説明

自動取引装置

【課題】予め生体情報を登録した顧客が行う取引であっても、その顧客の意思に反して生体情報が取得されることを防止できるようにする。
【解決手段】カードリーダ部がカードに記録された生体認証の可否を示す生体認証可否情報および生体情報を読取り、その生体認証可否情報が生体認証可を示す場合、生体認証の許可または不許可を顧客に選択させる生体認証許可確認画面を表示するとともにその選択操作を受付ける。顧客操作表示部が生体認証を許可する操作を受付けたとき、生体情報読取部で顧客の生体情報を読取り、その生体情報とカードリーダ部がカードから読取った生体情報とを照合する生体認証による本人確認を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行等の金融機関に設置され、顧客の操作を受付けて各種取引を行う自動取引装置に関し、特に暗証番号や生体情報を使用して本人確認を行う自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動取引装置は、現金の支払等の取引を行う際に、予め金融機関に登録された暗証番号と顧客の操作により入力された暗証番号とを照合して行う本人確認に替えまたは加え、さらに安全性を向上させるために登録された生体情報と生体情報読取装置で読取った顧客の生体情報とを照合して本人確認を行うようにしている。この生体情報を網膜(例えば、特許文献1参照)や声紋、虹彩(例えば、特許文献2参照)、その他指紋、指や掌の静脈パターン等とし、自動取引装置の前面に備えたカメラや顧客操作画面の近傍に備えたセンサ等の生体情報読取装置で顧客の生体情報を読取り、その生体情報を利用して本人確認を行うことで暗証番号の窃取や本人になりすまし等の第三者の不正行為を防止するようにし、安全性を向上させている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
このように生体情報を利用した本人確認を行うことで安全性を確保できた取引においてはより高額な取引を行うことを可能にし、一方、生体情報を利用しない暗証番号を利用した取引においては取扱うことができる金額を所定の金額に制限した取引を行うようにしている。
なお、顧客の網膜や虹彩等の生体情報を取得するカメラは、自動取引装置の前面に外部から視認できないハーフミラーや可視光カット板で仕切られた内部に設けたものや紙幣入出金口のシャッタに固着させ、顧客や紙幣入出金口の内部を撮影するようにしているものもある(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】実用新案出願公開 平3−101911号公報(図1)
【特許文献2】特許出願公告 平5−18147号公報(2頁、図1)
【特許文献3】特開平9−198510号公報(段落「0014」〜段落「0021」、図1)
【特許文献4】特開2006−58939号公報(段落「0035」〜段落「0038」、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、自動取引装置で取引を行う顧客は取得された生体情報が個人を特定するための個人情報として他の目的でも使用される可能性があるという不信感を持ってしまうという問題がある。特に、顧客は自動取引装置の内部に備えられた生体情報を読取るカメラが作動していることを知ることができず、無断で生体情報が取得されプライバシーが侵されていると感じることがあるという問題がある。
【0005】
また、生体情報を登録した顧客が行う取引では小額な取引であっても必ず生体情報が必要になってしまうため、顧客が生体情報を使用しない暗証番号による本人確認を選択することができず生体情報が取得されることを極力避けるようにすることができないという問題もある。
さらに、生体情報を予め登録した取引先である金融機関以外の提携金融機関の自動取引装置を利用する際に、顧客が生体情報を取得されることを拒否する手段がないという問題もある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明は、顧客が本人であることを確認して取引を行う自動取引装置において、挿入されたカードから生体認証の可否を示す生体認証可否情報を読取るとともに該生体認証可否情報が生体認証可を示す場合、カードに記録された生体情報を読取るカードリーダ部と、前記生体認証可否情報が生体認証可を示す場合、生体認証の許可または不許可を顧客に選択させる生体認証許可確認画面を表示するとともにその選択操作を受付ける顧客操作表示部と、前記顧客操作表示部が生体認証を許可する操作を受付けたとき、顧客の生体情報を読取る生体情報読取部とを設け、前記生体情報読取部が読取った生体情報と前記カードリーダ部がカードから読取った生体情報とを照合する生体認証による本人確認を行うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このようにした本発明は、予め生体情報を登録した顧客であっても、無断で生体情報が取得されることを防止することができ、自動取引装置を利用する顧客はプライバシーが侵されていると感じることがなくなるとともに生体情報が取得されることを避けることができるという効果が得られる。
また、生体情報が取得されることを希望しない顧客に生体情報が取得されることを拒否する手段を提供することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明による自動取引装置の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
まず、第1の実施例について説明する。
図2は第1の実施例における自動取引装置の構成を示すブロック図である。
図2において、1は自動取引装置であり、銀行等の金融機関の店舗またはコンビニエンスストア等の店舗等に設置されるものである。この自動取引装置1は、専用線等の通信回線2に通信可能に接続され、顧客が金融機関に開設した口座の支店番号、口座科目、口座番号、および後述する生体認証可否情報等の口座情報が記録された磁気ストライプやICチップ付きのカードの挿入を受付けて現金引出し、現金預け入れ取引や振込み取引等の取引を行うものである。
【0011】
また、自動取引装置1は、通信回線2を介して図示しないホストコンピュータと相互に通信可能に接続され、ホストコンピュータとの間で現金引出し、現金預け入れ、振込み等の取引電文の送受信を行い顧客の取引を成立させるか否かを判断するとともにその取引の処理を行う。
11は顧客操作表示部であり、タッチパネル等の操作部および液晶ディスプレイ等の表示部で構成されたものである。この顧客操作表示部11はCRTディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示部上にタッチパネルを配置し顧客が入力操作等を行なうものであり、また、取引選択画面、顧客が選択した取引に対して顧客の入力操作等の誘導を行なう画面および入力された情報等を表示するものである。
【0012】
12はカードリーダ部であり、カード読取り書込み機構を備えたものである。このカードリーダ部12は、顧客がカード挿入口に挿入したキャッシュカードの磁気ストライプやICチップ等から口座番号等の口座情報や予め登録した顧客の生体情報等を読取ることができる。口座情報等を読取ったキャッシュカードはカード排出口から排出して顧客に返却することができる。
【0013】
13は入出金部であり、紙幣入出金機および硬貨入出金機で構成されたものである。この入出金部13は現金出金取引や現金入金取引に伴う紙幣や硬貨の入出金処理を行なう。ここで、入金処理とは顧客が紙幣入出金口に入れた紙幣を紙幣入出金機で計数して金庫に収納し、硬貨入出金口に入れた硬貨を硬貨入出金機で計数して金庫に収納することである。また、出金処理とは顧客の操作により指定した金額に相当する紙幣および硬貨をそれぞれ紙幣入出金機および硬貨入出金機の金庫から繰り出して計数し紙幣入出金口および硬貨入出金口に搬送して顧客に払い出すことである。
【0014】
なお、硬貨入出金機を備えない構成であってもよい。
14は生体情報読取部であり、顧客の虹彩等の画像を取得するためのCCD(Charge Coupled Devices)を備えたいわゆるデジタルカメラ(以下、「カメラ」という。)や指紋、手指の静脈パターンを読取るための手指スキャンセンサで構成されたものである。この生体情報読取部14はカメラや手指スキャンセンサで顧客の虹彩、指紋、手指の静脈パターン等の生体情報を取得する。
【0015】
15は近接センサ部であり、超音波センサ等で構成されたものである。この近接センサ部15は自動取引装置1に接近する顧客を検出する。
16は記憶部であり、半導体メモリや磁気ディスク等で構成され情報を記憶し、記憶した情報を読出すことができるものである。この記憶部16には自動取引装置1全体の動作を制御する制御プログラム(ソフトウェア)、顧客操作表示部11に表示する画面データおよび顧客が行う取引に必要な情報等を記憶する。
【0016】
17は制御部であり、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の演算および制御手段等で構成されたものである。この制御部17は顧客操作表示部11、カードリーダ部12、入出金部13、生体情報読取部14、近接センサ部15、記憶部16、および通信回線2を介してホストコンピュータや商品データベースサーバ2等との間で通信を行う図示しない通信部を含めて自動取引装置1全体の動作を記憶部16に格納された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて制御する。
【0017】
また、制御部17は、生体情報読取部14で読取った顧客の生体情報と挿入されたカードから読取った生体情報とを照合して顧客が本人であることを確認することができるものとする。
図3は第1の実施例におけるカメラを搭載した自動取引装置の構成を示す説明図、図4は第1の実施例における手指スキャンセンサを搭載した自動取引装置の構成を示す説明図である。
【0018】
図3において、141は上述したカメラであり、自動取引装置1を操作する顧客3の虹彩を撮影するように自動取引装置1の前面の内部に顧客3に向けて配置されている。また、このカメラ141はいわゆる防犯カメラとして自動取引装置1を操作する顧客を撮影する機能も有するものとする。
142は目隠し板であり、ハーフミラーや可視光カットフィルタ等で構成され、自動取引装置1の内部に配置されたカメラ141を覆うように自動取引装置1の前面に設けられたものである。この目隠し板142により顧客3はカメラ141を視認することができず、またカメラ141は自動取引装置1を操作する顧客の虹彩の画像情報を取得することができるようになっている。
【0019】
図4において、143は手指スキャンセンサであり、自動取引装置1の前面に設けられた顧客操作表示部11の近傍に配置され、顧客3の指紋、手指の静脈パターン等の画像情報を取得することができるものである。この手指スキャンセンサ143は載置された顧客3の指紋、手指の静脈パターン等の画像情報を取得する。
なお、カメラ141および手指スキャンセンサ143は上述した生体情報読取部14が制御するものとし、制御部17の指示を受けた生体情報読取部14の制御により顧客3の生体情報を取得するものとする。
【0020】
上述した構成の作用について説明する。
図1は第1の実施例における取引のフローチャートであり、図中Sで表すステップにしたがって説明する。
なお、以下に説明する各部の動作は、図示しないメモリや磁気ディスク等の記憶手段に格納されたプログラム(ソフトウェア)に基づいて図示しない中央処理装置等の制御手段により制御される。
【0021】
S1a:自動取引装置1の制御部17の指示により近接センサ部15は顧客の接近を待機する。
S2a:自動取引装置1の近接センサ部15が顧客の接近を検知すると制御部17の指示により顧客操作表示部11は通常の取引選択画面を表示する。なお、カメラ141は防犯カメラとして顧客の撮影を開始するようにしてもよい。
【0022】
この取引選択画面は、「いらっしゃいませ。お取引をお選びください。」等の文言および「お引出し」、「お振込み」、「お預入れ」、「残高照会」等の取引選択ボタンで構成されたものである。
S3a:取引選択画面が表示されると顧客操作表示部11はいずれかの取引選択ボタンが押下されることを待機し、顧客は希望する取引に対応する取引選択ボタン、例えば、「お引出し」ボタンを押下するものとする。
【0023】
S4a:顧客操作表示部11が「お引出し」等の取引選択ボタンの押下を検知すると制御部17の指示により顧客操作表示部11は顧客にカードの挿入を促すカード挿入誘導画面を表示する。
S5a:カードリーダ部12はカードの挿入を待機し、顧客はカード挿入誘導画面にしたがって所持しているカードをカードリーダ部12のカード挿入排出口から挿入するものとする。
【0024】
S6a:制御部17の指示によりカードリーダ部12は挿入されたカードの磁気ストライプやICチップ等から口座番号等の口座情報を読取る。この口座情報には顧客の生体情報が登録されているか否か、すなわち生体情報による本人確認(以下、「生体認証」という。)を行うことができるか否かを示す生体認証可否情報が含まれているものとし、制御部17はその情報により、生体認証を行うかPIN(Personal Identification Number:暗証番号)による本人確認を行うかを判定する。
【0025】
ここで、この生体認証可否情報が、生体認証が可能であることを示す情報の場合、生体認証を行うものとして処理をS9aへ移行し、一方、生体認証が不可能であることを示す情報の場合、PINによる本人確認を行うものとして処理をS7aへ移行する。
なお、生体認証可否情報が、生体認証が可能であることを示す情報の場合、カードリーダ部12は挿入されたカードのICチップ等から予め登録された顧客の生体情報(虹彩や指紋、手指の静脈パターン等の画像情報)を読取り、制御部17はその生体情報を記憶部16に記憶させておくものとする。
【0026】
S7a:生体認証が不可能であると判定されるとPINによる本人確認を行うため、制御部17の指示により顧客操作表示部11は顧客のPINの入力を受付けるPIN入力画面を表示する。このPIN入力画面には「1」から「9」および「0」ボタン等で構成される操作ボタンを表示する。顧客操作表示部11がPIN入力画面を表示すると顧客は表示された操作ボタンを押下してPINを入力する。
【0027】
顧客がPINを入力すると制御部17は通信回線2を介してそのPINをカードから読取った口座情報等とともに図示しないホストコンピュータへ送信する。
ホストコンピュータは受信した顧客の口座番号等の口座情報に基づいて図示しない顧客データベースを検索してPINを抽出し、そのPINと自動取引装置1から受信したPINとを比較して一致するか否かの照合、すなわち、PINによる本人確認を行う。ホストコンピュータは通信部を介してその結果を自動取引装置1へ送信する。
【0028】
S8a:PINによる本人確認ができると自動取引装置1の制御部17は予め決められた金額を超えない取引、すなわち低額取引を行うものとする。
S9a:一方、S6aにおいて生体認証が可能であると判定されると制御部17の指示により顧客操作表示部11は図5に示す生体認証許可確認画面50を表示する。この生体認証許可確認画面50は「生体認証を行ってもよろしいですか?」等の文言、生体認証を許可するための「はい」操作ボタン51、および生体認証を許可しないための「いいえ」操作ボタン52等で構成されたものである。
【0029】
S10a:顧客の操作により「いいえ」操作ボタン52が押下されたことを顧客操作表示部11で検知すると制御部17の指示によりカードリーダ部12は挿入されたカードを返却して取引を終了させる。
S11a:一方、「はい」操作ボタン51が押下されたことを顧客操作表示部11で検知すると制御部17の指示により顧客操作表示部11は顧客に生体情報の入力を誘導する生体情報入力指示画面を表示する。
【0030】
この生体情報入力指示画面は、例えば顧客の虹彩の画像情報を取得するために「正面を向いてください」の文言や顧客の指紋、手指の静脈パターン等の画像情報を取得するために「指(手)を読取り機の上においてください」の文言等で構成されたものである。
制御部17の指示により生体情報取得部14はカメラ141や手指スキャンセンサ143で顧客の生体情報を取得し、制御部17はその生体情報を記憶部16に記憶させる。
【0031】
S12a:制御部17は生体情報を記憶部16に記憶させるとその生体情報とS6aにおいて記憶部16に記憶させておいた生体情報とを照合して本人であること確認(生体認証)する。
S13a:生体認証を行った結果、顧客が本人であることを確認すると制御部17はS8aで行う取引で取扱える所定の金額を超えた金額の取引(高額取引)を可能にする。
【0032】
このようにして自動取引装置1は顧客の操作を受付けて取引を行う。
なお、本実施例では、S10aにおいて生体認証を許可するための顧客の操作を受付けてから生体情報を取得するようにしたが、生体情報を虹彩とする場合、取引時間を短縮させるためS1aにおいて顧客の接近を検知した後に生体情報取得部14はカメラ141で顧客の虹彩の画像情報である生体情報を取得し、制御部17はその生体情報を記憶部16に記憶させておくようにしてもよい。このとき、S10aにおいて生体認証を許可しない顧客の操作を受付けた場合、制御部17は記憶部16に記憶させた生体情報を消去するものとする。
【0033】
以上説明したように、第1の実施例では、予め生体情報を登録した顧客であっても、生体認証を行うことを許可する顧客の操作を受付けた場合に生体認証を行うようにしたため、顧客は無断で生体情報が取得されプライバシーが侵されていると感じることがなくなるという効果が得られる。
また、顧客は生体情報が取得されることを避けることができるという効果が得られる。

次に、第2の実施例を説明する。
【0034】
第2の実施例の構成は第1の実施例の構成と同様なので、同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施例の作用について説明する。
図6は第2の実施例における取引のフローチャートであり、図中Sで表すステップにしたがって説明する。
【0035】
S1b〜S8b:図1におけるS1a〜S8aと同様なのでその説明を省略する。
S9b:一方、S6bにおいて生体認証が不可能であると判定されると制御部17の指示により顧客操作表示部11は図7に示す認証方式選択画面70を表示する。この認証方式選択画面70は「生体認証を行ってもよろしいですか? 生体認証を行う場合は「はい」を押してください 暗証番号を使用する場合は「いいえ」を押してください」等の文言、生体認証による本人確認を選択するための「はい」操作ボタン71、および暗証番号による本人確認を選択するための「いいえ」操作ボタン72等で構成されたものである。
【0036】
S10b:顧客の操作により「いいえ」操作ボタン72が押下されたことを顧客操作表示部11で検知すると処理をS7bへ移行させ、PINによる本人確認を行い、低額取引を行うようにする。
S11b:一方、「はい」操作ボタン71が押下されたことを顧客操作表示部11で検知すると制御部17の指示により顧客操作表示部11は顧客に生体情報の入力を誘導する生体情報入力指示画面を表示する。
【0037】
この生体情報入力指示画面は、例えば顧客の虹彩の画像情報を取得するために「正面を向いてください」の文言や顧客の指紋、手指の静脈パターン等の画像情報を取得するために「指(手)を読取り機の上においてください」の文言等で構成されたものである。
制御部17の指示により生体情報取得部14はカメラ141や手指スキャンセンサ143で顧客の生体情報を取得し、制御部17はその生体情報を記憶部16に記憶させる。
【0038】
S12b、S13b:図1におけるS12a、S13aと同様なのでその説明を省略する。
このようにして自動取引装置1は、生体認証またはPINによる本人確認を選択する顧客の操作を受付け、選択された生体認証またはPINによる本人確認を行い、取引を進める。
【0039】
なお、本実施例では、S10bにおいて生体認証を許可するための顧客の操作を受付けてから生体情報を取得するようにしたが、生体情報を虹彩とする場合、取引時間を短縮させるためS1bにおいて顧客の接近を検知した後に生体情報取得部14はカメラ141で顧客の虹彩の画像情報である生体情報を取得し、制御部17はその生体情報を記憶部16に記憶させておくようにしてもよい。このとき、S10bにおいて生体認証を許可しない顧客の操作を受付けた場合、制御部17は記憶部16に記憶させた生体情報を消去するものとすることは第1の実施例と同様である。
【0040】
また、本実施例では、PINによる本人確認を行った場合、低額の取引、生体認証を行った場合、高額の取引というように2種類で例示したが、虹彩、指紋、指や掌の静脈パターン等種々の認証方式を搭載し、その組み合わせにより得られるセキュリティレベルに応じて取引の金額を制限するようにしてもよい。
さらに、その取引金額の制限は顧客が設定するようにしてもよく、また金融機関が設定するようにしてもよい。
【0041】
またさらに、本実施例では本人確認の方法に応じて取引の金額を制限するようにしたが、取引の金額に応じて本人確認の方法を指定するようにしてもよい。
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、生体認証を許可しない場合であってもPINによる本人確認を行い低額の取引を行うようにしたことにより、顧客の利便性が向上するという効果が得られる。

次に、第3の実施例を説明する。
【0042】
図8は第3の実施例におけるカメラ用シャッタを搭載した自動取引装置の構成を示す説明図、図9は第3の実施例における手指スキャンセンサ用シャッタを搭載した自動取引装置の構成を示す説明図である。
なお、上述した第1の実施例の構成と同様な部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図8において、145はカメラ用シャッタであり、自動取引装置1の内部に配置されたカメラ141を覆う(遮蔽する)ように自動取引装置1の前面に設けられた遮蔽板である。このカメラ用シャッタ145は図示しない駆動手段等で開閉自在に構成され、例えばカメラ141を覆い閉状態にあるカメラ用シャッタ145を図中矢印Aが示す方向に下降させると開状態となってカメラ141を露出させ、開状態になっているカメラ用シャッタ145を上昇させると閉状態になるものである。なお、カメラ用シャッタ145は左右に摺動自在に構成されたものであってもよい。
【0044】
図9において、146は手指スキャンセンサ用シャッタであり、自動取引装置1の顧客操作表示部11近傍に配置された手指スキャンセンサ143を覆うように自動取引装置1の前面に設けられた遮蔽板である。この手指スキャンセンサ用シャッタ146は図示しない駆動手段等で開閉自在に構成され、例えば手指スキャンセンサ143を覆い閉状態にある手指スキャンセンサ用シャッタ146を図中矢印Bが示す自動取引装置1の奥部方向に摺動させると開状態となって手指スキャンセンサ143を露出させ、開状態になっている手指スキャンセンサ用シャッタ146を手前方向に摺動させると閉状態になるものである。
【0045】
このように開閉自在に構成されたカメラ用シャッタ145および手指スキャンセンサ用シャッタ146は生体情報読取部14で制御されるものとする。
なお、図10に示すように上述したカメラ用シャッタ145および手指スキャンセンサ用シャッタ146両方を搭載するように構成してもよい。
上述した構成の作用について説明する。
【0046】
図11は第3の実施例における取引のフローチャートであり、図中Sで表すステップにしたがって説明する。
なお、以下に説明する各部の動作は、図示しないメモリや磁気ディスク等の記憶手段に格納されたプログラム(ソフトウェア)に基づいて図示しない中央処理装置等の制御手段により制御される。
【0047】
まず、カメラ用シャッタ145および/または手指スキャンセンサ用シャッタ146である生体情報読取りユニットシャッタは閉状態になっているものとする。
S1c〜S8c:図1におけるS1a〜S8aと同様なのでその説明を省略する。
S9c:一方、S6cにおいて生体認証が不可能であると判定されると制御部17の指示により顧客操作表示部11は図7に示す認証方式選択画面70を表示する。この認証方式選択画面70は「生体認証を行ってもよろしいですか? 生体認証を行う場合は「はい」を押してください 暗証番号を使用する場合は「いいえ」を押してください」等の文言、生体認証による本人確認を選択するための「はい」操作ボタン71、および暗証番号による本人確認を選択するための「いいえ」操作ボタン72等で構成されたものである。
【0048】
S10c:顧客の操作により「いいえ」操作ボタン72が押下されたことを顧客操作表示部11で検知すると処理をS7bへ移行させ、PINによる本人確認を行い、低額取引を行うようにする。
S11c:一方、「はい」操作ボタン71が押下されたことを顧客操作表示部11で検知すると制御部17の指示により顧客操作表示部11は顧客に生体情報の入力を誘導する生体情報入力指示画面を表示する。
【0049】
この生体情報入力指示画面は、例えば顧客の虹彩の画像情報を取得するために「正面を向いてください」の文言や顧客の指紋、手指の静脈パターン等の画像情報を取得するために「指(手)を読取り機の上においてください」の文言等で構成されたものである。
S12c:生体情報入力指示画面を表示すると制御部17の指示により生体情報取得部14はカメラ用シャッタ145および/または手指スキャンセンサ用シャッタ146(以下、「生体情報読取ユニットシャッタ」という。)を開状態にしてカメラ141および/または手指スキャンセンサ143(生体情報読取ユニット)を露出させる。
【0050】
S13c:生体情報読取ユニットシャッタを開状態にすると制御部17の指示により生体情報取得部14はカメラ141や手指スキャンセンサ143で顧客の生体情報を取得し、制御部17はその生体情報を記憶部16に記憶させる。
S12a:制御部17は生体情報を記憶部16に記憶させるとその生体情報とS6cにおいて記憶部16に記憶させておいた生体情報とを照合する生体認証を行い、本人であること確認する。
【0051】
S14c:生体認証を完了すると制御部17の指示により生体情報取得部14は生体情報読取ユニットシャッタを閉状態にする。
S15c:生体認証を行った結果、顧客が本人であることを確認すると制御部17はS8cで行う取引で取扱える所定の金額を超えた金額の取引(高額取引)を可能にする。
このようにして自動取引装置1は顧客の操作を受付けて取引を行う。
【0052】
以上説明したように、第3の実施例では、第2の実施例の効果に加え、顧客の操作により生体認証が許可された場合のみ、生体情報を読取るユニットを覆うシャッタを開状態にするようにしたことにより、顧客はこっそり生体情報が取得される危険性がなく、安心して自動取引装置を利用することができるという効果が得られる。
また、取引において生体情報を読取る必要があるときのみ生体情報を読取るユニットのシャッタを開状態とするようにし、それ以外の場合は生体情報を読取るユニットをシャッタで覆うようにしたため、接触による怪我の恐れが減少するとともにユニットの破損の恐れが減少するという効果が得られる。
【0053】
さらに、生体情報を読取るユニットが露出する時間が減少するため汚損する機会が減少し、また突起部がなくなるため自動取引装置の清掃が行い易くなるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施例における取引のフローチャート
【図2】第1の実施例における自動取引装置の構成を示すブロック図
【図3】第1の実施例におけるカメラを搭載した自動取引装置の構成を示す説明図
【図4】第1の実施例における手指スキャンセンサを搭載した自動取引装置の構成を示す説明図
【図5】第1の実施例における生体認証許可確認画面の説明図
【図6】第2の実施例における取引のフローチャート
【図7】第2の実施例における認証方式選択画面の説明図
【図8】第3の実施例におけるカメラ用シャッタを搭載した自動取引装置の構成を示す説明図
【図9】第3の実施例における手指スキャンセンサ用シャッタを搭載した自動取引装置の構成を示す説明図
【図10】第3の実施例におけるカメラ用シャッタおよび手指スキャンセンサ用シャッタを搭載した自動取引装置の構成を示す説明図
【図11】第3の実施例における生体認証を行う取引のフローチャート
【符号の説明】
【0055】
1 自動取引装置
2 通信回線
11 顧客操作表示部
12 カードリーダ部
13 入出金部
14 生体情報読取部
141 カメラ
142 目隠し板
143 手指スキャンセンサ
145 カメラ用シャッタ
146 手指スキャンセンサ用シャッタ
15 近接センサ部
16 記憶部
17 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客が本人であることを確認して取引を行う自動取引装置において、
挿入されたカードから生体認証の可否を示す生体認証可否情報を読取るとともに該生体認証可否情報が生体認証可を示す場合、カードに記録された生体情報を読取るカードリーダ部と、
前記生体認証可否情報が生体認証可を示す場合、生体認証の許可または不許可を顧客に選択させる生体認証許可確認画面を表示するとともにその選択操作を受付ける顧客操作表示部と、
前記顧客操作表示部が生体認証を許可する操作を受付けたとき、顧客の生体情報を読取る生体情報読取部とを設け、
前記生体情報読取部が読取った生体情報と前記カードリーダ部がカードから読取った生体情報とを照合する生体認証による本人確認を行うようにしたことを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1の自動取引装置において、
前記顧客操作表示部が生体認証を許可しない操作を受付けたとき、前記顧客操作表示部に暗証番号を入力するための暗証番号入力画面を表示するとともに顧客の操作による暗証番号の入力を受付け、入力された暗証番号による本人確認を行うようにしたことを特徴とする自動取引装置。
【請求項3】
請求項2の自動取引装置において、
入力された暗証番号による本人確認を行った場合、取引金額の上限を所定の金額に制限するようにしたことを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3の自動取引装置において、
顧客の生体情報を取得するカメラやセンサである生体情報読取ユニットを遮蔽する開閉自在のシャッタを前記生体情報読取部に設け、
前記顧客操作表示部が生体認証を許可する操作を受付けたとき、前記生体情報読取部が、前記シャッタを開け、生体情報読取ユニットを露出させて顧客の生体情報を読取るようにしたことを特徴とする自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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