説明

自動車のラゲッジルーム用ボード

【課題】コイルスプリングのコイル端部を安全で、かつ見栄えの良い状態にしてボード部に取り付けることできる構造をした自動車のラゲッジルーム用ボードを提供する。
【解決手段】1対のボード部18a,18bと1対のボード部18a,18b間に形成された薄肉形のヒンジ部18cを一体に設けてなる自動車のラゲッジルーム用ボードであって、1対のボード部18a,18bの互いに対向する端面間の空間部35内に配設されたコイル本体部29aとコイル本体部29aの両端からそれぞれ延出された1対のコイル端部29b,29cを有するコイルスプリング29と、一方のボード部18aに一方のコイル端部29bを覆って取り付けられて該一方のコイル端部29bを該一方のボード部18aに保持してなる押さえプレート30aと、他方のボード部18bに他方のコイル端部29cを覆って取り付けられてヒンジ部18cの回動方向に該他方のコイル端部29cを移動可能に保持してなる押さえプレート30bと、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のリヤシートバックの直後に設けられたラゲッジルーム(荷室)のフロア等を覆い隠す自動車のラゲッジルーム用ボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハッチバックタイプの自動車等では、リヤシートバックとバックドアの間にラゲッジルームが形成されている。そのラゲッジルームは、前倒し可能に設けられたリヤシートバックを前倒しすることにより、拡大できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1等で知られるラゲッジルームは、ラゲッジルームのフロアパネル上に、工具類やスペアタイヤ等を収納する収納ボックスが設置されており、さらに収納ボックスの上部に、必要に応じて開閉及び取り外し可能なデッキボードが載置されている。そのデッキボードは、前端部分または中間部分等に薄肉部で形成されたヒンジ部(これを「インテグラルヒンジ」ともいう)が設けられており、その薄肉部の柔軟性を利用し、ヒンジ部を中心にして上下方向に回動させることにより開閉できるようになっている。
【0004】
さらに、デッキボードの上部には、ラゲッジルームの底面を構成する部材としてラゲッジボードが、前記デッキボードを覆い、かつ底面全体を覆い隠すようにして載置されている。そのラゲッジボードの前端には、デッキボードと同様に薄肉部で形成されたヒンジ部で繋いで一体化してなる補助ボードを設けている。また、補助ボードとラゲッジボードの間には、常に補助ボードをリヤシートバック側へ付勢しているコイルスプリングを取り付け、リヤシートバックの起立・傾倒動作に補助ボードが追従できるようにして、リヤシートバックが起立した状態から折り畳んだ状態まで、ラゲッジルームの底面とリヤシートバックの間の隙間をラゲッジボード及び補助ボードで覆い隠せるようにしている。
【0005】
ところで、このようなコイルスプリングを取り付けたラゲッジボードでは、ヒンジ部の回動中心軸とコイルスプリングの回動中心軸が異なった位置にあるため、補助ボードとコイルスプリングが回動する際に発生する両者の相対的な位置ずれにより補助ボード上の回動が妨げられるおそれがあった。
【0006】
そのため、特許文献1では、補助ボードの回転中心軸とコイルスプリングの回動中心軸の相対的な位置ずれを吸収するために、コイルスプリングのコイル端部先端を補助ボードに対してスライド可能に係合させている。
【0007】
また、このようなコイルスプリングを取り付けたラゲッジボードでは、ビスあるいはブラケット等の固定部材を用いてコイルスプリングのコイル端部をボード表面上に固定しているが、この固定ではボード表面からコイル端部及び固定部材が突出した状態で固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2008−239086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、コイルスプリングのコイル端部先端をボード表面上に固定するためには、相対的な位置ずれを吸収させる分、コイル端部の長さを大きくする必要がある。したがって、長さの長いコイル端部がボード表面上に横たわり、かつ表面上に突出した状態で取り付けられているので、ラゲッジボードの取り扱い操作時にコイル端部に作業者が指等を引っ掛けてケガをする危険性や、あるいはコイル端部が他の物に当たってキズを付けるおそれがある等の問題点があった。また、補助ボードが大きく折り曲げられてラゲッジボードの裏側が見えたとき、見栄えが悪いという問題点もあった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、コイルスプリングのコイル端部を安全で、かつ見栄えの良い状態にしてボード部に取り付けることできる構造をした自動車のラゲッジルーム用ボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動車のラゲッジルーム用ボードは、1対のボード部と該1対のボード部間に形成された薄肉形のヒンジ部を1体に設けてなる自動車のラゲッジルーム用ボードであって、前記1対のボード部の互いに対向する端面間の空間部内に配設されたコイル本体部と該コイル本体部の両端からそれぞれ延出された1対のコイル端部を有するコイルスプリングと、前記一方のボード部に前記一方のコイル端部を覆って取り付けられて該一方のコイル端部を該一方のボード部に保持してなる第1の押さえプレートと、前記他方のボード部に前記他方のコイル端部を覆って取り付けられて前記ヒンジ部の回動方向に該他方のコイル端部を移動可能に保持してなる第2の押さえプレートと、を備えてなる。
【0012】
この構造によれば、コイルスプリングの一方のコイル端部は、第1の押さえプレートで覆われて一方のボード部に取り付けられ、他方のコイル端部は、第2の押さえプレートで覆われ、かつ前記ヒンジ部の回動方向に移動可能にして他方のボード部に取り付けられる。そして、この他方のコイル端部の移動により、ヒンジ部とコイルスプリングの相対的な位置ずれが吸収できる。また、各コイル端部が、それぞれ押さえプレートで覆われて、ボード部表面上より隠される。
【0013】
上記構成において、前記1対のボード部は、それぞれ前記第1の押さえプレートと前記第2の押さえプレートが取り付けられる位置に、該押さえプレートを収容して該各プレートの厚みを吸収して取り付けるための凹所を設けてなる、構成を採用できる。
【0014】
この構成によれば、それぞれの押さえプレートは、各コイル端部と共に各ボード部の凹所内に押さえプレートの厚みを吸収した状態で収容され、ボード表面から突出しない状態で取り付けられるので、安全性と見栄えがさらに良くなる。
【0015】
上記構成において、前記1対のボード部は、前後に傾動可能なリヤシートバックの後方に形成されたラゲッジルームの底面に設置されるラゲッジボード本体部と、該ラゲッジボード本体部の前端に前記ヒンジ部を介して回動可能に連設されて前記リヤシートバックの背面に当接して配置される補助ボード部とでなり、前記コイルスプリングは前記補助ボード部を常時前記リヤシートバック側に当接付勢している、構成を採用できる。
【0016】
この構成によれば、補助ボード部がリヤシートバックの傾動操作に追従してスムーズに回動するラゲッジルーム用ボードが得られる。
【0017】
上記構成において、前記1対のボード部と前記ヒンジ部は、ブロー成形により形成されているとともに、表面側にブロー成形時に溶解樹脂が浸透して一体化された不織布を設けてなる、構成を採用できる。
【0018】
この構成によれば、ヒンジ部付のラゲッジルーム用ボードをブロー成形により一体に成形することができるとともに、1対のボード部とヒンジ部の表面側にラゲッジルーム用ボードの表面を装飾する不織布を一体に取り付けたラゲッジルーム用ボード構造を提供できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、各コイル端部は、それぞれ押さえプレートで覆われ、ボード部表面上に露出された状態にしては配置されないので、ラゲッジボードの取り扱い操作時に、コイル端部に作業者が指等を引っ掛けてケガをする危険性や、あるいはコイル端部が他の物に当たってキズを付ける等の問題を無くすことができる。これにより、安全性を向上させることできる。また、補助ボードが大きく折り曲げられてラゲッジボードの裏側が見られた場合でも、コイル端部は押さえプレートが隠されて見えないので、見栄えがよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車のラゲッジルーム用ボードを、該ボードを適用した車両と共に示す斜視図である。
【図2】リヤシートバックが起立しているときにおけるラゲッジルーム用ボードの状態を示す断面図である。
【図3】リヤシートバックを前方へ折り畳んだときにおけるラゲッジルーム用ボードの状態を示す断面図である。
【図4】図3のA部拡大断面図である。
【図5】ヒンジ部付ラゲッジルーム用ボードの製造方法を説明するための断面図である。
【図6】同上ラゲッジルーム用ボードに適用した付勢装置を、該ボードの一部と共に示す斜視図である。
【図7】同上ラゲッジルーム用ボードに適用した付勢装置を、該ボードの一部と共に示す部分解斜視図である。
【図8】同上付勢装置のラゲッジボード本体部側における構造を説明するための図で、(a)は平面図、(b)は(a)のc−c断面図である。
【図9】同上付勢装置の補助ボード部側における構造を説明するための図で、(a)は平面図、(b)は(a)のd−d断面図である。
【図10】同上付勢装置側の押さえプレート構造を説明するための図で、(a)はラゲッジボード本体部側の押さえプレートを裏面側から見た平面図、(b)は補助ボード部側の押さえプレートを裏面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動車のラゲッジルーム用ボードを、該ボードを適用した車両と共に示す斜視図、図2は、リヤシートバックが起立した通常状態で示すラゲッジルーム用ボードの断面図、図3は、リヤシートバックを前方へ折り畳んだ状態で示すラゲッジルーム用ボードの断面図、図4は、図3のA部拡大断面図である。
【0023】
図1乃至図4において、自動車の車室内後方には、リヤシートクッション11aと左右一対のリヤシートバック11bとを備えるリヤシート11が設置されている。リヤシートクッション11aは、スライドレールに脚部が固定されて前後方向にスライド可能になっている。また、リヤシートバック11bは、リヤシートクッション11aに対して前後前後へリクライニング可能であり、また前方へ大きく倒れて折り畳むことができるようになっている。
【0024】
リヤシートバック11bの後方にはラゲッジルーム14が形成されており、そのラゲッジルーム14のフロアパネル上には、工具類やスペアタイヤを収納する収納ボックス16とラゲッジボード18が載置されている。
【0025】
ラゲッジボード18は、ラゲッジルーム14の底面を構成するようにして、収納ボックス16の上部開口全体を覆って載置されるラゲッジボード本体部18aと、左右のリヤシートバック11bにそれぞれ対応している左右1対の補助ボード部18bと、ラゲージボード本体部18aと左右の補助ボード部18bとの間に形成したヒンジ部18cと、を一体に設けている。
【0026】
また、図1に示すように、ラゲージボード本体部18aと左右の補助ボード18bの間のヒンジ部18cには、各補助ボード部18bを常にリヤシートバック11b側に付勢してなる左右1対の付勢装置21が、各補助ボード部18bに対応して設けられている。したがって、補助ボード部18bは、リヤシートバック11bが前側に倒伏されると付勢装置21の付勢によりリヤシートバック11bと一体に前側に倒伏し、反対にリヤシートバック11bが後側に倒伏されると付勢装置21のバネの吸収を伴ってリヤシートバック11bと一体に後側へ倒伏するようにして、リヤシートバック11bの起立・傾倒動作に追従する。これにより、ラゲッジボード18は、リヤシートバック11bの起立状態から折り畳んだ状態の全てに亘って、ラゲッジルーム14の底面とリヤシートバック11bの間の隙間を、ラゲッジボード本体部18a及び補助ボード部18bで覆い隠せるようになっている。
【0027】
ラゲッジボード18の構成をさらに説明する。ラゲッジボード18は、デッキボード17と同様にプラスチック成形体であり、また例えば60キロ程度の荷物が載せられても耐え得るように、ガラス繊維、炭素繊維等の強化繊維材を混入させたプラスチック材をブロー成形することにより、中空ボード状のラゲッジボード本体部18aと、同じく中空ボード状の補助ボード部18bと、それらを連結してなる薄肉のヒンジ部(インテグラルヒンジ)18cとが一体に成形される。
【0028】
なお、ラゲッジボード18のヒンジ部18cは、ラゲッジボードの成形時に、ラゲッジボード本体部18aと補助ボード部18bを成す樹脂壁を、その裏面18A側から表面18Bへ向けて圧縮薄肉化することにより形成できる。また、必要に応じてヒンジ部18cの裏面側には、成形過程の溶解樹脂を浸透させてシート状の不織布が強化材として一体として設けることができる。
【0029】
さらに、ラゲッジボード18の表面側には、不織布27が、ラゲッジボード本体部18aと補助ボード部18bとヒンジ部18cの全体を覆い、かつ成形過程の溶解樹脂を浸透させることによって一体化して設けられている。その不織布27は、ラゲッジボード18の表面側を装飾するものであり、ヒンジ部18cの補強用として設けられている不織布の場合と異なり、外観的に見栄えの良い材質の不織布が使用される。
【0030】
また、ラゲッジボード18の成形時、ラゲッジボード本体部18aの裏面側と補助ボード部18bの裏面側との間、すなわちヒンジ部18cを挟んでそれぞれ対向している位置には、図6及び図7に示すように、付勢装置21を取り付けるための幅広状の凹所(以下、「取付座」という)28a,が設けられる。
【0031】
次に、ラゲッジボード18のブロー成形方法について更に説明すると、ラゲッジボード18は図5に示すように1対の分割金型24a,24bを有するブロー成形機24によりブロー成形されるものである。同図において、一方の金型24aはヒンジ部成形キャビティ25を有している。このヒンジ部成形キャビティ25は樹脂壁を圧縮薄肉化するための突部で、本実施例では付勢装置21用の取付座28a,28bも同時に形成する。
【0032】
そして、ブロー成形を行う場合、図5に示すように、一対の金型24a,24b間にパリソン26を配置する。また、パリソン26と一方の金型24bとの間に不織布27を配置し、この状態でブロー成形を行う。
【0033】
このブロー成形では、パリソン20内に空気が吹き込まれることによって1対の金型24a,24bでラゲッジボード本体部18aと補助ボード部18bが成形されるとともに、ラゲッジボード本体部18aと補助ボード部18bの間でヒンジ部成形キャビティ25が、樹脂壁をその裏面18A側から表面18Bへ向けて圧縮薄肉化してヒンジ部18c及び取付座28a,28bを形成する。これと同時に、溶解されたパリソン20の一部が不織布27内に浸透されてプラスチック材と不織布27が強力に一体化される。
【0034】
次に、付勢装置21の構成を説明する。付勢装置21は、図6及び図7に示すように、ラゲッジボード18に形成された前記取付座28a,28bと、コイルスプリング29と、該コイルスプリング29を取付座28a,28bに取り付ける押さえプレート30a,30bと、で構成されている。
【0035】
また、コイルスプリング29は、捻れ復元力を発生させるコイル部29aと、その両端に、ラゲッジボード本体部18a側の取付座28aに取り付けられる長さを有するコイル端部29bと、補助ボード部18b側の取付座28bに取り付けられる長さを有するコイル端部29cを備えている。さらに、コイル端部29bの端末部はコイル部29a方向に向けてコ字形に折り曲げられ、コイル端部29cの端末部はコイル部29aの軸に沿ってL字形に折り曲げられている。
【0036】
そして、コイル端部29bが取り付けられる取付座28aは、押さえプレート30aが収容される幅広状の凹み部として形成されており、また凹み部内にコイル端部29bの略線径半分を落と込んでコイル端部29bを固定位置決めするための位置決め溝31が形成されている。一方、コイル端部29cが取り付けられる取付座28bは、押さえプレート30bが収容される幅広状の凹み部として形成されており、その凹み量は、コイル線径の略半分(半径分)で形成されている。
【0037】
押さえプレート30a,30bは、図10(a),(b)に示すように、それぞれポリプロピレン等の樹脂で短冊状に形成されている。また、ラゲッジボード本体部18a側の取付座28a内にコイル端部29bを覆って取り付けられる押さえプレート30aには、取付座28aと対向する内側面にコイル線径の略半分(半径分)を収容する空間部32が形成されている。一方、補助ボード部18b側の取付座28bにコイル端部29cを覆って取り付けられる押さえプレート30bには、取付座28bと対向する面側にコイル線径の略半分を収容する空間部33が設けられている。
【0038】
そして、各付勢装置21を取り付ける場合、まずラゲッジボード18の裏面側において、図6及び図7に示すようにコイルスプリング29のコイル部29aをラゲッジボード本体部18aと補助ボード部18bの間の空間35に配置し、端末部がコ字形に折り曲げられたコイル端部29bを取付座28aの位置決め溝31内に落とし込み位置決めする。その後、内側面を取付座28a側に向け、かつ取付座28a内にコイル端部29bを覆って押さえプレート30aを押し付けて収容し、この状態で押さえプレート30aを取付座28aに超音波溶着(図中、符号34で示す位置)で固定する。これにより、コイルスプリング29のコイル端部29bが押さえプレート30aで覆われて外側から隠された状態で、ラゲッジボード本体部18a側に固定して取り付けられる。なお、この取付状態では、コイル端部29b及び押さえプレート30aは、取付座28a内に収容されることによって厚みが吸収され、図8に示すようにラゲッジボード本体部18aと略面一状態になり、見栄えと安全性が確保される。
【0039】
次いで、端末部がL字形に折り曲げられたコイル端部29cを取付座28bの空間部33内に収納するとともに、内側面を取付座28b側に向け、かつ取付座28b内にコイル端部29cを覆って押さえプレート30bを押し付けて収容し、この状態で押さえプレート30bを取付座28bに超音波溶着(図中、符号34で示す位置)で固定する。これにより、コイルスプリング29のコイル端部29cが押さえプレート30bで覆われて外側から隠された状態で、コイルスプリング29のコイル端部29cが補助ボード部18b側に固定して取り付けられる。なお、この押さえプレート30bの取り付けでも、コイル端部29c及び押さえプレート30bは、取付座28b内に収容されることによって厚みが吸収され、図9に示すように補助ボード部18bが略面一状態になり、見栄えと安全性が確保される。
【0040】
このようにして、押さえプレート30a,30bを取付座28a,28bに溶着して、ラゲッジボード18に取り付けたコイルスプリング29は、一方のコイル端部29bが取付座28aの位置決め溝31内に位置決めされてラゲッジボード本体部18aに固定され、他方のコイル端部29bは取付座28bの空間部33内で自由に前後方向(コイル部29aの回転方向)に移動できる状態で補助ボード部18内に取り付けられている。
【0041】
そして、このようにして取り付けられた各付勢装置21は、コイルスプリング29が補助ボード部18bをリヤシートバック11bの背面に押付ける方向に常に付勢している。
【0042】
具体的には、補助ボード部18bをラゲッジボード本体部18aに対して真っ直ぐにした状態でも、両側のコイル端部29b,29cが下側へ回動しようとする小さな捻れ復元力が、コイルスプリング29のコイル部29aに発生するように予め設定してある。このようにすると、リクライニング操作等によりリヤシートバック11bの角度をどのように変えたとしても、捻れて変形したコイルスプリング29のコイル部29aの捻れ復元力により、補助ボード部18bがリヤシートバック11bの背面に常時押付けられた状態とすることができる。また、このときコイルスプリング29のコイル端部29cは空間部33内で補助ボード部18bの回動先端側に移動している。
【0043】
一方、補助ボード部18bがラゲッジボード本体部18aに対して上方に回動して起立すると、コイルスプリング29のコイル部29aをバネチャージしながら起立し、また、このときコイルスプリング29のコイル端部29cが空間部33内で補助ボード部18bの回動基端側に移動する。
【0044】
したがって、この補助ボード部18bの回動に連動して空間部33内をコイルスプリング29のコイル端部29cが前後に移動することにより、コイルスプリング29は、補助ボード部18bを回動させる際の回動中心軸となることがなく、補助ボード部18bはあくまでもヒンジ部18cを中心に回動し、コイルスプリング29がヒンジ部18cを中心とした回動を邪魔するのを抑制することができる。また、コイルスプリング29のコイル端部29b,29cが押さえプレート30a,30bで覆われて外側から隠され、かつ取付座28a,28b内に収容されて、押さえプレート30a,30bとラゲッジボード本体部18a及び補助ボード部18bとが略面一状態になって、それぞれラゲッジボード本体部18a及び補助ボード部18b側に固定して取り付けられるので、見栄えを良くすることができるとともに、ラゲッジボード18の取り扱い操作時に作業者がコイル端部29b,29cに指等を引っ掛けてケガをする等の危険性を予め防止することができ、安全性が図れる。
【0045】
以上、実施形態を用いて本発明をしたが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されるもではなく、上記以外の多様な変更または改良を加えることも可能で、そして本発明が改変されたものにも及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0046】
11 リヤシート
11a リヤクッション
11b リヤシートバック
14 ラゲッジルーム
18 ラゲッジボード(ラゲッジルーム用ボード)
18a ラゲッジボード本体部
18b 補助ボード部
18c ヒンジ部
21 付勢装置
24 フロー成形機
24a 金型
24b 金型
25 ヒンジ部成形キャビティ
26 パリソン
27 不織布
28a,28b 取付座(凹所)
29 コイルスプリング
29a コイル部
29b,29c コイル端部
30a,30b 押さえプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のボード部と該1対のボード部間に形成された薄肉形のヒンジ部を1体に設けてなる自動車のラゲッジルーム用ボードであって、
前記1対のボード部の互いに対向する端面間の空間部内に配設されたコイル本体部と該コイル本体部の両端からそれぞれ延出された1対のコイル端部を有するコイルスプリングと、
前記一方のボード部に前記一方のコイル端部を覆って取り付けられて該一方のコイル端部を該一方のボード部に保持してなる第1の押さえプレートと、
前記他方のボード部に前記他方のコイル端部を覆って取り付けられて前記ヒンジ部の回動方向に該他方のコイル端部を移動可能に保持してなる第2の押さえプレートと、を備えたことを特徴とする自動車のラゲッジルーム用ボード。
【請求項2】
前記1対のボード部は、それぞれ前記第1の押さえプレートと前記第2の押さえプレートが取り付けられる位置に、該押さえプレートを収容して該各プレートの厚みを吸収して取り付けるための凹所を設けてなることを特徴とする自動車のラゲッジルーム用ボード。
【請求項3】
前記1対のボード部は、前後に傾動可能なリヤシートバックの後方に形成されたラゲッジルームの底面に設置されるラゲッジボード本体部と、該ラゲッジボード本体部の前端に前記ヒンジ部を介して回動可能に連設されて前記リヤシートバックの背面に当接して配置される補助ボード部とでなり、前記コイルスプリングは前記補助ボード部を常時前記リヤシートバック側に当接付勢していることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車のラゲッジルーム用ボード。
【請求項4】
前記1対のボード部と前記ヒンジ部は、ブロー成形により形成されているとともに、表面側にブロー成形時に溶解樹脂が浸透して一体化された不織布を設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車のラゲッジルーム用ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232653(P2012−232653A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101910(P2011−101910)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】