記吸引手段として備える場合も、上記効果は有意に奏される。
【0047】
(請求項6)
また、クリーニングパイプ25内に形成されるクリーニング流路25r(図2を併せて参照)と、糸屑回収パイプ27内に形成される糸屑流路27rと、上糸吸引捕捉案内手段20内に形成されるサクション流路20rと、は前記シャッター33の回動により負圧源62と各吸引流路25r、27r、20rとの導通が選択的に許容される。以上の構成によれば、前記糸巻取ユニット2の定常運転時には走行する前記糸4に付着している異物を吸引除去すると共に、随時、前記糸継装置14で発生した糸屑を吸引回収し、糸継の際にはこれらの吸引を一旦中止し、前記上糸4Uを吸引捕捉して前記糸継装置14に案内する、といったような一連の作動が前記シャッター33の回動のみによって実現される。
【0048】
なお、上記実施形態では、図3に示されるように、クリーニング孔32a、糸屑孔32b、サクション孔32cが、この順に反時計回りに配設されているが、これに代えて、この順に時計回りに配設されることも考えられる。
【0049】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0050】
図6と図9を対比させて参照されたい。図9は、図6に類似する図であって、本発明の第一変形例を示す図である。即ち、上記実施形態においてシャッター33は図6に示されるように略扇状に形成されている。そして、シャッター33は、クリーニング孔32aのみを開放する場合、本図に示されるようにシャッター33はクリーニング孔32aから反時計回りに退避した位置となっている。これに対し、本変形例においてシャッター33には、図9に示されるようにシャッター33を回動軸33aから見たときに右側へ(即ち、時計回り側へ)膨出する膨出部39が形成され、この膨出部39には、シャッター33が図6に示される位置にあるときにクリーニング孔32aと重複関係となる孔40が穿孔されている。そして、この孔40を囲繞する所定厚みでフェルト製の保密部材41がシャッター33と第一平板部31との間に貼付されている。この保密部材41の存在により、上記実施形態と比較して、定常運転時におけるエア漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの糸巻取ユニットを示す模式正面図及びブロック図
【図2】本発明の一実施形態に係る吸引制御ユニットの分解図
【図3】図2の3−3線矢視断面図
【図4】図3の4−4線矢視端面図
【図5】ユニット制御部と遮蔽板制御手段による制御フローを示すフローチャート
【図6】図3に類似する図であって、定常運転時の様子を示す図
【図7】図3に類似する図であって、糸屑回収時の様子を示す図
【図8】図3に類似する図であって、糸継時の様子を示す図
【図9】図3に類似する図であって、本発明の一変形例を示す図
【符号の説明】
【0052】
1 自動ワインダ
2 糸巻取ユニット
4 糸
20、25、27 吸引手段
30 吸引制御ユニット
62 負圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンから解舒された糸を綾振りながら巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成するための糸巻取装置と、負圧を発生させるための負圧源と、を備えた自動ワインダであって、
前記糸巻取装置は、糸及び異物の少なくとも一方を吸引するための複数の吸引手段を有し、
前記複数の吸引手段の各基端と前記負圧源とは、吸引制御部を介して接合されている、
ことを特徴とする自動ワインダ
【請求項2】
請求項1に記載の自動ワインダにおいて、
前記吸引制御部は、前記複数の吸引手段の上記各基端を閉塞し又は開放するように回動可能であって一体的に形成される遮蔽板を含んで構成される、
ことを特徴とする自動ワインダ
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動ワインダにおいて、
前記吸引制御部は、前記複数の吸引手段による吸引を選択的に制御可能に構成される、
ことを特徴とする自動ワインダ
【請求項4】
請求項2に記載の自動ワインダにおいて、
前記複数の吸引手段の上記各基端は、前記遮蔽板の回動する方向へ相対的にズレている、
ことを特徴とする自動ワインダ
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の自動ワインダにおいて、
前記糸巻取装置は、
走行する前記糸に付着している異物を吸引する、第一の集塵手段と、
前記給糸ボビン側の糸としての下糸と、前記パッケージ側の糸としての上糸と、を糸継する糸継装置で発生した糸屑を吸引する、第二の集塵手段と、
前記上糸を吸引捕捉して前記糸継装置に案内する上糸吸引捕捉案内手段と、
のうち少なくとも二つ以上を前記吸引手段として備える、
ことを特徴とする、自動ワインダ
【請求項6】
請求項1に記載の自動ワインダにおいて、
前記糸巻取装置は、
走行する前記糸に付着している異物を吸引する、第一の集塵手段と、
前記給糸ボビン側の糸としての下糸と、前記パッケージ側の糸としての上糸と、を糸継する糸継装置に付設され、前記糸継装置で発生した糸屑を吸引する、第二の集塵手段と、
前記上糸を吸引捕捉して前記糸継装置に案内する上糸吸引捕捉案内手段と、
を前記吸引手段として備え、
前記吸引制御部は、前記複数の吸引手段の上記各基端を閉塞し又は開放するように回動可能であって一体的に形成される遮蔽板を含んで構成され、
前記第一の集塵手段内に形成される流路としての第一吸引流路と、前記第二の集塵手段内に形成される流路としての第二吸引流路と、前記上糸吸引捕捉案内手段内に形成される流路としての第三吸引流路と、は前記遮蔽板の回動により前記負圧源と前記各吸引流路との導通が選択的に許容される、
ことを特徴とする自動ワインダ

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate