説明

自動車のリヤウインド構造

【課題】リヤウインドパネルの剛性を確保するとともに、熱線を設けることなくリヤウインドパネルの曇りや水滴発生を防止し、かつ、遮音性を確保する。
【解決手段】自動車1の車体3に形成された開口部11に透明の樹脂製リヤウインドパネル13を固着する。リヤウインドパネル13は、一端側25bから他端側25cに向けて延びる4本の突状リブ29が間隔をあけて一体に突設された第1パネル構成部材25と、第2パネル構成部材27とを溶着して構成する。隣り合う突状リブ29間に一端側13aから他端側13bに亘って貫通する中空路31を形成する。中空路31は車体3の上記開口部11回りの一端側11aに形成された空気導入通路21及び上記開口部11周りの他端側11bに形成された空気導出通路と連通する。空気導入通路21に導入された調和空気を中空路31に一端側13aから導入して他端側13bから空気導出通路に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のリヤウインド構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のリヤウインドガラスの曇りや水滴発生を防止する対策として、熱線をリヤウインドガラスに組み込んだり、或いは熱線をフィルムを介してリヤウインドガラスに貼り付けたりして熱線の熱で曇りや水滴発生を防止しているリヤウインド構造が採用されている。また、車室内側のエア吹出口から調和空気をリヤウインドガラスに吹き付けて曇りや水滴発生を抑制するリヤウインド構造も一般的に採用されている。
【0003】
一方、特許文献1には、外面ガラスと内面ガラスとの間に中間空気層を形成してフロントウインドガラスを構成し、上記中間空気層に調和空気を流入させてフロントウインドガラスの曇りや水滴発生を防止するようにしている。
【特許文献1】特開平8−310392号公報(段落0026欄、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の熱線を用いたリヤウインドガラスでは、熱線を設ける手間とコストがかかる上、熱線が見えることになり見映えが悪いという問題がある。また、調和空気を車室内側からリヤウインドガラスに吹き付ける場合にはエア吹出口からの調和空気の吹出音が乗員に不快感を与える。
【0005】
さらに、特許文献1では、外面ガラスと内面ガラスとの外周全体に間座テープを介在させて中間空気層を形成しているだけなので、上記中間空気層には両ガラスを支持するための支持部材がなく、ウインドガラスの剛性面に問題がある。
【0006】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の自動車のリヤウインドガラスに代えて透明の樹脂製リヤウインドパネルを採用することとし、この際、リヤウインドパネルの剛性を確保するとともに、熱線を設けることなくリヤウインドパネルの曇りや水滴発生を防止し、かつ、遮音性を確保したリヤウインドパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、この発明は、特許文献1の如き中間空気層への調和空気導入方式を採用し、さらに中間空気層内部の構造に工夫を加えたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、この発明は、自動車の車体に形成された開口部に透明の樹脂製リヤウインドパネルが固着されたリアウインド構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、この発明は、上記リヤウインドパネルは、矩形板状の第1パネル構成部材と矩形板状の第2パネル構成部材とを備え、これら第1パネル構成部材及び第2パネル構成部材の少なくとも一方のパネル構成部材のパネル面には、一端側から他端側に向けて延びる複数本の突状リブが間隔をあけて一体に突設され、上記第1パネル構成部材と第2パネル構成部材とを互いに間隔をあけて対面させた状態で上記各突状リブを対面するパネル構成部材のパネル面に溶着することにより、隣り合う突状リブ間に一端側から他端側に亘って貫通する中空路が形成され、該中空路は車体の上記開口部周りの一端側に形成された空気導入通路及び上記開口部周りの他端側に形成された空気導出通路と連通され、上記空気導入通路に導入された調和空気を上記中空路に一端側から導入して他端側から上記空気導出通路に排出するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、第1パネル構成部材と第2パネル構成部材との間に中空路を形成して該中空路に調和空気を流入するようにしているので、熱線を用いる場合の手間やコストがかからず、しかも、熱線が見えることによる見映えの悪化を防止することができ、また、中空路、空気導入通路及び空気導出通路が連通しているので、これらを通過する調和空気の通過音が車室内に漏れず遮音性を確保することができる。その上、リヤウインドパネルは、第1パネル構成部材及び第2パネル構成部材のパネル面の複数箇所で一端側から他端側に向けて間隔をあけて延びる複数本の突状リブによって溶着されて一体的に形成されているので、リヤウインドパネルの剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0012】
図1はこの発明の実施形態に係るリヤウインド構造が適用されたセダン型自動車1の車体3後部の斜視図である。該車体3後部には、ルーフ5、車幅方向両端のリヤピラー7及びトランクリッド9で囲まれた略矩形の開口部11が形成され、該開口部11には略矩形の透明の樹脂製リヤウインドパネル13が固着されている。
【0013】
上記両リヤピラー7のうち車体3後方から見て右側のリヤピラー7は、図2に示すように、金属製のアウタパネル15とインナパネル17とが内部に空気導入通路21を形成するように溶着され、該空気導入通路21は車体3の開口部11周りの一端側11a(図1で車幅方向右側)に位置している。一方、図示しないが、車体3後方から見て左側のリヤピラー7も、アウタパネル15とインナパネル17とからなり、これら両パネル15,17間に空気導出通路が形成され、該空気導出通路は他端側11b(図1で車幅方向左側)に位置している。これら空気導入通路21及び空気導出通路はダクト(図示せず)を介して空調装置(図示せず)に接続されている。上記各リヤピラー7のアウタパネル15の開口部11側には、リヤウインドパネル13の後述する導入口33及び導出口34に連通する連通孔23が形成されている。また、上記各リヤピラー7の車室内側にはインナパネル17を覆うようにピラートリム19が配置されている。
【0014】
一方、上記リヤウインドパネル13は、図5に示すように、車室内側に配置される矩形板状の第1パネル構成部材25(図3参照)と、車室外側に配置される矩形板状の第2パネル構成部材27(図4参照)とが重合された2層構造になっており、長辺側が車幅方向に略沿うように車体3の開口部11に固着されている。これら第1及び第2パネル構成部材25,27は樹脂製で、その種類としては、ポリカーボネート樹脂(PC)及びアクリル樹脂(AC)が好適であるが、これらに限らない。
【0015】
上記第1パネル構成部材25の車外側パネル面25aには、図3に示すように、一端側25b(図3で右端側)から他端側25c(図3で左端側)に向けて延びる4本の突状リブ29が長辺側に沿って略等しい間隔をあけて一体に突設されている。上記4本の突状リブ29のうち、外側2本は上下長辺側端縁部に、残りの内側2本はパネル面25aを上下に略3等分する位置に突設されている。一方、上記第2パネル構成部材27の車外側パネル面27aには上記突状リブ29はなく平坦面である。
【0016】
上記第1パネル構成部材25と第2パネル構成部材27とで、図5に示すようなリヤウインドパネル13を構成するには、図示しない溶着治具に第1パネル構成部材25と第2パネル構成部材27とを間隔をあけて各パネル面25a,27aを互いに対面させてセットした後、両者を近接させて、上記第1パネル構成部材25の各突状リブ29を対面する第2パネル構成部材27のパネル面27aに押圧接触させて上記溶着治具で上記第1及び第2パネル構成部材25,27を車幅方向に相対的に振動させて突状リブ29を第2パネル構成部材27のパネル面27aに振動溶着する。これにより、リヤウインドパネル13には、隣り合う4本の突状リブ29間に一端側13a(図5で右端側)から他端側13b(図5で左端側)に貫通する断面矩形状の中空路31が1個ずつ合計3個形成され、上記リヤウインドパネル13の両端側13a,13bには、中空路31に連通する導入口33及び導出口34がそれぞれ3個ずつ形成されている。
【0017】
上記のように構成されたリヤウインドパネル13の外縁部には、図2に示すように、リヤウインドパネル13における中空路31の導入口33及び導出口34に対応する連絡孔37(導出口34に対応する連絡孔は図示せず)を有するシール材35が全周に亘って嵌合されている。上記リヤウインドパネル13を、上記シール材35を介して、上記開口部11に固着した状態で、第1パネル構成部材25と第2パネル構成部材27との間には突状リブ29及び中空路31が車幅方向に亘って延び、該中空路31が、上記シール材35の連絡孔37を介して上記空気導入通路21及び空気導出通路と連通している。
【0018】
上記のように連通したリヤウインドパネル13においては、空調装置からダクトを介して上記空気導入通路21に調和空気としての温風が導入されると、該温風はアウタパネル15の連通孔23、シール材35の連絡孔37及びリヤウインドパネル13の導入口33を通って上記中空路31にリヤウインドパネル13の一端側13aから導入され、他端側13bの導出口34に移動する。この温風が中空路31を移動する過程で上記リヤウインドパネル13を暖めて曇りや水滴発生を防止している。上記中空路31の導出口34に移動した温風は、シール材35の連絡孔及びアウタパネル15の連通孔を通って上記空気導出通路に導出され、ダクト(図示せず)を通って上記空調装置又は車外へ導かれる。
【0019】
したがって、上記実施形態によれば、第1パネル構成部材25と第2パネル構成部材27との間に中空路31を形成して該中空路31に温風を流入するようにしているので、熱線を用いる場合の手間やコストがかからず、しかも熱線が見えることによる見映えの悪化を防止することができ、また、中空路31、空気導入通路21及び空気導出通路が連通しているので、これらを通過する温風の通過音が車室内に漏れず遮音性を確保することができる。その上、リヤウインドパネル13は、第1パネル構成部材25及び第2パネル構成部材27のパネル面25a,27aの4箇所で、一端側13aから他端側13bに向けて間隔をあけて延びる4本の突状リブ29によって溶着されて一体的に形成されているので、リヤウインドパネル13の剛性を確保することができる。
【0020】
また、上記リヤピラー7のアウタパネル15とインナパネル17との間に形成された空間を空気導入通路21及び空気導出通路として利用しているので、別途通路を形成する必要がなく、コスト削減を図ることができる。
【0021】
なお、本実施形態では、第1パネル構成部材25と第2パネル構成部材27とを振動溶着しているが、高周波や熱板で溶着してもよく、これらの溶着方法に限定しない。
【0022】
また、本実施形態では、第1パネル構成部材25に突状リブ29を突設したが、第1パネル構成部材25に突設する代わりに第2パネル構成部材27に設けてもよく、第1パネル構成部材25及び第2パネル構成部材27の両者に突設してもよい。さらに、4本の突状リブ29を略等間隔に突設したが、突状リブ29を突設する間隔や突状リブ29の数についてはこれに限定しない。
【0023】
また、本実施形態では、上記空気導出通路に導出された空気は空調装置に戻すようにしたが車室内或いは車室外に排出するようにしてもよい。
【0024】
また、本実施形態では、突状リブ29は車幅方向に延びるように突設したが、車体3の上下方向に延びるように突設してもよい。なおこの場合には、空気導入通路21及び空気導出通路は車体3の開口部11のルーフ5側及びトランクリッド9側に設けることになる。
【0025】
さらに、本実施形態では、セダン型自動車のリヤウインドに適用した形態を示したが、ハッチバック型自動車のリヤゲートを開閉するハッチバックドアに設けられるリヤウインドに適用するようにしてもよい。この場合、この発明における自動車の車体は、ハッチバックドアを指すものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、自動車のリヤウインド構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係るリヤウインド構造が適用された自動車の車体後部の斜視図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】第1パネル構成部材を車外側から見た斜視図である。
【図4】第2パネル構成部材を車内側から見た斜視図である。
【図5】リヤウインドパネルを車外側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 自動車
3 車体
7 リヤピラー
11 開口部
11a,13a,25b 一端側
11b,13b,25c 他端側
13 リヤウインドパネル
21 空気導入通路
23 連通孔
25 第1パネル構成部材
25a パネル面
27 第2パネル構成部材
27a パネル面
29 突状リブ
31 中空路
33 導入口
34 導出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に形成された開口部に透明の樹脂製リヤウインドパネルが固着されたリアウインド構造であって、
上記リヤウインドパネルは、矩形板状の第1パネル構成部材と矩形板状の第2パネル構成部材とを備え、これら第1パネル構成部材及び第2パネル構成部材の少なくとも一方のパネル構成部材のパネル面には、一端側から他端側に向けて延びる複数本の突状リブが間隔をあけて一体に突設され、上記第1パネル構成部材と第2パネル構成部材とを互いに間隔をあけて対面させた状態で上記各突状リブを対面するパネル構成部材のパネル面に溶着することにより、隣り合う突状リブ間に一端側から他端側に亘って貫通する中空路が形成され、
該中空路は車体の上記開口部周りの一端側に形成された空気導入通路及び上記開口部周りの他端側に形成された空気導出通路と連通され、上記空気導入通路に導入された調和空気を上記中空路に一端側から導入して他端側から上記空気導出通路に排出するように構成されていることを特徴とする自動車のリヤウインド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−276530(P2007−276530A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101965(P2006−101965)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】