説明

自動車排ガス浄化用吸着材および触媒コンバーター

【構成】 Si/Al 比が40以上の高シリカゼオライトを含む自動車排ガス浄化用吸着材である。自動車排ガス流路に、主モノリス触媒3と、多数の貫通孔を有するハニカム構造体に通電のための少なくとも2つの電極を設けてなるハニカムヒーター2を配設すると共に、さらにゼオライトを主成分とする吸着材1を配置した自動車排ガス浄化用触媒コンバーターである。
【効果】 耐熱性に優れた吸着材が得られ、また、ゼオライトによる吸着効果とヒーターへの通電発熱効果により、排ガス中のHC、CO等エミッションの浄化が大きく改善され、大気中への排出量を大幅に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車排ガス浄化用吸着材、およびハニカムヒーター、主モノリス触媒及びゼオライト吸着材を配置してなる触媒コンバーターに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車等の排気ガスを浄化するために用いられる触媒コンバーターは、触媒が触媒作用を発揮するために所定温度以上に昇温されることが必要であるので、自動車の始動時等の未だ触媒が十分に昇温していない場合には触媒を加熱することが必要となる。従来、このような触媒を加熱するための提案として、例えば実開昭63−67609号公報に記載の技術が知られている。この実開昭63−67609号公報には、セラミック製主モノリス触媒の上流側に近接させてメタル担体にアルミナをコートした電気通電可能なメタルモノリス触媒を配設した触媒コンバーターが開示されている。
【0003】また、排気ガス中の有害成分(HC、CO、NOX )のうち、特にHC(炭化水素)は光化学スモッグ(オキシダント)の原因となるため、規制が強化されつつあり、エンジン始動時に大量に排出されるHCをゼオライトの吸着作用を利用して浄化する試みがなされている。例えば、排ガス系に浄化触媒と、その上流側にゼオライト等の吸着材、あるいは触媒を担持した吸着材を配置した自動車排ガス浄化装置も提案されている。(例えば、特開平2−75327号公報、特開平2−173312号公報、特開平2−135126号公報等を参照)
さらに、特開平2−126937号公報には、メタル担体上にゼオライトをコートした吸着材が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実開昭63−67609号公報記載の触媒コンバーターは、プレヒーターたるメタルモノリス触媒と主モノリス触媒から構成されるもので、エンジン始動時に排気ガス中のHC成分が浄化され難いという問題がある。また、排ガス系に、浄化触媒とその上流側にゼオライト等の吸着材を配置した自動車排気ガス浄化装置(特開平2−75327号公報)では、浄化触媒の上流側で吸着材によってHCが吸着されても、暖機とともに吸着材からHCが脱離し、その結果相当量のHCが浄化触媒を通過してしまうという問題がある。
【0005】特開平2−173312号公報は、主通路に触媒を、バイパス通路には吸着材を備え、エンジン始動時には切換手段によりバイパス通路に排気ガスを通し、エンジン始動後排気ガスが触媒の活性温度に達した時切換手段により排気ガスを主通路の触媒に流す技術が開示されているが、この場合、主通路の触媒が完全に暖まるまで待機するのは機構が複雑となり主通路の触媒自身が暖まるまでの未浄化成分の触媒通過が無視できない。
【0006】又、排ガス系に、浄化触媒とその上流側に触媒を担持した吸着材を配置した自動車排気ガス浄化装置(特開平2−135126号公報)においては、吸着材自体の熱容量で浄化触媒の立上りが遅れるという問題があり、さらに吸着材に触媒成分を添加してもその容量に限界があり、充分な浄化ができないという欠点がある。さらに、特開平2−126937号公報には吸着材のみが記載され、CO、HC、NOX を含めた排気ガスの触媒コンバーターについては記載されていない。また、上記したいずれの公知例においても、吸着材に用いるゼオライトはY型又はモルデナイト型であり、耐熱性に問題があると同時に排ガス中の水分が強く吸着して、吸着材の吸着能を低下させる。
【0007】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は上記従来の問題を解消した自動車排ガス浄化用吸着材および触媒コンバーターを提供することを目的とするものである。そしてその目的は、本発明によれば、Si/Al 比が40以上の高シリカゼオライトを含むことを特徴とする自動車排ガス浄化用吸着材、および、自動車排ガス流路に、主モノリス触媒と、多数の貫通孔を有するハニカム構造体に通電のための少なくとも2つの電極を設けてなるハニカムヒーターを配設すると共に、さらにゼオライトを主成分とする吸着材を配置したことを特徴とする自動車排ガス浄化用触媒コンバーター、により達成することができる。
【0008】本発明では、高シリカゼオライトを含む吸着材に触媒を担持させ、あるいは、ゼオライトを主成分とする吸着材および/又はハニカムヒーターに触媒を担持させることは、ゼオライトの吸着作用と触媒作用が協働し、排ガスの浄化性能の向上のため、好ましい。また、ハニカムヒーターに、ゼオライトを主成分とする吸着材または該吸着材に触媒成分を担持させた吸着・触媒組成物を被覆することも、上記と同じく好ましい。
【0009】本発明の触媒コンバーターにおいては、主モノリス触媒、ハニカムヒーター及び吸着材のうち、触媒を有するものが自動車排ガス流路における最下流側となるように配置すればよく、その他の配設順序については、特に制限はない。また本発明に用いるハニカムヒーターにおいては、電極間にスリット等の抵抗調節機構を設けることがエンジン始動時の低温排気ガスを迅速に加熱・昇温できるため好ましい。
【0010】また、ゼオライトとしては、Si/Al 比が40以上の高シリカゼオライトを用いると、耐熱性が向上して触媒の適用条件が緩和され、好ましい。さらに吸着材に触媒を担持させたものが、(a) Pt Pd Rh Ir 及びRuから選択される少なくとも1種の貴金属とイオン交換されたSi/Al 比が40以上の高シリカゼオライトと、(b) Pt Pd Rh Ir 及びRuから選択される少なくとも1種の貴金属を含有する耐熱性酸化物とからなる組成物を用いることが好ましい。なお、ハニカム構造体としては、粉末原料をハニカム状に成形し焼結させたものを用いることが好ましい。
【0011】
【作用】本発明は、Si/Al 比が40以上の高シリカゼオライトを含む自動車排ガス浄化用吸着材、および、自動車排ガス流路に、ハニカムヒーター(又は触媒担持のハニカムヒーター、吸着材被覆のハニカムヒーター、吸着・触媒組成物被覆のハニカムヒーター)、主モノリス触媒およびゼオライト吸着材(又は触媒担持の吸着材)を配置してなる触媒コンバーターである。
【0012】このように、本発明の吸着材はSi/Al 比が40以上の高シリカゼオライトを含み、また本発明の触媒コンバーターはハニカムヒーターと主モノリス触媒のほかにゼオライト吸着材を有しているため、エンジン始動前に通電することなく、セルモーター駆動のエンジン始動時においてはゼオライトによる吸着機能を利用して低温排気ガス中の未燃HCを捕捉し、その後ハニカムヒーターに通電すると同時に捕捉されたHCは脱離を開始し、通常その下流側等に配置された主モノリス触媒および/又はヒーター上の触媒が瞬時に加熱されるためにHCは好適に反応浄化される。又、ゼオライト吸着材に触媒が担持されている場合には、HCは脱離するとともに反応浄化される。
【0013】尚、エンジン始動時のエンジン排ガスはリッチ側(酸素不足雰囲気)になるため、HCやCOの酸化に必要な酸化性ガス、例えば二次空気の排ガス中への導入が必要である。本発明において、ハニカムヒーター(又は触媒担持のハニカムヒーター)2、主モノリス触媒3およびゼオライト吸着材(又は触媒担持の吸着材)1の好ましい配置・構成を図1の(a) 〜(f) に示す。
【0014】これらの構成のなかで、図1(a) はゼオライト吸着材1が自動車排ガス流路の最上流側に位置するため、吸着が最も容易であり好ましい。なお、この場合には、ハニカムヒーター2、ゼオライト吸着材1はともに触媒の有無に拘らず、使用することができる。また図1R>1(b) のような上流側よりハニカムヒーター2、ゼオライト吸着材1、主モノリス触媒3という構成では、ゼオライト吸着材1に吸着したHCをヒーター2への通電により脱離することができるので、制御し易いという利点がある。この場合にも、ハニカムヒーター2、ゼオライト吸着材1ともに触媒の有無に拘らず、使用することができる。
【0015】さらに、図1の(c) 〜(f) に示すように、主モノリス触媒3が前方(最上流側)に設置されている場合には、ヒーター2上の触媒およびゼオライト吸着材1の機能が失われにくく耐久性に優れ好ましい。この場合、図1(c) 、図1(d) の構成では、中間に配置されるゼオライト吸着材1またはハニカムヒーター2とも触媒の有無に拘らず使用可能であるが、最下流側に配置されるゼオライト吸着材1またはハニカムヒーター2には、触媒が担持されることが必要である。一方、図1(e) 、図1(f) の如く主モノリス触媒3の間にゼオライト吸着材1およびハニカムヒーター2が配置される場合には、ハニカムヒーター2、ゼオライト吸着材1ともに触媒の有無に拘らず、使用することができる。
【0016】また、図1(a) 〜(f) において、ハニカムヒーター2には、ゼオライト吸着材またはゼオライト吸着材に触媒を担持させた吸着・触媒組成物を担持しても良い。この場合、吸脱着の制御はヒーターの通電によって容易に行うことができる。本発明において吸着材として用いるゼオライトの種類としては特に限定されないが、Y型、モルデナイトなどの他、一般に市販されているモービル社、コンテック社のZSM−5、ZSM−8、シリカライト(UOP社)などが好適である。また、X型、Y型、モルデナイト等をゼオライト骨格から脱アルミニウム処理をしてSi/Al 比を高めたものも好適に用いることができる。さらに、Si/Al 比が40以上の高シリカゼオライトを用いることが好ましい。Si/Al 比が40未満であると、耐熱性が不足すると共に、親水性が増大するため、排ガス中の水分が強く吸着し好ましくない。
【0017】上記高シリカゼオライトは、よく知られる通常のゼオライトと同様、結晶の単位格子の最小単位が結晶性アルミノ珪酸塩で、Al2O3及びSiO2が互いに酸素イオンにより連続的に結合したものであるが、Si/Al 比が通常のゼオライトの1〜5に比し約10以上と高いものである。本発明においては、上記のようにSi/Al 比が40以上の高シリカゼオライトが好ましいが、耐熱性の点からSi/Al 比が50以上が更に好ましく、60以上が特に好ましい。一方、Si/Al 比が1000を超えると、吸着容量そのものが低下すること、及び触媒成分を添加する場合、イオン交換サイトの数が少なくなるため、少量の貴金属しかゼオライト中にイオン交換できず、好ましくない。また、上記高シリカゼオライトはH(プロトン)型であることが耐熱性の点で好ましい。
【0018】本発明において、ゼオライトを主成分とする吸着材に担持する触媒としては、Pt、Pd、Rh等の貴金属を含有することが好ましく、さらに高比表面積の耐熱性酸化物を添加することが着火特性の向上の点で好ましい。Pt、Pd、Rh等の貴金属はゼオライト及び/又は耐熱性酸化物に担持されるが、耐熱性およびNOX の選択的除去能(副生成物NH3 の発生抑制)などから、ゼオライトにイオン交換によって担持されることが好ましい。
【0019】以上の触媒特性などに鑑みると、本発明で最適な吸着材に触媒を担持させた吸着・触媒組成物としては、(a) Pt Pd Rh Ir 及びRuから選択される少なくとも1種の貴金属とイオン交換されたSi/Al 比が40以上の高シリカゼオライトと、(b) Pt Pd Rh Ir 及びRuから選択される少なくとも1種の貴金属を含有する耐熱性酸化物とからなる組成物、が挙げられる。ここで上記(a) 成分は、高シリカゼオライトとPt Pd Rh Ir 及びRuから選択される少なくとも1種の貴金属とを適当な水溶液にてイオン交換することにより得ることができる。上記した所望の性能を発揮するためには、貴金属のイオン交換率は10〜85%が好ましく、30〜85%が更に好ましい。
【0020】高シリカゼオライトとイオン交換された貴金属は、ゼオライトの交換サイトに固定されて分散性が高く、触媒活性を有効に保持するとともに飛散されにくく、また高温下においても凝集することなく長期間にわたり高活性を維持できる。更に、吸着材に触媒成分を担持させた吸着・触媒組成物を用いると、脱離時に発生するHCのコーキングを防止でき、吸着材としての耐久性を向上させる。この貴金属イオン交換ゼオライトは、例えば次のように作製される。高シリカゼオライトを10-4〜10-1mol /lのカチオン型金属イオンを含有する溶液に浸漬し、常温から100℃、好ましくは80〜90℃で約2時間以上静置または攪拌あるいは還流することにより貴金属成分をイオン交換し、要すれば濾過、水洗を繰り返してイオン交換された貴金属以外を除去する。イオン交換後は、通常80〜150℃で乾燥し、更に300〜1000℃、酸化または還元雰囲気下で約1〜10時間焼成することに作製できる。
【0021】またゼオライトへ、CeO2、La2O3 等希土類金属やアルカリ土類金属の酸化物を添加すると、希土類金属の酸素貯蔵能力による三元浄化性能が広がることになりその適用が多様化でき、しかもアルカリ土類金属添加によって耐熱性が向上することから好ましい。一方上記(b) 成分の耐熱性酸化物としては、Al2O3 、TiO2、ZrO2、SiO2あるいはこれらの複合酸化物を用いることができる。又、これらの酸化物にCeO2、La2O3 等希土類金属やアルカリ土類金属の酸化物を添加することも、上述のように三元浄化性能が広がり、しかも耐熱性が向上することから好ましい。そして、この(b) 成分は、耐熱性酸化物に上記した貴金属の少なくとも1種を担持させて構成される。
【0022】上記(a) 成分と(b) 成分の構成重量比としては、(a) :(b) =10〜85:90:15とすることが好ましい。(a) 成分が10重量%未満では、NOX の選択的除去能(副生成物NH3 の発生抑制)が得られ難く、85重量%を超えると着火性能が劣るようになる。本発明の吸着・触媒組成物において、貴金属の総担持量は、10〜35g/ft3の範囲が好ましく、15〜30g/ft3 がさらに好ましい。貴金属担持量が10g/ft3 未満の場合、着火特性、耐久性に問題があり、35g/ft3 を超えるとコスト高となる。このようにSi/Al 比40以上の高シリカゼオライトを用いることにより、本発明の触媒では、貴金属のRhを、従来の排気ガス浄化用触媒が5g/ft3 以上担持させる必要があったのに対し、5g/ft3 未満の担持量でも十分にNOX のN2 への選択的浄化能を発現でき、更に0〜2g/ft3 の担持量でも、低温で被毒物質低含有量等の比較的穏和な条件で使用される場合には、実用上十分な選択性を発現できる。
【0023】次に、本発明に用いるハニカム構造体としては、粉末原料をハニカム状に成形し焼結させて作製することが好ましい。この場合には、いわゆる粉末冶金および押出し成形法を用いて作製することが好ましく、この場合には、工程が簡略で低コスト化が図れる利点がある。なお、本発明に用いるハニカムヒーターはハニカム構造体を金属質とし、そのハニカム構造体の隔壁及び気孔の表面をAl23 、Cr23 等の耐熱性金属酸化物で被覆することと耐熱性、耐酸化性、耐食性が向上し好ましい。
【0024】ハニカム構造体の構成材料としては、通電により発熱する材料からなるものであれば制限はなく、金属質でもセラミック質でもよいが、金属質が機械的強度が高いため好ましい。金属質の場合、例えばステンレス鋼やFe−Cr−Al、Fe−Cr、Fe−Al、Fe−Ni、W−Co、Ni−Cr等の組成を有する材料からなるものが挙げられる。上記のうち、Fe−Cr−Al、Fe−Cr、Fe−Alが耐熱性、耐酸化性、耐食性に優れ、かつ安価で好ましい。さらに金属質の場合、フォイルタイプに形成したものでもよい。
【0025】またハニカム構造体は、多孔質であっても非多孔質であってもよいが、触媒を担持する場合には、多孔質のハニカム構造体が触媒層との密着性が強く熱膨張差による触媒の剥離が生ずることがほとんどないことから好ましい。また、非多孔質のハニカム構造体であっても、スリット等の抵抗調節機構を備えている場合には熱応力が緩和され、クラック等が発生しにくい。次に、ハニカム構造体のうち金属質ハニカム構造体の製造方法の例を説明する。
【0026】まず、所望の組成となるように、例えばFe粉末、Al粉末、Cr粉末、又はこれらの合金粉末などにより金属粉末原料を調製する。次いで、このように調製された金属粉末原料と、メチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダー、水を混合した後、この混合物を所望のハニカム形状に押出成形する。なお、金属粉末原料と有機バインダー、水の混合に際し、水を添加する前に金属粉末にオレイン酸等の酸化防止剤を混合するか、あるいは予め酸化されない処理を施した金属粉末を使用することが好ましい。
【0027】次に、押出成形されたハニカム成形体を、非酸化雰囲気下1000〜1400℃で焼成する。ここで、水素を含む非酸化雰囲気下において焼成を行なうと、有機バインダーがFe等を触媒にして分解除去し、良好な焼結体を得ることができ、好ましい。焼成温度が1000℃未満の場合、成形体が焼結せず、焼成温度が1400℃を超えると得られる焼結体が変形するため、好ましくない。
【0028】なお、望ましくは、次いで、得られた焼結体の隔壁及び気孔の表面を耐熱性金属酸化物で被覆する。この耐熱性金属酸化物による被覆方法としては、下記の方法が好ましいものとして挙げられる。
■金属ハニカム構造体を酸化雰囲気中700〜1100℃で熱処理する。
■Al等を焼結体の隔壁及び気孔の表面にメッキ(例えば気相メッキ)し、酸化雰囲気中700〜1100℃で熱処理する。
■Al等の金属溶湯中に浸漬し、酸化雰囲気中700〜1100℃で熱処理する。
■アルミナゾル等を用い焼結体の隔壁及び気孔の表面に被覆し、酸化雰囲気中700〜1100℃で熱処理する。
【0029】尚、熱処理温度は、耐熱性、耐酸化性の点で900〜1100℃とすることが好ましい。次に、得られた金属質ハニカム構造体について、後述する電極間に、各種の態様により抵抗調節機構を設けることが好ましい。ハニカム構造体に設ける抵抗調節機構としては、例えば■スリットを種々の方向、位置、長さで設けること、■貫通孔軸方向の隔壁長さを変化させること、■ハニカム構造体の隔壁の厚さ(壁厚)を変化させるか、または貫通孔のセル密度を変化させること、および■ハニカム構造体のリブ部にスリットを設けること、等が好ましいものとして挙げられる。
【0030】上記のようにして得られた金属質ハニカム構造体は、通常その外周部の隔壁または内部に、ろう付け、溶接などの手段によって電極を設けることにより、本発明におけるハニカムヒーターが作製される。尚、ここでいう電極とは、ハニカムヒーターに電圧をかけるための端子の総称を意味し、ヒーター外周部と缶体を直接接合したものや、アース等の端子を含む。この金属質ハニカム構造体は、全体としてその抵抗値が0.001Ω〜0.5Ωの範囲となるように形成することが好ましい。
【0031】本発明におけるハニカム構造体のハニカム形状としては特に限定はされないが、具体的には、例えば6〜1500セル/In2 (0.9〜233セル/cm2 )の範囲のセル密度を有するように形成することが好ましい。又、隔壁の厚さは50〜2000μm の範囲が好ましい。また、上記したようにハニカム構造体は多孔質であっても非多孔質でもよくその気孔率は制限されないが、0〜50%、好ましくは25%未満の範囲とすることが強度特性、耐酸化性、耐食性の面から望ましい。また、触媒を担持する場合には、それらとの密着性の点から5%以上の気孔率を有することが好ましい。
【0032】尚、本発明においてハニカム構造体とは、隔壁により仕切られた多数の貫通孔を有する一体構造をいい、例えば貫通孔の断面形状(セル形状)は円形、多角形、コルゲート形等の各種の任意な形状が使用できる。本発明の触媒コンバーターにおいて用いる主モノリス触媒としては、従来公知のものが使用できるが、三元触媒が好ましい。またゼオライト吸着材は、ビーズ、ペレット、ハニカム等の任意の構造を採用することができるが、圧力損失の点でハニカム構造とすることが好ましい。この場合、ハニカム構造体自体が、ゼオライトを主成分として構成されてもよいが、耐熱衝撃性のあるセラミック質や金属質の基材上にゼオライトを主成分とする吸着材が被覆されていることが実用上さらに好ましい。
【0033】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
(実施例1〜8、比較例1〜2)
ゼオライトの選択:市販されている表1に示したSi/Al 比の異なるH型のモルデナイトゼオライトA及びZSM−5ゼオライトB〜E、前記ゼオライトAを塩酸で煮沸処理してSi/Al 比を高めたゼオライトF及びNa型のZSM−5ゼオライトGを用いた。なお、ゼオライトGのアルカリ金属含有量は0.85重量%で、その他のゼオライトのアルカリ金属含有量は0.1重量%以下であった。ここで、用いた各ゼオライトの常温時、電気炉中で900、1000及び1100℃の各温度で5時間加熱処理した後に測定したBET比表面積(m2/g)を、それぞれ表1に示した。
【0034】
【表1】


【0035】上記表1より明らかなように、ゼオライトの耐熱性はSi/Al比に依存することが分かり、一般に自動車排気ガスの吸着材または触媒として使用する場合の最高使用温度は1000℃であり、1000℃においても高比表面積を保持するものであることから、用いるゼオライトとしては、Si/Al比が40より大きなゼオライトとする必要があることがわかる。また、ゼオライトAとBの加熱未処理品(粉末)を用い、10%H2 O共存下常温にてプロパン/プロピレン(1/2)の吸着量を測定した結果、ゼオライトBの方がゼオライトAよりも1.5倍吸着量が多く、ゼオライトAは水による被毒作用を強く受けた。
【0036】ハニカムヒーターの作製:平均粒径10、20、22μmのFe粉、Fe−Al粉(Al50wt% )、Fe−Cr粉(Cr50wt% )の原料を用い、Fe−22Cr−5Al(重量%)の組成になるよう原料を配合し、これに有機バインダー(メチルセルロース)と酸化防止剤(オレイン酸)、水を添加して坏土を調製し、リブ厚4mil 、貫通孔数400セル/In2 (cpi2)の四角セルよりなるハニカムを押出し成形し、乾燥後H2 雰囲気下1300℃で焼成し、その後空気中、1000℃で熱処理を行った。得られたハニカム構造体の気孔率は22%であり、平均細孔径は5μmであった。
【0037】上記方法により得られた外径90mmφ、長さ25mmのハニカム構造体に、図2に示すように、その外壁10上に2ヶ所電極11をセットした。又、図2に示すように、70mmの長さのスリット12を貫通孔の軸方向に6個所設け(両端のスリット長は50mm)、かつスリット12間のセル数が7個(約10mm)となるように形成した。さらに、スリット12の外周部13にはジルコニア系の耐熱性無機接着剤を充填して絶縁部とし、ハニカムヒーターを作製した。
【0038】ヒーター上への触媒Aの担持:上記で得られたハニカムヒーター上に、γ−Al23 ・CeO2 (重量比70:30)を被覆し、次いでPtとRhをPt/Rhが5/1の比となるよう35g/ft3担持し、600℃で焼成することにより、ヒーター上に触媒Aを担持した。
【0039】ヒーター上への触媒Bの担持:一方、同様のハニカムヒーター上に、Ptをイオン交換したH−ZSM−5(Si/Al 比=48)50部と、γ−Al23 ・CeO2 (重量比80:20)50部とからなる混合物を被覆し、次いでPtとRhを該γ−Al23 ・CeO2 上に含浸担持し、最終的にPt/Rhを19/1の比になるよう35g/ft3 担持し、600℃で焼成することにより、ハニカムヒーター上に膜厚50μmの触媒Bをコートした。
【0040】ゼオライト吸着材:また、長さ25mmの市販のコーディエライトハニカム担体(日本ガイシ製、リブ厚6mil 、貫通孔数400セル/In2 の四角セルよりなるハニカム構造体)上に、H−ZSM−5(Si/Al 比=48)を膜厚50μmとなるよう被覆し、600℃で焼成してゼオライト吸着材を作製した。
【0041】ゼオライト吸着材への触媒Bの担持:上記ヒーター上への触媒Bの担持と同様の方法で、長さ25mmのコーディエライトハニカム担体に被覆担持した。
【0042】ヒーター上への吸着材の担持:ハニカムヒーター上に、コーディエライトハニカム担体上にゼオライト吸着材を作製した方法と同一の方法を用いてゼオライト吸着材を被覆担持した。
【0043】主モノリス触媒:市販の三元触媒(担体がセラミック質で、リブ厚6mil 、貫通孔数400セル/In2 の四角セルよりなるハニカム構造体)を用いた。以上に示した種類のハニカムヒーター、ゼオライト吸着材、主モノリス触媒を用い、表2に示す構成でこれらを配置した触媒コンバーターについて、下記の如く評価を行なった。
【0044】すなわち、エンジン始動時の性能を確認するために、排気量2400ccの自動車を用い、米国FTPにおけるBag1テストを実施した。ここで、ヒーターへの供給電圧は12V、エンジン始動後10秒後に通電を開始し、その後40秒後に通電を停止した。通電中はヒーター中央部のガス温度が400℃になるよう制御した。また、エンジン始動後50秒間、200l/minで二次空気を触媒コンバーターに導入した。得られた結果を表2に示す。一方、比較のため、主モノリス触媒のみを用いた場合(比較例1)、ゼオライト吸着材と主モノリス触媒を用いたがハニカムヒーターは用いなかった場合(比較例2)について、上記と同様の評価を行ない、その結果を表2に示した。表2の結果から明らかなように、本発明の触媒コンバーターによれば、HC、CO、NO等の各エミッションが良好に浄化できることがわかる。
【0045】
【表2】


【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の吸着材によれば、高シリカゼオライトであるため、耐熱性に優れ触媒の適用条件が緩和され、自動車排ガス浄化用として好適に用いることができる。また本発明によれば、ゼオライトによる吸着効果とヒーターへの通電発熱効果により、排ガス中の各エミッション、特にHC、COの浄化が大きく改善され、大気中への排出量を大幅に低減することができる。さらに、本発明の触媒コンバーターでは、ゼオライト吸着材、ヒーター、及び主モノリス触媒の配置を排ガスの種類、浄化の目的、触媒寿命等を考慮し、最適の態様で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における触媒コンバーターの好ましい配置・構成を示す説明図である。
【図2】本発明のハニカムヒーターの一実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ゼオライト吸着材、2 ハニカムヒーター、3 主モノリス触媒、10 外壁、11 電極、12 スリット、13 スリットの外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 Si/Al 比が40以上の高シリカゼオライトを含むことを特徴とする自動車排ガス浄化用吸着材。
【請求項2】 請求項1記載の吸着材に触媒を担持させてなる自動車排ガス浄化用吸着材。
【請求項3】 請求項1又は2記載の吸着材を、多数の貫通孔を有するハニカム構造体に被覆した自動車排ガス浄化用吸着材。
【請求項4】 自動車排ガス流路に、主モノリス触媒と、多数の貫通孔を有するハニカム構造体に通電のための少なくとも2つの電極を設けてなるハニカムヒーターを配設すると共に、さらにゼオライトを主成分とする吸着材を配置したことを特徴とする自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。
【請求項5】 ゼオライトを主成分とする吸着材に触媒を担持させた請求項4記載の自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。
【請求項6】 ハニカムヒーターに触媒を担持させた請求項4または5記載の自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。
【請求項7】 ハニカムヒーターに、ゼオライトを主成分とする吸着材または該吸着材に触媒成分を担持させた請求項4または5記載の自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。
【請求項8】 前記の主モノリス触媒、ハニカムヒーター及び吸着材のうち、触媒を有するものが自動車排ガス流路における最下流側となるように配置した請求項4〜7のいずれかに記載の自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。
【請求項9】 ハニカムヒーターの電極間に抵抗調節機構を設けた請求項4〜8のいずれかに記載の自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。
【請求項10】 ゼオライトとして、Si/Al 比が40以上の高シリカゼオライトを用いる請求項4〜9のいずれかに記載の自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。
【請求項11】 吸着材に触媒を担持させたものが、(a) Pt Pd Rh Ir 及びRuから選択される少なくとも1種の金属とイオン交換されたSi/Al 比が40以上の高シリカゼオライトと、(b) Pt Pd Rh Ir 及びRuから選択される少なくとも1種の金属を含有する耐熱性酸化物とからなる組成物である、請求項5〜10のいずれかに記載の自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。
【請求項12】 ハニカム構造体が、粉末原料をハニカム状に成形し焼結させたものである請求項4〜11のいずれかに記載の自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。
【請求項13】 抵抗調節機構がスリットである請求項9〜12のいずれかに記載の自動車排ガス浄化用触媒コンバーター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平5−31359
【公開日】平成5年(1993)2月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−275296
【出願日】平成3年(1991)10月23日
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)