説明

自動製パン機

【課題】副材料の飛び散りを抑えると共に、副材料の形の崩れを抑えることができる自動製パン機を提供する。
【解決手段】加熱室内1aに収納され調理材料を収容する練り容器7と、練り容器内に取り付けられた練り羽根9と、練り羽根を回転駆動する駆動部3と、複数の調理メニューから特定の調理メニューを選択可能であると共に、副材料の投入が「あり」か否かを選択可能な選択部19と、選択部にて選択された調理メニューに基づき、駆動部を制御して、練り羽根を回転させて練り容器内の調理材料を混練する練り工程を実施する制御部25とを備え、制御部は、さらに、選択部にて副材料の投入が「あり」と選択された場合、練り工程により混練された調理材料と、練り工程終了後に練り容器内に投入された副材料とを混ぜる混ぜ工程を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に家庭用として使用される自動製パン機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭でも簡単にパンを作ることができる自動製パン機(ホームベーカリーともいう)が普及してきている。これらの自動製パン機の中には、レーズンやナッツなどの副材料を自動投入することができるものがある。このような自動製パン機では、調理材料(パン生地)を混練する練り工程の途中で副材料が自動投入される。この副材料は、当該練り工程において、調理材料中に混ぜ込まれる。
【0003】
しかしながら、従来の自動製パン機においては、調理材料を練る作業と副材料を混ぜる作業とを同時に行うことになるため、副材料がチーズやベーコンなどの軟らかい材料である場合、調理材料中に副材料を混ぜ込む際に副材料の形が崩れるという課題がある。副材料の形を残したままパンを作ることができれば、使用者は、パンを食べる時に副材料の食感も楽しむことができる。
【0004】
また、副材料の混ぜ度合いを色々変えて楽しみたいという使用者からの要望も従来からある。そこで、特許文献1(特開2006−81722号公報)には、軟らかい副材料を練り工程の後半に投入することで、調理材料中に副材料を混ぜ込む時間を短くし、副材料の形の崩れを抑えるようにした自動製パン機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−81722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の自動製パン機では、練り工程の後半とはいえ、練り工程中に副材料を投入することには変わりがない。練り工程では、連続的に又は強い動作パターンでモータを駆動して練り羽根を回転させ、調理材料を混練する。このため、副材料の形の崩れを確実に抑えることは難しい。また、強い動作パターンでモータが駆動するとき、練り工程の途中で副材料が加熱室内に飛び散るという課題もある。
【0007】
従って、本発明の目的は、前記従来の課題を解決することにあって、副材料の飛び散りを抑えると共に、副材料の形の崩れを抑えることができる自動製パン機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明によれば、機器本体の内部に設けられた加熱室内に収納され、調理材料を収容する練り容器と、
前記練り容器内に取り付けられた練り羽根と、
前記練り羽根を回転駆動する駆動部と、
複数の調理メニューから特定の調理メニューを選択可能であると共に、副材料の投入が「あり」か否かを選択可能な選択部と、
前記選択部にて選択された調理メニューに基づき、前記駆動部を制御して、前記練り羽根を回転させて前記練り容器内の調理材料を混練する練り工程を実施する制御部と、
を備え、
前記制御部は、さらに、前記選択部にて副材料の投入が「あり」と選択された場合、前記練り工程により混練された調理材料と、前記練り工程終了後に前記練り容器内に投入された副材料とを混ぜる混ぜ工程を実施する、
自動製パン機を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動製パン機によれば、練り工程終了後に混ぜ工程を行うようにしているので、副材料の飛び散りを抑えると共に、副材料の形の崩れを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機の縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機の表示部及び選択部の正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機における食パンを調理する場合の調理工程を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機における食パンを調理する場合のモータの制御パターンを示す図である。
【図6A】本発明の第2実施形態にかかる自動製パン機の表示部及び選択部の正面図であって、副材料の混ぜ度合いとして「ふつう」が選択された状態を示す図である。
【図6B】本発明の第2実施形態にかかる自動製パン機の表示部及び選択部の正面図であって、副材料の混ぜ度合いとして「粗混ぜ」が選択された状態を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかる自動製パン機の混ぜ工程の実施時における表示部及び選択部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1態様によれば、機器本体の内部に設けられた加熱室内に収納され、調理材料を収容する練り容器と、
前記練り容器内に取り付けられた練り羽根と、
前記練り羽根を回転駆動する駆動部と、
複数の調理メニューから特定の調理メニューを選択可能であると共に、副材料の投入が「あり」か否かを選択可能な選択部と、
前記選択部にて選択された調理メニューに基づき、前記駆動部を制御して、前記練り羽根を回転させて前記練り容器内の調理材料を混練する練り工程を実施する制御部と、
を備え、
前記制御部は、さらに、前記選択部にて副材料の投入が「あり」と選択された場合、前記練り工程により混練された調理材料と、前記練り工程終了後に前記練り容器内に投入された副材料とを混ぜる混ぜ工程を実施する、
自動製パン機を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記制御部は、前記混ぜ工程において前記練り羽根を前記練り工程よりも緩やかに回転させる、第1態様に記載の自動製パン機を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記選択部は、副材料の混ぜ度合いを選択可能に構成され、
前記制御部は、前記混ぜ工程において、前記選択部にて選択された副材料の混ぜ度合いに応じた回転速度で前記練り羽根を回転させる、
第1又は2態様に記載の自動製パン機を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記選択部にて選択された副材料の混ぜ度合いの情報を記憶する記憶部を備え、前回の調理時に前記記憶部に記憶された副材料の混ぜ度合いの情報を設定初期値とする、第3態様に記載の自動製パン機を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、前記混ぜ工程を実施している時に、当該混ぜ工程を実施していることを表示する表示部をさらに備える、第1〜4態様のいずれか1つに記載の自動製パン機を提供する。
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機の縦断面図であり、図2は、その斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機の選択部及び表示部の正面図である。図4は、本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機における食パンを調理する場合の調理工程を示す図である。図5は、本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機における食パンを調理する場合のモータの制御パターンを示す図である。
【0018】
図1及び図2において、本第1実施形態にかかる自動製パン機は、内部に加熱室1aが設けられた有底筒状の樹脂製の機器本体1を備えている。機器本体1の下部には、シャーシ2が取り付けられている。シャーシ2には、駆動部の一例であるモータ3と、容器支持台4とが取り付けられている。
【0019】
モータ3は、プーリやベルトなどを含む伝達機構5を介して、容器支持台4に回転可能に支持されたコネクタ下6に回転力を与える。コネクタ下6は、練り容器7の下部に回転可能に支持されたコネクタ上8と係合可能に構成されている。練り容器7は、加熱室1a内に収納され、パン、ケーキ、餅などの調理材料を収容する着脱可能な容器である。また、練り容器7は、コネクタ下6とコネクタ上8とが係合することで容器支持台4上に取り付けられる一方、コネクタ下6とコネクタ上8との係合が外されることで加熱室1aから取り外し可能である。
【0020】
コネクタ上8は、練り容器7の底壁から上方に向けて突出するように取り付けられている。コネクタ上8の先端部には、練り容器7内に収容された調理材料を混練するための練り羽根9が着脱可能に取り付けられている。練り羽根9は、モータ3の回転力が伝達機構5に伝達され、コネクタ下6及びコネクタ上8が回転することで回転駆動する。
【0021】
練り容器7の上端部には、図1に示すように、練り容器7の上部開口部よりも上方に突出する把手取付部7aが少なくとも2箇所設けられている。これらの把手取付部7aには、貫通孔が設けられており、当該貫通孔に略半円弧状の把手7bが回動可能に取り付けられている。これにより、練り容器7の着脱及び持ち運びが容易になっている。
【0022】
加熱室1aには、練り容器7を加熱する加熱部の一例であるヒータ11と、加熱室1a内の温度を検知する温度検知部の一例である温度センサ12とが設けられている。ヒータ11は、容器支持台4上に取り付けられた練り容器7の下部を、隙間を空けて包囲するように配置されている。ヒータ11としては、例えば、シーズヒータを用いることができる。温度センサ12は、加熱室1a内の平均的な温度を検知することができるように、ヒータ11から少し離れた位置に配置されている。
【0023】
機器本体1の上部には、機器本体1の上部開口部を開閉可能な蓋13が回動可能に取り付けられている。蓋13は、蓋本体14と、外蓋15とを備えている。蓋本体14には、レーズン、ナッツなどの副材料を収納する副材料容器16と、イーストを収納するイースト容器17とが取り付けられている。副材料容器16とイースト容器17とは、練り容器7の上方に配置されている。
【0024】
副材料容器16は、着脱可能に構成され、着脱を容易にするため凹状の摘み部16aを備えている。副材料容器16の底壁は、副材料容器16に収容された副材料を練り容器7内に投入することができるように、蓋本体14の底壁14aに対して回動可能に取り付けられた開閉板16bで構成されている。開閉板16bは、ソレノイド18に接続され、ソレノイド18が駆動することにより開放される。なお、本第1実施形態においては、副材料容器16とソレノイド18とにより、副材料を練り容器7内に投入する副材料投入部の一例が構成されている。
【0025】
また、イースト容器17の底壁は、イースト容器17に収容されたイーストを練り容器7内に投入することができるように、蓋本体14の底壁14aに対して回動可能に取り付けられた開閉弁17aで構成されている。開閉弁17aは、ソレノイド(図示せず)に接続され、当該ソレノイドが駆動することにより開放される。
【0026】
外蓋15は、副材料容器16及びイースト容器17の上部開口部を開閉可能に取り付けられている。外蓋15の副材料容器16と対応する位置には、樹脂などの断熱部材で構成された副材料容器蓋15aが取り付けられている。副材料容器蓋15aの外周部には、パッキン15bが取り付けられている。
【0027】
機器本体1の上部には、図3に示すように、調理メニューや、副材料の自動投入の有無などを選択可能な選択部19と、選択部19で選択された情報などの各種情報を表示する表示部20と、調理情報などの各種情報を報知する報知部(図示せず)とが設けられている。また、図1に示すように、表示部20の近傍には、室温を検知する室温検知部の一例である室温センサ21が設けられている。
【0028】
選択部19には、複数の調理メニューから特定の調理メニューを選択可能なメニューボタン19aが設けられている。調理メニューには、例えば、食パンメニュー、ピザ生地メニュー、うどんメニュー、ケーキメニューなどが含まれる。メニューボタン19aは、アップボタン19aaとダウンボタン19abとを備えている。本第1実施形態において、各調理メニューには、互いに異なる番号が割り当てられている。例えば、食パンメニューには、メニュー番号「1」が割り当てられている。アップボタン19aa又はダウンボタン19abにより表示部20に表示されたメニュー番号を増減することにより、調理メニューを選択することができる。
【0029】
また、選択部19には、副材料の自動投入が「あり」か否かを選択可能な副材料投入選択ボタン19bが設けられている。副材料投入選択ボタン19bが押圧されると、表示部20に、副材料の自動投入を実施することを意味する「あり」が表示される。これにより、使用者が副材料の自動投入が「あり」を選択したか否かを確認できるようになっている。副材料投入選択ボタン19bが再度押されると、表示部20の「あり」の表示は無くなる。
【0030】
さらに、選択部19には、各種動作の開始を指示するスタートボタン19c、各種動作の停止や設定の取消を指示する取消ボタン19d、タイマー設定などを行うための時刻設定ボタンなども設けられている。
【0031】
表示部20に表示する情報には、選択部19にて選択した調理メニューや、副材料の投入の有無、調理が終了する時刻、異常発生などが含まれる。報知部が報知する情報には、選択部19による選択受付や、調理終了、異常発生などが含まれる。
【0032】
また、機器本体1には、図2に示すように、自動製パン機の持ち運びを容易にするためのハンドル22と、先端に差込プラグ23を備えた電源コード24とが設けられている。
【0033】
また、機器本体1には、図1に示すように、各部の駆動を制御する制御部25が設けられている。制御部25は、内部に記憶部(図示せず)を有し、当該記憶部に前回の調理時の情報や複数の調理メニューに対応する調理プロセスが記憶される。調理プロセスとは、練り、ねかし、混ぜ、発酵、焼成などの各調理工程を順に行うにあたって、各調理工程においてヒータ11の通電率、制御温度、練り羽根9の回転速度、ソレノイドの駆動タイミングなどが予め決められている調理の手順のプログラムをいう。制御部25は、選択部19に設けられたメニューボタン19aにて選択された特定の調理メニューに対応する調理プロセスと温度センサ12の検知温度とに基づいて、モータ3、ヒータ11、開閉板16bを開放するソレノイド18、及び開閉弁17aを開放するソレノイド(図示せず)の駆動を制御する。
【0034】
ここで、モータ3は、制御部25の制御により、図5に示すような制御パターンで間欠駆動される。制御部25は、調理プロセスの各調理工程毎に対応付けられた制御パターンでモータ3を制御する。
【0035】
各制御パターンは、ステップ、オン時間(秒)、オフ時間(秒)、繰り返し回数、時間(累積時間)で構成されている。各制御パターンは、ステップ0において、モータ3がオンされることから開始する。モータ3がオンされてから所定時間経過後、モータ3がオフされる。このようなモータ3のオンとオフの切換動作を1セットとし、当該切換動作が所定回数繰り返される。所定回数の切換動作の終了後、次のステップに移行し、ステップ0と同様に、モータ3のオンとオフの切換動作が所定回数行われる。このようなモータ3のオンとオフの切換動作が、各制御パターンに対して設定されたステップの数だけ繰り返し行われる。
【0036】
例えば、パターン1では、次のようにモータ3が制御される。まず、ステップ0において、モータ3が0.15秒間オンされ、その後、0.6秒間オフされる。このモータ3のオンとオフの切換動作を20回繰り返す。20回の切換動作が終了すると、次のステップ1に移行する。ステップ1では、モータ3が54秒間オンされた後6秒間オフされる切換動作が、パターン1の制御パターンを行うように設定された調理工程が終了するまで繰り返される。なお、図5において、「∞」は無制限を意味する。
【0037】
また、制御部25は、調理時の室温に応じた調理プロセスも各調理メニュー毎に複数記憶しており、調理開始時に室温センサ21により検知した室温に適した調理プロセスを選択して調理を行う機能を有している。
【0038】
次に、前記のように構成された本第1実施形態にかかる自動製パン機を用いて食パンを製造するときの手順及び動作の一例について、図4、図5を参照しながら説明する。なお、自動製パン機の各種動作は、制御部25の制御の下に行われる。
【0039】
まず、使用者は、練り羽根9をコネクタ上8に取り付けると共に、強力粉、バター、砂糖、塩、スキムミルク、水など、イーストを除く全ての調理材料を練り容器7内に入れる。その後、当該練り容器7を容器支持台4上にセットし、蓋13を閉じる。
【0040】
次いで、使用者は、外蓋15を開いて、イーストをイースト容器17に入れると共に、使用者の好みに応じてレーズン、ナッツなどの副材料を入れた副材料容器16を蓋本体14に取り付ける。その後、外蓋15を閉じる。
【0041】
次いで、使用者は、選択部19にて各種調理条件を設定する。より具体的には、使用者は、選択部19のメニューボタン19aのアップボタン19aa又はダウンボタン19abを押圧して、表示部20に表示されるメニュー番号を増減することにより、調理メニューを選択する。また、使用者は、副材料投入選択ボタン19bを押圧することにより、副材料の自動投入の有無を選択する。また、使用者は、必要に応じて、パンの焼き色やタイマー設定などの調理条件を設定する。以下では、説明の便宜のため、使用者は、食パンメニューに該当するメニュー番号「1」を選択すると共に、副材料の自動投入を実施することを意味する「あり」を選択したとして説明を続ける。
【0042】
次いで、使用者は、選択部19に設けられたスタートボタン19cを押圧して、調理の開始を指示する。なお、スタートボタン19cが押圧されなければ調理は開始しないので、調理材料を練り容器7内に入れるタイミングは、選択部19にて各種調理条件を設定する前であってもよし、当該設定した後であってもよい。
【0043】
調理が始まると、練り羽根9の回転により練り容器7内の調理材料を混練する練り工程が開始する。本第1実施形態において、練り工程は、図4に示すように、前練り工程とねかし工程と後練り工程とで構成されている。
【0044】
前練り工程では、図4に示すように、温度センサ12の検知温度が18℃になるように、ヒータ11の通電率を10%に制御して、加熱室1a内を温める。また、前練り工程では、練り羽根9を回転させるモータ3の制御パターンとして、パターン5が設定されている。このため、練り羽根9は、最初は低速で回転し、徐々に回転速度が速くなっていくように制御される。このような制御を行うようにしているのは、調理開始時はまだ調理材料が水や粉に分離している状態であるため、最初から練り羽根9を高速で回転させると、調理材料が周囲に飛び散ってしまうためである。
【0045】
前練り工程の開始から所定の時間(例えば、20分)が経過して、調理材料の混練によりパン生地が形成されると、練り羽根9の回転を停止させて、ねかし工程に移行する。この移行のタイミングで、開閉弁17aを開放するソレノイド(図示せず)が駆動して、練り容器7内にイースト容器17内のイーストが自動投入される。なお、このねかし工程は省略してもよい。
【0046】
ねかし工程の開始から所定の時間(例えば、60分)が経過すると、練り羽根9を再度回転させて、練り容器7内のパン生地を混練する後練り工程が開始する。この後練り工程により、イーストがパン生地中に均一に練り込まれる。後練り工程の時間は、例えば10分である。また、後練り工程では、モータ3の制御パターンとして、パターン1が設定されている。このため、練り羽根9は、イーストをパン生地中に練りこむために最初は低速で回転するが、すぐに回転速度を速くして、パン生地を混練する。
【0047】
選択部19にて副材料の自動投入「あり」が選択されていた場合、後練り工程の終了後、開閉板16bを開放するソレノイド18が駆動して、練り容器7内に副材料容器16内の副材料が自動投入される。その後、混ぜ工程が開始される。
【0048】
混ぜ工程は、副材料をパン生地に混ぜ込むことを目的とする工程である。このため、混ぜ工程では、モータ3の制御パターンとして、パターン2が設定されている。従って、練り羽根9は、前練り工程及び後練り工程に比べて、緩やかに(全体的に低速で)回転する。これにより、副材料の加熱室1a内への飛び散りを抑えると共に、副材料の形の崩れを抑えて、副材料をパン生地中に均一に撹拌させることができる。なお、混ぜ工程の時間は、前練り工程及び後練り工程よりも短く、例えば、3分程度である。
【0049】
なお、選択部19にて副材料の自動投入「あり」が選択されていなかった場合には、開閉板16bを開放するソレノイド18の駆動と混ぜ工程は省略される。
【0050】
混ぜ工程の終了後は、発酵工程に移行する。この発酵工程により、パン生地が発酵される。発酵工程では、発酵の際にパン生地内で発生したガスを排出するために練り羽根9を回転させるガス抜きが数回行われる。ガス抜きの時間は、1分程度である。発酵工程では、ガス抜きを行うとき以外は、モータ3は駆動されず、練り羽根9は回転しない。
【0051】
発酵工程(最後のガス抜き)が終了すると、成形発酵工程に移行する。成形発酵工程は、ガス抜きされたパン生地を再びスポンジ状に膨張させる工程である。また、成形発酵工程は、パン生地の温度を上げ、イーストの活性を高め、最も活性が高い状態で焼成工程が始められるようにする工程でもある。この成形発酵工程により、発酵作用によるパン生地の伸展性が増加し、芳香が生成される。この成形発酵工程は、30〜60分間行うことが好ましく、さらに、40〜50分間行うことがより好ましい。
【0052】
成形発酵工程の終了後は、焼成工程に移行する。焼成工程においては、ヒータ11による加熱により、温度センサ12の検知温度が食パンコースに対応して予め決められた温度である175℃になるまで加熱室1a内の温度を昇温させる。温度センサ12の検知温度が175℃に達すると、温度センサ12の検知温度が170℃を維持するようにヒータ11による加熱を調整する。焼成工程の開始から所定時間(例えば、40分)経過すると、食パンの調理工程を終了する。
【0053】
本発明の第1実施形態にかかる自動製パン機によれば、練り工程終了後に、副材料を練り容器7内に投入して混ぜ工程を行うようにしているので、副材料の飛び散りを抑えると共に、副材料の形の崩れを抑えることができる。また、副材料を自動投入することにより、使用者が副材料を手動で投入する手間を省くことができ、使い勝手を向上させることができる。
【0054】
なお、本第1実施形態では、調理プロセスの時間や温度、ソレノイドの駆動タイミング、モータ3の制御パターンなどについて具体的な数値を例示して説明したが、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【0055】
また、本第1実施形態では、モータ3のオンとオフを切り換えることにより、混ぜ工程において練り羽根9を緩やかに回転させるようにしたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、モータ3への通電率を下げることにより、混ぜ工程において練り羽根9を緩やかに回転させるようにしてもよい。
【0056】
また、本第1実施形態では、ソレノイド18を駆動することにより、副材料を練り容器7内に自動投入するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、使用者が手動で投入するようにしてもよい。この場合、例えば、後練り工程終了後に、報知部などにより使用者に副材料の投入のタイミングを報知し、使用者により練り容器7内に副材料が投入された後、混ぜ工程を行うようにすればよい。
【0057】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態にかかる自動製パン機について説明する。図6A及び図6Bは、本発明の第2実施形態にかかる自動製パン機の選択部19及び表示部20の正面図である。
【0058】
本第2実施形態にかかる自動製パン機が、前記第1実施形態にかかる自動製パン機と異なる点は、選択部19が副材料の混ぜ度合いを選択可能に構成されている点である。
【0059】
図6に示すように、選択部19は、副材料投入選択ボタン19bに代えて、混ぜ度合い選択ボタン19fを備えている。使用者は、調理条件を設定する際に、混ぜ度合い選択ボタン19fを押圧することにより、副材料の投入の有無及び副材料の混ぜ度合いを選択することができる。選択ボタン19fにて選択された副材料の投入の有無及び副材料の混ぜ度合いの情報は、図6A及び図6Bに示すように、表示部20に表示されるようにしている。本第2実施形態においては、一例として、副材料の混ぜ度合いを「ふつう」と「粗混ぜ」の2種類から選択できるようにしている。
【0060】
ここで、「ふつう」とは、チーズやベーコンなどの軟らかい副材料の形が残らないように、混練した調理材料に副材料を混ぜ込むことをいう。「ふつう」が選択された場合には、混ぜ工程において、モータ3の制御パターンとして図4のパターン6が実施されることが好ましい。これにより、最初は練り羽根9を低速で回転させて、その後、徐々に回転速度を速くしていくことで、副材料の飛び散りを抑えてパン生地にしっかりと副材料を混ぜ込ませることができる。この場合、混ぜ工程の後半で練り羽根9の回転速度を速くしているので、軟らかい副材料は、形が残らない状態でパン生地に混ぜ込まれる。
【0061】
また、「粗混ぜ」とは、チーズやベーコンなどの軟らかい副材料の形が残るように、混練した調理材料に副材料を混ぜ込むことをいう。「粗混ぜ」が選択された場合には、混ぜ工程において、モータ3の制御パターンとして図4のパターン2が実施されることが好ましい。これにより、混ぜ工程の最初から最後まで練り羽根9を低速で回転させることで、軟らかい副材料でもその形を残したままパン生地に副材料を混ぜ込ませることができる。
【0062】
本発明の第2実施形態にかかる自動製パン機によれば、選択部19にて副材料の混ぜ度合いを選択できるようにしているので、軟らかい副材料でも食感を楽しむことができるなど、副材料の混ぜ度合いを色々変えて楽しむことができるようになり、使用者の好みの混ぜ方を実現することができる。
【0063】
なお、本第2実施形態では、混ぜ度合い選択ボタン19fを押圧することにより、副材料の投入の有無と、副材料の混ぜ度合いの両方を選択することができるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、副材料の投入の有無を選択するボタンと、副材料の混ぜ度合いを選択するボタンを別々に設けるようにしてもよい。
【0064】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態にかかる自動製パン機について説明する。本第3実施形態にかかる自動製パン機が、前記第2実施形態にかかる自動製パン機と異なる点は、副材料の混ぜ度合いを選択する時に、前回の調理時に選択された副材料の混ぜ度合いを設定初期値とするようにした点である。
【0065】
前述したように、制御部25は、内部に記憶部(図示せず)を有し、当該記憶部に前回の調理時の情報や複数の調理メニューに対応する調理プロセスが記憶される。本第3実施形態では、この記憶部に、前回の調理時に選択された副材料の混ぜ度合いを記憶させるようにしている。使用者が調理条件を設定する際、制御部25は、記憶部に記憶されている副材料の混ぜ度合いを設定初期値とする。好ましくは、制御部25は、当該設定初期値とした副材料の混ぜ度合いを表示部20に表示する。
【0066】
本発明の第3実施形態にかかる自動製パン機によれば、前回の調理時に選択された副材料の混ぜ度合いを設定初期値とすることにより、使用者が調理のたびにお気に入りの混ぜ度合いを選択する手間を省くことができる。従って、使用者は、容易に好みの混ぜ方を実現することができる。
【0067】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態にかかる自動製パン機について説明する。図7は、本発明の第4実施形態にかかる自動製パン機の混ぜ工程実施時における選択部19及び表示部20の正面図である。
【0068】
本第4実施形態にかかる自動製パン機が、前記第1実施形態にかかる自動製パン機と異なる点は、混ぜ工程を実施している時に、当該混ぜ工程を実施している旨を表示部20に表示するようにした点である。
【0069】
本発明の自動製パン機のように長時間色々なパターンで動作する機器の場合、使用者は、調理中にどの工程まで進んでいるのか、正常に動作しているのかなど、現在の動作状況に対して興味や関心、不安を抱くことがある。そこで、本第4実施形態では、混ぜ工程を実施している時、図7に示すように表示部20に「混ぜ」の文字を表示するようにしている。これにより、使用者に調理状況を知らせることができ、長時間色々なパターンで動作する機器に対する使用者の興味や関心を満たすことができる。また、正常に動作しているのかといった不安を解消すると共に、使用者の好みの混ぜ方を実現することができる。
【0070】
なお、本第4実施形態では、混ぜ工程を実施している時のみ、その旨を表示して使用者に知らせるようにしたが、同様に他の工程を実施している時にもその旨を表示するようにしてもよい。すなわち、使用者に調理状況を知らせることができればよい。
【0071】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0072】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明における自動製パン機は、副材料の飛び散りを抑えると共に、副材料の形の崩れを抑えることができるので、特に、一般に家庭用として使用される自動製パン機として有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 機器本体
1a 加熱室
2 シャーシ
3 モータ
4 容器取付台
5 伝達機構
6 コネクタ下
7 練り容器
8 コネクタ上
9 練り羽根
11 ヒータ
12 温度センサ
13 蓋
14 蓋本体
15 外蓋
16 イースト容器
17 副材料容器
18 ソレノイド
19 選択部
20 表示部
21 室温センサ
22 ハンドル
23 差込プラグ
24 電源コード
25 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体の内部に設けられた加熱室内に収納され、調理材料を収容する練り容器と、
前記練り容器内に取り付けられた練り羽根と、
前記練り羽根を回転駆動する駆動部と、
複数の調理メニューから特定の調理メニューを選択可能であると共に、副材料の投入が「あり」か否かを選択可能な選択部と、
前記選択部にて選択された調理メニューに基づき、前記駆動部を制御して、前記練り羽根を回転させて前記練り容器内の調理材料を混練する練り工程を実施する制御部と、
を備え、
前記制御部は、さらに、前記選択部にて副材料の投入が「あり」と選択された場合、前記練り工程により混練された調理材料と、前記練り工程終了後に前記練り容器内に投入された副材料とを混ぜる混ぜ工程を実施する、自動製パン機。
【請求項2】
前記制御部は、前記混ぜ工程において前記練り羽根を前記練り工程よりも緩やかに回転させる、請求項1に記載の自動製パン機。
【請求項3】
前記選択部は、副材料の混ぜ度合いを選択可能に構成され、
前記制御部は、前記混ぜ工程において、前記選択部にて選択された副材料の混ぜ度合いに応じた回転速度で前記練り羽根を回転させる、
請求項1又は2に記載の自動製パン機。
【請求項4】
前記制御部は、前記選択部にて選択された副材料の混ぜ度合いの情報を記憶する記憶部を備え、前回の調理時に前記記憶部に記憶された副材料の混ぜ度合いの情報を設定初期値とする、請求項3に記載の自動製パン機。
【請求項5】
前記混ぜ工程を実施している時に、当該混ぜ工程を実施していることを表示する表示部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動製パン機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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