説明

自動車用インストルメントパネル構造

【課題】 インストルメントパネルに設けられるグローブボックス用の開口部の周縁フランジを構成する部品点数を減少させる。
【解決手段】 インストルメントパネル11に形成した開口部11bに開閉自在に支持されるグローブボックス12の車幅方向外端と、インストルメントパネル11の車幅方向外端との間に、インストルメントパネル11の車室側表面の一部を構成する化粧リッド18が着脱自在に設けられる。化粧リッド18の車幅方向内端に、インストルメントパネル11の開口部11bの周縁フランジ11hの一部18bを一体に形成したので、前記周縁フランジ11hの一部18bを別部材で構成して前記開口部11bに装着する必要がなくなり、部品点数の削減、組付工数の削減、部品の継ぎ目の減少による美観の向上が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルに形成した開口部にグローブボックスを開閉自在に支持し、前記グローブボックスの車幅方向外端と前記インストルメントパネルの車幅方向外端との間に、前記インストルメントパネルの車室側表面の一部を構成する化粧リッドを着脱自在に設けた自動車用インストルメントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルにグローブボックスを組み付けるとき、グローブボックスの左右一方側のパネルがインストルメントパネル本体で構成され、グローブボックスの左右他方側のパネルがインストルメントパネルに組み付けられる別部材で構成されている場合、グローブボックスの左右両側縁に形成される隙間が不均一になって美観を損ねる問題がある。
【0003】
そこで、インストルメントパネル本体と前記別部材で構成されたパネルとを位置決め部材で連結して間隔を一定に保ち、グローブボックスの左右両側縁に形成される隙間を均一化して美観を高めるものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−72751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車の組み立てラインでサブアセンブリとして組み立てを完了したインストルメントパネルを車室内に組み付ける場合、人力だけによる作業は効率的でないため、ロボットアームに設けた吊り下げ治具や無重力装置に設けた吊り下げ治具にインストルメントパネル支持した状態で車室内に搬入することが行われている。
【0006】
この場合、インストルメントパネルの外表面には吊り下げ治具を係合させる強度の高い部材が存在しないため、インストルメントパネルの内部に組み込まれたステアリングハンガー(ステアリングシャフト等を支持する金属部材)を利用して吊り下げ治具を係合させる必要がある。しかしながら、吊り下げ治具をステアリングハンガーに係合させるにはインストルメントパネルに吊り下げ治具を通過させる治具挿入孔を形成する必要があり、インストルメントパネルの組み付け完了後に前記治具挿入孔を覆い隠すための化粧リッドをインストルメントパネルに装着する必要がある。
【0007】
またインストルメントパネルに設けられたグローブボックス用の開口部の周縁には内向きの周縁フランジが形成されており、この周縁フランジで開口部の周縁とグローブボックスとの間の隙間を塞ぐことで、グローブボックスの内部が見えないようにして商品性を高めている。しかしながら、インストルメントパネルを射出成形するとき、開口部の周縁フランジを一体に成形するとアンダーカット部が発生して型抜きが困難になるため、従来は前記フランジの一部を別部材で構成して開口部に装着することが行われていた。
【0008】
その結果、グローブボックスの開口部に近傍に、別部材の前記化粧リッドや別部材の前記周縁フランジを装着することが必要になり、部品点数が増加したり、部品の継ぎ目が増加して美観を損ねたりする問題があった。
【0009】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、インストルメントパネルに設けられるグローブボックス用の開口部の周縁フランジを構成する部品点数を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、インストルメントパネルに形成した開口部にグローブボックスを開閉自在に支持し、前記グローブボックスの車幅方向外端と前記インストルメントパネルの車幅方向外端との間に、前記インストルメントパネルの車室側表面の一部を構成する化粧リッドを着脱自在に設けた自動車用インストルメントパネル構造において、前記化粧リッドの車幅方向内端に、前記開口部の周縁フランジの一部を一体に形成したことを特徴とする自動車用インストルメントパネル構造が提案される。
【0011】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記グローブボックスはストッパ部材を備え、前記グローブボックスを閉じたときに、前記ストッパ部材は前記周縁フランジの一部に当接して前記グローブボックスを閉位置に位置決めすることを特徴とする自動車用インストルメントパネル構造が提案される。
【0012】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記インストルメントパネルは前記化粧リッドで覆われる部分に貫通孔を備え、前記貫通孔には前記インストルメントパネルを吊り下げて車体に組み付けるための治具が挿入可能であることを特徴とする自動車用インストルメントパネル構造が提案される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、インストルメントパネルに形成した開口部に開閉自在に支持されるグローブボックスの車幅方向外端と、インストルメントパネルの車幅方向外端との間に、インストルメントパネルの車室側表面の一部を構成する化粧リッドが着脱自在に設けられる。化粧リッドの車幅方向内端に、インストルメントパネル開口部の周縁フランジの一部を一体に形成したので、前記周縁フランジの一部を別部材で構成して前記開口部に装着する必要がなくなり、部品点数の削減、組付工数の削減、部品の継ぎ目の減少による美観の向上が可能になる。
【0014】
また請求項2の構成によれば、グローブボックスを閉じたときに、グローブボックスに設けたストッパ部材が前記周縁フランジの一部に当接するので、化粧リッドの周縁フランジを利用してグローブボックスを閉位置に位置決めすることができる。
【0015】
また請求項3の構成によれば、インストルメントパネルの化粧リッドで覆われる部分に貫通孔を設けたので、この貫通孔から治具をインストルメントパネルの内部に挿入することで、インストルメントパネルを吊り下げて車体に組み付けることができる。インストルメントパネルの貫通孔は化粧リッドで覆われるため、貫通孔が見えなくなってインストルメントパネルの美観が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】自動車のインストルメントパネルの正面図。
【図2】図1の2方向矢視図。
【図3】図1の3−3線拡大断面図。
【図4】図1の4方向矢視図。
【図5】図1に対応する作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図5に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1および図2に示すように、自動車のインストルメントパネル11の車幅方向中央部には車室側に向けてセンターコンソール11aが突出しており、センターコンソール11aよりも助手席側の正面にグローブボックス12が設けられる。グローブボックス12は、把手12aを手前に引くことで下端のヒンジ12b,12bを支点として車室側に回動し、その上面開口部から小物を出し入れすることができる。
【0019】
インストルメントパネル11の内部には、その骨格となるステアリングハンガー13が配置される。ステアリングハンガー13は、車幅方向に延びる1本のパイプ材よりなるハンガーパイプ14を備えており、このハンガーパイプ14に図示せぬステアリングシャフトが支持される。ハンガーパイプ14の左右両端部には取付ブラケット15,15(左側のみ図示)が設けられており、この取付ブラケット15,15が図示せぬフロントピラーの内面に固定される。またステアリングハンガー13から2本のステー16,17が垂下しており、これらの2本のステー16,17によってグローブボックス12を収納するインストルメントパネル11の開口部11bの左右両側縁が補強される。
【0020】
図3〜図5に示すように、グローブボックス12用の開口部11bよりも車幅方向外側部分には、上側段差部11cおよび下側段差部11dに挟まれた凹部11e(図5参照)が一段低くなるように形成される。凹部11eの中央部には貫通孔11fが形成されるとともに、凹部11eの周囲には複数の係止孔11g…が形成される。ステアリングハンガー13の左側のステー16には、インストルメントパネル11の凹部11eに臨む治具係止孔16a(図2、図3および図5参照)が形成される。
【0021】
インストルメントパネル11の一部を構成する別部材の化粧リッド18が、その裏面に突設した複数の係止突起18a…(図3参照)を係止孔11g…に係合させることで、インストルメントパネル11の凹部11eを覆うように着脱自在に装着される。化粧リッド18を装着した状態で、化粧リッド18の表面はインストルメントパネル11の表面と面一になり、化粧リッド18が目立たなくなって美観が向上する。
【0022】
インストルメントパネル11の開口部11bの左側縁と右側縁とには、それぞれ周縁フランジ11h,11h(左側のみ図示)が設けられるが、左側(車幅方向外側)の周縁フランジ11hの上端は、インストルメントパネル11を射出成形する際の型抜きの関係で、開口部11bの上端よりも低い位置で終わっている。一方、化粧リッド18の右側縁には周縁フランジ18bが一体に形成されており、化粧リッド18をインストルメントパネル11の凹部11eに装着した状態で、インストルメントパネル11の開口部11bの左側の周縁フランジ11hに上部に、化粧リッド18の周縁フランジ18bが連続的に接続される。つまり開口部11bの左側の周縁フランジ11hの上部が途切れた部分が、化粧リッド18に設けた周縁フランジ18bで補われている。
【0023】
図3から明らかなように、グローブボックス12は、その左側の側壁12cから左側に張り出すフランジ部12dを備えており、このフランジ部12dの前面に設けたラバー製のストッパ部材19が、化粧リッド18の周縁フランジ18bの後面に当接することで、グローブボックス12が閉位置に位置決めされる。
【0024】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0025】
サブアセンブリとして予め組み立てられたインストルメントパネル11を自動車の車室内に組み付ける作業は、化粧リッド18を取り外すことで露出したインストルメントパネル11の凹部11eの貫通孔11fに、ロボットアームや無重力装置に設けた吊り下げ治具20を挿入し、その先端部の係止溝20aをステアリングハンガー13の左側のステー16の治具係止孔16aに係止した状態で、インストルメントパネル11を吊り下げながら行われる。
【0026】
剛性の高い部材であるステアリングハンガー13を吊り下げることで、脆弱な合成樹脂製のインストルメントパネル11を傷つけることなく、車室内に搬入して所定の位置に組み付けることができる。尚、インストルメントパネル11の右端側も同様にして吊り下げることで、インストルメントパネル11の姿勢を安定させて組み付け作業の効率を高めることができる。
【0027】
インストルメントパネル11を車室内に組み付けた後、化粧リッド18の係止突起18a…をインストルメントパネル11の凹部11eの係止孔g…に係止することで、化粧リッド18をインストルメントパネル11に一体に結合する。この状態では、凹部11eに形成された吊り下げ治具20を挿入するための貫通孔11fが化粧リッド18で覆い隠されて美観が向上するだけでなく、化粧リッド18の表面はインストルメントパネル11の表面と面一になり、化粧リッド18がインストルメントパネル11と一体に形成されているように見えて美観が更に向上する。
【0028】
また化粧リッド18を凹部11eに装着すると、インストルメントパネル11の開口部11bの左側の周縁フランジ11hに上部に化粧リッド18の周縁フランジ18bが連続的に接続されるため、これらの周縁フランジ11h,18bでグローブボックス12の左側縁とインストルメントパネル11の開口部11bの左側縁とに間に隙間が発生するのを防止することで、隙間を通してグローブボックス12の内部が見えないようにして商品性を高めることができる。しかも化粧リッド18の周縁フランジ18bにグローブボックス12のフランジ部12dの前面に設けたラバー製のストッパ部材19を当接させることで、グローブボックス12が閉位置に精度良く位置決めすることができる。
【0029】
以上のように、グローブボックス12用の開口部11bの周縁フランジ11hの全部を型抜きの関係で一体成形できない場合であっても、インストルメントパネル11と別部材で構成される化粧リッド18に前記周縁フランジ11hの一部を構成する周縁フランジ18bを一体に形成したので、前記周縁フランジ18bだけを別部材で構成して開口部11bに装着する場合に比べて、部品点数を1個削減してコストダウンに寄与することができるだけでなく、部品点数の減少によって部品の継ぎ目の数が減少することで、美観の向上にも寄与することができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0031】
例えば、実施の形態では化粧リッド18にインストルメントパネル11の開口部11bの左側の周縁フランジ11hの一部だけを一体に形成しているが、その全部を一体に形成しても良い。
【0032】
また実施の形態では吊り下げ治具20の係止溝20aをステアリングハンガー13のステー16に係止しているが、ステアリングハンガー13の任意の部分に係止することができる。
【符号の説明】
【0033】
11 インストルメントパネル
11b 開口部
11f 貫通孔
11h 周縁フランジ
12 グローブボックス
18 化粧リッド
18b 周縁フランジ(インストルメントパネルの周縁フランジの一部)
19 ストッパ部材
20 吊り下げ治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネル(11)に形成した開口部(11b)にグローブボックス(12)を開閉自在に支持し、前記グローブボックス(12)の車幅方向外端と前記インストルメントパネル(11)の車幅方向外端との間に、前記インストルメントパネル(11)の車室側表面の一部を構成する化粧リッド(18)を着脱自在に設けた自動車用インストルメントパネル構造において、
前記化粧リッド(18)の車幅方向内端に、前記開口部(11b)の周縁フランジ(11h)の一部(18b)を一体に形成したことを特徴とする自動車用インストルメントパネル構造。
【請求項2】
前記グローブボックス(12)はストッパ部材(19)を備え、前記グローブボックス(12)を閉じたときに、前記ストッパ部材(19)は前記周縁フランジ(11h)の一部(18b)に当接して前記グローブボックス(12)を閉位置に位置決めすることを特徴とする、請求項1に記載の自動車用インストルメントパネル構造。
【請求項3】
前記インストルメントパネル(11)は前記化粧リッド(18)で覆われる部分に貫通孔(11f)を備え、前記貫通孔(11f)には前記インストルメントパネル(11)を吊り下げて車体に組み付けるための吊り下げ治具(20)が挿入可能であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の自動車用インストルメントパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107568(P2013−107568A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255815(P2011−255815)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】