説明

自動綾巻機の巻取り部における糸引き出しを最適化するための装置

【課題】自動綾巻機の巻取り部における糸引き出しを最適化するための装置であって、繰り出しボビンの上側に位置決めされた、垂直方向に調節可能な糸ガイド部材を有している形式のものを改良して、全繰り出し過程中に、糸張力が減少され、また巻き返し過程中の糸の損傷が十分に、しかも確実に避けられるようにものを提供する。
【解決手段】糸ガイド部材17のための調節装置18が設けられていて、この調節装置18は、糸バルーンが単独の糸バルーン30を形成するように、前記糸ガイド部材17を、回転する糸バルーンのための上側の制限部として垂直に位置決めするようになっており、糸ガイド部材17の位置決めが、糸引き出し中に、繰り出しボビン19のそれぞれの巻き付け状態に関連して行われるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動綾巻機の巻取り部における糸引き出しを最適化するための装置であって、繰り出しボビンの上側に位置決めされた、垂直方向に調節可能な糸ガイド部材を有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動綾巻機の巻取り部において、供給ボビン、特にリング精紡機で完成された、比較的わずかな体積の糸を有するコップが、より大きい綾巻パッケージに巻き返される。しかも糸は巻き返し過程中に糸欠陥が監視され、この際に欠陥部分が切断され、同じ糸で撚り継ぎされるようになっている。糸が、いわゆる糸バルーンを形成しながらコップのヘッド部から引き出される巻き返し過程中に、糸は引張力にさらされる。従ってこの引張力は糸の引き出し速度及びひいては自動綾巻機の巻取り速度を制限することになる。この場合、糸張力は、種々異なる大きさである。つまり、糸張力は、コップの繰り出し過程の途中で、特にコップ繰り出し過程の最後の1/3において、有効な対抗手段が講じられなければ、最初の糸張力の数倍に増大し、これによって糸切れの危険性が著しく高くなる。糸切れは、綾巻パッケージの品質に不都合な影響を与えるだけでなく、当該の繊維機械の効率を低下させるので、これまで、巻き返し過程中のコップの繰り出し特性を改善し、かつ糸引き出し速度を高めることができるような装置の開発が試みられていた。
【0003】
糸引き出し速度を高めるために、例えば、繰り出しボビンを巻き返し中に回転させるとうい提案が既になされている。例えばスイス国特許第542781号明細書には、供給ボビンのための回転可能に支承されたボビン受容ピンを有する、精密綾巻機の巻取り部について記載されている。この場合、ボビン受容ピンは、駆動ベルトを介して駆動ドラムに接続されており、この駆動ドラムは、機械長手方向に沿って設けられた常時回転している駆動軸に支承され、かつ電磁クラッチを介して駆動軸に接続され得るようになっている。スピンドルを介して駆動される巻き上げボビン(この場合、綾巻パッケージ)の直径が所定の値に達し、それによって高い糸引き出し速度に達すると、相応の装置が働いて、供給ボビンのボビン受容ピンが、糸の繰り出し方向に抗して回転し、ひいては繰り出しボビンからの糸の分離引き出しが軽減されるようになっている。
【0004】
自動綾巻機のための同様に作業する巻取り部は、ドイツ連邦共和国特許公開第3843928号明細書にも記載されている。この公知の巻取り部においては、供給ボビンのためのボビン受容ピンが、巻き返し過程中にニューマチック(空圧)式に回転せしめられるようになっている。しかも、ボビン受容ピンには制動装置が配属されており、この制動装置は、回転駆動装置のための圧縮空気供給が遮断されると直ちに、自動的に作動せしめられる。このような装置によって、巻き返しプロセス中に発生する糸張力はやや減少され、それによって糸引き出し速度はやや高められる。これによって、このような装置においてしばしば、繰り出しボビンからの糸の分離引き出しがコントロール不能となり、ひいてはループが形成されてしまうという欠点が発生する。
【0005】
このような糸のループは、これが特に気づかれないまま綾巻パッケージに巻き付けられると、当該の綾巻パッケージがまったく使用不能となってしまうような著しい品質劣化を招くことになる。このような糸のループが検知されて、スラブキャッチャによって切断されるとしても、多く発生する糸ループは、繊維機械の効率に少なくとも不都合な影響を及ぼす。
【0006】
自動綾巻機の巻取り部においてコップのヘッド部から糸を引き出すことと関連して、さらに機械的な糸ガイド装置いわゆる糸引き出し加速装置が公知である。この糸引き出し加速装置は、コップの上側に間隔を保って定置に配置されていて、コップからの糸の引き出し作業を軽減させるようになっている。
【0007】
ヨーロッパ特許公開第0684203号明細書には、コップの上側に定置に位置決めされていて、複数の妨害縁部を備えた円錐台形に構成された糸ガイド面を有する糸引き出し加速装置が記載されている。この公知の糸引き出し装置の妨害縁部によって、コップから糸を繰り出す際に発生する糸バルーンが妨害されるようになっており、これはコップからの糸繰り出し特性に好都合に作用する。このような公知の機械的な糸ガイド装置によっても、巻き返し過程中に発生する糸張力はやや減少され、相応に糸引き出し速度がやや増大せしめられる。コップの下1/3を繰り出す際に効果的な糸張力(例えば糸をコップの巻管先端に当て付けることによって発生する)は、得られる糸引き出し速度を従来のように著しく制限する。
【0008】
糸引き出し加速装置のように作業する糸ガイド装置は、ドイツ連邦共和国特許公開第4221559号号明細書により公知である。この公知の糸ガイド装置は、第1の管状の制限部材を有しており、この制限部材は、コップの繰り出し段階に追従して所定に下降せしめられ、コップの円錐形外周面に対する制限部材の間隔を、長い区間に亘って一様に維持するようになっている。つまり、第1の制限部材は、上方から糸バルーン上に下降せしめられ、この際にコップ巻き返し過程中に糸バルーンを広げるようになっている。この第1の制限部材に摺動可能に第2の制限部材が支承されており、この第2の制限部材は、複数の糸バルーンの長さを制限する糸ガイド開口を有している。この第2の制限部材は、コップの繰り出し中にまず、第1の制限部材と一緒に下降せしめられ、次いで別個のストッパに当て付けられる。
【0009】
この公知の糸ガイド装置は常に、糸バルーンが第1の制限部材の下縁部に沿ってスライドする程度に、コップの上側に対して間隔を保って配置されており、それによって糸バルーンが押しつぶされて、糸がほぼコップから垂直方向に繰り出されるようになっている。しかも、2つの制限部材内では複数の糸バルーンが形成される。しかしながら、この公知の糸ガイド装置においては、糸に比較的高い機械的負荷が作用し、それによって、巻き返し過程中に糸が損傷を被るという危険性がある。
【特許文献1】スイス国特許第542781号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許公開第3843928号明細書
【特許文献3】ヨーロッパ特許公開第0684203号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許公開第4221559号号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような従来技術から出発して、本発明の課題は、自動綾巻機の巻取り部における糸引き出しを最適化するための装置を改良して、全繰り出し過程中に、糸張力が減少され、また巻き返し過程中の糸の損傷が十分に、しかも確実に避けられるようにものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決した本発明によれば、糸ガイド部材のための調節装置が設けられていて、この調節装置は、糸バルーンが単独の糸バルーンを形成するように、前記糸ガイド部材を、回転する糸バルーンのための上側の制限部として垂直に位置決めするようになっており、糸ガイド部材の位置決めが、糸引き出し中に、繰り出しボビンのそれぞれの巻き付け状態に関連して行われるようになっている。
【0012】
本発明の有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明による装置は、垂直方向に摺動可能に支承された糸ガイド部材のための調節装置を有しており、この調節装置が、糸引き出し過程中に糸バルーンのための上側の制限部を形成している。糸ガイド部材は糸引き出し過程中に、コップのそれぞれの巻き付け状態に関連して、振動の小さい1つの糸バルーンが発生するように、糸をガイドするようになっている。
【0014】
つまり糸バルーンの形を常に最適な状態にすることによって、糸は全巻き付け過程中に繰り出しボビンの円錐形外周面の層から注意深く分離され、かつ引き出されるようになっている。このような形式で、高い糸引き出し速度においても糸を確実に注意深く引き出すことが実現される。
【0015】
請求項2に記載されているように、例えば巻取り部コンピュータ又は中央制御ユニットが設けられており、このコンピュータ又は中央制御ユニットに、糸引き出し過程中に糸ガイド部材が垂直方向にずれる際に考慮する種々異なるパラメータをインプットできるようになっている。これらのパラメータは例えば、糸の番手、繰り出しボビンの長さ、糸ガイド部材の糸ガイド開口の直径又は、繰り出しボビン先端からの糸ガイド部材の初期間隔である。それぞれの与えられた状況にそれぞれ個別に適合させることによって、繰り出しボビンから糸を分離引き出す際に発生する力が最小にされ、また全巻き付け過程中にほぼ一定に維持される。
【0016】
付加的に又は選択的に、請求項3に記載されているように、糸バルーンを無接触で走査し、かつ糸バルーン形状を分析するための装置に接続されたセンサ装置が設けられている。糸バルーンを分析するための装置は、その分析評価に応じて、糸ガイド部材をガイドするための、糸ガイド部材の駆動装置を始動させる。この場合、糸ガイド部材の位置を、場合によっては、上方に修正することもできる。このような形式でも、繰り出しボビンから糸を一様に、かつ注意深く繰り出すことが、確実に実施され、これは、糸張力に有利に作用する。この糸張力は著しく減少去れ、全巻き返し過程中にほぼ一定に維持される。この場合、無接触で作業するセンサ装置として、有利な形式で光学式のセンサ装置が設けられており、この光学式のセンサ装置の信号は後置接続された装置で処理され、評価され、例えば糸ガイド部材をガイドするためにオンラインで切り換えることができる。
【0017】
この場合、センサ装置は巻取り部のケーシングに定置に配置されているか、又は請求項4に記載されているように、繰り出しボビンの中心軸線に対して平行に移動可能である。特にセンサ装置の移動可能な支承においては、理想形状に対する糸バルーンのわずかな相異も検出され、例えば糸ガイド部材の位置を相応に修正することによって好都合な影響を及ぼすことができる。
【0018】
請求項5によれば、糸ガイド部材は、有利には調節装置によって垂直方向で所定に調節可能なベース体と、該ベース体内に浮動状態で支承された、糸ガイド開口を有するインサートから構成されている。この場合、コップから引き出された糸は、インサート内に配置された、例えば円形の横断面(請求項6)を有する糸ガイド開口を有している。この場合、インサートが浮動式に支承されていることによって、巻き返し過程中に常にインサートが糸バルーンにほぼ追従運動し、これによって糸の注意深い取り扱いが行われる、という利点が得られる。
【0019】
円形の糸ガイド開口の代わりに、インサートは、楕円形に構成されているか(請求項7)、又は多角形に構成された(請求項8)糸ガイド開口を有していてもよい。この場合、糸ガイド開口の最適な形状は、種々異なるパラメータ、例えば糸材料、糸番手、糸引き出し速度その他に基づいている。
【0020】
請求項9に記載された選択的な実施例によれば、本発明による装置は、付加的に垂直方向に摺動可能に支承されたバルーン制限装置を有しており、このバルーン制限装置が巻き返し過程中に、コップから繰り出される糸の糸バルーンの曲率半径を機械的に制限することができるように、コップの上側に位置決め可能に構成されている。つまり、バルーン形成、特に糸バルーンの形状は、パラメータ「平均的なバルーン曲率半径」及び「自由な糸長さ」によって影響を受けるので、糸バルーンの最大曲率半径をバルーン制限装置によって相応に制限することによって、単独の(1つの)糸バルーン形成が開始される。
【0021】
請求項10に記載されているように、この場合、バルーン制限装置は、繰り出される糸によって形成された糸バルーンがもっぱらバルーン制限装置の内側に接するように、位置決めされている。つまり、バルーン制限装置によって、糸バルーンの広がりを半径方向で制限するが、垂直方向ではまったく制限しない、ほぼ半径方向の成分が糸バルーンに作用する。
【0022】
請求項11に記載されているように、さらに、バルーン制限装置を相応に位置決めすることによって、糸バルーンが過剰に振動しないように、つまりバルーン制限装置の下側でバルーン制限装置を越えて広がることがないように保証されている。このような理由から、バルーン制限装置は、常にコップの円錐形外周部の最大部分を覆うように、コップ上に位置決めされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明を図示の実施例を用いて具体的に説明する。
【0024】
図1には、符号1で示された自動綾巻機の全体が概略的に示されている。このような形式の自動綾巻機1は、一般的にはその両終端位置(図示せず)間に複数の同形式の作業箇所、図示の実施例では複数の巻取り部2を有している。これらの巻取り部2において、公知なように(従って詳しく説明しない)、リング精紡機で生産されたコップ9がより体積の大きい綾巻パッケージ(若しくは綾巻ボビン)15に巻き返され、この綾巻パッケージ15は、完成後に自動的に作業する(図示していない)サービス装置、有利には綾巻パッケージ交換器によって、機械に沿った延在する綾巻パッケージ搬送装置21に引き渡され、機械端部側に配置された積み込みステーション等に搬送される。
【0025】
このような自動綾巻機1は、ボビン及び巻管搬送システム3として構成された物流管理装置を有している。このボビン及び巻管搬送システム3内において搬送プレート8上でコップ9若しくは空の巻管が循環する。この巻管搬送システム3のうちの、図1ではコップ供給区間4と、巻取り部2に供給される横方向搬送区間6並びに巻管戻し案内区分7とが示されている。
【0026】
この場合、供給されたコップ9は、それぞれ横方向搬送区間6の領域内で巻き取り部2に存在する繰り出し位置ASにおいてより大きい体積の綾巻パッケージ15に巻き返される。このために各巻取り部2は、これらの巻取り部を整然と駆動させるための種々異なる装置を有している(同様に公知であるので、概略的に示されているだけである)。このような装置とは、例えば吸い込みノズル12,掴み管25並びに糸継ぎ装置10である。この場合、回転軸16を中心にして旋回可能に支承されている吸込みノズル12、並びに回転軸26を有する掴み管25は、それぞれ吸込み空気接続部を介して、機械長手方向に沿って延在する吸込み通路37に接続されている。
【0027】
さらに、このような自動綾巻機1は、一般的な形式で中央制御ユニット42を有しており、この中央ユニット42は、機械バス43を介して、各巻取り部2の巻取り部コンピュータ29に接続されている。
【0028】
このような形式の巻取り部2の詳しく図示していない別の装置は、糸テンショナ若しくは糸緊張装置(Fadenspanner)、スラブキャッチャ(Fadenreiniger)、ろう引き装置(Paraffiniereinrichtung)、糸切断装置、糸張力センサ並びに下糸センサである。
【0029】
綾巻パッケージ15の巻き上げは、一般的に巻き取り装置24で行われる。このような形式の巻取り装置24は、特に巻取りフレーム28を有しており、この巻取りフレーム28は旋回軸13を中心にして可動に支承されていて、綾巻パッケージ巻管を回転可能に保持するための装置を有している。つまり、綾巻パッケージ15は、巻取り過程中に、巻取りフレーム28のアーム間で自由に回転可能に支承されており、この場合、綾巻パッケージ15の表面が溝付きドラム14上に載っていて、この溝付きドラム14が綾巻パッケージ15を摩擦接続(摩擦による束縛)式に連行する。
【0030】
図1に示されているように、繰り出し位置ASに位置決めされたコップ9のヘッド部から引き出される糸31は、綾巻パッケージ15に達する途中でまず、本発明による垂直方向に摺動可能に支承された糸ガイド装置11を通る。つまり、糸31はコップ9から糸バルーン30の形で引き出される。この場合、糸バルーン30の形は、繊維材料、糸特性例えば糸番手に関連して、及び化学繊維においてはつやだしに関連して、コップの巻管先端と糸ガイド装置11との間の間隔によって影響を受ける。このことはつまり、糸番手と、巻取り速度と、コップの巻管先端からの糸ガイド装置11の間隔との所定の協働作用によって、コップの繰り出し過程全体に亘って、糸繰り出し時に単独のバルーンが発生するように保証される。このような単独のバルーンによって、コップ先端からコップ底部まで確実に同じ条件が得られるように保証する。
【0031】
糸ガイド装置11は糸ガイド部材17を有しており、この糸ガイド部材17は調節装置18を介して、2重矢印19で示されているように、規定された垂直方向で移動可能である。調節装置18は制御ライン20を介して巻取り部コンピュータ29に接続されている。
【0032】
図示の実施例では、巻取り部はさらにセンサ装置22を有しており、このセンサ装置22は、糸バルーン30の形状を無接触で検出する。センサ装置22例えば光学式の光センサは、分析装置27に接続されており、この分析装置27は、データライン23を介して巻取り部コンピュータ29に接続されている。
【0033】
図2〜図4には、本発明による糸ガイド装置11の第1実施例が概略的に示されている。
【0034】
垂直方向に摺動可能な糸ガイド部材17は、この実施例では一体的な閉じたリングとして構成されていて、このリングの内法直径つまり内径dは、例えば糸31の糸番手に合わせられている。
【0035】
この場合、図2は、巻き返し開始時の状態を示し、図3は巻き返し作業の途中の時点を示している。繰り出し位置ASに位置決めされたコップ9のヘッド部から糸31が引き出され、次いでこの糸13が、公知なように、図2〜図4に示していない綾巻パッケージに巻き上げられる。この場合、垂直方向に摺動可能に支承された糸ガイド部材17は、まずスタート位置SPにあり、このスタート位置SPにおいて、糸31が単独の糸バルーン30を形成しながらコップ9から引き出されることが保証されている。
【0036】
巻き返し過程の途中で、糸ガイド部材17は、最終的に図3に示した終端位置EPに達するまで、所属の調節装置18によって下方にずらされる。この場合、糸ガイド部材17のずれは、コップ9のそれぞれの巻き上げ状態に基づいている。
【0037】
別の装置例えば自動綾巻機1の中央制御ユニット42又は巻取り部コンピュータ29において種々異なるパラメータをインプットすることができる。これらのパラメータは、例えば糸31の糸番手、繰り出しボビン(コップ)9の長さL,糸ガイド部材17の直径d及び/又は形状、繰り出しボビン先端32と糸ガイド部材17との間の間隔aその他である。
【0038】
選択的に図4に示した実施例では、巻取り部2の領域にそれぞれセンサ装置22例えば光学式の光センサが配置されており、このセンサ装置22は、糸31を引き出す際に発生する糸バルーン30の形状を無接触で検出する。この場合、検出された糸バルーン30の形状はそれぞれ後置接続された分析装置27で評価され、データライン23を介して例えば巻取り部コンピュータ29に伝達される。
【0039】
次いで、巻取り部コンピュータ29を介して、糸ガイド部材17を相応に調節することによって糸バルーン30の形状を最適化するために、調節装置18が使用される。
【0040】
図5、図6並びに図7及び図8は、それぞれ糸ガイド部材17のための別の選択的な複数の実施例を示す。
【0041】
所定の糸番手及び巻取り速度において、バルーン曲率半径は、最小の貫通案内領域(この実施例では、糸ガイド開口39,40,41)の幾何学的な構成及び内径によっても影響を受ける。糸ガイド開口39,40,41の幾何学的な構成はさらに、定置の若しくは浮動状態で支承された、糸ガイド部材17の構成部分と糸31との間の摩擦特性、及びひいては糸負荷に作用する。
【0042】
特に図5に示されているように、糸ガイド部材17はこの実施例においては、調節装置18によって垂直方向に摺動可能なベース体33より成っており、このベース体33内にインサート34が浮動状態で配置されている。この場合、ベース体33はそのカバープレートの領域でも、また底プレートの領域でもそれぞれ1つの糸貫通開口35,36を有している。巻取り過程中に糸30によって変位可能である、浮動状態で支承されたインサート34は、できるだけ軽量に構成されていて、例えばアルミニウム又はプラスチックより製作されている。インサート34はさらに、鋼又はセラミックより成る耐摩耗性の糸ガイド用のアイ(Oese;鳩目)38を有しており、この糸ガイド用のアイ38は糸ガイド開口39を有していて、この糸ガイド開口39内で糸31が巻き返し過程中にガイドされるようになっている。
【0043】
この場合、糸ガイド用のアイ38の糸ガイド開口39は種々異なる形状を有していてよい。つまり、糸ガイド開口39は例えば、図6に示されているように、楕円形の形状を有する内法横断面を有していてよい。しかしながら、糸ガイド開口は、図7に符号40で示されているように、円形に丸く形成されていてもよい。また図8に示されているように、糸ガイド開口として多角形41を設けてもよい。
【0044】
図9には図1に示した巻取り部が示されており、この場合、繰り出し位置ASの領域内に、付加的にバルーン制限装置50が設けられている。このバルーン制限装置50は、コップ9の繰り出しステップに追従し、駆動装置51によって連続的に下降せしめられて、この際に、図9に示されているように糸バルーン30の曲率半径を制限する。
【0045】
このような糸バルーン30は、数値的に、異なる強さで強制的に減衰された弦振動としてみなされ、この場合、外側の曲線が回転する糸バルーンの包絡曲線を形成している。このような観点においては、自由な糸長さ、つまりコップ9における糸繰り出し位置と、コップ9の上側に位置する糸ガイド部材17との間の糸片が、弦の緊張長さに相当する。
【0046】
この場合、自由な糸バルーンは常に、弦振動、原則として正弦振動の固有形状に近いバルーン形状を得ようとする。この場合、弦振動の状態は、糸バルーンの数に相当する。このような関係において、単独のバルーンは、バルーン形状がくびれた部分を有していないように規定される。それに応じて、振動する弦の最初の高振動が2重バルーンとして特徴付けられる。この2重バルーンは、次第に大きくなるバルーン高さを伴う遅れ角度(Nacheilwinkel)が180°よりも大きくなると発生する。このような糸バルーンは締め付けられる傾向があり、それによってくびれ部分が形成されることになる。
【0047】
引きずり角度が>270°である場合、3重バルーン形状が発生する。つまり、自由な糸長さを介して、形成された糸バルーンの可能な数及びひいては糸に作用する糸張力も影響を受ける、ということである。
【0048】
糸ガイド部材17が垂直方向に摺動可能に支承されていることによって、取り入れ領域を可動に構成することができる。完全なコップ9において、例えばコップ9の先端と糸ガイド部材17との間に、最大間隔が存在する。この間隔は、糸の繰り出しが進むに伴って理想の位置まで減少される。有利な形式で、コップ先端と糸ガイド部材17との間の間隔は、完全なコップ9においては、コップ長さ及び糸番手に応じて約60mmである。この間隔は、糸ガイド部材17の理想の位置において約半分となる。
【0049】
自由な糸長さの他に、遠心力及び空気抵抗力が、バルーン形成に大きな影響を及ぼす。遠心力及び空気抵抗力は、種々異なる固定の及び可変なパラメータに基づいている。巻取り過程の機械技術的な条件を介して直接影響を受けるパラメータは、自由な糸長さの他に、平均的なバルーン曲率半径である。
【0050】
前述のように自由な糸長さが、糸ガイド部材17の位置を介して調節可能であるのに対して、バルーン曲率半径の最大切欠は、コップ9を介して下降可能なバルーン制限装置50によって規定される。
【0051】
糸ガイド部材17が垂直方向に摺動可能に支承されていることによって、特にバルーン制限装置50と協働して、全巻き返し過程中に糸31を単独バルーン30によってコップ9の層から引き出すことができる。しかも、この場合、特に完全なコップにおいて、振動減衰された糸バルーンが巻管先端に当て付けられ、それによって妨害されることは阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】糸引き出しを最適化するための装置を備えた自動綾巻機の巻取り部の側面図である。
【図2】巻き返し過程の開始時における、本発明による垂直方向に調節可能な糸ガイド部材の位置を示す側面図である。
【図3】巻き返し過程の途中における、図2に示した糸ガイド部材の位置を示す側面図である。
【図4】巻取り部に配置された、糸バルーンの形を検出するためのセンサ装置、並びにセンサ装置に後置接続された、糸バルーンを分析するための装置の側面図である。
【図5】図6のV−V線に沿った、垂直方向に調節可能な糸ガイド部材の別の有利な実施例の断面図である。
【図6】図5に示した糸ガイド装置の平面図である。
【図7】垂直方向に調節可能な糸ガイド部材の第3実施例の平面図である。
【図8】垂直方向に調節可能な糸ガイド部材の第4実施例の平面図である。
【図9】糸引き出しを最適化するための装置を備えた、自動綾巻機の巻取り部の別の実施例の側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 自動綾巻機、 2 巻取り部、 3 ボビン及び巻管搬送システム、 4 コップ供給区間、 5 貯蔵区間、 6 横方向搬送区間、 7 巻管戻し案内区間、 8 搬送プレート、 9 コップ(繰り出しボビン)、 10 糸継ぎ装置、 11 糸ガイド装置、 12 吸込みノズル、 13 旋回軸、 14 溝付きドラム、 15 綾巻パッケージ、 16 回転軸、 17 糸ガイド部材、 18 調節装置、 19 2重矢印、 20 制御ライン、 21 綾巻パッケージ搬送装置、 22 センサ装置、 23 データライン、 24 巻取り部、 25 掴み管、 26 回転軸、 27 分析装置、 28 巻取りフレーム、 29 巻取り部コンピュータ、 30 糸バルーン、 31 糸、 32 繰り出しボビン先端、 33 ベース体、 34 インサート、 35,36 糸貫通開口、 37 吸込み通路、 38 糸ガイド用のアイ、 39,40,41 糸ガイド開口、 42 中央制御ユニット、 43 機械バス、 50 バルーン制限装置、 51 駆動装置、 AS 繰り出し位置、 SP スタート位置、 EP 終端位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動綾巻機の巻取り部における糸引き出しを最適化するための装置であって、繰り出しボビンの上側に位置決めされた、垂直方向に調節可能な糸ガイド部材を有している形式のものにおいて、
糸ガイド部材(17)のための調節装置(18)が設けられていて、この調節装置(18)は、糸バルーンが単独の糸バルーン(30)を形成するように、前記糸ガイド部材(17)を、回転する糸バルーンのための上側の制限部として垂直に位置決めするようになっており、糸ガイド部材(17)の位置決めが、糸引き出し中に、繰り出しボビン(19)のそれぞれの巻き付け状態に関連して行われるようになっていることを特徴とする、自動綾巻機の巻取り部における糸引き出しを最適化するための装置。
【請求項2】
種々異なるパラメータ、例えば糸(31)の糸番手、繰り出しボビン(9)の長さ(L)、糸ガイド部材(17)の糸ガイド開口(39,40,41)の直径、繰り出しボビン先端(32)と糸ガイド部材(17)との間の初期間隔(a)がインプットされる装置(29,42)が設けられており、これらのパラメータは、糸引き出し中に糸ガイド部材(17)が調節装置(18)によって垂直方向に移動せしめられる際に相応に考慮されるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
単独の糸バルーン(30)の形状を検出するためのセンサ装置(22)と、単独の糸バルーン(30)の形状を分析するための装置(27)と、この分析結果に基づいて糸ガイド部材(17)を位置決めするための調節装置(18)とが設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項4】
センサ装置(22)が、繰り出しボビン(9)の長手方向中心軸線に対して平行に移動可能に配置されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
糸ガイド部材(17)が、垂直方向に所定に摺動可能なベース体(33)と、該ベース体(33)内で浮動式に支承された、糸(31)によって側方に変位可能な、糸ガイド開口(40)を備えたインサート(34)とを有している、請求項1記載の装置。
【請求項6】
糸ガイド開口(40)が円形の横断面を有している、請求項5記載の装置。
【請求項7】
糸ガイド開口(39)が楕円形に構成された横断面を有している、請求項5記載の装置。
【請求項8】
糸ガイド開口(41)が多角形に構成されている、請求項5記載の装置。
【請求項9】
垂直方向に摺動可能に支承されたバルーン制限装置(50)が設けられており、該バルーン制限装置(50)が、巻き返し過程中に、コップ(9)から繰り出された糸の糸バルーン(30)の曲率半径を制限するように、コップ(9)上に位置決め可能である、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
バルーン制限装置(50)が、駆動装置(51)によってコップ移動運動中に位置決めされ、糸バルーン(30)がもっぱらバルーン制限装置(50)の内側(52)に当て付けられ、それによって糸バルーン(30)がバルーン制限装置(50)によってほぼ半径方向の成分で以て負荷されるようになっている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記バルーン制限装置(50)は、このバルーン制限装置(50)を越える、糸バルーン(30)の過剰振動を阻止するように構成されていて、かつ位置決め可能である、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−124179(P2006−124179A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310165(P2005−310165)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, BRD
【Fターム(参考)】