説明

自動合焦装置

【課題】 組み合わせる鏡器や対物レンズを変更しても合焦位置の調整が可能である自動合焦装置を提供する。
【解決手段】 シリンドリカルレンズ7は、光源1から入射した光を光軸に直交する直線上へ集光する。対物レンズ10は、標本11についての観察光学系を構成する要素のひとつである。受光素子14は、対物レンズ10の結像面と共役な位置に受光面が配置されている。光学素子14及び対物レンズ10を通過させた光を標本11の表面へ照射したときに当該表面で反射して対物レンズ10を戻る戻り光が当該受光面に結ぶ像の大きさを最小とするように当該表面と対物レンズ10との間の距離を制御する。支持駆動機構71は、観察光学系の光学特性を変更したときに、当該変更に応じてシリンドリカルレンズ7の位置を前述の光軸方向に沿って移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顕微鏡の技術に関し、特に、自動合焦の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から顕微鏡に用いられている自動合焦技術に関し、例えば特許文献1に開示されている技術が知られている。以下、この技術を説明する。
図4は、顕微鏡に用いられる従来の自動合焦装置の第一の例の概念図である。なお、この例は、特許文献1においても従来の技術として説明がされているものである。
【0003】
同図において、光源1から発せられた不可視AF(Auto Focus)光は、コリメーションレンズ4によって平行光束にされた後、正確にその光束の半分を遮光板5で遮光されることにより半月形の断面を持つ光束となる。
【0004】
その後、この光束はハーフミラー6を透過してダイクロックミラー8で光路を折り曲げられて対物レンズ10に入射して結像せしめられるが、その結像面の近傍には標本表面11がある。この標本表面11で反射された光束が対物レンズ10で平行光束に戻されると、その光束は入射時とは光軸を挟んで反対側に半月形の断面を持つものとなる。
【0005】
この光束はその後ダイクロックミラー8で折り曲げられた後、ハーフミラー6で今度は反射され、結像光学系13を通った後に受光素子14近傍に再び結像する。
受光素子14の受光面は予め結像光学系13の焦点面に対して正確に位置決めされており、また結像光学系13の当該焦点面(すなわち受光素子14の受光面)は対物レンズ10の焦点面と共役になるように予め組み立て調整されている。従って、標本表面11が対物レンズ10の結像面に一致するときには、標本表面11には極小のスポット52が結像せしめられると共に、受光素子14上にも極小の点が結像する。
【0006】
ここで、標本表面11が例えばニアフォーカスの位置にあるときには、標本表面からの戻り光が対物10の下流で扇の骨の如く末広がりの不平行になり、受光素子14のファー側に結像しようとして、当該受光素子14の図中右半分の表面へ、半月状の広がりを以って到達する。逆に、標本表面が対物レンズ10のファーフォーカスの位置にあるときには、標本表面からの戻り光は結像光学系13のニア側に結像して、当該受光素子14の図中左半分の表面へ、半月状の広がりを以って到達する。そこで、受光素子14へ到達するときのこの戻り光の分布を検出し、この戻り光が受光素子14の中央に極小の点を結ぶように標本表面11の高さ(すなわち対物レンズ10と標本表面11との間の距離)を不図示の制御手段により駆動制御すれば、自動合焦が実現する。
【0007】
なお、図4において、15、16、及び17は、落射照明系及び観察系を構成する光学素子群であり、ここでは詳細な説明を省くが、この落射光学系/観察系の観察光と前述した不可視AF光とは色収差の乖離が生じないように不図示の手段によって色収差の補正がなされているので、光源1からの不可視AF光で標本表面11に合焦させたときには、観察像も良好に合焦する。
【0008】
特許文献1においても指摘されているが、上述した合焦装置においては、例えば標本表面が凹凸に富む場合にその凹凸の絶壁部分にAF光が当たると、これが散乱性の反射をしてしまうために対物レンズ10に殆ど戻らなくなる結果、自動合焦が困難になることがある。また、AF光は、標本の僅かな位置ズレによって微細な凹凸の凹部に当たることもあれば凸部に当たることもあり不確定であるため、検鏡の度にニアフォーカス気味に合焦を完了してしまうこともあればファーフォーカス気味に合焦を完了してしまうこともあり、観察画像の質が安定しない。半導体検査装置を初めとする自動機などでは、操作者が装置に付きっきりで焦点の微調整をするわけにいかないので、この問題は重大なものであった。
【0009】
これに対し、特許文献1では、図5に示すような自動合焦装置を提案している。この第二の従来例に係る自動合焦装置は、図4に示した自動合焦装置に、シリンドリカルレンズ7が追加されて構成されている。言うまでもなく、シリンドリカルレンズとは、入射した光を光軸と直交する直線上に集光する、一方向にのみ集光作用を持つ円筒面のレンズである。
【0010】
図5において、実線で描かれている光束は、シリンドリカルレンズ7が集光作用を持たない面内での光跡であり、これは図4に描かれているものと同様である。一方、図5において破線で描かれている光束は、これと直交する面内の光跡を便宜的に紙面に重ねて描いたものであり、すなわち、シリンドリカルレンズ7が集光作用を持つ面内の様子を表しているものである。
【0011】
これによると、シリンドリカルレンズ7に入射した平行光束は集光作用を持つ面内でのみ集光するのであるが、ここで、その焦点が対物レンズ10の後焦点面に一致するように、シリンドリカルレンズ7の位置が予め調整されている。そのため、破線の光跡は対物レンズ10を通過すると対物レンズ10と標本表面11との間で平行光束になる。従って、標本表面11の高さが対物レンズ10の焦点面に一致しているときには、標本表面11に線12が現れる。ここで、この線12の幅方向は、シリンドリカルレンズ7が集光作用を持つ方向に対し直交する方向である。
【0012】
このようにして、線12を標本表面11へ投影するようにすると、標本表面の凹凸の絶壁部分でAF光が例え散乱したとしても、線12の他の大部分からの反射光が対物レンズ10に戻るので正常な自動合焦を行うことができる。また、標本表面の凹凸の平均の高さに自動合焦がされるので、観察画像の合焦具合がいつも一定になるのである。
【特許文献1】特開平08−254650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図5に示した自動合焦装置では、シリンドリカルレンズ7の焦点を対物レンズ10の後焦点面に一致させることが肝要である。しかし、とりわけ高倍の対物レンズにおいては、焦点距離が短いために、その後焦点面が対物レンズの枠の内部に位置しているものもある。そのような対物レンズを使用する場合、組み合わせる対物レンズの後焦点面の位置を自動合焦装置の組み立て調整時に実地に確認することは困難であるから、シリンドリカルレンズ7の位置の調整は不可能であった。
【0014】
また、自動合焦装置を組み込もうとする鏡器には複数の系列があるのが普通である。すなわち、例えば、透過照明で生物系標本を観察することを主に考えられた鏡器、同軸落射照明で大きな金属系標本を観察できるように考えられた鏡器、あるいは、自動検査装置の可動ガントリ上に載せられて鏡器自体をXY方向に移動自在にするべく、小型にまとめられた鏡器などである。これらの鏡器は、使用の主目的に合わせるべく各部の寸法が当然異なっているため、それらに自動合焦装置を組み込んだ場合、図5におけるダイクロックミラー8から対物胴付(不図示)までの距離も相違している場合が多い。
【0015】
更に、対物レンズについていえば、顕微鏡にはレボルバが備えられていて複数種の対物レンズを切り換えて併用しながら検鏡するのが普通であるが、対物胴付から後焦点面までの距離は対物レンズの品種毎に異なる。すなわち、シリンドリカルレンズ7の位置調整の基準となるべき対物レンズの後焦点面の位置は、組み合わせる鏡器や対物レンズの品種によってまちまちであるため、組み合わせる鏡器や対物レンズ毎にシリンドリカルレンズ7をいちいち位置調整するのは困難であった。
【0016】
以上のように、標本表面11にAF光を線12状に投影しようとする自動合焦装置では、組み合わせる鏡器や対物レンズが変わる毎にシリンドリカルレンズ7の位置調整をすることが困難であり、とりわけ高倍の対物レンズと組み合わせる場合には、対物レンズの後焦点面を実地に確認できないため、位置調整自体が不可能であるという問題点があった。
【0017】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、組み合わせる鏡器や対物レンズを変更しても合焦位置の調整が可能である自動合焦装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そして、本発明の態様のひとつである自動合焦装置は、光源から入射した光を光軸に直交する直線上へ集光する光学素子と、標本についての観察光学系を構成する要素のひとつである対物レンズと、当該対物レンズの結像面と共役な位置に受光面が配置されている受光素子と、当該光学素子及び当該対物レンズを通過させた光を当該標本の表面へ照射したときに当該表面で反射して当該対物レンズを戻る戻り光が当該受光面に結ぶ像の大きさを最小とするように当該表面と当該対物レンズとの間の距離を制御する距離制御手段と、当該観察光学系の光学特性を変更したときに、当該変更に応じて当該光学素子の位置を当該光軸方向に沿って移動させる駆動手段と、を有することを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0019】
なお、上述した本発明に係る自動合焦装置において、当該光学素子は、シリンドリカルレンズであってもよい。
また、前述した本発明に係る自動合焦装置において、当該駆動手段は、当該観察光学系の光学特性と当該光学素子の位置との関係を示す関係情報であって予め用意されている当該関係情報に基づいて当該光学素子の位置を移動させるように構成してもよい。
【0020】
また、前述した本発明に係る自動合焦装置において、当該光学素子に到来する光の光路中に挿入され、当該光の当該光路における色収差を補正する色収差補正手段と、当該観察光学系の光学特性を変更したときに、当該変更に応じて当該色収差の補正量を制御する色収差補正量制御手段と、を更に有するように構成してもよい。
【0021】
また、前述した本発明に係る自動合焦装置において、当該光源から発せられて当該対物レンズへ導かれる光の光束を平行光束とするコリメートレンズを更に有し、当該受光素子の受光面は当該コリメートレンズの焦点に配置されており、当該駆動手段は、当該光学素子と当該コリメートレンズとを一体で移動させる、ように構成してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、以上のように構成することにより、組み合わせる鏡器や対物レンズを変更しても合焦位置を調整できるようになるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を実施する自動合焦装置を含む顕微鏡の第一の例の構成を示している。なお、同図において、図4や図5に示したものと対応している構成要素には同一の符号を付し、これらについては個別の説明を省略する。
【0024】
図1において、光源1はAF光である赤外光を発する。
支持駆動機構71はシリンドリカルレンズ7を光軸方向に沿って移動可能に支持駆動させるものであり、具体的には、市販の玉循環式直動案内であるが、クロスローラガイドや直進アリ溝など、他の形式でもよい。
【0025】
73はモータであり、変換機構72は、モータ73の回転運動を直進運動に変え、支持駆動機構71に伝える変換機構である。
コンピュータ74は制御手段として機能するものであり、データ記憶部を含む場合がある。また、75はモータドライバであり、モータ73の回転動作をコンピュータ74の指示に応じて制御する。
【0026】
赤外カットフィルタ76は観察光学系に挿抜自在に設けられている。光源1から発せられる赤外光はダイクロックミラー8で光路を折り曲げられるのであるが、実際には一部が観察光学系に漏れてしまうため、この漏れを阻止するために赤外カットフィルタ76が用いられる。赤外カットフィルタ76は、普段の標本検鏡時はこれを観察系の光路に挿入しておくが、後述のようにシリンドリカルレンズ7の位置調整をするときには光路から抜かれる。なお、光源1から発せられる光の波長は必ずしも赤外域でなくてもよいのであるが、その場合には、赤外カットフィルタ76の代わりに、光源1から発せられる光を遮光する特性を有するフィルタを用いるようにする。
【0027】
観察光学系の終端に置かれているカメラ77は観察画像を撮像するものである。カメラ77としては、観察波長域の他に赤外域にも感度を有しているものを使用する。なお、光源1で生じさせる光の波長が赤外域でない場合には、カメラ77として、観察波長域の他に当該光源1で生じさせる光の波長においても感度を有しているものを用いるようにする。
【0028】
次に、図1に示した構成における自動合焦装置で適切な自動合焦動作を行わせるために必要な、シリンドリカルレンズ7の位置調整の手順について説明する。
まず、この自動合焦装置を鏡器や対物レンズ10と組み合わせ、装置として使用可能な状態にする。なお、このとき、赤外カットフィルタ76は観察光学系から抜いておく。すると標本表面11上に投影される線12の様子がカメラ77で撮像される。
【0029】
ここで、標本表面11の高さを、不図示の上下機構により繰り返し上下させてみる。このときにシリンドリカルレンズ7の焦点面が対物レンズ10の後焦点面に一致していれば、シリンドリカルレンズ7の作用する方向においてAF光は対物レンズ10と標本表面11との間で平行になるので、標本表面11を上下させても、そこに投影される線12の長さは変化しないはずである。従って、このときに線12の長さが変化するようであれば、コンピュータ74へシリンドリカルレンズ7の相対移動量の移動命令若しくは絶対位置の移動命令を入力してモータドライバ75への制御指示を与えさせてモータ73を回転せしめ、シリンドリカルレンズ7の位置を変化させる。そして、線12の長さが変化しない位置を見出すことにより、シリンドリカルレンズ7の位置調整が完了する。
【0030】
なお、この自動合焦装置を異なる鏡器や対物レンズと組み合わせて使用する場合には、上記の調整を組み合わせる鏡器や対物レンズ毎に予め行っておき、調整完了時のシリンドリカルレンズ7の絶対位置を示す情報(鏡器や対物レンズの種別で決まる観察光学系の光学特性と調整完了時のシリンドリカルレンズ7の絶対位置との関係を示す関係情報)を、コンピュータ74に含まれる記憶部に格納しておくようにする。そして、上記の組み合わせを変更したときには、その変更の度に、その変更後の組み合わせに対応するシリンドリカルレンズ7の絶対位置の情報をコンピュータ74が記憶装置から読み出し、その情報に基づいた絶対位置の移動命令をモータドライバ75に与えてモータ73を回転させ、シリンドリカルレンズ7を当該情報に係る絶対位置へ移動させると、その組み合わせの変更に伴う位置の再調整が瞬時に且つ自動で完了する。
【0031】
以上のように、図1に示した構成の自動合焦装置によれば、専門的な光学調整の知識技能を持たないような使用者であっても、シリンドリカルレンズ7の位置調整を容易に行うことができ、適切な自動合焦機能が利用可能となる。
【0032】
次に図2について説明する。同図は本発明を実施する自動合焦装置を含む顕微鏡の第二の例の構成を示しており、図1に示した第一の例に係る自動合焦装置の変形例である。なお、図2において、図1に示したものと対応している構成要素には同一の符号を付している。
【0033】
図2において、図1におけるものから主に追加または置き換えた構成要素について説明する。
光源1は赤外レーザ光を発する。
【0034】
6aは、図1におけるハーフミラー6の代わりのPBS(Polarized Beam Splitter )6aである。
リレーレンズ21及び22は、AF光である赤外光の光路における色収差を補正する色収差補正レンズであり、両者の間に中間結像位置を有している。
【0035】
支持駆動機構23はリレーレンズ22を光軸に沿って移動自在に支持するものであり、モータ24は支持駆動機構23を駆動する。また、モータドライバ25はモータ24の回転動作を、コンピュータであるコントロール部74の指示に応じて制御する。
【0036】
この他、シリンドリカルレンズ7の支持駆動機構などは、図1に示した実施例におけるものと同様のものである。
なお、10は偏光板であり、PBS6aで光路を分割するためには必要なものであるが、ここでは詳細な説明を省略する。
【0037】
この図2に示した顕微鏡において、対物レンズ10a、10b、…を様々に切り換えながら検鏡する場合、観察光である可視光と、AF光である赤外光との色収差の乖離量は対物レンズ10a、10b、…の品種毎に異なるため、対物レンズ10a、10b、…の品種を入れ替えると、AF光の戻り光がレンズ22で再結像する位置は異なることとなる。
【0038】
そこで、レンズ22を光軸方向に移動可能な支持駆動機構23で支持するようにし、コントロール部1がモータドライバ25へ移動命令を送り、モータ24を回転せしめて支持駆動機構23に支持されてレンズ22を移動させ、レンズ22によるAF戻り光の焦点をレンズ21の焦点面に一致させるようにする。このようにすると、対物レンズ10a、10b、…のいずれを用いても、その色収差を補正して、観察像を常に良好に合焦させることができる。
【0039】
なお、このとき、対物レンズ10a、10b、…の各々に対応したレンズ22の位置を示す位置情報をコントロール部1が有している記憶部に予め格納しておくようにし、対物レンズ10a、10b、…の切り換えの度に対応する位置情報を読み出し、その位置情報に係る位置にレンズ22を動かすようにすると、対物レンズ10a、10b、…を切り換えても、いずれの対物レンズ10a、10b、…の色収差補正を瞬時に且つ自動で完了させることができる。また、組み合わせる鏡器を変えた場合も、同様にすることができる。
【0040】
ところで、色収差補正レンズ21及び22とシリンドリカルレンズ7とは、これを具備する目的が異なるので、それらの支持駆動機構のもたらす作用効果も異なる。
もしもリレーレンズ21及び22を移動させる支持駆動機構23が設けられておらず、色収差の適切な補正ができないとすると、赤外光を使って自動合焦装置が合焦と判定した標本高さにおいても、観察光では合焦していないという不具合が生じ得る。しかしながら、この場合、自動合焦の感度自体は劣化していない。
【0041】
これに対し、もしもシリンドリカルレンズ7を移動させる支持駆動機構71が設けられておらず、シリンドリカルレンズ7の位置が適切でないとすると、これは、シリンドリカルレンズ7が作用する方向において対物レンズ10と標本表面11との間で光束が平行にならないということであるから、標本表面11からの戻り光がシリンドリカルレンズ7を通った後に元の平行光に戻らないということになる。これは、標本高さを変化させても受光素子14上でスポットが極小の点になることがないということであるから、これはすなわち自動合焦の感度が損なわれてしまうことを意味するものである。
【0042】
以上のように、図2に示した構成の自動合焦装置によれば、シリンドリカルレンズ7の位置調整のみならず、色収差補正をも自動で行うことができる。
次に図3について説明する。同図は本発明を実施する自動合焦装置を含む顕微鏡の第三の例の構成を示している。なお、図3において、図1に示したものと対応している構成要素には同一の符号を付している。
【0043】
図3に示す構成においては、シリンドリカルレンズ7は光源1とコリメーションレンズ4との間に配置されている。そしてシリンドリカルレンズ7の作用する方向において、コリメーションレンズ4の集光作用と合成して、対物レンズ10の後焦点面にAF光が集光するように構成されている。
【0044】
図3においては図1におけるハーフミラー6の代わりにミラー6bが備えられている。ミラー6bは標本表面11からの戻り光の光軸を分離するためのものであるが、図3においては光源1とコリメーションレンズ4との間にミラー6bが配置されている。また、この図3におけるミラー6bは、図1における遮光板5の機能をも兼ねており、光束の正確に半分だけを遮光するように挿入されている。このようにしても、AF光が標本表面11で線状に投影されることは、図1に示した構成例と同様である。
【0045】
なお、受光素子14はコリメーションレンズ4の焦点位置に配置されている。また、支持駆動機構71は、光源1、シリンドリカルレンズ7、コリメーションレンズ4、ミラー6b、及び受光素子14を含む一体の部組78を支持しており、これらが一体的に移動する。
【0046】
なお、76は観察光学系に挿抜可能なIRカットフィルタであり、図1におけるものと同様のものである。
図3の構成において、AF光は標本表面11で線上に投影された後反射して対物レンズ10へと戻った後には、シリンドリカルレンズ7を通らずに受光素子14の受光面へ達するから、標本表面11が合焦高さにある場合、受光素子14上には線状の像が結像する。ここで、標本表面11がデフォーカスすると、その線幅が図3における「PA」側にボケて膨らむか、若しくは「PB」側にボケて膨らむかのどちらかの状態となるので、受光素子14の受光面上で結像している線が極小の幅になるように標本表面11の高さを調整すれば、自動合焦が実現する。
【0047】
なお、シリンドリカルレンズ7の位置の調整手順自体は、図1に示した実施例における調整手順と同様である。ここで、前述したように、図3の構成においては、光源1、シリンドリカルレンズ7、コリメーションレンズ4、ミラー(兼遮光板)6b、及び受光素子14が一体的に移動する。この光線の動きを考察すると、シリンドリカルレンズ7が作用する方向において、調整の完了した状態で標本表面11が合焦高さにあれば、往路で対物レンズ10の後焦点面を通ったAF光が復路で再び対物レンズ10の後焦点面を通るのであるから、光源1と共役の位置に配置されている受光素子14の受光面上には幅極小の線が投影される。従って、これらを一体の部組78として移動させるようにしても、シリンドリカルレンズ7の位置調整が可能なのである。
【0048】
以上のように、図3に示した構成の自動合焦装置によれば、シリンドリカルレンズ7の位置調整を行うことができる上に、装置全体を小型にまとめることができる。
以上説明してきたように、上述した本発明の各実施例に係る自動合焦装置のいずれによっても、シリンドリカルレンズが作用して集光する位置を対物レンズの後焦点面に常に一致させることができるので、自動合焦の感度を鋭敏に保つことができる。
【0049】
その他、本発明は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明を実施する自動合焦装置を含む顕微鏡の第一の例の構成を示す図である。
【図2】本発明を実施する自動合焦装置を含む顕微鏡の第二の例の構成を示す図である。
【図3】本発明を実施する自動合焦装置を含む顕微鏡の第三の例の構成を示す図である。
【図4】顕微鏡に用いられる従来の自動合焦装置の第一の例の概念図である。
【図5】顕微鏡に用いられる従来の自動合焦装置の第二の例の概念図である。
【符号の説明】
【0051】
1 光源
4 コリメーションレンズ
5 遮光板
6 ハーフミラー
6a PBS
6b ミラー
7 シリンドリカルレンズ
8 ダイクロイックミラー
10、10a、10b 対物レンズ
11 標本表面
12 線
13 結像光学系
14 受光素子
15、16、17 光学素子
21、22 リレーレンズ(色収差補正レンズ)
23、71 支持駆動機構
24、73 モータ
25、75 モータドライバ
26 偏光板
52 スポット
72 変換機構
74 コンピュータ
76 赤外カットフィルタ
77 カメラ
78 部組


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から入射した光を光軸に直交する直線上へ集光する光学素子と、
標本についての観察光学系を構成する要素のひとつである対物レンズと、
前記対物レンズの結像面と共役な位置に受光面が配置されている受光素子と、
前記光学素子及び前記対物レンズを通過させた光を前記標本の表面へ照射したときに当該表面で反射して当該対物レンズを戻る戻り光が前記受光面に結ぶ像の大きさを最小とするように当該表面と当該対物レンズとの間の距離を制御する距離制御手段と、
前記観察光学系の光学特性を変更したときに、当該変更に応じて前記光学素子の位置を前記光軸方向に沿って移動させる駆動手段と、
を有することを特徴とする自動合焦装置。
【請求項2】
前記光学素子は、シリンドリカルレンズであることを特徴とする請求項1に記載の自動合焦装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記観察光学系の光学特性と前記光学素子の位置との関係を示す関係情報であって予め用意されている当該関係情報に基づいて当該光学素子の位置を移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動合焦装置。
【請求項4】
前記光学素子に到来する光の光路中に挿入され、当該光の当該光路における色収差を補正する色収差補正手段と、
前記観察光学系の光学特性を変更したときに、当該変更に応じて前記色収差の補正量を制御する色収差補正量制御手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1から3までのうちのいずれか一項に記載の自動合焦装置。
【請求項5】
前記光源から発せられて前記対物レンズへ導かれる光の光束を平行光束とするコリメートレンズを更に有し、
前記受光素子の受光面は前記コリメートレンズの焦点に配置されており、
前記駆動手段は、前記光学素子と前記コリメートレンズとを一体で移動させる、
ことを特徴とする請求項1から3までのうちのいずれか一項に記載の自動合焦装置。


【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−276320(P2006−276320A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93448(P2005−93448)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】