説明

自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法及び成形品

【課題】自動車内装材等に用いられるポリウレタン樹脂成形品において、特に夏場など屋外に駐車中の自動車が太陽光の照射を長時間受けた時の表面温度の上昇及び最高到達温度を低く抑えることが可能な製造法及び該成形品を提供すること。
【解決手段】ポリオール、触媒、鎖延長剤、およびその他の助剤を含むポリオール混合物とポリイソシアネート化合物から自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品を製造する方法において、前記ポリオール混合物が融点が60℃〜80℃のマイクロカプセル化パラフィンワックス及び/又はシラスバルーンを、さらに含むことを特徴とする自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。及び得られた該樹脂成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドア−トリム(上方部分)やヘッドレスト、またアームレスト、チェンジノブやステアリングホイールなどが太陽光の照射を受けた時、その表面温度の上昇及び最高到達温度を従来よりも低く抑制し、その抑制効果を持続(定温保持)させ、且つ、乗員が表面に触れたときの熱さの感覚を緩和させることができる自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品を製造する方法及び成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、夏場など特に自動車を屋外に駐車し太陽光の照射を長時間受ける場合、車室内の温度が80℃近くにもなり、それとともに自動車内装材等に用いられるポリウレタン樹脂成形品も表面温度が例えばステアリングホイールなどは表面温度が80℃近くに上昇する。車室内温度を下げるためエアコン等を作動させ乗車するが、その時車室内温度は比較的早く下がるもののステアリングホイールの表面温度などは直ちには下がらず、ハンドル操作が可能になる、握られるような表面温度になるまでには長時間を要する。したがって、乗員がステアリングホイールの表面に触れたときの熱さの感覚を緩和させること、すなわち、その表面温度の上昇及び最高到達温度を低く抑えることが求められている。
【0003】
ポリウレタン樹脂成形品の表面温度上昇抑制法として以下のような方法が提案されている。
【0004】
特開平11−263872号公報には、モールドコートした遮熱塗料と赤外吸収顔料を組み合わせた方法が記載されている。しかし、開放された空間では空気の対流により反射した赤外線の影響が回避され、製品のまわりの雰囲気温度の上昇を抑えることができるが、密閉された車室内空間では、空気の対流がほとんどなく、時間の経過とともに、雰囲気温度が上昇してしまうため、遮熱塗料と赤外線吸収顔料を添加しないものと比較して、表面温度を1〜2℃程度しか低く抑えることができず、表面を手で触れた感覚では、ほとんど差が感じられない。
【0005】
特開2002−399号公報には、蓄熱剤を使用した例が記載されている。蓄熱剤の融点範囲を人間の体温よりも低い温度の10〜35℃と規定しており、室温と体温の関係から、蓄熱剤の融点付近で温度を一定に保てる作用を利用して、夏は涼しく、冬は暖かく感じさせる目的で使用されている。しかし、これらの蓄熱剤は車室内温度が80℃付近まで上昇する密閉された車室内空間ではほとんど効果が期待できない。
【0006】
特開2007−168550号公報には、断熱を目的としてシラスバルーンを使用した例があるが、冷凍車の冷凍室の外壁等に使用する断熱塗料層にシラスバルーンを主成分とする水系塗料として使用するとしており、本発明の用途とは大きく異なる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−263872号公報
【特許文献2】特開2002−399号公報
【特許文献3】特開2007−168550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車内装材等に用いられるポリウレタン樹脂成形品において、特に夏場などに駐車中の自動車が太陽光の照射を長時間受け車室内温度が80℃近くになっても、自動車内装材等に用いられるポリウレタン樹脂成形品の表面温度の上昇及び最高到達温度を低く抑えることができ、その抑制効果を持続させ、且つ、表面に触れたときの熱さあるいは冷たさの感覚を緩和させることができるポリウレタン樹脂成形品については、まだ十分とは言えない。
【0009】
本発明の目的は、自動車内装材等に用いられるポリウレタン樹脂成形品において、特に夏場など屋外に駐車中の自動車が太陽光の照射を長時間受けた時の表面温度の上昇及び最高到達温度を低く抑えることができ、その抑制効果を持続させ、且つ、表面に触れたときの熱さあるいは冷たさの感覚を緩和させることができる自動車内装部材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品及びその製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂の製造法を鋭意検討した結果、
自動車内装材に用いられるポリウレタン樹脂成形品を製造する方法において、ポリオール混合物に、潜熱蓄熱材等としてマイクロカプセル化したパラフィンワックスを、またシラスバルーン、更に遮熱顔料を組み合わせ添加することで、特に夏場など屋外に駐車中の自動車の車室内温度が80℃近くになっても、表面に触れたときの熱さを緩和する自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂の製造法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]ポリオール、触媒、鎖延長剤、およびその他の助剤を含むポリオール混合物とポリイソシアネート化合物から自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品を製造する方法において、融点が60℃〜80℃のマイクロカプセル化パラフィンワックス及び/又はシラスバルーンを、前記ポリオール混合物及び/又はポリイソシアネート化合物にさらに含むことを特徴とする自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
[2]前記融点が60℃〜80℃のマイクロカプセル化パラフィンワックス及び/又はシラスバルーンを前記ポリオール混合物に含む[1]に記載の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
[3] シラスバルーンが粒径35μm〜80μmであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
[4] 前記ポリオール混合物がさらに遮熱顔料を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一つにに記載の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
[5] [1]〜[4]のいずれか一つに記載の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法により該成形品を製造し、次いで、得られた成形品樹脂表面に遮熱塗料を10μm〜100μmで塗布することを特徴とする自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
[6] 少なくとも融点が60℃〜80℃のマイクロカプセル化パラフィンワックスを0〜28.7重量%、シラスバルーンを0〜21.5重量%(ただし、いずれも0重量% と成る場合は除く)含む自動車内装部材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品。
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、自動車等に用いられる自動車内装部品例えばポリウレタン樹脂成形品において、表面温度を抑制し、その効果を持続(定温保持)させることができる。
したがって、特に夏場等、屋外に駐車中の自動車の室内温度が80℃近くまで上昇した状態で乗った直後でも、例えばステアリングホイールの表面温度が高くその表面温度を下げるためエアコン等を長時間作動させていた無駄な時間もなくなり、エネルギー消費量を低減させることができる。
【0013】
特に上記の効果は、次のことによって得られるものである。
成形品が融点60℃〜80℃のパラフィンワックスをマイクロカプセル化し潜熱蓄熱剤として含む事で、車室内温度が80℃近くになると、マイクロカプセル内のパラフィンワックスが固体から液体に変化し、その際の吸熱作用により熱を吸収しさらに吸収した熱を蓄熱することで、表面温度を低く抑え、且つ抑制効果を持続させることができる。
また、シラスバルーンは、微細な中空状の発泡粒子で低い熱伝導率を有しているために成形品に断熱効果が付与され、熱移動が遅くなり、表面温度を低く抑えることができる。
さらには、これらに太陽光の50%を占める近赤外線領域(780nm〜2100nm)に高い反射率を示し、光を反射させることで、表面温度を低く抑えることができる中空のセラミックバルーン、シラスバルーンやセラミックビーズ等を混ぜた遮熱塗料を組み合わせると、吸熱、断熱、遮熱(反射)の三要素で一層効果が高まり、従来技術では達成できなかった表面に触れたときの熱さを緩和する自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品例えばステアリングホイール等が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の詳細を説明する。
【0015】
本発明の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂の原料としては、ポリオール、触媒、鎖延長剤、助剤からなるポリオール混合物とポリイソシアネート化合物とからなる。また、必要に応じて発泡剤が用いられる。
【0016】
本発明に用いられるポリイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、これらのポリイソシアネートをウレタン変性、アロファネート変性、カルボジイミド変性、またはイソシアネート変性した変性ポリイソシアネート、これらの混合物などがある。
【0017】
ポリオールとしては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、蔗糖などの水酸基含有化合物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノ基や水酸基を含有する化合物あるいはエチレンジアミン、ジアミノトルエンなどのアミノ基含有化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した分子中に2〜6個の水酸基を含有し、平均水酸基当量が100〜2400(OH基561〜23mgKOH/g)のポリエーテルポリオールあるいはこれらのポリエーテルポリオールにビニル化合物を付加重合したポリマーポリオールなどが用いられる。
【0018】
触媒としては、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルアミノエタノール、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾールなどの第3級アミンやジブチル錫ジラウレート、オクタン酸錫、シブチル錫ジアセテートなどの有機金属化合物が用いられる。触媒の量は、ポリオール混合物100重量部に対して、0.1〜5.0重量部、好ましくは0.3〜1.8重量部である。
【0019】
鎖延長剤としては、分子量が61〜300の2価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、へキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールや2価アミン、例えばジエチルトルエンジアミン、t−ブチルトルエンジアミン、ジエチルジアミノベンゼン、トリエチルジアミノベンゼン、テトラエチルジアミノジフェニルメタンなどが必要に応じて用いられる。鎖延長剤の量は、ポリオール100重量部に対して、1.0〜20.0重量部、好ましくは5.0〜10.0重量部である。
【0020】
発泡剤としてはクロロフロロカーボン以外の発泡剤が必要に応じて用いられる。例えば水あるいはアミン化合物の炭酸塩または蟻酸が用いられる。
その他の助剤としては、気泡安定剤、例えばシリコーン系整泡剤、界面活性剤、耐候剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤などが必要に応じて用いられる。
【0021】
本発明に用いられる潜熱蓄熱剤のマイクロカプセル化したパラフィンワックス、シラスバルーン、遮熱顔料等はポリウレタン樹脂原料のいずれに添加しても良いが、上記ポリオール混合物に混合する方が均一分散性の観点から好ましい。
本発明に用いられるマイクロカプセル化パラフィンワックスは、市販品を利用することができ、例えばプレサーモCシリーズ(大和化学社製)などを用いる事ができる。マイクロカプセル化パラフィンワックスは、ポリオール混合物100重量部に対して好ましくは1〜40重量部、より好ましくは1〜20重量部で添加される。
【0022】
シラスバルーンも市販品を用いることができ、例えばエスケーライフ(株)社製の ファイブスターなどを用いることができる。シラスバルーンの粒径は好ましくは35μm〜80μm径である。またシラスバルーンは、ポリオール混合物100重量部に対して好ましくは0〜30重量部であり、より好ましくは5〜30重量部である。30重量部を越えて添加しても添加効果が飽和し、またポリオール混合物の粘度が高くなり、反応射出成形法で成形する際に混合性に問題が生じる。
【0023】
遮熱顔料は、ポリオール混合物100重量部に対して好ましくは0.5〜3重量部である。0.5重量部未満では、効果が不十分で3重量部を越えて添加しても効果が飽和する。
通常の顔料と同様にポリオール混合物に分散でき、ペースト状に加工して使うこともできる。
遮熱顔料としては、赤外線波長領域の1000nm付近(近赤外領域)および赤外線波長領域中の1100nm以上(遠赤外領域)に高い反射ピークを有するタイプであることが好ましい。前者の例として川村化学製のAB820がまた後者の例として川村化学製のAG235が挙げられる。
【0024】
遮熱塗料は、得られた表面に自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の表面に10μmから100μmの膜厚で塗布されていることが好ましい。10μmから100μmの膜厚で塗布されていると塗布物の表面温度を低く抑えることができる断熱効果が得られる。遮熱塗料としては赤外線波長領域の1000nm付近(近赤外領域)に反射率の高いものを用いるのが好ましい。膜厚10μm未満では遮熱効果が不十分であり、膜厚100μmを越えても遮熱効果は飽和する。
【0025】
本発明の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂を製造する際の成形法は、一般的に知られている、上型を開けておいて下型にポリウレタン樹脂液を注入してから上型を閉じるオープン型注入や、予め上下型を閉じておいてポリウレタン樹脂液を型内に注入するクローズド型注入などの反応射出成形法(RIM)が用いられる。中でもステアリングホイールなど短時間成形サイクルが要求される、例えば注入後1分から3分で型から取出せるような反応性(ライズタイムが20秒から60秒)を有する自動車内装材用ポリウレタン樹脂原料の成形においては反応射出成形法(RIM)で成形するのが好ましい。
RIMによる自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂の製造(成形)にはHennecke社製のR−RIM用高圧ポリウレタン成形機、ポリウレタンエンジニアリング社製のR−RIM用高圧ポリウレタン成形機などの反応射出成形機が用いられる。
【0026】
本発明の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂の製造(成形)には、NCOインデックスは90から130が良く、好ましいNCOインデックスは100から115である。
NCOインデックスが90を下回るとポリオールが過剰であり、100を上回るとイソシアネートが過剰になる。ステアリングホイールを例にとると、NCOインデックスが90を下回ると、耐摩耗性、耐候性等に問題が生じる可能性があり、130を上回ると、表面が硬くなりポリウレタンステアリングホイールの特徴である弾性感とソフト感が損なわれる。
なお、NCOインデックスとは、ポリオール混合物中および発泡剤として水を使用したときの活性水素1つ当たりのポリオール混合物量および水の量と、ポリイソシアネート中のイソシアネート基1つ当たりのポリイソシアネート量の比(当量比)×100で示される。
【0027】
以上のようにして成形された本発明の自動車内装部材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品は、成形品中、融点が60℃〜80℃のマイクロカプセル化パラフィンワックスを0〜28.7重量%、好ましくは、0.60〜14.4重量%、シラスバルーンを0〜21.5重量%、好ましくは3.2〜21.5重量%含み、必要に応じて、さらに遮熱顔料を好ましくは0.32〜2.2重量%含む。
【実施例】
【0028】
以下、ステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料で、実施例、比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例において、特記しない限り、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0029】
[ステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料(ポリオール混合物、発泡剤、ポリイソシアネート化合物)並びに成形条件]
(1)ポリオール混合物
ポリエーテルポリオール 90部(グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを付加した水酸基価35mgKOH/g)
エチレングリコール 6.1部
トリエチレンジアミンの33%エチレングリコール溶液 0.15部
ジブチル錫ジラウレート 0.01部
Toyocat ET 1.3部
シリコーン整泡剤 0.02部
着色剤 1.8部
(2)水 0.35部
(3)ポリイソシアネート化合物
カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート
(NCO含量29%、粘度40mPa・s/25℃)
(4)(1)ポリオール混合物と(2)水の合計100部に対する(3)ポリイソシアネート化合物使用量は45.8部(NCOインデックス105)
(5)反応性(ライズタイム):33秒
ハンドミキシング
ポリ容器発泡(フリーライズドフォーム)
ポリウレタン樹脂配合原料温度:25℃
(6)成形条件
ハンドミキシングにてポリ容器で攪拌混合後、成形型へ注入(オープン注入)
ポリウレタン樹脂配合原料温度:25℃
成形型:スチール製平板状型(型サイズ200×200×10mm)
成形型温度: 60℃
脱型時間: 型に原料を注入してから120秒後に脱型(離型)
成形品密度: 0.5g/cm3
【0030】
[ポリウレタン樹脂成形品の評価方法]
1)赤外線照射試験装置(島津製作所製:TBE−2HW−2G6C)により、車室内条件を再現させ、その条件の下にサンプル成形品をおき実施した。設定温度は車室内に配設された内装部品の表面温度を想定している。なお、雰囲気温度は、設定温度到達時で、設定温度よりもおよそ20℃低い温度であった。
昇温速度:25℃→80℃ 30分
保持時間:30分
降温速度:80→25℃ 30分
時間毎にサンプル成形品の表面温度を測定し、表面温度が低いほど効果があり、30分間保持後の温度が低いほうが、抑制効果の持続性が高いことを示す。
2)熱移動流速(Q−MAX)値の測定(カトーテック製:フィンガーロボットサーモラボKES−F7)
試験条件
サンプル成形品を80℃の恒温槽に30分放置し、取出し直後、該表面にセンサーを接触させQ−MAX値を測定する。Q−MAX値が大きいほど熱く感じやすい。センサー表面温度は人間の体温を想定して、35℃に設定した。この設定条件でのQ−MAX値は、乗員の手指がサンプル成形品に触れた時の熱さの感覚を近似的に評価することができる。
【0031】
実施例1
表1に示す融点75℃のパラフィンワックスをマイクロカプセル化した潜熱蓄熱剤(以後、パラフィンワックスをマイクロカプセル化した潜熱蓄熱剤を「MC化PW」と言う)プレサーモC−75(大和化学社製)をポリオール混合物100部に対して10部(ポリウレタン樹脂成形品中6.4重量%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料および成形条件にて成形品を得た。
【0032】
比較例1〜4
表1に示す融点9℃、31℃、58℃のMC化PW並びにマイクロカプセル化されていない融点83℃のパラフィンワックス(PW)をポリオール混合物100部に10部(ポリウレタン樹脂成形品中6.4重量%)添加し用いた以外は、実施例1と同様にして成形品を得た。
【0033】
【表1】


【0034】
実施例1と比較例1〜4のサンプル成形品について、前記昇温条件で想定車室内温度が設定温度80℃に到達した時のサンプル成形品の表面温度との差、及び想定車室内温度を30分間保持した後、サンプル成形品の表面温度との差を評価した試験結果を表2に示す。
【0035】
【表2】


【0036】
実施例2〜4
実施例1で使用した融点75℃のMC化PWを、ポリオール混合物100部に、20部(ポリウレタン樹脂成形品中12.1重量%)、30部(ポリウレタン樹脂成形品中17.1重量%)、40部(ポリウレタン樹脂成形品中21.5重量%)添加し、実施例1と同様にして成形品を得た。また、実施例1においてMC化PWを添加しない以外は実施例1と同様にして得た成形品である比較例5と併せてその結果を表3に示す。
【0037】
【表3】


【0038】
実施例5、6
ポリオール混合物100部に実施例1で使用した融点75℃のMC化PWを5部(ポリウレタン樹脂成形品中3.2重量%)、35μm径及び80μm径のシラスバルーンを5部(ポリウレタン樹脂成形品中3.2重量%)添加し、実施例1と同様に成形品を得た。その結果を表4に示す。
【表4】


【0039】
実施例7〜9
MC化PWの添加に代えて、ポリオール混合物100部に80μm径のシラスバルーンがそれぞれ10部(ポリウレタン樹脂成形品中6.4重量%)、20部(ポリウレタン樹脂成形品中12.1重量%)、30部(ポリウレタン樹脂成形品中17.1重量%)となるように添加した以外は実施例1と同様にして成形品を得た。MC化PW及びシラスバルーンともに無添加の比較例5と併せてその結果を表5に示す。
【0040】
【表5】


【0041】
実施例10、11
実施例1の条件で、ポリオール混合物100部に、MC化PW10部(ポリウレタン樹脂成形品中6.4重量%)、遮熱顔料(AB820及びAG235)を表7に示すようにそれぞれ別に1.44部(ポリウレタン樹脂成形品中0.9重量%)添加し、実施例1と同様にして成形品を得た。その結果を表6に示す。
【0042】
【表6】



【表7】


【0043】
実施例12,13
実施例1で得た成形品表面に表9に示すように近赤外領域に反射率の高い塗料である遮熱塗料を20μmの膜厚で塗布した。その結果を表8に示す。本結果より、近赤外領域に反射率の高い塗料を選定すれば、より温度上昇の抑制効果が大きいことが分かる。なお、表8中の比較例6は、MC化PW、シラスバルーン、遮熱顔料のいずれも含有しないものに塗布されている。
【0044】
【表8】



【表9】


【0045】
実施例14
実施例11で得た成形品表面に実施例12の遮熱塗料を塗布した。その結果を表10に示す。
【0046】
実施例15
ポリオール混合物100部に、MC化PWの添加に代えて80μm径のシラスバルーンを10部(ポリウレタン樹脂成形品中6.4重量%)、遮熱顔料(タイプAG235)を1.44部(ポリウレタン樹脂成形品中0.9重量%)添加した以外は、実施例1と同様にして成形品を得た。その得た成形品を表面に実施例12の遮熱塗料を塗布した。その結果を表10に示す。
【0047】
実施例16
ポリオール混合物100部に、融点75℃のMC化PWを5部(ポリウレタン樹脂成形品中3.2重量%)、80μm径のシラスバルーンを5部(ポリウレタン樹脂成形品中3.2重量%)、遮熱顔料(AG235)を1.44部(ポリウレタン樹脂成形品中0.9重量%)添加し実施例1と同様にして成形品を得た。その成形品の表面に実施例12の遮熱塗料を塗布した。その結果を表10に示す。
【0048】
比較例7
ポリオール混合物100部に、MC化PWの添加に代えて遮熱顔料(AG235)を1.44部(ポリウレタン樹脂成形品中0.98重量%)添加した以外は、実施例1と同様にして成形品を得た。その成形品の表面に実施例11の遮熱塗料を塗布した。その結果を表10に示す。
【表10】


【0049】
[Q−MAX値の測定結果]
【表11】


表11より比較例5のポリウレタン樹脂成形品に対してマイクロカプセル化パラフィンワックス(実施例1)、シラスバルーン(実施例7)、及びマイクロカプセル化パラフィンワックスとシラスバルーン(実施例6)を含むことにより、成形品に手指を触れたときの熱さあるいは冷たさの感覚を緩和することができることがわかる。なお、Q−MAX値で0.1以上の差があれば、乗員がその熱さ、冷たさの感覚の相違を感じとることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、触媒、鎖延長剤、およびその他の助剤を含むポリオール混合物とポリイソシアネート化合物から自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品を製造する方法において、融点が60℃〜80℃のマイクロカプセル化パラフィンワックス及び/又はシラスバルーンを、前記ポリオール混合物及び/又はポリイソシアネート化合物にさらに含むことを特徴とする自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
【請求項2】
前記融点が60℃〜80℃のマイクロカプセル化パラフィンワックス及び/又はシラスバルーンを前記ポリオール混合物に含む請求項1に記載の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
【請求項3】
シラスバルーンが粒径35μm〜80μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
【請求項4】
前記ポリオール混合物がさらに遮熱顔料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法により該成形品を製造し、次いで、得られた成形品樹脂表面に遮熱塗料を10μm〜100μmで塗布することを特徴とする自動車内装材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品の製造法。
【請求項6】
少なくとも融点が60℃〜80℃のマイクロカプセル化パラフィンワックスを0〜28.7重量%、シラスバルーンを0〜21.5重量%(ただし、いずれも0重量%と成る場合は除く)含む自動車内装部材用定温保持ポリウレタン樹脂成形品。

【公開番号】特開2009−286816(P2009−286816A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137552(P2008−137552)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】