説明

自動滴定装置

【課題】異常値等の解析に必要な滴定情報を、簡便に確認できる自動滴定装置を提供する。
【解決手段】試料液を収容する滴定容器1と、該滴定容器に滴定液を供給するビュレット2と、前記滴定液の供給量に対応して得られる滴定指標値を検出する検出器3と、前記検出器から得られる滴定指標値に基づき終点を求め、該終点までの滴定液の供給量から、前記試料液中の測定対象物質の濃度を演算する演算部4と、プリンタ5とを備え、前記演算部は、前記測定対象物質の濃度が設定範囲外であった場合、及び/または前記終点が求められなかった場合に、少なくとも前記検出器から得られる滴定開始から滴定終了までの何れかの時点における滴定指標値の情報を前記プリンタに印字させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の酸度、塩分測定、メッキ液の濃度管理、石油の中和価測定などに利用可能な自動滴定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料液に滴定液を少量ずつ滴加し、試料液中の測定対象物質と反応させる滴定は、化学成分の濃度を測定するために有効で、汎用性の高い分析方法であり、食品の酸度、塩分測定、メッキ液の濃度管理、石油の中和価測定など様々の産業分野で利用されている(例えば特許文献1)。
従来、試料液に対して滴定液を滴加し、試料液のpH、酸化還元電位等を検出器により検出し、これを滴定指標値として、終点を自動的に判別し、これにより試料液中の測定対象物質の濃度を求める自動滴定装置が実用化されている。
【0003】
通常自動滴定装置では、最終的な結果である測定対象物質の濃度のみを、外部に伝送出力している。そして、滴定中に得られるその他の滴定情報、例えば滴定開始から滴定終了までの滴定液の供給量に対応した滴定指標値や液温等は、逐次自動滴定装置内の記憶装置に蓄積される。
これらの蓄積された滴定情報は、得られた測定対象物質の濃度が異常値であった場合や、終点が得られなかった場合の原因究明において有用である。例えば、真に試料液中の測定対象物質の濃度が、想定外に変動したのか、それとも、自動滴定装置側の何らかのトラブルによるものか、等の判別に滴定情報は欠かせない。
そこで、異常値が得られた場合等は、蓄積情報の中から、該当する滴定情報を読み出すことが行われている。
【特許文献1】特開平3−137562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、異常値が得られたことを管理者が発見するまでに、数時間ないし数日が経過してしまうことは珍しくない。その場合、その後に行われた滴定の滴定情報が逐次蓄積されているため、該当する滴定情報に到達するまでには、それらの情報を順次遡って確認していく作業が必要であり、長時間を要するものであった。
そこで、異常値が度々得られる場合には、プリンタを常時稼働させ、滴定情報をその都度プリントアウトさせることも行われている。しかし、その場合、膨大なプリントアウト紙が生じるため、用紙が無駄になるばかりでなく、膨大なプリントアウト紙の中から、該当滴定情報を探し出さなければならず、依然として煩雑な作業が必要であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、異常値等の解析に必要な滴定情報を、簡便に確認できる自動滴定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は、以下の構成を採用した。
[1]試料液を収容する滴定容器と、該滴定容器に滴定液を供給するビュレットと、前記滴定液の供給量に対応して得られる滴定指標値を検出する検出器と、前記検出器から得られる滴定指標値に基づき終点を求め、該終点までの滴定液の供給量から、前記試料液中の測定対象物質の濃度を演算する演算部と、プリンタとを備え、前記演算部は、前記測定対象物質の濃度が設定範囲外であった場合、及び/または前記終点が求められなかった場合に、少なくとも前記検出器から得られる滴定開始から滴定終了までの何れかの時点における滴定指標値の情報を前記プリンタに印字させるように構成されていることを特徴とする自動滴定装置。
【0006】
[2]試料液を収容する滴定容器と、該滴定容器に滴定液を供給するビュレットと、前記滴定液の供給量に対応して得られる滴定指標値を検出する検出器と、前記検出器から得られる滴定指標値に基づき終点を求め、該終点までの滴定液の供給量から、前記試料液中の測定対象物質の濃度を演算する演算部と、プリンタとを備え、前記演算部は、前記測定対象物質の濃度が設定範囲内であった場合は簡易情報を、前記測定対象物質の濃度が設定範囲外であった場合及び/または前記終点が求められなかった場合は詳細情報を、前記プリンタに印字させるように構成され、前記詳細情報は、少なくとも前記検出器から得られる滴定開始から滴定終了までの何れかの時点における滴定指標値の情報を含み、前記簡易情報は前記詳細情報より情報量が少ないことを特徴とする自動滴定装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異常値が得られた場合又は終点が得られなかった場合のみに印字する、又は、異常値か得られた場合又は終点が得られなかった場合に詳細な滴定情報を印字する構成としたので、異常値等の解析に必要な滴定情報を、簡便に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<装置構成>
本発明の一実施形態に係る自動滴定装置について説明する。図1に示すように、本実施形態の自動滴定装置は、試料液Sを含む測定液Fを収容する滴定容器1と、滴定容器1に試料液S中の測定対象物質と反応する滴定液Rを供給するビュレット2と、滴定液Rの供給量(以下「滴定量」という。)に対応して得られる滴定指標値を検出する検出器3と、検出器3から得られる滴定指標値が入力される演算制御装置4と、プリンタ5とから、基本的に構成されている。
【0009】
ビュレット2は、滴定容器1に挿入されたノズル2aと、滴定液Rを収容する滴定液タンクTRに挿入された配管2bとを備えている。ノズル2aは測定液Fの液面以下となるように滴定容器1に挿入されている。
検出器3は、滴定指標値の種類に応じて適宜選択される。例えば、滴定指標値がpHの場合はpH電極が、滴定指標値が酸化還元電位(電流)の場合は酸化還元電極が、滴定指標値が光透過率の場合は光センサーが、滴定指標値が電気伝導率の場合には電気伝導率センサーが、滴定指標値が温度の場合には温度センサーが、各々選択される。
なお、図1では、pH電極のように、測定液F内に挿入して検出を行う検出器を示している。
演算制御装置4は、検出器3から得られる滴定指標値に基づき終点を求め、該終点における滴定量から、試料液S中の測定対象物質の濃度を演算すると共に、必要な情報を記憶するようになっている。また、自動滴定装置全体の動作を制御するようになっている。
【0010】
滴定容器1には、試料液計量ユニット10から、希釈水と共に試料液Sを供給するための配管L1が挿入されている。試料液計量ユニット10は、三方弁11、三方弁12、及びこれらの弁の共通ポート(白と黒の三角で示したポート)間に設けられた試料液計量管13とで構成されている。
三方弁11の常開ポート(白の三角で示したポート)には、試料液入口20から試料液供給槽21を介して試料液Sを導く配管L2が接続されている。三方弁12の常閉ポート(黒の三角で示したポート)には、希釈水入口30から希釈水計量管31、送液ポンプP1を介して希釈水Dを導く配管L3が接続されている。また、三方弁12の常開ポート(白の三角で示したポート)には、送液ポンプP2を介して排出口40に導かれる配管L4が接続されている。
【0011】
滴定容器1には、また、標準液タンクT1から送液ポンプP3を介して標準液BU1を供給する配管L5、標準液タンクT2から送液ポンプP4を介して標準液BU2を供給する配管L6、洗浄水入口50から二方弁51を介して洗浄水Wを導く配管L7が挿入されている。配管L1、L5、L6、L7は、何れも測定液Fに触れないよう、測定液Fの液面より上の空間に先端が配置されるように挿入されている。
滴定容器1には、また、排液トラップ61、エアポンプP5を介して排出口60に導かれる配管L8が接続されている。配管L8は、測定液Fの液面下、最も深い位置まで挿入されている。
滴定容器1には、さらに、測定液Fを攪拌するための攪拌装置70が挿入されている。
【0012】
<動作>
以下、滴定指標値がpHで、検出器3がpH電極であり、中和滴定を行う場合を例にとって本実施形態の自動滴定装置の動作を説明する。
本実施形態の自動滴定装置では、試料液S中の測定対象物質の濃度測定に先立ち、検出器3の校正を行う。また、各校正作業及び各測定対象物質の濃度測定は、何れも最後のステップとして洗浄ステップを有する。
【0013】
[洗浄ステップ]
洗浄ステップは、エアポンプP5を動作させて配管L8より測定液F(校正時には標準液)を排出してから、二方弁51を開放して配管L7より洗浄水Wを供給する。そして、攪拌装置70を動作させることにより供給された洗浄水Wで滴定容器1内を洗浄し、その後、エアポンプP5を動作させて配管L8より洗浄水Wを排出することにより行う。洗浄ステップは、必要に応じて複数回繰り返してもよい。
【0014】
[校正]
校正は、標準液BU1による校正、標準液BU2による校正を含む。
標準液BU1による校正は、滴定容器1に送液ポンプP3を動作させて配管L5より標準液BU1を供給するステップ、供給された標準液BU1について検出器3から得られる検出電位を、標準液BU1のpHと関連づけて演算制御装置4に記憶させるステップ、及びその後の洗浄ステップとを有する。
また、標準液BU2による校正は、滴定容器1に送液ポンプP4を動作させて配管L6より標準液BU2を供給するステップ、供給された標準液BU2について検出器3から得られる検出電位を、標準液BU2のpHと関連づけて演算制御装置4に記憶させるステップ、及びその後の洗浄ステップとを有する。
標準液BU1による校正、標準液BU2による校正を行うことにより、演算制御装置4は、検出器3から得られる検出電位をpHに換算して認識できるようになる。標準液BU1による校正、標準液BU2による校正は、必要に応じて複数回繰り返してもよい。
【0015】
[濃度測定]
試料液中の測定対象物質の濃度測定は、演算制御装置4の制御の下、図2に示すステップA1〜A8からなる手順A、又は図3に示すステップB1〜B9からなる手順Bの何れかにより行う。
【0016】
(手順A)
手順Aでは、まず、ステップA1としてサンプリングを行う。ステップA1では、まず試料液計量ユニット10における三方弁11の常開ポート及び三方弁12の常開ポートを開いた状態で送液ポンプP2を動作させ、試料液Sを配管L2から試料液計量管13を経由して配管L4へと流す。
次いで、三方弁11の常閉ポート及び三方弁12の常閉ポートを開いた状態に切り替えて送液ポンプP1を動作させ、予め希釈水計量管31で計量した希釈水Dを配管L3から試料液計量管13を経由して配管L1へと流す。これにより、試料液計量管13内に充填されていた一定量の試料液Sが、一定量の希釈水Dと共に滴定容器1に供給される。
【0017】
ステップA1の後、ステップA2として滴定を行う。ステップA2では、ビュレット2を動作させて滴定液Rを滴定容器1に供給しつつ、滴定量に応じたpH(滴定指標)を検出器3により検出する。
ビュレット2の動作は、演算制御装置4により適宜制御する。例えば、滴定初期は連続して滴定液Rを注入し、終点近傍のpHに到達した後は、間欠的に微少量ずつ注入するように制御する。
そして、演算制御装置4により、検出したpHから終点を求める。終点の求め方に限定はなく、公知の方法が採用できる。例えばpHの微分値が極大値を得られたときを終点とする方法、pHが一定の値に達したときを終点とする方法が採用できる。
終点が求められたら滴定を終了する。また、滴定量が通常想定される量を著しく超過しても終点が求められない場合も終了する必要があるので、滴定量が所定量(例えば後述の濃度の設定範囲の上限値に対応する滴定量の2倍)以上となったときに滴定を終了する。
【0018】
ステップA2の後、ステップA3として終点検知の有無を判別し、終点が得られた場合はステップA4に、終点が得られなかった場合はステップA6に進む。
ステップA4では濃度演算を行う。周知のように、試料液中の測定対象成分の濃度は、滴定容器1に供給された試料液の体積、滴定液中の測定対象成分と反応する成分の濃度、及び終点における滴定量から計算できる。なお、試料液の体積(本実施形態では試料液計量ユニット10の試料液計量管13内に充填される量)は、予め濃度既知の標準資料を滴定することにより正確に求めることができる。
【0019】
ステップA4の後、ステップA5として演算した濃度が設定範囲内か否かを判別し、範囲内である場合はステップA7に、範囲外である場合はステップA6に進む。設定範囲は、予め演算制御装置4に記憶させておく。設定範囲は、上限値及び下限値の双方が規定される範囲だけでなく、上限値のみ、又は下限値のみで規定される範囲でもよい。また、上限値は、所定の値以下として規定してもよいし、所定の値未満として規定してもよい。同様に、下限値は、所定の値以上として規定してもよいし、所定の値超として規定してもよい。具体的な設定範囲は、使用目的に応じて任意に規定できる。
【0020】
前記のように、ステップA3で終点が得られなかった場合、及びステップA5で濃度が設定範囲外である場合はステップA6に進む。
ステップA6では、演算制御装置4からプリンタ5に印字命令を出力する。印字する情報は、少なくとも検出器3から得られる滴定開始から滴定終了までの何れかの時点におけるpH(滴定指標値)の情報を含むものとする。具体的な印字内容例については後述する。
【0021】
前記のように、ステップA5で濃度が設定範囲内である場合はステップA7に進む。また、ステップA6が終了した場合もステップA7に進む。
ステップA7は伝送出力のステップである。具体的には、演算制御装置4から、コントロールセンター等に配置したコンピュータ(図示省略)に、ステップA4で演算した濃度(終点が得られなかった場合はその旨)を伝送出力する。
なお、必要に応じてその他の情報、例えば、滴定量、温度、時間等を併せて出力してもよい。
ステップA7の後、ステップA8として上記で説明したとおりの洗浄ステップを行い、手順Aを終了する。
【0022】
(手順B)
手順Bでは、まず、ステップB1として、ステップA1と同様にサンプリングを行う。また、ステップB1の後、ステップB2として、ステップA2と同様に滴定を行い、終点を求める。終点が求められたら滴定を終了する。また、滴定量が通常想定される量を著しく超過する所定量以上となったときに滴定を終了する。
【0023】
ステップB2の後、ステップB3として、ステップA3と同様に終点検知の有無を判別し、終点が得られた場合はステップB4に、終点が得られなかった場合はステップB7に進む。ステップB4では、ステップA4と同様に濃度演算を行う。
ステップB4の後、ステップB5として、ステップA5と同様に演算した濃度が設定範囲内か否かを判別し、範囲内である場合はステップB6に、範囲外である場合はステップB7に進む。
【0024】
ステップステップB6では、演算制御装置4からプリンタ5に、簡易情報のみを印字させる簡易印字命令を出力する。一方、ステップB3で終点が得られなかった場合、及びステップB5で濃度が設定範囲外である場合に進むステップB7では、演算制御装置4からプリンタ5に詳細情報を印字させる詳細印字命令を出力する。
簡易情報は詳細情報より情報量が少ない。すなわち、詳細情報は簡易情報に加えて1以上の追加情報を含むものである。また、詳細情報は、少なくとも前記検出器から得られる滴定開始から滴定終了までの何れかの時点における滴定指標値の情報を含む。具体的な簡易情報、詳細情報の内容については後述する。
ステップB6が終了した場合、ステップB7が終了した場合は、何れもステップB8に進む。ステップB8は、ステップA7と同様の伝送出力のステップである。ステップB8の後、ステップB9として上記で説明したとおりの洗浄ステップを行い、手順Bを終了する。
【0025】
<印字内容>
図4は、手順Aにおいて印字命令(ステップA6)が出されたときの印字内容、または手順Bにおいて詳細印字命令(ステップB7)が出されたときの印字内容の一例である。各印字項目は、略称等で示されているため、図4中に各印字項目の説明を付した。
図4の例では、上段側に、システムNo.サンプルNo.等、主として試料液Sに関する情報等が印字されている。
また、中段には、各種滴定条件が記載されている。例えば、滴定間隔がゼロ、すなわち、連続して滴定液Rを供給するようにビュレット2を制御したことが印字されている。
また、下段には、滴定開始時と滴定終了時、及び終点における具体的pHが、滴定指標値の情報として印字されている。また、終点における具体的滴定量が印字されている。また、終点を検出したときのpHの変化が「最大微分値」として電位の単位で印字されている。また、図4は、検出器3として温度センサー内蔵のpH電極である「pH(ATC)」が用いられた例であり、その温度センサーで測定された滴定開始時と滴定終了時の測定液Fの液温が印字されている。さらに、濃度の計算結果が印字されている。
また、図4の例では、最下段において、滴定開始から終了に至るまでの滴定量とpHとの関係が滴定曲線として、その微分曲線と共に描かれている。
【0026】
手順Aにおいて印字命令(ステップA6)が出されたときの印字内容、または手順Bにおいて詳細印字命令(ステップB7)が出されたときの印字内容は、終点が得られなかった原因や濃度が設定範囲外となった異常の原因を解明するための情報を含んでいる。原因を解明するための情報としては、少なくとも、滴定開始から滴定終了までの何れかの時点における滴定指標値の情報が必要である。
原因解明をより的確に行うためには、できるだけ多くの情報を含むことが好ましい。特に滴定指標値は、図4の例のように、少なくとも滴定開始時と終点における値が印字されていることが好ましい。滴定開始から終了までの滴定量と滴定指標値の対応関係を、逐次印字してもよい。
一方、徒に印字量が膨大になることを防ぐためには、印字命令(ステップA6)が出されたときの印字内容、または手順Bにおいて詳細印字命令(ステップB7)が出されたときの印字内容も、原因解明に支障のない範囲で簡略化することが好ましい。
例えば「滴定段数」が常に同一であれば、「滴定段数」の印字は省略することができる。
手順Aにおいて印字命令(ステップA6)が出されたときの印字内容(印字項目)、または手順Bにおいて詳細印字命令(ステップB7)が出されたときの印字内容(印字項目)は、演算制御装置4に記憶されている。記憶された印字内容(印字項目)は、必要に応じて変更できるようにされていることが好ましい。
【0027】
手順Bにおいて簡易印字命令(ステップB6)が出されたときの印字内容は、詳細印字命令(ステップB7)が出されたときの印字内容より簡略化されたものである。平常時の印字量を最小限に抑えるためには、簡易情報を最小限の情報とすることが好ましい。最小限の情報に限定はないが、例えば、サンプルNo.と濃度計算結果のみを印字することができる。
一方、平常時においてもある程度の情報を印字として残したい場合は、簡易情報においても、滴定指標値及び/または滴定量の情報を含んでもよい。例えば、サンプルNo.と濃度計算結果及び終点における滴定指標値及び滴定量を簡易情報として印字してもよい。
手順Bにおいて簡易印字命令(ステップB6)が出されたときの印字内容(印字項目)は、演算制御装置4に記憶されている。記憶された印字内容(印字項目)は、必要に応じて変更できるようにされていることが好ましい。
手順Bにおける詳細情報は、簡易情報に追加情報を追加したものである。これにより、平常時と異常時の印字量に差を付けられるので、全体の印字量を抑制しながら、異常の原因解明に有用な情報を印字内容から得ることができる。追加情報には、原因解明において有用性の高い滴定指標値及び/または滴定量の情報を含むことが好ましい。
【0028】
<その他の形態>
上記実施形態ではpH電極を用いた中和滴定を例にとって説明したが、試料液中の測定対象成分と滴定液との反応の種類に限定はなく、例えば、非水中和反応、酸化還元反応、沈殿反応、キレート反応等、各種反応を利用できる。また、当該反応に応じた各種の滴定指標値を選択できる。
また、終点が一つである一段滴定に限られず、終点が複数の多段滴定でもよい。その場合、終点毎に濃度の設定範囲を決めればよい。また、予め過剰量の試薬を添加してから滴定する逆滴定でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動滴定装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動滴定装置の動作手順のフロー図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る自動滴定装置の他の動作手順のフロー図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る自動滴定装置で得られる印字内容の一例である。
【符号の説明】
【0030】
1…滴定容器、2…ビュレット、3…検出器、4…演算制御装置、5…プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液を収容する滴定容器と、該滴定容器に滴定液を供給するビュレットと、前記滴定液の供給量に対応して得られる滴定指標値を検出する検出器と、前記検出器から得られる滴定指標値に基づき終点を求め、該終点までの滴定液の供給量から、前記試料液中の測定対象物質の濃度を演算する演算部と、プリンタとを備え、
前記演算部は、前記測定対象物質の濃度が設定範囲外であった場合、及び/または前記終点が求められなかった場合に、少なくとも前記検出器から得られる滴定開始から滴定終了までの何れかの時点における滴定指標値の情報を前記プリンタに印字させるように構成されていることを特徴とする自動滴定装置。
【請求項2】
試料液を収容する滴定容器と、該滴定容器に滴定液を供給するビュレットと、前記滴定液の供給量に対応して得られる滴定指標値を検出する検出器と、前記検出器から得られる滴定指標値に基づき終点を求め、該終点までの滴定液の供給量から、前記試料液中の測定対象物質の濃度を演算する演算部と、プリンタとを備え、
前記演算部は、前記測定対象物質の濃度が設定範囲内であった場合は簡易情報を、前記測定対象物質の濃度が設定範囲外であった場合及び/または前記終点が求められなかった場合は詳細情報を、前記プリンタに印字させるように構成され、
前記詳細情報は、少なくとも前記検出器から得られる滴定開始から滴定終了までの何れかの時点における滴定指標値の情報を含み、
前記簡易情報は前記詳細情報より情報量が少ないことを特徴とする自動滴定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−145221(P2010−145221A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322352(P2008−322352)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】