説明

自動分析装置

【課題】
使用者の手が侵入し得るプローブの近傍領域を赤外線センサで監視することで、針刺しによる感染症を防止し、且つ効率の良い分析を行う。
【解決手段】
サンプル及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記サンプルを前記反応容器へ分注するサンプルプローブと、前記試薬を前記反応容器へ分注する試薬プローブと、前記サンプルプローブ及び前記試薬プローブを移動させるプローブ移動手段と、監視領域内に物体が侵入したことを赤外線に基づいて検出する侵入センサと、前記侵入センサが物体の侵入を検知したことに応じて、前記プローブ移動手段による前記サンプルプローブあるいは前記試薬プローブの移動を停止する制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置内への人体の侵入を検知可能な自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、被検体から採取した血液や尿などの被検試料(以下、単にサンプルと記す)と試薬とを混合して反応させ、その反応状態を光で調べることによって、試料の成分分析を自動的に行う装置である。この自動分析装置は、様々な分析項目についての分析を多数の試料について行えるために、病院や検査機関などにおいて広く利用されている。
【0003】
自動分析装置においてサンプルと試薬との混合を行う際には、プローブと呼ばれる中空の針がサンプル容器や試薬容器からサンプルあるいは試薬を規定量吸引し、反応管と呼ばれる容器へ吐出して移動させる動作を行う(以下、採取及び吐出動作を分注と記す)。プローブは分注時にサンプル容器や試薬容器と反応管との間を動き回るため、自動分析装置の近傍に手を差し入れたときに移動するプローブが手に刺さり、プローブに付着したサンプルなどによって感染症が発生する虞がある。プローブの針刺しを防止するために、自動分析装置のカバーに撮影カメラを設け、撮影範囲に侵入する物体を検知すると自動分析装置の動作を停止する発明が公開されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−303885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先述したような自動分析装置の操作者は、サンプル容器や試薬容器を他の容器と入れ替える動作や、あるいは治具を用いて容器を移動させる動作を必要に応じて行う。操作者が使用する予備の容器や治具は、操作の利便性のために自動分析装置のプローブ近傍に置かれる場合が考えられる。先述したような撮影カメラによる物体検知を用いると、他の容器や治具が置かれたことに応じて、自動分析装置の動作が停止してしまう。感染症の危険がない人体以外の物体をも検知し自動分析装置の動作を停止させてしまうことで、動作停止の度に分析中のサンプルは破棄され、効率の良い分析が行えないという問題があった。
【0006】
そこで本発明においては、人体が侵入し得るプローブの近傍領域を侵入検知センサで監視することで、針刺しによる感染症を防止し、且つ効率の良い分析を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明における自動分析装置は、 サンプル及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記サンプルを前記反応容器へ分注するサンプルプローブと、前記試薬を前記反応容器へ分注する試薬プローブと、前記サンプルプローブ及び前記試薬プローブを移動させるプローブ移動手段と、監視領域内に物体が侵入したことを赤外線に基づいて検出する侵入センサと、前記侵入センサが物体の侵入を検知したことに応じて、前記プローブ移動手段による前記サンプルプローブあるいは前記試薬プローブの移動を停止する制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者の手が侵入しうるプローブの近傍領域を侵入検知センサで監視する。これにより、針刺しによる感染症を防止し、且つ効率の良い分析を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る自動分析装置の内部構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係る自動分析装置の構成を示す外観斜視図。
【図3】本発明の実施形態に係る侵入検知センサの構成を示す外観斜視図。
【図4】本発明の実施形態に係る侵入検知センサの検知範囲を示す自動分析装置の上面図。
【図5】本発明の実施形態に係る自動分析装置の侵入検知の制御を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態に係る侵入検知時の画面表示例を示す図。
【図7】本発明の別の実施形態に係る自動分析装置の構成を示す外観斜視図。
【図8】本発明の別の実施形態に係る自動分析装置の構成を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(自動分析装置1の内部構成)
図1は、本発明に係る自動分析装置1の構成を示したブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本発明に係る自動分析装置1は、侵入検知センサ11と、サンプル部21と、試薬部22と、反応部23と、機構部制御部31と、演算部41と、記憶部42と、表示部52と、操作部60と、システム制御部70から構成される。なお、本発明の構成はこれに限られるものではなく、適宣構成要素を追加し、あるいは省略しても構わない。
【0013】
システム制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などから構成される。システム制御部70は後述する操作部71から入力された指示信号に従って、ROMやRAMにロードされた各種のアプリケーションプログラムに従って処理を実行する。システム制御部70は、各部から供給される信号を処理し、また種々の制御信号を生成して各部に供給することで、自動分析装置1を統括的に制御する。
【0014】
操作部71は、例えばタッチパネルディスプレイや機械的なボタンなどから構成され、自動分析装置1の使用者が操作部71に対して行った入力を受け付ける。操作部71は使用者の入力に応じて指示信号をシステム制御部70へと出力する。
【0015】
次に、図2を参照して侵入検知センサ111、112、サンプル部21、試薬部22、及び反応部23の構成について述べる。図2は、自動分析装置1の外観を示す外観斜視図である。
【0016】
侵入検知センサ111、112は、監視領域近傍に侵入する物体を検知して、検知結果を出力するセンサである。侵入検知センサ111はサンプルプローブ211の上部に、侵入検知センサ112は第1試薬プローブ221の上部にそれぞれ設けられ、サンプルプローブ211、第1試薬プローブ221の近傍に侵入する手などを検知して検知信号を出力する。侵入検知センサ111、112は、例えば焦電型赤外線センサを用いて構成することができる。焦電型赤外線センサは、物体から放射される赤外線を検知するセンサである。焦電型赤外線センサは温度を持った物体から放射される特定波長の赤外線を検知して、その検知結果を電気信号に変換して出力する。例えば焦電型赤外線センサを用いて侵入検知センサ111、112を構成した場合、侵入検知センサ111、112の監視領域近傍に操作者の手などの人体が侵入すると、侵入検知センサ111、112は人体が持つ温度に反応して、検知信号をシステム制御部70へと出力する。
【0017】
なお、侵入検知センサ111、112を構成するセンサは、物体の温度を検知するものであればよく、例示した焦電型赤外線センサに限定されない。例えば、熱膨張型赤外線センサ、熱電対型赤外線センサ、抵抗変化型(ボロメータ型)赤外線センサなどの様々なセンサを用いて侵入検知センサ111、112を構成しても構わない。
【0018】
サンプル部21は、図2に示すサンプルプローブ211、サンプルディスク212、サンプル容器213、215、サンプルラック214、サンプル搬送レール216、及びサンプル吸引用切り欠き217から構成される。
【0019】
サンプルプローブ211はサンプル容器213、215からサンプルを規定量だけ吸引し、後述する反応セル232中へと吐出する(以下、吸引及び吐出動作を分注と記載する)操作を行うための、中空の針である。サンプルプローブ211には図示せぬモータが取り付けられ、機構制御部31が出力した指示信号に応じてその位置を移動させる。具体的には、サンプル容器213からサンプルを吸引する際には、機構制御部31はモータを駆動して据付軸を中心にサンプルプローブ211を回転させ、サンプルプローブ211の先端をサンプルディスク213の上部まで移動させる。サンプルプローブ211の先端がサンプルディスク213の上部まで移動すると、機構制御部31はサンプルディスクを回転させて、所望のサンプルが収容されたサンプル容器213がサンプルプローブ211の下部に来るよう移動させる。サンプル容器213が移動すると、機構制御部31はモータを駆動してサンプルプローブ211を下降させ、サンプルプローブ211の先端をサンプル容器213の内部へと移動させる。サンプルプローブ211の先端がサンプル容器213の内部へと移動すると、機構制御部31はサンプルプローブ211に備え付けられた図示せぬポンプを駆動して、サンプル容器213内に収容されたサンプルをサンプルプローブ211の内部へと吸引する。サンプルプローブ211がサンプルを吸引すると、機構制御部31はモータを駆動して、サンプルプローブ211を上昇させ、更に所望の反応セル232の上部にサンプルプローブ211の先端が来るように据付軸を中心としてサンプルプローブ211を回転させる。サンプルプローブ211が反応セル232の上部へ移動すると、機構制御部31はサンプルプローブ211を下降させて、その先端を反応セル232の内部へと移動させる。サンプルプローブ211の先端が反応セル232の内部へ侵入すると、機構制御部31は図示せぬポンプを駆動して、サンプルプローブ211の内部に収容したサンプルを反応セル232の内部へと吐出する。こうした一連の動作によって、サンプルプローブ211はサンプル容器213内の所望のサンプルを反応セル232の内部へと分注する。なお、サンプル容器215内のサンプルを分注する場合もサンプルプローブ211は同様の動作を行う。サンプル容器215内のサンプルを分注する場合には、機構制御部31がサンプルプローブ211をサンプル吸引用切り欠き217の上部へと移動させて、更にサンプル容器215の内部へとサンプルプローブ211を下降させる。サンプルプローブ211がサンプルを吸引すると、機構制御部31はサンプルプローブ211を反応セル232の内部へと移動させて、サンプルプローブ211の内部へ収容したサンプルを反応セル232の内部へ吐出する。
【0020】
サンプルディスク212は、サンプル容器213を収容する円筒状の容器である。サンプルディスク212には図示せぬ回転モータが取り付けられ、機構制御部31が出力する駆動信号に従って回転する。サンプルディスク212が回転することにより、サンプルプローブ211が分注を行うべきサンプルが収められたサンプル容器213をサンプルプローブ211の吸引位置へと移動させる。
【0021】
サンプル容器213は、被検体から収集した血液や尿などのサンプルを収める容器である。サンプルディスク212に収容されるサンプル容器213には、例えば緊急に分析が必要なサンプルや、後述する反応部23の分析の基準値を設定するためのキャリブレーション用サンプルなどが収められる。
【0022】
サンプルラック214は、サンプル容器215を収容する容器である。サンプルラック214は後述する搬送レール216に載せられ、搬送レール216の駆動によって図2の左右方向に移動する。サンプルラック214に収容されるサンプル容器213には、分析を行う被検体のサンプルが収められる。
【0023】
搬送レール216はサンプルラック214を移動させるためのレールである。搬送レール216には図示せぬモータが取り付けられ、機構制御部31が出力する駆動信号に従ってサンプルラック214を図2の左右方向に移動させる。
【0024】
搬送レールカバー2は、搬送レール216の上部に取り付けられる平面状の板である。搬送レールカバー2はサンプル容器215の上面を覆い、サンプル容器215内への異物の侵入や、サンプル容器215への物体の接触を防ぐ。搬送レールカバー2には、サンプル吸引用切り欠き217が設けられる。サンプル吸引用切り欠き217は、サンプルプローブ211の円周軌道上に来るよう設けられる。サンプルプローブ211がサンプル容器215からサンプルを吸引する場合には、機構制御部31が搬送レール216を駆動し、所望のサンプル容器をサンプル吸引用切り欠き217の下部へと移動させる。次に、機構制御部31はサンプルプローブ211を移動させて、サンプルプローブ211の先端をサンプル吸引用切り欠き217の上部へと移動させる。サンプルプローブ211が移動すると、システム制御部70はサンプルプローブ211を下降させて、サンプル容器215の内部へサンプルプローブ211の先端を侵入させて、吸引を行う。
【0025】
試薬部22は、図2に示す第1試薬プローブ221、第1試薬ディスク222、試薬容器223、226、第2試薬プローブ224、及び第2試薬ディスク225から構成される。
【0026】
第1試薬プローブ221は、第1試薬ディスク222に収容された試薬容器223から試薬を吸引し、反応セル232へと吐出する操作を行うための、中空の針である。第1試薬プローブ221には、サンプルプローブ211と同様に図示せぬモータが取り付けられ、機構制御部31が出力した指示信号に応じてその位置を移動させる。第1試薬プローブ221は第1試薬ディスク222と反応セル232との間を移動して分注を行う。第1試薬プローブ221が移動する円周軌道を図2中の点線で示す。
【0027】
第1試薬ディスク222は、試薬容器223を収容する円筒状の容器である。第1試薬ディスク222には図示せぬ回転モータが取り付けられ、機構制御部31が出力する駆動信号に従って回転する。第1試薬ディスク222が回転することにより、第1試薬プローブ221が分注を行うべき試薬が納められた試薬容器223を第1試薬プローブ221の吸引位置へと移動させる。
【0028】
試薬容器223は、サンプルに所定の化学反応を引き起こすための試薬を納める容器である。自動分析装置1がサンプルの分析を行う際には、まずサンプルと第1試薬とを混合して化学反応を発生させる。その後一定時間が経過して十分な反応が発生した後に、サンプルと第1試薬との混合液へ更に第2試薬を混合して別の化学反応を発生させる。第1試薬ディスク222に収容される試薬容器223内には、種々の第1試薬が収められる。
【0029】
第2試薬プローブ224は、第2試薬ディスク225に収容された試薬容器226から試薬を吸引し、反応セル232へと吐出する操作を行うための、中空の針である。第2試薬プローブ224は機構制御部31が出力した指示信号に応じて、第2試薬ディスク225と試薬容器226との間を移動して分注を行う。第2試薬プローブ224が移動する円周軌道を図2中の点線で示す。なお、第2試薬プローブ224は他のプローブと同様に分注の際にモータを駆動してその位置を移動するが、図2に示すように第2試薬プローブ224は自動分析装置1の奥側に位置するために、人体が第2試薬プローブ224の近傍へ移動する可能性は低い。そのため、第2試薬プローブ224には侵入検知センサ11は設けられず、侵入の監視は行われない。なお、本発明の構成はこれに限られるものではなく、第2試薬プローブ224の位置を変更して自動分析装置1の手前側に位置させても構わないし、第2試薬プローブ224に侵入検知センサ11を設けても構わない。
【0030】
第2試薬ディスク225は、試薬容器226を収容する円筒状の容器である。第2試薬ディスク225には図示せぬ回転モータが取り付けられ、機構制御部31が出力する駆動信号に従って回転する。第2試薬ディスク225が回転することにより、第2試薬プローブ224が分注を行うべき試薬が納められた試薬容器226を第2試薬プローブ224の下部へと移動させる。第2試薬ディスク225に収容される試薬容器226内には、種々の第2試薬が納められる。
【0031】
反応部23は、図2に示す恒温槽231、反応セル232、及び図示せぬ発光部、受光部から構成される。
【0032】
恒温槽231は、反応セル232を収容する円筒状の容器である。恒温槽231内は温水が満たされており、この温水によって反応セル232の温度を一定に保つ。恒温槽231中の反応セル232を保持する部材には図示せぬ回転モータが取り付けられ、機構制御部31が出力する駆動信号に従って回転する。反応セル232を保持する部材が回転することにより、サンプルの吐出を受ける反応セル232はサンプルプローブ211の下部へ、第1試薬の吐出を受ける反応セル232は第1試薬プローブ221の下部へ、第2試薬の吐出を受ける反応セル232は第2試薬プローブ224の下部へそれぞれ移動する。恒温槽231に収容される反応セル232内には、サンプル、第1試薬、第2試薬の混合液が納められる。
【0033】
恒温槽231の側面には発光部と測光部が設けられる。発光部は反応セル232内の混合液へ向かって光を照射する。受光部は反応セル232内の混合液を透過した透過光を受講して、この透過光の波長成分を分析して、波長成分情報を取得する。受光部はこの波長成分情報を演算部41へと出力する。
【0034】
演算部41は、反応部23の受光部から出力された波長分析情報に基づいて、測定されたサンプルに対する所定の測定項目の分析を行う。演算部41は分析情報を算出すると、この分析情報をシステム制御部70へと出力する。
【0035】
記憶部42は、電気的に書き換えや消去が可能なHDD(Hard Disk Drive)や不揮発性メモリであるフラッシュメモリなどの記憶媒体で構成され、演算部42から出力された分析情報を格納する。また記憶部42は、どの反応セル232に分注が行われたかを示す分注状況の情報を格納する。分注状況の情報には、反応セル232にサンプル、第1試薬、第2試薬がそれぞれ吐出されたか否かの情報が含まれる。システム制御部70はこの分注状況の情報を記憶部42から読み出して、反応セル232内に何が吐出されているかを把握する。
【0036】
表示部52は、CRTや液晶パネルなどのモニタによって構成され、演算部41から出力された分析情報の表示を行う。また、侵入検知センサ11が侵入を検知した場合には自動分析装置1の分析動作を停止する旨を示す警告画面の表示を行う。
【0037】
(侵入検出時の動作)
図3は、サンプルプローブ211及び侵入検知センサ111の構成を示す外観斜視図である。侵入検知センサ11は、例えばサンプルプローブ211の据付軸の上部に設けられる。侵入検知センサ11は図3に実線で示す円錐状の領域を監視範囲として、監視範囲に侵入する物体を検知すると検知結果を出力する。監視範囲をサンプルプローブ211の移動範囲より大きな範囲となるように設定することで、侵入検知センサ111は監視範囲に侵入する人体をサンプルプローブ211に接触する前に検知することができる。なお、第1試薬プローブ及び侵入検知センサ112も同様の構成が用いられる。
【0038】
図4は、自動分析装置1を上面から見た外観図である。先述したようにサンプルプローブ211は分注動作を行うにあたって、サンプルディスク213の上部、サンプル吸引用切り欠き217の上部、及び反応セル232の上部を通るように回転移動する。サンプルプローブ211の移動する円周軌道を図4の点線に示す。人体が図4の点線に示す領域近傍にある場合には、移動するサンプルプローブ211が人体に接触し突き刺さる可能性がある。第1試薬プローブ221も同様に、分注のため第1試薬ディスク222と反応セル232との間を移動する際に、移動する第1試薬プローブ221が人体に接触し突き刺さる可能性がある。
【0039】
そこで、本発明においてはサンプルプローブ211及び第1試薬プローブ221の上部に配置した侵入検知センサ111、112を用いて、点線に示す領域近傍に侵入する人体を監視する。侵入検知センサ111、112の監視範囲を図4中の網掛けで示す。監視範囲をサンプルプローブ211、第1試薬プローブ221の円周軌道より大きな範囲とすることで、侵入検知センサ111、112はプローブの近傍に侵入する人体を接触する前に検知して、検知信号を出力することができる。
【0040】
侵入検知センサ111、112は人体が侵入したことを検知すると、サンプルプローブ211あるいは第1試薬プローブ221の動作を停止させて、プローブの先端が人体に突き刺さる事態を防ぐ。具体的には、図4に示す網掛けの領域に人体が侵入したことを侵入検知センサ111、112が検知すると、侵入検知センサ111、112は検知信号をシステム制御部70へと出力する。システム制御部70は機構制御部31に指示信号を出力して、サンプルプローブ211あるいは第1試薬プローブ221の動作を停止させる。プローブを停止することで、その先端が人体に突き刺さる事態を防止する。なお、侵入検知時に両方のプローブを停止させる必要は無く、例えば侵入検知センサ111が侵入を検知した場合にはサンプルプローブ211の動作を停止させ、侵入検知センサ112が侵入を検知した場合には第1試薬プローブ221の動作を停止させる。
【0041】
侵入検知センサ111、112が侵入を検知した場合には、システム制御部70は表示部52に警告画面2000を表示する。図6に警告画面2000の表示例を示す。警告画面2000には、例えば侵入検知センサ111、112のどちらが侵入を検知したかを示す情報がウインドウ2001に表示される。ウインドウ2001が表示されることにより、操作者は機構制御部31が動作を停止させた原因を把握することができる。
【0042】
ところで、自動分析装置1によるサンプルの分析は、まずサンプルと第1試薬とを混合して化学反応を発生させ、その後一定時間が経過して十分な反応が発生した後に、サンプルと第1試薬の混合液へ更に第2試薬を混合して別の化学反応を発生させる、と述べた。この一連の分析動作の途中で侵入検知センサ111、112が侵入を検知してサンプルプローブ211、第1試薬プローブ221が動作を停止すると、反応セル232には正しいタイミングでサンプルあるいは第1試薬が吐出されないこととなる。適正でないタイミングでサンプルあるいは第1試薬が反応セル232に吐出される事態を防ぐために、分析過程において第1試薬の吐出前に機構制御部31の動作停止が発生した反応セル232については、後の分析工程を行わずに図示せぬ反応セル洗浄部を用いて反応セル232を洗浄し、反応セル232内の混合液を廃棄する。
【0043】
一方、第1試薬の吐出が既に終了している反応セル232については、サンプルプローブ211、第1試薬プローブ221の動作が停止した場合であっても、第2試薬の吐出及び発光部と受光部による分析動作を続行する。分析が続行可能な反応セル232については混合液を廃棄せずに分析を続行することができるため、分析をやり直すサンプルの数を最小限に抑えることができる。
【0044】
侵入検知センサ111、112が侵入を検知した場合には、システム制御部70は警告画面2000中に破棄すべき反応セル232の番号を表示する。図6に警告画面2000の表示例を示す。警告画面2000には、第1試薬投入前の侵入検知により廃棄が必要となった反応セル232の番号がウインドウ2002に表示される。ウインドウ2002が表示されることにより、操作者はどのサンプルが再測定の必要があるかを把握することができる。
【0045】
(侵入検知処理の流れ)
図5は、侵入検知センサ111、112が侵入を検知した場合の機構制御部31の動作を示すフローチャートである。以下、図5を用いて侵入検知処理について述べる。
【0046】
まず、侵入検知センサ111、112は監視範囲内に侵入する物体がないかを監視する(ステップ1001)。侵入検知センサ111、112が侵入を検知しない場合には(ステップ1002のNo)、ステップ1001へ戻って侵入検知センサ111、112は監視を継続する。
【0047】
一方、侵入検知センサ111、112のいずれかが侵入を検知すると(ステップ1002のYes)、検知信号をシステム制御部70へと出力する。システム制御部70は機構制御部31を駆動して、侵入検知センサ111が侵入を検知した場合にはサンプルプローブ211を、侵入検知センサ112が侵入を検知した場合は第1試薬プローブ221の動作を停止させる(ステップ1003)。システム制御部70はサンプルプローブ211あるいは第1試薬プローブ221の動作を停止させると、システム制御部70は記憶部42から分注状況の情報を読み出す。システム制御部70は読み出した分注状況の情報に基づいて第2試薬の吐出前に動作停止したために破棄が必要となった反応セル232の番号を取得する。システム制御部70は破棄が必要な反応セル232の情報を取得すると、これを警告画面2000として表示部52に表示する(ステップ1004)。
【0048】
ところで、ステップ1003の動作によってサンプルプローブ211あるいは第1試薬プローブ221の動作が停止した場合であっても、反応セル232の移動及び第2試薬プローブ224の分注動作は継続して行われる。第2試薬プローブ224の分注動作が継続して行われると、破棄すべき反応セル232にまで第2試薬が分注されてしまう事態が考えられる。この事態を避けるために、第2試薬プローブ224が分注対象とする反応セル232が、廃棄すべき反応セル232であった場合には、機構制御部31は第2試薬プローブ224の動作を停止する。具体的には、システム制御部70がステップ1004で表示部52に警告画面2000を表示すると、システム制御部70は第2試薬プローブ224の分注対象となる反応セル232が、ステップ1004で取得した廃棄すべき反応セル232と一致するか否かを判断する(ステップ1005)。システム制御部70が第2試薬プローブ224の分注対象が廃棄すべき反応セル232と一致すると判断すると(ステップ1005のYes)、システム制御部70は機構制御部31を駆動して、第2試薬プローブ224の動作を停止して(ステップ1006)、システム制御部70は操作部60による分析動作再開の動作を待ち受ける(ステップ1007)。一方、システム制御部70が第2試薬プローブ224の分注対象が廃棄すべき反応セル232とは異なる、即ち分析動作を続行してよい反応セル232であると判断すると(ステップ1005のNo)、システム制御部70は操作部60による分析動作再開の動作を待ち受ける(ステップ1007)。
【0049】
システム制御部70は操作部60から分析動作再開の操作が行われたと判断すると(ステップ1008のYes)、システム制御部70は機構制御部31を駆動して、停止させたサンプルプローブ211、第1試薬プローブ221、あるいは第2試薬プローブ224の動作を再開して(ステップ1009)、処理を終了する(ステップ1010)。一方、システム制御部70は操作部60からの分析動作再開の操作が行われていないと判断すると(ステップ1008のNo)、システム制御部70はステップ1005へ戻って、処理を続行する。
【0050】
なお、本実施例においてはステップ1008に述べたように、使用者が分析操作再開の操作を行ったことを契機として、機構制御部31が駆動を再開すると説明した。しかし、駆動再開は使用者の手動操作に限られるものではなく、システム制御部70が自動的に駆動を再開する構成を取っても構わない。例えば、ステップ1003でサンプルプローブ211あるいは第1試薬プローブ221が動作を停止した後に、侵入検知センサ111、112が侵入を検知しなくなり一定時間が経過したことを契機として、機構制御部31が駆動を再開するように制御しても構わない。
【0051】
以上の処理によって、侵入検知センサ111、112が人体の侵入を検知すると、侵入検知センサ111が侵入を検知した場合はサンプルプローブ211を、侵入検知センサ112が侵入を検知した場合は第1試薬プローブ221の動作を停止する。これにより、移動するプローブに人体が接触して起きる針刺しを防止することができる。
【0052】
また、以上の処理によって、侵入検知センサ111、112は物体の温度に基づいて侵入を検知する。これにより、例えば交換用の試薬容器や治具など針刺しの危険のない物体がプローブ近傍に置かれた場合であっても分析動作を継続することができ、一方針刺しの危険のある人体がプローブ近傍に侵入した場合は動作を停止させることができる。針刺しの危険がある人体に対してプローブの停止を行うため、無駄にプローブの停止が行われることが無く、結果として効率の良い分析を行うことが可能となる。
【0053】
また、以上の処理によって、サンプルプローブ211あるいは第1試薬プローブ221の動作が停止した場合であっても第2試薬プローブ224は分注動作を続行する。これにより、第1試薬の吐出の終了している反応セル232については、第2試薬の吐出や発光部、受光部を用いた成分分析などの分析動作が継続して行われる。プローブの停止によって分析の行えなくなった反応セル232のみを廃棄するため、廃棄し再測定を行うサンプルの数を低減することができ、結果として効率の良い分析を行うことが可能となる。
【0054】
また、以上の処理によって、第2試薬プローブ224は分注対象が廃棄すべき反応セル232である場合には、分注動作を停止する。これにより、分析を続行すべき反応セル232と廃棄すべき反応セル232とを判別して、廃棄すべき反応セル232に第2試薬を吐出してしまう事態を防ぐことができる。
【0055】
また、以上の処理によって、サンプルプローブ211あるいは第1試薬プローブ221の動作が停止すると、どのプローブの近傍で侵入を検知したか、またどの反応セル232を廃棄しなければならないかを警告画面2000に表示する。これにより、操作者は何が原因となってプローブの動作が停止したか、どの反応セル232に再分析の必要があるかを容易に認識することができる。
【0056】
本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することが可能である。
【0057】
例えば、本実施例においては侵入検知センサ111、112をサンプルプローブ211、第1試薬プローブ221の据付軸上に設ける例を示した。しかし、図7に示すように侵入検知センサ111、112を取り付ける取り付け軸を別に設けても構わない。サンプルプローブ211、第1試薬プローブ221と侵入検知センサ111、112を別々に設けることによって、サンプルプローブ211、第1試薬プローブ221をより簡便に構成することが可能となる。また、サンプルプローブ211、第1試薬プローブ221の据付軸の位置に関らず侵入検知センサ111、112の取り付け位置を移動させられるため、より侵入検知の行いやすい位置へ侵入検知センサ111、112を移動させることが可能となる。
【0058】
また例えば、図8に示すように自動分析装置1の上面を覆う蓋3を設け、この蓋3に侵入検知センサ111、112を取り付けても構わない。蓋3を設けることにより、蓋3が閉じられている間は自動分析装置1の内部に異物や人体が侵入する事態を防ぐことができる。また、蓋3が開かれている間も、侵入検知センサ111、112によってプローブ近傍へ侵入する人体を検知することができる。
【0059】
また例えば、図2に点線で示すように、各プローブは据付軸を中心に回転運動する実施例を述べた。しかし、プローブの移動方向は円周方向に限られるものではなく、例えば各直線方向に移動するものであっても構わない。
【0060】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宣なく見合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。あるいは、異なる実施例にわたる構成要素を適宣組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 自動分析装置
2 搬送レールカバー
3 蓋
11 侵入検知センサ
21 サンプル部
22 試薬部
23 反応部
31 機構制御部
41 演算部
42 記憶部
51 印刷部
52 表示部
60 操作部
70 システム制御部
111 侵入検知センサ
112 侵入検知センサ
211 サンプルプローブ
212 サンプルディスク
213 サンプル容器
214 サンプルラック
215 サンプル容器
216 搬送レール
217 サンプル吸引用切り欠き
221 第1試薬プローブ
222 第1試薬ディスク
223 試薬容器
224 第2試薬プローブ
225 第2試薬ディスク
226 試薬容器
231 恒温槽
232 反応セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記サンプルを前記反応容器へ分注するサンプルプローブと、
前記試薬を前記反応容器へ分注する試薬プローブと、
前記サンプルプローブ及び前記試薬プローブを移動させるプローブ移動手段と、
赤外線検出器を用いて監視領域内に物体が侵入したことを検出する侵入検知手段と、
前記侵入検知手段が物体の侵入を検知したことに応じて、前記プローブ移動手段による前記サンプルプローブあるいは前記試薬プローブの移動を停止する制御手段と
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記侵入検知手段は、赤外線検出器を用いて測定した物体の温度に基づいて、監視領域内に物体が侵入したことを検知する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記侵入検知手段は、前記プローブ移動手段による前記サンプルプローブ及び前記試薬プローブの移動範囲を含むように前記監視領域を監視する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記侵入検知手段が前記サンプルプローブの近傍に物体の侵入を検知したことに応じて前記プローブ移動手段による前記サンプルプローブの移動を停止し、
前記侵入検知手段が前記試薬プローブの近傍に物体の侵入を検知したことに応じて前記プローブ移動手段による前記試薬プローブの移動を停止するよう制御する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記試薬プローブは第1試薬を前記反応容器へ分注する第1試薬プローブと、第2試薬を前記反応容器へ分注する第2試薬プローブから構成され、
前記制御手段は、
前記侵入検知手段が前記サンプルプローブの近傍に物体の侵入を検知したことに応じて前記プローブ移動手段による前記サンプルプローブの移動を停止し、
前記侵入検知手段が前記第1試薬プローブの近傍に物体の侵入を検知したことに応じて前記プローブ移動手段による前記第1試薬プローブの移動を停止し、
前記プローブ移動手段による移動停止を行った際に、前記第2試薬プローブの分注を続けるよう制御する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項6】
サンプル及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記サンプルを前記反応容器へ分注するサンプルプローブと、
前記第1試薬を前記反応容器へ分注する第1試薬プローブと、
前記第2試薬を前記反応容器へ分注する第2試薬プローブと、
前記サンプルプローブ及び前記第1試薬プローブ及び前記第2試薬プローブを移動させるプローブ移動手段と、
監視領域内に物体が侵入したことを検知する侵入検知手段と、
前記侵入検知手段が物体の侵入を検知したことに応じて、前記プローブ移動手段による前記サンプルプローブあるいは前記第1試薬プローブの移動を停止するプローブ停止手段と、
前記プローブ停止手段による移動停止を行った際に、前記第2試薬プローブの分注を続けるよう制御する制御手段と
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
サンプル及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記サンプルを前記反応容器へ分注するサンプルプローブと、
前記第1試薬を前記反応容器へ分注する第1試薬プローブと、
前記第2試薬を前記反応容器へ分注する第2試薬プローブと、
前記サンプルプローブ及び前記第1試薬プローブ及び前記第2試薬プローブを移動させるプローブ移動手段と、
前記サンプルプローブ及び前記第1試薬プローブの分注に基づいて、前記反応容器に前記サンプル及び前記第1試薬のいずれが分注されたかを示す分注状況を記憶する記憶部とを更に備え、
監視領域内に物体が侵入したことを検出する侵入検知手段と、
前記侵入検知手段が物体の侵入を検知したことに応じて、前記プローブ移動手段による前記サンプルプローブあるいは前記第1試薬プローブの移動を停止するプローブ停止手段と、
前記プローブ停止手段による移動停止を行った際に前記記憶部から分注状況を読み出して、
前記読み出した分注状況に基づいて、前記サンプルあるいは前記第1試薬を分注されていない前記反応容器へ前記第2試薬プローブが前記第2試薬を分注する際に、前記第2試薬プローブの分注を停止するよう制御する制御手段と
を備えることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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