説明

自動化試料処理プロセス中のパンチロスを防止する方法及びシステム

生物学的試料のための多孔質基材の断片を打ち抜くための自動化方法及びシステムは、ダイ及び開口を含む支持体上に多孔質基材を載せ、容器支持体を少なくともz方向に移動させて支持体に対して容器を位置決めすることにより、容器内の開口が支持体内の開口と実質的に同一平面上に揃うようにし、打ち抜きヘッドを作動させて、打ち抜きヘッドがダイを貫通することにより、多孔質基材から断片を打ち抜くようにし、イジェクターピンを作動させて打ち抜かれた断片を多孔質基材支持体から支持体内の開口と揃っているときの容器中に突き出すことを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、自動化試料処理プロセス中のパンチロス(punch loss)を防止する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースマトリックスのような多孔質基材(例えば、Whatmanから入手可能な31ETF、FTA及びFTA Eluteカード)は血液のような生物学的試料を貯蔵するのに使用されることが多い。これらのカードの新しい応用分野は、薬物動態学及び毒物動態学的研究に由来する乾燥した血液試料を貯蔵するのにこれらのカードを使用する製薬産業である。乾燥した血液スポット中の薬物又は薬物代謝物の量を分析する時が来たとき、現在の方法では、ユーザーが、カードから通常直径1〜6mmの円として試料を切り出し、この切り出したディスクを抽出流体と共にバイアル又はウェルに入れた後、所定の時間震盪/ボルテックス混合する必要がある。次に、抽出流体を取り出し、LC−MSのような方法を用いて分析する。
【0003】
製薬産業は1日に多数の試料を処理することを期待しており、従ってこのプロセスを自動化する方法を探索している。ディスク切断と抽出の現行のワークフローでは、自動化の課題に直面したとき幾つかの問題が生じる。第一の問題は切断ステップに起因する。小さい切断ディスクは静電気又はさらには軽風の影響を極めて受け易い。切断ステップ中又は切断ディスクの輸送中切断ディスクが失われるという数多くの報告がある。現在、試料ディスクは静電気及び空気の移動のような要因によって失われる。例えば、静電荷がプラスチックの多層プレート又はチューブに蓄積し得、ディスクをプレート又はチューブの壁にくっ付かせる。ディスクは時々打ち抜き装置にくっ付き、又はプロセス中のその後時々ディスクが液体取り扱いプローブにくっ付き、そのため、プローブをウェルから引き出すとき、気づかずにディスクがウェルから取り出される。
【0004】
現在市場に出ている機器は、系(閉鎖系)内の空気の移動の量を低減し、帯電防止装置(例えば加湿器)を加えることにより試料ディスクの損失を低減することに主眼を置いている。
【0005】
自動化打ち抜きシステムは、通例、各試料ディスクが異なるウェル/チューブ内に落下するように、プレート/チューブを静止パンチャーの下に配置するプレート取り扱いシステム(又はチューブストリップ取り扱いシステム)を使用する。しかしながら、これらのプレート取り扱いシステムは2つの方向(前方及び横向き)に動くだけである。このタイプのシステムは、打ち抜き装置の底部と96ウェルプレートの頂部との間にギャップを残す。このギャップは、打ち抜き装置がウェルからウェルへ横方向に移動するとき、ギャップがなければプレートの頂部が打ち抜き装置の底部と擦り合うので、かかるシステムでは必要である。
【0006】
例えば、各々のウェルのカバーに小さい歯をもたせることにより、改変されたプレートカバーを用いてウェルの内側にパンチを保つ試みがなされている。しかしながら、この改変では、その後液体をウェルに加えることが容易にはできない。かかる改変ではまた、パンチを一旦ウェル中に挿入すると、ウェルから取り出したり、又はその他ウェル内で移動させることもできない。この操作はある種の抽出方法では重要である。96ウェルプレートで使用するための他のタイプのプレートカバーは、液体がウェルから漏れるのを防ぐように改変されている。これらのカバーは、蒸発を防ぎ、ピペット先端のような小さくて動きの遅いプローブ、又は液体取り扱いプローブがウェルに入ることができるように切り込みを入れたスリットを有する薄膜である。しかしながら、これらの薄膜は極めて堅く、ピペットがウェルから引き抜かれるとき完全に再封止することを目的としている。かかるカバーでは、カバー又はイジェクターの上面にパンチが捉えられるか又はその他の意味でくっ付くことなく、容器内にパンチを挿入したり又はその他移動したりすることができず、またウェルに液体を加えたり取り出したりするには、封止されたスリットを破るために必然的にピペットが必要になるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5638170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の自動化方法及びシステムは、一般に、試料ディスクがウェル中の第1の場所に入り、静電気又は空気の運動が存在していても、パンチ(punch)がウェル内に留まることを確保することによって、試料ディスクの損失を防ぐことに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
生物学的試料のための多孔質基材の断片を打ち抜くための本発明の自動化システムの一実施形態は、パンチャー、ある断面寸法を有するイジェクターピン、打ち抜きヘッドの断面寸法より大きい開口を有する多孔質基材支持体、1以上の試料断片容器、並びに、x、y、及びz方向に移動し、1以上の容器内の開口を支持体内の開口と実質的に同一平面上に並べる取扱いサブシステムを含んでいる。試料断片容器は、取扱いサブシステム上に位置しており、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動し得る。基材支持体は、取扱いサブシステムと固定された関係にあり、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動し得る。
【0010】
パンチャーは打ち抜きヘッドを含み得、多孔質基材支持体は打ち抜きヘッドに対応するダイを含み得る。少なくとも一実施形態では、パンチャーは、イジェクターピンがその中を通って移動する内部管状ボアを有する。
【0011】
打ち抜きダイはイジェクターピンの断面寸法より大きい断面寸法を有し得、ここでイジェクターピンは、延び出た位置にあるとき、多孔質基材支持体内の開口を貫通し、支持体内の開口と並んでいるときの1つの容器の開口中に入る大きさの離れて位置する端部を有する。
【0012】
容器はマルチウェルプレート上の1つのウェルからなり得、このマルチウェルプレートは取扱いサブシステム上に位置し得る。マルチウェルプレートは限定されることはないが96ウェルのような複数のウェルを含む。容器はまた、取扱いサブシステム上に位置する1以上のバイアルも含み得る。
【0013】
試料容器はまた、低いモジュラスと本質的に高い可撓性を有する薄膜材料からなる複数のカバーフラップも含み得る。このカバーフラップは内側に湾曲し得、カバー内に低い抵抗の開口を形成し得る。薄膜材料は約100μm以下の厚さを有し得、限定されることはないがポリエステル、ポリプロピレン、及びポリエステル/ポリプロピレンラミネートの1種以上からなり得る。例えば、一実施形態では、薄膜材料は約65μm以下の厚さを有する。
【0014】
生物学的試料のための多孔質基材の断片を打ち抜くための自動化方法の一例は、ダイ及び開口を含む支持体上に多孔質基材を載せ、容器支持体を少なくともz方向に移動させて、支持体に対して容器を位置決めし、容器の開口が支持体の開口と実質的に同一平面上に並ぶようにし、打ち抜きヘッドを作動させて、打ち抜きヘッドがダイを貫通することにより多孔質基材の断片を打ち抜くようにし、イジェクターピンを作動させて、打ち抜かれた断片を多孔質基材支持体から支持体の開口と並んだ容器中に突き出し、必要に応じ、少なくともステップb〜dを繰り返すことを含んでいる。打ち抜かれた断片の突き出しは、イジェクターピンの少なくとも離れて位置する端部を、多孔質基材支持体内の開口を通って、支持体の開口と同一平面上に並んでいるときの1つの容器の開口中に延び出させることを含み得る。打ち抜かれた断片は生物学的試料の一部分を含み得る。容器は取扱いサブシステム上に位置し、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動し得る。基材支持体は取扱いサブシステムと固定された関係にあり、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動し得る。
【0015】
容器は、x、y及びz方向に動く取扱いサブシステム上に位置するマルチウェルプレート上のウェルを含み得る。容器はまた、例えば取扱いサブシステム上に位置する1以上のバイアルも含み得る。
【0016】
本方法で使用する試料容器は、低いモジュラスと本質的に高い可撓性を有する薄膜材料からなり、内側に湾曲してカバー内に低い抵抗の開口を形成し得る複数のカバーフラップも含み得る。薄膜材料は約100μm以下の厚さを有し得、限定されることはないがポリエステル、ポリプロピレン、及びポリエステル/ポリプロピレンの1種以上を含み得る。例えば、一実施形態では、薄膜材料は約65μm以下の厚さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の上記及びその他の特徴、局面、及び利点は添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めばより良く理解されるであろう。図面を通じて、類似の符号は類似の部分を表す。
【図1】図1は、パンチロスを防止する本発明のシステムの一実施形態の透視図である。
【図2】図2は、パンチロスを防止する本発明のシステムの別の実施形態の透視図である。
【図3】図3A〜3Cは、図1又は図2に示す実施形態のシステムの、使用の進行段階の断面図である。図3Aは、多孔質基材を装置内に入れた後のシステムを示す。図3Bは、多孔質基材を打ち抜く段階を示す。図3Cは、打ち抜かれたディスクを容器中に突き出す段階を示す。
【図4】図4Aは、容器のカバーフラップの一例の平面図であり、図4Bは、図4Aのカバーフラップが容器の底部に向かって内側に湾曲しているところを示す2つの容器の断面図である。
【図5】図5A及び5Bは、容器カバーの切断パターンの2つの非限定例の平面図である。
【図6】図6は、本発明のシステムの一実施形態の概略断面図である。
【図7】図7A〜7Fは、図6の実施形態のシステムの、作用の進行段階を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の方法及びシステムは、一般に、最初の試料マトリックスから切り出された小さいディスクの損失を防ぐことによって、乾燥した血液スポットのような試料を処理するときの試料の損失を防止する。これらの方法及びシステムは、セルロースマトリックス又はポリマー膜のような担体基材上の乾燥試料からのディスクの切り出しを自動化するために設計される他のシステムに組み込むことができる。
【0019】
例えば、セルロースカード上の乾燥した血液スポットのようなある種の試料の調製中、小さいパンチ(直径1〜6mm)を切り出し、その後の処理のためにウェルプレート又はチューブ中に入れる。本方法及びシステムの1以上の実施形態では、z軸運動を用いて、受容するチューブ又はウェルプレートを打ち抜き装置の直下に接触して配置する。本方法及びシステムはまた、改変されたウェルプレートカバー、並びにかかる改変されたウェルプレートカバーと適合する打ち抜き及び突き出し方法を使用して、パンチがウェル内に配置された後はパンチがウェルから出ていくのをさらに防止し得る。
【0020】
一般に図1にシステム10として示すシステムの非限定的実施形態は、頂部パンチャー12、イジェクターピンアセンブリ14、ウェルプレート又はチューブストリップ16、並びに、x、y、及びz方向に移動するプレート/チューブ取扱いサブシステム18を含んでいる。ウェルプレートは、限定されることはないがウェルパテ16として示す96ウェルのような複数のウェルを含み得る。容器はまた、取扱いサブシステム上に位置する1以上のバイアルも含み得る。
【0021】
システム10はまた、多孔質基材20(例えばFTAカード)を支持するダイセット底部22及び底部打ち抜きダイ24も含んでいる。ダイセット頂部28はイジェクターピン空気圧シリンダー30により駆動されるイジェクターピンアセンブリ14を支持している。主ピストンロッド26が主空気圧シリンダーにより駆動され、打ち抜き操作中延び出たり引っ込んだりする。この実施形態では、試料断片容器はウェルプレート内のウェルであり、取扱いサブシステム18上に位置しており、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動する。x及びy方向に加えてz方向に動かすことにより、取扱いサブシステムは、各々の容器内の開口を、ダイセット底部内の開口(同様に、イジェクターピン、頂部パンチ手段及び底部打ち抜きダイに一致する)と整列させ、実質的に同一平面上に配置することを可能にする。この配置により、パンチ又は多孔質基材の断片が、多孔質基材から切り出された後、パンチが不注意に隣接するウェル中に落下する危険なく、所与の容器又はウェル中に落下し、及び/又はさらに直接突き出されることが可能になる。
【0022】
パンチャーは頂部打ち抜き手段12のような打ち抜きヘッドを含み得、ダイセット底部22のような多孔質基材支持体は打ち抜きヘッドに対応するダイ(例えば底部パンチ24)を含み得る。この実施形態では、パンチャーは、図3Aに示すようにパンチャーに対してイジェクターピンが移動する際に通る内部管状ボアを有する。打ち抜きダイは打ち抜きヘッドの断面寸法と一致する断面寸法を有しており、イジェクターピンは、延び出た位置にあるとき、頂部打ち抜き手段アセンブリから離れて位置し、頂部打ち抜き手段の管状ボアを、そして多孔質基材支持体内の開口を貫通し、支持体内の開口と並んでいるときの1つの容器の開口中に入る大きさである端部を有している。
【0023】
本システムの別の実施形態が、一般にシステム50として図2に示す。システム50で、基材支持体は、打ち抜き及びイジェクター機構と共に、取扱いサブシステム52を含み、これと固定された関係にあり、従って、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に動く。x及びy方向に加えてz方向に動かすことにより、この実施形態の取扱いサブシステムは、ダイセット底部をイジェクターピン、頂部打ち抜き手段及び底部打ち抜きダイと共に移動して、多孔質基材の打ち抜かれた断片が落下すべき所与の容器内の開口と対応する開口が並ぶことになる。同様に、この配置により、パンチ、又は多孔質基材の断片が、多孔質基材から切り出された後、パンチが不注意に隣接するウェル中に落下する危険なく、所与の容器又はウェル中に落下し、及び/又はさらに直接突き出されることが可能になる。
【0024】
図3A〜3Cは、図1又は図2に示す実施形態のシステムの使用進行段階を示す。図3Aは、多孔質基材を装置内に入れた後のシステムを示す。主ピストンが延び出て、イジェクターピストンが引っ込んでいる。図3Bは、多孔質基材を打ち抜くところを示している。主ピストンが引っ込み、イジェクターピストンが引っ込んでいる。図3Cは、打ち抜かれたディスクが容器中に突き出されるところを示している。主ピストンが引っ込んでおり、イジェクターピストンが延び出て、打ち抜かれた断片を、多孔質基材支持体内の開口と並んだ容器内の開口中に押し出す。
【0025】
図4A及び図4Bに示すように、試料容器はまた、低いモジュラス及び本質的に高い可撓性及び低い抵抗を有する薄膜材料からなる複数のカバーフラップを含むカバー60も有し得る。かかる特性により、その程度に応じて、容器の底部又は内部に向かって内側に湾曲する図4A及び4Bに示すフラップ62のようなカバーフラップが得られ得る。図4Aは、その低いモジュラス及び/又は厚さのため、使用する材料及びその材料の厚さに応じて、各々の容器66の底部に向かって内側に垂れ、打ち抜かれた断片が容器中に落下したり又はその他イジェクターピンにより押し込まれる際に通ることができる小さい開口64をカバー内に形成するカバーフラップの平面図である。薄膜材料は、100μm以下の厚さを有し得、限定されることはないがポリエステル、ポリプロピレン、及びポリエステル/ポリプロピレンラミネートの1種以上からなり得る。例えば、一実施形態では、薄膜材料は約65μm以下の厚さを有する。材料の厚さは使用する材料の種類に依存する。材料のモジュラスが高くなればなるほど、容器中に落下するパンチ断片及び/又はイジェクターピンに対する低い抵抗を提供するカバーフラップを達成するための材料の厚さは薄くなる。
【0026】
低いモジュラスと可撓性が、図4A及び4Bに示す実施形態のような所与の実施形態では、フラップを内側に湾曲させるのに十分なほど低ければ、かかるフラップは、パンチ断片が、内側に向けて湾曲するフラップにより形成された開口を通して、多孔質基材支持体内の開口と並んだ容器中に容易に落下できるようにするばかりでなく、打ち抜かれた断片が容器中に落下するか又はイジェクターピンにより容器中に押し込まれたら、その断片が容器から不注意に抜け出すのを防止する内側に向いた端も創成する。内側に向けて湾曲するカバーフラップにより形成される開口は、その大きさが、イジェクターピンの遠く離れた端部及び/又はパンチ断片の大きさに対応し得る。用語「対応又は一致する」とは、必ずしも大きさが等しいことを意味するのではなく、その大きさは、様々な構成要素の大きさが、パンチ断片を容器中に挿入するのに最適であるが、それでも一旦挿入されたらパンチ断片を容器内に保持するように対応することを意味している。
【0027】
薄膜材料の種類と厚さに加えて、内側に向けて湾曲するカバーフラップにより創成される開口の大きさは、例えば、フラップのスリット又は切断構成によって変化し得る。図5A及び5Bは、カバーフラップのスリット構成の2つの非限定例を示す。これらの構成は、カバーフラップが、垂れるか又はその他容器の底部に向かって内側に湾曲する前に平坦な表面上にあるものとして示す。
【0028】
生物学的試料のための多孔質基材の断片を打ち抜くための自動化方法の一例が、例えば図7A〜7Fに示してあり、一般にシステム80として図6に示すシステムの一実施形態を使用し、ダイ84と開口86を含む支持体83(例えばダイプレート)上に多孔質基材82(例えばFTAカード)を載せ(図7A)、容器支持体88を少なくともz方向に移動させて、容器(例えばウェルプレート内のウェル)を支持体83に対して位置決めし、容器内の開口90が支持体内の開口と実質的に同一平面上に並ぶようにし(図7B)、打ち抜きヘッド92を作動させて、打ち抜きヘッドがダイ84を貫通することにより、多孔質基材の断片を打ち抜くようにし(図7C)、イジェクターピン94を作動させて、打ち抜かれた断片を、多孔質基材支持体から支持体の開口と並んだ容器96中に突き出し(7D)、少なくともステップb〜dを繰り返し、必要に応じ、各打ち抜きの後パンチャーとイジェクターピンを引っ込める(図7E)ことを含んでいる。打ち抜かれた断片を突き出すことは、イジェクターピンの少なくとも離れて位置する端部を、多孔質基材支持体内の開口を介して、支持体内の開口と同一平面上に並んでいるときの容器の1つの開口中に延び出させることを含み得る(図7D)。打ち抜かれた断片は生物学的試料の一部分を含み得る。容器は取扱いサブシステム上に位置して取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動し得る。代わりに、又は加えて、基材支持体は、取扱いサブシステムと固定された関係にあって、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動し得る。
【0029】
同様に、容器は、x、y及びz方向に動く取扱いサブシステム上に位置するマルチウェルプレート上のウェルを含み得る。容器はまた、例えば取扱いサブシステム上に位置する1以上のバイアルも含み得る。
【0030】
同様に、これらの方法に使用する試料容器は、打ち抜かれた断片が容器中に落下したりその他イジェクターピンにより押し出されることができるように低い抵抗を有する複数のカバーフラップを含むカバーも含み得る。
【0031】
パンチャーは乾燥試料を含有する基材の画成された領域を切り出す。これらの方法及びシステムで使用されるパンチャーは、金型とダイからなるパンチャー、円形ブレード、レーザー光線切断機、又はその他適切な切断装置であり得る。一般に、イジェクターピンは、切り出されたディスクが受容するウェル/チューブに入るのを確実にするのに役立つ。切り出されたディスクが既にウェル/チューブに入っていない場合、イジェクターピンが切り出されたディスクをその切り出し後の位置からウェル/チューブに押し出す。
【0032】
これらの方法及びシステムを使用し得る応用の1つの例として、金型とダイからなるパンチャーが通例法医学試験に使用されるセルロースカード上の乾燥した血液スポットからディスクを切り出す。切り出す前に、ウェルプレートを、ウェルのリムがダイに触れるように、パンチャーのダイに対して上昇させる。取扱いサブシステムはマルチウェルプレートを複数の軸(例えば x、y、及びz)に沿って移動させる。x及びy軸の動きにより、各々のウェル/チューブがパンチャーの中心軸と揃って並ぶことが可能になる。z軸の動きにより、プレート/チューブは、打ち抜きプラットフォームの底部に触れるまで押し上げられる。ディスクは、切り出された後、ウェル内でウェルのすぐ上の領域に閉じ込められる。これにより、切り出しステップ中、切り出したディスクが誤ったウェル中に落下しないことが確保される。この例では、直径1.75mmのイジェクターピンを使用して、支持体の開口内又は容器のカバー上にまだ存在し得る切り出されたディスクを押し出す。これは、かかるディスクは多くの理由から容器内でウェル中に自然に落下しなかったからである。
【0033】
このシステムと方法の一実施形態では、容器カバーの開口は、容器中に入ることができるようにパンチ又はピンが容器カバーを通して/に対して押圧されたとき変形する。ピンはカバーの開口及び変形した端を越えて切り出されたディスクを押し出す。ピンは切り出されたディスクより小さい直径を有し、従って、変形した状態において、カバーはまだパンチ/ピンに触れており、従ってピンが引っ込むときにピンにくっ付いているあらゆる切り出されたディスクを「こすり取る」。パンチ/ピンが除去された後、シールはその最初の構造に戻る。切り出されたディスク自体は、開口に対して、それを変形させるのに十分な力を加えない。従って、切り出されたディスクは、静電気、空気の運動、モーメント、又は振動のような影響のためにウェルを去ることができない。
【0034】
カバー又はカバーフラップは様々な手段により容器又はウェルプレートに設置し得る。例えば、カバーはヒートシールを用いて容器又はウェルプレートに固定し得る。他の例には、限定されることはないが、予め切断されたキャップマット(capmat)又はパターン化接着シール(例えばウェルの上に接着剤がない場合)がある。容器カバー及びカバーフラップはまた、いかなる下流の液体取り扱いステップとも適合する。開口は標準の液体取り扱いプローブ又はピペット先端のために変形する。これらのカバーはチューブ又はチューブストリップ上にも使用し得る。
【0035】
様々な開口並びに打ち抜かれた断片の大きさ及び形状は本方法及びシステムと適合し、所与の応用及び用途に依存する。
【0036】
本発明の方法及びシステムは、限定されることはないが、イムノアッセイ(例えば成分の存否を同定するため)、UV検出を用いる液体クロマトグラフィー(例えば成分を特性決定し定量化するため)、質量分析を伴う液体クロマトグラフィー(例えば成分を同定及び/又は定量化するため)、及びDNA分析のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような、多くの異なる目的で多孔質基材上の試料から抽出された試料及び物質を分析する分析系と共に(例えばインラインで)使用し得る。本方法及びシステムはハイスループットの応用に適合し得る。
【0037】
以上、本発明の幾つかの特徴のみを例示し説明して来たが、多くの改変及び変更が当業者には自明であろう。従って、後述の特許請求の範囲は本発明の真の思想の範囲内に入るものとしてかかる改変及び変更を全て包含するものと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料のための多孔質基材(20;82a)の断片を打ち抜くための自動化システム(10;50;80)であって、
パンチャー(12;92)、
ある断面寸法を有するイジェクターピン(14;94)、
イジェクターピンの断面寸法より大きい開口を有する多孔質基材支持体(83)、
1以上の試料断片容器(96)、及び
x、y、及びz方向に移動し、1以上の容器の開口を支持体内の開口と実質的に同一平面上に揃える取扱いサブシステム(18;52)
を含んでなる、システム。
【請求項2】
1以上の試料断片容器が、取扱いサブシステム上に位置しており、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
基材支持体が、取扱いサブシステムと固定された関係にあり、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動する、請求項1又は請求項2記載のシステム。
【請求項4】
パンチャーが、イジェクターピンが移動する際に通る内部管状ボアを有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
パンチャーが打ち抜きヘッドを含んでおり、多孔質基材支持体が打ち抜きヘッドに対応するダイ(24;84)を含んでいる、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
打ち抜きダイが、打ち抜きヘッドの断面寸法に対応する断面寸法を有する、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
イジェクターピンが、延び出た位置にあるとき、多孔質基材支持体内の開口を貫通して、支持体内の開口と揃っているときの容器の1つの開口中に入る大きさの離れて位置する端部を有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
1以上の容器がマルチウェルプレート(16)上のウェルからなる、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
マルチウェルプレートが取扱いサブシステム上に位置する、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
マルチウェルプレートが少なくとも96のウェルを含む、請求項8又は請求項9記載のシステム。
【請求項11】
1以上の容器がバイアルからなる、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のシステム。
【請求項12】
バイアルが取扱いサブシステム上に位置する、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
試料容器が、低いモジュラス及び本質的に高い可撓性を有する薄膜材料からなる複数のカバーフラップ(62)を含んでいる、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
カバーフラップが、内側に湾曲し、低い抵抗の開口(64)をカバー内に形成する、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
薄膜材料が、約100μm以下の厚さを有し、ポリエステル、ポリプロピレン、及びポリエステル/ポリプロピレンの1種以上からなる、請求項13又は請求項14記載のシステム。
【請求項16】
薄膜材料が約65μm以下の厚さを有する、請求項13乃至請求項15のいずれか1項記載のシステム。
【請求項17】
生物学的試料のための多孔質基材(20;83)の断片を打ち抜くための自動化方法であって、
a.ダイ(24;84)及び開口を含む支持体(83)上に多孔質基材を載せ、
b.容器支持体を少なくともz方向に移動させて支持体に対して容器(96)を位置決めし、容器内の開口が支持体内の開口と実質的に同一平面上に揃うようにし、
c.打ち抜きヘッド(12;92)を作動させて、打ち抜きヘッドがダイを貫通することにより、多孔質基材から断片を打ち抜くようにし、
d.イジェクターピン(14;94)を作動させて、打ち抜かれた断片をダイから、支持体内の開口と揃った容器中に突き出し、
e.必要に応じ、少なくともステップb〜dを自動的に繰り返す
ことを含んでなる、自動化方法。
【請求項18】
打ち抜かれた断片が生物学的試料の一部分を含む、請求項17記載の自動化方法。
【請求項19】
1以上の容器が、取扱いサブシステム(18;52)上に位置しており、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動する、請求項17又は請求項18記載の方法。
【請求項20】
基材支持体が、取扱いサブシステムと固定された関係にあり、取扱いサブシステムと共にx、y及びz方向に移動する、請求項17乃至請求項19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
打ち抜きヘッドが、イジェクターピンが移動する際に通る内部の管状ボアを有する、請求項17乃至請求項20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
ダイが、打ち抜きヘッドの断面寸法に対応する断面寸法を有する、請求項17乃至請求項21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
打ち抜かれた断片を突き出すことが、イジェクターピンの少なくとも離れて位置する端部を開口を通して、支持体内の開口と同一平面上に揃っているときの容器の1つの開口中に延び出させることを含む、多孔質基材支持体内の、請求項17乃至請求項22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
1以上の容器がマルチウェルプレート(16)上のウェルからなる、請求項17乃至請求項23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
マルチウェルプレートが、x、y及びz方向に移動する取扱いサブシステム上に位置する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
マルチウェルプレートが少なくとも96のウェルを含む、請求項24又は請求項25記載の方法。
【請求項27】
1以上の容器がバイアルからなる、請求項17乃至請求項26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
バイアルが、x、y及びz方向に移動する取扱いサブシステム上に位置する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
試料容器が、低いモジュラス及び本質的に高い可撓性を有する薄膜材料からなる複数のカバーフラップ(62)を含む、請求項17乃至請求項28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
カバーフラップが、内側に湾曲し、低い抵抗の開口(64)をカバー内に形成する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
薄膜材料が、約100μm以下の厚さを有しており、ポリエステル、ポリプロピレン、及びポリエステル/ポリプロピレンの1種以上からなる、請求項29又は請求項30記載の方法。
【請求項32】
薄膜材料が約65μm以下の厚さを有する、請求項29乃至請求項31のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−513100(P2013−513100A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541494(P2012−541494)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068682
【国際公開番号】WO2011/067309
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(500055533)ワットマン・インターナショナル・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Whatman lnternational Limited
【Fターム(参考)】