説明

自動工具収納機構

【課題】ツールが重い刃物や長い刃物である場合でも、搬送時にツールが過度に傾くことなく、ツールの搬送時の安定性を確保できる自動工具収納機構を提供する。
【解決手段】ツールを装着したポットが数多く収納された少なくとも1つのマガジンと、
マガジン側の位置と主軸近くの待機位置との間で1つずつツールを装着したポットを搬送する搬送手段と、待機位置で待機中のポットから使用前のツールを取り出して主軸に装着するとともに、主軸に装着されていた使用後のツールを主軸から取り出してポットに装着する工具交換アームとを有する自動工具収納機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のツールとポットを収納するマガジンを備えた自動工具収納機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工作機械とくにマシニングセンタに用いる自動工具交換装置においては、工具(ツール)の数量が非常に多くなってきた。多数の工具を収納するため、複数のマガジンを配置するようになった。各マガジンには、多数のポットがチェーンで連結され、各ポットに種々のツールが装着されている。
【0003】
多数のツールとポットを収納したマガジンと、マガジンから所定のポットに装着されたツールを取り出して待機位置まで搬送する搬送手段と、その待機位置で待機中の使用前のツールと主軸側の使用後のツールとを交換する工具交換アームとを有する工具自動交換装置は公知である。例えば、特許文献1及び2を参照。
【0004】
従来の自動工具交換装置においては、マガジンに配備されたものの中から呼び出された(選択された)ツールのV字フランジ部分を爪(ツメ)でつかみ、ポットからツールを取り出す。そして、そのポットはマガジンに残し、ツールのみをマガジンから待機位置まで搬送していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−291046
【特許文献2】特開2008−155343
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のように、ツールをポットから離して、ツールのV字フランジ部分のみをツメで把持した状態でツールを搬送すると、ツールが重い刃物や長い刃物である場合、ツールが搬送時に傾きやすくなり、とくに長い搬送路や高速度で、安定した搬送を行うことが困難になる。
【0007】
ツールのV字フランジ部分を強く把持するためには、ツメは、高い剛性が必要となる。
【0008】
本発明の目的は、ツールが重い刃物や長い刃物である場合でも、搬送時にツールが過度に傾くことなく、ツールの搬送時の安定性を確保できる自動工具収納機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決手段を例示すると、以下のとおりである。
【0010】
(1)ツールを装着したポットが数多く収納された少なくとも1つのマガジンと、マガジン側の位置と主軸近くの待機位置との間で1つずつツールを装着したポットを搬送する搬送手段と、待機位置で待機中のポットから使用前のツールを取り出して主軸に装着するとともに、主軸に装着されていた使用後のツールを主軸から取り出してポットに装着する工具交換アームを有する自動工具収納機構。
【0011】
(2)搬送手段が、マガジン側の位置と主軸近くの待機位置との間に設けられたガイドと、ツールを装着したポットをガイドに沿って移動させるポット移動手段を有することを特徴とする請求項1に記載の自動工具収納機構。
【0012】
(3)ガイドが、マガジン側の第1ガイド部分と、第1ガイド部分と待機位置との間でツールを装着したポットをガイドする第2ガイド部分を有することを特徴とする請求項2に記載の自動工具収納機構。
【0013】
(4)ポット移動手段が、ツールを装着したポットを第1ガイド部分とマガジンとの間で移動する油圧シリンダと、ツールを装着したポットを移動するボールネジ及びサーボモータとを有することを特徴とする請求項2に記載の自動工具収納機構。
【0014】
(5)ポット移動手段が、ツールを装着したポットを第1ガイド部分と第2ガイド部分との間で移動するポット移動アームを有することを特徴とする請求項2又は4記載の自動工具収納機構。
【0015】
(6)複数のマガジンが、ポット移動アーム走行用ガイドに沿って並んで配置されておりポット移動アームをポット移動アーム走行用ガイド上で走行させる駆動手段が設けられており、選択された1つのマガジンのところでポット移動アームを停止して、そのマガジンと第1ガイド部分との間で、ツールを装着したポットを移動することを特徴とする請求項5に記載の自動工具収納機構。
【0016】
(7)複数のマガジンに収納されるポットの総数が数百であることを特徴とする請求項6に記載の自動工具収納機構。
【0017】
(8)ポット移動アームがベルトの使用によってポット移動アーム走行用ガイドに沿って走行することを特徴とする請求項6に記載の自動工具収納機構。
【0018】
(9) ポット移動アームが、ポットをつかむツメとツールをつかむツメを有することを特徴とする請求項6又は8に記載の自動工具収納機構。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の1つの実施例による自動工具収納機構における第1マガジンから待機位置へのツール及びポットの搬送を示す説明図。
【図2】図1に示す自動工具収納機構における待機位置から第2マガジンへのツール及びポットの搬送を示す説明図。
【図3】本発明の好ましい実施例による自動工具収納機構の一例を示す概略斜視図。
【図4】図3に示した自動工具収納機構の1つのマガジンと搬送手段との関係を示す。
【図5】図3に示す自動工具収納機構を少し拡大して示す概略斜視図。
【図6】図3に示す自動工具収納機構を少し拡大して示す概略斜視図。
【図7】図3に示す自動工具収納機構のうち、とくにポット移動アームのツメと、ツールおよびポットとの関係を示す図。
【図8】図7に示すポット移動アームの1対のツメを示す。
【図9】図7に示すポット移動アームの3対のツメを示す概略上面図。
【図10】図7に示すポット移動アームの3対のツメを示す概略側面図。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【0021】
図1は、1つのマガジンから使用前のツールとポットを一緒に取り出して、それらを待機位置まで搬送し、その使用前のツールと、主軸側の使用後のツールとを交換する状況を示す。
【0022】
図2は、交換された使用後のツールとポットを一緒に別のマガジンへ返却する状況を示す。
【0023】
ポット(ツールポットともいう)は、すべてのツール(ツールホルダともいう)に共通のものを用いる。
【0024】
図1〜2の実施例においては、第1マガジン10がNo.1からNo.50までのツール12(1つのみ示し他は図示せず)とポット14を収納する。第2マガジン16がNo.51からNo.100までのツール18(1つのみ示し他は図示せず)とポット14を収納する。第1及び第2マガジン以外のマガジンは、図1〜2には図示していない。
【0025】
図1の(1)は初期状態の一例を示す。第1マガジン10に収納されたNo.1のツール12が制御手段(図示せず)によって呼び出される。
【0026】
図1の(2)においては、その呼び出されたNo.1のツール12とそのためのポット14が一緒に第1マガジン10から取り出され、図1において右方向に移送されて、ポット移動アーム22の下方位置にくる。
【0027】
図1の(3)においては、ポット移動アーム22が下降して、ポット移動アーム22の複数のツメによって、そのNo.1のツール12のV字フランジ部分とポット14をつかむ。
【0028】
図1の(4)においては、ポット移動アーム22の上昇によってNo.1のツール12とポット14がガイド26の入口まで移動される。
【0029】
図1の(5)では、複数のツメによってNo.1のツール12とポット14が保持されてガイド26の入口で停止した状態で、ポット移動アーム22だけが上昇して初期状態へ戻る。
【0030】
図1の(6)では、No.1のツール12とポット14が保持された状態で、No.1のツール12とポット14が一緒にガイド26に沿って待機位置へ移動する。
【0031】
図1の(7)では、工具交換アーム28が使用前のNo.1のツール12と主軸30側の使用後のNo.51のツール18とを交換する。
【0032】
図1の(8)は工具交換完了の状態を示す。
【0033】
図2の(1)においては、交換された使用後のNo.51のツール18とそのためのポット14が一緒にガイド26の入口に向けて左方向に移動する。
【0034】
図2の(2)においては、使用後のNo.51のツール18とポット14がポット移動アーム22の下方位置にくる。
【0035】
図2の(3)においては、ポット移動アーム22が、複数のツメによって、No.51のツール18のV字フランジ部分とポット14をつかむ。
【0036】
図2の(4)においては、ポット移動アーム22が、複数のツメによって、No.51のツール18のV字フランジ部分とポット14をつかんだ状態で、ポット移動アーム22が上昇して初期位置に戻る。
【0037】
図2の(5)においては、ポット移動アーム22が、ツール18とポット14をつかんだまま、第2マガジン16の位置に移動する。
【0038】
図2の(6)においては、ポット移動アーム22が、ツール18とポット14をつかんだまま、第2マガジン16におけるNo.51のツール18の返却位置へ下降する。
【0039】
図2の(7)においては、ツール18とポット14から離れて、ポット移動アーム22のみが初期状態の位置へ上昇する。
【0040】
図2の(8)においては、No.51のツール18がポット14と一緒に第2マガジン16に返却される。その結果、全体が初期状態に戻る。
【0041】
図3〜8は、図1〜2に示した自動工具収納機構の具体例の1つを示す。
【0042】
同じ基本構成の複数(例えば5つ)のマガジン10、16、40、46、50が縦向きに一列に並べて配置されている。
【0043】
各マガジン10、16、40、46、50には、それらに共通の多数のポット14がエンドレスの形で周回するように回動自在に配置されている。それらのポット14の各々に1つずつ種々のツール12、18(図1〜2には2種類のみ例示的に示した)が装着されている。
【0044】
全マガジンに収納するポット14の総数は、数百(例えば300)にすることができる。
【0045】
ツール12、18を装着した特定のポット14が、制御装置(図示せず)によって選択され(つまり呼び出され)、搬送手段(後述)によって、マガジン側の位置90(図4)から主軸近くの待機位置100まで搬送される。
【0046】
ポット搬送のために、全マガジンの各々の前方に搬送されて位置決めされるマガジン側の第1ガイド部分51と、所定の位置で第1ガイド部分51と待機位置100との間に設けられる第2ガイド部分26とが、ガイドを構成している。
【0047】
ポット移動手段は、ツールを装着したポット、つまりツール装着ポットを第1ガイド部分51と各マガジンとの間で水平方向に移動させる第1駆動手段(好ましくは油圧シリンダ55)と、第2ガイド部分26に沿ってツール装着ポットを水平方向に移動させる第2駆動手段101(好ましくはボールネジ及びサーボモータ)と、第1ガイド部分51及び第2ガイド部分26間でツール装着ポットを垂直方向に移動させるポット移動アーム22を有する。
【0048】
図5によく示されているように、2本のレール状のポット移動アーム走行用ガイド61が機構の両側にわたって水平方向に平行に配置されている。それらのポット移動アーム走行用ガイド61に沿って複数のマガジン10その他が一列に並んで設けられている。
【0049】
ポット移動アーム22は、昇降用駆動部71によって垂直方向又は上下方向に昇降される。
【0050】
2本のポット移動アーム走行用ガイド61に沿って、機構の両側間に延設された2本のベルト73、75を介して走行用駆動部77(好ましくは減速機とサーボモータを含む)によって水平方向に移動され、選択されたマガジンの位置で停止する。
【0051】
2本のポット移動アーム走行用ガイド61とポット移動アーム22によって、第1ガイド部分51は所望の縦方向と横方向の位置に設定できる。
【0052】
図6を参照して説明する。
【0053】
第1マガジン10に収納されている多数のツールのうち、No.1のツール12が制御装置(図示せず)によって呼び出され(選択され)、マガジン10のポット出し入れ位置に設けられた油圧シリンダ55によって、そのNo.1のツール12とそれ用のポット14が一緒に第1マガジン10から押し出され、第1ガイド部分51に沿って、図6において右方向に移送される。その際、No.1のツール12とそれ用のポット14がポット移動アーム22の下方位置に到来するまで、ポットロックシリンダ57の作用で、ポット14はポット把持部59によって把持される。
【0054】
次に、ポット移動アーム22を下降させて、複数のツメで、例えば、ツメ22aでNo.1のツール12のVフランジ部分をつかみ、ツメ22b、22cでポット14の2箇所をつかむ。
【0055】
符号103は、ツメ22a、22b、22cでツールとポット14をロックして把持するためのポットロックシリンダを示す。
【0056】
ポットロックシリンダ103を作動させて「ロック」状態にしたまま、ポット移動アーム22を上昇させて、No.1のツール12とポット14を一緒に第2ガイド部分26の入口に移動させる。
【0057】
第2ガイド部分26の入口において、ポット把持部65がポットロックシリンダ105の作用でポット14を把持する。ポット14が把持された状態で、ポット14とそこに装着されたツール12が第2駆動手段101によって待機位置100まで搬送されていく。
【0058】
使用前のNo.1のツール12とポット14が待機位置100に到来したあと、工具交換アーム28が作動し、1対の把持部28a、28bが回動し、待機位置100に存在する使用前のNo.1のツール12と、主軸30に装着されている使用後のNo.51にツール18とが交換される。つまり、No.1のツール12をポット14から取り外すとともに、No.51のツール18を主軸30から取り外し、そのあと、それらを180°回転させ、さらに、No.1のツール12を主軸30に装着するとともに、No.51のツール18をポット18に装着する。
【0059】
使用後のNo.51のツール18とポット14は、図2に示されているように、ガイドに沿って所定のマガジンに向けて搬送される。その際、ポットロックシリンダ103、105、ポット移動アーム22、把持部59、65、油圧シリンダ55その他は、ポット14がマガジンから待機位置100まで搬送されてきたときとは逆の順序で同様の動作をする。
【0060】
前述の実施例によれば、マガジンと待機位置100との間でツールとポットがつねに一緒になっており、ポットがサポートされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールを装着したポットが数多く収納された少なくとも1つのマガジンと、
マガジン側の位置と主軸近くの待機位置との間で1つずつツールを装着したポットを搬送する搬送手段と、
待機位置で待機中のポットから使用前のツールを取り出して主軸に装着するとともに、主軸に装着されていた使用後のツールを主軸から取り出してポットに装着する工具交換アームと
を有する自動工具収納機構。
【請求項2】
搬送手段が、マガジン側の位置と主軸近くの待機位置との間に設けられたガイドと、ツールを装着したポットをガイドに沿って移動させるポット移動手段を有することを特徴とする請求項1に記載の自動工具収納機構。
【請求項3】
ガイドが、マガジン側の第1ガイド部分と、第1ガイド部分と待機位置との間でツールを装着したポットをガイドする第2ガイド部分を有することを特徴とする請求項2に記載の自動工具収納機構。
【請求項4】
ポット移動手段が、ツールを装着したポットを第1ガイド部分とマガジンとの間で移動する油圧シリンダと、ツールを装着したポットを移動するボールネジ及びサーボモータとを有することを特徴とする請求項2に記載の自動工具収納機構。
【請求項5】
さらに、ポット移動手段が、ツールを装着したポットを第1ガイド部分と第2ガイド部分との間で移動するポット移動アームを有することを特徴とする請求項2又は4記載の自動工具収納機構。
【請求項6】
複数のマガジンが、ポット移動アーム走行用ガイドに沿って並んで配置されており、ポット移動アームをポット移動アーム走行用ガイド上で走行させる駆動手段が設けられており、選択された1つのマガジンのところでポット移動アームを停止して、そのマガジンと第1ガイド部分との間で、ツールを装着したポットを移動することを特徴とする請求項5に記載の自動工具収納機構。
【請求項7】
複数のマガジンに収納されるポットの総数が数百であることを特徴とする請求項6に記載の自動工具収納機構。
【請求項8】
ポット移動アームがベルトの使用によってポット移動アーム走行用ガイドに沿って走行することを特徴とする請求項6に記載の自動工具収納機構。
【請求項9】
ポット移動アームが、ポットをつかむツメとツールをつかむツメを有することを特徴とする請求項6又は8に記載の自動工具収納機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−253588(P2010−253588A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104249(P2009−104249)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ツールポット
【出願人】(000104537)キタムラ機械株式会社 (19)
【Fターム(参考)】