説明

自動柄合わせ装置および自動柄合わせ用プログラム

【課題】 柄物生地の無駄な使用を避けると共に、裁断の自動化を図り、低コストで高品質な柄物製品を提供する。
【解決手段】 裁断用のテーブルに延反された柄物生地の撮像データを受け取る撮像データ受信手段11,16と、撮像データを表示する表示処理手段11と、柄物生地の柄情報を理論値として格納すると共に、各構成パーツの形状および大きさと、各構成パーツと柄物生地の柄との位置関係を特定する位置情報とを格納しておく記憶手段15と、柄の指定基準点の情報を受け付ける指定基準点受付手段11,16と、柄物生地の撮像データにおける複数の基準点を探索する基準点探索手段11と、基準点探索手段11によって探索された基準点に基づいて、各構成パーツを配置するための実状のマトリックスを作製する実状マトリックス作製手段11と、各構成パーツを、実状マトリックス内に配置する構成パーツ配置手段11と、各構成パーツの配置データを、裁断装置側に送出する構成パーツ配置データ送出手段11,16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柄物製品の各構成パーツ間の柄が合うように裁断可能とする自動柄合わせ装置および当該装置のコンピュータにインストールして使用する自動柄合わせ用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
布製品の製造工程には、裁断機に生地を延反して、布製品を構成する各構成パーツを予め決められた大きさと形状に切り出す裁断工程がある。図23は、裁断工程に先立って、生地210に、各構成パーツ220を配置した状態の一例を示す図である。裁断機に延反された生地には多少なりともたるみやしわが生じる。布製品が無地の場合には、各構成パーツ間における柄の連続性あるいは統一性を考慮する必要がない。このため、生地にたるみやしわが生じていても、予め決められた裁断用データに基づいて裁断すれば良い。
【0003】
しかし、布製品が柄物の場合には、予め決められた裁断用データに基づいて、たるみ等のある生地を切り出すと、各構成パーツ間で柄の連続性あるいは統一性がなくなる。例えば、図24に示すように、上着230を構成する構成パーツ231と構成パーツ232の合わせ部分233、および腕Xを出す肩口234と構成パーツ231および232との間で、柄の連続性あるいは統一性がなくなる事態が生じ得る。
【0004】
柄の連続性あるいは統一性がない衣服等の商品価値は低くならざるを得ない。このため、アパレルメーカは、実際に裁断機に延反された柄物生地から、余裕を見て大きめの構成パーツを切り出し、その後で柄が合うように、手動で各構成パーツを切っている。
【0005】
一方、様々な自動柄合わせシステムも考えられており、例えば、特許文献1に開示される画像認識装置が知られている。この装置は、100%の自動柄合わせが困難であるような微妙な柄を有する布地に対し、自動柄合わせシステムで柄合わせ不可と判定された場合、操作性良く手動による柄合わせを実施できるようにしたものである。
【0006】
【特許文献1】特開平4−240261号公報(特許請求の範囲、要約書など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の方法には、次のような問題がある。大きめのパーツを切り出すと、柄物生地をそれだけ余分に使用することになり、商品のコストアップにつながる。また、最終的に、手動で各構成パーツを切るので、完全な自動化ができず、やはり商品のコストアップを招いてしまう。
【0008】
一方、特開平4−240261号公報に開示される画像認識装置の場合には、柄によっては自動柄合わせができず、どうしても手動による柄合わせが必要になる。このため、依然として、各構成パーツの柄合わせを完全自動化することができない。このため、商品のコストアップを招いてしまう。
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、柄物生地の無駄な使用を避けると共に、裁断の自動化を図り、低コストで高品質な柄物製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、柄物生地から作製される柄物製品の構成パーツを裁断するにあたり各構成パーツ間の柄を合わせる自動柄合わせ装置において、裁断用のテーブルに延反された上記柄物生地の撮像データを受け取る撮像データ受信手段と、撮像データを表示する表示処理手段と、柄物生地の柄情報を理論値として格納すると共に、各構成パーツの形状および大きさと、各構成パーツと柄物生地の柄との位置関係を特定する位置情報と、を格納しておく記憶手段と、柄の指定基準点の情報を受け付ける指定基準点受付手段と、柄の指定基準点の情報に合致する、柄物生地の撮像データにおける複数の基準点を探索する基準点探索手段と、基準点探索手段によって探索された基準点に基づいて、各構成パーツを配置するための実状のマトリックスを作製する実状マトリックス作製手段と、各構成パーツを、実状のマトリックス内に配置する構成パーツ配置手段と、各構成パーツの配置データを、裁断装置側に送出する構成パーツ配置データ送出手段とを備える自動柄合わせ装置としている。このため、裁断用のテーブルに延反された実際の柄物生地に応じた適切な構成パーツの配置が実現できる。これによって、各構成パーツを合わせた際に、各構成パーツ間の柄の連続性あるいは統一性を図ることができる。
【0011】
また、別の本発明は、先の発明における構成パーツ配置手段が各構成パーツの一つを配置した後、当該一つの構成パーツの位置情報に基づいて次の構成パーツの位置を特定して、当該次の構成パーツを配置するというように、各構成パーツを順に配置する自動柄合わせ装置としている。このため、柄に対する各構成パーツの絶対位置の情報を記憶しておく必要がなく、構成パーツ間の相対位置情報のみを記憶しておくだけで良い。これによって、理論上のマトリックスから実状のマトリックスへの変更に伴い、各構成パーツの位置情報を変更する必要はなくなる。
【0012】
また、別の本発明は、先の発明における構成パーツ配置手段が実状のマトリックスの長さ方向の原点側に寄せるように全ての構成パーツを配置する自動柄合わせ装置としている。このため、柄物生地を無駄にせず、有効利用できる。
【0013】
また、別の本発明は、先の発明に加えて、柄物生地において各構成パーツの配置に好ましくない部分の指定を受け付ける不良部受付手段をさらに備え、構成パーツ配置手段が不良部受付手段によって受け付けられた指定部分の位置情報に基づいて、上記部分を避けるように各構成パーツを配置する自動柄合わせ装置としている。このため、柄物生地に傷、汚れ等の不良部が存在していても、その部分を避けて各構成パーツを配置できる。
【0014】
また、別の本発明は、先の発明に加えて、基準点の一部の変更を受け付ける基準点変更受付手段を、さらに備え、基準点探索手段が基準点変更手段によって受け付けられた新たな基準点を指定基準点として、他の前記基準点をあらためて探索し、実状マトリックス作製手段がその新たな基準点に基づいて実状のマトリックスを作製する自動柄合わせ装置としている。このため、実状のマトリックスを再度確認して、さらに好適な実状のマトリックスを簡単に作製し直すことができる。
【0015】
また、別の本発明は、柄物生地から作製される柄物製品の構成パーツを裁断するにあたり各構成パーツ間の柄を合わせる自動柄合わせ装置にインストールされる自動柄合わせ用プログラムにおいて、自動柄合わせ装置を、裁断用のテーブルに延反された柄物生地の撮像データを受け取る撮像データ受信手段と、撮像データを表示する表示処理手段と、柄物生地の柄情報を理論値として格納すると共に、各構成パーツの形状および大きさと、各構成パーツと柄物生地の柄との位置関係を特定する位置情報と、を格納しておく記憶手段と、柄の指定基準点の情報を受け付ける指定基準点受付手段と、柄の指定基準点の情報に合致する、柄物生地の撮像データにおける複数の基準点を探索する基準点探索手段と、基準点探索手段によって探索された基準点に基づいて、各構成パーツを配置するための実状のマトリックスを作製する実状マトリックス作製手段と、各構成パーツを、実状のマトリックス内に配置する構成パーツ配置手段と、各構成パーツの配置データを、裁断装置側に送出する構成パーツ配置データ送出手段と備える装置として機能させる自動柄合わせ用プログラムとしている。このため、本発明の自動柄合わせ用プログラムをコンピュータにインストールして実行することによって、裁断用のテーブルに延反された実際の柄物生地に応じた適切な構成パーツの配置が実現できる。これによって、各構成パーツを合わせた際に、各パーツ間の柄の連続性あるいは統一性を図ることができる。
【0016】
また、別の本発明は、先の発明において、構成パーツ配置手段が各構成パーツの一つを配置した後、当該一つの構成パーツの位置情報に基づいて次の構成パーツの位置を特定して、当該次の構成パーツを配置するというように、各構成パーツを順に配置するように機能させる自動柄合わせ用プログラムとしている。このため、柄に対する各構成パーツの絶対位置の情報を記憶しておく必要がなく、構成パーツ間の相対位置情報のみを記憶しておくだけで良い。これによって、理論上のマトリックスから実状のマトリックスへの変更に伴い、各構成パーツの位置情報を変更する必要はなくなる。
【0017】
また、別の本発明は、先の発明において、構成パーツ配置手段が実状のマトリックスの長さ方向の原点側に寄せるようにに全ての構成パーツの配置を実行するように機能させる自動柄合わせ用プログラムとしている。このため、柄物生地を無駄にせず、有効利用できる。
【0018】
また、別の本発明は、先の発明に加えて、柄物生地において各構成パーツの配置に好ましくない部分の指定を受け付ける不良部受付手段をさらに備えるようにし、構成パーツ配置手段が不良部受付手段によって受け付けられた指定部分の位置情報に基づいて、上記部分を避けるように各構成パーツを配置するように機能させる自動柄合わせ用プログラムとしている。このため、柄物生地に傷、汚れ等の不良部が存在していても、その部分を避けて各構成パーツを配置できる。
【0019】
また、別の本発明は、先の発明に加えて、基準点の一部の変更を受け付ける基準点変更受付手段をさらに備えるようにし、基準点探索手段が、基準点変更手段によって受け付けられた新たな基準点を指定基準点として、他の基準点をあらためて探索し、実状マトリックス作製手段がその新たな基準点に基づいて実状のマトリックスを作製するように機能させる自動柄合わせ用プログラムとしている。このため、実状のマトリックスを再度確認して、さらに好適な実状マトリックスを簡単に作製し直すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低コストで高品質な柄物製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明に係る自動柄合わせ装置および自動柄合わせ用プログラムの実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、自動柄合わせシステムを示す図である。
【0023】
この自動柄合わせシステムは、本発明の実施の形態に係る自動柄合わせ装置1と、裁断機制御装置2と、撮像装置制御装置3と、自動柄合わせ装置1と裁断機制御装置2と撮像装置制御装置3に接続され互いにデータの送受信を可能とする分配器4と、撮像装置5と、撮像装置制御装置3と撮像装置5とに接続され互いにデータの送受信を可能とする分配器6と、裁断機制御装置2に接続される裁断用のテーブル(以後、単に、「テーブル」という。)7とを備えている。
【0024】
自動柄合わせ装置1は、複数の撮像装置5を使用してテーブル7に延反された柄物生地8を撮像した複数の撮像データを受け取って、それら撮像データの補正を行ってから1つの撮像データに合成して表示する。ただし、受け取った撮像データが1つのみの場合には、合成は行われない。また、自動柄合わせ装置1は、オペレータの操作に基づいて、表示された柄物生地8上に布製品の構成パーツを配置するための実状のマトリックスを作製する。その後、その実状のマトリックス上に、各構成パーツを配置し、裁断用データに変換してから、裁断機制御装置2に変換データを送信する。これらの各処理については、詳細に後述する。
【0025】
裁断機制御装置2は、テーブル7に延反された柄物生地8を、自動柄合わせ装置1から送信された変換データに基づいて制御しながら裁断する装置である。
【0026】
撮像装置制御装置3は、分配器6を介して複数(この実施の形態では、4台)の撮像装置5と接続され、オペレータの指示にしたがって、撮像装置5のシャッターをオンにしたり、撮像装置5からの撮像データの受信を行う装置である。
【0027】
撮像装置5は、テーブル7の上方に固定され、柄物生地8を撮影する装置である。この実施の形態では、撮像装置5としてデジタルカメラを使用しているが、デジタルカメラ以外の撮像装置、例えば、アナログカメラ、ビデオ装置等を使用しても良い。また、柄物生地8の大きさに応じて、撮像装置5の台数、撮像装置5とテーブル7との間の距離は、任意に設定することができる。
【0028】
テーブル7は、裁断対象の柄物生地8を延反するための平滑なテーブルであり、不図示のカッターによって柄物生地8を各構成パーツに裁断する場所である。
【0029】
図2は、図1に示す自動柄合わせシステムを用いて柄物生地8を裁断するための処理の概略の工程を簡単に示すフローチャートである。
【0030】
まず、オペレータの指示に基づいて、柄物生地8の生地情報(生地情報には、柄情報も含まれる。)の入力が行われる(ステップS1)。生地情報には、生地巾、生地長さ、横方向柄スタート位置、巾方向柄スタート位置、柄特有の情報(例えば、柄が格子模様の場合には、柄の横方向および巾方向の各柄ピッチ)、および各構成パーツの形状および大きさ、各構成パーツの柄物生地8の柄に対する位置の情報などが含まれる。
【0031】
次に、オペレータの指示に基づいて、柄物生地8の撮影が行われる(ステップS2)。撮像装置5のシャッターは、撮像装置制御装置3の操作によって行われる。ただし、撮像装置制御装置3の操作によらず、撮像装置5のシャッターを押すことによって撮像を行っても良い。
【0032】
次に、レンズ歪の補正およびオルソ画像の作成処理が行われる(ステップS3)。レンズ歪の補正は、各撮像装置5毎のレンズの歪を考慮して、各撮像データの補正を行うものである。オルソ画像の作成は、撮像装置5毎の形状補正データと合成のための補正基礎データ(キャリブレーションデータ)により、画像の奥行き成分を取り除いた画像を作成するものである。
【0033】
次に、各補正後の撮像データを、キャリブレーションデータに基づいて合成する(ステップS4)。
【0034】
次に、合成された画像を表示させ、その合成画像上にて、実際の物理柄(この実施の形態では、格子模様なので、物理柄線である。)を作製する(ステップS5)。ここで、物理柄は、先に言及した「実状のマトリックス」と同義である。この際、物理柄の作製に先立ち、理想上の柄(この実施の形態では、柄線である。)を理論値柄として表示させる。ただし、理論値柄の表示は必須の処理ではなく、理論値柄を非表示にしても良い。
【0035】
次に、物理柄への構成パーツの自動配置が実行される(ステップS6)。この処理は、予め登録された柄合わせ手順に従って行われる。柄合わせ手順の登録とは、例えば、柄物生地8と構成パーツの合わせ(柄線上、柄線と柄線の中間、柄線上又は中間に合わせる、全く合わせない)、構成パーツと構成パーツの合わせ方(相対位置合わせ、対象位置合わせ、柄に対する率合わせ、全く合わせない)の登録をいう。当該自動配置は、所定時間内に複数回試行される。その結果、実状のマトリックスの長さ方向の原点側に最も寄せるように配置された配置パターンが選択される。
【0036】
次に、選択された各構成パーツの配置パターンに基づいて、当該各構成パターンの位置情報を、裁断機で裁断できるようにするためのデータ(これを、NCデータという。)に変換する(ステップS7)。
【0037】
次に、テーブル7上で延反された柄物生地8が、NCデータに基づいて自動裁断される(ステップS8)。
【0038】
図2に示す各工程の詳細については、後述する。
【0039】
図3は、自動柄合わせ装置1中のハードウェアの構成を示す図である。
【0040】
自動柄合わせ装置1は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)11と、マスクロム(masked Read only Memory:masked ROM)12と、RAM(Random Access Memory)13と、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)14と、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)15と、インターフェイス(I/F)16とを備えている。CPU11、マスクロム12、RAM13、EEPROM14、HDD15およびI/F16は、互いにデータのやりとりが可能なように、通信線であるバス17によって接続されている。
【0041】
CPU11は、自動柄合わせ装置1が行う各種制御を司る部分である。本発明では、CPU11は、柄物生地8の各部分を分割して撮影した撮像データを受け取る撮像データ受信手段である。また、CPU11は、その受信したデータの補正および補正後の全撮像データの合成を行う。また、CPU11は、合成後の撮像データを不図示のディスプレイに表示させる表示処理手段でもある。また、CPU11は、柄物生地8の撮像データにおける柄の指定基準点の情報を受け付ける指定基準点受付手段と、柄の指定基準点の情報に合致する、柄物生地8の撮像データにおける複数の基準点を探索する基準点探索手段と、その基準点探索手段によって探索された基準点に基づいて、各構成パーツを配置するための実状のマトリックスを作製する実状マトリックス作製手段と、各構成パーツを実状のマトリックス内に配置する構成パーツ配置手段と、各構成パーツの配置データを、裁断装置側に送出する構成パーツ配置データ送出手段とを兼ねる。本実施の形態では、柄の指定基準点の情報とは、オペレータが指定した指定基準点を含む領域の画像データである。ただし、当該情報は画像データに限定されず、他の基準点と照合可能な情報、例えば、指定基準点を含む領域内のRGBデータ、当該領域内の特定の模様部分のデータでも良い。
【0042】
この実施の形態では、後述のように、CPU11は、構成パーツ配置手段として、各構成パーツの一つを配置した後、当該一つの構成パーツの位置情報に基づいて次の構成パーツの位置を特定して、当該次の構成パーツを配置している。さらに、CPU11は、構成パーツ配置手段として、実状のマトリックスの長さ方向の原点側に寄せるように全ての構成パーツを配置している。
【0043】
また、CPU11は、柄物生地8において、各構成パーツの配置に好ましくない部分の指定を受け付ける不良部受付手段を兼ね、当該部分の指定があった場合、構成パーツ配置手段として、指定された部分の位置情報に基づいて、その部分を避けるように各構成パーツを配置している。
【0044】
また、CPU11は、基準点の一部の変更を受け付ける基準点変更受付手段を兼ね、当該変更を受け付けた場合、基準点探索手段として、受け付けられた新たな基準点を指定基準点とみなして他の基準点をあらためて探索する。さらに、その場合、CPU11は、実状マトリックス作製手段として、その新たな基準点に基づいて実状のマトリックスを作製する。
【0045】
CPU11は、本発明の自動柄合わせ用プログラムを読んで、プログラムで規定された各処理を実行する。上述のCPU11の各手段としての詳細な機能については後述する。
【0046】
マスクロム12は、CPU11の制御プログラムなどの通常書き換えの必要のないプログラムおよびその他データを記憶しておく部分である。RAM13は、読み書き自在な記憶部分であり、表示データのメモリなどの機能を持つ。EEPROM14は、電気的に書き換え可能な記憶部分である。
【0047】
HDD15は、柄物生地8の柄情報を理論値として格納すると共に、各構成パーツの形状および大きさと、各構成パーツと柄物生地8の柄との位置関係を特定する位置情報とを格納しておく記憶手段である。また、HDD15は、外部からインストールされた本発明の自動柄合わせ用プログラムを記憶する部分でもある。
【0048】
I/F16は、自動柄合わせ装置1の外部機器(分配器4、自動柄合わせ装置1に付随するキーボード、ポインティングデバイス等)との間でデータの送信あるいは受信を行う部分である。I/F16は、CPU11と共に指定基準点受付手段、構成パーツ配置データ送出手段、不良部受付手段 あるいは基準点変更受付手段でもある。
【0049】
図4は、裁断機制御装置2中のハードウェアの構成を示す図である。
【0050】
裁断機制御装置2は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)21と、マスクロム(masked Read only Memory:masked ROM)22と、RAM(Random Access Memory)23と、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)24と、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)25と、インターフェイス(I/F)26とを備えている。CPU21、マスクロム22、RAM23、EEPROM24、HDD25およびI/F26は、互いにデータのやりとりが可能なように、通信線であるバス27によって接続されている。
【0051】
CPU21は、裁断機制御装置2が行う各種制御を司る部分である。本発明では、CPU21は、自動柄合わせ装置1から送られてきたNCデータに基づいて、裁断機のカッターの動きを制御しながら柄物生地8の裁断を行う部分である。
【0052】
マスクロム22は、CPU21の制御プログラムなどの通常書き換えの必要のないプログラムおよびその他データを記憶しておく部分である。RAM23は、読み書き自在な記憶部分であり、表示データのメモリなどの機能を持つ。EEPROM24は、電気的に書き換え可能な記憶部分である。HDD25は、外部からインストールされるプログラムを記憶する部分である。I/F26は、裁断機制御装置2の外部機器(分配器4、裁断機制御装置2に付随するキーボード、ポインティングデバイス等)との間でデータの送信あるいは受信を行う部分である。
【0053】
なお、自動柄合わせ装置1は、専用装置でなく、汎用のパーソナルコンピュータのハードウェアと同じハード構成としても、ソフトウェアとして本発明の自動柄合わせ用プログラムを自動柄合わせ装置1にインストールすることにより本発明の各種処理を実現できる。また、裁断機制御装置2も、汎用のパーソナルコンピュータを利用することができる。
【0054】
次に、自動柄合わせシステムが行う自動柄合わせ処理の概要を説明する。
【0055】
図5は、衣服を構成する各構成パーツの一部を示す図である。
【0056】
構成パーツ31〜37は、特定の位置において柄の連続性若しくは統一性を要求される。例えば、柄が格子模様の場合には、柄が構成パーツの特定の箇所においてずれることなく連続していることが要求される。
【0057】
図5に示すように、構成パーツ32(下袖32)の位置Aと構成パーツ34(山袖34)の位置Bとが合うので、位置Aと位置Bとで柄が連続しなければならない。また、同様に、構成パーツ33(前身33)の位置Cと山袖34の位置Dとで、前身33の位置Eと構成パーツ35(腰フタ35)の位置Fとで、構成パーツ36(後身頃36)の位置Gと腰フタ35の位置Hとで、構成パーツ37(表襟37)の位置Iと後身頃36の位置Jとで、それぞれ柄が連続しなければならない。
【0058】
図6は、理想的(理論的)な柄40(「理論柄40」という。)に配置される構成パーツ41(6A)と、実際にテーブル7に延反された柄物生地8に基づいて作製された柄(「物理柄50」という。)に配置される構成パーツ51(6B)とを示す図である。
【0059】
図6(6B)の点線で示すように、構成パーツ41をその絶対位置のまま物理柄50上に配置すると、構成パーツ41を裁断した際に、理論柄40上の構成パーツ41の所定位置K,Lの柄が物理柄50上の構成パーツ41の所定位置K,Lの柄と同一とはならなくなる。物理柄50は、しわやたるみを有する実際の柄物生地8に基づいて作製されるために、理論柄40と異なるのである。したがって、構成パーツ41(点線で示す)とずれた位置になるように、構成パーツ51(実線で示す)を物理柄50上に配置しなければならない。このように補正配置された構成パーツ51を裁断すると、理論柄40上の構成パーツ41と近い柄の状態になる。
【0060】
図7は、実際の柄物生地60に基づいて物理柄70を作製する方法を説明するための図である。図7(7A)は、実際の柄物生地60を、図7(7B)は、物理柄70を、それぞれ示す。
【0061】
図7(7A)に示すように、この実施の形態における実際の柄物生地60は、縦方向の柄線61と横方向の柄線62とが直交する格子柄を有している。物理柄70を作製するには、まず、撮像した実際の柄物生地60上の原点63の位置が特定された状態で、オペレータが指定基準点64の位置を決める。次に、オペレータは、各基準点を探索するための照合用の領域66の画像のデータをHDD15に記憶する。
【0062】
CPU11は、理論柄40に基づく座標点の周辺65を探索し、上記照合用の領域66の画像と一致する部分を求め、基準点を特定する。もちろん、オペレータが各基準点を一つずつ手動で探索することも可能である。しかし、全ての基準点を手動で探索すると、膨大な時間がかかる。また、CPU11が理論柄40に基づく座標点を利用せずに、各基準点を探索することも可能であるが、やはり膨大な時間がかかる。このため、CPU11は、理論柄40に基づく座標点を利用して各座標点周辺を探索し、指定基準点64にて得られた照合用の領域66の画像と一致する柄を持つ部分の中心を各基準点とするようにしている。
【0063】
こうして各基準点を決定すると、CPU11は、各基準点をつないで、図7(7B)に示すような物理柄70を作製する。物理柄70は、縦方向の柄線71と横方向の柄線72とから構成され、この実施の形態では、実際の柄物生地60と近似した柄となっている。
【0064】
図8は、自動柄合わせ装置1のディスプレイ(不図示)に表示された実際の柄物生地60の合成画像と物理柄70とを重ねて表示した状態の部分拡大図である。
【0065】
図8に示すように、実際の柄物生地60の縦方向の柄線61および横方向の柄線62と、物理柄70の縦方向の柄線71および横方向の柄線72とは、一致するのが好ましい。しかし、基準点の探索が完全ではない場合もあり、その場合、実際の柄物生地60の合成画像と物理柄70との間に若干のずれが生じ得る。かかる場合には、オペレータの操作により、ずれた基準点を修正して、新たに各基準点の自動探索を行うこともできる。
【0066】
図9は、物理柄70上に全ての構成パーツ80を配置した状態を示す図である。
【0067】
物理柄70の作製が終わると、各構成パーツ80を物理柄70上に配置する工程が実行される。この配置は、図5に基づいて説明した各構成パーツ間の柄の連続性若しくは統一性を図ることを前提に複数回試行される。当該試行の結果、実状のマトリックスの長さ方向の原点側に最も寄るように全構成パーツ80が配置された配置パターンが採択される。
【0068】
次に、自動柄合わせ装置1、裁断機制御装置2および撮像装置制御装置3が実行する処理および自動柄合わせ装置1のディスプレイ(不図示)に表示される画面の一例について説明する。
【0069】
図10は、オペレータの操作に基づいて自動柄合わせ装置1が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0070】
オペレータが予め柄物生地8に関する生地情報を自動柄合わせ装置1に付随するキーボード(不図示)から入力すると、自動柄合わせ装置1のI/F16は当該生地情報を受け付ける(ステップS101)。次に、自動柄合わせ装置1のCPU11は、当該生地情報を、HDD15に記憶する(ステップS102)。
【0071】
図11は、オペレータの操作に基づいて撮像装置制御装置3が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0072】
オペレータが撮像装置制御装置3を起動して、同装置3に付随するキーボード(不図示)を操作して柄物生地8の撮影を指示すると、撮像装置制御装置3のCPUは、撮像指示のコマンドを撮像装置5に送信して柄物生地8の撮影を行う(ステップS201)。次に、撮像装置制御装置3のCPUは、撮像された柄物生地8のデータ(撮像データ)を撮像装置5から受け取り、これを自動柄合わせ装置1に送信する(ステップS202)。
【0073】
図12は、オペレータの操作に基づいて自動柄合わせ装置1が行う処理の流れを示すフローチャートである。また、図13は、図12に示す処理の後に、オペレータの操作に基づいて裁断機制御装置2が行う処理の流れを示すフローチャートである。また、図14から図21は、図12に示す処理の間に自動柄合わせ装置1のディスプレイ(不図示)に表示される画面の一例を示す図である。
【0074】
図11に示すステップS202に続き、自動柄合わせ装置1のI/F16は、複数の撮像データを受信する(ステップS301)。自動柄合わせ装置1のCPU11は、受信された複数の撮像データをHDD15に格納する。次に、CPU11は、レンズ歪の補正およびオルソ画像の作製を行う(ステップS302)。次に、CPU11は、各補正後のデータを、キャリブレーションデータに基づいて合成し(ステップS303)、合成画像データを自動柄合わせ装置1のディスプレイに表示する(ステップS304)。ステップS304は、ステップS303に続いて自動的に行われる処理であっても、あるいはオペレータの操作によって行われる処理であっても良い。
【0075】
図14は、ステップS304の処理により自動柄合わせ装置1のディスプレイに表示される画面110(実際の柄物生地60の合成画像を含む)を示す図である。
【0076】
この画面110は、略中央に実際の柄物生地60の合成画像(この実施の形態では、縦方向の柄線61と横方向の柄線62の格子柄の画像である。)を表示する表示領域111と、表示領域111の隣に表示される、各種操作キーを集めた領域112と、を有している。領域112には、実際の柄物生地60の合成画像を低倍表示する表示領域113と、カラー選択指示キー114と、線選択指示キー115と、原点設定キー116と、傷パーツ指示キー117と、画像情報キー118と、自動探索キー119と、配置開始キー120と、中止キー121とが配置されている。これらのキー114〜121は、アイコンの形態を有している。また、表示領域111の下には、オペレータへのメッセージを表示させる表示欄122も配置されている。
【0077】
表示領域111は、付随のポインティングデバイス(不図示)の操作により、表示対象の拡大若しくは縮小が可能である。表示領域111内の表示対象の拡大若しくは縮小が行われた場合であっても、表示領域113に表示される倍率は最初の低倍率に固定されている。カラー選択指示キー114は、表示される原点、各種の柄線および傷パーツの色を設定および変更するためのキーである。線選択指示キー115は、各種の柄線および傷パーツの表示線幅を設定および変更するためのキーである。原点設定キー116は、原点を設定あるいは設定した原点を変更するためのキーである。
【0078】
傷パーツ指示キー117は、実際の柄物生地60の合成画像上に表示される傷などを指定するためのキーである。傷パーツ指示キー117をポインティングデバイスによりクリックすると、傷パーツ設定ダイアログが表示される。傷パーツは10パーツまで設定可能である。傷パーツ(1〜10)のチェックボックスをオンにすると、傷パーツとして有効となる。なお、傷パーツの設定個数は10に限定されず、10より少なくても(例えば、5)、10より多くても(例えば、20)良い。
【0079】
画像情報キー118は、編集中の画像データに関する情報を示すダイアログを表示するためのキーである。当該情報の一例として、例えば、画像データのファイル名、ドット数、解像度、表示スピード、長さの他、画像変更要否が含まれる。自動探索キー119は、各基準点の探索を開始するためのキーである。配置開始キー120は、各構成パーツ80を実状のマトリックスに配置するためのキーである。中止キー121は、編集の中止を指示するためのキーである。
【0080】
図12に示すステップS304に続いて、オペレータが原点設定キー116をクリックすると、自動柄合わせ装置1のCPU11は、I/F16を経由して、この原点指示コマンドを受け付け(ステップS305)、原点の位置を拡大して表示領域111に表示する(ステップS306)。
【0081】
図15は、ステップS306の処理によって表示される画面110を示す図である。
【0082】
図15の表示領域111には、図14に示す実際の柄物生地60の合成画像の左下方にある原点の位置が拡大表示されている。原点131は十字ボックス130の中心に存在する。原点131は、実状のマトリックスの長さ方向の端であって、柄物生地8の切り口側に存在する。なお、柄物生地8の撮像時に撮像されたメジャー132も拡大表示されている。
【0083】
原点131を変更したい場合には、オペレータがポインティングデバイスを用いて原点131をクリックする。すると、CPU11は、クリックによるコマンドを受け付け、柄線マトリックスパラメータ設定ダイアログ140を表示する。柄線マトリックスパラメータ設定ダイアログ140は、長手方向開始位置ボックス141、幅方向開始位置ボックス142、長手方向柄線間隔ボックス143、幅方向柄線間隔ボックス144、OKキー145およびキャンセルキー146を有している。
【0084】
原点131を変更する場合には、オペレータは、デフォルトで長手方向開始位置ボックス141および幅方向開始位置ボックス142に表示されている数値(単位は、センチ)を変更する。また、原点131の他、柄線間隔を変更する場合には、オペレータは、デフォルトで長手方向柄線間隔ボックス143および幅方向柄線間隔ボックス144に表示されている数値(単位は、センチ)を変更する。変更後、オペレータがOKキー145をクリックすると、入力された原点座標あるいは柄線間隔に決定される。一方、キャンセルキー146をクリックすると、変更は行われない。なお、柄線マトリックスパラメータ設定ダイアログ140に、「マトリックスの変更をしない」ことを指示するチェックボックスを設けることもできる。当該チェックボックスをチェックすると、原点131の位置だけが変更され、柄線の変更は行われない。
【0085】
図12に戻り、オペレータが照合用の領域66を指定して、自動探索キー119をクリックすると、CPU11は、I/F16を経由して、当該自動探索コマンドを受け付ける(ステップS307)。
【0086】
図16は、オペレータが照合用の領域66を指定する際の画面110を示す図である。なお、図16に示す画面110には、再度、指定基準点において照合用の領域66を決める例であるために、物理柄70の縦方向の柄線71と横方向の柄線72とが表示されている。しかし、最初に照合用の領域66を決める際には、柄線71および柄線72は存在しない一方で、理論柄60の柄線61および62が存在することがある。
【0087】
オペレータは、指定基準点(例えば、縦方向の柄線61と横方向の柄線62の略中央)を選び、選んだ指定基準点を中心とする照合用の領域66の大きさを決定する。すると、照合用の領域66の画像がHDD15に記憶される。
【0088】
図12に戻り、ステップS307に続いて、CPU11は、理論柄40に基づく座標点を利用して各基準点の探索を実行する(ステップS308)。探索に際し、照合用の領域66の画像と一致する部分から基準点が特定される。ただし、照合用の領域66の画像との一致は、完全一致としたり、あるいは完全一致ではなく、90%以上の一致といったある程度の誤差を加味した判断でも良い。
【0089】
次に、全ての基準点の探索に続き、CPU11は、全ての基準点をつないだ物理柄70の作製を実行する(ステップS309)。次に、CPU11は、手動による編集指示があるか否かを判断する待機状態となり(ステップS310)、オペレータによる手動編集指示があると、CPU11は、ステップS307に戻り、手動により変更のあった基準点を指定基準点とみなして、再度、他の基準点の探索を行う。
【0090】
図17は、実際の柄物生地60の合成画像に、物理柄70を重ねて表示させた状態の画面110を示す図である。図17に示すように、この実施の形態では、実際の柄物生地60の合成画像の格子柄とほぼ同じ形態の物理柄70が作製される。
【0091】
図18は、オペレータが物理柄70を修正したい場合に、実際の柄物生地60の合成画像と大きくずれた基準点155を移動する際の画面110を示す図である。
【0092】
オペレータが自動設定された基準点をチェックし、領域Mにある基準点155が実際の柄物生地60の合成画像とずれているとわかった場合、ポインティングデバイスを用いて基準点155を正しい交点位置の方向(図18では、例えば、矢印Nの方向)に移動できる。すると、図12に示すステップS307に戻って、再度、物理柄70の作製が実行される。
【0093】
図12に戻って、ステップS310の判断の結果、手動編集指示がない場合、CPU11は、オペレータが傷パーツ指示キー117のクリックにより入力された傷パーツ領域の指示コマンドを受け付けたか否かを判断する(ステップS311)。ここで、傷パーツは、柄物生地8上に存在する傷、汚れ等の、構成パーツ80を配置するにふさわしくない不良部を意味する。傷パーツ領域の指定がない場合には、オペレータが配置開始キー120のクリックにより構成パーツ80の配置指示を行うと、CPU11は、I/F16を経由して当該指示コマンドを受け付ける(ステップS313)。続いて、CPU11は、HDD15から各構成パーツ80の座標点の読み出しを実行する(ステップS314)。
【0094】
CPU11は、読み出した座標点に基づき、1つの構成パーツ80の配置を行う(ステップS315)。続いて、先の構成パーツ80の位置で相対的に決定される別の構成パーツ80の配置を行う(ステップS316)。CPU11は、全構成パーツ80を配置したか否かを判断し(ステップS317)、全構成パーツ80の配置が終了するまで、構成パーツ80を1つずつ配置していく。ステップS317の判断によって全構成パーツ80の配置が完了すると、CPU11は、実際の柄物生地60の合成画像において、全構成パーツ80を含む矩形領域の長さ方向の原点131からの距離を求める(ステップS318)。続いて、CPU11は、構成パーツ80を配置するための所定時間(例えば、1分間)が経過したか否かを判断する(ステップS319)。
【0095】
その結果、所定時間に達していない場合には、ステップS316に戻り、構成パーツ80の配置を継続する。一方、所定時間に達した場合には、CPU11は、複数回実行した構成パーツ80の配置の内で、原点131からの距離が最も短い配置パターンを選択する(ステップS320)。
【0096】
図19は、オペレータが構成パーツ80の配置を行う際の画面110を示す図である。
【0097】
構成パーツ80を配置する際、あるいは構成パーツ80を所定時間内で配置した後に再度別の条件で配置する際、オペレータは、配置開始キー120を指示する。CPU11は、その指示を受け付けて、自動配置ダイアログボックス160を表示する。自動配置ダイアログボックス160には、時間入力欄161、結果確認要否欄162,163、配置開始指示キー164および中止キー165が設けられている。時間入力欄161は、オペレータの入力操作によって、構成パーツ80の配置処理を行うタイムリミットを設定する欄である。結果確認要否欄162,163は、配置結果を逐一表示させるか否かを選択する欄である。結果確認要否欄162(「なし」表示の欄)は、配置結果の表示を希望しない場合に選択する欄である。一方、結果確認要否欄163(「あり」表示の欄)は、配置結果の表示を希望する場合に選択する欄である。また、配置開始指示キー164は、構成パーツ80の配置処理を開始するキーである。中止キー165は、配置処理を中止させるためのキーである。
【0098】
また、図19に示す画面110には、表示欄170〜174が設けられている。表示欄170には、マーカー名(例えば、「柄合わせ」)が表示されている。表示欄171〜174には、配置条件が表示されている。また、表示欄122には、オペレータの選択によって、構成パーツ80の配置直後に、全配置パーツ80の配置結果が表示される。
【0099】
図12に戻って、ステップS320に続いて、CPU11は、全構成パーツ80の占有矩形領域の長さ方向における原点131からの距離が最も短くなる配置パターン(最良の配置パターン)を表示する(ステップS321)。次に、CPU11は、最良の配置パターンに基づく各構成パーツ80のデータをNCデータに変換する(ステップS322)。次に、CPU11は、NCデータを裁断機制御装置2に向けて送信する(ステップS323)。
【0100】
一方、ステップS311において、オペレータによる傷パーツ領域の指示コマンドの送信が行われた場合には、CPU11は、指定された傷パーツ領域を固定の構成パーツ(固定パーツ)として認識し、これをHDD15に記憶する(ステップS312)。
【0101】
図20は、オペレータが傷パーツ領域180,181を指定する際の画面110を示す図である。また、図21は、傷パーツ領域180,181の指定後に構成パーツ80の配置を行った結果を示す図である。
【0102】
物理柄70の作製後、オペレータが傷パーツ指示キー117を押すと、自動柄合わせ装置1は、傷あるいは汚れの存在する部分を指定できる状態となる。オペレータがディスプレイに表示された実際の柄物生地60の合成画像をみながら、傷あるいは汚れの存在する部分を傷パーツ領域180,181で囲ってから、配置処理を開始すると、CPU11は、その領域を固定された構成パーツとして認識し、それらの領域以外に、各構成パーツ80の配置を行う。その結果、図21に示すように、図20に示される傷パーツ領域180,181は、構成パーツ80の配置パターンを表示する際に、斜線で示すような固定パーツ180a,181aとして表示される。
【0103】
ステップS323の処理が終了すると、図13に示すように、裁断機制御装置2は、自動柄合わせ装置1からNCデータを受信し(ステップS401)、原点131と裁断機上の原点とを合わせ(ステップS402)、当該NCデータに基づいて、柄物生地8の裁断処理を実行する(ステップS403)。
【0104】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述までの実施の形態に限定されることなく、種々の変更を施した形態にて実施可能である。
【0105】
上述の実施の形態は、格子柄を有する柄物生地8を使用する例であるが、柄が存在する限り、本発明は、格子柄に限定されずに他の柄を有する柄物生地に適用できる。
【0106】
図22は、格子柄以外の柄191を有する柄物生地190から衣類の構成パーツを切り出す方法を説明するための図である。(22A)は、理論柄192上の構成パーツ41を、(22B)は、物理柄195上の構成パーツ51を、それぞれ示す。
【0107】
柄物生地190は、多くの円模様の柄191を有している。柄物生地190の理論柄192は、規則正しい座標系(マトリックス)である。これに対して、物理柄195は、実際にテーブル7上に延反された柄物生地190の合成画像に基づいて作製されるので、部分的あるいは全体的にゆがんだ座標系(実状のマトリックス)になる。図22では、柄191の中心を通る縦軸および横軸によってマトリックスが構成されている。しかし、柄191の特定の位置を通る縦軸および横軸によってマトリックスを構成するようにしても良い。
【0108】
理論柄192上の構成パーツ41をそのままの位置で物理柄195に配置し(すなわち、図22(22B)の太点線領域のように配置し)、裁断しても、実際の柄物生地190にしわやゆがみがあるために各構成パーツの境界において模様の連続性等がなくなる。そこで、例えば、図22(22B)の太実線に示すように、物理柄195に基づいて構成パーツ51を配置し、裁断すると、柄191の連続性が確保できる。
【0109】
このように、柄が格子ではなくても、柄を利用した実状のマトリックスを作製しさえすれば、延反された実際の柄物生地に合致した構成パーツ51の配置ができ、柄の連続性等を確保できる。
【0110】
また、先に示した実施の形態では、自動柄合わせ装置1、裁断機制御装置2および撮像装置制御装置3の3種類の装置を採用しているが、1または2種類の装置を採用しても良い。例えば、1種類の装置を採用する場合には、当該1種類の装置が自動柄合わせ装置1、裁断機制御装置2および撮像装置制御装置3の機能を全て兼ね備えても良い。
【0111】
また、本発明の自動柄合わせ用プログラムは、先に示した実施の形態では、HDD15にインストールされて実行可能なプログラムである。当該プログラムは、CD−ROM、MD、FD等の情報記録媒体に格納して、市場において取引可能である。また、自動柄合わせ装置1とインターネット等の通信回線によって接続されるサーバから、本発明の自動柄合わせ用プログラムをダウンロードして、HDD15に当該プログラムを格納して、実行することもできる。
【0112】
また、CPU11は、撮像データ受信手段、表示処理手段、指定基準点受付手段、基準点探索手段、実状マトリックス作製手段、構成パーツ配置手段、構成パーツ配置データ送出手段、不良部受付手段および基準点変更受付手段を兼ねている。CPU11以外に、MPU(Micro Processing Unit)を独立して採用若しくは併用しても良い。CPU11に代替してMPUを使用する場合には、MPUは、撮像データ受信手段、表示処理手段、指定基準点受付手段、基準点探索手段、実状マトリックス作製手段、構成パーツ配置手段、構成パーツ配置データ送出手段、不良部受付手段および基準点変更受付手段を兼ねる。また、CPU11とMPUを使用する場合には、CPU11およびMPUは、上述の各手段を分担することもできる。
【0113】
また、HDD15は、記憶手段であるが、RAM13若しくはEEPROM14が記憶手段であっても良い。
【0114】
また、上述の実施の形態では、実状のマトリックスは格子形状であったが、格子以外の形状、例えば、複数の点、十字形状、菱形の集合等のいずれの形態でも良い。柄の位置を特定できるマトリックスになるのであれば、格子形状に限定されない。また、各構成パーツ80の配置処理は、所定時間内に複数回行われるのが好ましいが、1回だけでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、アパレル関連産業における衣服等の作製に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係る自動柄合わせ装置の実施の形態を含む自動柄合わせシステムを示す図である。
【図2】図1に示す自動柄合わせシステムを用いて柄物生地を裁断するための処理の概略の工程を簡単に示すフローチャートである。
【図3】図1に示す自動柄合わせ装置中のハードウェアの構成を示す図である。
【図4】図1に示す裁断機制御装置中のハードウェアの構成を示す図である。
【図5】衣服を構成する各構成パーツの一部を示す図である。
【図6】理論柄に配置される構成パーツ(6A)と、実際にテーブルに延反された柄物生地に基づいて作製された物理柄に配置される構成パーツ(6B)とを示す図である。
【図7】図1に示す自動柄合わせ装置によって実際の柄物生地に基づいて物理柄を作製する方法を説明するための図であり、(7A)は実際の柄物生地を、(7B)は物理柄を、それぞれ示す。
【図8】図1に示す自動柄合わせ装置のディスプレイに表示された実際の柄物生地の合成画像と物理柄とを重ねて表示した状態の部分拡大図である。
【図9】図1に示す自動柄合わせ装置によって物理柄上に全ての構成パーツを配置した状態を示す図である。
【図10】オペレータの操作に基づいて、図1に示す自動柄合わせ装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】オペレータの操作に基づいて、図1に示す撮像装置制御装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】オペレータの操作に基づいて、図1に示す自動柄合わせ装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】図12に示す処理の後に、オペレータの操作に基づいて、図1に示す裁断機制御装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】図12中のステップS304の処理により、図1に示す自動柄合わせ装置のディスプレイに表示される画面例を示す図である。
【図15】図12中のステップS306の処理によって、図1に示す自動柄合わせ装置のディスプレイに表示される画面例を示す図である。
【図16】図1に示す自動柄合わせ装置のディスプレイに表示される画面であって、オペレータが指定基準点を指定する際の画面例を示す図である。
【図17】図1に示す自動柄合わせ装置のディスプレイに表示される画面であって、実際の柄物生地の合成画像に、物理柄を重ねて表示させた状態の画面例を示す図である。
【図18】図1に示す自動柄合わせ装置のディスプレイに表示される画面であって、オペレータが物理柄を修正したい場合に、実際の柄物生地の合成画像と大きくずれた基準点を移動する際の画面例を示す図である。
【図19】図1に示す自動柄合わせ装置のディスプレイに表示される画面であって、オペレータが構成パーツの配置を行う際の画面例を示す図である。
【図20】図1に示す自動柄合わせ装置のディスプレイに表示される画面であって、オペレータが傷パーツ領域を指定する際の画面例を示す図である。
【図21】図20に示す画面例を経て、傷パーツ領域の指定後に構成パーツの配置を行った結果を示す図である。
【図22】本発明の他の実施の形態において、格子柄以外の柄を有する柄物生地から衣類の構成パーツを切り出す方法を説明するための図であり、(22A)は理論柄上の構成パーツを、(22B)は物理柄上の構成パーツを、それぞれ示す図である。
【図23】裁断工程に先立って、生地に、各構成パーツを配置した状態の一例を示す図である。
【図24】上着を構成する構成パーツの合わせ部分および腕を出す肩口と構成パーツとの間で、柄の連続性あるいは統一性が必要となることを説明する図である。
【符号の説明】
【0117】
1 自動柄合わせ装置
7 テーブル
8 柄物生地
11 CPU(撮像データ受信手段、表示処理手段、指定基準点受付手段、基準点探索手段、実状マトリックス作製手段、構成パーツ配置手段、構成パーツ配置データ送出手段、不良部受付手段、基準点変更受付手段)
15 HDD(記憶手段)
16 I/F(撮像データ受信手段、指定基準点受付手段、基準点変更受付手段)
31〜37 構成パーツ
41 構成パーツ
51 構成パーツ
64 指定基準点
70 物理柄(実状のマトリックス)
80 構成パーツ
155 基準点
195 物理柄(実状のマトリックス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄物生地から作製される柄物製品の構成パーツを裁断するにあたり各構成パーツ間の柄を合わせる自動柄合わせ装置において、
裁断用のテーブルに延反された上記柄物生地の撮像データを受け取る撮像データ受信手段と、
上記撮像データを表示する表示処理手段と、
上記柄物生地の柄情報を理論値として格納すると共に、上記各構成パーツの形状および大きさと、上記各構成パーツと上記柄物生地の柄との位置関係と、を特定する位置情報とを格納しておく記憶手段と、
上記柄の指定基準点の情報を受け付ける指定基準点受付手段と、
上記柄の指定基準点の情報に合致する、上記柄物生地の撮像データにおける複数の基準点を探索する基準点探索手段と、
上記基準点探索手段によって探索された基準点に基づいて、上記各構成パーツを配置するための実状のマトリックスを作製する実状マトリックス作製手段と、
各構成パーツを、上記実状のマトリックス内に配置する構成パーツ配置手段と、
上記各構成パーツの配置データを、裁断装置側に送出する構成パーツ配置データ送出手段と、
を備えることを特徴とする自動柄合わせ装置。
【請求項2】
前記構成パーツ配置手段は、前記各構成パーツの一つを配置した後、当該一つの構成パーツの位置情報に基づいて次の構成パーツの位置を特定し、当該次の構成パーツを配置するというように、前記各構成パーツを順に配置することを特徴とする請求項1記載の自動柄合わせ装置。
【請求項3】
前記構成パーツ配置手段は、前記実状のマトリックスの長さ方向の原点側に寄せるように全ての前記構成パーツを配置することを特徴とする請求項1記載の自動柄合わせ装置。
【請求項4】
前記柄物生地において、前記各構成パーツの配置に好ましくない部分の指定を受け付ける不良部受付手段をさらに備え、
前記構成パーツ配置手段は、上記不良部受付手段によって受け付けられた指定部分の位置情報に基づいて、上記部分を避けるように、前記各構成パーツを配置することを特徴とする請求項1記載の自動柄合わせ装置。
【請求項5】
前記基準点の一部の変更を受け付ける基準点変更受付手段を、さらに備え、
前記基準点探索手段は、上記基準点変更手段によって受け付けられた新たな前記基準点を前記指定基準点として、他の前記基準点をあらためて探索し、
前記実状マトリックス作製手段は、その新たな基準点に基づいて、前記実状のマトリックスを作製することを特徴とする請求項1記載の自動柄合わせ装置。
【請求項6】
柄物生地から作製される柄物製品の構成パーツを裁断するにあたり各構成パーツ間の柄を合わせる自動柄合わせ装置にインストールされる自動柄合わせ用プログラムにおいて、
上記自動柄合わせ装置を、
裁断用のテーブルに延反された上記柄物生地の撮像データを受け取る撮像データ受信手段と、
上記撮像データを表示する表示処理手段と、
上記柄物生地の柄情報を理論値として格納すると共に、上記各構成パーツの形状および大きさと、上記各構成パーツと上記柄物生地の柄との位置関係と、を特定する位置情報とを格納しておく記憶手段と、
上記柄の指定基準点の情報を受け付ける指定基準点受付手段と、
上記柄の指定基準点の情報に合致する、上記柄物生地の撮像データにおける複数の基準点を探索する基準点探索手段と、
上記基準点探索手段によって探索された基準点に基づいて、上記各構成パーツを配置するための実状のマトリックスを作製する実状マトリックス作製手段と、
各構成パーツを、上記実状のマトリックス内に配置する構成パーツ配置手段と、
上記各構成パーツの配置データを、裁断装置側に送出する構成パーツ配置データ送出手段と備える装置として機能させることを特徴とする自動柄合わせ用プログラム。
【請求項7】
前記構成パーツ配置手段が前記各構成パーツの一つを配置した後、当該一つの構成パーツの位置情報に基づいて次の構成パーツの位置を特定し、当該次の構成パーツを配置するというように、前記各構成パーツを順に配置するように機能させることを特徴とする請求項6記載の自動柄合わせ用プログラム。
【請求項8】
前記構成パーツ配置手段が前記実状マトリックスの長さ方向の原点側に寄せるように全ての前記構成パーツの配置を実行するように機能させることを特徴とする請求項6記載の自動柄合わせ用プログラム。
【請求項9】
前記柄物生地において、前記各構成パーツの配置に好ましくない部分の指定を受け付ける不良部受付手段をさらに備えるようにし、前記構成パーツ配置手段が、上記不良部受付手段によって受け付けられた指定部分の位置情報に基づいて、上記部分を避けるように、前記各構成パーツを配置するように機能させることを特徴とする請求項6記載の自動柄合わせ用プログラム。
【請求項10】
前記基準点の一部の変更を受け付ける基準点変更受付手段をさらに備えるようにし、
前記基準点探索手段が、上記基準点変更手段によって受け付けられた新たな前記基準点を前記指定基準点として、他の前記基準点をあらためて探索し、前記実状マトリックス作製手段がその新たな基準点に基づいて、前記実状のマトリックスを作製するように機能させることを特徴とする請求項6記載の自動柄合わせ用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−89860(P2006−89860A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274507(P2004−274507)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(500146738)株式会社 ユカアンドアルファ (2)
【Fターム(参考)】