説明

自動水栓

【課題】光センサ用に光ファイバを用いた場合において、その光ファイバが設置現場ごとに様々な状態で配線され施工された場合であっても、正確に検知対象を検知することのできる自動水栓を提供する。
【解決手段】光センサ50を備えた自動水栓において、発光素子54-1からの光を導く検知用の投光側光ファイバ58-1と、検知対象Tからの反射光を受光素子54-1に導く検知用の受光側光ファイバ58-2とを吐水管の内部に通して各先端を投光部60,受光部62となすとともに、投光側光ファイバ58-1及び受光側光ファイバ58-2による光の減衰を求めて受光素子54-1による受光量を補正する補正用の光ファイバ64を設け、且つこれを検知用の光ファイバ58と束ねた状態で配線施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光センサによる検知に基づいて吐水口から自動的に吐水する自動水栓に関し、詳しくは光センサ用に光ファイバを用いた自動水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水管に光センサを設け、使用者が手を差し出したときに光センサによる検知に基づいて吐水口から自動的に吐水する形式の自動水栓が公共のトイレや洗面所等に広く用いられている。
ここで光センサは投光部と受光部とを有し、投光部から投光した光の人体(検知対象)による反射光を受光部に入射させて受光素子で受光し、人体検知する。通常はその受光量が設定したしきい値よりも多いことをもって検知対象有り即ち人体有りと判定する。
【0003】
このような自動水栓では、従来光センサが吐水管の先端部に設けられていることが多い。
このようにしておけば、使用者が吐水口からの吐水を受けようとして手を差し出したときに、自動的に光センサにてこれを検知させるようになすことができ、使用者が吐水のための特別の動作、即ち光センサにて手を検知させるための特別の動作を必要とせず、単に吐水口からの吐水方向の前方に手を差し出すだけで吐水を行わせるようになすことができる。
【0004】
ところで従来の自動水栓では、光を発するLED等の発光素子を上記の投光部として、またフォトダイオード,フォトトランジスタ等の受光素子を上記の受光部として吐水管の先端部に配置するとともに、発光素子による発光を行わせる発光駆動回路や受光素子により受光した光を電気信号に変換し信号処理する光電変換回路を含むセンサ回路を、それら発光素子,受光素子に接続状態で吐水管の先端部に設けており、このため吐水管の先端部の形状が必然的に大形状化してしまい、これに伴って吐水管全体が太く大型化し、デザイン性,意匠性を損なってしまうといった問題を生じていた。
【0005】
こうした問題は吐水管の先端部に光センサを設けた場合に特に大きな問題となるが、光センサを吐水管の先端部以外の部分に設けた場合においても生じ得る問題である。
【0006】
この場合、発光素子と受光素子、及び発光素子による発光を行わせるとともに受光素子による受光を光電変換するセンサ回路を備えたセンサ本体を、吐水管の先端部から遠く離隔して配置しておき、そしてそのセンサ本体の発光素子と受光素子との各位置から光を導く投光側光ファイバと受光側光ファイバとを吐水管の内部を通って延び出させ、投光側光ファイバの先端を投光部として、また受光側光ファイバの先端を受光部としてそれぞれ構成しておくといったことが考えられる。
このようになした場合、発光素子,受光素子及びセンサ回路を含むセンサ本体によって吐水管が太く、大型化してしまうのを避けることができる。
【0007】
しかしながらこのようにセンサ本体を吐水管の先端部から離隔して配置し、そしてセンサ本体の発光素子,受光素子から投光側光ファイバ,受光側光ファイバを吐水管の内部を通って長く延在させた場合、以下のような問題を生ずる。
【0008】
光ファイバは、光を通過させる際にそこで光の減衰を生ぜしめる。
その減衰の程度は光ファイバの長さによって、また光ファイバの曲りの程度によってそれぞれ異なったものとなる。
即ち光ファイバが長ければ減衰は大きく、また光ファイバに曲りがあれば、更にその曲りの程度が大きければ、それだけ光の減衰は大きくなる。
【0009】
従って自動水栓の設置施工時に施工業者によって光ファイバが切断されたときに、その切断位置(切断長さ)によって減衰の程度は変ってしまい、特に光ファイバが大きく屈曲した状態で設置されるとその屈曲部での光ファイバ内部の減衰が大きくなってしまう。
しかもその光ファイバの設置の状態は自動水栓の施工現場ごとにそれぞれ異なったものとなる。
【0010】
反射式の光センサの場合、受光素子による受光量の大小に基づいて人体検知を行うようになしており、その場合、光ファイバーの部分で光が減衰してしまうと、更にその減衰の程度が設置現場ごとに様々に変ってしまうと、発光素子から同じ光量で発光させても、受光素子による反射光の受光量が様々に変ってしまい、光センサによる検知範囲が設定した範囲からずれたり、狂ったりしてしまう問題を生じてしまう。
【0011】
尚本発明に対する先行技術として、下記特許文献1には光ファイバ形光電スイッチについての考案が示され、そこにおいて発光素子の劣化による発光量の低下に起因して検知対象の検知が不安定化する問題を解決することを目的として、標準検出体を検出するための光ファイバと、実際の検知対象を検知するための光ファイバとを設け、標準検出体からの反射光の光量と被検出体からの反射光の光量とを比較し、検知対象の検知の有無を判定するようになした点が開示されている。
しかしながらこの特許文献1に開示のものは本発明とは解決課題が異なっており、またその構成においても本発明とは異なった別異のものである。
【0012】
【特許文献1】実開昭63−56540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上のような事情を背景とし、光センサ用に光ファイバを用いた場合において、その光ファイバが設置現場ごとに様々な状態で配線され施工された場合であっても、正確に検知対象を検知することのできる自動水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
而して請求項1のものは、吐水管に投光部と受光部とが設けられ、該投光部から投光した光の検知対象からの反射光を該受光部に入射させて受光素子で受光し、その受光量に基づいて検知対象の有無を検知する光センサを備えた自動水栓において、発光素子からの光を導く検知用の第1の投光側光ファイバと、前記検知対象からの反射光を前記受光素子に導く検知用の第1の受光側光ファイバとをそれぞれ前記吐水管の内部に通し、該第1の投光側光ファイバの先端を前記投光部として、前記第1の受光側光ファイバの先端を前記受光部として前記検知対象を検知するようになすとともに、自身の内部を光が通過する際の減衰を測ることによって前記検知用の第1の投光側光ファイバ及び第1の受光側光ファイバによる光の減衰を求めて前記受光量を補正する補正用の第2の光ファイバを該第1の光ファイバと別途に設け、且つ該第2の光ファイバを該第1の光ファイバと束ね若しくは並びの方向に結合した状態で配線したことを特徴とする。
【0015】
請求項2のものは、請求項1において、前記補正用の第2の光ファイバとして投光側光ファイバと受光側光ファイバとを別々に設けることを特徴とする。
【0016】
請求項3のものは、請求項1において、前記補正用の第2の光ファイバとして1本の光ファイバを設け、該1本の光ファイバを、前記減衰を求めるための投光側光ファイバと受光側光ファイバとに共用することを特徴とする。
【0017】
請求項4のものは、請求項1において、前記補正用の第2の光ファイバとして1本の光ファイバを設け、前記検知用の第1の投光側光ファイバを前記減衰を求めるための投光側光ファイバとして補正用に共用し、該第2の光ファイバを該減衰を求めるための受光側光ファイバとして用いることを特徴とする。
【0018】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記補正用に用いる前記第2若しくは第1の投光側光ファイバ及び前記第2の受光側光ファイバの先端に対峙して光反射手段を設け、該投光側光ファイバからの光を直接該反射手段で反射させて該受光側光ファイバに入射させるようになしてあることを特徴とする。
【0019】
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、前記投光部及び受光部が前記吐水管の先端部に設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0020】
以上のように本発明は、検知対象を検知するための第1の投光側光ファイバと第1の受光側光ファイバとに加えて、それら検知用の第1の光ファイバによる光の減衰を求めて、受光量を補正する補正用の第2の光ファイバを設け、且つその第2の光ファイバを検知用の第1の光ファイバと束ね若しくは並びの方向に結合した状態で配線したものである。
【0021】
本発明によれば、検知用の第1の光ファイバとは別に補正用の第2の光ファイバを設けることで、検知用の第1の光ファイバでの光の減衰を求めることができ、そしてそれによって受光素子による受光量を補正することで、検知用の第1の光ファイバにおける光の減衰の程度の如何に拘らず、受光量の大小に基づいて検知対象を正しく検知することができるようになる。
【0022】
従って本発明によれば、設置現場で光ファイバにより光の減衰が生じ、また設置現場ごとに光ファイバの長さや曲りの程度等が様々となって、減衰の程度が各現場ごとに異なった場合であっても、光センサによる検知範囲が設定した範囲からずれたり狂ったりしてしまう問題を解決でき、光センサによる検知精度を高く維持することができる。そしてこれにより自動水栓の使い勝手を良くすることができる。
【0023】
但し補正用の第2の光ファイバが、検知用の第1の光ファイバと異なった長さや曲りの状態で配線されてしまうと、受光量を正しく補正することができなくなる。
補正用の第2の光ファイバにおける光の減衰の程度が、検知用の第1の光ファイバにおける減衰の程度と異なってしまうからである。
【0024】
そこで本発明では、補正用の第2の光ファイバを検知用の第1の光ファイバと束ね若しくは並びの方向に結合した状態で配線することによって、補正用の第2の光ファイバによる減衰が検知用の第1の光ファイバによる減衰を正しく反映したものとするようになす。
【0025】
本発明では、補正用の第2の光ファイバとして投光側の光ファイバと受光側の光ファイバとを別々に設けておくことができる(請求項2)。
このようにすれば光センサを安価に構成することができる。
【0026】
本発明ではまた、補正用の第2の光ファイバとして1本の光ファイバを設け、その1本の光ファイバを、光の減衰を求めるための投光側光ファイバと、受光側光ファイバとに共用するようになすことができる(請求項3)。
【0027】
このようにすれば、必要な光ファイバの合計の本数を少なくでき、全体の光ファイバの断面積(横断面の断面積)、即ち光ファイバの占めるスペースをより小さくできて、より狭い個所にも容易に光ファイバを通すことが可能となって、光ファイバの取付けが容易となる。
【0028】
本発明ではまた、補正用の第2の光ファイバとして1本の光ファイバを設け、検知用の第1の投光側光ファイバを本来の検知用と減衰を求めるための補正用の投光側光ファイバとに共用し、そして第2の光ファイバを、減衰を求めるための受光側光ファイバとして用いるようになすことができる(請求項4)。
【0029】
この場合においても、合計として必要な光ファイバの本数を少なくすることができ、更に請求項3に比べて光センサとして必要な発光素子が1つで済むため、所要コストをより安価とすることができる。
また単一の発光素子を検知用と補正用とに共用できるため、発光素子の経年変化即ち劣化による発光量の減少に対しても補正を行うことが可能となる。
【0030】
これらの場合において、補正用に用いる上記第2若しくは第1の投光側光ファイバ及び第2の受光側光ファイバの先端に対峙して光反射手段を設け、その投光側光ファイバの先端から発せられた光を直接反射手段で反射させて補正用の第2の受光側光ファイバに入射させるようになしておくことができる(請求項5)。
これにより補正側の受光量が大きくなり、安定するので、補正をより正確に行うことができる。
【0031】
本発明では、上記投光部及び受光部を吐水管の先端部に設けておくことができる(請求項6)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の自動水栓で、12は自動水栓10における吐水管である。
吐水管12は、その基端部が大径の着座部14とされており、その着座部14において取付装置16によりカウンタ部(取付基体)18に固定状態に取り付けられている。
【0033】
取付装置16は、カウンタ部18を上側から挟み付ける上挟持部材20と、下側から挟み付ける下挟持部材22と、それらを締結するねじ締結具24及びナット25とを有しており、ねじ締結具24及びナット25による締付けによって、上挟持部材20及び下挟持部材22によりカウンタ部18を上下両側から挟持する状態にカウンタ部18に固定されている。
そしてその取付装置16の上挟持部材20に対し着座部14が下向きに嵌合され、カウンタ部18に着座せしめられている。
ここで着座部14は止め具26にて上挟持部材20に止め付けられ、回転方向にもまた抜け方向にも固定状態とされている。
尚、28はカウンタ部18を貫通して設けられた取付穴である。
【0034】
吐水管12は上部が逆U字状のグースネック形状をなしており、使用者に向って斜め前方下向きをなす先端面に吐水口30が設けられている。
ここで吐水管12は、吐水口30が手洗鉢やシンク等の水槽内部を向くようにして設けられている。
【0035】
吐水管12の内部には、給水路32の一部をなす給水チューブ34が挿通されており、その先端が吐水口30に接続されている。尚41は止水栓である。
36は、カウンタ部18の下方に配置された本体機能部で、38はその本体機能部36の機能部ボックスである。
機能部ボックス38の内部且つ給水路32上には、吐水口30からの吐水と止水とを行う開閉弁としての電磁弁40が設けられている。
またこの機能部ボックス38内部には、電磁弁40を作動制御する、マイコンを主要素として含む制御部42が収容されている。
電磁弁40はこの制御部42に対して電気的に接続されている。
【0036】
吐水管12の先端部には、後述する光センサ50(図2参照)の端部44が設けられている。
一方機能部ボックス38の内部には、光センサ50のセンサ本体46が収容され、このセンサ本体46から光ファイバのファイバコード48が外部に延び出している。
このファイバコード48はカウンタ部18の下側から取付穴28を通過し、更に吐水管12内部に通されて上記の端部44に接続されている。
【0037】
図2において、50は検知対象(ここでは主として人の手)Tを検知する光センサで、ここでは光センサ50は、後述する投光部60から投光された光の検知対象Tからの反射光を受光部62に入射させて後述の第1の受光素子54-1で受光させ、その受光量が設定受光量を超えたときに検知対象T有りと判定して吐水口30から吐水を行わせる。
具体的には電磁弁40を開弁させて給水路32を通じ吐水口30へと水を供給し、吐水口30から吐水せしめる。
また一方、検知対象Tがその後無くなれば電磁弁40を閉弁させて吐水を停止させる。
【0038】
この実施形態において、光センサ50はセンサ本体46と、これから延び出した上記のファイバコード48とを有している。
【0039】
センサ本体46は、可視光や赤外光等の光を発するLED等の第1の発光素子52-1と、フォトダイオード,フォトトランジスタ等の第1の受光素子54-1、及び発光素子52-1による発光を行わせる発光駆動回路,受光素子54-1により受光した光を電気信号に変換し信号処理する光電変換回路を含むセンサ回路を有している。
【0040】
この実施形態において、センサ本体46は更に、後述の検知用光ファイバによる光の減衰を求め、受光素子54-1による受光量を補正するための補正用の第2の発光素子52-2及び第2の受光素子54-2を有している。
【0041】
58は、検知対象Tを検知するための検知用の光ファイバ(第1の光ファイバ)で、この検知用の光ファイバ58は投光側光ファイバ(第1の投光側光ファイバ)58-1と受光側光ファイバ(第1の受光側光ファイバ)58-2との組合せから成っている。
これら投光側光ファイバ58-1,受光側光ファイバ58-2は吐水管12の先端部まで延びており、そして投光側光ファイバ58-1の先端が投光部60として、また受光側光ファイバ58-2の先端が受光部62として構成されている。
【0042】
光センサ50は、発光素子52-1からの光を投光側光ファイバ58-1にて吐水管12の先端部に導き、そしてその先端の投光部60から吐水口30とほぼ同方向の前方に光を投光する。
そして検知対象Tで反射された光を受光部62に入射させ、そして入射した光を受光側光ファイバ58-2にて受光素子54-1まで導き、受光素子54-1にてこれを受光させる。
【0043】
受光素子54-1にて受光された光は光電変換回路にて電圧変換され、制御部42へと入力される。
そしてその電圧値が設定されたしきい値よりも高いときに制御部42から電磁弁40に信号が送られて、電磁弁40が開作動せしめられる。
【0044】
この実施形態では、これら検知用の光ファイバ58の他に、補正用の光ファイバ(第2の光ファイバ)64が設けられている。
この補正用の光ファイバ64もまた、投光側光ファイバ(第2の投光側光ファイバ)64-1と受光側光ファイバ(第2の受光側光ファイバ)64-2の組合せから成っている。
【0045】
一方の投光側光ファイバ64-1は、発光素子52-2から延び出して吐水管12の先端部、詳しくは光センサの端部44まで到っている。
他方の受光側光ファイバ64-2は、受光素子54-2から延び出して同じく吐水管12の先端部の端部44に到っている。
【0046】
上記検知用の光ファイバ58の場合、投光側光ファイバ58-1の先端の投光部60から検知対象Tに向けて光を投光し、そして検知対象Tからの反射光を受光部62に入射させてこれを受光素子54-1へと導くようになしてあるが、この補正用の光ファイバ64の場合、投光側光ファイバ64-1と受光側光ファイバ64-2とのそれぞれの先端に対峙して光反射手段としてのプリズム66が設けられており、投光側光ファイバ64-1の先端の投光部68から投光された光がプリズム66で全反射されて、受光側光ファイバ64-2の先端即ち受光部70に入射され、そして受光側光ファイバ64-2に入射された光が、受光側光ファイバ64-2を通じて受光素子54-2へと導かれるようになしてある。
【0047】
この補正用の光ファイバ64は、検知用の光ファイバ58の内部を光が透過する際の光ファイバ内部での光の減衰を求めるために設けられているもので、ここでは検知用光ファイバ58の全長と、補正用光ファイバ64の全長とが等しくされている。
具体的にはここでは4本全ての光ファイバが同じ長さに揃えてある。
加えてここでは、検知用の光ファイバ58の曲りと補正用光ファイバ64の曲りとが同じ曲りの状態となるように、それら光ファイバ58,64が束ねられ、或いは並びの方向に結合されている。
【0048】
図3はこれを具体的に示している。
図3(A)の例は、4本の光ファイバ、即ち検知用の投光側光ファイバ58-1,受光側光ファイバ58-2、及び補正用の投光側光ファイバ64-1,受光側光ファイバ64-2の4本の光ファイバを1本の可撓性のチューブ72の内部に挿通し(必要に応じて溶着等の手段にて固定しておいても良い)、互いに別々の4本の光ファイバをチューブ72にて1本のファイバコード48に束ねたものである。
尚、74は光ファイバの光を透過する部分の芯部を表し、また76は被覆部を表している。
この実施形態では芯部74,被覆部76ともに樹脂製である。
また被覆部76の外径はそれぞれφ2mm程度のものである。
【0049】
一方(B)の例は、検知用の投光側光ファイバ58-1,受光側光ファイバ58-2、及び補正用の投光側光ファイバ64-1,受光側光ファイバ64-2のそれぞれを一体に構成した例である。
詳しくは、4本の光ファイバの被覆部76を互いに融合した形態の一体の被覆部76として構成し、その内部に各光ファイバの心部74を互いに分離して埋設したものである。
ここで図3(B)中(イ)の例は、各光ファイバを上2本,下2本に配置した例で、(ロ)の例は4本の光ファイバを横一列に配列した例を示している。
【0050】
一方図3(C)の例は、互いに分離し独立した4本の光ファイバ、即ち検知用の投光側光ファイバ58-1と受光側光ファイバ58-2、及び補正用の投光側光ファイバ64-1,受光側のファイバ64-2を結束バンド(結束部材)78にて長手方向に所定間隔ごとに結束した例である。
尚図3(C)の例では、例えば10cmごとに4本の光ファイバを結束バンド78で結束しておく。
【0051】
このようにしておけば、例え検知用の光ファイバ58が屈曲状態で配線され、設置施工されたとしても、検知用の第1の光ファイバ58での光の減衰と補正用の第2の光ファイバ64での光の減衰とは均等となる。
【0052】
従って補正用の光ファイバ64における減衰の程度を知ることで、検知用光ファイバ58における減衰の程度を求めることができ、これに基づいて検知用の受光素子54-1における受光量を補正し、検知対象Tを検知するための受光量のしきい値を設定ないし補正することができる。
【0053】
例えばそのしきい値の設定ないし補正は次のようにして行うことができる。
工場生産段階で4本の各光ファイバを直線状に伸ばし、その状態で検知対象Tを設定した検知位置に置いたときの検知側の出力電圧をVso,補正側の出力電圧をVroとしてこれを制御部42に記憶しておく。
そして現場での施工後の検知対象Tに対する検知の際の検知側出力電圧をVsx,補正側の出力電圧Vrxとしたとき、吐水を行わせるための設定のしきい値電圧Vaを下記式(1)にて求めることができる。
Va=Vso×(Vrx/Vro)・・・式(1)
尚、Vsx×(Vro/Vrx)をVsoと比較するようにしても良い。
尚、上述のように補正はVrxとVroの比で行うため、プリズム66による全反射は必ずしも必要でなく、反射率が変わらなければ光センサの端部44の内面の反射で代用することも可能である。
【0054】
以上のような本実施形態に従って検知用の第1の光ファイバ58とは別に補正用の第2の光ファイバ64を設けることで、検知用の第1の光ファイバ58での光の減衰を求めることができ、それによって受光素子54-1による受光量を補正することで、検知用の第1の光ファイバ58における光の減衰の程度の如何に拘らず、受光量の大小に基づいて検知対象Tを正しく検知することができるようになる。
【0055】
従って本実施形態によれば、設置現場で光ファイバ58により光の減衰が生じ、また設置現場ごとに光ファイバ58の長さや曲りの程度等が様々となって、減衰の程度が各現場ごとに異なった場合であっても、光センサ58による検知範囲が設定した範囲からずれたり狂ったりしてしまう問題を解決でき、光センサ58による検知精度を高く維持することができる。そしてこれにより自動水栓10の使い勝手を良くすることができる。
【0056】
以上では4本の光ファイバ全てを1本のコードに束ね或いは結合しているが、図3(D)に示しているように検知用の投光側光ファイバ58-1と補正用の投光側光ファイバ64-1とを2本セットにしてそれらを結合し、また検知用の受光側光ファイバ58-2と補正用の受光側光ファイバ64-2とを2本セットにして結合しておくこともできる。この場合各セットは別々に分離しておいても良い。
このようになした場合においても、検知用の光ファイバ58と補正用の光ファイバ64とで光の減衰を均等とすることができる。
尚、検知用の投光側光ファイバ58-1と補正用の受光側光ファイバ64-2とを2本セットとし、また検知用の受光側光ファイバ58-2と補正用の投光側光ファイバ64-1とを2本セットとして、それぞれを結合しておいても良い。
【0057】
図4は本発明の他の実施形態を示している。
ここでは補正用として1本の光ファイバ64だけを設け、これを投光側と受光側とに共用するようになしている。
ここでは1本の補正用の光ファイバ64を投光側と受光側とに共用するため、補正用の発光素子52-2と受光素子54-2との間にハーフプリズム80を設け、また光ファイバ64の先端に対峙させるようにしてミラー82を設けている。
【0058】
この場合、発光素子52-2から発せられた光は、ハーフプリズム80でその半分が光ファイバ64に入射され、そして光ファイバ64を図中左方向に透過して、その透過した光がその先端でミラー82により全反射され、再び光ファイバ64に入射されて図中右方向に戻り、そして光ファイバ64の右端から出た光の半分がハーフプリズム80を図中右方向に透過して受光素子54-2に到り、そこで受光される。
尚光ファイバ64の長さは、実質的に検知用の投光側光ファイバ58-1及び受光側光ファイバ58-2と同等である。
尚この実施形態では、光ファイバ3本まとめて束ね或いは結合しておく。
【0059】
このようにすれば、必要な光ファイバ58,64の合計の本数を少なくすることができ、全体の光ファイバ58,64の断面積(横断面の断面積)、即ち光ファイバ58,64の占めるスペースをより小さくでき、より狭い個所にも容易に光ファイバを通すことが可能となって、光ファイバの取付けが容易となる。
【0060】
図5は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例においても、補正用として1本の光ファイバ64だけを設けている。
但しこの例では、検知用の第1の投光側光ファイバ58-1を補正用の投光側光ファイバとしても用いている(共用している)。
この例では、投光側光ファイバ58-1の先端に対峙させて複合プリズム84を設け、投光側光ファイバ58-1の先端から投光された光の半分を複合プリズム84のハーフプリズム面86を透過して検知対象Tに照射する一方、残りの半分をハーフプリズム面86で光ファイバ64側に反射させて光ファイバ64に入射し、そしてこれを光ファイバ64を透過させて受光素子54-2で受光するようにしている。
尚、複合プリズム84における光ファイバ64と対向する面87は全反射面であり、ハーフプリズム面86からの光は全反射して光ファイバ64に入射する。
【0061】
この場合においても、合計として必要な光ファイバの本数を少なくすることができ、更に図4に示す実施形態に比べて光センサ50として必要な発光素子が1つで済むため、所要コストをより安価とすることができる。
また単一の発光素子52-1を検知用と補正用とに共用できるため、発光素子52-1の経年変化即ち劣化による発光量の減少に対しても補正を行うことが可能となる。
【0062】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態である自動水栓の概略全体図である。
【図2】同実施形態における光センサの構成を示した図である。
【図3】同実施形態におけるファイバコードの様々な形態を示した図である。
【図4】本発明の他の実施形態における光センサの図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態における光センサの図である。
【符号の説明】
【0064】
10 自動水栓
12 吐水管
50 光センサ
52-1 第1の発光素子
52-2 第2の発光素子
54-1 第1の受光素子
54-2 第2の受光素子
58 検知用の光ファイバ(第1の光ファイバ)
58-1 投光側光ファイバ
58-2 受光側光ファイバ
60,68 投光部
62,70 受光部
64 補正用の光ファイバ(第2の光ファイバ)
64-1 投光側光ファイバ
64-2 受光側光ファイバ
T 検知対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水管に投光部と受光部とが設けられ、該投光部から投光した光の検知対象からの反射光を該受光部に入射させて受光素子で受光し、その受光量に基づいて検知対象の有無を検知する光センサを備えた自動水栓において
発光素子からの光を導く検知用の第1の投光側光ファイバと、前記検知対象からの反射光を前記受光素子に導く検知用の第1の受光側光ファイバとをそれぞれ前記吐水管の内部に通し、該第1の投光側光ファイバの先端を前記投光部として、前記第1の受光側光ファイバの先端を前記受光部として前記検知対象を検知するようになすとともに、
自身の内部を光が通過する際の減衰を測ることによって前記検知用の第1の投光側光ファイバ及び第1の受光側光ファイバによる光の減衰を求めて前記受光量を補正する補正用の第2の光ファイバを該第1の光ファイバと別途に設け、且つ該第2の光ファイバを該第1の光ファイバと束ね若しくは並びの方向に結合した状態で配線したことを特徴とする自動水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記補正用の第2の光ファイバとして投光側光ファイバと受光側光ファイバとを別々に設けることを特徴とする自動水栓。
【請求項3】
請求項1において、前記補正用の第2の光ファイバとして1本の光ファイバを設け、該1本の光ファイバを、前記減衰を求めるための投光側光ファイバと受光側光ファイバとに共用することを特徴とする自動水栓。
【請求項4】
請求項1において、前記補正用の第2の光ファイバとして1本の光ファイバを設け、前記検知用の第1の投光側光ファイバを前記減衰を求めるための投光側光ファイバとして補正用に共用し、該第2の光ファイバを該減衰を求めるための受光側光ファイバとして用いることを特徴とする自動水栓。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記補正用に用いる前記第2若しくは第1の投光側光ファイバ及び前記第2の受光側光ファイバの先端に対峙して光反射手段を設け、該投光側光ファイバからの光を直接該反射手段で反射させて該受光側光ファイバに入射させるようになしてあることを特徴とする自動水栓。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、前記投光部及び受光部が前記吐水管の先端部に設けてあることを特徴とする自動水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−106471(P2010−106471A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277284(P2008−277284)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】