説明

自動取引システム,自動取引装置,及び取引可否判定方法

【課題】取引に用いられるカードが有する記憶媒体から情報を読み出せない場合においても、カードを用いた取引を可能とする。
【解決手段】自動取引システムは、カード識別情報及び取引関連情報を記憶する記憶媒体を有するカードから取引関連情報を正常に読み出し可能か否かを判定する読み出し判定部と、カードの表面画像を取得する表面画像取得部と、表面画像を記憶する表面画像記憶部と、正常に読み出し可能と判定された場合に取得表面画像とカード識別情報とを対応付けて表面画像記憶部に書き込む表面画像書込み部と、正常に読み出し不可能と判定された場合に表面画像記憶部から既存表面画像を読み出して既存表面画像と取得表面画像とが一致するか否かを判定する一致判定部と、一致する場合に取引可能と判定し、一致しない場合に取引不可能と判定する取引可否判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを用いた取引を実行する自動取引装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動取引装置(Automated Teller Machine、以下「ATM」とも呼ぶ)を利用する際に、本人の確認及び口座の特定のためにキャッシュカード(以下、単に「カード」とも呼ぶ)が利用される。一般に、カードは、磁気ストライプを有しており、ATMは、この磁気ストライプに記憶されているデータを読み取って処理を行う。近年、磁気ストライプに記憶されている情報を不正にコピーして製造された偽造カードの存在が問題となっており、偽造カードの不正使用に対処するために、様々な方法が提案されている。例えば、磁気ストライプ内の情報に加えて、カード表面に予め印刷された固有の模様を用いて認証する方法(特許文献1)や、カード表面において口座番号等が凹凸状に表わされたエンボス部を用いて認証する方法(特許文献2)などが提案されている。また、経年劣化等により磁気ストライプの出力(磁気)が低下する問題に対して、ATMにおいて、出力レベルが低下した場合に、カードの再発行が必要である旨を利用者に通知する方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−5001号公報
【特許文献2】特開平10−255118号公報
【特許文献3】特開2000−251122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気ストライプに加えて固有の模様やエンボス部を用いて認証する方法では、真のカードであっても磁気ストライプ部分の損傷や磁気出力の低下等により、磁気ストライプから情報が読み出せなくなった場合には認証できない。また、カードの再発行が必要である旨を利用者に通知する方法も、そのカードの利用者や口座を特定する情報が読み取れる場合に実現可能であり、磁気ストライプから情報が読み出せなくなった場合には実現できないという問題があった。
【0005】
なお、上記問題は、キャッシュカードに限らず、クレジットカードや、両替機専用カードなど、取引に用いられる任意のカードにおいて発生し得る。また、磁気ストライプに限らず、任意の記憶媒体を有するカードにおいて発生し得る。
【0006】
本発明は、取引に用いられるカードが有する記憶媒体から情報を読み出せない場合においても、カードを用いた取引を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]自動取引システムであって、
カード識別情報と取引に関する情報である取引関連情報とを記憶する記憶媒体を有するカードから、前記取引関連情報を正常に読み出すことができるか否かを判定する読み出し判定部と、
前記カードを撮像して、前記カードの表面の少なくとも一部の画像である表面画像を取得する表面画像取得部と、
前記表面画像を記憶する表面画像記憶部と、
前記取引関連情報を正常に読み出すことができると判定された場合に、前記表面画像取得部により取得された前記表面画像である取得表面画像と前記カード識別情報とを互いに対応付けて前記表面画像記憶部に書き込む表面画像書込み部と、
前記取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、前記カード識別情報に基づき、前記表面画像記憶部から前記カードについて既に記録されている前記表面画像である既存表面画像を読み出すと共に、前記読み出した既存表面画像と前記取得表面画像とが一致するか否かを判定する一致判定部と、
前記既存表面画像と前記取得表面画像とが一致すると判定された場合に前記カードを用いた取引が可能であると判定し、一致しないと判定された場合に前記カードを用いた取引が可能でないと判定する取引可否判定部と、
を備える自動取引システム。
【0009】
適用例1の自動取引システムでは、カードが有する記憶媒体から取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、既存表面画像と取得表面画像とが一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合にカードを用いた取引が可能であると判定するので、カードの記憶媒体から取引関連情報を正常に読み出すことができない場合であっても、カードが真のカードであるか否かの判定を正確に行うことができ、真の利用者によるカードを用いた取引を可能とすることができる。カードは長期間の使用により、表面に少しずつ汚れや擦り傷が生じることとなるが、かかる汚れや擦り傷は、他のカード表面における汚れや擦り傷と異なる可能性が高い。したがって、カード表面の汚れや擦り傷はカード固有の識別情報となり得る。適用例1の自動取引システムでは、このようなカード表面の汚れや擦り傷等を含む表面画像を用いて既存表面画像(すなわち、取引関連情報を正常に読み出すことができたと判定された際に撮像して得られた表面画像)と一致するか否かを判定するので、真のカードであるか否かを正確に判定することができる。加えて、取引関連画像を正常に読み出すことができると判定された場合に、表面画像記憶部に新たに取得された表面画像を書き込むので、次回に既存表面画像と取得表面画像とが一致するか否かを判定する際に、前回正常に読み出された際に記憶された表面画像を、既存表面画像として用いることができる。したがって、真のカードであるにも関わらず、少しずつ加えられる汚れや擦り傷に基づき、一致しないと判定されることを抑制できる。その一方、カードの記憶媒体に記憶されている情報を不正にコピーして製造された偽造カードについては、汚れや擦り傷が全く異なるので、一致しないと正確に判定して取引が可能でないと判定することができる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の自動取引システムにおいて、さらに、
前記取引関連情報と同一の情報を、前記カード識別情報と関連付けて記憶する取引関連情報記憶部と、
前記取引関連情報記憶部から前記取引関連情報を読み出して前記記憶媒体に書き込む取引関連情報書込み部と、
を備え、
前記取引関連情報書込み部は、前記カードについて前記取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定され、かつ、前記カードを用いた取引が可能であると判定された場合に、前記取引関連情報記憶部から前記カードに対応付けられている前記取引関連情報を読み出して、前記カードの前記記憶媒体に書き込む、自動取引システム。
【0011】
このような構成により、カードが有する記憶媒体から取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、(正常な)取引関連情報を記憶媒体に書き込むので、次回取引の際に、カード(記憶媒体)から取引関連情報を正常に読み出すことができる可能性を高めることができる。
【0012】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の自動取引システムにおいて、
前記表面画像は、前記カードにおいて磨耗性の高い部位である高磨耗性部の画像を含む、自動取引システム。
【0013】
このような構成により、汚れや擦り傷が生じ易い高磨耗性部の画像を用いて、既存表面画像と取得表面画像とが一致するか否かを判定するので、カード固有の識別情報となり易い汚れや擦り傷等を用いて一致するか否かの判定を行うことができ、真のカードであるか否かをより正確に判定することができる。
【0014】
[適用例4]適用例3に記載の自動取引システムにおいて、
前記表面画像は、前記高摩耗性部の表面画像である高摩耗性部画像と、前記カードにおいて磨耗性の低い部位である低磨耗性部の表面画像である低摩耗性部画像と、を含み、
前記一致判定部は、前記既存表面画像と前記取得表面画像とが一致するか否かを判定する際に、前記既存表面画像及び前記取得表面画像における前記高磨耗性部画像同士の一致度合いと、前記既存表面画像及び前記取得表面画像における前記低摩耗性部画像同士の一致度合いとのうち、前記高磨耗性部画像同士の一致度合いを優先的に用いて判定する、自動取引システム。
【0015】
このような構成により、カード固有の識別情報となり易い汚れや擦り傷等を含む可能性の高い部位の画像の一致度合いを優先的に用いて判定するので、真のカードであるか否かをより正確に判定することができる。
【0016】
[適用例5]適用例3または適用例4に記載の自動取引システムにおいて、
前記高摩耗性部は、前記カードの周縁部である、自動取引システム。
【0017】
このような構成により、カード全体のうち、より汚れ易く、擦り傷がより生じ易いカードの周縁部の画像を用いて判定するので、真のカードであるか否かをより正確に判定することができる。
【0018】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の自動取引システムにおいて、さらに、
前記表面画像記憶部を有するホストコンピュータと、
前記カード受付部と、前記読み出し判定部と、前記表面画像取得部と、前記一致判定部と、前記取引可否判定部と、を有し、前記ホストコンピュータとネットワークを介して接続された自動取引装置と、
を備える、自動取引システム。
【0019】
このような構成により、利用者が、異なる自動取引装置においてカードを用いた取引を実行しようとする場合にも、各自動取引装置において、カードを用いた取引の可否を判定することができる。したがって、セキュリティを向上させると共に利用者の利便性を向上させることができる。
【0020】
[適用例7]記憶装置を有するホストコンピュータとネットワークを介して接続された自動取引装置であって、
カード識別情報と取引に関する情報である取引関連情報とを記憶する記憶媒体を有するカードから、前記取引関連情報を正常に読み出すことができるか否かを判定する読み出し判定部と、
前記カードを撮像して、前記カードの表面の少なくとも一部の画像である表面画像を取得する表面画像取得部と、
前記取引関連情報を正常に読み出すことができると判定された場合に、前記表面画像取得部により取得された前記表面画像である取得表面画像と前記カード識別情報とを前記ホストコンピュータに送信して、前記取得表面画像と前記カード識別情報とを互いに対応付けて前記記憶装置に記憶させる記憶指示部と、
前記取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、前記カード識別情報に基づき、前記記憶装置から前記カードについて既に記録されている前記表面画像である既存表面画像を読み出すと共に、前記読み出した既存表面画像と前記取得表面画像とが一致するか否かを判定する一致判定部と、
前記既存表面画像と前記取得表面画像とが一致すると判定された場合に前記カードを用いた取引が可能であると判定し、一致しないと判定された場合に前記カードを用いた取引が可能でないと判定する取引可否判定部と、
を備える自動取引装置。
【0021】
適用例7の自動取引装置では、カードが有する記憶媒体から取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、既存表面画像と取得表面画像とが一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合にカードを用いた取引が可能であると判定するので、カードの記憶媒体から取引関連情報を正常に読み出すことができない場合であっても、カードが真のカードであるか否かの判定を正確に行うことができ、真の利用者によるカードを用いた取引を可能とすることができる。カードは長期間の使用により、表面に少しずつ汚れや擦り傷が生じることとなるが、かかる汚れや擦り傷は、他のカード表面における汚れや擦り傷と異なる可能性が高い。したがって、カード表面の汚れや擦り傷はカード固有の識別情報となり得る。適用例7の自動取引装置では、このようなカード表面の汚れや擦り傷等を含む表面画像を用いて既存表面画像(すなわち、取引関連情報を正常に読み出すことができたと判定された際に撮像して得られた表面画像)と一致するか否かを判定するので、真のカードであるか否かを正確に判定することができる。加えて、取引関連画像を正常に読み出すことができると判定された場合に、ホストコンピュータの記憶装置に新たに取得された表面画像を書き込むので、次回に既存表面画像と取得表面画像とが一致するか否かを判定する際に、前回正常に読み出された際に記憶された表面画像を、既存表面画像として用いることができる。したがって、真のカードであるにも関わらず、少しずつ加えられる汚れや擦り傷に基づき、一致しないと判定されることを抑制できる。その一方、カードの記憶媒体に記憶されている情報を不正にコピーして製造された偽造カードについては、汚れや擦り傷が全く異なるので、一致しないと正確に判定して取引が可能でないと判定することができる。
【0022】
[適用例8]記憶装置を有するホストコンピュータとネットワークを介して接続された自動取引装置を用いて、カード識別情報と取引に関する情報である取引関連情報とを記憶する記憶媒体を有するカードを用いた取引が可能であるか否かを判定するための方法であって、
(a)前記自動取引装置において、前記カードから前記取引関連情報を正常に読み出すことができるか否かを判定する工程と、
(b)前記自動取引装置において、前記カードを撮像して、前記カードの表面の少なくとも一部の画像である表面画像を取得する工程と、
(c)前記自動取引装置において、前記取引関連情報を正常に読み出すことができると判定された場合に、前記工程(b)により取得された前記表面画像である取得表面画像と前記カード識別情報とを前記ホストコンピュータに送信して、前記取得表面画像と前記カード識別情報とを互いに対応付けて前記記憶装置に記憶させる工程と、
(d)前記自動取引装置において、前記取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、前記カード識別情報に基づき、前記記憶装置から前記カードについて既に記録されている前記表面画像である既存表面画像を読み出すと共に、前記読み出した既存表面画像と前記取得表面画像とが一致するか否かを判定する工程と、
(e)前記既存表面画像と前記取得表面画像とが一致すると判定された場合に前記カードを用いた取引が可能であると判定し、一致しないと判定された場合に前記カードを用いた取引が可能でないと判定する工程と、
を備える方法。
【0023】
適用例8の方法(取引可否判定方法)では、カードが有する記憶媒体から取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、既存表面画像と取得表面画像とが一致するか否かを判定し、一致すると判定した場合にカードを用いた取引が可能であると判定するので、カードの記憶媒体から取引関連情報を正常に読み出すことができない場合であっても、カードが真のカードであるか否かの判定を正確に行うことができ、真の利用者によるカードを用いた取引を可能とすることができる。カードは長期間の使用により、表面に少しずつ汚れや擦り傷が生じることとなるが、かかる汚れや擦り傷は、他のカード表面における汚れや擦り傷と異なる可能性が高い。したがって、カード表面の汚れや擦り傷はカード固有の識別情報となり得る。適用例8の方法では、このようなカード表面の汚れや擦り傷等を含む表面画像を用いて既存表面画像(すなわち、取引関連情報を正常に読み出すことができたと判定された際に撮像して得られた表面画像)と一致するか否かを判定するので、真のカードであるか否かを正確に判定することができる。加えて、取引関連画像を正常に読み出すことができると判定された場合に、ホストコンピュータの記憶装置に新たに取得された表面画像を書き込むので、次回に既存表面画像と取得表面画像とが一致するか否かを判定する際に、前回正常に読み出された際に記憶された表面画像を、既存表面画像として用いることができる。したがって、真のカードであるにも関わらず、少しずつ加えられる汚れや擦り傷に基づき、一致しないと判定されることを抑制できる。その一方、カードの記憶媒体に記憶されている情報を不正にコピーして製造された偽造カードについては、汚れや擦り傷が全く異なるので、一致しないと正確に判定して取引が可能でないと判定することができる。
【0024】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、自動取引システム,自動取引装置,取引可否判定方法を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例における自動取引処理システムの構成を概略的に示す説明図。
【図2】自動取引処理システムに含まれる各要素の内部構成を概略的に示す説明図。
【図3】自動取引処理システムにおいて用いられるカードを示す平面図。
【図4】図2に示すカード処理機構の詳細構成を示す説明図である。
【図5】図2に示すカード情報記憶テーブルの詳細を模式的に示す説明図。
【図6】本実施例におけるATM側の取引処理の手順を示す第1のフローチャート。
【図7】本実施例におけるATM側の取引処理の手順を示す第2のフローチャート。
【図8】本実施例におけるATM側の取引処理の手順を示す第3のフローチャート。
【図9】本実施例のカード表面画像比較処理の手順を示すフローチャート。
【図10】ステップS315における画像比較の方法を模式的に示す説明図。
【図11】本実施例におけるホストコンピュータ側の取引処理の手順を示すフローチャート。
【図12】図11のステップS525が実行された結果、更新されたカード情報記憶テーブルを示す説明図。
【図13】第2実施例における画像比較方法を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
A.第1実施例:
A1.システム構成:
図1は、本発明の一実施例における自動取引処理システムの構成を概略的に示す説明図である。図2は、自動取引処理システムに含まれる各要素の内部構成を概略的に示す説明図である。本実施例の自動取引処理システム300は、現金自動取引装置(以下、「ATM」とも呼ぶ)100と、ネットワークNETを介してATM100に接続されるホストコンピュータ200と、を備えている。ATM100は、例えば金融機関や小売店、公共施設等に設置され、利用者の操作に基づき現金出納等の所定の取引処理を行う装置である。ATM100は、現金自動預け払い機とも呼ばれることがある。
【0027】
図1および図2に示すように、ATM100は、制御部12と、利用者操作部13と、カード処理機構14と、通帳機構15と、紙幣入出金機構16と、硬貨入出金機構17と、回線接続部18と、明細票処理機構19と、パターン認識処理部20と、音声案内ガイダンス部21とを備えている。
【0028】
制御部12は、ATM100全体を制御する機能部であり、CPUとプログラムやデータを記憶するメモリとを有し、CPUがメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各種処理・取引の制御を行う。利用者操作部13は、例えば入力機能と表示機能とを備えるタッチパネルにより構成されており、種々の情報を画面に表示すると共に利用者の画面タッチ操作を検知することにより、利用者の取引操作を誘導したり、利用者による画面表示された項目の選択や暗証番号の入力等を受け付けたりする。カード処理機構14は、利用者のキャッシュカード(以下、単に「カード」と呼ぶ)を取り扱う。
【0029】
図3は、自動取引処理システムにおいて用いられるカードを示す平面図である。図3では、カードCa1のおもて側を表わしている。カードCa1は、おもて面に磁気ストライプSt1を備えている。磁気ストライプSt1は、帯状の外観形状を有しており、開始符号記憶領域A1と、有効データ記憶領域A2と、ダミーデータ記憶領域A3と、終了符号記憶領域A4とから構成される。開始符号記憶領域A1は、磁気ストライプSt1に記憶されている情報の先頭を意味する開始符号を格納する。有効データ記憶領域A2は、取引に必要な各種情報(金融機関番号,営業店番号,口座番号,カード種別,暗証番号間違え回数等)を格納する。ダミーデータ記憶領域A3は、例えば、すべて「0」といった意味のない情報を格納する。終了符号記憶領域A4は、磁気ストライプSt1に記憶されている情報の後端を意味する終了符号を格納する。
【0030】
また、カードCa1は、エンボス部Eb1を備えている。エンボス部Eb1は、金融機関番号,営業店番号,口座番号等を、カードCa1の厚み方向に形成された凹凸により表わす。このような構成を有するカードCa1は、使用により汚れが付着したり擦り傷が生じるため、表面の外観が変化し得る。
【0031】
図4は、図2に示すカード処理機構の詳細構成を示す説明図である。カード処理機構14は、カード処理制御部140と、記憶部141と、磁気読み取りヘッド147と、読み取り情報変換部142と、書き込み情報変換部143と、磁気書き込みヘッド148と、カード搬送部144と、イメージ読取部145と、通信部146とを備えている。
【0032】
カード処理制御部140は、記憶部141,読み取り情報変換部142,書き込み情報変換部143,カード搬送部144,イメージ読取部145,及び通信部146とそれぞれ接続されており、各機能部を制御する。
【0033】
磁気読み取りヘッド147は、カードCa1の磁気ストライプSt1から出力される磁気に基づき電圧信号を出力する。読み取り情報変換部142は、磁気読み取りヘッド147により読み取られた磁気情報、すなわち、磁気読み取りヘッド147から出力される電圧の変化を、電圧波形データから、パルス波形データ,ビットデータ,キャラクタデータへと順番に変換する。書き込み情報変換部143は、カード処理制御部140から出力されるキャラクタデータを、磁気書き込みヘッド148に供給する電流の制御データに変換する。磁気書き込みヘッド148は、供給される電流に応じて、カードCa1の磁気ストライプSt1に磁気情報を書き込む。
【0034】
カード搬送部144は、図示しない搬送用モータ及び搬送用ベルトを有し、ATM100に挿入されたカードCa1をカード処理機構14内部に搬送し、また、カード処理機構14内部から外部へとカードCa1を排出する。イメージ読取部145は、カードCa1の表面(表面及び裏面)を撮像して、画像データを取得する。通信部146は、図2に示す制御部12と、カード処理制御部140との間におけるデータのやりとりを制御する。
【0035】
図2に示す回線接続部18は、ホストコンピュータ200との接続するための回線(例えば、専用線)を終端し、ATM100とホストコンピュータ200との間のデータのやりとりを制御する。明細票処理機構19は、取引結果(取引額や残高等)を専用の帳票(明細票)に印字して外部へと排出する。パターン認識処理部20は、2つの画像を比較して画像同士が一致するか否かを判定する。音声案内ガイダンス部21は、図示しないスピーカーを備え、カードの挿入や暗証番号の入力等を促すガイダンスを出力する。
【0036】
図2に示すように、ホストコンピュータ200は、制御部220と、回線接続部280と、記憶部230とを備えている。
【0037】
制御部220は、ホストコンピュータ200全体を制御する機能部であり、CPUとプログラムやデータを記憶するメモリとを有し、CPUがメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各種処理・取引の制御を行う。制御部220は、口座情報ファイル制御部221と、カード情報記憶テーブル制御部222とを備えている。口座情報ファイル制御部221は、後述する口座情報ファイル234の作成,更新,削除等を実行する。カード情報記憶テーブル制御部222は、後述するカード情報記憶テーブル236の作成,更新,削除等を実行する。回線接続部280は、ATM100との接続するための回線(例えば、専用線)を終端し、ホストコンピュータ200とATM100との間のデータのやりとりを制御する。
【0038】
記憶部230は、口座情報ファイル234と、カード情報記憶テーブル236とを記憶している。口座情報ファイル234は、口座毎に設けられたファイルであり、各口座に関わる情報(利用者名,暗証番号,取引履歴,残高など)を記録する。カード情報記憶テーブル236は、発行済みのカードに関する情報を記録するテーブルである。
【0039】
図5は、図2に示すカード情報記憶テーブルの詳細を模式的に示す説明図である。カード情報記憶テーブル236は、各口座ごとに、営業店番号,口座番号,カード表面画像データ,取引関連情報を記録するエントリを有する。図5では、エントリE1,E2,E3,E4の各エントリの詳細を表わしている。
【0040】
エントリE1では、営業店番号「001」,口座番号「0000001」,カード表面画像データf1,取引関連情報が記録されている。同様に、エントリE2では、営業店番号「001」,口座番号「0000002」,カード表面画像データf2,取引関連情報が、エントリE3では、営業店番号「001」,口座番号「0000003」,カード表面画像データf3,取引関連情報が、エントリE4では、営業店番号「002」,口座番号「0000001」,カード表面画像データf4,取引関連情報が、それぞれ記録されている。なお、取引関連情報とは、図3に示す有効データ記憶領域A2及びダミーデータ記憶領域A3に格納されている情報を示す。
【0041】
カード表面画像データf1〜f4は、各口座について、後述する取引処理において撮像して得られたカードの表面画像を表わす。なお、図5では、図3と同様に、カードのおもて面の画像が記憶されているが、おもて面の画像に代えて、カードの裏面の画像を記録することもできる。図5に示すように、カード表面画像データf1の表わす画像には、カード上の汚れd1も記録されている。同様に、他のカード表面画像データf2〜f4の表わす画像にも、それぞれ汚れや擦り傷が記録されている。
【0042】
自動取引処理システム300では、後述の取引処理を実行することにより、経年劣化や、カードの損傷等により、磁気ストライプから情報が読み取れない場合にも、真の利用者によるカードを用いた取引を実現する。
【0043】
前述の磁気ストライプSt1は、請求項における記録媒体に相当する。また、磁気読み取りヘッド147,読み取り情報変換部142,及びカード処理制御部140は、請求項における読み出し判定部に相当する。また、イメージ読取部145は請求項における表面画像取得部に、カード情報記憶テーブル236は請求項における表面画像記憶部及び取引関連情報記憶部に、制御部12及びカード情報記憶テーブル制御部222は請求項における表面画像書込み部に、カード処理制御部140は請求項における一致判定部,取引可否判定部,及び記憶指示部に、制御部12,書き込み情報変換部143,及び磁気書き込みヘッド148は請求項における取引関連情報書き込み部に、それぞれ相当する。
【0044】
A2.取引処理:
図6は、本実施例におけるATM側の取引処理の手順を示す第1のフローチャートである。図7は、本実施例におけるATM側の取引処理の手順を示す第2のフローチャートである。図8は、本実施例におけるATM側の取引処理の手順を示す第3のフローチャートである。
【0045】
利用者がATM100において図3に示すカードCa1を挿入して暗証番号を入力し、利用者操作部13から現金引き出しや預け入れ等の取引メニューを選択すると、自動取引処理システム300において取引処理が開始される。
【0046】
カード搬送部144は挿入されたカードCa1をカード処理機構14内部に搬送し、カード処理制御部140は、磁気読み取りヘッド147及び読み取り情報変換部142を制御して、磁気ストライプSt1内の情報を読み取る(ステップS100)。
【0047】
イメージ読取部145は、挿入されたカードCa1の表面を撮像して画像データを取得し、記憶部141に格納する(ステップS105)。カード処理制御部140は、磁気ストライプSt1内の情報を正常に読み取れたか否かを判定する(ステップS110)。経年劣化や磁気ストライプSt1部分の損傷等により、情報を正常に読み取れなかった場合(ステップS105:NO)には、カード処理制御部140は、ステップS105において得た画像データのうち、エンボス部Eb1の画像データ(表面の画像データの表わす画像)に基づき、金融機関番号,営業店番号,口座番号を抽出する(ステップS115)。かかる抽出は、公知の文字認識処理により実現できる。
【0048】
カード処理制御部140は、ステップS115において抽出された金融機関番号に基づき、カードCa1の発行機関が、自動取引処理システム300を有する自己の金融機関であるか否か(すなわち、自己の金融機関の発行したカードであるか否か)を判定する(ステップS120)。自己の金融機関であると判定された場合には(ステップS120:YES)、カード表面画像比較処理が実行される(ステップS130)。
【0049】
図9は、本実施例のカード表面画像比較処理の手順を示すフローチャートである。カード処理制御部140は、該当する口座の取引関連情報及びカード表面画像の送信を、制御部12及び回線接続部18を介してホストコンピュータ200に要求する(ステップS305)。このとき、ステップS115で抽出した営業店番号及び口座番号を併せてホストコンピュータ200に送信する。
【0050】
後述するように、ホストコンピュータ200では、ステップS305の送信要求を受信すると、該当口座の取引関連情報及びカード表面画像を、カード情報記憶テーブル236から読み出してATM100に送信する。
【0051】
ステップS305の後、カード処理制御部140は、ホストコンピュータ200から取引関連情報及びカード表面画像を受信するまで待機し(ステップS310)、取引関連情報及びカード表面画像を受信すると、取引関連情報を記憶部141に格納すると共に、ステップS105で得られたカード表面画像と、ホストコンピュータ200から受信したカード表面画像とを比較する(ステップS315)。
【0052】
図10は、ステップS315における画像比較の方法を模式的に示す説明図である。本実施例の画像比較では、図10に示すように、カードCa1の表面画像を、縦10個(a列〜j列),横10個(第1行〜第10行)の合計100個の領域に分割し、それぞれの領域において、画像同士が一致するか否かを判定する。なお、各領域の一致は、公知の様々な方法を採用し得る。例えば、各領域に含まれる画素同士の値(画素値)の差分を求めて合算し、差分の合計が所定のしきい値以下の場合に一致すると判定し、差分の合計が所定のしきい値よりも大きい場合に一致しないと判定する方法を採用することができる。
【0053】
図6に示すように、カード表面画像比較処理が終了すると、カード処理制御部140は、ステップS130において比較した両画像が一致するか否かを判定する(ステップS135)。具体的には、図10に示す100個の領域のうち、95%以上の領域において一致する(すなわち、95個以上の領域で一致する)場合には、両画像同士は一致すると判定し、95%未満(すなわち、94個以下の領域で一致する)場合には、両画像は一致しないと判定する。
【0054】
ステップS135において、両画像が一致しないと判定された場合(ステップS135:NO)、及び前述のステップS120において、自己の金融機関でないと判定された場合には(ステップS120:NO)、カードCa1を返却して取引処理は終了する。両画像が一致しない場合には、カードの偽造が疑われるため、取引を実行せずに終了する。また、自己の金融機関でない場合には、そもそもホストコンピュータ200に口座情報ファイル234やカード情報記憶テーブル236のエントリが存在しないため、取引を実行できないので、取引を実行せずに終了する。
【0055】
ステップS135において、画像が一致すると判定された場合には、図7に示すように、制御部12は、利用者操作部13,通帳機構15,紙幣入出金機構16,硬貨入出金機構17,音声案内ガイダンス部21を制御して、取引前処理を実行する(ステップS140)。取引前処理とは、例えば、利用者による暗証番号の入力処理や、利用者に対して入金や通帳の挿入や金額の指定を促すガイダンスを出力する処理や、入金された紙幣や硬貨の真贋判定などを意味する。
【0056】
取引前処理が完了すると、制御部12は、ホストコンピュータ200との間において取引電文の送受信を行う(ステップS145)。この取引電文には、例えば、カードから取得した金融機関番号や口座番号、取引前処理において入力された指定金額や、入金確認された金額などが含まれる。制御部12は、ステップS145において送受信される取引電文に基づき、取引が成立したか否かを判定する(ステップS150)。
【0057】
取引が成立したと判定した場合(ステップS150:YES)には、カード処理制御部140は、カードCa1の磁気ストライプSt1に取引関連情報(すなわち、有効データ及びダミーデータ)を書き込む(ステップS155)。なお、開始符号及び終了符号についても、ステップS110において正常に読み取れなかったと判定された場合には、取引関連情報に加えて、これら符号を書き込む。なお、書き込む取引関連情報は、図9に示すカード表面画像比較処理において、ホストコンピュータ200からATM100に送信され記憶部141に格納されている情報を用いる。このように、ホストコンピュータ200に記憶されている取引関連情報(有効データ及びダミーデータ)が磁気ストライプSt1に書き込まれるので、次回において正常に読み取れる可能性が高くなる。なお、カードCa1の損傷により、有効データ記憶領域A2が損傷して書き込めないが、ダミーデータ記憶領域A3は損傷しておらず書き込み可能である場合には、有効データ記憶領域A2の内容を、ダミーデータ記憶領域A3に書き込む構成も採用できる。
【0058】
図7に示すように、制御部12は、ステップS105において新たに得られた画像(裏面の画像)の画像データを添付して、ホストコンピュータ200にカード情報記憶テーブル236の更新要求を送信する(ステップS160)。後述するように、ホストコンピュータ200では、カード情報記憶テーブル236の更新要求に基づき、カード情報記憶テーブル236を更新する。
【0059】
制御部12は、利用者操作部13,カード処理機構14,通帳機構15,紙幣入出金機構16,硬貨入出金機構17,音声案内ガイダンス部21を制御して取引成立後処理を実行する(ステップS165)。取引成立後処理とは、例えば、紙幣や硬貨の排出や、明細票の発行や、カードCa1の排出や、終了ガイダンスの表示や音声出力などを意味する。
【0060】
前述のステップS150において、口座の残高不足等により取引が成立しなかったと判定された場合(ステップS150:NO)、制御部12は、カードCa1の磁気ストライプSt1に取引関連情報を書き込み(ステップS170)、ホストコンピュータ200にカード情報記憶テーブル236の更新要求を送信する(ステップS175)。ステップS170は、ステップS155と同じ処理であり、ステップS175は、ステップS160と同じ処理である。制御部12は、利用者操作部13,カード処理機構14,通帳機構15,紙幣入出金機構16,硬貨入出金機構17,音声案内ガイダンス部21を制御して取引不成立後処理を実行する(ステップS180)。取引不成立後処理とは、例えば、入金された紙幣の返却や、取引が成立しなかった旨のガイダンスの表示や音声出力などを意味する。
【0061】
図6に示すステップS110において、磁気ストライプSt1から情報を正常に読み取れたと判定された場合(ステップS110:YES)、図8に示すように、磁気ストライプSt1から情報を正常に読み取れない場合と同様に、上述したステップS115〜ステップS180の処理が実行される。ただし、ステップS155及びステップS170の処理は省略される。これは、磁気ストライプSt1から情報を正常に読み取れているので、取引関連情報を磁気ストライプSt1に上書きする必要がないからである。
【0062】
図11は、本実施例におけるホストコンピュータ側の取引処理の手順を示すフローチャートである。図2に示す制御部220は、ATM100から取引関連情報及びカード表面画像の画像データの送信要求を受信するまで待機している(ステップS505)。制御部220は、送信要求を受信すると、受信した送信要求に含まれる営業店番号及び口座番号に基づき、カード情報記憶テーブル制御部222を制御してカード情報記憶テーブル236から該当する口座のカード表面画像データ及び取引関連情報を読み出して、ATM100に送信する(ステップS510)。
【0063】
その後、ATM100との間で取引電文を送受信する(ステップS515)。この処理は、前述のATM100におけるステップS145に対応するものである。取引電文の送受信の後、制御部220は、ATM100からカード情報記憶テーブル更新要求を受信するまで待機し(ステップS520)、カード情報記憶テーブル更新要求を受信すると、カード情報記憶テーブル制御部222を制御してカード情報記憶テーブル236を更新する(ステップS525)。
【0064】
図12は、図11のステップS525が実行された結果、更新されたカード情報記憶テーブルを示す説明図である。図12では、図5に示すエントリE1の口座について実行された取引処理により更新された後のカード情報記憶テーブル236を示している。
【0065】
図12に示すように、エントリE1のカード表面画像データとして、図5に示すカード表面画像データf1に代えて、カード表面画像データf1’が記録されている。カード表面画像データf1’の表わす画像では、カード表面画像データf1の表わす画像と異なり、擦り傷d2が現れている。これは、カード情報記憶テーブル236が前回更新されてから、今回の取引処理を実行するまでの間において、カードCa1に擦り傷が加わったためである。本実施例では、この程度の擦り傷の相違であれば、カード表面画像データf1と比較した際に一致すると判定される。
【0066】
以上説明したように、第1実施例の自動取引処理システム300では、磁気ストライプSt1から情報を正常に読み取れない場合であっても、今回の取引処理において新たに取得されたカードCa1の表面画像と、ホストコンピュータ200において既に格納されているカード表面画像とを比較するので、偽造されたカードであるか否かの判定を正確に行うことができる。したがって、磁気ストライプSt1から情報を正常に読み取れない場合であっても、カードCa1を用いた取引を可能とすることができる。加えて、磁気ストライプSt1から情報を正常に読み取れない場合には、ホストコンピュータ200から取引関連情報を取得して、磁気ストライプSt1に書き込むので、次回取引時において、磁気ストライプSt1から情報を正常に読み取ることができる可能性を高めることができる。
【0067】
また、カードCa1の表面は、長期間の使用によって少しずつ汚れや擦り傷が生じることとなるが、かかる汚れや擦り傷は、他のカード表面における汚れや擦り傷と異なる可能性が高い。したがって、カード表面の汚れや擦り傷はカード固有の識別情報となり得る。本実施例は、このようなカード表面の汚れや擦り傷等を含むカード表面画像を用いて認証を行うので、カードの真贋判断を正確に行うことができる。特に、本実施例では、カード表面画像が一致するたびに、ホストコンピュータ200におけるカード情報記憶テーブル236に記録されているカード表面画像(カード表面画像データ)を更新するので、真のカードであるにも関わらず、少しずつ加えられる汚れや擦り傷に基づいて一致しない(すなわち、偽造カードである)と判定されることを抑制できる。その一方、偽造カードでは、汚れや擦り傷が全く異なるので、仮に、エンボス等を一致させ、磁気ストライプSt1の内容を不正にコピーしたカードを用いた場合であっても、一致しないと正確に判定することができる。
【0068】
また、自動取引処理システム300では、カード表面画像データをホストコンピュータ200において記憶しているので、利用者が、他のATMにおいて取引を実行しようとする場合においても、かかるATMにおいて、ホストコンピュータ200からカード表面画像を取得して画像の一致/不一致を判定することができる。したがって、口座のセキュリティを向上させると共に利用者の利便性を向上させることができる。
【0069】
また、カード表面の汚れや擦り傷等をカード固有の識別情報として用いるので、発行するカードごとに表面の模様を異ならせる構成に比べて、カード作成コストを抑制できると共に、発行済みのカードであって特別な模様を有さないカードについても処理対象とできるので、既存システムへの親和性が高い。
【0070】
B.第2実施例:
図13は、第2実施例における画像比較方法を模式的に示す説明図である。第2実施例の自動取引処理システムは、取引処理のステップS315における画像比較方法が異なる点を除き、第1実施例の自動取引処理システム300と同じである。
【0071】
第1実施例では、図10に示すように、100個の各領域の一致度合いを同様に取り扱って画像同士の一致/不一致を判定していたが、第2実施例では、100個の各領域を、一致度合いを優先的に用いる領域と用いない領域とに分けて、画像同士の一致/不一致を判定する。具体的には、カードCa1の周縁部を含む領域AR1の一致度合いを判定において優先的に用い、他の領域AR2の一致度合いを優先的に用いない。図13に示すように、領域AR1は、カードCa1の周縁を含む領域(a列〜j列及び第1行〜第10行により構成される領域)である。領域AR2は、b列〜i列及び第2行〜第9行により構成される領域である。
【0072】
領域AR1の一致度合いを判定において優先的に用いるとは、具体的には、領域AR1に含まれる各領域において、一致するか否かの判定に用いられるしきい値を低く設定することを意味する。したがって、例えば、新たに取得された画像と、カード情報記憶テーブル236に既に登録されている画像とで、領域AR1において僅かな相違がある場合に一致しないと判定される可能性が高くなる。これに対し、領域AR2の一致度合いを判定において優先的に用いないとは、領域AR2に含まれる各領域において、一致するか否かの判定に用いられるしきい値を高く設定することを意味する。したがって、例えば、新たに取得された画像と、カード情報記憶テーブル236に既に登録されている画像とで、領域AR2において僅かな相違がある場合に一致すると判定される可能性は高くなる。
【0073】
このように、領域AR1と領域AR2とで、画像一致判定の際の取り扱いの優先度を異ならせているのは、以下の理由による。カードCa1の周縁部を含む領域AR1は、汚れが付着したり擦り傷が生じたりし易いため、カード固有の識別情報となり易い。したがって、かかる領域AR1における画像の相違を優先的に用いて判定することにより、カードの真贋判定をより正確に行うことができるからである。
【0074】
以上の構成を有する第2実施例の自動取引処理システムは、第1実施例の自動取引処理システム300と同様な効果を有する。加えて、汚れが付着したり擦り傷が生じたりし易いためにカード固有の識別情報となり易い領域AR1の一致度合いを、画像同士の一致/不一致の判定において優先的に用いるので、カードの真贋判定をより正確に行うことができる。
【0075】
C.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0076】
C1.変形例1:
第2実施例では、新たに撮像して得られた画像と既に取得されている画像とを比較する際に、一致度合いを優先的に用いる領域は、カードCa1の周縁部を含む領域AR1であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、エンボス部Eb1が配置されている領域や、磁気ストライプSt1が配置されている領域など、磨耗し易い(磨耗性の高い)任意の領域を採用することができる。このようにすることで、磨耗してカード固有の識別情報となり易い領域の一致度合いを優先的に用いるので、両画像が一致するか否かの判定を正確に行うことができる。
【0077】
また、第2実施例では、領域AR1と領域AR2とで画像一致判定の際の取り扱いの優先度を異ならせる方法として、各領域において一致するか否かの判定に用いるしきい値の高低により異ならせていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、領域AR1についてのみ画像の一致を判定し、領域AR2については画像の一致を判定しないようにすることもできる。すなわち、一般には、既存表面画像及び取得表面画像における高摩耗性画像同士の一致度合いと、低摩耗性画像同士の一致度合いのうち、高摩耗性画像同士の一致度合いを優先的に用いて判定する一致判定部を、本発明の自動取引システム及び自動取引装置に採用することができる。なお、領域AR1のみ画像の一致を判定する構成では、ステップS105において、領域AR1のみを撮像して画像データを取得することもできる。すなわち、一般には、カードの表面の少なくとも一部の画像である表面画像を取得する表面画像取得部を、本発明の自動取引システム及び自動取引装置に採用することができる。
【0078】
C2.変形例2:
第2実施例では、新たに撮像して得られた画像と既に取得されている画像とを比較する際に優先的に用いたのは、高摩耗性の領域である領域AR1の画像同士の一致度合いであったが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、低摩耗性の領域である領域AR2同士の一致度合いを、画像一致判定において優先的に用いることもできる。高摩耗性の領域は、磨耗し易く表面の画像が変化し易いため、真のカードであるにも関わらず偽のカードであると誤って判定されるおそれがある。そこで、低摩耗性の領域である領域AR2の一致度合いを画像一致判定において優先的に用いることにより、かかる誤判定を抑制できる。
【0079】
C3.変形例3:
各実施例では、カード表面画像データをホストコンピュータ200に記憶していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ATM100が有する図示しない記憶装置や、ATM100のカード処理機構14が備える記憶部141に記憶させる構成も採用することができる。このような構成により、ATM100とホストコンピュータ200との間の電文のやりとりを減らすことができ、スループットの向上や、通信料金の低減を実現できる。また、かかる構成を採用することにより、既存システムにおけるホストコンピュータ200のプログラムの変更が小さくて済むため、ホストコンピュータ200のプログラム変更に要するコストの上昇を抑制できる。また、例えば、営業店ごとに、複数のATM100とネットワークを介して接続されたストレージ装置を配置し、かかるストレージ装置にカード表面画像データを記憶する構成も採用することができる。
【0080】
C4.変形例4:
各実施例では、カードCa1は、磁気ストライプSt1を有していたが、磁気ストライプSt1に代えて、または、磁気ストライプSt1に加えて、IC(Integrated Circuit)チップを備える構成とすることもできる。ICチップを備える構成では、ICチップ内に取引関連情報が記録されており、かかるICチップが損傷した場合であっても、カード表面画像を用いて、取引可否を正確に判定することができる。
【0081】
C5.変形例5:
各実施例における取引処理の一部の処理を省略することもできる。具体的には、例えば、すべての金融機関の自動取引システムにおいて、上記実施例の取引処理を実行可能であれば、カードCa1の発行機関が自動取引処理システム300を有する自己の金融機関であるか否かの判定処理(ステップS120)を省略することもできる。
【0082】
また、例えば、カードCa1の磁気ストライプSt1に取引関連情報(すなわち、有効データ及びダミーデータ)を書き込む処理(ステップS155,170)を省略することもできる。この構成では、磁気ストライプSt1内の情報を正常に読み取れなかったと判定されたカードについては、次回以降の取引処理においても、同様に正常に読み取れないと判定される可能性がある。しかしながら、この場合であっても、上述したように、カード表面画像により真のカードであるか否かが判定されるので、真の利用者によるカードを用いた取引を可能とすることができる。
【0083】
また、例えば、画像のエンボス部から金融機関番号等を抽出する処理(ステップS115の処理)を省略することもできる。この場合、利用者に対して金融機関番号等を利用者操作部13から入力させるように、ガイダンスを表示・音声出力する構成を採用することもできる。
【0084】
また、例えば、磁気ストライプSt1内の情報を正常に読み取れた場合には(ステップS110:YES)、カード表面画像比較処理(ステップS130)、及びカード表面画像が一致するか否かの判定処理(ステップS135)を省略することもできる。
【0085】
また、例えば、磁気ストライプSt1内の情報を正常に読み取れなかった場合には(ステップS110:NO)、ステップS160,S175を省略し、新たに取得された画像データによるカード情報記憶テーブル236の更新処理(ステップS525)を省略することもできる。
【0086】
C6.変形例6:
各実施例では、ホストコンピュータ200は、ステップS525において、ATM100から受信したカード表面画像データを、既にカード情報記憶テーブル236に格納されているカード表面画像データに上書きしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。既に格納されているカード表面画像に加えて、新たに受信したカード表面画像を記憶することもできる。この構成では、ステップS510において、前回よりも前に記憶させたカード表面画像をATM100に送信することもできる。
【0087】
C7.変形例7:
各実施例では、カード情報記憶テーブル236に記録される情報は、営業店番号,口座番号,カード表面画像データ,取引関連情報であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これらの情報に加えて、口座区分(普通預金口座/当座預金口座)を記録することもできる。また、例えば、営業店番号,口座番号,カード表面画像データのみ記録し、取引関連情報は、カード表面画像データと異なるテーブルに記録することもできる。
【0088】
C8.変形例8:
各実施例では、カード表面画像が一致するか否かの判定は、磁気ストライプSt1内の情報を正常に読み取れた場合(図6のステップS135)と、正常に読み取れない場合(図8のステップS135)とで、同じ基準で判断していたが、これに代えて、互いに異なる基準で判定することもできる。具体的には、例えば、磁気ストライプSt1内の情報を正常に読み取れた場合には、図10に示すように95%以上の一致率の場合に一致すると判定し、正常に読み取れない場合には、99%以上の一致率の場合に一致すると判定することもできる。
【0089】
C9.変形例9:
各実施例で用いられるカードは、キャッシュカードであったが、キャッシュカードに代えて、クレジットカードや、両替機用の専用カードなど、取引関連情報を記憶し取引に用いられる任意のカードを採用することができる。
【符号の説明】
【0090】
300…自動取引処理システム
100…ATM
200…ホストコンピュータ
NET…ネットワーク
12…制御部
13…利用者操作部
14…カード処理機構
15…通帳機構
16…紙幣入出金機構
17…硬貨入出金機構
18…回線接続部
19…明細票処理機構
20…パターン認識処理部
21…音声案内ガイダンス部
140…カード処理制御部
141…記憶部
142…読み取り情報変換部
143…書き込み情報変換部
144…カード搬送部
145…イメージ読取部
146…通信部
147…磁気読み取りヘッド
148…磁気書き込みヘッド
220…制御部
221…口座情報ファイル制御部
222…カード情報記憶テーブル制御部
230…記憶部
234…口座情報ファイル
236…カード情報記憶テーブル
280…回線接続部
St1…磁気ストライプ
A1…開始符号記憶領域
A2…有効データ記憶領域
A3…ダミーデータ記憶領域
A4…終了符号記憶領域
AR1,AR2…領域
Ca1…カード
Eb1…エンボス部
St1…磁気ストライプ
f1〜f4…カード表面画像データ
E1〜E4…エントリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動取引システムであって、
カード識別情報と取引に関する情報である取引関連情報とを記憶する記憶媒体を有するカードから、前記取引関連情報を正常に読み出すことができるか否かを判定する読み出し判定部と、
前記カードを撮像して、前記カードの表面の少なくとも一部の画像である表面画像を取得する表面画像取得部と、
前記表面画像を記憶する表面画像記憶部と、
前記取引関連情報を正常に読み出すことができると判定された場合に、前記表面画像取得部により取得された前記表面画像である取得表面画像と前記カード識別情報とを互いに対応付けて前記表面画像記憶部に書き込む表面画像書込み部と、
前記取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、前記カード識別情報に基づき、前記表面画像記憶部から前記カードについて既に記録されている前記表面画像である既存表面画像を読み出すと共に、前記読み出した既存表面画像と前記取得表面画像とが一致するか否かを判定する一致判定部と、
前記既存表面画像と前記取得表面画像とが一致すると判定された場合に前記カードを用いた取引が可能であると判定し、一致しないと判定された場合に前記カードを用いた取引が可能でないと判定する取引可否判定部と、
を備える自動取引システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動取引システムにおいて、さらに、
前記取引関連情報と同一の情報を、前記カード識別情報と関連付けて記憶する取引関連情報記憶部と、
前記取引関連情報記憶部から前記取引関連情報を読み出して前記記憶媒体に書き込む取引関連情報書込み部と、
を備え、
前記取引関連情報書込み部は、前記カードについて前記取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定され、かつ、前記カードを用いた取引が可能であると判定された場合に、前記取引関連情報記憶部から前記カードに対応付けられている前記取引関連情報を読み出して、前記カードの前記記憶媒体に書き込む、自動取引システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の自動取引システムにおいて、
前記表面画像は、前記カードにおいて磨耗性の高い部位である高磨耗性部の画像を含む、自動取引システム。
【請求項4】
請求項3に記載の自動取引システムにおいて、
前記表面画像は、前記高摩耗性部の表面画像である高摩耗性部画像と、前記カードにおいて磨耗性の低い部位である低磨耗性部の表面画像である低摩耗性部画像と、を含み、
前記一致判定部は、前記既存表面画像と前記取得表面画像とが一致するか否かを判定する際に、前記既存表面画像及び前記取得表面画像における前記高磨耗性部画像同士の一致度合いと、前記既存表面画像及び前記取得表面画像における前記低摩耗性部画像同士の一致度合いとのうち、前記高磨耗性部画像同士の一致度合いを優先的に用いて判定する、自動取引システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の自動取引システムにおいて、
前記高摩耗性部は、前記カードの周縁部である、自動取引システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の自動取引システムにおいて、さらに、
前記表面画像記憶部を有するホストコンピュータと、
前記カード受付部と、前記読み出し判定部と、前記表面画像取得部と、前記一致判定部と、前記取引可否判定部と、を有し、前記ホストコンピュータとネットワークを介して接続された自動取引装置と、
を備える、自動取引システム。
【請求項7】
記憶装置を有するホストコンピュータとネットワークを介して接続された自動取引装置であって、
カード識別情報と取引に関する情報である取引関連情報とを記憶する記憶媒体を有するカードから、前記取引関連情報を正常に読み出すことができるか否かを判定する読み出し判定部と、
前記カードを撮像して、前記カードの表面の少なくとも一部の画像である表面画像を取得する表面画像取得部と、
前記取引関連情報を正常に読み出すことができると判定された場合に、前記表面画像取得部により取得された前記表面画像である取得表面画像と前記カード識別情報とを前記ホストコンピュータに送信して、前記取得表面画像と前記カード識別情報とを互いに対応付けて前記記憶装置に記憶させる記憶指示部と、
前記取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、前記カード識別情報に基づき、前記記憶装置から前記カードについて既に記録されている前記表面画像である既存表面画像を読み出すと共に、前記読み出した既存表面画像と前記取得表面画像とが一致するか否かを判定する一致判定部と、
前記既存表面画像と前記取得表面画像とが一致すると判定された場合に前記カードを用いた取引が可能であると判定し、一致しないと判定された場合に前記カードを用いた取引が可能でないと判定する取引可否判定部と、
を備える自動取引装置。
【請求項8】
記憶装置を有するホストコンピュータとネットワークを介して接続された自動取引装置を用いて、カード識別情報と取引に関する情報である取引関連情報とを記憶する記憶媒体を有するカードを用いた取引が可能であるか否かを判定するための方法であって、
(a)前記自動取引装置において、前記カードから前記取引関連情報を正常に読み出すことができるか否かを判定する工程と、
(b)前記自動取引装置において、前記カードを撮像して、前記カードの表面の少なくとも一部の画像である表面画像を取得する工程と、
(c)前記自動取引装置において、前記取引関連情報を正常に読み出すことができると判定された場合に、前記工程(b)により取得された前記表面画像である取得表面画像と前記カード識別情報とを前記ホストコンピュータに送信して、前記取得表面画像と前記カード識別情報とを互いに対応付けて前記記憶装置に記憶させる工程と、
(d)前記自動取引装置において、前記取引関連情報を正常に読み出すことができないと判定された場合に、前記カード識別情報に基づき、前記記憶装置から前記カードについて既に記録されている前記表面画像である既存表面画像を読み出すと共に、前記読み出した既存表面画像と前記取得表面画像とが一致するか否かを判定する工程と、
(e)前記既存表面画像と前記取得表面画像とが一致すると判定された場合に前記カードを用いた取引が可能であると判定し、一致しないと判定された場合に前記カードを用いた取引が可能でないと判定する工程と、
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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