説明

自動車のルーフ補強構造

【課題】標準ルーフ型の基準車とハイルーフ型の派生車とのルーフサイドレールを共通化して低コスト化を図ると共に、両タイプそれぞれにおけるルーフサイドを補強し得る自動車のルーフサイド補強構造を提供する。
【解決手段】ルーフサイド補強構造1は、車両のルーフサイド4内側面に配設される、標準ルーフ2型の基準車とハイルーフ3型の派生車との間で共通部材として用いられるルーフサイドレール5に固設するブレース6と、車両のルーフ内側面に配設されるルーフリインフォース8に固設するシム9と、を備え、これらブレース6とシム9とをボルト10で締結することによってルーフを補強するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準ルーフ型の基準車とハイルーフ型の派生車との間で、ルーフサイドレールを共通化し、派生車のルーフサイドを補強するルーフサイドの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフは、ルーフパネルだけで構成された場合、ルーフサイドが剛性不足となって、キャリア等を使用する場合に重量物を載せることができない。また、横転時にはルーフが潰れる畏れがあったり、車両捻れ時にルーフ面に歪みが生じる畏れがあるといった問題がある。このようなルーフサイドの剛性不足を補うため、従来、自動車のルーフは、ルーフサイドの内側面に、車両前後方向に長い一対の略筒状のルーフサイドレールが配設されると共に、このルーフサイドレール間において、ルーフ内側面に沿って車幅方向に延びたルーフリインフォースが架設されて補強されている。
【0003】
このようなルーフの補強構造は、標準ルーフ型の基準車と、この基準車よりもルーフが高位置に設定された所謂、ハイルーフ型の派生車との二つのタイプを有する車種の自動車においても、特許文献1に開示されているように、基本的にはそれぞれ同様な構成が採られている。このように、同車種の自動車であっても、基準車のルーフ補強構造と派生車のルーフ補強構造とでは、互いに異なる部材や組み付け手段によって構成されていることにより、補強用の部材を他品種製造しなければならず、高コストであるという問題がある。
【0004】
具体的には、基準車の場合は、ルーフリインフォースの立ち上がり量が小さいので、ルーフリインフォースとルーフサイドレールとの結合、及び、ルーフサイドレールとルーフサイドの結合が強固となり、ルーフは十分な剛性や強度に達している。ところが、派生車の場合には、ルーフリインフォースとルーフサイドレールとを併用してはいるものの、ルーフリインフォースの立ち上がり量が大きいので、ルーフリインフォースとルーフサイドレールとの結合、及びルーフサイドレールとルーフサイドとの結合が比較的弱くなり、十分なルーフサイドの強度が得られない畏れがある。従って、ハイルーフ型の自動車においては、基準車とは別にルーフサイドレールを用意する必要があった。
【特許文献1】特開平9−254815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて創作されたものであり、標準ルーフ型の基準車とハイルーフ型の派生車とのルーフサイドレールを共通化して低コスト化を図ると共に、両タイプそれぞれにおけるルーフサイドの剛性を確保し、ルーフサイドを補強することができる自動車のルーフサイド補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、車両のルーフ内側面に車幅方向に配設されるルーフリインフォースと、車両のルーフサイド内側面に前後方向に配設される略筒状のルーフサイドレールと、を備えた自動車のルーフ補強構造であって、ルーフサイドレールに固設される第一の結合部材と、ルーフリインフォースに固設される第二の結合手段と、を備え、第一の結合手段と第二の結合手段とがボルトで締結され、ルーフサイドを補強すると共に、ルーフサイドレールに対する外力がルーフリインフォースに伝達されるように構成されたことを特徴とする。
【0007】
第一の結合部材と第二の結合部材とには、それぞれボルト穴が貫穿され、これらのボルト穴のうち少なくとも一方は長穴であって、これら第一の結合部材と第二の結合部材との結合位置が調整可能に構成されることが望ましい。
【0008】
第一の結合部材は、ルーフサイドレールに固設される水平部と、この水平部から略垂直に立ち上がり第二の結合部材と結合するためのボルト穴を備えた垂直部とを有し、垂直部は、断面略コ字形に形成されることが好ましい。
【0009】
第二の結合部材は、第一の結合部材と結合するためのボルト穴を備えた取付部と、この取付部の両端から延設しルーフリインフォースに固設される一対のフランジ部とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動車のルーフサイド補強構造において、標準ルーフ型の基準車とハイルーフ型の派生車とのそれぞれにおけるルーフ内側面にそれぞれのルーフに対応したルーフリインフォースを車幅方向に架設し、それぞれのルーフサイド内側面に車両前後方向に長い略筒状を成す、両タイプに共通のルーフサイドレールを固設して、それぞれルーフリインフォースとルーフサイドレールとを互いに結合するようにし、派生車の場合には、更に、ルーフサイドには第一の結合部材を、ルーフリインフォースには第二の結合部材を固設してこれら第一の結合部材と第二の結合部材とをボルトで締結することができるから、基準車のルーフサイドの剛性や強度を確保しつつも、基準車用と派生車用とでは従来別仕様であったルーフサイドレールを共通化して低コスト化を図ると共に、派生車においても十分な剛性や強度を確保し、ルーフサイド面の歪み等を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図1及び図2を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の自動車のルーフサイド補強構造1は、標準ルーフ2を備えた基準車及びルーフが高位置に設定されるハイルーフ3を備えた派生車のルーフサイド4を補強するためのルーフサイド補強構造1であって、基準車に用いられるルーフサイドレール5を基準車と派生車との間で共通部品化して低コスト化を図りながらも、派生車においてもルーフサイド4の十分な強度を確保し得るようにするものである。
【0012】
ルーフサイド補強構造1は、図1に示すように、派生車の左右のルーフサイド4に車両前後方向に沿って固設されるルーフサイドレール5と、このルーフサイドレール5の適所に固設される第一の結合部材としてのブレース6と、派生車のルーフを構成するルーフパネル7の内側面に沿って、車幅方向にわたって架設されるルーフリインフォース8と、このルーフリインフォース8に固設される第二の結合部材としてのシム9と、これらブレース6とシム9とを締結するためのボルト10とを備えている。
【0013】
ルーフサイドレール5は、車両前後方向に長い三枚の剛板を、それぞれ長手方向に沿った各折曲部に沿って適宜に折り曲げ、それら折り曲げられた三枚の剛板5a,5b,5cを互いに組み合わせて溶接し、一体化して成るルーフの前端から後端にわたる略筒状に構成される部材である。このルーフサイドレール5は、車両の左右のルーフサイド4に、それぞれ一つずつ固設される。ルーフサイドレール5の車幅方向外側面には、左右両側に立ち上がり部分を有するハイルーフ3型のルーフパネル7の左右の下端部がそれぞれ溶接されて固設される。ルーフサイド4の上面の車両前後方向における適所には、それぞれブレース6が固設される。
【0014】
ブレース6は、ルーフサイドレール5の上面にほぼ平行な水平部6aと、この水平部6aから垂直に立ち上がった垂直部6bとを有する。水平部6aは、ルーフサイドレール5の上面の長手方向における適所、即ちルーフリインフォース8に対応する位置に、溶接によって固設される。垂直部6bは断面略コ字形に形成され、ブレース6の固設時には、略コ字形を成す面のうちの中央の面が車幅方向外向きに向けられてルーフサイドレール5の上面に固設される。この垂直部6bの略コ字形を成す面のうちの中央の面6cには、ブレース6とシム9をボルト10で締結するためのボルト10を挿通するボルト穴6dが貫穿される。このボルト穴6dは、上下方向に長い長円形に形成される。
【0015】
ルーフリインフォース8は、左右両側に立ち上がり部分を有するハイルーフ3型のルーフパネル7の内側面に沿って、ルーフパネル7の左右の両端にわたって設定される車室内側に向かって突出した断面略凸字形で全体として略弓状を成す一連の補強材である。ルーフリインフォース8は、複数が車両前後方向の適所に設定され、溶接によってルーフパネル7の内側面に固設される。それらのルーフリインフォース8は、左右両下端部がそれぞれ、左右のルーフサイドレール5に固設されて結合される。ルーフリインフォース8の左右のR状に形成された内角部には、シム9が溶接されて固設される。
【0016】
シム9は、ルーフリインフォース8の左右のR状に形成された内角部における車室内側に向かって突出したルーフリインフォース8の頂面に溶接によって固設される部材である。このシム9は、帯状の剛板を略く字形に曲げ、その両端からそれぞれ適宜の角度で延設される一対のフランジ部9a,9bを有する。略く字形を成す上部側の面である取付部9cには、ブレース6とシム9とを締結するためのボルト10を挿通するためのボルト穴9dが貫穿される。このボルト穴9dの背面には、このボルト穴9dに合わせてナット9eが固設される。勿論、このナット9eはブレース6とシム9とを締結するために用いられるボルト10に対応したものである。
【0017】
本実施形態のルーフサイド補強構造1の各部は、以上のように構成され、ルーフリインフォース8の位置に対応させて、上面の適所それぞれに予めブレース6が固設されたルーフサイドレール5を車両の左右のルーフサイド4に対して取り付けられて固定される。次いで、ルーフパネル7内側面の前後方向における適所のそれぞれに固設されたルーフリインフォース8の適所に予めシム9が固設され、このルーフパネル7を車両のルーフ位置に配設し、対応するブレース6のボルト穴6dと、シム9のボルト穴9dとを位置合わせしながらこれらブレース6とシム9とを互いにボルト10で締結する。この結合構造は、ブレース6に貫穿されたボルト穴6dを長円形としたシム構造となっていて、製品毎や部位毎のばらつきによる位置ずれを吸収することができるように構成されている。
【0018】
以上説明したように、本発明の自動車のルーフサイド補強構造1は、車両のルーフサイド4内側面に配設されるルーフサイドレール5に固設されるブレース6と、車両のルーフ内側面に配設されるルーフリインフォース8に固設されるシム9と、を備え、これらブレース6とシム9とをボルト10で締結することによってルーフを補強するように構成された自動車のルーフサイド補強構造1であって、ルーフサイドレール5を標準ルーフ2型の基準車とハイルーフ3型の派生車との間で共通化しつつも、派生車においてもルーフサイド4を十分に高強度化することができるように構成されたものであって、その主旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車のルーフサイド補強構造の構成を示す図であり、ハイルーフ型の派生車のルーフサイドにおけるルーフリインフォース周辺の構成を示す分解斜視図である。
【図2】上記実施形態の自動車のルーフサイド補強構造の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ルーフサイド補強構造
2 標準ルーフ
3 ハイルーフ
4 ルーフサイド
5 ルーフサイドレール
5a 剛板
5b 剛板
5c 剛板
6 第一の結合部材
6a 水平部
6b 垂直部
6c 中央の面
6d ボルト穴
7 ルーフパネル
8 ルーフリインフォース
9 第二の結合部材
9a フランジ部
9b フランジ部
9c 上部側の面
9d ボルト穴
9e ナット
10 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフ内面に車幅方向に沿って配設されるルーフリインフォースと、ルーフサイド内面に前後方向に沿って配設される一対の略筒状のルーフサイドレールと、を備えた自動車のルーフ補強構造であって、
上記ルーフサイドレールに固設される第一の結合部材と、上記ルーフリインフォースに固設される第二の結合手段と、を備え、
上記第一の結合手段と上記第二の結合手段とがボルトで締結され、上記ルーフサイドを補強すると共に、上記ルーフサイドレールに対する外力が上記ルーフリインフォースに伝達されるように構成されたことを特徴とする、自動車のフール補強構造。
【請求項2】
前記第一の結合部材と前記第二の結合部材とにはそれぞれボルト穴が貫穿され、これらのボルト穴のうち少なくとも一方は長穴であって、前記第一の結合部材と前記第二の結合部材との結合位置が調整可能に構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の自動車のルーフ補強構造。
【請求項3】
前記第一の結合部材は、前記ルーフサイドレールに固設される水平部と、この水平部から略垂直に立ち上がり前記第二の結合部材と結合するためのボルト穴を備えた垂直部とを有し、上記垂直部は、断面略コ字形に形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車のルーフ補強構造。
【請求項4】
前記第二の結合部材は、前記第一の結合部材と結合するためのボルト穴を備えた取付部と、この取付部の両端から延設し前記ルーフリインフォースに固設される一対のフランジ部とを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のルーフ補強構造。

【図1】
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【図2】
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