説明

自動販売機の給湯加熱システム

【課題】 単体の蓄電装置にてヒーターへの大電流の通電を可能とし、適温の温水を瞬時に生成、供給する。
【解決手段】 自動販売機における給湯用の加熱を行う自動販売機の給湯加熱システムであって、配管内を通流する水を加熱する加熱装置11と、加熱装置11に供給する電力を蓄電する蓄電装置12とを備えてなり、加熱装置11は、蓄電装置12より短時間で供給された大電流の電力量により、配管内を通流する水を急速加熱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機における給湯に関し、特に給水配管内の水を急速加熱して適温の温水を瞬時に供給する給湯加熱システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カップ式自動販売機には、コーヒー飲料等の粉末原料と温水とをカップに注入して調合したり、あるいは原料と温水とを調理・調合してからカップに供給する等のものがある。
【0003】
このカップ式自動販売機は、自動販売機の外部から供給された水道水を貯留するとともに、販売時に所定量の温水を所定の給湯管を介して飲料調理部やカップに供給する温水タンクと、この温水タンクに貯留された水を加熱するヒーターとを備え、そして温水タンクには常時温水を蓄え、常時通電されたヒーターにより保温状態におかれている。
【0004】
しかし、温水タンク内に供給された水道水をヒーターにて飲料調理に適した温度まで加熱する事は十分可能であるが、電気ヒーターによる加熱では、エネルギー損失が大きいため、加熱効率が低く、そのため貯留水を適温まで加熱するために、大きな電力量が必要となる。
【0005】
また適温の温水等を瞬時に得るためには、ある程度の容量の水を予め加熱して温水とし、温水タンク等に保温、貯留しておく必要があり、温水タンク内に供給された水道水を長時間かけて通電加熱しなければならず、使用電力量が大きくなってしまう。
【0006】
これらの問題を改善するために、種々の工夫がなされた電気温水器等の提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0007】
上記特許文献1に記載の自動販売機での給水加熱は、水の吐出経路である配管内に水道水を加熱するヒーターを配置して、飲料吐出要求があったとき、給水弁を所定時間開き、水温に応じた電力をヒーターに供給し、加熱された湯を吐出させることで、温水タンクに常時湯を蓄えておかなくても、いつでもすぐに適温の湯が供給できるとするものである。
また、上記特許文献2に記載の加熱システムは、電気二重層コンデンサ、燃料電池、二次電池の組み合わせにより、ヒーターへ大電流を通電させ、流体を急速加熱するもので、必要なときに加熱された液体を得ることができるとするものである。
【特許文献1】特開平9ー245246号公報
【特許文献2】特開2004−53098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の給水加熱の仕方では、流出経路である配管内に配置したヒーターへ、飲料生成に必要な熱湯を得るための大量のエネルギーを供給することが難しく、またこの大量のエネルギーの供給方法について開示されておらず、その実現が困難と予想される。
【0009】
また、特許文献2に記載の加熱システムは、電気二重層コンデンサ単体ではエネルギー密度が低いため、放電するエネルギーが小さく、また燃料電池や二次電池の単体では大電流を通電させる事が困難であり、流体への急速加熱には、組み合わせによる蓄電地装置が用いられ、通電に際しては、複雑な制御が必要となってしまう。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、装置構成の組み合わせを簡素化し、複雑な制御を要することなく、さらに常時温水タンクにおける温水貯留を必要とせず、単体の蓄電装置にてヒーターへの大電流の通電を可能とし、適温の温水を瞬時に生成、供給することができる給湯加熱技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本発明が提案するものは、自動販売機における給湯用の加熱を行う自動販売機の給湯加熱システムであって、配管内を通流する水を加熱する加熱装置と、該加熱装置に供給する電力を蓄電する蓄電装置とを備えてなり、前記加熱装置は、前記蓄電装置より短時間で供給された大電流の電力量により、前記配管内を通流する水を急速加熱することを特徴とする自動販売機の給湯加熱システムである。
【0012】
このように、蓄電装置に電力を蓄えておき、給湯が必要な時に、蓄電装置から短時間で大電流による電力量を加熱装置に供給することができるので、電気エネルギーにより瞬間湯沸しが可能となり、従来装置に比べて、非常に効率よく短時間にて水を急速加熱することができる。本明細書では、大電流とは従来の自動販売機にて給湯加熱用に通電する電流を超えるもの、例えば15A以上をいうものとする。急速加熱とは自動販売機での給湯に支障のない程度の時間であり、例えば数秒から多くても10〜20秒程度をいうものとする。
【0013】
また加熱装置は、配管内を通流する水を加熱するので、常時温水タンクにおける温水貯留を不要とすることができる。
【0014】
さらに加熱が必要ない時に、必要な電力量が蓄電装置に蓄えられているために待機電力を低減することが出来、省エネルギー化を図ることができる。
【0015】
前記蓄電装置は、蓄電部がリチウムイオンキャパシタとし、このリチウムイオンキャパシタに電力を蓄電することが好ましい。
【0016】
リチウムイオンキャパシタは、エネルギー密度及び出力密度が高く、充電にかかる時間が極めて短い上に、瞬間的に大電流を放電することが可能である。すなわち大電流を急速に充放電することができるので、自動販売機における給湯を停滞なく繰り返し行うことができるものである。そして充電時間が短いことにより、充電開始から水加熱までの時間を従来に比べて更に低減することが可能である。
【0017】
また、充放電に伴う材料劣化がないため、充放電の繰り返し寿命が長く、半永久的に使用可能である。
【0018】
リチウムイオンキャパシタは、電気二重層コンデンサの特徴である耐久性、出力特性、安全性を維持しながら、エネルギー密度を飛躍的に高めたものである。
【0019】
さらに前記加熱装置は、円筒型セラミックヒーターであることが好ましい。円筒内を通流する水を加熱するものであり、セラミック製であるので大電流による急速な加熱に耐えることができる。
【0020】
前記蓄電装置より前記加熱装置へ短時間に供給される大電流が、15A以上であることが好ましく、さらには20A以上であることがより好ましい。この大電流により水を急速加熱することが可能となるからである。
【0021】
また蓄電装置は最大50kwhの電力量の蓄電が可能であり、この蓄電された500wh〜50kwhの電力量を、4〜3600秒の範囲にて前記加熱装置に供給することが好ましく、上記範囲の電力量を蓄電し、上記範囲の時間での放電により供給することで、効率よく加熱装置に大電流を通電し、水を加熱することができる。
【0022】
蓄電される電力量や、放電時間は加熱装置の性能や加熱対象(種類や量、加熱温度)に応じて適宜設定することができる。
【0023】
さらに自動販売機内の給水用配管を通流する水を加熱装置と接触させ、直接的に加熱させるので、効率よく給水用配管内の水を加熱することができる。
【0024】
また配管内を通流する水を加熱して給湯するものであるが、水以外の流体を加熱するものであってもよく、この場合も同様に加熱装置への短時間内の大電流の供給によって、急速加熱するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、蓄電装置に電力を蓄えておき、自動販売機で飲料等の販売要求があったときに、所定量の水を給水用の配管に流し、蓄電装置から短時間にて大電流を急速放電して加熱装置に供給できるため、配管内を通流する水を急速加熱し、吐出できることにより、温水タンクを用いて常時温水を蓄えておくことなく、適温の温水を瞬時に供給することができる。
【0026】
また加熱の必要がない時は、必要な電力が蓄電装置に蓄えられているために待機電力を低減することができ、省エネルギー化を図ることができる。よって、電気エネルギーを用いて、瞬間的に流体を加熱することが可能となり、効率よく、短時間で給水用の水の急速加熱ができる。
【0027】
蓄電装置にリチウムイオンキャパシタを用いることで、リチウムイオンキャパシタ単体にて大電流をより急速に充放電することができる。すなわち、他の蓄電装置との組み合わせの必要がある電気二重層コンデンサと異なり、リチウムイオンキャパシタは、電気二重層コンデンサよりもエネルギー密度が高いことから単体での使用が可能となり、よって複雑な制御の必要もなく、装置構成も簡単にできる。
【0028】
リチウムイオンキャパシタは、大電流をより急速に充電することができ、充電から加熱に至るまでの時間を従来に比べて非常に短縮することができる。また、充放電回数にも制限がなく、リチウムイオンキャパシタを半永久的に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は本発明に係る自動販売機の給湯加熱システムを適用してなる装置構成の全体概略構成図である。なお、この実施形態では、加熱装置として円筒セラミックヒーターを用いた自動販売機の給湯加熱システムについて説明するが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の自動販売機の給湯加熱システムは、主として加熱装置11と、加熱装置に電力供給を行う蓄電装置12(リチウムイオンキャパシタ)と、加熱装置11に通流される配管内の水の温度を測定する温度検出装置13と、外部から配管内に所定量の水を導入するための流量調整弁14と、外部電源の交流電流を直流電流に変換して蓄電装置12の充電用に送るコンバータ15と、各種装置の制御を行う制御装置16とを備えている。なおこの給湯加熱システムは自動販売機本体の内部に設けられている。
【0031】
また流量調整弁14の外部側には、給水弁22が設けられており、さらにその先の水道管に接続されるようになっている。給水弁22は自動販売機が作動中は常時開いており、自動販売機のメンテナンス等のときに給水を停止する必要があるときに閉じられるようになっている。
【0032】
加熱装置11で適温に加熱された温水は、混合ユニット23に給湯され、コーヒー粉末、砂糖、粉乳等の飲料原料が貯留される原料ユニット25から供給された飲料原料と混合され、販売用の飲料として紙又はプラスチック製のカップ26に供給されるようになっている。
【0033】
加熱装置11は、急激な衝撃が加わっても割れない無機材料で、大電流に耐えられる発熱体を備えた円筒型セラミックヒーターを用い、蓄電装置12であるリチウムイオンキャパシタからの通電により円筒セラミックヒーターが加熱され、円筒内を流通する水を加熱するようになっている。
【0034】
制御装置16は、コンバータ15、蓄電装置12、加熱装置11、流量調整弁14及び温度検出装置13の各機能を制御するもので、その内部にはCPU、RAM、ROM、通信回路装置等が設けられている。制御装置16は、例えばROMに記録された本システム用プログラムをRAMに展開し、CPUからの制御信号を通信回路により各装置に送信制御するようになっている。
【0035】
次に、本発明の自動販売機の給湯加熱システムによる水の急速加熱の動作について説明する。
【0036】
外部電源の交流電流をコンバータ15により直流電流に変換し、この直流電流を蓄電装置12であるリチウムイオンキャパシタに送り、リチウムイオンキャパシタに蓄電する。
【0037】
コンバータ15を通じて蓄電装置12に、500wh〜50kwhの所要量の電力量が蓄電されると充電は完了し、蓄電装置12は放電待ちの状態になる。この状態より、自動販売機において飲料販売要求があり、スイッチが入ると、リチウムイオンキャパシタに蓄えられた電力量が4秒〜3600秒の短時間にて急速放電され、加熱装置11の円筒型セラミックヒーターが加熱され、内部を通流する給湯用の水が急速に加熱される。
【0038】
なお販売要求が入ると、制御装置16は流量調整弁14を開き、所定量の水を導入し、温度検出装置13により導入された水の温度を検出し、検出された温度をもとにして充電装置12から加熱装置11への供給電力量を制御する。これは季節による水道水の温度変化を考慮して給湯する温水の温度を一定にするためである。
【0039】
加熱装置11の加熱は、蓄電装置12であるリチウムイオンキャパシタの中の電気量がある一定電圧になるまで持続する。この一定電圧は上記した水道水の温度、供給する温水の量等によって定まるもので、制御装置16によって制御される。なお、充電は、放電の最中または放電終了後に、連続または断続的に行うことができ、次の加熱用の放電のための準備を行う。
【0040】
このように、蓄電装置12であるリチウムイオンキャパシタに所定の電力量を蓄えておき、必要なときに、リチウムイオンキャパシタから短時間で大電流を急速放電できるため、給湯用の水を加熱するヒーターに短時間で大電流を通電させることができる。よって瞬間的に水を加熱可能となり、非常に効率よく、短時間にて水を急速加熱することができる。
【0041】
また、蓄電装置12にリチウムイオンキャパシタを用いるため、電気二重層コンデンサのように他の蓄電装置の組み合わせの必要がなく、電気二重層コンデンサよりもエネルギー密度が高いことからリチウムイオンキャパシタ単体にて大電流を急速に充放電することができ、複雑な制御の必要性がなく、また充放電回数にも制限がなく、半永久的に使用することができる。
【0042】
さらに、加熱装置11として円筒セラミックヒーターを用いるので、非常に効率よく、熱を伝達することができる上、大電流に対する強度にも優れている。上記に述べた実施形態の構成では水道水からの流水を温水または熱湯に加熱するのに最適である。
【0043】
なお、上記に述べた加熱ヒーターの材質や形状、個数及び配置状況等は、上記実施形態以外にも適宜設定することができる。平板状の無機材料の一表面上または内部に発熱体を形成することもでき、発熱体が露出していない無機材料の表面を流体加熱面とすることが好ましい。さらに流体加熱面には、加熱効率を向上させるために、フィン等の種々の形状の金属部材を設けても良い。
【0044】
本実施形態では、自動販売機の給湯加熱として水道水を加熱したが、水道水以外の流体、例えば飲料としてすでに液体となって自動販売機内に収納されているものを加熱して、飲料カップに供給してもよい。
【0045】
また自動販売機以外の、たとえばオフィスに設置された給茶機の給湯加熱に適用すれば、常時給湯タンクに温水を常備することなく、瞬時に温水を供給することができるので、装置を簡略化し、さらに給湯タンクの温水の加温のための電力使用を省略して省エネルギーを図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る自動販売機の給湯加熱システムを適用してなる装置構成の全体概略構成図。
【符号の説明】
【0047】
11 加熱装置
12 蓄電装置
13 温度検出装置
14 流量調整弁
15 コンバータ
16 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動販売機における給湯用の加熱を行う自動販売機の給湯加熱システムであって、配管内を通流する水を加熱する加熱装置と、該加熱装置に供給する電力を蓄電する蓄電装置とを備えてなり、
前記加熱装置は、前記蓄電装置より短時間で供給された大電流の電力量により、前記配管内を通流する水を急速加熱することを特徴とする自動販売機の給湯加熱システム。
【請求項2】
前記蓄電装置は、蓄電部がリチウムイオンキャパシタであることを特徴とする請求項1に記載の自動販売機の給湯加熱システム。
【請求項3】
前記加熱装置は、円筒型セラミックヒーターであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動販売機の給湯加熱システム。
【請求項4】
前記蓄電装置より前記加熱装置へ短時間に供給される大電流が、15A以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の自動販売機の給湯加熱システム。
【請求項5】
前記蓄電装置は最大50kwhの電力量の蓄電が可能であり、この蓄電された500wh〜50kwhの電力量を、4〜3600秒の範囲にて前記加熱装置に供給することが可能な請求項1ないし4のいずれか一項に記載の自動販売機の給湯加熱システム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−3844(P2009−3844A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166114(P2007−166114)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(307037543)JMエナジー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】