説明

自動車内装部品成形体

【課題】柔軟性を有し、べたつきが無く、良好な型シボ転写性を有することで、触感と製品外観に優れ、耐傷つき性にも優れた自動車内装部品を提供する。
【解決手段】 (i)〜(v)の要件を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)20〜90重量%と、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマー(成分イ)10〜80重量%とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物を、熱成形してなり、且つ特性1および2を有することを特徴とする自動車内装部品など。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独重合体成分またはプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜95重量%、第2工程でプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を5〜70重量%、逐次重合する。
(ii)MFRが0.5〜200g/10分。
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃。
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4。
(v)温度−損失正接曲線でtanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
(特性1)学振型染色物摩耗堅ろう度試験前後の表面色差が3以下である。
(特性2)JIS K6301によるA硬度が95以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の組成からなり、柔軟性を有し、べたつきが無く、型に施されたシボ等の転写性が良好で触感と製品外観に優れ、耐傷つき性にも優れた自動車内装部品成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装部品において、利用者がドアパネル周囲のグリップやアームレストといった触れる頻度が高い部品には、意匠性や触感を良くするため柔軟性を有した柔軟な熱可塑性樹脂が使用されている。そのような部品には、柔軟で触感と製品外観が良く、加えて摩擦などに対して傷付き難い特性が求められている。
このような部品には、従来から、ポリ塩化ビニルに可塑剤を添加することにより、柔軟性を調整する技術が使われてきたが、リサイクル性や焼却時の燃焼ガスの有害性や可塑剤が揮発して窓ガラスを曇らせるなどの懸念があった。
【0003】
そのため、例えば、特許文献1などにより公知であるオレフィン系の熱可塑性エラストマーが代替材として使用されてきている。
上記オレフィン系エラストマーの活用技術として、特許文献2には、柔軟性を付与するため、オイルを添加する方法が提案されている。また、特許文献3には、耐傷つき性を改善するために、有機過酸化物で部分架橋する方法などが提案されている。
しかしながら、これまで提案されている熱可塑性エラストマーに、オイル添加や架橋による柔軟性や耐傷つき性の改善技術には、オイルの滲みだしによるべたつきやガラスの曇り、流動性の低下など問題があった。
また、樹脂自体を柔らかくする方法としては、例えば、特許文献4に、低エチレン含量エチレン−プロピレンランダム共重合部と、高エチレン含量エチレン−プロピレンランダム共重合部よりなり、高エチレン含量エチレン−プロピレンランダム共重合部の割合が20〜70重量%であるポリプロピレンブロック共重合体10〜80重量部と、オレフィン系共重合体ゴム90〜20重量部とからなる熱可塑性エラストマー組成物を用いることが提案されているが、耐傷つき性や転写性が不十分であるという問題がある。
【0004】
上記金型シボ模様などの転写性の改善について、特許文献5には、シボ保持率が改良された工業部品用表皮材が提案されているが、表皮を基材に貼り合わせる工程を必要とするため、製品コストが大きくなるという問題がある。また、特許文献6には、樹脂基材と特定の組成物を用いた表皮部を射出成形により一体的に融着し、表皮部表面を特定の塗料を用いた塗膜部で被覆処理することで、シボ外観が良好な部品を得る方法が提案されているが、塗装による被覆処理の工程が発生するため製品コストが大きくなる。
さらに、特許文献7には、シボ転写率が高いことを特長とした技術が提案されているが、金型温度を60〜100℃と高温設定によるものであり、冷却が遅くなるため成形サイクルが長くなる問題がある。
したがって、上記の問題点を解決して、柔軟性を有し、べたつきが無く、良好な金型シボ転写性を有することにより、触感と製品外観に優れ、しかも耐傷つき性に優れた自動車内装部品が熱望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭48−26838号公報
【特許文献2】特開平6−57065号公報
【特許文献3】特開平8−34297号公報
【特許文献4】特開平5−271493号公報
【特許文献5】特開平6−136189号公報
【特許文献6】特開平6−143332号公報
【特許文献7】特開2006−316103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の現状に鑑み、特定の組成からなる樹脂を使用することにより、柔軟性を有し、べたつきが無く、良好な型シボ転写性を有することで、触感と製品外観に優れ、耐傷つき性にも優れた自動車内装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン系重合体に所定の改質材を用いることにより、自動車内装用部品に好適な柔軟性を有し、べたつきが無く、型シボ転写性が良好で、触感と製品外観に優れ、耐傷つき性にも優れた成形体を得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記(i)〜(v)の要件を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)20〜90重量%と、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマー(成分イ)10〜80重量%とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物を、熱成形してなり、且つ特性1および2を有することを特徴とする自動車内装部品が提供される。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独重合体成分またはエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜95重量%、第2工程で成分(A)よりも3〜20重量%多いエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を5〜70重量%、逐次重合することにより得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5〜200g/10分の範囲にある。
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃の範囲にある。
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
(特性1)耐受傷性として、JIS L0849に準拠し荷重500gの条件にて学振型染色物摩耗堅ろう度試験前後の表面色差が3以下である。
(特性2)JIS K6301によるA硬度が95以下である。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、下記(i)〜(v)の要件を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)20〜90重量%と、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマー(成分イ)10〜80重量%とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物100重量部に対して、発泡剤(成分ウ)0.05〜10重量部を添加した発泡性樹脂組成物を、熱成形してなり、且つ特性1および3を有することを特徴とする自動車内装部品が提供される。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独重合体成分またはエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜95重量%、第2工程で成分(A)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を5〜70重量%、逐次重合することにより得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5〜200g/10分の範囲にある。
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃の範囲にある。
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
(特性1)耐受傷性として、JIS L0849に準拠し荷重500gの条件にて学振型染色物摩耗堅ろう度試験前後の表面色差が3以下である。
(特性3)日本ゴム協会標準規格SRIS 0101に準拠したアスカーC硬度が90以下である。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、熱成形は、射出成形であることを特徴とする自動車内装部品が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、表面の一部又は全部に、シボ加工が施されていることを特徴とする自動車内装部品が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、金型シボ面の表面粗度(Ram)と自動車内装部品シボ面の表面粗度(Rap)とが関係式(1)を満たすことを特徴とする自動車内装部品が提供される。
|Ram−Rap| ≦ 10μm (1)
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動車内装部品は、前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)に対し、前記熱可塑性エラストマー(成分イ)を配合した熱可塑性樹脂組成物を、熱成形してなり、このような組成物を使用することにより、従来のプロピレン系樹脂組成物では、実現しえなかった、優れた柔軟性、べたつきが無く、型シボ転写性が良く、耐傷つき性に優れた自動車内装部品成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】TREFによる溶出量及び溶出量積算を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の自動車内装部品は、下記(i)〜(v)の要件を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)20〜90重量%と、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマー(成分イ)10〜80重量%とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物を、或いはプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物100重量部に対して、さらに、発泡剤(成分ウ)0.05〜10重量部を添加した発泡性樹脂組成物を、熱成形してなり、且つ特性1および2、或いは特性1および3を有することを特徴とする。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独重合体成分またはエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜95重量%、第2工程で成分(A)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を5〜70重量%、逐次重合することにより得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5〜200g/10分の範囲にある。
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃の範囲にある。
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
(特性1)耐受傷性として、JIS L0849に準拠し荷重500gの条件にて学振型染色物摩耗堅ろう度試験前後の表面色差が3以下である。
(特性2)JIS K6301によるA硬度が95以下である。
(特性3)日本ゴム協会標準規格SRIS 0101に準拠したアスカーC硬度が90以下である。
以下、本発明に係る組成物を構成する成分などについて、説明する。
【0015】
[I]プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)
1.プロピレン−エチレンブロック共重合体の性状
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)は、第1工程で、プロピレン単独重合体成分又はエチレン含量7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜95wt%重合した後、第2工程で、第1工程よりも3〜20wt%多いエチレン量を含むプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を70〜5wt%逐次重合することで得られる。
なお、ここでいうプロピレン−エチレンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)(以下、成分(A)という。)と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)(以下、成分(B)という。)を逐次重合することより得られる、通称でのブロック共重合体であり、必ずしも成分(A)と成分(B)とが完全にブロック状に結合されたものでなくても良い。
【0016】
(1)成分(A)中のエチレン含量:[E]A
第1工程で製造される成分(A)は、製品(ペレット)のべたつきを抑制し、耐熱性を発現するために、融点が比較的高い成分であり、結晶性を有するプロピレン単独重合体又はエチレン含量が7wt%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体である必要がある。エチレン含量が7wt%を超えると、融点が低くなりすぎ、製品の耐熱性を悪化させる恐れがあり、耐熱性が低下すると、摩擦熱で製品の表面が軟化して傷として残りやすい。エチレン含量は、5wt%以下が好ましく、3wt%以下が更に好ましい。尚、ペレットがべたつくと、保管時、成形時にペレット同士がくっついたりして、取り扱いが大変になることもある。
【0017】
(2)成分(B)中のエチレン含量:[E]B
第2工程で製造される成分(B)は、プロピレン−エチレンブロック共重合体中でゴム弾性成分の役割を有し、柔軟性、耐衝撃性を付与するために必要な成分である。
成分(B)のエチレン含量の範囲は、上記効果を十分に発揮するために、成分(A)のエチレン含量との差[E]B−[E]A([E]gap)によって規定される。[E]B−[E]Aは、3〜20wt%の範囲であることが必要であり、好ましくは6〜18wt%、更に好ましくは8〜15wt%である。
[E]gapが、3wt%以下の場合、耐衝撃性が充分でなく好ましくない。また、20wt%を超えると、耐傷付き性が悪化する。耐傷付き性の悪化は、第1工程で製造される成分(A)との相溶性が悪くるためと、考えられる。
【0018】
(3)成分(A)の割合:W(A)、および成分(B)の割合:W(B)
プロピレン−エチレンブロック共重合体を構成する成分(A)の割合であるW(A)および成分(B)の割合であるW(B)の含有量比は、W(A)が30〜95wt%でありW(B)が70〜5wt%の範囲にある必要がある。
W(A)の割合が30wt%未満であると、製品のべたつき発生、かつ耐熱性が低下する恐れがある。他方、W(A)の割合が95wt%を超えると、ゴム弾性が不十分となり耐衝撃性が不十分となる恐れがある。好ましくは、W(A)の割合が35〜85wt%、更に好ましくは40〜75wt%の範囲である。
【0019】
(4)tanδ曲線のピークによる規定
本発明においては、相溶性を良好に保ち、ベタつきが無く、型の凹凸への追随性、耐傷つき性を良好に維持するために、使用するプロピレン−エチレンブロック共重合体を構成する成分(A)と成分(B)とが相分離していないことが必要である。相溶性が低いと、成分(A)と成分(B)とが相分離形態をとり、ゴム成分が粒子状に製品表面に現れやすくなる。そのため、ひっかきや摩擦により傷が目立ち、ゴム粒子の弾性で金型転写が不十分となることが考えられる。相分離の条件は、エチレン含量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、上記のエチレン含量に関する規定に加えて、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線のピークに関する規定が必要となる。
【0020】
プロピレン−エチレンブロック共重合体が相分離構造を取る場合には、成分(A)に含まれる非晶部のガラス転移温度と、成分(B)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。逆に、相溶性である場合には、両成分は、分子のオーダーで混合しており、両成分のガラス転移温度の中間的な温度に単一のピークを有する。すなわち、相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線において判別可能であり、相溶性を維持するためには、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが必要である。
固体粘弾性測定とは、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは、周波数は1Hzを用い、測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは、0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると、0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に、0℃以下でのtanδ曲線のピークは、非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
【0021】
(5)[E]Aと[E]B及び各成分量W(A)とW(B)の特定
成分(A)、(B)の各エチレン含量及び量は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを特定するためには、以下の分析を用いることが望ましい。
【0022】
(5−1)温度昇温溶離分別(TREF)による各成分量W(A)とW(B)の特定
プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
【0023】
本発明におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、成分(A)と(B)各々の結晶性に大きな違いがあり、また、メタロセン触媒を用いて製造されることで各々の結晶性分布が狭くなっていることから、双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く判別することが可能である。
具体的な方法を、図1のTREFによる溶出量及び溶出量積算を示す図を用いて、説明する。TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、成分(A)と(B)は、結晶性の違いにより各々T(A)とT(B)にその溶出ピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(C)(={T(A)+T(B)}/2)において、ほぼ分離が可能である。
【0024】
また、TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では、−15℃であるが、成分(B)の結晶性が非常に低いあるいは非晶性成分の場合には、本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(この場合には、測定温度下限(すなわち−15℃)において溶媒に溶解した成分(B)の濃度は検出される。)
このとき、T(B)は、測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することができないため、このような場合には、T(B)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(C)までに溶出する成分の積算量をW(B)wt%、T(C)以上で溶出する部分の積算量をW(A)wt%と定義すると、W(B)は、結晶性が低いあるいは非晶性の成分(B)の量とほとんど対応しており、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(A)は、結晶性が比較的高い成分(A)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線と、そこから求められる上記の各種の温度や量の算出の方法は、図1に例示するように行う。
【0025】
(5−2)TREF測定方法
本発明において、TREFの測定は、具体的には以下のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
【0026】
(5−3)各成分中のエチレン含量[E]Aと[E]Bの特定
(イ)成分(A)と成分(B)の分離
先のTREF測定により求めたT(C)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(C)における可溶成分(B)とT(C)における不溶成分(A)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules、21 314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本発明において以下の方法を用いた。
【0027】
(ロ)分別条件
直径50mm、高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(C)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(C)に保持したまま、T(C)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(C)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで、10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒(o−ジクロロベンゼン)を20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(C)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーをろ過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
【0028】
(ハ)13C−NMRによるエチレン含量の測定
上記分別により得られた成分(A)と(B)それぞれについてのエチレン含有量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400または同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
【0029】
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules,17 1950 (1984)等を参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は、下表の通りである。表中Sαα等の記号は、Carmanら(Macromolecules,10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
【0030】
【表1】

【0031】
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) (1)
[PPE]=k×I(Tβδ) (2)
[EPE]=k×I(Tδδ) (3)
[PEP]=k×I(Sββ) (4)
[PEE]=k×I(Sβδ) (5)
[EEE]=k×[I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4] (6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば、[PPP]は、全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。従って、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 (7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)は、Tββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
【0032】
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明のプロピレンランダム共重合体には、少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/または1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
【0033】
【表2】

【0034】
正確なエチレン含有量を求めるには、これら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また、異種結合量が少量であることから、本発明のエチレン含有量は、実質的に異種結合を含まないチーグラー触媒で製造された共重合体の解析と同じく、(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は、以下の式を用いて行う
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
【0035】
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量[E]Wは、上記より測定された成分(A)と(B)それぞれのエチレン含量[E]Aと[E]B及びTREFより算出される各成分の重量比率W(A)とW(B)wt%から、以下の式により算出される。
[E]W={[E]A×W(A)+[E]B×W(B)/100 (wt%)
【0036】
(6)メルトフローレート(MFR)
本発明で使用される(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.5〜200g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、更に好ましくは2〜35g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では、成形が困難になり、200g/10分を超えると、耐衝撃性が期待できなくなる。
メルトフローレート(MFR)は、(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体の重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度230℃、荷重21.2N(2.16kg)で測定する値である。
【0037】
(7)融解ピーク温度(Tm)
本発明で使用される(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体の示差走査熱量計(DSC)により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110〜150℃の範囲である必要があり、120〜140℃であるのが好ましい。Tmが110℃未満のものは、溶融されたプロピレン系樹脂の冷却固化速度が遅く、成形性を悪化させる恐れがあるため、好ましくなく、一方、150℃を超えると、耐衝撃性が悪くなる恐れがあるため、好ましくない。
Tmを調整するには、重合反応系へ供給するエチレンの量を制御することにより、容易に調整することができる。
ここで、Tmの具体的測定は、示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル量5mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
【0038】
(8)分子量分布(Mw/Mn)
本発明で使用される(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体のゲルパーミエーション(GPC)法により測定された分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜4の範囲である必要があり、1.8以上3未満であるのが好ましい。Mw/Mnが1.5未満のものは、現在の重合技術では得難く、一方、4を超えると、製品(ペレット)がべたつく恐れがあるため好ましくない。
プロピレン−エチレンブロック共重合体の分子量分布を調整する方法は、狭くする場合は、後述のメタロセン系触媒を用いたり、プロピレン−エチレンブロック共重合体を重合後、有機過酸化物を使用し溶融混練することにより、調整することができる。一方、広くする場合は、2種以上のメタロセン触媒成分を併用させた触媒系や2種以上のメタロセン錯体を併用した触媒系を用いて重合することにより、調整することができる。
ここで、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)で求められ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られるものとする。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
【0039】
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380,F288,F128,F80,F40,F20,F10,F4,F1,A5000,A2500,A1000
各々が0.5mg/mlとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する、粘度式の[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4 α=0.7
PP:K=1.03×10−4 α=0.78
【0040】
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:WATERS社製、GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製、MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/min
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
【0041】
2.プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法
(1)メタロセン系触媒
本発明に用いられる(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する方法は、メタロセン系触媒の使用を必須とするものである。
プロピレン−エチレンランダム共重合体において、分子量分布及び結晶性分布が広いとベタツキやブリードアウトが悪化することは、当該業者に広く知られるところであるが、本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体においても、ベタツキ及びブリードアウトを抑制するために、分子量及び結晶性分布が狭くなるメタロセン系触媒を用いて重合されることが必要である。
【0042】
メタロセン系触媒の種類は、本発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定されるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(a)、(b)、及び必要に応じて使用する成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(a):下記の一般式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体、
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
【0043】
(2)成分(a)
上記成分(a)としては、下記一般式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C−aR)(C−bR)MeXY
(ここで、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。R、Rは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を示す。a及びbは置換基の数である。)
【0044】
詳しくは、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基あるいはオリゴシリレン基、又は炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
とRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を表す。
炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したRとRは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
【0045】
以上において記載した成分(a)の中で、本発明に用いられる(成分ア)プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
【0046】
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も、好適な化合物として例示される。
なお、触媒成分は、本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
【0047】
(3)成分(b)
成分(b)としては、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は、公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
【0048】
ここで、成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(b)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウムなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
【0049】
(4)成分(c)
必要に応じて、成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、
一般式:AlR3−a
(式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、Pは、水素、ハロゲンまたはアルコキシ基、aは、0<a≦3の数である。)
で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。
また、この他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0050】
(5)触媒の形成
成分(a)と成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。
その接触方法は、特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
(i)成分(a)と成分(b)を接触させる。
(ii)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(c)を添加する。
(iii)成分(a)と成分(c)を接触させた後に成分(b)を添加する。
(iv)成分(b)と成分(c)を接触させた後に成分(a)を添加する。
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
【0051】
本発明で使用する成分(a)と(b)及び(c)の使用量は、任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。また、成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。したがって、成分(a)に対する成分(c)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは10−5〜50、特に好ましくは10−4〜5の範囲内である。
【0052】
本発明の(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体の重合で使用される触媒は、予め、オレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。
使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(b)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0053】
(6)重合方法
(6−1)逐次重合
本発明に用いられる(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造実施するに際しては、成分(A)と成分(B)を逐次重合することが必要である。
従来のプロピレン−エチレン共重合体では、第1工程と第2工程で得られるプロピレン−エチレン共重合体のバランスを充分に配慮されたものがなく、柔軟性、耐衝撃性、耐傷付き性および金型転写性をバランス良く向上させたものがなかった。
そこで、本発明において、(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体は、第1工程と第2工程でエチレン含量が異なる成分を逐次重合したブロック共重合体であることが柔軟性・耐衝撃性、耐熱性、耐傷付き性および金型転写性の全てをバランスさせるために必要である。
また、本発明では、成分(B)として、分子量が低く単独ではべたつきやすい共重合体を用いる場合があるので、反応器への付着等の問題を防止するために、成分(A)を重合した後で、成分(B)を重合する方法を用いることが必要である。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から、連続法を用いることが望ましい。
【0054】
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより、単一の反応器を用いて成分(A)と成分(B)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いても良い。
連続法の場合には、成分(A)と成分(B)を個別に重合する必要から、2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本発明の効果を阻害しない限り成分(A)と成分(B)のそれぞれについて、複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いても良い。
【0055】
(6−2)重合プロセス
重合プロセスは、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
成分(B)は、炭化水素等の有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、成分(B)の製造に際しては、気相法を用いることが望ましい。
成分(A)の製造に対しては、どのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(A)を製造する場合には、付着等の問題を避けるために、気相法を用いることが望ましい。
従って、連続法を用いて、先ず成分(A)をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き成分(B)を気相法にて、重合することが最も望ましい。
【0056】
(6−3)その他の重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
第1工程で成分(A)、第二工程で成分(B)の逐次重合を行う場合、第二工程にて、系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する場合には、第二工程のエチレン−プロピレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については、各種技術検討がなされており、一例として特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などの公報を例示することができる。本発明にも、当該手法を適用することが望ましい。
【0057】
3.プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)の構成要素の制御方法
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体の各要素は、以下のように制御され、本発明の共重合体に必要とされる構成要件を満たすよう製造することができる。
【0058】
(1)成分(A)
成分(A)については、エチレン含量[E]Aを制御する必要がある。
本発明では、[E]Aを所定の範囲に制御するためには、第1工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量の関係は、用いるメタロセン触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により、必要とするエチレン含量[E]Aを有する成分(A)を製造することができる。
例えば、[E]Aを7wt%未満に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.3以下の範囲、好ましくは0.2以下の範囲とすればよい。
【0059】
(2)成分(B)
成分(B)については、エチレン含量[E]Bを制御する必要がある。
本発明では、[E]Bを所定の範囲に制御するためには、[E]Aと同様に、第二工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。例えば、[E]Bを3〜27wt%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.005〜6の範囲、好ましくは0.01〜3の範囲とすればよい。
【0060】
(3)W(A)とW(B)
成分(A)の量W(A)と成分(B)の量W(B)は、成分(A)を製造する第1工程の製造量と成分(B)の製造量の比を変化させることにより、制御することができる。例えば、W(A)を増やしてW(B)を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第二工程の製造量を減らせばよく、それは、第二工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより、容易に制御することができる。その逆も又同様である。
実際に条件を設定する際には、活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、本発明にて実施するエチレン含有量[E]A及び[E]Bの範囲においては、一般にエチレン含有量を高くするために、プロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると、重合活性が高くなり、同時に活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第二工程の活性を維持するために、第1工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、第1工程にて、エチレン含有量[E]Aを下げ、生産量W(A)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げる及び/又は重合時間(滞留時間)を短くする、あるいは第二工程にて、エチレン含有量[E]Bを上げ、生産量W(B)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げる及び/又は重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
【0061】
(4)ガラス転移温度Tg
本発明で用いられる(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体は、固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において求められるtanδ曲線がピークを示す温度であるガラス転移温度Tgが、0℃以下で単一のピークを持つ必要がある。
Tgが単一のピークを持つためには、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aと成分(B)中のエチレン含有量[E]Bの差の[E]gap(=[E]B−[E]A)を20wt%以下、好ましくは15wt%以下にし、実際の測定において、Tgが単一のピークとなる範囲まで、[E]gapを小さくすればよい。
【0062】
成分(A)中のエチレン含有量[E]Aに応じて、成分(B)中のエチレン含量[E]Bを適正範囲に入るよう、成分(B)の重合時のプロピレンに対するエチレンの供給重量比を設定することで、所定の[E]gapを有するプロピレン−エチレンブロック共重合体を得ることができる。
また、本発明に用いられるような相分離構造を取らない(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体のTgは、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aと成分(B)中のエチレン含有量[E]B、及び両成分の量比の影響を受ける。本発明においては、成分(B)の量は5〜70wt%であるが、この範囲において、Tgは成分(B)中のエチレン含有量[E]Bの影響をより強く受ける。
すなわち、Tgは、非晶部のガラス転移を反映するものであるが、本発明に用いられる(成分ア)プロピレン−エチレンブロック共重合体において、成分(A)は、結晶性を持ち比較的非晶部が少ないのに対し、成分(B)は、低結晶性あるいは非晶性であり、そのほとんどが非晶部であるためである。
したがって、Tgの値は、ほぼ[E]Bによって制御され、[E]Bの制御法は、前述したとおりである。
【0063】
[II]熱可塑性エラストマー(成分イ)
本発明の自動車内装部品において、配合される熱可塑性エラストマー(成分イ)は、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマーである。エラストマーの配合により、成形体において、柔軟性や衝撃強度などを発現させることができる。
【0064】
1.種類
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(エチレンプロピレンゴム;EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー、プロピレン・ブテン共重合体エラストマー(PBR)、プロピレン・ヘキセン共重合体エラストマー(PHR)、プロピレン・オクテン共重合体エラストマー(POR)などのプロピレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、CEB、CEBC(結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン・ブテンブロックを有するブロック共重合体、オレフィン結晶−エチレン/ブチレン共重合体−オレフィン結晶)等が挙げられる。
【0065】
また、スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体(SBS)、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体(SIS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)などのスチレン系エラストマーなどが挙げられる。
これらのエラストマーは、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0066】
2.物性
本発明の熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(230℃、2.16kg)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜60g/10分である。
【0067】
3.配合
プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)に対する熱可塑性エラストマー(成分イ)の配合比率は、成分アと成分イとの合計量を100重量%として、10〜80重量%であり、好ましくは20〜70重量%であり、より好ましくは30〜60重量%であり、さらに好ましくは40〜50重量%である。
熱可塑性エラストマー成分が80重量%を超えると、柔軟性は高いものの、マトリックスは、熱可塑性エラストマーが連続相となるマトリックスになるので、弾性による戻りが大きくなり、金型転写性が低下し、表面がゴムで覆われるため、べたつくなど触感が低下する。一方、10重量%未満では、耐傷つき性や型転写性は保持されるものの、柔軟性が不足し、成形品が硬く感じられるなどの問題が発生する。
【0068】
[III]添加剤
本発明においては、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている各種酸化防止剤、造核剤、中和剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、無機充填剤、有機充填剤等の添加剤を配合することができる。
具体的には、酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0069】
さらに、下記一般式(1)や下記一般式(2)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−ワン等のラクトン系酸化防止剤、下記一般式(3)等のビタミンE系酸化防止剤を挙げることができる。
【0070】
【化1】

【0071】
【化2】

[式中のRとRは、炭素数14〜22のアルキル基である。]
【0072】
【化3】

【0073】
また、造核剤の具体例としては、公知の造核剤が使用できる。例えば、ソルビトール系造核剤、アミド系造核剤、有機リン酸塩系造核剤および芳香族リン酸エステル類、タルクなどの造核剤を使用する事ができる。
【0074】
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト、マグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩リチウムアルミニウム複合水酸化物塩等が挙げられる。
【0075】
滑剤の具体例としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸ブチル、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0076】
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0077】
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等の光安定剤を挙げることができる。
【0078】
無機充填剤としては、アルミナ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、石膏、タルク、マイカ、カオリン、クレー、酸化チタン、アルミナ等を挙げることができる。
無機充填剤は、成分アと成分イの合計量100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは、1〜10重量部を任意に添加することもできる。
【0079】
[IV]プロピレン−エチレンブロック共重合体組成物
本発明に係るプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)と熱可塑性エラストマー(成分イ)、および必要に応じて用いる他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合することにより得ることができる。混合した後、さらに、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で180〜280℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
【0080】
[V]自動車内装部品
本発明の自動車内装部品としては、ドアトリム、フロントピラーガーニッシュ、センターピラーガーニッシュ、リアクォータトリム、キッキングプレート、ドアポケット、ピラーガーニッシュ、エアバッグカバー、ドアグラブ、コンソールボックス、シフトノブ、アシストグリップ、シートアジャスタ、ルーバーガーニッシュ、サンバイザー、バックミラーカバー、ルームミラーカバー、カップホルダー、コインボックス、レジスト、灰皿アッパー、ドアフレームガーニッシュ、アームレスト、コラムカバー、インナーパネル、ガレージオープナー、インストルメントパネル、ヘッドライナーパネル等が挙げられる。
【0081】
本発明の自動車内装部品は、プロピレン−エチレンブロック共重合体組成物を、例えば90〜350℃に加熱し、可塑化して、所望の形状に賦形するいわゆる熱成形によって、製造することができる。
熱成形としては、射出成形、押出成形、フィルム成形、ブロー成形、繊維成形等の方法が挙げられる。
【0082】
本発明の自動車内装部品は、発泡されていてもよい。
発泡された自動車内装部品は、プロピレン−エチレンブロック共重合体組成物100重量部に対して、発泡剤を0.05〜10重量部添加した発泡性樹脂組成物を、熱成形することにより得ることができる。
【0083】
発泡剤としては、化学発泡剤、物理発泡剤およびマイクロカプセルなどが挙げられる。
化学発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−ジフェニルジスルホニルアジドなどの有機系化学発泡剤が挙げられる。
これらの発泡剤には、発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするなどのために必要に応じて、気体の発生を促すクエン酸の様な有機酸やクエン酸ナトリウムの様な有機酸金属塩などを使用、併用添加することもでき、また、タルク、炭酸リチウムのような無機微粒子等の造核剤を添加することもできる。
【0084】
また、物理発泡剤としては、例えば、不活性ガス、低沸点有機溶剤の蒸気、ハロゲン系不活性溶剤の蒸気、炭酸ガス、空気などが挙げられる。
不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アスタチンなどが挙げられ、また、低沸点有機溶剤の蒸気としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタンなどが挙げられ、さらに、ハロゲン系不活性溶剤の蒸気としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、フロン、三フッ化窒素などが挙げられる。
【0085】
マイクロカプセルは、種々の熱可塑性樹脂からなるシェル内に発泡剤(膨張剤)を内包したものである。
発泡剤(膨張剤)としては、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロエタンの様な特定フレオン類や代替フレオン類、n−ペンタン、イソペンタン、イソブタン、石油エーテルの様な炭化水素類、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエチレンの様な塩素化炭化水素などが挙げられる。マイクロカプセル状発泡剤の平均粒径は、通常は2〜50μmである。
【0086】
本発明の自動車内装部品のJIS L0849に準拠して荷重500gの条件にて測定した、学振型染色物摩耗堅ろう度試験前後の表面色差は、3以下である。3を超えると、受傷後の傷が目立ちやすくなる。
また、本発明の自動車内装部品のJIS K6301に準拠して測定したショアーA硬度は、95以下、好ましくは80〜93である。ショアーA硬度が95を超えると、製品の触感が劣る。
【0087】
さらに、本発明の発泡された自動車内装部品は、上記の学振型染色物摩耗堅ろう度試験前後の表面色差の規定に加えて、日本ゴム協会標準規格SRIS 0101に準拠したアスカーC硬度が90以下、好ましくは80〜89である。
【0088】
本発明に係るプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物は、金型転写性に優れるため、金型が鏡面のときは、得られる自動車内装部品の表面の光沢は高くなる。一方、金型がシボ面のときは、得られる自動車内装部品の表面の光沢は低くなる。自動車内装部品は、高級感が高まるので、光沢が抑えられている方が望まれることから、表面(意匠面)の一部又は全部にシボ加工が施されていることが好ましい。
【0089】
さらに、本発明の自動車内装部品は、金型シボ面の表面粗度(Ram)と自動車内装部品シボ面の表面粗度(Rap)とが次の関係式(1)を満たしていることが好ましい。
|Ram−Rap| ≦ 10μm (1)
【実施例】
【0090】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、用いた物性測定は以下の方法で行い、プロピレン系重合体、造核剤及び他の添加剤(中和剤、滑剤)としては以下のものを使用した。
【0091】
1.測定法
(1)TREF
TREF測定方法は、前述した通りである。
[装置]
(TREF部):
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm、表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー、デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
【0092】
(試料注入部):
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部):
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部):
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
【0093】
[測定条件]
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速 :1mL/分
【0094】
(2)固体粘弾性測定
試料は、下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置は、レオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は、−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
(試験片の作成):
規格番号:JIS K7152(ISO294−1)
成形機:東洋機械金属社製TU−15射出成形機
成形機設定温度:ホッパ下から80,80,160,200,200,200℃
金型温度:40℃
射出速度:200mm/s(金型キャビティー内の速度)
射出圧力:800kgf/cm
保持圧力:800kgf/cm
保圧時間:40秒
金型形状:平板(厚さ2mm 幅30mm 長さ90mm)
【0095】
(3)各成分量の算出
TREFを用いて、前述した方法によって算出した。
【0096】
(4)エチレン含有量の算出
13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として、733cm−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含量を測定した。ペレットをプレス成形により約500μmの厚さのフィルムとしたものを用いた。
【0097】
(5)tanδ曲線のピーク
固有粘弾性測定により測定した。
【0098】
(6)MFR
JIS K7210に準じて、加熱温度230℃、荷重21.2N(2.16kg)にて測定した。
【0099】
(7)融解ピーク温度
セイコー社製DSCを用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
【0100】
(8)分子量分布
前述の方法で測定した。
【0101】
(9)表面硬度
JIS K6301に準拠しA硬度を測定し、95以下を良好とした。
【0102】
(10)発泡硬度
プロピレン−エチレンブロック共重合体組成物に、化学発泡剤マスターバッチ(永和化成社製ポリスレンEE25Cを5重量部配合し、FANUC社製「α−300」を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃、射出速度25〜220mm/秒、冷却時間30秒の条件にて縦400mm×横200mmで厚さ可変の平板形状の初期キャビティクリアランスを2mmへ射出し充填完了と同時にキャビティを3mmまで開き、1.5倍発泡させた試験片を作製する。
得られた発泡成形体を、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠しアスカーC硬度を測定し、90以下を良好とした。
【0103】
(11)耐受傷性(耐傷つき性)
長さ220mm、幅30mm、厚み3mmで表面皮シボ加工品試験片をJIS L0849記載の摩擦試験機II型(学振形)を用いて、以下の条件にて、実施し、試験前後のシボ面の変色度合いを、日本電色製分光式色差計(SE−2000)にて測定し、色差△E*≦3以下を良好と判定した。
JIS L0849記載の摩擦試験機II型試験条件:JIS L0849白綿布(JIS−L0803規定の3号綿)
荷重:500g
往復回数:1000回
摩擦速度:30回/分
試験温度:常温
【0104】
(12)シボ転写性
下記成形条件にて作製した皮シボ成形品のシボ粗さを、3Dレーザー式画像解析装置(キーエンス社VK−9500)を用いて、シボ粗さRaを測定し、金型と成形品の同一部位のシボ粗さの差が10μm以下を、転写性良好とした。
<成形条件>
成形機:東芝機械製 IS170FII
金型:120mm四方、厚み3mm、皮シボ加工仕上げ
条件:成形温度:200℃
金型温度:40℃
射出圧力:60MPa
保持圧力:40MPa
【0105】
2.使用材料
(1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)
下記の製造例1により、本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−1)を、また、下記の製造例2により、本発明で用いられるものとは異なるプロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−2)を得た。
【0106】
〔製造例PP−1〕
予備重合触媒の調製
(イオン交換性層状珪酸塩の化学処理):
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm 粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
【0107】
(イオン交換性層状珪酸塩の乾燥):
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状、内径50mm、加温帯550mm(電気炉)
かき上げ翼付き回転数:2rpm
傾斜角:20/520
珪酸塩の供給速度:2.5g/分
ガス流速:窒素、96リットル/時間
向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
【0108】
(触媒の調製):
撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。ここに、該珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。
次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71ML)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
【0109】
(予備重合/洗浄):
続いて、槽内温度を40℃昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71ML)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5600ml除いた。さらに、この操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mモル/リットル、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71ML)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従って、プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造を行った。
【0110】
第一工程:
第一工程では、内容積0.4mの攪拌装置付き液相重合層を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。液化プロピレンと液化エチレン、トリイソブチルアルミニウムをそれぞれ90kg/時、2.2kg/時、21.2g/時で連続的に供給した。水素供給量は、第一工程のMFRが目標の値となるように調節した。さらに、上記の予備重合触媒を、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)、5.4g/時となるように供給した。また、重合温度が65℃となるように重合槽を冷却した。
第一工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、BD(嵩密度)は0.46g/cc、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は1.5wt%であった。
【0111】
第二工程:
第二工程では、内容積0.5mの攪拌式気相重合槽を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。第一工程の液相重合槽より重合体粒子を含んだスラリーを連続的に抜き出し、液化プロピレンをフラッシングした後、窒素で昇圧して気相重合槽へ連続的に供給した。重合槽は、温度が80℃、プロピレンとエチレンと水素の分圧の合計が1.5MPaとなるように制御した。その際にプロピレンとエチレンと水素の分圧の合計に占めるプロピレンとエチレン及び水素の濃度は、それぞれ73.99vol%、26.00vol%、150volppmとなるように制御した。さらに、活性抑制剤としてエタノールを気相重合槽に供給した。エタノールの供給量は、気相重合槽に供給される重合体粒子に随伴して供給されるTIBA中のアルミニウムに対して、0.3mol/molとなるようにした。
こうして得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体を分析したところ、活性は7.6kg/g−触媒、BDは0.41g/cc、MFRは2.0g/10分、エチレン含有量は6.5wt%のPP−1を得た。
また、該PP−1は、成分(A)のエチレン含量1.5wt%、組成比50wt%、成分(B)のエチレン含量11.5wt%、組成比50wt%、tanδ曲線が−12.3℃に単一のピークを有するものであった。製造条件などを表3に示す。
【0112】
〔製造例PP−2〕
表3記載の条件で行った以外は、製造例PP−1に準拠して、第一工程でBD(嵩密度)は0.46g/cc、MFRは2.0g/10分、エチレン含有量は3.7wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合を得、第二工程でBDは0.41g/cc、MFRは2.0g/10分、エチレン含有量は11.7wt%のPP−2を得た。
また、該PP−2は、成分(A)のエチレン含量3.7wt%、組成比50wt%、成分(B)のエチレン含量19.7wt%、組成比50wt%、tanδ曲線が−12.4℃と−33℃の2つのピークを有するものであった。
【0113】
(2)熱可塑性エラストマー(成分イ)
(2−1)エチレン・α−オレフィン共重合体:
ENR7447:ダウ社製、密度が0.875g/cm、MFR(230℃、荷重21.2N)が10g/10minのエチレン・ブテン共重合体エラストマー
(2−2)スチレン系エラストマー:
ダイナロン1321P:JSR社製、密度が0.89g/cm、MFR(230℃、荷重21.2N)が10g/10minのHSBR:水添スチレンブタジエンラバー
【0114】
(3)化学発泡剤マスターバッチ(永和化成社製ポリスレンEE25C、発泡剤濃度20%、発生ガス量75〜90ml/2.5g(220℃恒温下×20min))…重炭酸ナトリウム・クエン酸系、低密度ポリエチレンベース
(4)中和剤:
(i)CAST:ステアリン酸カルシウム
(5)酸化防止剤:
(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:イルガノックス1010(IR1010;チバ社製)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン
(ii)リン系酸化防止剤:イルガフォス168(IF168;チバ社製)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)フォスファイト
【0115】
[実施例1、2、比較例1〜4]
プロピレン−エチレンブロック共重合体、熱可塑性エラストマー、添加剤(酸化防止剤、中和剤など)を表4、5に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度230℃でダイから押し出しペレット化した。得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度230℃、射出圧力600kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片を用い、物性を測定した。
また、発泡成形品は、得られたペレットと発泡剤マスターバッチを5重量部混合し、射出成形機:FANUC社製「α−300」、及びし金型:縦400mm×横200mmで可動型の位置調整により厚さ可変の平板形状のキャビティを有し、その初期キャビティクリアランス(T)が2.0mmのものを使用し、シリンダー温度210℃、金型温度40℃、射出速度25〜220mm/秒、冷却時間30秒の成形条件にて初期キャビティクリアランス(T)が2mmであって、コアバック後キャビティクリアランス(T)を、3mmとする型開き射出発泡成形方法にて発泡体を得た。
これらの評価結果などを表4、5に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
【表5】

【0119】
表4及び表5から明らかなように、実施例1は、本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)を60重量部にEBMを40重量部配合し、比較例3に比べ、ショアA硬度が低く、シボ転写性、耐傷つき性を保持して、物性バランスの優れた自動車内装部品成形体が得られることが判る。また、実施例2は、比較例4と比較して、物性バランスの優れた自動車内装部品成形体が得られることが判る。
比較例で使用しているPP−2は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)の要件のうち、(i)〜(iv)を満たすものの、tanδが2つのピークを持ち、要件(v)を満たしていない。これにより相分離していることで、耐傷つき性(耐受傷性)や型転写性が満足していないことがわかる。
また、比較例1は、エラストマー成分を配合していないので、成形体の硬度が高いことがわかる。さらに、比較例2は、本発明の範囲外のプロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−2)を使用し、本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア:PP−1)を使用していないので、物性バランスが悪いことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の自動車内装部品は、前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)に対し、前記熱可塑性エラストマー(成分イ)を配合した熱可塑性樹脂組成物からなり、このような組成物を使用することにより、従来のプロピレン系樹脂組成物では実現しえなかった、優れた柔軟性、型シボ転写性、耐傷つき性に優れた自動車内装部品を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)〜(v)の要件を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)20〜90重量%と、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマー(成分イ)10〜80重量%とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物を、熱成形してなり、且つ特性1および2を有することを特徴とする自動車内装部品。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独重合体成分またはエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜95重量%、第2工程で成分(A)よりも3〜20重量%多いエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を5〜70重量%、逐次重合することにより得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5〜200g/10分の範囲にある。
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃の範囲にある。
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
(特性1)耐受傷性として、JIS L0849に準拠し荷重500gの条件にて学振型染色物摩耗堅ろう度試験前後の表面色差が3以下である。
(特性2)JIS K6301によるA硬度が95以下である。
【請求項2】
下記(i)〜(v)の要件を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(成分ア)20〜90重量%と、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマー(成分イ)10〜80重量%とを含有するプロピレン−エチレンブロック共重合体組成物100重量部に対して、発泡剤(成分ウ)0.05〜10重量部を添加した発泡性樹脂組成物を、熱成形してなり、且つ特性1及び3を有することを特徴とする自動車内装部品。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独重合体成分またはエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜95重量%、第2工程で成分(A)よりも3〜20重量%多いエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を5〜70重量%、逐次重合することにより得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5〜200g/10分の範囲にある。
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃の範囲にある。
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
(特性1)耐受傷性として、JIS L0849に準拠し荷重500gの条件にて学振型染色物摩耗堅ろう度試験前後の表面色差が3以下である。
(特性3)日本ゴム協会標準規格SRIS 0101に準拠したアスカーC硬度が90以下である。
【請求項3】
熱成形は、射出成形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車内装部品。
【請求項4】
表面の一部又は全部に、シボ加工が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車内装部品。
【請求項5】
金型シボ面の表面粗度(Ram)と自動車内装部品シボ面の表面粗度(Rap)とが関係式(1)を満たすことを特徴とする請求項4に記載の自動車内装部品。
|Ram−Rap| ≦ 10μm (1)

【図1】
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【公開番号】特開2011−79924(P2011−79924A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232178(P2009−232178)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】