説明

自動車の制御装置

【目的】 ドライバビリティの向上を図ると共に、スロットルアクチュエータ系の故障による自動車の暴走を防止することができる自動車の制御装置を得る。
【構成】 アクセル開度センサ1より検出されるアクセル開度に対する目標スロットル開度の関数を車速センサ2による車速と変速比信号3に応じて目標スロットル開度演算手段4により複数のパターンから選択し、スロットルアクチュエータ制御手段5によりスロットルアクチュエータ6を介してスロットルバルブ7を制御すると共に、目標スロットル開度をもとに目標空気量演算手段11により目標空気量を演算で求め実空気量との比較により実空気量が大のとき燃料供給停止又は強制休筒を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車のスロットルバルブを電気的に制御する自動車の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車のスロットルバルブは、アクセルペダルと機械的にリンクされ、アクセルペダルの踏込量に応じてスロットルバルブを開閉するようになっていることは周知である。また、アクセルペダルの踏込量と車速に応じてスロットルバルブの開度を電気信号によりステッピングモータで制御する方法が例えば特開昭61−261635号公報に開示されている。
【0003】図6はその制御装置を示す構成図である。図において、2は車両の走行速度を検出する車速センサ、5はスロットル開度及び目標スロットル開度の入力信号に基づきスロットルアクチュエータ6を制御する制御手段、7はスロットルアクチュエータ6により回転されるスロットルバルブ、8は該スロットルバルブ7の開度を検出するスロットル開度センサである。
【0004】また、21はアクセルペダルの踏込量を検出する手段、22はその検出信号S1 の入力及びアクセル感度の入力に基づいて該アクセルペダルの踏込量と目標スロットルバルブ開度との関係を該アクセル感度に従って決定する関数発生手段、23は走行中におけるスロットルバルブ7の開度の平均値を算出する手段、24は走行中の車速の平均値を算出する手段、25は車速の平均値とスロットルバルブ7の平均値に基づいてアクセルペダルの踏込量に対するスロットルバルブ開度の感度を示すアクセル感度を算出する手段であり、制御手段5により、スロットルバルブ7の開度が目標値に等しくなるようにスロットルアクチュエータ6を制御するようになっている。
【0005】すなわち、上記構成に係る制御装置は次のように動作する。運転者のアクセル踏込量はアクセルペダル踏込量検出手段21で検出され、アクセルの踏込量に対して或る関数関係でスロットルバルブ7が開閉される。つまり、関数発生手段22は、それまでの平均的な車速と平均的なスロットル開度から、アクセル踏込量とスロットル開度との関数を決めて、スロットル開度目標値を指令するような制御を行っている。この時、荷重の状態や上り坂、下り坂などは、スロットル開度の平均値と、車速の平均値から判断し、スロットル開度の平均値が大きいにもかかわらず、車速の平均値が小さい場合には、負荷が大きいとみなして、アクセル踏込量に対してスロットル開度が大きめになるような関数にしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の自動車の制御装置は以上のようなスロットル制御を行っており、運転者の意志をアクセルペダルの踏込量で検出し、走行の状態を車速から検出して、アクセルペダル踏込量と車速との関係がほぼ一定になるようにしているためイージードライブになっている。しかし、これでは自動車本来の訴求性能であるドライバビリティの改善にはなっていない。また、スロットルアクチュエータ6を用いている為、該アクチュエータによる故障率も増加しているが、これに対する配慮が十分でないなどの問題点があった。
【0007】この発明は、上述した点に鑑みてなされたもので、自動車のドライバビリティの向上を図ると共に、スロットルアクチュエータ系の故障による自動車の暴走を防止できる安全性に対し配慮した自動車の制御装置を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係る自動車の制御装置は、自動車のアクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、変速機の変速比を検出する変速比検出手段と、アクセル操作量に対するスロットル開度の目標値のパターンが複数備えられていて、上記検出信号に基づいて車速及び変速比に基づくスロットル開度の目標値のパターンを選択し、スロットルアクチュエータを制御する信号処理装置とを備えたものである。
【0009】また、請求項2に係る自動車の制御装置は、自動車エンジンの吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、該アクセル操作量に基づきエンジンの目標空気量と該吸入空気量検出手段による実空気量とを比較し実空気量が目標空気量より大のときエンジンの燃料供給を制御する信号処理装置とを備えたものである。
【0010】
【作用】この発明の請求項1において、信号処理装置は、アクセルペダルの操作量に対する目標スロットル開度を車速と変速比とで決められる複数のパターンから選択することにより、加速時のトルクの立ち上がりが様々の運転領域でスムーズになる。
【0011】また、請求項2において、信号処理装置は、スロットルアクチュエータ、スロットル開度センサの故障によりスロットルバルブの開側故障が生じても吸入空気量検出手段の信号との比較により速やかに故障検知し、燃料供給停止等の制御により自動車の暴走を防ぐ。
【0012】
【実施例】
実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1は本実施例に係る自動車の制御装置を示す構成図である。図1において、1はアクセル操作量検出手段としてのアクセル開度センサ、2は車速センサ、3はトランスミッションのギヤ位置に対応して得られる変速比信号、4は上記アクセル開度センサ1、車速センサ2、及び変速比信号3から目標スロットル開度θT を演算により求める目標スロットル開度演算手段である。
【0013】ここで、該目標スロットル開度は、図2に示すように、アクセル開度に対応した関数で定められるが、アクセル開度が小のときの勾配の小さいパターンP1 と中程度のパターンP2 及び勾配の大きいパターンP3 を有し、この中から一つのパターンが選択され目標スロットル開度が決定される。
【0014】また、選択方法としては、図3に示すように、変速比と車速とにより定められる領域により決定される。即ち、変速比が大で車速が小のときは、アクセル開度が小で加速すると、大きなトルクを発生して運転者にシヨックを与えるので、パターンP1 を選択してアクセル開度に対する目標スロットル開度の感度を下げることにより、加速シヨックを低減することができる。
【0015】逆に、変速比が小で車速が大のときは、アクセル開度が小で加速してもトルク変化(比率)が小さく、シヨックは発生しないので、加速性を向上させるためにパターンP3 を選択してアクセル開度に対する目標スロットル開度の感度を上げる。
【0016】次に、5は目標スロットル開度θT とスロットル開度センサ8からの実スロットル開度θR との偏差を求めスロットルアクチュエータ6を制御するスロットルアクチュエータで、周知のPID制御を行いスロットルアクチュエータ6に電気信号を出力するようになされ、スロットルアクチュエータ6、スロットルバルブ7、及びスロットル開度センサ8は、図4に示されるように取り付けられる。
【0017】即ち、該電気信号によりスロットルアクチュエータ6内のモータ61が駆動されギア62にて連結された出力がスロットルバルブ7を回転させる。また、同軸上に取り付けられたスロットル開度センサ8により回転角度位置を検出し実スロットル開度θR を得る。
【0018】次に、装置の安全性に係る構成の部分について説明する。図1において、9は空気密度センサであり、大気圧,吸気温度から空気密度ρを計算し出力する。10はエンジン回転数検出センサであり、回転数Neを出力する。11は目標空気量演算手段であり、目標スロットル開度θT 、空気密度ρ、回転数Neとから目標空気量QT を(1)式により演算出力する。
T =f(θT ,Ne)×g(ρ) ・・・(1)
【0019】また、12は空気流量センサ、13は吸入空気量検出手段13であり、周知の方法で実空気量QR を求める。14は比較演算手段であり、所定運転条件下で上記目標空気量QT と実空気量QR の比較を行いスロットルアクチュエータ系(5,6,7,8)の異常を検出したとき故障表示ランプ19を点灯すると共に、エンジンが異常に吹き上げる危険性のある場合はその程度に応じて燃料制御手段15に全気筒燃料カット、または半数の気筒を燃料カットさせる。
【0020】さらに、17は休筒制御システムにおいて上述したのと同様な状況下で通常制御以外の優先処理として休筒制御バルブ18の制御を行いエンジンの出力を低下させる休筒制御手段、16は燃料制御手段15によって制御されるインジェクタ、18は休筒制御手段17により制御される休筒制御バルブ、20は信号処理装置である。
【0021】次に、信号処理装置20の動作を、比較演算手段14の動作の詳細説明を中心に、図5に示すフローチャートを参照して説明する。先ず、ステップS1は図1に示される各種センサ類からの情報読み込みを行う。ステップS2では前述のように目標スロットル開度θT を目標スロットル開度演算手段4による演算で求める。そして、ステップS3では目標開度θT と実開度θR の偏差に基づき偏差を0にするようスロットルアクチュエータ制御手段5によりスロットルアクチュエータ6を制御する。
【0022】次に、ステップS4,ステップS5で各々目標空気量QT と実空気量QR とを求め、ステップS6では目標空気量QT と実空気量QR の比較を行う前処理として、所定運転条件下か否かを判定する。目標空気量QT と実空気量QR がほぼ等しくなるのはスロットルアクチュエータ系(5,6,7,8)が正常であると共にエンジンの運転が定常運転である必要がある。
【0023】この為、条件としては、所定の運転領域内(回転数Ne,空気量QR とから判断)であり、急激な加減速を行っていない時(目標開度θT 実開度θR との偏差の時間変化が小さい時)であり、また、該条件が所定時間継続すること始動時、エンジン停止時を除くなどの条件である。
【0024】該条件の成立時は、ステップS7に進み目標空気量QT と実空気量QR の比較を行う。ステップS7でQR /QT >K(K>1)のときは、運転者の意図以上に吸入空気量が増えたときであり、自動車の暴走の危険性がある。この原因として代表的なものは、スロットルアクチュエータ6内のモータがロックしてスロットルバルブ7が開側状態に固定された場合がある。この場合、アクセルを戻しても自動車は暴走を続けるので、スロットルバルブを戻す以外の方法でエンジン出力を低下させる必要がある。
【0025】また、別の要因としてスロットル開度センサ8の出力異常(通常より開度小となる故障)の場合もフィードバックループにより運転者の意志に反してスロットルバルブ7を開側へ制御させる。スロットルアクチュエータ系の代表的なこれらの故障に対する故障検知方法として、前述の目標空気量QT と実空気量QR の比較を行うことで故障検知が可能である(目標空気量QT と実空気量QR の比較などではモータロックは検出できるが、スロットル開度センサ8の異常は検知できない)。
【0026】次に、ステップS7でQR /QT >Kが成立した時は、ステップS8でエンジンの出力低減処理を行う。第1の方法としては、燃料供給を停止するものであり、第2の方法としては、休筒システムの場合、強制休筒制御をすることで出力が低減できる。次にステップS9では故障コードをセットして故障表示を行う。
【0027】なお、上記実施例では、ステップS7でQR /QT >K(K>1)によりスロットルアクチュエータ系の開側故障について説明したが、同様にQR /QT >K(K>1)により閉側故障についても判定できることは言うまでもない。また、図5では故障コードのクリア処理等については説明を割愛している。
【0028】また、故障コードについては、スロットルアクチュエータ系として一括する以外にスロットルアクチュエータ6(モータ,ギア)とスロットル開度センサ8とを分離することも可能である。スロットルバルブ7の開側故障に対してモータロック時も、スロットル開度センサ8の閉側故障もQR /QT となる。しかし、スロットル開度θR ,θT の関係はモータロック時はθR >θT となり、スロットル開度センサ8の閉側故障の場合(勾配が小さくなった時)はフィードバック制御の範囲内ではθR >θT となり故障要因の弁別が可能である。
【0029】また、上記実施例では、目標空気量QT と実空気量QR との比較でスロットルアクチュエータ系の故障を検出しているが、目標負荷(空気量/回転数)と実負荷或いは目標マニホールド圧と実マニホールド圧との関係等から検出することでも同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】以上のようにこの発明の請求項1によれば、アクセルペダルの操作量に対してスロットル開度の目標値のパターンを複数有し、該パターンを車速及び車速比により選択使用することによりドライバビリティを向上させることができる。
【0031】また、請求項2によれば、安全性の為、目標空気量QT と実空気量QR との比較によりQR /QT >K(K>1)のときはエンジンの出力を低減させることにより自動車の暴走を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例による自動車の制御装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施例に係る目標スロットル開度特性図である。
【図3】この発明の実施例に係るパターン選択の特性図である。
【図4】スロットルアクチュエータの取付図である。
【図5】図1の信号処理装置20の動作フローチャートである。
【図6】従来例の自動車の制御装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1 アクセル開度センサ
2 車速センサ
3 変速比信号
4 目標スロットル開度演算手段
5 スロットルアクチュエータ制御手段
6 スロットルアクチュエータ
7 スロットルバルブ
8 スロットル開度センサ
9 空気密度センサ
10 回転数検出センサ
11 目標空気量演算手段
12 空気流量センサ
13 吸入空気量検出手段
14 比較演算手段
15 燃料制御手段
16 インジエクタ
17 休筒制御手段
18 休筒制御バルブ
19 故障表示ランプ
20 信号処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動車のアクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、変速機の変速比を検出する変速比検出手段と、アクセル操作量に対するスロットル開度の目標値のパターンが複数備えられていて、上記検出信号に基づいて車速及び変速比に基づくスロットル開度の目標値のパターンを選択し、スロットルアクチュエータを制御する信号処理装置とを備えたことを特徴とする自動車の制御装置。
【請求項2】 自動車エンジンの吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、該アクセル操作量に基づきエンジンの目標空気量と該吸入空気量検出手段による実空気量とを比較し実空気量が目標空気量より大のときエンジンの燃料供給を制御する信号処理装置とを備えたことを特徴とする自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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