説明

自動車用の燃料タンクの取付構造

【課題】製造と取り付けが容易な自動車用の燃料タンクの取付構造を提供する。
【解決手段】
自動車用の燃料タンクの取付構造において、燃料タンク2は、長尺状のタンク保持バンド10により外周を保持されて、車体1に取付けられる。タンク保持バンド10には、タンク保持バンド10の長手方向に沿って燃料タンク2との間に位置する長尺状のバンドクッション20が取り付けられる。バンドクッション20は、長手方向に連続する板状のクッション本体部21とクッション本体部21の両側端部にタンク保持バンド10の両側端に係合するクッション係合部22が形成され、クッション係合部22は、タンク保持バンド21の両側端を覆うように鉤状に屈曲して形成されるとともに、屈曲部分が伸長可能に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロアパネルの下に取付けられる自動車用の燃料タンクの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の燃料タンクは、スペースの関係上、フロアパネルの下に取付けられることが多い。この場合は、燃料タンクは、複数本のベルト状のタンク保持バンドで車体のフレームやフロアパネルに取り付けられている。このタンク保持バンドは、強度が必要であるため、金属製のバンドが使用されている。
【0003】
しかしながら、自動車の走行時には、タンク保持バンドと燃料タンクが振動して、摺動したり、摩耗したり、異音が発生したりする問題があるため、タンク保持バンドと燃料タンクの間にバンドクッションを取り付けている。
バンドクッションは、燃料タンクと当接しても燃料タンクを傷つけることがなく、取付容易性、柔軟性と制振性を必要としている。そのため、ゴムや軟質合成樹脂等により形成されている。
【0004】
例えば、図12に示すように、平板的なベルト状のタンク保持バンド110の外周に、それを囲むように形成されたバンドクッション120の溝部が嵌合して密着されているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、燃料タンク2との間にクッション性を大きくするため、バンドクッション220の両側端に長手方向に連続する突条部221を形成し、突条部221を燃料タンク2に当接させたバンドクッション220の両端部に溝部を設け、その溝部にタンク保持バンド210に嵌合したものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかし、この場合には、いずれも溝部の形状が一定で変化しないため、押出成形で形成した断面が長手方向に同じバンドクッション120、220を嵌め込むためには、タンク保持バンド110、210の断面形状は同じ形状が必要である。しかし、燃料タンク2を車両へ搭載するときに、搭載位置及びタンク重量により燃料タンク2を保持するのに必要な強度を確保するために、タンク保持バンド110、210の断面形状を変化させる必要が生じている。断面形状が変化すれば、バンドクッション120、220を確実にタンク保持バンド110、210の溝部に取付けることが難しくなる。
【0006】
また、図14に示すように、タンク保持バンド310の断面形状に凹凸を設けて、タンク保持バンド310の強度を向上させるものもある。この場合は、バンドクッション320をタンク保持バンド310に嵌め込むことができず、タンク保持バンド310の凸部315とバンドクッション320を接着している。
【0007】
しかしながら、この場合には、接着強度を確保するためには、タンク保持バンド310の凸部315の上面及びバンドクッション320の内面を清浄化して、タンク保持バンド310の凸部315の上面にプライマーを塗布する表面処理を施したのちに、接着材を塗布して、バンドクッション320を貼付する工程が必要であった。
【0008】
そのため、接着強度のバラツキをなくするように、工程の管理も複雑になり、コストアップの要因ともなっている。さらに、使用環境による接着強度の経年変化や、修理等における再接着も困難であった。また、タンク保持バンド310とバンドクッション320が接着されているため、リサイクルが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4167056号公報
【特許文献2】特開2009−46000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、製造と取り付けが容易な自動車用の燃料タンクの取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、自動車のフロアパネルの下に取付けられる自動車用の燃料タンクの取付構造において、
燃料タンクは、長尺状のタンク保持バンドにより外周を保持されて、車体に取付けられ、
タンク保持バンドには、タンク保持バンドの長手方向に沿って燃料タンクとの間に位置する長尺状のバンドクッションが取り付けられ、
バンドクッションは、長手方向に連続する板状のクッション本体部とクッション本体部の両側端部にタンク保持バンドの両側端に係合するクッション係合部が形成され、クッション係合部は、タンク保持バンドの両側端を覆うように鉤状に屈曲して形成されるとともに、屈曲部分が伸長可能に形成されたことを特徴とする燃料タンクの取付構造である。
【0012】
請求項1の本発明では、燃料タンクは、長尺状のタンク保持バンドにより外周を保持されて、車体に取付けられる。このため、長尺状のタンク保持バンドが燃料タンクの形状に応じて燃料タンクの外壁の周囲を強固に保持して、燃料タンクを車体に取付けることができる。
【0013】
タンク保持バンドには、タンク保持バンドの長手方向に沿って燃料タンクとの間に位置する長尺状のバンドクッションが取り付けられている。このため、タンク保持バンドが燃料タンクと直接接触することを防止して、燃料タンクを車体に取付けるときや、自動車の走行時に燃料タンクとタンク保持バンドが摩耗することを防止でき、燃料タンクに錆や損傷を発生させることがない。
また、バンドクッションは、ゴム又は軟質合成樹脂で形成されるため柔軟性を有して、燃料タンクとタンク保持バンドの形状に応じて密着することができるともに、クッション作用をすることができる。
【0014】
バンドクッションは、長手方向に連続する板状のクッション本体部とクッション本体部の両側端部にタンク保持バンドの両側端を覆うクッション係合部が形成される。このため、クッション本体部がタンク保持バンドの上面と燃料タンクの外壁との間に位置してクッション作用をすることができ、燃料タンクとタンク保持バンドの摩擦による異音や摩耗を防止できる。また、クッション係合部がタンク保持バンドの両側端を保持して、バンドクッションがタンク保持バンドから外れないようにすることができる。
【0015】
クッション係合部は、タンク保持バンドの両側端を保持するように鉤状に屈曲して形成されるとともに、屈曲部分が伸長可能に形成されている。このため、タンク保持バンドにバンドクッションを嵌め込むときに、鉤状に屈曲して形成されたクッション係合部にタンク保持バンドの両側端を嵌め込むのみで容易に取付けることができる。
【0016】
屈曲部分が伸長可能に形成されたため、タンク保持バンドの断面形状が変化しても、バンドクッションを取付けることができ、バンドクッションのクッション係合部がタンク保持バンドの端部を保持することができる。また、バンドクッションを取り外すことも容易であり、リサイクル利用も容易である。
【0017】
請求項2の本発明は、クッション係合部は、クッション本体部から略直角に延設されたクッション係合部根元部と、クッション係合部根元部から略直角に延設されたクッション係合部側壁部と、クッション係合部側壁部からクッション本体部方向に突出して形成されたクッション係合部先端部から形成された燃料タンクの取付構造である。
【0018】
請求項2の本発明では、クッション係合部は、クッション本体部から略直角に延設されたクッション係合部根元部と、クッション係合部根元部から略直角に延設されたクッション係合部側壁部とを有する。このため、クッション係合部根元部とクッション係合部側壁部で断面L字形の鉤部を形成することができ、タンク保持バンドの両側端の先端面をこの断面L字形の鉤部で覆い、保持することができる。
【0019】
クッション係合部側壁部からクッション本体部方向に突出して形成されたクッション係合部先端部を有するため、断面L字形の鉤部の先端部分に壁部を形成することができ、タンク保持バンドの両側端の先端がずれても、クッション係合部先端部で止まり、バンドクッションから外れることを防止できる。
【0020】
請求項3の本発明は、クッション係合部根元部とクッション係合部側壁部の連続部分がその隣接する部分よりも薄肉に形成された燃料タンクの取付構造である。
【0021】
請求項3の本発明では、クッション係合部のクッション係合部根元部とクッション係合部側壁部の連続部分がその隣接する部分よりも薄肉に形成されている。このため、タンク保持バンドの両側端の高さが伸長して、凹凸がタンク保持バンドの位置により変化しても、薄肉に形成された部分が柔軟に撓んで、その高さに合わせてクッション係合部のクッション係合部先端部が確実にタンク保持バンドの両端部を覆い、バンドクッションを保持し、バンドクッションは、同じ断面形状でも、確実にタンク保持バンドに取付けることができる。
【0022】
請求項4の本発明は、タンク保持バンドの側端が伸長された部分では、屈曲したクッション係合部根元部とクッション係合部側壁部の連続部分が伸びて、タンク保持バンドの側端をクッション係合部のクッション係合部先端部が覆う燃料タンクの取付構造である。
【0023】
請求項4の本発明では、タンク保持バンドの側端が伸長された部分では、屈曲したクッション係合部根元部とクッション係合部側壁部の連続部分が伸びて、タンク保持バンドの側端をクッション係合部のクッション係合部先端部が覆うことができる。このため、燃料タンクの形状に合わせてタンク保持バンドの断面形状を自由に変化させることができ、タンク保持バンドの先端をクッション係合部先端部が覆い、バンドクッションを確実に保持することができる。
【0024】
請求項5の本発明は、クッション係合部先端部からクッション係合部根元部の方向に突出するクッション係合部突部が形成され、クッション係合部突部と、クッション係合部先端部と、クッション係合部側壁部とでクッション係合部溝部が形成された燃料タンクの取付構造である。
【0025】
請求項5の本発明では、クッション係合部先端部からクッション係合部根元部の方向に突出するクッション係合部突部が形成され、クッション係合部突部と、クッション係合部先端部と、クッション係合部側壁部とでクッション係合部溝部が形成されている。このため、クッション係合部突部の先端がタンク保持バンドの両側端の内面に当接することが可能となり、バンドクッションを確実に保持することができる。また、タンク保持バンドの両側端の凹凸が大きく変化して、屈曲したクッション係合部根元部とクッション係合部側壁部の連結部分が伸びても、クッション係合部溝部にタンク保持バンドの両側端の先端部分を保持することができ、バンドクッションをタンク保持バンドに確実に保持することができる。
【0026】
請求項6の本発明は、板状のクッション本体部は、幅方向の中央付近で長手方向に連続する鈍角に屈曲したクッション本体屈曲部が形成された燃料タンクの取付構造である。
【0027】
請求項6の本発明では、板状のクッション本体部は、幅方向の中央付近で長手方向に連続する鈍角に屈曲したクッション本体屈曲部が形成されたため、バンドクッションを幅方向に開くことが容易となり、バンドクッションをタンク保持バンドに取付けることが容易となる。また、バンドクッションの係合部がタンク保持バンドの側端部に係合しやすくなり、バンドクッションの保持力が増大する。
【0028】
請求項7の本発明は、タンク保持バンドの幅方向断面は、一般部が幅方向の中央部が凹んだバンド凹部と、バンド凹部の両側の山状に膨らんだバンド凸部と、バンド凸部の側端に形成されたバンド側端部から形成され、バンド凸部が上記クッション本体部の内面に当接し、バンド側端部がクッション係合部に係合する燃料タンクの取付構造である。
【0029】
請求項7の本発明では、タンク保持バンドの幅方向断面は、一般部が幅方向の中央部が凹んだバンド凹部と、バンド凹部の両側の山状に膨らんだバンド凸部と、バンド凸部の側端に形成されたバンド側端部から形成される。このため、タンク保持バンドの強度を向上させることができ、確実に燃料タンクを保持することができる。
【0030】
バンド凸部が上記クッション本体部の内面に当接し、バンド側端部がクッション係合部に係合するため、バンド凸部によりバンドクッションは燃料タンクの外壁に当接され、バンド凸部の撓みにより燃料タンクの振動を吸収することができるとともに、バンド側端部をクッション係合部が保持することができる。
【0031】
請求項8の本発明は、バンドクッションは、天然ゴム又はEPDMゴムで形成された燃料タンクの取付構造である。
【0032】
請求項8の本発明では、バンドクッションは、天然ゴム又はEPDMゴムで形成されたため、タンク保持バンドを保持する力が大きく、充分なクッション作用をするとともに、耐久性に優れている。また、押出成形も容易であり、バンドクッションのリサイクルも容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本件発明は、バンドクッションは、クッション本体部とクッション係合部により、クッション作用をすることができ、燃料タンクとタンク保持バンドの摩擦による異音や摩耗を防止できる。クッション係合部は、タンク保持バンドの両側端を保持するように鉤状に屈曲して形成されているため、タンク保持バンドにバンドクッションを嵌め込むときに、鉤状に屈曲して形成されたクッション係合部にタンク保持バンドの両側端を嵌め込むのみで容易に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態に使用するタンク保持バンドの一般部にバンドクッションを取り付けた状態の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に使用するタンク保持バンドの溶接部にバンドクッションを取り付けた状態の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に使用するタンク保持バンドの側端が伸長した部分にバンドクッションを取り付けた状態の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に使用するバンドクッションの側端部の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に使用する他の実施の形態のバンドクッションの側端部の拡大断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に使用する他の実施の形態のバンドクッションの側端部の拡大断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に使用するタンク保持バンドの一般部にバンドクッションを取り付けた状態の断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に使用するタンク保持バンドの溶接部にバンドクッションを取り付けた状態の断面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に使用するタンク保持バンドの一般部にバンドクッションを取り付けた状態の断面図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に使用するタンク保持バンドの溶接部にバンドクッションを取り付けた状態の断面図である。
【図11】本発明の実施の状態である燃料タンクをタンク保持バンドとバンドクッションで車体に取り付けた状態の断面図である。
【図12】従来のタンク保持バンドにバンドクッションを取付けた状態の断面図である。
【図13】従来の他のタンク保持バンドにバンドクッションを取付けた状態の断面図である。
【図14】従来の他のタンク保持バンドにバンドクッションを取付けた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態である自動車用の燃料タンク2の取付構造について、図1〜図11に基づき説明する。
図11に示すように、燃料タンク2は、タンク保持バンド10で車体1の車体フレーム又は車体パネルに取り付けられている。タンク保持バンド10と燃料タンク2の間には、後述するバンドクッション20が嵌め込まれている。
【0036】
タンク保持バンド10の数は、燃料タンク2の大きさにより異なるが2本以上使用されることが好ましい。2本以上使用することにより、タンク保持バンド10が燃料タンク2を安定して保持することができる。燃料タンク2の形状に応じて、タンク保持バンド10の数は、適宜増加することができる。
【0037】
燃料タンク2は、金属製や合成樹脂製のものがあるが、本件発明においては、いずれの燃料タンク2も使用することができる。
金属製の燃料タンク2の場合には、スチール又はステンレススチール等を使用することができる。
【0038】
合成樹脂製の燃料タンク2の場合は、高密度ポリエチレン(HDPE)や、高密度ポリエチレン(HDPE)の一層で形成されたものや、表皮層、バリヤ層と本体層の多層構造で形成されたものを使用することができる。多層構造の場合は、表皮層、本体層は、耐衝撃性が大きく、燃料油に対しても剛性が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されることが好ましい。バリヤ層を構成する熱可塑性合成樹脂は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を使用することが好ましい。
【0039】
図11に示すように、タンク保持バンド10は、長尺のベルト状に形成され、燃料タンク2を保持するバンド本体11と、バンド本体11の長手方向の両端のバンド取付部12から構成される。
バンド取付部12には、バンド取付孔12aが形成され、取付ネジ13がバンド取付孔12aに挿入されて、取付ネジ13により、車体1の車体フレーム又は車体パネルに螺着される。
【0040】
バンド本体11は、図1に示すように、一般部分ではその幅方向に断面形状が波型に形成され、中央付近が凹んだバンド凹部14を形成し、バンド凹部14の両側には円弧状に盛り上がったバンド凸部15が形成されている。バンド凸部15の上面は後述するバンドクッション20の裏面に当接する。バンド凸部15の側端はバンド側端部16を形成し、後述するバンドクッション20のクッション係合部22に係合するように下方を向いて形成されている。
【0041】
バンド本体11の一般部分では、バンド凹部14とバンド凸部15を有しているため、断面形状が波型を形成し、タンク保持バンド10の強度を向上させることができる。このため、バンド本体11の肉厚を薄くして重量を軽減しても、剛性を確保するとともに、強固に燃料タンク2の周囲を保持することができる。
【0042】
バンド凸部15がクッション本体部21の内面に当接し、バンド側端部16がクッション係合部22に係合するため、バンド凸部15によりバンドクッション20は燃料タンク2の外壁に押圧され、バンド凸部15の撓みとバンドクッション20の撓みにより燃料タンク2の振動を吸収することができる。また、バンド側端部16により、クッション係合部22が保持されることができる。
【0043】
図11に示すように、バンド本体11には、カバー部材30を取付けるカバー部材取付部31が溶接されている。カバー部材30は、平板状に形成され、燃料タンク2の下面を覆い、道路からの飛び石等を防ぐとともに、排気ガス管等からの熱が燃料タンク2へ伝達されるのを防止している。カバー部材30は、カバー部材取付部31に取付ネジ32によりネジ止めされている。
【0044】
バンド本体11のカバー部材取付部31が溶接される溶接部においては、図2に示すようにバンド凸部15の底面が平板状に形成されている。バンド本体11の側部は、断面U字形にバンド凸部15が形成されている。このバンド凸部15の裏面にクッション係合部22が係合されることができる。
【0045】
また、バンド本体11には、図1と図11に示すように、その幅方向の中央部に複数の水抜き孔18が形成されている。このため、バンド凹部14に溜った水を外部に排出して、タンク保持バンド10の錆の発生を防止している。
タンク保持バンド10は強度を確保するため、鉄製やステンレススチール製のものが使用される。鉄製の場合は、錆の予防にメッキ処理や塗装処理がなされる。
【0046】
タンク保持バンド10はその一部において、図3に示すように、バンド側端部16を上方に伸長させることができる。この場合は、後述するように、伸長されたバンド側端部16に応じて、バンドクッション20のクッション係合部22の屈曲部分を伸長して、バンド側端部16を覆うことができる。このため、燃料タンク2の形状に合わせてタンク保持バンド10の断面形状を自由に変化させることができ、バンドクッション20を同じ断面形状で形成し、確実にタンク保持バンド10に取付けることができる。
【0047】
次にバンドクッション20について説明する。
図11に示しように、タンク保持バンド10には、タンク保持バンド10の長手方向に沿って燃料タンク2との間に位置する長尺状のバンドクッション20が取り付けられている。燃料タンク2をタンク保持バンド10により車体1に取付けると、バンドクッション20は、タンク保持バンド10が燃料タンク2との間に入り、直接接触することを防止することができる。
【0048】
このため、燃料タンク2を車体1に取付けるときに金属製のタンク保持バンド10が燃料タンク2の表面を傷つけることがない。また、自動車の走行時に振動や揺れにより、燃料タンク2とタンク保持バンド10が直接擦れて、摩耗することを防止でき、燃料タンク2に錆や損傷を発生させることがない。
【0049】
バンドクッション20は、天然ゴム又はEPDMゴムを材料として、押出成形により成形される。長手方向に同一断面で形成することができ、生産性に優れている。天然ゴムで製造した場合には、タンク保持バンド10を保持する力が大きく、優れたクッション作用をすることができる。EPDMで製造した場合には、耐久性に優れて、バンドクッション20のリサイクルも容易に行うことができる。バンドクッション20は、天然ゴム又はEPDMゴム以外にも、弾性と柔軟性を有する可撓性の材料を使用することができる。
【0050】
本発明の第1の実施の形態では、図1に示すように、バンドクッション20は、長手方向に連続する平板状のクッション本体部21とクッション本体部21の幅方向の両側端部にタンク保持バンド10の両側端に係合するようにクッション本体部21の幅方向の両側にクッション係合部22が形成される。
【0051】
このため、バンドクッション20をタンク保持バンド10に取付けると、クッション本体部21の裏面にタンク保持バンド10のバンド凸部15の円弧状の上端の上面が当接して、バンドクッション20が燃料タンク2の外壁との間に位置してクッション作用をすることができる。したがって、燃料タンク2とタンク保持バンド10が直接接触せず、燃料タンク2の表面が摩耗することを防止でき、摩擦による異音の発生も防止できる。
【0052】
クッション係合部22は、タンク保持バンド10の幅方向の両側端を保持するように形成されて、バンドクッション20がタンク保持バンド10から外れないようにすることができる。クッション係合部22は、タンク保持バンド10の両側端を保持するように鉤状に屈曲して形成されている。このため、タンク保持バンド10にバンドクッション20を嵌め込むときに、鉤状に屈曲して形成されたクッション係合部22にタンク保持バンド10の両側端を嵌め込むのみで容易に取付けることができる。
【0053】
例えば具体的な形状としては、発明の第1の実施の形態では、図1及び図2に示すように、クッション係合部22は、クッション本体部21の両側に形成される。その形状の詳細は、図4に示すように、クッション本体部21から略直角に下方に延設されたクッション係合部根元部23と、クッション係合部根元部23から内側に略直角に互いに向き合うように延設されたクッション係合部側壁部24と、クッション係合部側壁部24からクッション本体部方向(上方)に突出して形成されたクッション係合部先端部26から形成されている。
【0054】
このため、クッション係合部根元部23、クッション係合部側壁部24とクッション係合部先端部26で断面コ字形の鉤部を形成することができる。この鉤部でクッション本体部21と、クッション係合部根元部23とクッション係合部側壁部24でタンク保持バンド10の両方のバンド側端部16の先端面を包み込むことができる。そして、クッション係合部側壁部24の裏面にバンド側端部16を対向又は当接させて、この断面コ字形の鉤部で保持することができる。クッション係合部先端部26の外面を斜面状に形成したため、バンド側端部16をクッション係合部側壁部24の内部に嵌め込み易い。
【0055】
クッション係合部側壁部24からクッション本体部21の方向に突出して壁状のクッション係合部先端部26が形成されている。このクッション係合部先端部26に、クッション係合部突部27を形成することができる。このクッション係合部突部27がタンク保持バンド10のバンド側端部16の内面に当接させることができ、タンク保持バンド10の両方のバンド側端部16の先端がずれても、クッション係合部先端部26で止まり、バンドクッション20から外れることを防止できる。
【0056】
さらに図4に示すように、クッション係合部22のクッション係合部根元部23とクッション係合部側壁部24の連続部分(略直角に屈曲した部分)がその隣接する部分であるクッション係合部根元部23とクッション係合部側壁部24の肉厚よりも薄肉にしたクッション係合部薄肉部25を形成することができる。上述のとおり図3に示すように、タンク保持バンド10の長手方向における位置によって、バンド側端部16の長さが伸長して変化する場合がある。
【0057】
この場合には、バンド側端部16がクッション係合部側壁部24を押して、クッション係合部側壁部24とクッション係合部根元部23の連続部分である屈曲したクッション係合部薄肉部25が伸ばされる。このとき、薄肉に形成されたクッション係合部薄肉部25が、柔軟に撓むことができ、クッション係合薄肉部25が直線状に伸ばされて、クッション係合部先端部26とクッション係合部突部27により形成されたクッション係合部溝部28でバンド側端部16の先端を保持することができる。このため、バンド側端部16の長さに合わせてクッション係合部22が確実にタンク保持バンド10の両方のバンド側端部16に係合することができる。
【0058】
本発明の第2の実施の形態では、図5に示すように、さらに、クッション係合部22は図4のクッション係合部22と比べて、クッション係合部先端部26の長さを長くして、クッション係合部側壁部24を短くすることができる。また、第1の実施の形態と異なり、クッション係合部先端部26の外面は、斜面状形成されていなく、内面と外面が平行に形成されている。
【0059】
クッション係合部先端部26からクッション係合部根元部23の方向に突出するクッション係合部突部27が形成され、クッション係合部突部27と、クッション係合部先端部26と、クッション係合部側壁部24とで断面コ字形のクッション係合部溝部28が形成され、クッション係合部溝部28の部分が大きく形成される。
【0060】
この場合には、タンク保持バンド10のバンド凸部15の凹凸が大きく変化して、バンド側端部16の長さが長くなり、バンド側端部16がクッション係合部根元部23とクッション係合部側壁部24の連結部分を伸ばしても、クッション係合部溝部28にタンク保持バンド10の両方のバンド側端部16の先端部分を保持することができ、バンドクッション20をタンク保持バンド10に確実に保持することができる。
【0061】
また、クッション係合部側壁部24を短くしたため、クッション係合部先端部26とバンド側端部16の間隔を少なくして、クッション係合部先端部26がバンド側端部16を保持するときの隙間を少なくして、ずれを少なくして、確実に保持することができる。また、クッション係合部先端部26の内面と外面が平行であるため、クッション係合部先端部26の根元部分を薄肉に形成して、クッション係合部22の部分の重量を軽減することができる。
【0062】
本発明の第3の実施の形態では、図6に示すように、クッション係合部薄肉部25の肉厚をクッション係合部根元部23やクッション係合部側壁部24の肉厚よりも薄く形成しているが、クッション係合部薄肉部25の肉厚を図4のクッション係合部薄肉部25のものと比べて肉厚に形成している。この場合は、クッション係合部22がバンド側端部16を保持する力を大きくすることができる。
【0063】
本発明の第4の実施の形態では、図7と図8に示すように、バンドクッション20のクッション係合部22において、クッション係合部先端部26を短く形成し、クッション係合部突部27を形成しないものである。この場合では、バンドクッション20の一般部分(図7の部分)においても、溶接部分(図8の部分)においても、タンク保持バンド10に取付けることが容易であり、バンドクッション20の重量も軽減することができる。
【0064】
本発明の第5の実施の形態では、図9と図10に示すように、板状のクッション本体部21は、幅方向の中央付近で、長手方向に連続する鈍角に屈曲したクッション本体屈曲部29を有する。本実施の形態では、屈曲角は170度であるが、その角度は、適宜変えることができる。
【0065】
クッション本体屈曲部29により、バンドクッション20を幅方向に開くことが容易となり、バンドクッション20のクッション係合部22にバンド側端部16を挿入することが容易であり、タンク保持バンド10に取付けることが容易となる。また、バンドクッション20のクッション係合部22のクッション係合部先端部26又はクッション係合部突部27がタンク保持バンド10のバンド側端部16の内面に当接しやすくなり、バンドクッション20の保持力が増大する。
【符号の説明】
【0066】
2 燃料タンク
10 タンク保持バンド
11 バンド本体
15 バンド凸部
20 バンドクッション
21 クッション本体部
22 クッション係合部
23 クッション係合部根元部
24 クッション係合部側壁部
25 クッション係合部薄肉部
26 クッション係合部先端部
27 クッション係合部突部
29 クッション係合部屈曲部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロアパネルの下に取付けられる自動車用の燃料タンクの取付構造において、
上記燃料タンクは、長尺状のタンク保持バンドにより外周を保持されて、車体に取付けられ、
該タンク保持バンドには、上記タンク保持バンドの長手方向に沿って上記燃料タンクとの間に位置する長尺状のバンドクッションが取り付けられ、
該バンドクッションは、ゴム又は軟質合成樹脂で形成されるとともに、長手方向に連続する板状のクッション本体部と該クッション本体部の両側端部に上記タンク保持バンドの両側端に係合するクッション係合部が形成され、該クッション係合部は、上記タンク保持バンドの両側端を覆うように鉤状に屈曲して形成されるとともに、屈曲部分が伸長可能に形成されたことを特徴とする燃料タンクの取付構造。
【請求項2】
上記クッション係合部は、上記クッション本体部から略直角に延設されたクッション係合部根元部と、該クッション係合部根元部から略直角に延設されたクッション係合部側壁部と、該クッション係合部側壁部から上記クッション本体部方向に突出して形成されたクッション係合部先端部から形成された請求項1に記載の燃料タンクの取付構造。
【請求項3】
上記クッション係合部根元部と上記クッション係合部側壁部の連続部分がその隣接する部分よりも薄肉に形成された請求項2に記載の燃料タンクの取付構造。
【請求項4】
上記タンク保持バンドの側端が伸長された部分では、屈曲した上記クッション係合部根元部と上記クッション係合部側壁部の連続部分が伸びて、上記タンク保持バンドの側端を上記クッション係合部のクッション係合部先端部が覆う請求項2又は請求項3に記載の燃料タンクの取付構造。
【請求項5】
上記クッション係合部先端部から上記クッション係合部根元部の方向に突出するクッション係合部突部が形成され、該クッション係合部突部と、上記クッション係合部先端部と、上記クッション係合部側壁部とでクッション係合部溝部が形成された請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の燃料タンクの取付構造。
【請求項6】
板状の上記クッション本体部は、幅方向の中央付近で長手方向に連続する鈍角に屈曲したクッション本体屈曲部が形成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の燃料タンクの取付構造。
【請求項7】
上記タンク保持バンドの幅方向断面は、一般部が幅方向の中央部が凹んだバンド凹部と、該バンド凹部の両側の山状に膨らんだバンド凸部と、該バンド凸部の側端に形成されたバンド側端部から形成され、上記バンド凸部が上記クッション本体部の内面に当接し、上記バンド側端部が上記クッション係合部に係合する請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の燃料タンクの取付構造。
【請求項8】
上記バンドクッションは、天然ゴム又はEPDMゴムで形成された請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の燃料タンクの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−61969(P2012−61969A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208054(P2010−208054)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(308039414)株式会社FTS (60)
【Fターム(参考)】