説明

自動車内部に流入する有害ガスの吸着剤組成物

【課題】
本発明は、自動車内部に流入する有害ガスを吸着して除去することができる吸着剤組成物に関し、自動車室内の空気調節装置やキャビンフィルターなどに有用であって、アルデヒド、アンモニア、トリメチルアミン、アセト酸などのような自動車内部に流入する主な有害ガスを吸着して有効に除去できる吸着剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明による自動車内部に流入する有害ガスの吸着剤組成物は、(a)球形の中空コア部とメゾ多孔性のカーボンシェル部とからなり、上記カーボンシェル部に遷移金属、遷移金属酸化物及びアルカリ金属塩からなる群より選択された何れか一つ以上の消臭物質が添着されたカーボンナノボールと、(b)イオン種がNH4+型であり、SiO2/Al23
のモル比が20ないし300であり、4級アンモニウム塩が担持されたゼオライトとを含み、上記ゼオライト:カーボンナノボールの含量比が重量比で1〜3:3〜8である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内部に流入する主な有害ガスを吸着して除去することができる吸着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代人にとって自動車は必須財である。公害が深刻になるにつれて、より快適な環境で自動車室内の空気を維持させようとする努力が続けられている。自動車内部に流入する主な有害ガスの発生源は次のように3つに大別することができる。第一は、車を制作する際に用いる塗料、接着剤などの材料から揮発する有害ガス、第二は、運転者を含む乗員と乗員の嗜好物(例えば、タバコ)より放出される物質、第三は、自動車の走行の際に、外部から室内に流入する物質である。したがって、自動車内部に流入する有害ガスとしては数千種のガスがあり得るが、代表的な有害ガスとしては、アセトアルデヒドやホルムアルデヒドなどのアルデヒド類、アセト酸、トリメチルアミン、アンモニアを例示することができる。
【0003】
この様な有害ガスが除去できる吸着剤としては、例えば、消臭物質が添着された活性炭が挙げられる(特許文献1:韓国公開特許第1999‐80808号参照)。また、球形の中空コア部とメゾ多孔性のカーボンシェル部とからなるカーボンナノボールに遷移金属などの消臭物質が添着された吸着剤(特許文献2:国際公開WO2004/058312号参照)や、イオン種がNH4+型でありSiO2/Al23のモル比が所定範囲であり4
級アンモニウム塩が担持されたゼオライト(特許文献3:韓国公開特許第2001‐78018号参照)を用いることができる。
【0004】
しかし、消臭物質が添着された活性炭は有害ガスの除去能力は大きくなく、消臭物質が添着されたカーボンナノボールはアルデヒドに対する除去能力に乏しい。また、前述したゼオライトはアルデヒドに対する除去能力には優れるが、自動車内部に流入する他の有害ガスに対する除去能力に乏しい。
【0005】
従って、自動車内部に流入する主な有害ガスの全てに対する除去能力に優れた吸着剤の開発が要求されている。
【特許文献1】韓国公開特許第1999‐80808号公報
【特許文献2】国際公開WO2004/058312号パンフレット
【特許文献3】韓国公開特許第2001‐78018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、アルデヒド、アンモニア、トリメチルアミン、アセト酸などのような自動車内部に流入する主な有害ガスを吸着して有効に除去できる吸着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような技術的課題を解決するために、本発明の自動車内部に流入する有害ガスの吸着剤組成物は、
(a)球形の中空コア部とメゾ多孔性のカーボンシェル部とからなり、上記カーボンシェル部に遷移金属、遷移金属酸化物及びアルカリ金属塩からなる群より選択された何れか一つ以上の消臭物質が添着されたカーボンナノボールと、
(b)イオン種がNH4+型であり、SiO2/Al23のモル比が20ないし300であ
り、4級アンモニウム塩が担持されたゼオライトとを含み、
上記ゼオライト:カーボンナノボールの含量比が重量比で1〜3:3〜8である。
【0008】
また、本発明は、
(a)球形の中空コア部とメゾ多孔性のカーボンシェル部とからなり、上記カーボンシェル部に遷移金属、遷移金属酸化物及びアルカリ金属塩からなる群より選択された何れか一つ以上の消臭物質が添着されたカーボンナノボールと、
(b)イオン種がNH4+型であり、SiO2/Al23のモル比が20ないし300であ
る、4級アンモニウム塩が担持されたゼオライトと、
(c)遷移金属、遷移金属酸化物及びアルカリ金属塩からなる群より選択された何れか一つ以上の消臭物質が添着された活性炭とを含み、
上記ゼオライト:カーボンナノボール:活性炭の含量比が重量比で1〜3:3〜8:3〜8である有害ガスの吸着剤組成物を提供する。
【0009】
本発明の吸着剤組成物において、カーボンナノボールの中空コア部の粒径は10ないし1000nmであり、カーボンシェル部の厚さは10ないし500nmであることが望ましく、ゼオライトの結晶構造はβ型であることが望ましい。
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
前述したように、種々の吸着剤が有害ガスの除去能力を有している。しかし、従来の吸着剤の各々は、特定種類の有害ガスの除去能力のみを有しているため、自動車内部に流入する主な有害ガスを除去できなかったり、有害ガスの除去能力に限界がある。
【0011】
本発明者らは、特定の消臭物質が添着されたカーボンナノボールとゼオライトとを所定割合で混合した吸着剤組成物が、自動車内部に流入する主な有害ガスのすべてを一定基準以上に除去できるだけでなく、除去能力もさらに上昇することを明らかにし本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の自動車内部に流入する有害ガスの吸着剤組成物は、(a)球形の中空コア部とメゾ多孔性のカーボンシェル部とからなり、上記カーボンシェル部に遷移金属、遷移金属酸化物及びアルカリ金属塩からなる群より選択された何れか一つ以上の消臭物質が添着されたカーボンナノボールと、(b)イオン種がNH4+型であり、SiO2/Al23のモ
ル比が20ないし300である、4級アンモニウム塩が担持されたゼオライトとを含むが、上記ゼオライト:カーボンナノボールの含量比は重量比で1〜3:3〜8である。
【0013】
前述した消臭物質が添着されたカーボンナノボールの製造方法は、国際公開WO2004/058312号(日本国特許出願第2004−562977号)に詳しく記載されており、本明細書にリファレンスとして統合される。カーボンナノボールは、中空のコア(Core)部分と殻である多孔性のシェル(Shell)部分とからなるボール(ball)形状の炭素構造体であって、シェル部に遷移金属、遷移金属酸化物、アルカリ金属塩またはこれらの混合物が添着されている。シェル部に形成されたメゾ多孔性の気孔は、多様な悪臭発生物質を吸着できるだけでなく、シェルの気孔及び内外の表面に添着された消臭物質は悪臭発生物質を化学的に吸着、破壊して消臭させる。また、カーボンナノボールの中空のコア部分には悪臭発生物質が捕集されるため、悪臭発生物質とシェルの内表面に添着された消臭物質間に十分な接触時間が付与されるだけでなく、消臭物質によって分解された分解生成物が外部空間へと放出されることによって発生する2次汚染現象を防止することができる。
【0014】
カーボンナノボールのシェル部に添着される遷移金属または遷移金属酸化物としては、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銀
(Ag)、金(Au)、バナジウム(V)、ルテニウム(Ru)、チタニウム(Ti)、クローム(Cr)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)などの遷移金属またはこれらの酸化物を挙げることができ、アルカリ金属塩としては、臭化ナトリウム(NaBr)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、臭化カリウム(KBr)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ素酸カリウム(KIO3)などを挙げることができるが、これらに限定されるのではない。カー
ボンナノボールの中空コア部の粒径やカーボンシェル部の厚さは工程条件によって調節できるが、望ましい粒径と厚さは、各々、10ないし1000nmの範囲、及び10ないし500nmの範囲である。
【0015】
前述した消臭物質が添着されたカーボンナノボールは、アンモニア、アセト酸、トリメチルアミンのような有害ガスの除去能力は優れているが、アセトアルデヒドやホルムアルデヒドなどのアルデヒド類の除去能力は多少劣る。このような問題点を補完するために、本発明者は、イオン種がNH4+型でありSiO2/Al23のモル比が20ないし300
であり、4級アンモニウム塩が担持されたゼオライトを前述した消臭物質が添着されたカーボンナノボールと混合するのだが、このようなゼオライトの製造方法に対しては韓国公開特許第2001‐78018号に詳しく記述されており、本明細書にリファレンスとして統合される。使用するゼオライトの結晶構造としては、Y型、β型、ZSM‐5型、モルデナイト型、ぺリアライト(ferrierite)型などがあるが、特にβ型の結晶構造を有するゼオライトが望ましい。
【0016】
上記ゼオライトとカーボンナノボールとは1〜3:3〜8(〔ゼオライト〕:〔カーボンナノボール〕)の重量比で混合される。前述した範囲内で混合した吸着剤組成物は、自動車内部に流入する主な有害ガスのすべてを一定基準以上に除去できることはもちろん、意外なことに有害ガスの除去能力にもまたシナジズムを誘発させることがわかった。即ち、各々の吸着剤の含量から予測される各々の有害ガスに対する除去能力よりさらに向上した除去能力を奏することがわかったが、これに関しては、後述する実施例及び比較例のデータを参照してより詳しく説明する。
【0017】
前述した本発明の消臭物質が添着されたカーボンナノボールとゼオライトとの吸着剤組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で消臭物質が添着された活性炭をさらに添加することができる。この場合、ゼオライト:カーボンナノボール:活性炭は1〜3:3〜8:3〜8の重量比で混合されるのが望ましい。消臭物質(遷移金属、遷移金属酸化物、アルカリ金属塩など)が添加された添着活性炭は、吸着剤組成物の生産原価を安価にしながらも、ゼオライトと消臭物質が添着されたカーボンナノボールとが均一に混合されることに寄与することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によって特定のゼオライトとカーボンナノボールとを所定割合で混合した吸着剤組成物は、自動車内部に流入する主な有害ガスの全てを一定基準以上に除去できることがわかる。また、各々の有害ガスに対する除去性能を見てみると、ゼオライトとカーボンナノボールの混合によって、予測された各々の有害ガスに対する除去能力よりさらに向上した除去能力を奏しており、シナジズムを示すことがわかる。したがって、本発明の吸着剤組成物は、自動車室内の空気調節装置やキャビンフィルターなどに適用されて自動車室内を快適に保つのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は種々の他の形態に変形でき、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定して解釈されない。本発明の実施例は当業界における平均的な知識を有した者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0020】
〔実施例〕
実施例1
イオン種がNH4+型であり、SiO2/Al23のモル比が30であり、4級アンモニ
ウム塩化合物としてテトラプロピルアンモニウムブロマイドが担持されたβ型ゼオライトと、中空コア部の粒径が約250nmでありカーボンシェル部の厚さが約200nmであり消臭物質としてKIが添着されたカーボンナノボールを下記表1に記載された割合に従って混合して吸着剤組成物を製造した。
【0021】
実施例 2〜10及び比較例1〜8
下記表1〜3に記載された成分と含量に従って吸着剤(組成物)を製造した。活性炭はKOH溶液で処理した消臭物質が添着された活性炭を用いた。
【0022】
前述した実施例及び比較例の吸着剤に対して、自動車内部に流入する主な有害ガスであるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア、トリメチルアミン、アセト酸に対する除去率試験を実施した。その結果を下記表1〜3に表した。
【0023】
吸着剤パウダー0. 2gを吸着管に入れASTM D 6646評価法に従って吸着と脱着とが平衡状態を成す点である破過点(Breakthrough point)を観察
した。吸着能力を一定条件にして評価するために、マスフローコントローラー(mass
flow controller)を用いて流量60ml/minで通過させて時間につれて吸着剤から検出される濃度を観察した。また、湿度を一定に維持するためにウォータートラップ(water trap)を設け、空気を通過させた。ウォータートラップを
通過した空気は、消臭対象源と出会い、混合された状態で脱臭試料が入った吸着管に流入されてから分析器を通過する。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
表1〜3の結果を参照すると、本発明によってゼオライトとカーボンナノボールとを所定割合で混合した実施例の吸着剤組成物は、自動車内部に流入する主な有害ガスの全てを一定基準以上に除去できることがわかる。また、各々の有害ガスに対する除去性能を見てみると、ゼオライトとカーボンナノボールとの混合によって、予測された各々の有害ガスに対する除去能力よりさらに向上した除去能力を奏しており、シナジズムを示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)球形の中空コア部とメゾ多孔性のカーボンシェル部とからなり、上記カーボンシェル部に遷移金属、遷移金属酸化物及びアルカリ金属塩からなる群より選択された何れか一つ以上の消臭物質が添着されたカーボンナノボールと、
(b)イオン種がNH4+型であり、SiO2/Al23のモル比が20ないし300であ
り、4級アンモニウム塩が担持されたゼオライトとを含み、
上記ゼオライト:カーボンナノボールの含量比が重量比で1〜3:3〜8であるように混合されたことを特徴とする自動車内部に流入する有害ガスの吸着剤組成物。
【請求項2】
(a)球形の中空コア部とメゾ多孔性のカーボンシェル部とからなり、上記カーボンシェル部に遷移金属、遷移金属酸化物及びアルカリ金属塩からなる群より選択された何れか一つ以上の消臭物質が添着されたカーボンナノボールと、
(b)イオン種がNH4+型であり、SiO2/Al23のモル比が20ないし300であ
る4級アンモニウム塩が担持されたゼオライトと、
(c)遷移金属、遷移金属酸化物及びアルカリ金属塩からなる群より選択された何れか一つ以上の消臭物質が添着された活性炭とを含み、
上記ゼオライト:カーボンナノボール:活性炭の含量比が重量比で1〜3:3〜8:3〜8であるように混合されたことを特徴とする自動車内部に流入する有害ガスの吸着剤組成物。
【請求項3】
上記カーボンナノボールの中空コア部の粒径が10ないし1000nmであり、カーボンシェル部の厚さが10ないし500nmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車内部に流入する有害ガスの吸着剤組成物。
【請求項4】
上記ゼオライトの結晶構造がβ型であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車内部に流入する有害ガスの吸着剤組成物。

【公開番号】特開2007−605(P2007−605A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368370(P2005−368370)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(501264013)エルジー ハウスホールド アンド ヘルス ケア エルティーディー. (7)
【Fターム(参考)】