説明

自動倉庫システム

【課題】
メンテナンス等が必要な入出庫装置を速やかに自動倉庫ユニットからトラバーサへ移動させ、交替の入出庫装置を速やかに自動倉庫へ投入できる。
【構成】
自動倉庫システムは、ラックと、レールに沿って走行し前記ラックへ入出庫する入出庫装置とを備えている。複数の自動倉庫ユニット間を接続するようにトラバーサレールが敷設され、入出庫装置が自動倉庫ユニットとの間で乗り移り自在なレールを、受入用と投入用とに2本備えているトラバーサを走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動倉庫システムに関し、特に入出庫装置の故障、メンテナンス等により自動倉庫ユニットがダウンする時間を短縮することに関する。
【背景技術】
【0002】
スタッカークレーン等の入出庫装置とラックとを備えている自動倉庫ユニットが、複数併設された自動倉庫システムが知られている。このような自動倉庫システムでは、いずれかの自動倉庫ユニットの入出庫装置がメンテナンスを必要としあるいは故障が生じると、自動倉庫ユニットがダウンし入出庫ができなくなる。自動倉庫ユニットがダウンする時間を短縮するため、入出庫装置を自動倉庫ユニットから搬出する第1の台車と、予備の入出庫装置を自動倉庫ユニットへ投入する第2の台車とを設けることが知られている(特許文献1:JP4091311B)。
【0003】
しかし特許文献1のシステムでは、入出庫装置のメンテナンス等が必要な際に、第1の台車が自動倉庫ユニットへ走行した後、第2の台車が問題の自動倉庫ユニットへ走行する必要があり、自動倉庫ユニットがダウンしている時間が長くなる。また第1の台車と第2の台車が無軌道で走行するため、広い走行スペースが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP4091311B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、メンテナンスあるいは修理が必要な入出庫装置を速やかに自動倉庫ユニットからトラバーサへ移動させ、かつ交替の入出庫装置を速やかに自動倉庫ユニットへ投入することにある。
この発明の追加の課題は、自動倉庫ユニットがダウンする時間をさらに短縮することにある。
この発明の追加の課題は、予備の入出庫装置により、負荷が高い自動倉庫ユニットをバックアップすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ラックと、レールに沿って走行し前記ラックへ入出庫する入出庫装置、とを備えている自動倉庫ユニットが複数併設されている自動倉庫システムであって、前記複数の自動倉庫ユニット間を接続するように敷設されているトラバーサレールと、前記トラバーサレール上を走行し、かつ前記入出庫装置が自動倉庫ユニットとの間で乗り移り自在なレールを、自動倉庫ユニットからの入出庫装置の受入用と、自動倉庫ユニットへの入出庫装置の投入用とに少なくとも2本備えているトラバーサ、とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、メンテナンス、故障等のために入出庫装置を自動倉庫ユニットから移動させる必要が生じると、トラバーサレール上をトラバーサが走行して、入出庫装置を受入用のレールへ乗り移らせ、投入用のレールから交替の入出庫装置を自動倉庫ユニットへ投入する。従って自動倉庫ユニットがダウンする時間を短縮できる。またトラバーサは受入用と投入用の2本のレールを備えているので、自動倉庫ユニットから速やかに入出庫装置を受け入れ、かつ速やかに交替の入出庫装置を投入できる。トラバーサレールは単線であるが、受入用のレールと投入用のレールが1台のトラバーサに設けられているので、任意の自動倉庫ユニットのレールに対し、先に受入用のレールを接続し、次に投入用のレールを接続することができる。なおトラバーサが1台とは、2台の台車を連結して1台のトラバーサとすることを含んでいる。
【0008】
好ましくは、前記入出庫装置を自動倉庫ユニットの数+1台備え、1台の入出庫装置が自動倉庫ユニットへの投入用の予備の入出庫装置として前記トラバーサに搭載されている。このようにすると、自動倉庫ユニットからメンテナンス等が必要な入出庫装置をトラバーサに受け入れた後、短時間で予備の入出庫装置を自動倉庫ユニットに投入できる。従って、自動倉庫ユニットがダウンする時間をさらに短縮できる。なお入出庫装置の数を自動倉庫ユニットの数と等しくし、負荷が低い自動倉庫ユニットから入出庫装置を交替用に取り出しても良い。しかしこの場合、負荷が低い自動倉庫ユニットがダウンする。また入出庫装置の数を自動倉庫ユニットの数+2台,+3台等としても良い。この場合、2台目、3台目の予備の入出庫装置は自動倉庫ユニット内に配置して、入出庫を行わせる。しかし予備の入出庫装置を2台以上必要とすることは希で、2台目,3台目の予備の入出庫装置を設けることは、多くの場合、非効率である。
【0009】
特に好ましくは、入出庫の負荷が高い自動倉庫ユニットを検出することにより、前記予備の入出庫装置を前記負荷が高い自動倉庫ユニットへ投入して、2台の入出庫装置に負荷が高い自動倉庫ユニットでの入出庫を行わせるコントローラを設ける。このようにすると、予備の入出庫装置を負荷が高い自動倉庫ユニットでの入出庫のバックアップに兼用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の自動倉庫システムを示すブロック図
【図2】実施例でのトラバーサの制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0012】
図1,図2に、実施例の自動倉庫システム2を示す。自動倉庫システム2では複数個の自動倉庫ユニット4が併設され、各自動倉庫ユニット4は少なくとも1個のラック6と、少なくとも1台のスタッカークレーン8とを備えている。スタッカークレーン8は、スライドフォークなどの移載装置を備えた昇降台9を図示しないマストに沿って昇降させ、ラック6とステーション14との間で物品を搬送する。またスタッカークレーン8はラック6の長手方向に沿ってレール10上を走行し、地上制御盤12により制御される。なお自動倉庫ユニット4内の入出庫装置として、スタッカークレーン8に代えて、例えばラック6の段毎に移載装置を備えた搬送台車を走行させるようにしても良い。ラックの段とは、1間口分の高さのことである。またステーション14の配置と個数、搬送物品の種類等は任意である。
【0013】
複数個の自動倉庫ユニット4間を接続するようにトラバーサ16が設けられ、レール10の長手方向と水平面内で直角な方向にトラバーサレール18が設けられている。トラバーサ16はレール10と接続可能な2本のレール19,20を備え、その一方を自動倉庫ユニット4からのスタッカークレーン8の受入用に、他方を自動倉庫ユニット4への予備のスタッカークレーン8bの投入用に割り当てる。そしてレール19,20の役割は、受入用と投入用との間で交互に変化する。なお予備のスタッカークレーン8bは自動倉庫ユニット4内の他のスタッカークレーン8と同じ構造で、自動倉庫ユニット4内のスタッカークレーンのメンテナンス及び修理等により、予備のスタッカークレーンと他のスタッカークレーンとが入れ替わる。さらにトラバーサ16の走行スペースの床面はレール10を敷設した面よりも低く、レール19,20はレール10と同じ高さレベルに配置されている。
【0014】
22はコントローラで、自動倉庫システム2の全体を制御し、図示しない上位コントローラ及び自動倉庫ユニット4の地上制御盤12と通信するコントローラ本体24と、クレーン管理部26,入出庫管理部28,トラバーサ制御部30を備えている。クレーン管理部26は各スタッカークレーン8,8bの状態を管理し、メンテナンスが必要、故障が発生などのことが生じると、そのスタッカークレーン8をトラバーサ16の例えばレール19へ待避させ、トラバーサ16上の予備のスタッカークレーン8bをメンテナンスあるいは修理が必要なスタッカークレーン8が所在する自動倉庫ユニット4のレール10へ移動させる。そして例えばトラバーサ16上で、スタッカークレーン8のメンテナンスあるいは修理などを行う。
【0015】
入出庫管理部28は、上位コントローラからの要求もしくは地上制御盤12への入力などに従って、ラック6への物品の入庫とラック6からの物品の出庫が行われるように、入出庫を管理する。なお入出庫を実行するためのスタッカークレーン8の制御は、地上制御盤12に委ねる。また入出庫管理部28は、各自動倉庫ユニット毎の入出庫指令の数、即ち負荷の高低を管理し、負荷が所定のレベルを越える自動倉庫ユニット4が生じると、予備のスタッカークレーン8bを負荷が高い自動倉庫ユニット4へ投入することを要求する。トラバーサ制御部30は、クレーン管理部26及び入出庫管理部28からの要求に従ってトラバーサ16を走行させ、メンテナンスあるいは修理が必要なスタッカークレーンの受け入れと、予備のスタッカークレーンの投入とを行う。
【0016】
図2に実施例でのトラバーサの制御を示し、この制御によって自動倉庫ユニット4からメンテナンスあるいは修理が必要なスタッカークレーンが引き抜かれ、代わりに予備のスタッカークレーンが投入される。コントローラのクレーン管理部は、各スタッカークレーンの状態を管理しており、状態は正常/メンテナンスが必要/故障の3種類に区別される(ステップ1)。また入出庫管理部は各自動倉庫ユニットの負荷の高低を管理している(ステップ2)。ここでメンテナンスが必要あるいは故障が生じたスタッカークレーンがあると(ステップ3)、トラバーサをそのスタッカークレーンが所在する自動倉庫ユニットへ走行させ、スタッカークレーンをトラバーサの受入用のレール上へ移動させる(ステップ4)。次いでトラバーサを僅かな距離だけ走行させて、予備のスタッカークレーンをその自動倉庫ユニットへ移動させる(ステップ5)。次いでスタッカークレーンのメンテナンスあるいは修理を、例えばトラバーサ上で行う(ステップ6)。ステップ6が完了すると、トラバーサのレールの一方に予備のスタッカークレーンが置かれ、他方が受入用の空きのレールとなる。
【0017】
スタッカークレーンのメンテナンスも修理も不要な場合、入出庫管理部により負荷が所定レベルを越える自動倉庫ユニットの有無を検出し(ステップ7)、このようなユニットがあると、そのユニットへトラバーサを走行させ、予備のクレーンをそのユニットのレール上へ移動させる(ステップ8)。なお予備のスタッカークレーンを投入したユニットでの負荷が低下すると、予備のスタッカークレーンをトラバーサ16上へ回収する。
【0018】
以上の動作により、以下の効果が得られる。
(1) メンテナンスが必要なあるいは故障の有るスタッカークレーンが生じると、トラバーサ16を走行させて、予備のスタッカークレーンと交替させることができる。これによって、自動倉庫ユニットがダウンする時間を短縮できる。
(2) 1台のトラバーサ16が単線のトラバーサレールを走行し、スタッカークレーンの受入と予備のスタッカークレーンの投入とを行うので、短時間に自動倉庫ユニット4を復旧できる。
(3) 負荷が高い自動倉庫ユニットが生じると、予備のスタッカークレーンを投入し、2台のスタッカークレーンにより入出庫を行うことにより、入出庫能力を一時的に高めることができる。

【符号の説明】
【0019】
2 自動倉庫システム
4 自動倉庫ユニット
6 ラック
8 スタッカークレーン
9 昇降台
10 レール
12 地上制御盤
14 ステーション
16 トラバーサ
18 トラバーサレール
19,20 レール
22 コントローラ
24 コントローラ本体
26 クレーン管理部
28 入出庫管理部
30 トラバーサ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックと、レールに沿って走行し前記ラックへ入出庫する入出庫装置、とを備えている自動倉庫ユニットが複数併設されている自動倉庫システムであって、
前記複数の自動倉庫ユニット間を接続するように敷設されているトラバーサレールと、
前記トラバーサレール上を走行し、かつ前記入出庫装置が自動倉庫ユニットとの間で乗り移り自在なレールを、自動倉庫ユニットからの入出庫装置の受入用と、自動倉庫ユニットへの入出庫装置の投入用とに少なくとも2本備えているトラバーサ、とを備えていることを特徴とする、自動倉庫システム。
【請求項2】
前記入出庫装置を自動倉庫ユニットの数+1台備え、1台の入出庫装置が自動倉庫ユニットへの投入用の予備の入出庫装置として前記トラバーサに搭載されていることを特徴とする、請求項1の自動倉庫システム。
【請求項3】
入出庫の負荷が高い自動倉庫ユニットを検出することにより、前記予備の入出庫装置を前記負荷が高い自動倉庫ユニットへ投入して、2台の入出庫装置に負荷が高い自動倉庫ユニットでの入出庫を行わせるコントローラを備えていることを特徴とする、請求項2の自動倉庫システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−153502(P2012−153502A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15169(P2011−15169)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】