説明

自動車用フェンダミラー

【課題】運転者の目の位置からミラーまでの距離が離れており両側のミラーに視線を向けるときに視線が振れる角度(水平角度)が狭く安全性が高いというフェンダミラーの特性を生かし、デザイン性や生産性の向上及び衝突の回避が図られた自動車用フェンダミラーを提供する。
【解決手段】前輪101を覆うフェンダ102の一部として形成され後端部が開口部1となされて外方側へ膨出された膨出部2と、この膨出部2内に収納され開口部1から後方側に臨むミラー3とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の目の位置からの距離が長く、視線を左右に振る角度が小さい状態で後方確認が可能な自動車用フェンダミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、運転者が左右両側の後方を確認するため、サイドミラーが設けられている。このサイドミラーとしては、前側ドアの前端部近傍に設けられた、いわゆるドアミラーと、前輪を覆うフェンダの上部に設けられた、いわゆるフェンダミラーとが知られている。
【0003】
従来、わが国においては、乗用車の保安基準においてドアミラーが認可されていなかったため、わが国内における走行を目的として生産される乗用車の全てにおいてフェンダミラーが設けられていた。その後、ドアミラーが認可されたことに伴い、わが国において生産される乗用車の大部分においてドアミラーが設けらるようになった。このように、ドアミラーが普及した理由は、デザイン上の要求、生産性の向上、及び、衝突の回避のためであると思われる。衝突の回避とは、フェンダミラーは車体から支持ステー等を介して突出して設けられているために車体の付近を歩行する歩行者等が接触し易いため、このような接触を回避するということである。
【0004】
一方、フェンダミラーにおける衝突の回避を図るための提案として、特許文献1及び特許文献2には、必要に応じてフェンダ内に収納できるようにしたフェンダミラーが記載されている。
【0005】
また、フェンダミラーにおけるデザイン性や生産性を向上するための提案として、特許文献3には、フェンダ外側部に取付けられるオーバーフェンダ上に取付けるようにしたフェンダミラーが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平06−278535号公報
【特許文献2】特開平10−291440号公報
【特許文献3】特開平11−115632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、乗用車の保安基準においてドアミラーが認可されていなかった理由は、ドアミラーよりもフェンダミラーのほうが安全性が高いからであった。すなわち、フェンダミラーにおいては、運転者の目の位置からミラーまでの距離が離れているので、両側のミラーに視線を向けるときに視線が振れる角度(水平角度)がドアミラーに比較して狭いため、左右後方の確認時に前方視界が失われる時間が短く、安全性が高いのである。
【0008】
前述したように、現在ではドアミラーが設けられた乗用車が大多数を占めているのであるが、フェンダミラーのほうが安全性が高いという点に着目して、フェンダミラーが設けられた自動車の生産に対する要望があるのも事実である。
【0009】
特許文献1及び特許文献2に記載されたフェンダミラーにおいては、衝突の回避は図られているものの、デザイン性や生産性を向上させることはできないという問題がある。
【0010】
特許文献3に記載されたフェンダミラーにおいては、デザイン性や生産性の向上は図られているものの、衝突の回避を図ることはできないという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みて提案されるものであって、運転者の目の位置からミラーまでの距離が離れており、両側のミラーに視線を向けるときに視線が振れる角度(水平角度)が狭く、安全性が高いというフェンダミラーの特性を生かしつつ、デザイン性や生産性の向上及び衝突の回避が図られた自動車用フェンダミラーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するため、本発明に係る自動車用フェンダミラーは、以下の構成を有するものである。
【0013】
〔構成1〕
前輪を覆うフェンダの一部として形成され後端部が開口部となされて外方側へ膨出された膨出部と、この膨出部内に収納され開口部から後方側に臨むミラーとからなることを特徴とするものである。
【0014】
〔構成2〕
構成1を有する自動車用フェンダミラーにおいて、ミラーは、前輪の後縁部よりも前方に位置していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
構成1を有する本発明に係る自動車用フェンダミラーは、前輪を覆うフェンダの一部として形成され後端部が開口部となされて外方側へ膨出された膨出部と、この膨出部内に収納され開口部から後方側に臨むミラーとからなるので、運転者の目の位置からミラーまでの距離が離れており、両側のミラーに視線を向けるときに視線が振れる角度(水平角度)が狭く、安全性が高いというフェンダミラーの特性を生かしつつ、デザイン性や生産性の向上及び衝突の回避が図られる。
【0016】
構成2を有する本発明に係る自動車用フェンダミラーにおいては、ミラーは、前輪の後縁部よりも前方に位置しているので、運転者の目の位置からミラーまでの距離が離れており、両側のミラーに視線を向けるときに視線が振れる角度(水平角度)が狭く、安全性が高い。
【0017】
すなわち、本発明は、運転者の目の位置からミラーまでの距離が離れており、両側のミラーに視線を向けるときに視線が振れる角度(水平角度)が狭く、安全性が高いというフェンダミラーの特性を生かしつつ、デザイン性や生産性の向上及び衝突の回避が図られた自動車用フェンダミラーを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る自動車用フェンダミラーの構成を示す斜視図である。
【0020】
本発明に係る自動車用フェンダミラーは、乗用車等の自動車に設けられ、自動車の運転席において、左右後方の状態をミラーにより反射させて確認するためのものであり、図1に示すように、前輪101を覆うフェンダ102の一部として形成され、後端部が開口部1となされて外方側(上方側)へ膨出された膨出部2と、この膨出部2内に収納され開口部1から後方側に臨むミラー3とから構成されている。
【0021】
この自動車用フェンダミラーは、自動車において、左右のフェンダ102,102にそれぞれに、左右対称の構成を有して設けられる。ただし、この自動車用フェンダミラーは、必ず左右のフェンダ102,102に設けなければならないものではなく、必要に応じて、左右のフェンダ102,102のいずれか一方のみに設けてもよい。
【0022】
フェンダ102は、鋼板、あるいは、合成樹脂材料、合成樹脂材料及びグラスファイバ等からなる複合材料などによって形成されている。
【0023】
膨出部2は、フェンダ102の形成時において、このフェンダ102と一体的に形成されている。開口部1は、車体後方に向けて開口されており、この自動車用フェンダミラーが設けられる自動車の運転席に向けて開口されている。
【0024】
ミラー3は、膨出部2内に収納されて設置され、開口部1を介して、この自動車用フェンダミラーが設けられる自動車の運転席に向けて後方側に望んでいる。このミラー3は、僅かな曲率を有する凸面鏡であり、主面の方向を調整可能に支持されている。なお、このミラー3は、図示しない駆動装置によって主面の方向が調整されるようにしてもよい。
【0025】
図2は、本発明に係る自動車用フェンダミラーの構成を示す側面図である。
【0026】
ミラー3は、図2に示すように、前輪101の後縁部101aよりも前方に位置している。そのため、このミラー3は、運転者の目の位置Eからの距離Dが、ドアミラーを用いた場合よりも、長い距離となる。
【0027】
図3は、本発明に係る自動車用フェンダミラーの構成を示す平面図である。
【0028】
この自動車用フェンダミラーにおいては、図3に示すように、運転者の目の位置Eからミラー3までの距離Dが離れており、両側のミラー3,3に視線を向けるときに視線が振れる角度(水平角度)θが狭いため、左右後方の確認時に前方視界が失われる時間が短く、高い安全性を確保することができる。
【0029】
そして、この自動車用フェンダミラーにおいては、フェンダ102に一体化された膨出部2内に内蔵されて構成されているため、デザイン性や生産性の向上及び衝突の回避が図られている。
【0030】
なお、本発明に係る自動車用フェンダミラーは、運転席の左右のサイドウィンドが左右のドア面よりも車体内方側に位置しているデザインの自動車に適用した場合には、膨出部2を車体の側方に食み出させる必要がなく、特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る自動車用フェンダミラーの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る自動車用フェンダミラーの構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る自動車用フェンダミラーの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 開口部
2 膨出部
3 ミラー
101 前輪
101a 後縁部
102 フェンダ
E 目の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を覆うフェンダの一部として形成され、後端部が開口部となされて外方側へ膨出された膨出部と、
前記膨出部内に収納され、前記開口部から後方側に臨むミラーと
からなることを特徴とする自動車用フェンダミラー。
【請求項2】
前記ミラーは、前記前輪の後縁部よりも前方に位置している
ことを特徴とする請求項1記載の自動車用フェンダミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−24308(P2008−24308A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−262773(P2007−262773)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(507331944)
【Fターム(参考)】