説明

自動分析装置

【課題】自動分析装置の異常発生時の迅速な修繕を可能とし、不稼動時間を低減させ、必要な再検査を自動的に行い、効率的に分析結果の信頼性を確保する。
【解決手段】自動分析装置を構成する設備の動作や自動分析装置のメンテナンスの実施状況と、分析検査に供された消耗品の使用経過とを記録する記憶部107と、検量線を導出するために行われた分析検査の特定情報として分析検査に対しIDを付与する分析ID管理部108とを備える。記憶部107の記憶データを分析検査した検体順かつ分析項目順に同一時間軸上に展開して全データ表示領域上に出力し個々の検体の分析項目の分析プロセスの視点で展開して各検体の分析結果の記録上に出力する。異常原因究明時に必要な装置稼動詳細情報を表示手段106により設備と時間帯に着目して並び替えて示し予め保持した異常種類により及ぼされる影響範囲を特定する情報を利用し必要な再検査を判断・実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の生化学的分析や免疫学的分析を行う自動分析装置に関り、特に、自動分析装置を構成する分析設備機器の動作や試薬を含む消耗品の使用状況、分析プロセスで使用される各種管理データや算定資料との関連を記録する手段を備え、かつ記録したデータ(情報)を、分析プロセスの正しさを示したり異常原因の究明に活用したりすることの可能な情報の表示に関する。さらに、再検査の要否を自動で判断・実行する機能に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体を分析する自動分析装置により出力される分析結果に対し、その妥当性を示すデータ(情報)の保管と提示を求められるようになってきている。これに必要な情報としては、使用試薬情報、検量線管理情報、精度管理情報、装置メンテナンス情報などがある。
【0003】
自動分析装置では、キャリブレーションを必要に応じて実施し、検量線をもとめ、結果を算出する。検量線は、分析項目ごと、かつ使用する試薬ごとに必要である。特許文献1では、試薬残量や有効期限、栓開封後の経過状況などの各種状況を判断し、キャリブレーションの実施を自動分析装置がガイドすることを教示している。
【0004】
最近では、検査室のワークフロー効率や高価な試薬の消費量低減などを考慮し、ある条件のもと他のキャリブレーション結果を継承して使用できるようになっている。
【0005】
一方、自動分析装置から異常を示すアラームが出力された場合や、ユーザが行う精度管理により装置の異常が疑われた場合、ユーザは異常の原因究明を速やかに行い必要な処置を講じなければならない。
【0006】
分析結果に関する異常の場合、特許文献2では、該当分析検査に関する情報として、試料番号、ID番号情報、分析検査の分析条件情報、試薬分注順序情報、攪拌順序情報、使用した反応容器の番号情報、反応容器の使用来歴情報、反応過程吸光度情報、使用した試薬の試薬情報、キャリブレーション情報、アラーム情報のうちから選択したものを、試料番号あるいはID番号をキー情報として該当分析検査単位で同一画面上に表示し、ユーザによる原因究明を支援することを教示している。
【0007】
装置の異常が疑われる場合は、通常の業務を停止しサービスマンを呼び出す。サービスマンは、装置の稼動状況やメンテナンス状況を調査し原因を推定し対策を講じる。場合によっては、製造元へ連絡をとり、装置に残っているデータを吸い上げ解析を依頼する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−339732号公報
【特許文献2】特開2008−58129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年は、高スループットを目指し単位時間あたりの分析項目数を増加させるべく、各種設備の動きを高速にしたり、多種類の分析項目を一つの自動分析装置で分析検査可能とすべく、スケジューリングを工夫したりしている。このため、自動分析装置の稼動を目視で追ったり推測したりすることが不可能となっており、分析プロセスがブラックボックス化している。
【0010】
分析プロセスの正しさを示すためには、分析項目の濃度算出に使用された検量線が、いつどのような状況でどの試料を用いて実施されたものかを示す情報が必要である。しかし、キャリブレーション結果の継承方法が多種多様なため、必ずしも検量線を導出するために実施された分析検査の詳細情報が残っているとは言えない。
【0011】
さらには、検量線を導出するために実施された分析検査自体の精度を保証する精度管理結果がどれかも特定できない。
【0012】
自動分析装置の異常が疑われた場合、サービスマンが到着するまで現況を保全することは困難である。ユーザから聞きだした自動分析装置の稼動状況も十分性・正確性に欠ける。さらに、異常の原因を特定するには、人手により、分析検査における各種処理の順番を示す時間軸で整理する必要があり、対策を打つまでに多大な時間を要している。
【0013】
自動分析装置から異常を示すアラームが出力された場合や、ユーザが行う精度管理により装置の異常が疑われた場合、ユーザは異常の原因を排除した上で再度分析検査を行い結果を求めなければならない。この時、どの範囲までの分析検査が異常の影響を受けており再検査が必要なのかを知る手立てがない。
【0014】
本発明は、上記の課題に鑑み、検体を分析検査した分析結果の妥当性や精度を評価する情報が容易に入手できる自動分析装置を提供することを目的とする。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、異常発生や異常原因の究明に必要な情報が容易に入手できる自動分析装置を提供することにある。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、異常発生により、その影響を受けた分析検査を特定し、再検査の要否を判断し必要な再検査を自動的に行う自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、反応手段、分注手段、計測手段等の分析設備機器が備わる分析部と、記憶部、入力部、出力部等が備わる操作部を有するところの検体の成分を分析する自動分析装置において、前記分析設備機器が分析検査を行うために作動した動作や自動分析装置のメンテナンスをした実施状況の情報、分析検査に供された試薬等の消耗品に関する使用経過の情報、分析検査の検量に用いる検量線を導出するために実施された分析検査を唯一に特定する情報等を含む各種の情報を前記記憶部に記憶し、前記検体の分析結果の批評として各種の情報を提示できることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、提供できる各種の情報に異常原因の究明に必要となる自動分析装置の稼動詳細情報を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、異常発生に伴う他の分析検査に与える影響範囲を特定する情報を含み、再検査を自動的に実施させる機能を持つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分析結果の妥当性や精度に対する評価には、記憶部に蓄積したその分析検査に関する各種の情報をエビデンスとして提供できるので的確な判断ができ、ユーザにとって分析結果の信頼性が保証される。
【0021】
また、自動分析装置の稼動詳細情報を時系列に展開した形で提供できるので、異常原因の早急に究明でき、補修等の対処を迅速に行うことができる。
【0022】
さらに、異常発生に伴う他の分析検査に与える影響範囲が特定でき、自動的に再検査を実施できるため、ユーザにとって効率的に分析結果の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に係るもので、自動分析装置の全体構成を示すブロック概略図。
【図2】本発明の実施例に係るもので、格納データ出力部の全体的を組織機能を示す図。
【図3】本発明の実施例に係るもので、分析プロセスおよび装置稼動詳細来歴の出力の一例を示す図。
【図4】本発明の実施例に係るもので、試薬詳細情報および検量線属性情報の一例を示す図。
【図5】本発明の実施例に係るもので、分析プロセスおよび装置稼動詳細来歴の中にアラーム情報を時間軸上に組み込んで出力した一例を示す図。
【図6】本発明の実施例であるサンプルプローブ動作来歴の出力に光度計異常アラーム表示を併記した一例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係わるもので、キャリブレーション結果詳細出力の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例に係わるもので、発生したアラームごとの影響範囲情報の一例を示す図。
【図9】本発明の実施例に係わるもので、影響範囲の特定、付随アラームの付与、及び再検査の要否を判定するフローの一例を示す図。
【図10】本発明の実施例に係わるもので、発生したアラームが影響を及ぼす範囲、付随アラーム、再検査要否を時間軸上に組み込んで出力した一例を示す図。
【図11】本発明が適用される自動分析装置の全体概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一例を示す実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の自動分析装置の概略構成を、図1、図11に沿って説明する。
【0026】
図11は、本発明が適用される自動分析装置の全体概略構成図である。図11において、125はサンプルディスク、114は試薬ディスク、130は反応ディスク、118は反応槽、124はサンプリング機構、122は攪拌機構、121は測光機構、120は洗浄機構、126は試料容器、116は試薬ボトル、132は反応容器、117、131はプローブである。試料容器126は、サンプルディスク125上に複数個配置される。
【0027】
次に、自動分析装置の操作部、分析部、インターフェースについて説明する。
【0028】
図1は、本発明を効果的に利用できる自動分析装置の概略機能ブロック図である。
【0029】
自動分析装置101は、操作部102と、各種の分析設備機器が備わる分析部103を有する。操作部102と分析部103は、インターフェース111を介して情報の伝達を行う。
【0030】
分析部103内は、A/Dコンバータ112、試薬用ポンプ113、試薬ディスク114、試薬バーコード読み取り装置115、試薬容器116、分注手段の試薬分注プローブ117、反応手段の反応槽118、セル119、洗浄機構120、計測手段の多波長光度計121、攪拌機構122、検体用ポンプ123、分注手段の検体分注機構124、サンプルディスク125、検体容器126で構成される。
【0031】
自動分析装置101の動作は、上記それぞれの構成要素を用いてサンプル分注、試薬分注、攪拌、測光、セルの洗浄、の順番に実施される。実施される分析検査で行われる各種動作については、当該技術分野においてよく知られており、例えば、特開2005−207897号公報に記載されている。
【0032】
一方、操作部102は、分析検査の統括制御を行うコンピュータ(制御部)104と、それに接続された入力部105、および出力部106とを含む。
【0033】
分析検査の統括制御を行うコンピュータ(制御部)104は、自動分析装置を構成する各設備について検体を分析検査するために行われた動作や自動分析装置のメンテナンスの実施状況と、分析検査に供された消耗品の使用経過をタイムスタンプ付きで記録する記憶部107と、検量線を導出するために実施された分析検査を特定する情報として、検量線を求めるために実施した分析検査に対してIDを付与する分析ID管理部108を含む。また、分析プロセスデータ127を格納する。
【0034】
さらに、コンピュータ104は発生したアラームごとに、影響を及ぼす範囲とその重要度、再検査要否に関する情報を、影響範囲情報記憶部128に記憶する。そして、これらの情報を発生したアラームに適用し、付随アラームを該当分析検査に付与し再検査判定を行う影響判定部129を含む。
【0035】
入力部105としては、一般的なキーボード、マウスや、CRTに触れることで操作するタッチパネル等が挙げられる。出力部106としては、表示手段のCRTやプリンターが挙げられる。操作部102としては、価格が安く、操作性の優れたパーソナルコンピュータを利用することができる。
【0036】
自動分析装置101による分析検査で行われる各種動作は、前述のとおり複数の構成要素を用い、かつそれらを適切に動作させる必要があるため、オペレータは操作部102において適切な制御パラメータを入力する。
【0037】
本発明の主要部について説明する。
【0038】
まず記憶部107に、分析項目ごとに装置稼動詳細情報を記憶させる事例を説明する。
【0039】
図1の自動分析装置において、ある検体のある分析項目に対する分析検査を開始すると、まず分析ID管理部108により分析IDが付与され、その分析IDは分析検査対象である検体の識別情報や分析検査に必要なその他のデータとともにキー情報として記憶部107に記録される。
【0040】
その後、各設備の動作が発生するたびに、動作記録が記憶部107に追加される。例えば、サンプル分注が行われた際に記録されるデータには、「実施日時」、「分注に使用したセルNo.」などがある。これらの動作記録が、上述の分析IDや分析項目に関連付けられ、発生順に保管される。
【0041】
一方、例えば、試薬分注が行われた際に記録されるデータには、「実施日時」、「分注に使用した試薬の、試薬ディスク上における位置」などがあり、サンプル分注の場合と同様に上述の分析IDに関連付けられ、発生順に保管されるが、加えて、試薬は消耗品であるので、「試薬の残量」が「使用日時」とともに記憶部107に記録される。
【0042】
その他、分析検査中に不定期に発生する情報、例えば異常通知アラームなどについても、記憶部107において、分析IDのキー情報とともに「発生日時」や「アラーム種別」が記録される。
【0043】
次に、分析項目ごとの分析結果の詳細情報である分析プロセスデータについて説明する。
【0044】
分析プロセスデータ127は、ある検体に対して依頼された分析項目の分析結果であり、コンピュータ(制御部)104の内部に記憶される。分析検査対象である検体の種別や番号などの識別情報と分析項目をキーに、分析ID管理部108で付与された分析ID、分析結果、使用した試薬の詳細情報、および多波長光度計121で測定される各波長の吸光度データなどを含む。
【0045】
使用した試薬の詳細情報には、試薬位置、ロット名、有効期限、検量線、さらに、検量線を求めた際の分析IDなどがある。この検量線を求めた際の分析IDにより、実際の分析プロセスデータや装置稼動詳細情報を再帰的に追跡することが可能となる。
【0046】
尚、オペレータは、ある検体に対して複数の分析検査を行うよう自動分析装置101に依頼する。自動分析装置101は、依頼された一つ以上の検体に対する一つ以上の分析項目を、結果待ち時間が最短になるよう、各設備の使用計画や試薬の反応待ち時間等を考慮したスケジューリングを行ったのちに分析検査を開始する。このため、分析結果は必ずしもオペレータが依頼した順序で出力されるわけではない。
【0047】
分析プロセスデータ127は、出力部106で内容を確認することもできるが、汎用的フォーマットにて生成されているため、電子ファイルのまま外部媒体に記録し、他のコンピュータ上で読むことも可能である。
【0048】
図2は、本発明を実施可能な自動分析装置の一例であって、分析プロセスデータ127、記憶部107、および分析ID管理部108に格納されたデータを、出力部106に出力するための全体構成を示すシステム図である。
【0049】
このシステム図に示される格納データ出力部201は、記憶部202とデータ処理部203と入出力部204から構成される。ユーザが入出力部204から分析プロセスデータ指定209を実行すると、データ読み取り機能206は、設定ファイル205を読み、指定された分析プロセスデータ127のファイルの書式を取得したのちに、書式に応じた適切な読み取り処理を実行して分析プロセスデータ127をデータ読み取り機能206のメモリ上に取得する。
【0050】
追加データ生成機能207は、メモリ上に取得された分析プロセスデータ127を元に、生成規則に従っていくつかのデータを生成する。例えば、サンプル分注を行うサンプルプローブという分析設備機器の動作来歴は分析プロセスデータ127には含まれていないので、分析プロセスデータ127に含まれるセルNo.を元に、サンプル分注が行われた時間を論理的に推測して生成する。
【0051】
これは、自動分析装置101の動作は「サンプル分注、試薬分注、攪拌、測光、セルの洗浄、の順番に実施される」という事実と、自動分析装置101が分析検査のスケジューリングを行う際のセルNo.の割り当て規則を元に推測することができる。生成したデータは、図1における記憶部107に保存される。
【0052】
データ出力機能208では、記憶部107内のデータを目的に応じた書式に整形して分析プロセスおよび装置稼動詳細来歴211として出力部106に表示する。その際、分析設備機器および書式指定210によって、ユーザの用途に応じた表示方法を選択できる。
【0053】
以降、データ出力に関する具体例を示す。
【0054】
図3、図4を沿って、分析結果の妥当性や精度を確認するためのエビデンスを提供する表示例を示す。
【0055】
図3は、図1における出力部106に出力する分析プロセスおよび装置稼動詳細来歴211の一例を示す図である。分析プロセスデータ127や記憶部107に記録した各データを、全データ表示領域301に、分析検査した検体順かつ分析検査した分析項目順に同一時間軸上に展開して出力する。
【0056】
全データ表示領域301内の表見出し302において「分析ID」「検体No.」「分析項目」「セルNo.」以外の数字は、サンプル分注、試薬分注などの各動作が行われた時間帯(たとえば、サイクルなど)を示している。各行は一つ一つの分析プロセスと、使用した設備や試薬など消耗品の情報をあわせて表示する。
【0057】
このように、出力部106のCRTに示される出力表示の情報は、分析プロセスの観点で、時系列的に並ぶように展開された表示や分析検査した検体順に並ぶ情報の表示が併せて示される。これらの一目で分るように表示された各種情報は、分析結果の妥当性や精度に対する評価のエビデンスになる。この提供された各種情報のエビデンスを基に、ユーザは分析結果の評価に対する的確な判断を迅速にすることができ、ユーザにとって分析結果の信頼性が保証される。
【0058】
図4は、図3における試薬詳細情報表示の一例を示す図である。試薬分注表示箇所401をダブルクリックすると、記憶部107に記録したデータから、使用した試薬、および分析項目の濃度算出に使用した検量線情報、さらにその検量線を導出するために実施した分析検査の詳細を抽出して分析詳細402に出力する。
【0059】
この分析詳細402で提供される情報により、分析プロセスの追跡や分析検査に供された消耗品の試薬を特定できる。また分析項目の濃度算出に使用した検量線の情報、さらにその検量線を導出するために実施した分析検査の詳細を合わせて表示することにより、分析プロセスが適切に管理されているもとで実施されたことのエビデンスを提供できる。
【0060】
尚、キャリブレーション分析ID403は、分析ID404とリンクしているので、この分析検査の詳細を閲覧し、検量線の導出妥当性を再帰的に確認することができる。
【0061】
図7は、出力部106に出力するキャリブレーション結果詳細の一例を示す図である。キャリブレーション分析ID701が表示情報に含まれているため、キャリブレーション分析IDをキーに検索することにより、検量線を導出した分析プロセスの詳細情報を確認することができる。
【0062】
以上により、分析検査のプロセスが装置稼動詳細情報とともに時間軸上に整理して提供され、検体の分析検査が所定の手順で、かつ適切に管理されたデータを使用して実施されたことを容易に確認することができる。
【0063】
次に図5を使用して、アラーム情報に連動させて分析結果の妥当性を確認可能とする表示例を示す。
【0064】
図3に示す表示例において、全データ表示領域301に表示する時間帯に異常通知アラームが含まれていた場合には、図5に示すアラーム情報501を表示する。アラーム情報501をその「発生日時」を元に全データ表示領域内に組み込んで表示することによって、分析結果を異常発生の前と後とに明確に区別して示すことができる。
【0065】
以上により、ユーザは発生したアラームに関連して、その近傍で行われていた分析検査とその処理が何であるかを詳細に知ることができ、アラーム発生後だけでなく、その直前の分析検査に対しても注意を払うことで、結果の信頼性を保証することが可能となる。
【0066】
次に、図8、図9、図10を使用して、発生したアラームが影響を及ぼす範囲を特定し表示する例を示す。
【0067】
図8に、影響範囲情報記憶部128に記憶している情報の一例を示す。アラーム名称801ごとに、影響範囲802、重要度803、再検査要否804が格納されている。本情報は、入力部105よりユーザが入力し記憶させることができる。
【0068】
アラーム発生時、発生したアラームをキーに影響範囲情報記憶部128に記憶してある影響範囲、重要性、再検査の要否に関する情報を使用し、影響範囲の特定と付随アラームの付与、及び再検査の要否を判定する。そのフローの一例を図9を使用して説明する。
【0069】
まず、処理901は発生したアラームをキーに該当する情報があるかどうか検索する。検索結果がない場合は終了する。検索結果がある場合は、処理902により影響のある分析検査を特定する。そして、処理903により重要度に応じた付随アラームを付与し、処理904により再検査要否を判定する。再検査が必要と判定された場合は、処理905により再検依頼を作る。影響を与える可能性のある全ての分析検査に対して、処理903から処理905を実施したら終了する。
【0070】
発生したアラームが影響を及ぼす範囲は、図10の表示領域1001、1002のような形で表示する。この例は、分析検査1003においてサンプル詰まりアラームが発生した場合で、図8、影
響範囲情報805を利用し分析検査1004のサンプル分注1002も影響を受けると判定し付随アラームを付与したことを示している。
【0071】
以上により、ユーザは発生したアラームに関連して、その時間的近傍あるいは場所的近傍で行われていた分析検査とそれらへの影響を知ることができ、結果の信頼性を保証することが可能となる。
【0072】
次に、図9、図10を使用して、自動的に再検査の要否を判定し、必要な再検査を実施する例を示す。
【0073】
図9に示すフローで、発生したアラームが及ぼす影響範囲と再検査要否が判定される。再検査要と判定した分析検査は、図10表示領域1005のように該当する検体と分析項目の背景色を変えるなどの表示方法により明示した上で、自動的に再検査を分析部103に指示し実行される。
【0074】
以上により、発生したアラームの影響を受けた可能性の高い分析検査について、効率的な再検査が行えるようになる。
【0075】
次に図6を使用して、複数の設備に関する装置稼動詳細情報を同一時間軸上で監視するための表示例を示す。
【0076】
図6は、図1における記憶部107からサンプル分注を行う設備であるサンプルプローブの動作来歴に特化してデータを抽出したサンプルプローブ動作来歴の例である。最上段に、最後にサンプル分注が行なわれた来歴を示している。
【0077】
抽出したデータの時間帯に異常通知アラームが含まれていた場合にはアラーム情報601を表示する。図6は、サンプルプローブの動作来歴に光度計異常アラームを組み合わせて表示した例であるが、この他の各種プローブや反応セルと、電気系、メカ系、データ処理系のアラームを組み合わせて表示することができる。
【0078】
以上により、複数の分析設備機器に関する装置稼動詳細情報を関連させて閲覧することが可能となるため、装置の異常発生時の原因究明および対処の迅速化に寄与でき、不稼動時間を低減させることである。
【0079】
尚、上述の実施例は出力部106として主にCRTを想定して記述したが、同様のデータを同様の出力書式で、帳票としてプリンターに出力して提供することも勿論可能である。
【0080】
以上のような構成にすることにより、自動分析装置の分析プロセスを可視化し、分析項目の濃度算出時に使用されたデータが適切に管理されている証拠とともにユーザに提供することができるので、分析検査の信頼性保全を維持することが可能となる。
【0081】
また、異常原因究明時に必要となる装置稼動詳細情報を、設備と時間帯に着目して並び替えて示すことができるので、自動分析装置の異常発生時の迅速な修繕を可能とし、不稼動時間を低減させる効果がある。
【0082】
さらに、発生した異常アラームの原因により、他の分析検査に及ぼされる影響範囲が特定でき、自動的に再検査が実施されるので、信頼性を確保しつつ効率的な運用を実現することができる。
【0083】
なお、上述した本発明の実施例において、記憶部107に記憶された種々のデータは、一定期間経過後、ホストコンピュータに転送し、バックアップする構成とすることが可能である。記憶部107におけるデータ記憶保持期間としては、一週間〜1ヶ月程度とすればよい。
【0084】
また、上述した例においては、コンピュータ(制御部)104を操作部101の内部に備える構成としたが、操作部101の内部ではなく、上述したコンピュータ(制御部)104と同様な機能及び構成を有する制御部を分析部103内に備える構成であっても、本発明は実現可能である。
【符号の説明】
【0085】
118・・・反応手段の反応槽、117・・・分注手段の試薬分注プローブ、124・・・分注手段の検体分注機構、121・・・計測手段の多波長光度計、103・・・分析部、107・・・記憶部、104・・・コンピュータ(制御部)、105・・・入力部、106・・・出力部、301・・・全データ表示領域、302・・・表見出し、501・・・アラーム情報、402・・・分析詳細

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応手段、分注手段、計測手段を有し、検体の成分分析を行う分析部と、記憶部、入力部、出力部を有する操作部とを備える自動分析装置において、
前記分析部が検体の分析を行うために作動した動作や自動分析装置のメンテナンスをした実施状況の情報、分析検査に供された試薬等の消耗品に関する使用経過の情報、分析検査の検量に用いる検量線を導出するために実施された分析検査の情報を含む各種の情報を前記記憶部に記憶させ、
前記検体の分析結果の批評として前記各種の情報を前記出力部に提示させる制御部を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
分析プロセスの情報を前記記憶部に記憶させ、
前記分析結果の批評に前記分析プロセスの情報をも提示させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動分析装置であって、
前記情報は、異常発生時の原因究明に必要となる自動分析装置の稼動詳細情報を含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の自動分析装置であって、
前記出力部は、表示手段、プリンターを含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項2記載の自動分析装置であって、
前記出力部は、表示手段、プリンターを含み、
前記情報を、分析項目の分析プロセスの観点で時系列的に展開して前記出力部に表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動分析装置において、
前記出力部で示す表示は、個々の前記検体の分析項目を分析検査するのに使用した試薬、分析項目の濃度算出に使用した検量線情報、その検量線を導出するために実施した分析検査の詳細を含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項5記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
前記分析項目の分析プロセスの観点で時系列的に展開した前記情報の表示と、分析検査した検体順に並ぶ情報の表示を併せて前記出力部に示すことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項5記載の自動分析装置において、
前記出力部に示される表示は、計測手段の異常あるいは分析結果に係る異常の各種アラームを含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項8記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
発生した異常アラームの原因により、他の分析検査に及ぼされる影響を特定し、影響を及ぼされた可能性のある分析検査に対して付随アラームを付与することを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項9記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
発生した異常アラームの原因により、影響を及ぼされた可能性のある分析検査について、再検査の要否を判断し必要な再検査を自動的に行うことを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項1記載の自動分析装置において、
分析検査の検量に用いる検量線を導出するために実施された分析検査の情報は、その分析検査を唯一に特定可能とする識別子により管理されることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−216705(P2009−216705A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30392(P2009−30392)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】