説明

自動倉庫及び自動倉庫での棚卸し方法

【課題】 棚卸しと並行して物品の入出庫を可能にする。
【構成】 自動倉庫の棚卸し時に、センサに物品の情報を読み取らせることにより、地上コントローラでの在庫データを更新する。棚卸し中に、情報を読み取り済みの物品に対して出庫が要求された場合、移載装置により出庫が要求された物品を出庫させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動倉庫での棚卸しに関する。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫では、例えば全ての間口に対して、収納物品を棚ファイルと照合する棚卸しを行うことが知られている(特許文献1:JPH11-139514A)。ところで自動倉庫が通常の入出庫を行えるモードをオンラインモード、通常の入出庫を行えないモードをオフラインモードとすると、棚卸しにより自動倉庫はオフラインモードへ移行する。ここでオンライン/オフラインは、地上コントローラから入出庫を自動的に指令できるかどうかの観点で、自動倉庫のモードを表している。棚卸しを行うと、自動倉庫が長時間オフラインモードに保たれるので、その間通常の入出庫ができなくなる。このため、自動倉庫を設置した工場での生産あるいは配送センターなどでの物流に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JPH11-139514A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、棚卸しによる自動倉庫での入出庫への影響を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、棚と、移載装置と、物品の情報を読み取るためのセンサと、前記移載装置に入出庫と棚卸しとを実行させると共に棚の在庫データを記憶する地上コントローラ、とを備えた自動倉庫であって、
前記地上コントローラを、棚卸し時に前記センサに物品の情報を読み取らせることにより前記在庫データを更新すると共に、棚卸し中に物品の出庫が要求された場合、情報を読み取り済みの物品に対してのみ、前記移載装置により出庫させるように構成したことを特徴とする。
【0006】
またこの発明は、棚と、移載装置と、物品の情報を読み取るためのセンサと、前記移載装置に入出庫と棚卸しとを実行させると共に棚の在庫データを記憶する地上コントローラ、とを備えた自動倉庫に対して、
棚卸し時に前記センサに物品の情報を読み取らせることにより、地上コントローラでの前記在庫データを更新するステップと、
棚卸し中に物品の出庫が要求された場合、情報を読み取り済みの物品に対してのみ、前記移載装置により出庫させるステップ、とを設けた自動倉庫での棚卸し方法にある。
この明細書において、自動倉庫に関する記載はそのまま自動倉庫での棚卸し方法に当てはまり、自動倉庫での棚卸し方法に関する記載はそのまま自動倉庫にも当てはまる。棚卸しは物品の情報、例えばIDなどの識別コード、を再読み取りすることで、定期的に行っても、データの消去時にデータを復旧するために行っても良い。
【0007】
この発明では、棚卸し中でも、情報を読み取り済みの物品に対しては出庫が可能なので、棚卸しと並行して物品の出庫ができる。なお棚卸し対象でかつ情報を読み取っていない物品は出庫しない。また当然のことながら、空棚であることを棚卸しで確認済みの棚に対しては、例えば棚卸しのフラグが解除されているので、棚卸し中でも物品の入庫ができる。従って、物品の入出庫への棚卸しの影響を小さくできる。
【0008】
好ましくは、前記地上コントローラを、棚卸し時に、棚の間口毎に棚卸し中のデータをセットして入出庫を禁止し、物品の情報を読み取り済みの間口毎に、前記棚卸し中のデータを解除して入出庫可能にするように構成する。
このようにすると、間口、即ち棚での物品保管場所の最小の単位毎に、棚卸し中であることをセットして、棚卸し後に解除することにより、間口毎に棚卸しを終了させて物品の入出庫を可能にできる。従って棚卸しの入出庫への影響を最小にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例の自動倉庫のレイアウトを示す図
【図2】実施例の自動倉庫の制御系を示すブロック図
【図3】実施例での棚ファイルを模式的に示す図
【図4】実施例の棚卸し方法のアルゴリズムを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図4に、実施例の自動倉庫2と、実施例の棚卸し方法とを示す。図において、4は棚で例えば左右一対設け、5は棚の個々の間口で、物品を保管するための場所である。6,7はステーションで、例えばステーション6では図示しない天井走行車などとの間で物品を受け渡しし、ステーション7では図示しない無人搬送車などとの間で物品を受け渡しする。実施例の自動倉庫2は例えばクリーンルーム内に設けて、半導体カセットあるいはフラットパネルディスプレイ基板のカセットなどを保管する。さらに棚4と一体に、半導体あるいはフラットパネルディスプレイなどの処理装置を設けても良い。
【0012】
8はスタッカークレーンで、移載装置の例であり、棚4,4の間に設けた走行レール10上を走行し、昇降台12を昇降させる。昇降台12には、スライドフォーク14などの移載装置と、IDリーダ16及び在荷センサ18とを設ける。IDリーダ16は例えば間口5に収納した物品のIDを読み取り、IDは例えばバーコードあるいはRFIDなどとする。さらにIDリーダ16はIDリーダライタであってもよい。在荷センサ18は間口5に物品があるか否かを検出し、例えば反射型の光電センサなどを用いる。
【0013】
20は地上コントローラで、自動倉庫2の全体を管理し、上位CPU(コントロール・プロセッシング・ユニット)から物品の入出庫に関する指令を受信して、スタッカークレーン8を制御し、入出庫を実行させる。また棚4,4での在庫データを管理し、スタッカークレーン8に設けた在荷センサ18で間口毎に物品の有無をチェックすると共に、IDリーダ16で物品のIDを読み取り、棚卸しを行う。
【0014】
地上コントローラ20とスタッカークレーン8との関係を図2に示す。地上コントローラ20の上位側インターフェース22は図示しない上位CPUから入出庫指令を受信し、入出庫結果を返信する。入出庫管理部24は自動倉庫2からの入出庫を管理し、具体的には入出庫指令の実行順序を決定し、入庫先の間口及び出庫する間口を決定する。在庫管理部26は自動倉庫2での在庫を管理し、在庫データを記憶するため、物品の収納場所を問わずに在庫を記憶する在庫ファイル28と、棚4の間口5毎に物品の有無及び物品のIDを記憶する棚ファイル30とを管理する。32はモニタで、34はユーザインターフェースであり、自動倉庫2のオペレータは、ユーザインターフェース34とモニタ32とを用いて、自動倉庫2を操作する。
【0015】
38はモード切替部で、オペレータはモード切替部38を用い、自動倉庫2を、通常の入出庫モード(オンラインモード)と、棚卸しモード、及びマニュアルモードなどの間で、モードを切り替える。棚卸しモードでは、棚卸しを行う範囲を、例えばモニタ32に自動倉庫2のレイアウトを表示させることにより、間口5の単位で指定できる。棚卸しの範囲は、これ以外に自動倉庫2の全体、連(走行レール10を向く1つの棚で、複数列からなる)、列(走行レール10に沿った上下に重なる複数の間口)、などの任意の単位で指定できる。
【0016】
間口は、棚ファイル30上で、空き間口と在荷間口とに区別され、在荷間口には収納物品のIDが記憶される。そして空き間口には入庫予約でき、これは該当する間口への入庫が予約されていることを示す。また在荷の間口に対して出庫予約ができ、これは該当する間口の物品は出庫が予約されていることを示す。入庫予約済みの間口に、予約したもの以外の物品を入庫することはできず、出庫予約済みの間口の物品を、予約した指令以外の出庫指令に割り当てることはできない。そして棚卸しモードでは好ましくは、モード切替部38により、入庫予約間口と出庫予約間口とを棚卸しの対象から自動的に除外する。なおユーザは、ユーザインターフェース34から、入庫予約間口及び出庫予約間口を棚卸しの対象に含めることもできる。
【0017】
入庫予約間口及び出庫予約間口を棚卸しの対象から除外するのは、予約された入庫及び出庫を棚卸しによって妨げないためである。さらにユーザがユーザインターフェース34から棚卸しを行うことを設定した場合でも、棚卸しは直ちには実行されない。棚卸しは、例えば通常の入出庫指令で未実行なものが無くなるのを待って実行される。
【0018】
スタッカークレーン8の機上コントローラ40は、地上コントローラ20のスタッカークレーン管理部36と通信することにより、入出庫指令を指令される。そして指令された間口まで、走行すると共に昇降台を昇降させて、スライドフォークなどの移載装置により物品の入出庫を行う。42は昇降部で昇降台12を昇降させ、走行部44はスタッカークレーン8を走行させる。
【0019】
棚卸し時に、スタッカークレーン管理部36は、棚卸しを実行する順序を間口単位で決定し、例えば1間口ずつ棚卸し指令を機上コントローラ40へ送信する。機上コントローラ40は指定された間口まで走行と昇降とを行い、在荷センサ18で物品の有無を検査すると共に、IDリーダ16で収納物品のIDを読み取る。なおここで間口毎にIDを付与する場合、IDリーダ16で物品のIDに加えて間口のIDを読み取っても良い。そして機上コントローラ40は、指定された間口が在荷か空荷かの区別と、在荷の場合の物品のIDとをスタッカークレーン管理部36へ返信する。なおステーション6,7にIDリーダを設けて、スタッカークレーン8は在荷の間口の物品をステーションへ搬送し、ステーションのIDリーダでIDを読み取り、次いでスタッカークレーンで棚へ戻すようにしても良い。
【0020】
スタッカークレーン管理部36は、棚卸し時に、間口が在荷か空荷かの区別と、物品のIDとを在庫管理部26に報告し、在庫管理部26はこのデータに従って棚ファイル30を更新する。そして例えば自動倉庫2の全ての棚4に対して棚卸しを行うと、在庫ファイル28と更新済みの棚ファイル30とを照合して、不一致の場合、在庫ファイル28を更新する。
【0021】
スタッカークレーン管理部36は指定された棚卸し範囲に対し、入庫予約棚及び出庫予約棚を除き、かつスタッカークレーン8の走行長と昇降長とがそれぞれ極小となるように、棚卸しの順序を決定して、1間口ずつ棚卸し先を機上コントローラ40へ送信する。
【0022】
図3に、棚ファイル30の構成を模式的に示す。棚ファイル30には間口毎のレコードが設けられ、各レコードのデータは在荷か空荷かの区別と、在荷の場合の物品のIDである。またID不明の物品が在荷の場合、その旨が記載され、他に入庫予約及び出庫予約も棚ファイル30に記載される。ID不明の物品に対して棚卸しでIDを読み取り、棚ファイルを更新すると、通常の物品と同様に扱うことができる。
【0023】
図4に実施例での棚卸しアルゴリズムを示す。最初にオペレータはユーザインターフェース34から棚卸し範囲を指定し、指定された間口に対し在庫管理部26は棚ファイル30上で棚卸しフラグをセットする。なおこの時、入庫予約あるいは出庫予約が有る間口は、棚卸し範囲から除外する。
【0024】
地上コントローラ20のスタッカークレーン管理部36は、スタッカークレーン8の機上コントローラ40へ棚卸しを行う間口を、例えば1間口ずつ指令する。スタッカークレーンは指定された間口まで走行と昇降とを行い、在荷か空荷かを判別すると共に、在荷の場合、物品のIDを読み出し、結果をスタッカークレーン管理部36へ返信する。在庫管理部26はこの結果に基づいて棚ファイルを更新し、それと共に棚卸しを終えた間口に対し、棚卸しフラグを解除する。そして棚卸しフラグが解除された間口に対しては、通常の入庫及び出庫が自在になり、棚卸しフラグがセットされた間口は、入庫及び出庫が禁止される。以上の作業を、指定された全ての間口に対し棚卸しが完了するまで、継続する。
【0025】
実施例では間口毎に棚卸しフラグをセットし、間口毎に棚卸しフラグを解除するので、棚卸しによって入出庫が不能になる時間を最小限にできる。なお棚卸し中であることを示すデータはフラグに限らず、任意の形でセットしても良い。また棚卸し中であることを示すデータをセットする単位を、間口ではなく、列などのより広い単位としてもよいが、その場合、棚卸し中とのデータの解除が遅れるので、入出庫が可能になるまでの時間が長くなる。
【0026】
実施例で、棚卸し中の間口に対して入出庫が要求された場合、入庫の要求では棚卸しフラグがセットされていない空き間口への入庫が可能であれば、入庫先の間口を振り替える。振り替えることができない場合、入庫を待機させる。出庫が要求された場合、その間口の棚卸しフラグが解除されるまで出庫を待機させる。ここで棚卸しの順序を変えて、出庫が要求された間口を優先して棚卸しすることが好ましい。特に棚卸しにより在庫物品のIDを読み取り、棚ファイルと照合すると棚卸しフラグを解除し、直ちに出庫することが好ましい。なお棚卸しフラグがセットされていない棚及び棚卸しフラグが解除された棚は、通常通りオンラインで入出庫できる。
【0027】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 棚卸し範囲に含まれていない棚には、棚卸しと並行して、入出庫ができる。
(2) 棚卸し中か否かを間口単位で管理するので、棚卸しが完了した間口から、入出庫を実行できる。このため、棚卸しにより入出庫を待機させる時間を極小にできる。

【符号の説明】
【0028】
2 自動倉庫
4 棚
5 間口
6,7 ステーション
8 スタッカークレーン
10 走行レール
12 昇降台
14 スライドフォーク
16 IDリーダ
18 在荷センサ
20 地上コントローラ
22 上位側インターフェース
24 入出庫管理部
26 在庫管理部
28 在庫ファイル
30 棚ファイル
32 モニタ
34 ユーザインターフェース
36 スタッカークレーン管理部
38 モード切替部
40 機上コントローラ
42 昇降部
44 走行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚と、移載装置と、物品の情報を読み取るためのセンサと、前記移載装置に入出庫と棚卸しとを実行させると共に棚の在庫データを記憶する地上コントローラ、とを備えた自動倉庫であって、
前記地上コントローラを、棚卸し時に前記センサに物品の情報を読み取らせることにより前記在庫データを更新すると共に、棚卸し中に物品の出庫が要求された場合、情報を読み取り済みの物品に対してのみ、前記移載装置により出庫させるように構成したことを特徴とする、自動倉庫。
【請求項2】
前記地上コントローラを、棚卸し時に、棚の間口毎に棚卸し中のデータをセットして入出庫を禁止し、物品の情報を読み取り済みの間口毎に、前記棚卸し中のデータを解除して入出庫可能にするように構成したことを特徴とする、請求項1の自動倉庫。
【請求項3】
棚と、移載装置と、物品の情報を読み取るためのセンサと、前記移載装置に入出庫と棚卸しとを実行させると共に棚の在庫データを記憶する地上コントローラ、とを備えた自動倉庫に対して、
棚卸し時に前記センサに物品の情報を読み取らせることにより、地上コントローラでの前記在庫データを更新するステップと、
棚卸し中に物品の出庫が要求された場合、情報を読み取り済みの物品に対してのみ、前記移載装置により出庫させるステップ、とを設けた自動倉庫での棚卸し方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate