説明

自動車のトランクガーニッシュの固定構造

【課題】作業エリアを小さくできて組み付け作業の作業効率を向上させることができる自動車のトランクガーニッシュの固定構造を提供する。
【解決手段】トランクリッド1のアウターパネル3に複数のボルト固定部19が車幅方向Wに並んで形成され、複数のボルト固定部19にトランクガーニッシュ10がボルト50とナット51で固定され、トランクリッド1のインナーパネル4には、ボルト50とナット51を螺合させる工具40が挿通する複数の工具挿通孔4Hが、複数のボルト固定部19に各別に対応して形成され、ボルト50が車両前後方向に対して車両前方側Frの端部50S側ほど車幅方向中央側に位置する傾斜姿勢になるようにボルト50の姿勢を設定するボルト姿勢設定手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
トランクリッドのアウターパネルに複数のボルト固定部が車幅方向に並んで形成され、
前記複数のボルト固定部にトランクガーニッシュがボルトとナットで固定され、
前記トランクリッドのインナーパネルには、前記ボルトとナットを螺合させる工具が挿通する複数の工具挿通孔が、前記複数のボルト固定部に各別に対応して形成されている自動車のトランクガーニッシュの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の自動車のトランクガーニッシュの固定構造において、前記ボルトは車両前後方向に沿うように配置されていた。そのために、作業者は、前記ボルトと同様に車両前後方向に工具を沿わせてナットとボルトを互いに螺合させていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−119459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、作業者はインナーパネルの車幅方向中央の車両前方側に位置して前記ボルトとナットを螺合させる。
上記従来の構造によれば、車両前後方向に前記工具を沿わせてナットをボルトに螺合させていたために、作業エリアが車幅方向両端側のボルトの車両後方側まで広がって大きくなっていた。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、作業エリアを小さくできて組み付け作業の作業効率を向上させることができる自動車のトランクガーニッシュの固定構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
トランクリッドのアウターパネルに複数のボルト固定部が車幅方向に並んで形成され、
前記複数のボルト固定部にトランクガーニッシュがボルトとナットで固定され、
前記トランクリッドのインナーパネルには、前記ボルトとナットを螺合させる工具が挿通する複数の工具挿通孔が、前記複数のボルト固定部に各別に対応して形成されている自動車のトランクガーニッシュの固定構造であって、
前記ボルトが車両前後方向に対して車両前方側の端部側ほど車幅方向中央側に位置する傾斜姿勢になるように前記ボルトの姿勢を設定するボルト姿勢設定手段が設けられている点にある。(請求項1)
【0006】
前記ボルト姿勢設定手段が設けられたことで、前記ボルトは、車両前後方向に対して、車両前方側の端部側ほど車幅方向中央側に位置するように傾斜するから、組み付け工程において、インナーパネルの車幅方向中央の車両前方側に位置する作業者は、工具を手元側ほど車幅方向中央側に位置するように傾斜させて使用することができる。
従って、前記ボルトが車両前後方向に沿うように配置されている従来の構造に比べると、作業エリアを車幅方向で小さくできて組み付け作業の作業効率を向上させることができる。
また、インナーパネルの車幅方向の端部側に位置する工具挿通孔の内周縁を前記従来の構造よりも車幅方向の中央側に寄せることができ、インナーパネルの車幅方向の端縁とインナーパネルの内周縁との間の長さを長くすることができて、インナーパネルの端部の強度を強くすることができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記ボルト固定部は前記アウターパネルにボルト挿通孔を形成して構成され、
前記ボルトの頭部を支持する複数のボルト支持部が前記トランクガーニッシュの裏面に車幅方向に並んで形成され、
前記ボルト支持部に頭部を支持された前記ボルトが前記ボルト挿通孔に挿通されるとともに、前記アウターパネルの車両前方側から前記ボルトに前記ナットが螺合され、
前記ボルト挿通孔の内周縁のうち車幅方向内側の内周縁部分と前記ボルトの外周面との間の第1間隔は、前記ボルトが前記ボルト挿通孔に挿通される際に前記ボルト挿通孔に当接することを回避可能な広い間隔に設定され、
前記ボルト挿通孔の内周縁のうち車幅方向外側の内周縁部分と前記ボルトの外周面との間の第2間隔は、車幅方向外側への前記ボルトの移動を阻止可能な狭い間隔に設定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記第1間隔は、前記ボルトが前記ボルト挿通孔に挿通される際に前記ボルト挿通孔に当接することを回避可能な広い間隔に設定されているから、前記ボルトが前記傾斜姿勢に設定される構造でありながら、ボルトを前記ボルト挿通孔に挿通させやすくすることができ、トランクガーニッシュのトランクリッドへの組み付け作業の作業性を向上させることができる。
また、前記第2間隔は、車幅方向外側への前記ボルトの移動を阻止可能な狭い間隔に設定されているから、組み付け状態でトランクガーニッシュが車幅方向外側に移動しにくくなり、トランクガーニッシュの車幅方向外側への移動に起因する外観不良を抑制することができる。
このように、トランクガーニッシュのトランクリッドへの組み付け作業の作業性の低下を抑制した状態で、トランクガーニッシュのトランクリッドに対する位置規制効果を得ることができる。
例えば、トランクガーニッシュから位置規制リブを突出させ、前記位置規制リブを介してトランクガーニッシュの位置を規制する手段では、位置規制リブの根元でヒケが発生してしまい、トランクガーニッシュの外観不良につながることが多くなる。これに対して、本発明の上記構成によれば、位置規制リブを設けることなくトランクガーニッシュの外観不良を抑制することができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記複数のボルトの隣り合うもの同士の間では、より車幅方向外側に位置する一方のボルトに対して設定された前記第1間隔が、他方のボルトに対して設定された前記第1間隔よりも長く設定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
前記トランクガーニッシュは車両後方側に凸の緩やかな円弧状に形成されていることが多く、このような形状のトランクガーニッシュでは、前記一方のボルトの車両前後方向に対する傾斜角が、他方のボルトの前記傾斜角よりも大きくなる。
そのために、前記他方のボルトをボルト挿通孔に挿通させる時よりも、前記一方のボルトをボルト挿通孔に挿通させる時の方が、ボルトがボルト挿通孔の内周縁に当接しやすくなる。
しかしながら、本発明の上記の構成によれば、より車幅方向外側に位置する一方のボルトに対して設定された前記第1間隔が、他方のボルトに対して設定された前記第1間隔よりも長く設定されているから、前記トランクガーニッシュが車両後方側に凸の緩やかな円弧状に形成されている場合であっても、ボルトを前記ボルト挿通孔に挿通させやすくすることができ、トランクガーニッシュのトランクリッドへの組み付け作業の作業性を向上させることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記ボルト支持部は前記トランクガーニッシュの裏面側に箱状に膨出形成され、
前記ボルト支持部の車幅方向の一側部に、前記ボルトの頭部が径方向に通過する開口が形成されるとともに、前記ボルト支持部の車両前方側の壁部に、前記ボルトの首部を径方向に受け入れる切り欠きが形成されて、前記ボルトの頭部が前記ボルト支持部内に収容可能に構成され、
前記ボルト姿勢設定手段は、前記ボルト支持部内のボルトが前記傾斜姿勢になるように、前記ボルトの頭部の頂面を受け止めるボルト受けを前記ボルト支持部に設けて構成され、
前記ボルト受けは車幅方向に沿うリブ状に形成され、
前記ボルト受けの上下方向の幅は前記ボルト支持部の車幅方向の他側部側ほど短く設定され、
前記ボルト受けを成形する成形型の型抜き孔が前記ボルト支持部の他側部に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
ボルトの頭部がボルト支持部の車幅方向の一側部の開口を前記頭部の径方向に通過してボルト支持部内に収容され、ボルトの首部が前記切り欠き内に位置する。そして、ボルト支持部内のボルトの頭部の頂面がボルト受けに受け止め支持されて、ボルトが前記傾斜姿勢に設定される。これにより、ボルト支持部からのボルトの落下を防止してボルトを確実に支持することができる。また、ボルトを前記傾斜姿勢に確実に設定することができる。
さらに、前記ボルト受けの上下方向の幅は前記ボルト支持部の車幅方向の他側部側ほど短く設定され、前記ボルト受けを成形する成形型の型抜き孔が前記ボルト支持部の他側部に形成されているから、ボルト支持部の一側部から他側部側に向かう方向に成形型を円滑に型抜きすることができる。
ボルト支持部の一側部側では切り欠きが開口していることで、ボルトの頭部の裏面(頂面とは反対側の面)に対するボルト支持部の支持面が、ボルト支持部の他側部側の前記支持面よりも小さくなる。しかしながら、本発明の上記構成によれば、前記ボルト受けは車幅方向に沿うリブ状に形成され、ボルト受けの上下方向の幅はボルト支持部の車幅方向の一側部側ほど長く設定されているから、ボルトの頂面に対する前記一側部側での前記支持面を大きくすることができて、前記頭部の支持力の低下を抑制することができる。
つまり、成形型を円滑に型抜きできる構造を、ボルトの頭部の支持力の低下を抑制できる構造に兼用して構造の簡素化を図ることができる。(請求項4)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、
作業エリアを小さくできて組み付け作業の作業効率を向上させることができる自動車のトランクガーニッシュの固定構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トランクリッドの分解斜視図
【図2】図1のB−B断面図
【図3】トランクガーニッシュの固定部を右前方から見た斜視図
【図4】トランクガーニッシュの固定部を左前方から見た斜視図
【図5】ボルト支持部でボルトの頭部を支持し、前記ボルトとナットでトランクガーニッシュをボルト固定部に固定した構造の断面図
【図6】自動車のトランクガーニッシュの固定構造の横断平面図
【図7】別実施形態のトランクリッドの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1に自動車のトランクリッド100を示してある。このトランクリッド100は、後ろ上部に屈曲部Kを備えた断面L字状の金属製のトランクリッド本体1と、トランクリッド本体1の後壁1Kの上部に組み付けられた車幅方向Wに長い樹脂製のトランクガーニッシュ10とから成る。前記後壁1Kは、トランクリッド本体1の上壁1Jの車両後方側Rrの端部から下方に延びている。
【0016】
図2,図6に示すように、トランクリッド本体1は互いに対向するインナーパネル4とアウターパネル3から成る。そして、アウターパネル3に複数のボルト固定部19が車幅方向に並んで形成され、前記複数のボルト固定部19にトランクガーニッシュ10がボルト50とナット51で固定されている。図2の符号Aはトランクガーニッシュ10のトランクリッド本体1への組み付け方向(車両後方側Rrから車両前方側Frに向かう方向)である。
【0017】
図2に示すように、前記インナーパネル4には、ボルト50とナット51を螺合させるインパクトレンチ40(工具に相当)が挿通する複数の工具挿通孔4Hが、前記複数のボルト固定部19に各別に対応して形成されている。
【0018】
[トランクガーニッシュ10の構造]
図1,図2,図5,図6に示すように、トランクガーニッシュ10は、長手方向一端縁10A側及び他端縁10B側ほど車両前方側Frに位置する緩やかな円弧状(車両後方側Rrに凸の緩やかな円弧状)に形成され、トランクリッド本体1の全幅にわたる長さに設定されている。図7に示すように、本発明は、トランクリッド本体1の幅よりも車幅方向の長さが短いトランクガーニッシュ10をトランクリッド本体1に組み付けてある構造にも適用することができる。
【0019】
[トランクガーニッシュ10のボルト支持部9の構造]
図2〜図4に示すように、前記ボルト50の頭部50Tを支持する複数の箱状のボルト支持部9がトランクガーニッシュ10の裏面10Uに車幅方向Wに並んで膨出形成されている。
【0020】
トランクガーニッシュ10の裏面10U(車両前方側Frの面)には、車両前方側Frに立ち上がる立ち上がり壁11が形成されて、ボルト支持部9が前記立ち上がり壁11に支持されている。以下、最も左側のボルト支持部9について説明するが、他のボルト支持部9の構造は前記最も左側のボルト支持部9の構造と略同一である。
【0021】
前記ボルト支持部9は、
トランクガーニッシュ10の裏面10Uから車両前方側Frに突出する上壁13と、
上壁13の車両前後方向中間部と前記立ち上がり壁11の上面11Mとに架設された縦壁14と、
縦壁14の上下方向中央部から車両前方側Frに突出する中間壁21と、
上壁13の車両前方側Frの端部と中間壁21の車両前方側Frの端部とを連結する前壁15と、
上壁13の車幅方向外側W2の端部と前壁15の車幅方向外側W2の端部を連結し、立ち上がり壁11の上面11Mに接続する第1側壁16と、
上壁13の前半部(縦壁14よりも車両前方側Frの部分)と縦壁14と中間壁21と前壁15との車幅方向内側W1の端部同士を連結し、縦壁14の下端部側まで延びる第2側壁17とを備えている。
【0022】
第1側壁16と第2側壁17の下半部(前壁15よりも下側の部分)の下端面16M,17Mは、車両前方側Frほど上方に位置する傾斜面に形成されて、前壁15の下端部付近と縦壁14の下端部付近とにわたっている。
【0023】
また、第1側壁16の下半部と第2側壁17の下半部の間に位置する縦リブ18が、中間壁21の下面と縦壁14の下半部の車両前方側Frの面とにわたって突設されている。縦リブ18は三角形状に形成され、斜辺に対応する端面18Mは、車幅方向視で第1側壁16の下半部の下端面16Mと第2側壁17の下半部の下端面17Mとに重なっている。
【0024】
そして、第1側壁16(ボルト支持部の車幅方向の一側部に相当)の上部に、ボルト50の頭部50Tが径方向に通過する頭部通過開口16H(開口に相当)が形成されるとともに、前壁15(ボルト支持部の車両前方側の壁部に相当)に、ボルト50の首部50J(図5参照)を径方向に受け入れる車幅方向外側W2が開口したU字状の切り欠き15Kが形成されて、ボルト50の頭部50Tがボルト支持部9内に収容可能に構成されている。
【0025】
前記頭部通過開口16Hと切り欠き15Kの切り欠き開口15K1とは連通している。切り欠き開口15K1の周縁部15K2は、ボルト50の首部50Jを切り欠き15K内にガイドする突曲面状のボルトガイド部に構成されている。
【0026】
さらに、前記ボルト50が車両前後方向に対して先端部50S(車両前方側の端部に相当)側ほど車幅方向中央側に位置する傾斜姿勢(図2,図5参照)になるようにボルト50の姿勢を設定するボルト姿勢設定手段が設けられている。このボルト姿勢設定手段は、ボルト支持部9内のボルト50が前記傾斜姿勢になるようにボルト50の頭部50Tの頂面を受け止めるボルト受け12をボルト支持部9の縦壁14の車両前方側Frの面に設けて構成されている。
【0027】
前記ボルト受け12は切り欠き15Kの車両後方側Rrに位置して車幅方向Wに沿うリブ状に形成され、ボルト受け12の上下方向の幅は、切り欠き15Kの幅(上下方向の幅)よりも幅狭に、かつ、第2側壁17(ボルト支持部9の他側部)側ほど短く設定されている。
【0028】
ボルト受け12はスライド型を車幅方向内側W1に抜いて成形される。車幅方向内側W1の第2側壁17には、ボルト受け12を成形するスライド型(成形型に相当)を抜くための縦長の型抜き孔17Hが形成されている。
【0029】
[トランクリッド本体1のボルト固定部19の構造]
図2,図5に示すように、トランクリッド本体1のボルト固定部19は、アウターパネル3にボルト挿通孔3Hを形成して構成されている。そして、前記ボルト支持部9に頭部50Tを支持されたボルト50がボルト挿通孔3Hに挿通されるとともに、アウターパネル3の車両前方側Frからボルト50にナット51が螺合されている。
【0030】
図5に示すように、前記ボルト挿通孔3Hの内周縁のうち車幅方向内側W1の内周縁部分3H1とボルト50の外周面50Gとの間の第1間隔L1は、前記ボルト50がボルト挿通孔3Hに挿通される際に前記ボルト挿通孔3Hに当接することを回避可能な広い間隔に設定されている。また、ボルト挿通孔3Hの内周縁のうち車幅方向外側W2の内周縁部分3H2とボルト50の外周面50Gとの間の第2間隔L2は、車幅方向外側W2へのボルト50の移動を阻止可能な狭い間隔に設定されている。
【0031】
前記複数のボルト50の隣り合うもの同士の間では、より車幅方向外側W2に位置する一方のボルト50に対して設定された前記第1間隔L1が、他方のボルト50に対して設定された前記第1間隔L1よりも長く設定されている。
【0032】
図2,図5の符号Oはボルト50の軸芯であり、ナット51をボルト50に螺合させる際に用いられるインパクトレンチ40(工具に相当)の軸芯である。前記ボルト支持部9をボルト固定部19に固定する際、作業者は、インナーパネル4の車幅方向中央の車両前方側Frに位置してボルト50・ナット51による締め付け固定作業を行う。前記トランクガーニッシュ10は、アウターパネル3とインナーパネル4の溶接接合が済んでからアウターパネル3に固定される。
【0033】
ボルト50とトランクガーニッシュ10の意匠面とが成す角度は90度に近い鈍角である。この角度が90度、あるいは90度に近い鋭角であってもよい。この角度が90度を超える鈍角に設定された場合には、工具によるボルト締め付け作業時に受ける捩れが、ボルト支持部9の根元を広げる方向に大きく作用し、ボルト支持部9が根元から折れてしまうなどの問題を発生させる場合もある。
【0034】
図2に示すように、荷室を形成する車体パネル30の開口周縁部にはウエザストリップ20の取り付け基部20Tが外嵌装着され、トランクリッド1の閉じ時にインナーパネル4に圧縮される中空シール部20Sが取り付け基部20Tに連なっている。
【0035】
上記の構成によれば、
(1) 前記ボルト姿勢設定手段が設けられたことで、図2に示すように、前記ボルト50は、車両前後方向に対して、先端部50S側ほど車幅方向中央側に位置するように傾斜するから、インナーパネル4の車幅方向中央の車両前方側Frに位置する作業者は、インパクトレンチ40を手元側ほど車幅方向中央側に位置するように傾斜させて使用することができる。従って、前記ボルト50が車両前後方向に沿うように配置されている構造に比べると、作業エリアを車幅方向Wで小さくできて組み付け作業の作業効率を向上させることができる。
また、インナーパネル4の車幅方向Wの端部側に位置する工具挿通孔4Hの内周縁を、車幅方向Wの中央側に寄せることができ、インナーパネル4の車幅方向Wの端縁とインナーパネル4の内周縁との間の長さを長くすることができて、インナーパネル4の端部の強度を強くすることができる。
図2の前記符号Cの延長線と符号Dの延長線の位置を比較することにより、本発明の上記の効果を確認することができる。つまり、本実施形態の場合、前記内周縁部分4H2を前記インナーパネル4の一端縁4Aから車幅方向内側W1に、比較例の構造よりも長さXだけ遠ざけることができる。
図2の符号Cは、工具挿通孔4Hの内周縁の延長線(ボルト50とナット51によるボルト支持部9とボルト固定部19の固定方向B(ボルト50の軸芯方向)に沿う延長線)を示し、符号Dは前記断面における比較例の構造の工具挿通孔4Hの内周縁の延長線(ボルト50とナット51によるボルト支持部9とボルト固定部19の固定方向(ボルト50の軸芯方向であり、この比較例の構造の前記固定方向は組み付け方向Aと同一になる)に沿う延長線を示している。
【0036】
(2) 前記第1間隔L1は、前記ボルト50がボルト挿通孔3Hに挿通される際にボルト挿通孔3Hに当接することを回避可能な広い間隔に設定されているから、ボルト50が前記傾斜姿勢に設定される構造でありながら、ボルト50を前記ボルト挿通孔3Hに挿通させやすくすることができ、トランクガーニッシュ10のトランクリッド100への組み付け作業の作業性を向上させることができる。
また、前記第2間隔L2は、車幅方向外側W2への前記ボルト50の移動を阻止可能な狭い間隔に設定されているから、組み付け状態でトランクガーニッシュ10が車幅方向外側W2に移動しにくくなり、トランクガーニッシュ10の車幅方向外側W2への移動に起因する外観不良を抑制することができる。
このように、トランクガーニッシュ10のトランクリッド100への組み付け作業の作業性の低下を抑制した状態で、トランクガーニッシュ10のトランクリッド100に対する位置規制効果を得ることができる。
例えば、トランクガーニッシュ10から位置規制リブを突出させ、前記位置規制リブを介してトランクガーニッシュ10の位置を規制する手段では、位置規制リブの根元でヒケが発生してしまい、トランクガーニッシュ10の外観不良につながることが多くなる。これに対して、本発明の上記構成によれば、位置規制リブを設けることなくトランクガーニッシュ10の外観不良を回避することができる。
【0037】
(3) より車幅方向外側W2に位置する一方のボルト50に対して設定された前記第1間隔L1が、他方のボルト50に対して設定された前記第1間隔L1よりも長く設定されているから、トランクガーニッシュ10が車両後方側Rrに凸の緩やかな円弧状に形成されている場合であっても、ボルト50を前記ボルト挿通孔3Hに挿通させやすくすることができ、トランクガーニッシュ10のトランクリッド100への組み付け作業の作業性を向上させることができる。
【0038】
(4) ボルト50の頭部50Tはボルト支持部9の第1側壁16の頭部通過開口16Hを頭部50Tの径方向に通過してボルト支持部9内に収容され、ボルト50の首部50Jが前記切り欠き15K内に位置する。そして、ボルト支持部9内のボルト50の頭部50Tの頂面がボルト受け12に受け止め支持されて、ボルト50が前記傾斜姿勢に設定される。これにより、ボルト支持部9からのボルト50の落下を防止してボルト50を確実に支持することができる。また、ボルト50を前記傾斜姿勢に確実に設定することができる。
さらに、前記ボルト受け12の上下方向の幅は、第2側壁17(ボルト支持部の他側部)側ほど短く設定され、前記型抜き孔17Hが第2側壁17に形成されているから、ボルト支持部9の第1側壁16(ボルト支持部の一側部)から第2側壁17側に向かう方向にスライド型を円滑に型抜きすることができる。
そして、ボルト支持部9の第1側壁16側では切り欠き16Kが開口していることで、ボルト50の頭部50Tの裏面(頂面とは反対側の面)に対するボルト支持部9の支持面が、ボルト支持部9の第2側壁17側の前記支持面よりも小さくなる。
しかしながら、本発明の上記構成によれば、前記ボルト受け12は車幅方向に沿うリブ状に形成され、ボルト受け12の上下方向の幅はボルト支持部9の第1側壁16側ほど長く設定されているから、ボルト50の頂面に対する前記第1側壁16側での前記支持面を大きくすることができて、前記頭部50Tの支持力の低下を抑制することができる。
つまり、スライド型を円滑に型抜きできる構造を、ボルト50の頭部50Tの支持力の低下を抑制できる構造に兼用して構造の簡素化を図ることができる。
【0039】
(5) 前記ボルト支持部9を成形する場合、図5に示すように、縦壁14の裏面14Uと、この裏面14Uに対向するトランクガーニッシュ10の裏面10Uとの間に位置するスライド型の先端の肉厚(図5の第1側壁16の裏面16Uを成形するスライド型部分の肉厚)は、成形不良回避等の理由で所定の値(最小の寸法)以上に設定される。
そして、例えば、ボルト50が車両前後方向に沿う非傾斜姿勢に設定されている比較例の構造と、傾斜姿勢に設定されている本発明の構造との両構造において、前記所定の値が同一に設定された場合、本発明の構造では、ボルト50の傾斜に対応して、第1側壁16の裏面16Uが、比較例の構造の第1側壁の裏面に対し傾斜した状態(紙面において、紙面上側の回転中心周りに紙面左側に回転した傾斜状態)になる。
その結果、本発明の構造では、縦壁14が比較例の構造の縦壁よりもトランクガーニッシュ10の裏面10Uに近ずき、それに伴って、アウターパネル3もトランクガーニッシュ1に近ずいて、比較例の構造よりもトランクガーニッシュ10とアウターパネル3との間の距離が短くなる。
この距離が長い構造では、トランクガーニッシュ10を押した時にトランクガーニッシュ10が凹むなどの不具合が生じやすい。この不具合を回避するために、トランクガーニッシュ10にトランクリッド本体1に対する支持部が設けられていたが、軽量化を目的として板厚を低減する傾向にあるトランクガーニッシュ10では、支持部の根元部にヒケが発生してしまうことから外観不良の原因となっていた。
これに対して、本発明の構造を採用することで、上記のように、トランクガーニッシュ10とアウターパネル3との間の距離が短くなることから、前記支持部を設けることなくトランクガーニッシュ10の凹みを防止することができる。
また、本発明の上記構造によれば、トランクガーニッシュ10がトランクリッド100の全幅にわたる場合にも端部をボルト50で固定し外観不良の発生を抑制しながらも工具挿通孔4Hによるインナーパネル4の強度低下を極力抑えた構造が可能となり、トランクガーニッシュ10の曲面の曲率半径が大きい場合にもボルト締結時に起こるボルト支持部9の破損などを抑えることができるなど、デザインへの対応幅が広がる。
【符号の説明】
【0040】
3 アウターパネル
3H ボルト挿通孔
3H1 車幅方向内側の内周縁部分
3H2 車幅方向外側の内周縁部分
4 インナーパネル
4H 工具挿通孔
9 ボルト支持部
10 トランクガーニッシュ
10U トランクガーニッシュの裏面
12 ボルト受け
15 ボルト支持部の車両前方側の壁部(前壁)
15K 切り欠き
16 ボルト支持部の車幅方向の一側部(第1側壁)
16H 開口(頭部通過開口)
17 ボルト支持部の他側部(第2側壁)
17H 型抜き孔
19 ボルト固定部
40 工具(インパクトレンチ)
50 ボルト
50G ボルトの外周面
50J ボルトの首部
50S ボルトの車両前方側の端部(ボルトの先端部)
50T ボルトの頭部
51 ナット
100 トランクリッド
Fr 車両前方側
L1 第1間隔
L2 第2間隔
W 車幅方向
W1 車幅方向内側
W2 車幅方向外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランクリッドのアウターパネルに複数のボルト固定部が車幅方向に並んで形成され、
前記複数のボルト固定部にトランクガーニッシュがボルトとナットで固定され、
前記トランクリッドのインナーパネルには、前記ボルトとナットを螺合させる工具が挿通する複数の工具挿通孔が、前記複数のボルト固定部に各別に対応して形成されている自動車のトランクガーニッシュの固定構造であって、
前記ボルトが車両前後方向に対して車両前方側の端部側ほど車幅方向中央側に位置する傾斜姿勢になるように前記ボルトの姿勢を設定するボルト姿勢設定手段が設けられている自動車のトランクガーニッシュの固定構造。
【請求項2】
前記ボルト固定部は前記アウターパネルにボルト挿通孔を形成して構成され、
前記ボルトの頭部を支持する複数のボルト支持部が前記トランクガーニッシュの裏面に車幅方向に並んで形成され、
前記ボルト支持部に頭部を支持された前記ボルトが前記ボルト挿通孔に挿通されるとともに、前記アウターパネルの車両前方側から前記ボルトに前記ナットが螺合され、
前記ボルト挿通孔の内周縁のうち車幅方向内側の内周縁部分と前記ボルトの外周面との間の第1間隔は、前記ボルトが前記ボルト挿通孔に挿通される際に前記ボルト挿通孔に当接することを回避可能な広い間隔に設定され、
前記ボルト挿通孔の内周縁のうち車幅方向外側の内周縁部分と前記ボルトの外周面との間の第2間隔は、車幅方向外側への前記ボルトの移動を阻止可能な狭い間隔に設定されている請求項1記載の自動車のトランクガーニッシュの固定構造。
【請求項3】
前記複数のボルトの隣り合うもの同士の間では、より車幅方向外側に位置する一方のボルトに対して設定された前記第1間隔が、他方のボルトに対して設定された前記第1間隔よりも長く設定されている請求項2記載の自動車のトランクガーニッシュの固定構造。
【請求項4】
前記ボルト支持部は前記トランクガーニッシュの裏面側に箱状に膨出形成され、
前記ボルト支持部の車幅方向の一側部に、前記ボルトの頭部が径方向に通過する開口が形成されるとともに、前記ボルト支持部の車両前方側の壁部に、前記ボルトの首部を径方向に受け入れる切り欠きが形成されて、前記ボルトの頭部が前記ボルト支持部内に収容可能に構成され、
前記ボルト姿勢設定手段は、前記ボルト支持部内のボルトが前記傾斜姿勢になるように、前記ボルトの頭部の頂面を受け止めるボルト受けを前記ボルト支持部に設けて構成され、
前記ボルト受けは車幅方向に沿うリブ状に形成され、
前記ボルト受けの上下方向の幅は前記ボルト支持部の車幅方向の他側部側ほど短く設定され、
前記ボルト受けを成形する成形型の型抜き孔が前記ボルト支持部の他側部に形成されている請求項2又は3記載の自動車のトランクガーニッシュの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75548(P2013−75548A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215036(P2011−215036)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】