説明

自動検針システム

【課題】計量器の検針を完全に自動化する自動検針システムを提供する。
【解決手段】計量器2による計量値が表示される検針窓200を周期的に撮像する撮像装置10と、撮像装置により周期的に撮像される検針窓の撮像画像に対して文字認識処理を行い、検針窓に表示される数字を逐次認識する自動検針装置20と、自動検針装置20の検診結果に応じて計量値を所定の外部装置に通知する計量値通知装置40とを備える。自動検針装置20は、文字認識により認識した数字が前回の文字認識により認識した数字と異なる場合にのみパルス信号を計量値通知装置40に送信する。計量値通知装置40は、パルス信号をカウントし、カウント値から計量値を導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力、ガス、水道等の使用量を表す計量値を測定するための計量器に対して自動検針を行う自動検針システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の需要家或いは工場敷地内等の分散したエリアに配設される計量器には、電力量計、ガス量計、水道量計等がある。電力会社、ガス会社、水道局等では、これらの計量器を検針して、計量値に応じた料金の請求を行う。これらの計量値は、検針員が計量器から直接読み取ったり、或いは電話回線等のネットワークを通じて計量値が電力会社、ガス会社、水道局へ通知される。
【0003】
最近はディジタルカメラを介した自動検針装置や無線通信を用いて遠隔箇所から計量器に対する自動検針を行う自動検針システムが知られている。例えば、特許文献1に記載された自動検針システムでは、検針窓の近傍に画像処理範囲を設定する枠或いはマークが付されて識別番号及び計量値を示す指示値数字列と一定の位置関係となるようになされた計量機器に対し、枠或いはマークとともに計量値及び計量機器を識別する識別番号を同一画面に撮像して撮像データを出力するディジタルカメラと、ディジタルカメラの撮像データを入力し、撮像画像に含まれる枠或いはマークに基づいて判読した文字データによる計量値と識別番号を生成する画像処理部と、画像処理部からの撮像画像、計量値及び識別番号を、需要家の氏名とともに記憶する記憶部と、撮像画像、計量値、識別番号及び需要家の氏名を表示する表示部と、撮像画像、計量値、識別番号及び需要家の氏名を印刷する出力部と、を備えて需要家に配設された計量機器の計量値を集中管理し、自動的に検針処理を行うようにしている。
この他にも、例えば特許文献2には、ディジタルカメラで撮像した計量値を文字認識して、認識した計量値を無線通信にてセンタパソコンに送信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−147844号公報
【特許文献2】特開平11−175656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような従来技術では、検針員が各需要家或いは工場敷地内等を巡回して、各地に配設される計量器をディジタルカメラで撮像する必要がある。そのために検針作業の完全な自動化には至っていない。
【0006】
本発明は、計量器の検針を完全に自動化する自動検針システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の自動検針システムは、計量器による計量値を1以上の表示枠に1桁ずつ数字を表示することで表す検針窓を、周期的に撮像する撮像手段と、前記撮像手段により周期的に撮像される前記検針窓の撮像画像の前記表示枠に表示される数字に対して文字認識処理を行い、前記検針窓に表示される前記計量値を逐次読み取る文字認識手段と、前記文字認識手段により読み取った前記計量値を逐次記憶する記憶手段と、前記文字認識手段により読み取った前記計量値を前記記憶手段に記憶された前回読み取った計量値と比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果、異なる値である場合にパルス信号を出力するパルス送信手段と、前記パルス信号をカウントし、カウント値から前記計量値を導出して所定の外部装置に通知する通知手段と、を備える。
【0008】
本発明の自動検針システムでは、撮像手段により周期的に検針窓の撮像を行うことで、検針員が検針のために巡回する必要がない。また、撮像手段により撮像された撮像画像を文字認識することで表示枠に表示された数字が認識され、計測値が読み取られる。読み取られた計測値が変化するとパルス信号を発生し、このパルス信号により通知手段が計量値が導出される。そのために、人手を介さずに、計量器の検針を行うことができる。
【0009】
前記文字認識手段は、例えば、前記撮像画像の前記表示枠を所定数の区画に分けて、各区画における特徴から数字を認識する特徴抽出手段と、前記撮像画像の前記表示枠内に2つのゾンデ点を設けて、各ゾンデ点から8方向に文字線の探索を行い、各方向の文字線の有無により数字を認識するゾンデ法認識手段と、前記撮像画像の前記表示枠を2方向に走査して文字線の数の推移を測定し、この推移により数字を特定するスキャン法認識手段と、を備えていてもよい。この場合、文字認識手段は、例えば前記特徴抽出手段、前記ゾンデ法認識手段、及び前記スキャン法認識手段の各々で認識した数字のうち少なくとも2つ同じである場合に、当該数字を前記検針窓に表示された数字として認識する。このような文字認識処理を行うことで、より確実な文字認識が可能となり、計量値の正確な読み取りが期待できる。
このような3種類の文字認識を行う場合、数字毎に、前記各区画における特徴と、2つのゾンデ点の位置及び各ゾンデ点における文字線の有無と、前記撮像画像で2方向に走査して得られる文字線の数の推移と、を記憶する認証用データ記憶手段を更に備えていてもよい。前記特徴抽出手段は、各区画における特徴を前記記憶手段に記憶された数字毎の前記特徴と比較することで数字を認識する。前記ゾンデ法認識手段は、ゾンデ点からの文字線の探索結果を前記記憶手段に記憶された数字毎のゾンデ点における文字線の有無と比較することで数字を認識する。前記スキャン法認識手段は、測定した前記文字線の数の推移を前記記憶手段に記憶された数字毎の文字線の数の推移と比較することで数字を認識する。
【0010】
撮像手段による撮像画像には、検針窓の汚れや撮像手段の不調により、ノイズ画像が生じることもある。この場合、撮像画像から計測値を読み取れない可能性がある。
そのために前記文字認識手段は、所定の回数、数字の認識ができなければ、その旨を前記通知手段を介して前記所定の外部装置に対して通知するように構成されていてもよい。このような構成では、文字認識の過程に何らかの問題が発生したことが外部に通知され、適切な対処がなされる。
その他に、ノイズ画像を削除するようにしてもよい。例えば前記文字認識手段は、前記表示枠の各画素に対してスムージング処理を行うとともに2値化して、前記数字を表す画像を所定の画素数分収縮させた後にこの収縮させた画像を膨張させることで前記表示枠内のノイズ画像を削除する。スムージング処理により撮像画像のドット抜けや点状のノイズ画像の補整が行われる。また、撮像画像を2値化下後に、収縮処理を行うことでノイズ画像を削除でき、膨張処理を行うことで元の撮像画像の大きさに戻すことができる。
また、検針窓の表示枠に表示される数字は、必ずしも表示枠の中央付近に表示されるものではなく、数字の変化途中には、検針窓から見切れていることもある。これは、この種の計量器の多くでは、前記表示枠内の数字が、当該表示枠内を一方向にスクロールして変化するためである。このような場合には正常な文字認識が期待できない。そのために文字認識手段は、例えば前記表示枠内に当該表示枠内の数字を囲む認識枠を設定して、この認識枠内に前記数字が2以上含まれる場合に、前記認識枠のスクロール方向の境界から数字間の空白部分が所定の距離離れていれば前記文字認識処理を行うようにしてもよい。
【0011】
本発明の自動検針方法は、計量器による計量値を1以上の表示枠に1桁ずつ数字を表示することで表す検針窓を、周期的に撮像する撮像装置及び前記計量値を所定の外部装置に通知する通知装置が接続された自動検針装置により実行される方法である。この方法は、前記撮像装置により周期的に撮像される前記検針窓の撮像画像の表示枠に表示される数字を文字認識処理により認識して、前記検針窓に表示される前記計量値を逐次読み取る段階と、読み取った前記計量値を所定の記憶装置に逐次記憶する段階と、読み取った前記計量値を前記記憶手段に記憶された前回読み取った計量値と比較して、前記通知装置に前記計量値を導出させるためのパルス信号を、比較結果に応じた回数、前記通知装置に送信する段階と、を含む。
【0012】
本発明のコンピュータプログラムは、計量器による計量値が表示される検針窓を周期的に撮像する撮像装置及び前記計量値を所定の外部装置に通知する通知装置が接続されたコンピュータに、前記撮像装置により周期的に撮像される前記検針窓の撮像画像から、数字を逐次認識する処理、認識した前記数字を所定の記憶装置に逐次記憶する処理、認識した前記数字を前記記憶手段に記憶された前回の文字認識処理により認識した数字と比較して、前記計量値を導出するためのパルス信号を比較結果に応じた回数、前記通知装置に送信する処理、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撮像手段により周期的に検針窓の撮像を行い、撮像画像から文字認識により数字が認識される。認識した数字が変化するとパルス信号が発生し、このパルス信号により計量値が導出される。そのために、検針員が検針のために巡回する必要がなく、人手を介さずに計量器の検針を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】自動検針システムの全体構成図。
【図2】撮像装置の外観図。
【図3A】撮像装置を計量器に設置したときの概観図。
【図3B】撮像装置を計量器に設置したときの概観図。
【図4】自動検針装置の機能ブロック図。
【図5】検針窓に表示される数字の例示図。
【図6】スムージング処理の説明図。
【図7】収縮・膨張処理の説明図であり、(a)図は原画像の例示図、(b)図は収縮したときの画像の例示図、(c)図は収縮後に膨張したときの画像の例示図。
【図8】(a)図は表示脇内に数字がすべて収まってくる場合の認識枠の説明図、(b)図は数字が変化する途中の認識枠の説明図。
【図9】特徴抽出法の説明図。
【図10】ゾンデ法の説明図。
【図11】スキャン方の説明図。
【図12】「0」〜「9」までの文字線の数の推移を表す図。
【図13】自動検針処理の処理手順図。
【図14】撮像装置による検針窓の撮像処理の処理手順図。
【図15】文字認識処理の処理手順図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の自動検針システムの実施形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、自動検針システム1の全体構成図である。自動検針システム1により、計量器2により計量された計量値を示す指示値数字列が表示される検針窓200から数字を読み取ることにより検針を行う。計量器2は、電気、ガス、水道等の使用量を表す計量値を計量して検針窓200に表示する。
【0017】
自動検針システム1は、撮像装置10、自動検針装置20、無線パルスカウント計30、及び計量値通知装置40を備えている。撮像装置10は検針窓200に表示された数字を周期的に撮像して、その撮像データを自動検針装置20へ送信する。自動検針装置20は、撮像装置10から送信された撮像データによる撮像画像から文字認識処理により数字を認識して、認識した数字が前回文字認識により認識した数字とは異なる場合に、無線パルスカウント計30にパルス信号を送信する。無線パルスカウント計30は、自動検針装置20から送信されるパルス信号をカウントする。無線パルスカウント計30は、カウント値を計量値通知装置40に無線により送信する。計量値通知装置40は、無線パルスカウント計30から受信したカウント値から計量値を算出する。計量値通知装置40は、計測器2の需要家等の情報とともに計量値を電力会社等に送信する。
撮像装置10及び自動検針装置20について、以下に詳細に説明する。
【0018】
図2は、撮像装置10の外観図である。撮像装置10は、ディジタルカメラ11及び照明装置としての2個のLED(Laser Electric Diode)12を一面に備えている。撮像装置10は、2個のLED12により計量器2の検針窓200を照射しておき、ディジタルカメラ11により撮像を行う。
撮像装置10は、計量器2の検針窓200を覆うように設置される。そのために撮像装置10は、ディジタルカメラ11及びLED12が設けられる面にフード部13が設けられている。フード部13は、撮像装置10が計量器2に設置されるときの係止部材として機能する他に、雨や汚れからディジタルカメラ11、LED12、及び検針窓200を保護する保護部材としても機能する。
図3A、Bは、撮像装置10を計量器2に設置したときの概観図である。図3Aは、計量器2の検針窓200を正面に見た場合の概観図であり、図3Bは、図3Aの図中右側から見た場合の概観図である。撮像装置10は、フード部13にのぞき窓を設けて或いは計量器2から取り外し可能にして、検針窓200が直接目視できるように構成してもよい。
【0019】
図4は、自動検針装置20の機能ブロック図である。自動検針装置20の各機能ブロックは、例えば、汎用のCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、各種入出力インタフェースを備えたコンピュータシステムが、所定のプログラムを実行することにより実現可能である。自動検針装置20は、カメラ制御部21、データ記憶部22、文字認識部23、比較部24、制御部25、パルス送信部26、及びメール送信部27の各機能ブロックを備える。
【0020】
カメラ制御部21は、撮像装置10の動作を制御する。撮像装置10は、カメラ制御部21により、LED12の点灯、消灯、ディジタルカメラ11による撮像等が制御される。そのために、カメラ制御部21は、撮像装置10の動作を制御するためのカメラ制御データを撮像装置10に送信する。カメラ制御データは、図示しない記憶装置に予め保管されている。カメラ制御部21は、撮像装置10に対して、周期的(例えば1分間隔)に撮像を行わせる。また、カメラ制御部21は、撮像装置10から撮像データを受信する。
【0021】
データ記憶部22は、自動検針装置20で用いる各種データを記憶する。データ記憶部22に記憶されるデータには、カメラ制御部21から受信した撮像データ、撮像データから文字認識処理により認識された数字、文字認識処理の履歴等が記憶される。撮像データは、文字認識処理の終了後、適切なタイミング(例えば、次の撮像データの受信時)で削除される。
【0022】
文字認識部23は、撮像データによる撮像画像に対して文字認識処理を行う。文字認識処理により、検針窓200に表示された数字を認識する。認識した数字は、データ記憶部22に記憶される。文字認識部23は、特徴抽出部231、ゾンデ法認識部232、及びスキャン法認識部233を有しており、これらにより3種類の文字認識処理を行う。文字認識部23は、これら3種類の文字認識処理の結果に応じて、最終的に認識する文字を決定する。例えば、2種類の方法で同じ文字を認識した場合、或いはすべての方法において同じ文字を認識した場合に、最終的に認識する文字とする。3種類の方法ですべて異なる文字が認識された場合、或いは認識が不可能だった場合には、画像データに文字が正しく撮像されていないと判断して、文字認識処理が終了する。
【0023】
文字認識部23は、撮像装置10による撮像データから得られる撮像画像から、数字を正確に認識する必要がある。撮像画像は、図5に示すように検針窓200の表示枠201内の数字を表す。検針窓200では、計量値に合わせて数字が変化する。表示枠201内の数字は、例えばドラムの回転に合わせて、表示枠201の下から上方向に数がスクロールすることで変化する。文字認識部23は、文字認識処理を行う前に撮像画像を文字認識し易いように以下の処理を行う。また、表示枠201内の数字が変化する途中であるか否かを判断する処理を行う。
【0024】
まず、文字認識部23は、画像処理において一般的な9ポイントスムージングを、各表示枠201内の画像に対して行う。図6は、スムージング処理の説明図である。スムージング処理では、中央の画素の色を、周囲の画素の色により補正する。具体的には、周囲の各画素の色を表す数値の平均値を、中央の画素の色を表す数値として置き換える。例えば、平均値PX=(P1+P2+P3+P4+P6+P7+P8+P9)/8を算出して、PXをP5に置き換える(P1〜P9、PXは、色を表す数値)。このような処理を、各表示枠201内の画像のすべての画素について行う。9ポイントスムージングにより、文字認識の妨げとなる画像のドット抜けや1画素レベルのノイズ画像が補正され、急激な色の変化を緩和することができる。
【0025】
スムージング処理の後、文字認識部23は、各表示枠201内の画像の2値化処理を行う。文字認識部23は、例えば画素の明度に対して閾値を設け、閾値よりも上か下かで各画素を黒色、白色の2つの値に変換する。閾値には、例えば表示枠201内の画像の全画素中最も明度の大きい画素と最も明度の小さい画素との明度の平均値を用いる。
【0026】
撮像画像の表示枠201内の画像の2値化処理後に、文字認識部23は、各表示枠20内の画像の収縮・膨張処理を行う。2値化後の撮像画像は、図7(a)に示すように数字の他にノイズ画像を含んだ画像になる。収縮処理の場合には、撮像画像の数字を表す黒色になった部分について、図7(b)に示すように所定数の画素分小さくする。図7(a)と図7(b)とを比較すると、収縮処理により、数字が細くなっている他にノイズ画像が削除されている。膨張処理の場合には、収縮処理後の撮像画像の黒色部分について、図7(c)に示すように所定数の画素分大きくする。収縮処理によりノイズ画像が削除されているために、ノイズ画像が所定数の画素分大きくなることはなく数字のみが所定数の画素分大きくなる。
以上のような、収縮・膨張処理により、スムージング処理及び2値化処理の後に表示枠201内の画像に残っているノイズ画像を削除することができる。ノイズ画像の除去により、表示枠201内の数字を文字認識し易くなる。
【0027】
ノイズ画像の除去が終了すると、文字認識部23は文字認識のための認識枠202の最適化を行う。認識枠202は、表示枠201の上下左右の各方向から最初に現れた線分を囲む範囲で設定される。線分の有無は、撮像画像が2値化されているために容易に行うことができる。
図8(a)は、表示枠201内に数字がすべて収まっている場合の認識枠202の説明図である。図8(a)の例では、表示枠201内に「2」がすべて表示され、「1」の下側部分が見切れて表示されている。そのために、認識枠202は、「2」のすべてと「1」の見切れている部分とを含む範囲で設定される。
図8(b)は、数字が変化する途中の認識枠202の説明図である。図8(b)の例では、表示枠201内に「1」と「2」がそれぞれ見切れて表示されている。そのために、表示枠202は、「1」、「2」のそれぞれ見切れている部分を含む範囲で設定される。
文字認識部23は、認識枠202の設定後に、認識枠202内で数字がどのような状態にあるかを判定する。図8(a)の場合には、認識枠202内の数字間に文字線が無い空白部分がある。文字認識部23は、この空白部分が認識枠202の上下20%であれば数字が変化する途中ではないと判断する。例えば、数字間の中間線が認識枠202の上下20%の範囲内であれば、数字の変化途中にはないと判断される。また、図示はしないが、数字が認識枠202の中央付近に表示され、文字線の無い空白部分がその上下にできる場合がある。この空白部分が上下2箇所にできる場合にも、数字の変化途中にはないと判断される。図8(b)の場合には、文字線の無い空白部分が認識枠202の上下20%から外れる。その場合、数字が変化途中であると判断される。
【0028】
このようにして、表示枠201内の数字が変化する途中であるか否かを判断する。なお、スムージング処理、2値化処理、収縮・膨張処理、及び認識枠202の最適化は、文字認識を行う範囲を予め決めておき、この範囲内に数字がある場合にのみ、行うようにしてもよい。例えば、表示枠201内に表示枠201よりも10%程度小さい枠(認識可能領域)を設定しておき、この枠内に数字が70%以上入る場合にのみ、スムージング処理、2値化処理、収縮・膨張処理、及び認識枠202の最適化を行う。この場合、スムージング処理、2値化処理、収縮・膨張処理、及び認識枠202の最適化を行う範囲が狭くなり、処理負荷を減少することができる。また、数字がより表示枠201の中心に近くなければ数字の変化の途中であると判断されて文字認識を行わないので、文字認識処理を認識し易い条件で行うことができる。
以上の処理の終了後に、特徴抽出部231、ゾンデ法認識部232、及びスキャン法認識部233による文字認識処理が行われる。
【0029】
特徴抽出部231は。特徴抽出法により文字認識処理を行う。図9は、特徴抽出法の説明図である。特徴抽出法では、撮像画像を所定数の区画に分けておき、各区画における文字線の特徴(横成分、縦成分、右上成分、左上成分)の割合を抽出することで、対象となる文字(数字)を認識する。図9の例では、数値「3」の撮像画像を9区画に分けて各区画の文字線の特徴の割合を抽出している。例えば、中上の区画では、横成分80%、縦成分0%、右上成分10%、左上成分10%となっている。各区画の文字線の特徴から、図9では数字が「3」と認識される。
【0030】
ゾンデ法認識部232は、ゾンデ法により文字認識処理を行う。図10は、ゾンデ法の説明図である。ゾンデ法では、撮像画像に2つのゾンデ点を設けて、各ゾンデ点から8方向に文字線の探索を行い、各方向の文字線の有無パタンにより文字(数字)を認識する。ゾンデ点は固定せず、最適な位置に自動調整される。図10の例では、ゾンデ点を数字の上部と下部の2点に設ける。上部のゾンデ点では、左下方向が文字線無しと判定され、下部のゾンデ点では、左上方向が文字線無しと判断される。他の方向には文字線有りと判断される。このような文字線の有無の判断から、図10の数字が「3」と認識される。
なお、ゾンデ法認識部232は、ゾンデ法による文字認識の前処理として細線化処理を行う。細線化処理とは、白色と黒色とに2値化された画像に対して、線の中心1画素だけ残すように線分を細線化する処理であり、従来からよく知られた一般的なアルゴリズムである。収縮処理では、線幅が狭くなり、線が短くなり、最悪の場合、線が消えてしまうが、細線化処理では、線の端点や交点、線幅が1である重要な画素が除去されるといったことはない。
【0031】
スキャン法認識部233は、文字を縦方向(X方向)及び横方向(Y方向)にスキャンすることで文字認識を行う(以下、「スキャン法」という。)。図11は、スキャン法の説明図である。撮像画像をX方向及びY方向にスキャンすることにより、文字線の数の推移が測定される。この文字線の数の推移により、数字を特定する。例えば数字「3」の場合、X方向のスキャンにより、文字線の数が2→3→2と推移する。Y方向のスキャンにより、文字線の数が1→2→1→2→1と推移する。このような文字線の数の推移から図11の数字が「3」と認識される。
図12は、「0」〜「9」までの文字線の数の推移を表す。各数字とも、X方向とY方向の文字線の数の組み合わせが異なる。そのために、X方向とY方向の文字線の数の推移により数字を認識可能である。
【0032】
文字認識部23は、この他に認識用データ記憶部234を備えている。認識用データ記憶部234は、各文字認識処理で用いられる認識用データを記憶している。例えば、特徴抽出法に用いる認識用データとして、数字毎の各区画の特徴が記憶される。ゾンデ法に用いる認証用データとして、数字毎のゾンデ点の位置及び各方向の文字線の有無が記憶される。スキャン法に用いる認証用データとして、数字毎のX方向、Y方向の文字線の数の推移が記憶される。
【0033】
比較部24は、文字認識部23で認識された数字と、データ記憶部22に記憶された前回の文字認識の結果認識された数字とを比較する。比較の結果、異なる場合のみ、パルス送信部26を介して無線パルスカウント計30にパルス信号を送信する。パルス送信部26は、比較部24の比較による数字の差と同じ回数、パルス信号を送信する。
【0034】
制御部25は、自動検針装置20の各機能ブロックの動作を制御することで、撮像装置2で撮像して得られる撮像データから、計量器2による計量値の増加を検知する。また、制御部25は、撮像装置10及び自動検針装置20のシステム監視を行っており、異常があればメール送信部27を介して無線パルスカウント計30に電子メールを送信する。電子メールは、図示しない記憶装置に定型文、送信先のメールアドレスを含んで送信可能な状態で記憶されている。
【0035】
以上のような構成の自動検針システム1は、図13に示す処理手順により計量器2の計量値を測定する。
【0036】
自動検針システム1は、撮像装置10の設置、自動検針装置20の初期設定等の測定準備が完了すると、所定の測定時間が経過したか否かを確認する(ステップS10、S20)。測定時間が経過した場合には、自動検針装置20がシステム障害の有無をセルフチェックする(ステップS20:Y、ステップS30)。システム障害が有る場合には、自動検針装置20からシステム障害がある旨の電子メールが送信される(ステップS30:Y、ステップS40)。電子メールは、無線パルスカウント計30を介して、計量値通知装置40に送られ、計量値通知装置40から電力会社等に送信される。これにより、電力会社等では自動検針装置20のシステム障害を知ることができる。
【0037】
システム障害が無い場合には、撮像装置10による計測器20の検針窓200の撮像処理が行われる(ステップS30:N、ステップS50)。図14は、撮像処理の処理手順図である。
自動検針装置20は、まず、撮像装置10に撮像準備が完了しているか否かの確認を指示するカメラ制御データを送信する(ステップS510)。撮像装置10は、指示に従ってデジタルカメラ11及びLED12の動作試験を行い、撮像準備が完了しているか否かを確認する。動作に異常があれば、撮像装置10から自動検針装置20に異常通知が送信され、撮像処理が終了する(ステップS510:N、ステップS520)。この場合、自動検針装置20は、ステップS30でシステム障害がある場合と同様に電子メールを送信することで、電力会社等に正常に動作しないことを通知する。
【0038】
撮像装置10の動作に異常がなければ、自動検針装置20から撮像を指示するカメラ制御データが撮像装置10に送信される(ステップS510:Y)。撮像装置10は、この指示に従って、まず、LED12を点灯する(ステップS530)。LED12の点灯により、計量器2が撮像装置10のフード部13で覆われていても撮影に必要な光量を保つことができる。次いで撮像装置10は、露光補正用の撮像を行う(ステップS540)。露光補正用の撮像を行うことで、適切な条件による撮像が行われる。次いで撮像装置10は、読み取り用の撮像を行う(ステップS550)。撮像が終了すると、LEDを消灯し(ステップS560)、文字認識が正確に行われるように撮像画像の補整を行って撮像データを生成する(ステップS570)。その後、撮像データが撮像装置10から自動検針装置20に送信される。自動検針装置20は受信した撮像データをデータ記憶部22に記憶する(ステップS580)。このようにして撮像処理が終了する。
【0039】
撮像処理が終了すると、自動検針装置20は、文字認識処理を行う(ステップS60)。図15は、文字認識処理の処理手順図である。
自動検針装置20の文字認識部23は、データ記憶部22に記憶された撮像データを読み込む(ステップS610)。文字認識部23では、読み込んだ撮像データによる撮像画像に対して、上記のスムージング処理、2値化処理、及び縮小・膨張処理を行うことで、撮像画像の表示枠201内のノイズ画像を除去する。また文字認識部23は、上記の認識枠202の最適化を行い、認識枠202内で数字が変化する途中にあるか否かを判断することで、正確な数字認識が可能かどうかを判断する(ステップS620)。文字認識部23は、数字が変化する途中にあって正確な数字認識ができないようであれば文字認識処理を終了する(ステップS620:N)。
【0040】
数字が認識可能にあれば、文字認識部23は、特徴抽出部231、ゾンデ法認識部232、及びスキャン法認識部233による認識処理を行う(ステップS630)。認識処理において文字認識部23は、汎用数字として撮像画像の数字を認識できない場合に、計量器2初期情報のフォント選択情報を元に、図示しないデータベーステーブルを参照して、最適な数字を判定する。データベーステーブルには、予め複数のフォントが格納されており、必要によりパタンマッチング法による数字認識を許容する。これらによる認識処理の結果、数字が認識できれば、認識した数字をデータ記憶部22に記憶する(ステップS640:Y、S650)。数字が認識できなければ、そのまま文字認識処理を終了する(ステップS640:Y)。
【0041】
文字認識処理が終了すると、自動検針装置20の比較部24が、今回の文字認識処理で認識した数字と、前回の文字認識処理で認識した数字とを比較する。比較の結果、同じ数字或いは前回の数字よりも小さくなっていれば、比較結果を自動検針の履歴としてデータ記憶部22に保存する(ステップS70:N、ステップS90)。前回の数字よりも大きくなっていれば、その差分と同数のパルス信号を無線パルスカウント計30に送信する(ステップS70:Y、ステップS80)。パルス信号の送信後に、比較結果を自動検針の履歴としてデータ記憶部22に保存する(ステップS90)。なお、ステップS60で数字の認識ができない場合には、その旨を履歴として保存する。履歴の保存が終了すると、次の測定時間まで待機する。
【0042】
データ記憶部22に保存される自動検針の履歴は、ステップS30のシステム障害の有無の確認に用いられる。例えば、所定の回数、前回の数字よりも小さかったり、或いは数字認識ができない場合にはシステム障害有りの判断を行う。
以上のようにして計測器2の検針窓200の数字が読み取られ、読み取った数字に応じてパルス信号が自動検針装置20から無線パルスカウント計30に送信される。
【0043】
このような自動検針システム1により、周期的に自動で計測器2の検針が検針員を介さずに行えるようになる。そのために、従来のように検針のために検針員が需要家を回る必要がなくなる。また、自動検針システム1に障害が発生した場合には自動的に電力会社等に障害が通知されるために、障害への迅速な対応が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…自動検針システム、10…撮像装置、11…ディジタルカメラ、12…LED、13…フード部、20…自動検針装置、21…カメラ制御部、22…データ記憶部、23…文字認識部、231…特徴抽出部、232…ゾンデ法認識部、233…スキャン法認識部、234…認証用データ記憶部、24…比較部、25…制御部、26…パルス送信部、27…メール送信部、30…無線パルスカウント計、40…計量値通知装置、2…計測器、200…検針窓、201…表示枠、202…認識枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量器による計量値を1以上の表示枠に1桁ずつ数字を表示することで表す検針窓を、周期的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により周期的に撮像される前記検針窓の撮像画像の前記表示枠に表示される数字に対して文字認識処理を行い、前記検針窓に表示される前記計量値を逐次読み取る文字認識手段と、
前記文字認識手段により読み取った前記計量値を逐次記憶する記憶手段と、
前記文字認識手段により読み取った前記計量値を前記記憶手段に記憶された前回読み取った計量値と比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、異なる値である場合にパルス信号を出力するパルス送信手段と、
前記パルス信号をカウントし、カウント値から前記計量値を導出して所定の外部装置に通知する通知手段と、を備える、
自動検針システム。
【請求項2】
前記文字認識手段は、
前記撮像画像の前記表示枠を所定数の区画に分けて、各区画における特徴から数字を認識する特徴抽出手段と、
前記撮像画像の前記表示枠内に2つのゾンデ点を設けて、各ゾンデ点から8方向に文字線の探索を行い、各方向の文字線の有無により数字を認識するゾンデ法認識手段と、
前記撮像画像の前記表示枠を2方向に走査して文字線の数の推移を測定し、この推移により数字を特定するスキャン法認識手段と、を備えており、
前記特徴抽出手段、前記ゾンデ法認識手段、及び前記スキャン法認識手段の各々で認識した数字のうち少なくとも2つ同じである場合に、当該数字を前記検針窓に表示された数字として認識する、
請求項1記載の自動検針システム。
【請求項3】
数字毎に、前記各区画における特徴と、2つのゾンデ点の位置及び各ゾンデ点における文字線の有無と、前記撮像画像で2方向に走査して得られる文字線の数の推移と、を記憶する認証用データ記憶手段を更に備えており、
前記特徴抽出手段は、各区画における特徴を前記記憶手段に記憶された数字毎の前記特徴と比較することで数字を認識し、
前記ゾンデ法認識手段は、ゾンデ点からの文字線の探索結果を前記記憶手段に記憶された数字毎のゾンデ点における文字線の有無と比較することで数字を認識し、
前記スキャン法認識手段は、測定した前記文字線の数の推移を前記記憶手段に記憶された数字毎の文字線の数の推移と比較することで数字を認識する、
請求項2記載の自動検針システム。
【請求項4】
前記文字認識手段は、所定の回数、数字の認識ができなければ、その旨を前記通知手段を介して前記所定の外部装置に対して通知する、
請求項3記載の自動検針システム。
【請求項5】
前記文字認識手段は、前記表示枠の各画素に対してスムージング処理を行うとともに2値化して、前記数字を表す画像を所定の画素数分収縮させた後にこの収縮させた画像を膨張させることで前記表示枠内のノイズ画像を削除する、
請求項3記載の自動検針システム。
【請求項6】
前記表示枠内の数字は、当該表示枠内を一方向にスクロールして変化するものであり、
前記文字認識手段は、前記表示枠内に当該表示枠内の数字を囲む認識枠を設定して、この認識枠内に前記数字が2以上含まれる場合に、前記認識枠のスクロール方向の境界から数字間の空白部分が所定の距離離れていれば前記文字認識処理を行う、
請求項5記載の自動検針システム。
【請求項7】
計量器による計量値を1以上の表示枠に1桁ずつ数字を表示することで表す検針窓を、周期的に撮像する撮像装置及び前記計量値を所定の外部装置に通知する通知装置が接続された自動検針装置により実行される方法であって、
前記撮像装置により周期的に撮像される前記検針窓の撮像画像の表示枠に表示される数字を文字認識処理により認識して、前記検針窓に表示される前記計量値を逐次読み取る段階と、
読み取った前記計量値を所定の記憶装置に逐次記憶する段階と、
読み取った前記計量値を前記記憶手段に記憶された前回読み取った計量値と比較して、前記通知装置に前記計量値を導出させるためのパルス信号を、比較結果に応じた回数、前記通知装置に送信する段階と、を含む、
自動検針方法。
【請求項8】
計量器による計量値を1以上の表示枠に1桁ずつ数字を表示することで表す検針窓を、周期的に撮像する撮像装置及び前記計量値を所定の外部装置に通知する通知装置が接続されたコンピュータに、
前記撮像装置により周期的に撮像される前記検針窓の撮像画像の表示枠に表示される数字を文字認識処理により認識して、前記検針窓に表示される前記計量値を逐次読み取る処理、
読み取った前記計量値を所定の記憶装置に逐次記憶する処理、
読み取った前記計量値を前記記憶手段に記憶された前回読み取った計量値と比較して、前記通知装置に前記計量値を導出させるためのパルス信号を、比較結果に応じた回数、前記通知装置に送信する処理、を実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−60067(P2011−60067A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210049(P2009−210049)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(500422207)株式会社電工社 (1)
【出願人】(509256115)有限会社 メディアニー (1)
【出願人】(509256137)株式会社 ヴェリア・ラボラトリーズ (1)
【Fターム(参考)】